プローブ、および、表面性状測定装置
【課題】簡単な構成で容易にかつより再現性よく力センサを位置決め可能な接触式倣いプローブシステムの提供。
【解決手段】プローブ本体200に、コネクタ正面部261Aに立設する中間閉塞部250と、雄ねじ部110が螺着される雌ねじ部261Dとを設けている。センサモジュール300に、コネクタ正面部261Aに摺接される摺接部322と、中間閉塞部250に押圧される押圧部321と、挿通孔部325とを設けている。挿通孔部325に、ねじ孔形成先端面部324側の開口における押圧部321側が摺接部322側にしたがって押圧部321から離れる状態に傾斜する拡開部325Bを設けている。挿通孔部325を、雄ねじ部110の太さよりも大きい孔幅に形成している。
【解決手段】プローブ本体200に、コネクタ正面部261Aに立設する中間閉塞部250と、雄ねじ部110が螺着される雌ねじ部261Dとを設けている。センサモジュール300に、コネクタ正面部261Aに摺接される摺接部322と、中間閉塞部250に押圧される押圧部321と、挿通孔部325とを設けている。挿通孔部325に、ねじ孔形成先端面部324側の開口における押圧部321側が摺接部322側にしたがって押圧部321から離れる状態に傾斜する拡開部325Bを設けている。挿通孔部325を、雄ねじ部110の太さよりも大きい孔幅に形成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ、および、表面性状測定装置に関する。例えば、加振型センサにより被測定物の形状や表面粗さなどの表面性状の測定に用いられるプローブ、および、表面性状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面を走査して被測定物の形状や表面粗さなど表面性状を測定する表面性状測定装置として、粗さ測定機、輪郭測定機、真円度測定機、三次元測定機などが知られている。
このような測定機において、接触部が被測定物の表面に接触した微小変位に基づいて被測定物表面を検出するセンサとして、例えば図10に示すような加振型力センサ(以下、力センサと適宜称す)1が利用されている。
【0003】
この図10に示す力センサ1は、金属製のベース2と、このベース2と一体的に形成されたスタイラス3と、このスタイラス3を振動(軸方向へ振動)させる加振素子4と、スタイラス3の振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子5とから構成されている。スタイラス3の先端には、ダイヤモンドチップやルビーなどで構成された接触部としての触針6が接着固定されている。加振素子4および検出素子5は、1枚の圧電素子によって構成され、ベース2の表裏にそれぞれ1枚ずつ接着固定されている。
【0004】
いま、図11に示すように、力センサ1の加振素子4に対して、特定の周波数と振幅をもつ加振信号Pi(電圧信号)を与えると、検出素子5では、特定の周波数と振幅の検出信号Qo(電圧信号)が得られる。
被測定物Wとの接触に伴う検出信号Qoの振幅変化を図12に示す。スタイラス3が被測定物Wと非接触状態にあるとき、スタイラス3の共振周波数で一定の振幅をもつ加振信号Piを加振素子4に加えると、スタイラス3が共振し、検出素子5に振幅Aoの検出信号Qoが得られる。スタイラス3が被測定物Wに接触すると、検出信号Qoの振幅がAoからAxに減衰する。
【0005】
この減衰率k(Ax/Ao)と測定力との間には、図13に示す関係がある。
ここで、スタイラス3(力センサ1)が被測定物Wに接触したときの検出信号Qoが非接触時の90%に減衰している場合(減衰率k=0.9の状態)を例にとる。図13の関係より、この接触状態における測定力は135[μN]であることがわかる。
従って、力センサ1を被測定物Wに接触させる際、減衰率kが常に一定となるように、駆動アクチュエータなどを用いて力センサ1と被測定物Wとの距離を制御すれば、測定力一定状態で被測定物Wの形状や粗さを測定することができる。
【0006】
このような力センサ1を有するプローブが設けられた表面形状測定装置では、スタイラス3が性能不良、もしくは、破損した場合、正常な動作をする力センサ1と交換する必要がある。このような場合、力センサ1単体を交換する方法が考えられる。
しかし、力センサ1単体を交換する場合、位置決めが困難となる。交換後の力センサ1の触針6の位置が、交換前の触針6の位置からずれると、測定精度に大きく影響を及ぼすおそれがある。
このため、プローブに対して再現性よく位置決め可能な構成が望まれている。
【0007】
一方、複数の部材を再現性よく位置決め可能な構成として、いわゆるピンロック方式を用いる構成が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0008】
特許文献1に記載のものは、チップ取付孔には、クランクピンの軸芯から偏心した軸芯を有する偏芯ピンが挿通されている。
そして、クランクピンを廻動させて、チップを側方壁面に当接させて固定する構成が採られている。
【0009】
特許文献2に記載のものは、ホルダの先端部位にインサートを載置するインサート座部が凹設されているとともに、このインサート座部に貫通してポケットが凹設されている。さらに、ピン部材のピンの根本部分にテーパー面が設けられているとともに、インサートの中央孔にピンと係合する部位に湾曲凸面が形成されている。
そして、固定ボルトによりポケットにピン部材を嵌合固定し、ピンでもってインサートの中央孔の孔壁を押圧して、インサートをインサート座部に固定する構成が採られている。
【0010】
【特許文献1】特開平10−217004号公報
【特許文献2】特開平10−100006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のような構成では、偏芯ピンによりチップを側方壁面のみに当接させる構成のため、チップが偏芯ピンの軸方向に位置ずれしてしまうおそれがある。
また、特許文献2のような構成では、インサートを固定するために、2つの部材、すなわち固定ボルトおよびピン部材が必要であり、構成が複雑になるとともに固定する際の作業効率が悪くなるおそれがある。
【0012】
本発明の目的は、簡単な構成で容易にかつより再現性よく力センサを位置決め可能なプローブ、および、表面性状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のプローブは、被測定物との接触時に発生する測定力を検出し力検出信号として出力する力センサと、この力センサによる被測定物の測定位置を検出し測定位置情報として出力する位置検出手段と、前記力センサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、を備えたプローブであって、前記相対移動手段に保持されるプローブ本体と、前記力センサが取り付けられるセンサモジュールと、前記センサモジュールに挿通されるとともに前記プローブ本体に挿入され前記センサモジュールを前記プローブ本体に着脱自在に位置決め固定する固定部材と、を備え、前記プローブ本体は、略平面状の第1位置決め部と、この第1位置決め部に立設された第2位置決め部と、前記第1位置決め部に設けられ前記固定部材が挿入されて着脱可能に係止される係止孔部と、を備え、前記センサモジュールは、前記第1位置決め部に摺接される摺接部と、前記第2位置決め部に押圧される押圧部と、前記摺接部側から前記摺接部と対向する側まで連通し前記固定部材が挿通される挿通孔部と、を備え、前記固定部材は、棒状に形成され前記挿通孔部に挿通されるとともに一端側が前記係止孔部に係止される棒状部と、この棒状部の他端側の側面から突出する固定突出部と、を備え、前記挿通孔部は、前記摺接部と対向する側の開口における前記押圧部側が前記摺接部側に向かうにしたがって前記押圧部から離れる状態に傾斜し前記固定突出部が当接可能な傾斜部を有するとともに、前記棒状部の太さより大きい孔幅に形成されたことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、固定部材に、棒状部と、固定突出部と、を設けている。また、相対移動手段に保持されるプローブ本体に、第1位置決め部と、この第1位置決め部に立設された第2位置決め部と、第1位置決め部に設けられた係止孔部と、を設けている。さらに、力センサが取り付けられるセンサモジュールに、第1位置決め部に摺接される摺接部と、第2位置決め部に押圧される押圧部と、摺接部側から摺接部と対向する側まで連通する挿通孔部と、を設けている。また、挿通孔部に、摺接部と対向する側の開口における押圧部側が摺接部側に向かうにしたがって押圧部から離れる状態に傾斜する傾斜部を設けている。そして、挿通孔部を、棒状部の太さよりも大きい孔幅に形成している。
【0015】
このため、以下のようにして、プローブ本体にセンサモジュールを位置決め固定することが可能となる。
すなわち、センサモジュールを、摺接部が第1位置決め部に対向し、かつ、押圧部が第2位置決め部に対向する状態に位置させる。そして、挿通孔部の傾斜部に固定突出部を摺接させつつ、固定部材を挿通孔部に挿通させて、棒状部をプローブ本体の係止孔部に係止させることにより、プローブ本体にセンサモジュールを位置決め固定することが可能となる。
このとき、固定突出部を連続的にあるいは断続的に傾斜部に当接させつつ傾斜部の傾斜方向と交差する方向に移動させることにより、センサモジュールを第1位置決め部に摺接させつつ、押圧部に第2位置決め部を押圧させることが可能となる。したがって、第1位置決め部の面方向に対して、センサモジュールを再現性よく位置決めすることが可能となる。
また、固定突出部により傾斜部を第1位置決め部の方向に押圧した状態で、棒状部を係止孔部に係止させることが可能となる。したがって、第1位置決め部の面方向と略直交する方向に対して、センサモジュールを再現性よく位置決めすることが可能となる。
さらに、センサモジュールをプローブ本体に位置決め固定するために、固定部材のみを用いるだけでよく、構成が簡単になり位置決めする際の作業効率をあげることが可能となる。
よって、簡単な構成で容易にかつより再現性よく力センサを位置決め可能となる。
【0016】
本発明のプローブにおいて、前記力センサは、先端に接触部を有するスタイラスと、このスタイラスを振動させる加振素子と、前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子と、を備えたことが好ましい。
この発明によれば、力センサを、スタイラスと、加振素子と、検出素子とで構成している。
このため、小さい測定力で高精度な測定が可能ないわゆる加振型力センサの位置決めを、簡単な構成で容易にかつより再現性よく実施可能となり、より高精度な測定が可能なプローブを提供可能となる。
【0017】
本発明のプローブにおいて、前記係止孔部は、雌ねじ部であり、前記棒状部は、雄ねじ部であることが好ましい。
この発明によれば、係止孔部として雌ねじ部を適用するとともに、棒状部として雄ねじ部を適用している。
このため、棒状部を係止孔部に螺着するだけの簡単な構成で、プローブ本体にセンサモジュールを位置決め固定することが可能となり、より容易に力センサを位置決め可能となる。
【0018】
本発明のプローブにおいて、前記固定突出部は、前記棒状部の外周方向に沿って一連に設けられたことが好ましい。
この発明によれば、固定突出部を、棒状部の外周方向に沿って一連に設けている。
このため、固定部材をセンサモジュールに挿通させる際に、固定突出部の位置を意識することなく固定突出部を傾斜部に常時当接させることが可能となり、さらに容易に力センサを位置決め可能となる。
特に、棒状部として雄ねじ部を、係止孔部として雌ねじ部を適用した構成の場合、棒状部を螺着させる際に固定突出部を傾斜部に常時当接させることが可能となり、さらに容易に力センサを位置決め可能となる。
【0019】
本発明のプローブにおいて、前記挿通孔部は、前記傾斜部の前記摺接部側の端部から前記押圧部までの距離が、前記係止孔部の第2位置決め部側の端部から前記第2位置決め部までの距離と略等しくなる形状に形成されたことが好ましい。
この発明によれば、挿通孔部を、傾斜部の摺接部側の端部から押圧部までの距離が、係止孔部の第2位置決め部側の端部から第2位置決め部までの距離と略等しくなる形状に形成している。
このため、押圧部に第2位置決め部を押圧させた際に、傾斜部の摺接部側の端部と、係止孔部の第2位置決め部側の端部と、を略同一線上に位置させることが可能となり、棒状部を傾斜部の摺接部側の端部に略当接させた状態で、係止孔部に係止させることが可能となる。したがって、固定突出部の側面からの突出量を最小限に抑えた状態で、固定突出部を傾斜部に当接させることが可能となり、固定部材の軽量化を図れ、より高精度な測定が可能となる。
【0020】
本発明のプローブにおいて、前記プローブ本体は、前記第1位置決め部に設けられ前記相対移動手段を制御する制御手段と電気的に接続された本体接続部を有し、前記センサモジュールは、前記摺接部側における前記本体接続部に当接可能な位置に設けられ前記力センサに電気的に接続されかつ前記本体接続部との当接時に前記本体接続部と電気的に接続されるモジュール接続部を有することが好ましい。
この発明によれば、プローブ本体に、第1位置決め部に設けられ制御手段と電気的に接続された本体接続部を設けている。さらに、センサモジュールの摺接部側に、本体接続部に当接可能かつ力センサに電気的に接続されたモジュール接続部を設けている。
このため、センサモジュールをプローブ本体に位置決め固定する際に、本体接続部およびモジュール接続部を当接させることにより、制御手段および力センサを各種信号の送受信が可能な状態にすることが可能となる。
したがって、センサモジュールの交換作業をさらに容易に実施可能となる。
【0021】
本発明のプローブにおいて、前記本体接続部は、前記第1位置決め部に交差する方向に進退可能に設けられ前記モジュール接続部に当接される進退当接部を有することが好ましい。
この発明によれば、本体接続部に、第1位置決め部に交差する方向に進退可能な進退当接部を設けている。
このため、本体接続部やモジュール接続部における互いに当接する部分の形状によらず、これらが当接する際の圧力を略均一にすることが可能となる。したがって、本体接続部やモジュール接続部を精密に設計あるいは形成する必要がなく、製造性を向上させることが可能となる。
【0022】
本発明のプローブにおいて、前記本体接続部は、前記モジュール接続部に当接される部分が球面状に形成されていることが好ましい。
この発明によれば、本体接続部のモジュール接続部に当接される部分を球面状に形成している。
このため、本体接続部およびモジュール接続部を点接触させることが可能となり、センサモジュールを第1位置決め部に摺接させつつ第2位置決め部の方向に移動させる際の摩擦抵抗を低減可能となる。
したがって、力センサをさらに容易に位置決め可能となる。
【0023】
本発明のプローブにおいて、前記センサモジュールは、前記モジュール接続部と電気的に接続され前記力センサ固有の特性に関する固有特性情報を読み出し可能に記憶する記憶部を有することが好ましい。
この発明によれば、センサモジュールに、モジュール接続部と電気的に接続され力センサ固有の特性に関する固有特性情報を読み出し可能に記憶する記憶部を設けている。
このため、センサモジュールをプローブ本体に位置決め固定する際に、制御手段に記憶部の固有特性情報を読み出させて認識させることにより、相対移動手段を力センサに対応する状態で制御させることが可能となる。
したがって、ゲイン調整や周波数調整などの力センサ固有の調整が容易になり、利用拡大を容易に図ることが可能となる。
【0024】
本発明の表面性状測定装置は、上述したようなプローブと、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記力センサからの検出信号が設定値に一致するように前記相対移動手段を駆動させながら、前記位置検出手段からの測定位置情報を取り込み、この測定位置情報からの被測定物の表面性状を測定する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明の表面性状測定装置は、上述したようなプローブと、前記記憶部から固有特性情報を読み出し、この固有特性情報に基づく前記力センサ固有の特性に対応する制御により前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記力センサからの検出信号が設定値に一致するように前記相対移動手段を駆動させながら、前記位置検出手段からの測定位置情報を取り込み、この測定位置情報からの被測定物の表面性状を測定する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
これらの発明によれば、上述したようなプローブと同様の作用効果を奏することが可能な表面性状測定装置を提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
〔接触式倣いプローブシステムの構成〕
まず、本発明の一実施形態に係る表面性状測定装置としての接触式倣いプローブシステムの構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る接触式倣いプローブシステムの概略構成を示す模式図である。図2は、プローブの構成を示す斜視図である。図3は、被測定物表面を倣い走査する様子を示す概念図である。図4は、本体固定部およびセンサモジュールの構成を示す斜視図である。図5は、本体固定部およびセンサモジュールの要部の概略構成を示す断面図である。図6は、本体コネクタ部の構成を示す正面図である。図7は、図6のVII−VII線における断面図である。図8は、本体側基板およびコネクタ側基板が電気的に接続された状態を示す断面図である。図9は、センサモジュールの構成を示す背面斜視図である。
【0029】
接触式倣いプローブシステム10は、図1に示すように、プローブ20と、このプローブ20を制御する制御手段としてのコントローラ30とから構成されている。
【0030】
プローブ20は、図1および図2に示すように、略長方形箱状のケース体21と、固定部材としてのモジュール固定ねじ100と、プローブ本体200と、力センサ1を有しモジュール固定ねじ100によりプローブ本体200に着脱自在に位置決め固定されるセンサモジュール300と、プローブ本体200を保持し力センサ1を被測定物に対して進退させる相対移動手段としての駆動アクチュエータ22と、プローブ本体200に取り付けられたスケール23と、このスケール23に基づき駆動アクチュエータ22による力センサ1の変位量(つまり、力センサ1による被測定物の測定位置情報)を検出する位置検出手段としてのスケール検出器24とから構成されている。
プローブ本体200は、一部がケース体21の内部に収容される状態で設けられている。
駆動アクチュエータ22と、スケール23と、スケール検出器24と、は、ケース体21の内部に収容されている。
なお、モジュール固定ねじ100、プローブ本体200、および、センサモジュール300の詳細な構成については、後述する。
【0031】
コントローラ30は、力センサ1を振動させるために力センサ1に加振信号を与える発振器31と、力センサ1からの検出信号をアナログからデジタルに変換するA/D変換回路32と、スケール検出器24からの信号をカウントし力センサ1の測定位置情報を位置測定値として出力するカウンタ33と、A/D変換回路32からの出力(力フィードバック信号)と目標測定力との偏差を演算する演算器34と、この演算器34からの出力を入力とした力制御補償器35と、カウンタ33からの位置信号を微分して速度信号に変換する時間微分回路36と、この時間微分回路36からの出力とスイッチ37を介して取り込んだ力制御補償器35からの出力との偏差を求める演算器38と、この演算器38からの出力を入力とした速度補償器39と、この速度補償器39からの出力を基に駆動アクチュエータ22を駆動させる駆動アンプ40と、カウンタ33の測定値(位置情報)と目標位置との偏差を演算する演算器41と、この演算器41からの出力を入力とし出力をスイッチ37を通じて演算器38へ与える位置制御補償器42とから構成されている。
【0032】
このような接触式倣いプローブシステム10において、力一定倣い測定を実施する場合、図3に示すように、位置決め制御によりプローブ20を被測定物Wにアプローチし、プローブ20が被測定物Wに接触したら、力一定倣い制御に切り替える。そして、プローブ20または被測定物Wを駆動して、力一定倣い制御状態で被測定物Wの表面を走査する。この走査の間、形状測定位置として、プローブ20の位置または被測定物Wの位置を読み取る。
このような制御により、図3に示すように、測定力一定で被測定物の形状を倣うことが可能となる。
【0033】
次に、モジュール固定ねじ100、プローブ本体200、および、センサモジュール300の詳細な構成について説明する。
【0034】
モジュール固定ねじ100は、図2、図4、および、図5に示すように、棒状部としての雄ねじ部110と、この雄ねじ部110の一端に設けられ雄ねじ部110よりも径寸法が大きい円柱状の固定突出部としてのねじ摺接部120と、このねじ摺接部120の一端に設けられねじ摺接部120よりも径寸法が大きい円柱状のつまみ部130と構成されている。すなわち、ねじ摺接部120の外周面近傍部分は、雄ねじ部110の側面から突出し、かつ、外周方向に沿って一連に設けられている。
【0035】
プローブ本体200は、図1、図2、および、図4に示すように、略柱状に形成され一端側が駆動アクチュエータ22により保持される本体被保持部210と、この本体被保持部210の他端に設けられセンサモジュール300が着脱自在に位置決め固定される本体固定部220とから構成されている。
【0036】
本体固定部220は、略四角筒状の取付上部230と、この取付上部230の一方の開口側に一体的に設けられた断面コ字状の取付下部240と、取付上部230の取付下部240側の開口を閉塞する状態で設けられた第2位置決め部としての中間閉塞部250(図5参照)と、取付下部240および中間閉塞部250で形成された空間に嵌合された長方形ブロック状の本体コネクタ部260とから構成されている。
【0037】
取付上部230の取付下部240が設けられていない側の開口には、本体被保持部210の図示しない接続部が嵌合固定される。
【0038】
中間閉塞部250は、図5に示すように、平面状の立設平面部としての閉塞平面部251を有している。そして、中間閉塞部250は、閉塞平面部251が本体コネクタ部260のコネクタ正面部261Aとのなす角度が略90°となる状態で設けられている。
【0039】
本体コネクタ部260は、図4〜図8に示すように、長方形ブロック状のコネクタ基部261と、このコネクタ基部261に設けられたコネクタ円柱部262(図5では図示せず)と、このコネクタ円柱部262に設けられた本体接続部としてのコネクタピン部263(図5では図示せず)と、コネクタ基部261に設けられた本体側基板264とから構成されている。
【0040】
コネクタ基部261の長手方向一端側には、第1位置決め部としてのコネクタ正面部261Aおよびコネクタ背面部261Bを貫通する円形状のコネクタ嵌合孔部261Cが設けられている。また、コネクタ基部261の長手方向他端側には、モジュール固定ねじ100の雄ねじ部110が螺着される係止孔部としての雌ねじ部261Dが設けられている。この雌ねじ部261Dは、図5に示すように、直径寸法がR1、かつ、閉塞平面部251側の端部から閉塞平面部251までの距離がL1となる状態に形成されている。
【0041】
コネクタ円柱部262は、円柱状に形成され、コネクタ嵌合孔部261Cに嵌合固定されている。このコネクタ円柱部262には、平行な2平面を貫通する状態で設けられた6個のピン嵌合孔262Aが設けられている。これらピン嵌合孔262Aは、コネクタ円柱部262の円周方向に沿って略等間隔で設けられている。
【0042】
コネクタピン部263は、ピン嵌合孔262Aに嵌合固定される円筒状のピン基部263Aと、このピン基部263Aの一端に設けられピン基部263Aの軸方向に進退可能に設けられた進退当接部263Bと、ピン基部263Aの他端から突出するピン突出部263Cとから構成されている。
進退当接部263Bは、導電性を有する材料により、ピン基部263Aの一端側の開口を閉塞するドーム状に形成されている。
ピン突出部263Cは、導電性を有する材料により形成され、例えば導線などの図示しない導電部材により進退当接部263Bに電気的に接続されている。
【0043】
本体側基板264は、コネクタ嵌合孔部261Cを閉塞し、かつ、雌ねじ部261Dを閉塞しない状態で設けられている。この本体側基板264には、コネクタピン部263のピン突出部263Cおよびピン基部263Aの端部が嵌合固定される基板孔部264Aが設けられている。
この本体側基板264は、コネクタピン部263の進退当接部263Bおよびコントローラ30を電気的に接続する。
【0044】
センサモジュール300は、図2、図4、図5、および、図9に示すように、力センサ1が取り付けられるとともにモジュール固定ねじ100により本体コネクタ部260に固定されるモジュール基部310と、このモジュール基部310に設けられたモジュール接続部としてのコネクタ側基板350と、モジュール基部310に設けられたセンサ側基板360と、このセンサ側基板360に設けられた記憶部としてのICチップ370と、モジュール基部310の一部を覆う略円筒状の保護カバー380とから構成されている。
【0045】
モジュール基部310は、断面コ字状に形成されたモジュールコネクタ部320と、このモジュールコネクタ部320の一端側に設けられた半円筒状のセンサ取付部330と、このセンサ取付部330のモジュールコネクタ部320側の開口を閉塞するモジュール閉塞部340とから構成されている。
【0046】
モジュールコネクタ部320における他端側の端部、すなわちセンサ取付部330が設けられていない側の端部は、平面状に形成され、プローブ本体200への取付時に閉塞平面部251に押圧される押圧部321とされている。
また、モジュールコネクタ部320における断面コ字状の開口端に対応する部分は、この断面コ字状の開口面に平行な平面状に形成され、プローブ本体200への取付時にコネクタ正面部261Aに摺接される摺接部322とされている。
さらに、モジュールコネクタ部320における一端側には、断面コ字状の開口側と反対側に四角板状に膨出するねじ孔形成部323が設けられている。このねじ孔形成部323の膨出方向先端は、摺接部322と平行な平面状のねじ孔形成先端面部324とされている。そして、ねじ孔形成部323には、ねじ孔形成先端面部324から摺接部322側にかけて設けられ、モジュール固定ねじ100の雄ねじ部110が挿通される挿通孔部325が設けられている。
【0047】
この挿通孔部325は、摺接部322側から軸方向略中央にかけて同一の直径寸法に形成された直径同一部325Aと、軸方向略中央からねじ孔形成先端面部324にかけて拡開する形状に形成された傾斜部としての拡開部325Bと、を備えている。
直径同一部325Aは、直径寸法がR1よりも大きいR2に形成されている。また、直径同一部325Aは、中心軸C2が雌ねじ部261Dの中心軸C1に対して偏芯した状態で設けられ、押圧部321側の端部から押圧部321までの距離がL1となる形状に形成されている。
すなわち、挿通孔部325は、摺接部322と反対側の開口における押圧部321側が、摺接部322側に向かうにしたがって押圧部321から離れる状態に傾斜する形状に形成されている。また、挿通孔部325は、雄ねじ部110の太さよりも大きい直径寸法に形成されている。さらに、挿通孔部325は、拡開部325Bの摺接部322側の端部から押圧部321までの距離が、閉塞平面部251側の端部から閉塞平面部251までの距離と等しい形状に形成されている。
【0048】
センサ取付部330におけるモジュールコネクタ部320が設けられていない側の端部近傍には、図9に示すように、保護カバー380の図示しない孔部からスタイラス3が突出する状態で、力センサ1が取り付けられている。
【0049】
コネクタ側基板350には、モジュール固定ねじ100の雄ねじ部110が挿通される基板挿通孔351が設けられている。このコネクタ側基板350は、モジュールコネクタ部320における断面コ字状の内部空間に嵌合する状態で設けられている。そして、センサモジュール300のプローブ本体200への取付時に、図8に示すように、コネクタピン部263の進退当接部263Bをピン突出部263C側に移動させるとともに、進退当接部263Bを介して本体側基板264に電気的に接続される。
【0050】
センサ側基板360は、センサ取付部330における半円筒状の内部空間に嵌合する状態で設けられている。このセンサ側基板360は、コネクタ側基板350、ICチップ370、および、力センサ1に電気的に接続されている。このセンサ側基板360は、コネクタ側基板350、コネクタピン部263、および、本体側基板264を介して、ICチップ370および力センサ1と、コントローラ30とを電気的に接続する。
【0051】
ICチップ370には、力センサ1固有の特性、例えば補正値などの固有特性情報が記録されている。この固有特性情報は、コントローラ30により適宜読み出され、駆動アクチュエータ22の駆動制御に利用される。
【0052】
〔センサモジュールの交換動作〕
次に、センサモジュール300の交換動作について説明する。
【0053】
作業者は、例えば破損したセンサモジュール300をプローブ本体200から取り外す。そして、新たなセンサモジュール300を、図5に示すように、押圧部321が閉塞平面部251に対応する状態に位置させる。さらに、センサモジュール300をプローブ本体200側へ移動させ、摺接部322をコネクタ正面部261Aに当接させる。このとき、挿通孔部325における直径同一部325Aの押圧部321側の端部と、雌ねじ部261Dの閉塞平面部251側の端部と、が略同一線上に位置する。
【0054】
次に、モジュール固定ねじ100を挿通孔部325に挿通させ、雄ねじ部110を雌ねじ部261Dに螺着させる。そして、モジュール固定ねじ100をさらに回転させて、ねじ摺接部120を拡開部325Bの接触点Gに接触させる。
この後、モジュール固定ねじ100をさらに回転させて、ねじ摺接部120で拡開部325Bを押圧させることにより、センサモジュール300をコネクタ正面部261Aに摺接させつつ、押圧部321に閉塞平面部251を押圧させる。これにより、センサモジュール300は、コネクタ正面部261Aの面方向に対して位置決めされる。
また、ねじ摺接部120により拡開部325Bをコネクタ正面部261Aの方向に押圧させることにより、センサモジュール300は、コネクタ正面部261Aの面方向と直交する方向に対して位置決めされる。
【0055】
さらに、センサモジュール300がプローブ本体200に位置決め固定されると、図8に示すように、コネクタ側基板350により進退当接部263Bが押圧され、ICチップ370および力センサ1と、コントローラ30とが電気的に接続される。
これにより、センサモジュール300の交換動作が終了する。
【0056】
〔実施形態の作用効果〕
上述した実施形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
【0057】
(1)プローブ20のモジュール固定ねじ100に、雄ねじ部110と、この雄ねじ部110に設けられたねじ摺接部120と、を設けている。また、駆動アクチュエータ22に保持されるプローブ本体200に、コネクタ正面部261Aと、このコネクタ正面部261Aに立設された中間閉塞部250と、コネクタ正面部261Aに設けられた雌ねじ部261Dと、を設けている。さらに、力センサ1が取り付けられるセンサモジュール300に、コネクタ正面部261Aに摺接される摺接部322と、中間閉塞部250に押圧される押圧部321と、摺接部322側からねじ孔形成先端面部324側までを連通する挿通孔部325と、を設けている。また、挿通孔部325に、ねじ孔形成先端面部324側の開口における押圧部321側が、摺接部322側に向かうにしたがって押圧部321から離れる状態に傾斜する拡開部325Bを設けている。そして、挿通孔部325を、雄ねじ部110の太さよりも大きい孔幅に形成している。
このため、以下のようにして、プローブ本体200にセンサモジュール300を位置決め固定することができる。
すなわち、センサモジュール300を、摺接部322がコネクタ正面部261Aに対向し、かつ、押圧部321が閉塞平面部251に対向する状態に位置させる。そして、拡開部325Bにねじ摺接部120を摺接させつつ、モジュール固定ねじ100を挿通孔部325に挿通させて、雄ねじ部110を雌ねじ部261Dに螺着させることにより、プローブ本体200にセンサモジュール300を位置決め固定することができる。
このとき、ねじ摺接部120を連続的に拡開部325Bに当接させつつ挿通孔部325の軸方向に移動させることにより、センサモジュール300をコネクタ正面部261Aに摺接させつつ、押圧部321に中間閉塞部250を押圧させることができる。したがって、コネクタ正面部261Aの面方向に対して、センサモジュール300を再現性よく位置決めすることができる。
また、ねじ摺接部120により拡開部325Bをコネクタ正面部261Aの方向に押圧した状態で、雄ねじ部110を雌ねじ部261Dに螺着させることができる。したがって、コネクタ正面部261Aの面方向と略直交する方向に対して、センサモジュール300を再現性よく位置決めすることができる。
さらに、センサモジュール300をプローブ本体200に位置決めするために、モジュール固定ねじ100のみを用いるだけでよく、構成が簡単になり位置決めする際の作業効率をあげることができる。
よって、簡単な構成で容易にかつより再現性よく力センサ1を位置決めできる。
【0058】
(2)本発明の力センサとして、スタイラス3と、加振素子4と、検出素子5とから構成される加振型力センサ1を適用している。
このため、小さい測定力で高精度な測定が可能な加振型力センサ1の位置決めを、簡単な構成で容易にかつより再現性よく実施でき、より高精度な測定が可能なプローブ20を提供できる。
【0059】
(3)本発明の係止孔部として雌ねじ部261Dを適用するとともに、棒状部として雄ねじ部110を適用している。
このため、雄ねじ部110を雌ねじ部261Dに螺着するだけの簡単な構成で、プローブ本体200にセンサモジュール300を位置決め固定することができ、より容易に力センサ1を位置決めできる。
【0060】
(4)ねじ摺接部120を、雄ねじ部110の外周方向に沿って一連に設けている。
このため、雄ねじ部110を螺着させる際にねじ摺接部120を拡開部325Bに常時当接させることができ、さらに容易に力センサ1を位置決め可能となる。
【0061】
(5)挿通孔部325を、拡開部325Bの摺接部322側の端部から押圧部321までの距離が、雌ねじ部261Dの中間閉塞部250側の端部から中間閉塞部250までの距離と略等しくなる形状に形成している。
このため、押圧部321に中間閉塞部250を押圧させた際に、拡開部325Bの摺接部322側の端部と、雌ねじ部261Dの中間閉塞部250側の端部と、を略同一線上に位置させることができ、雄ねじ部110を拡開部325Bの摺接部322側の端部に略当接させた状態で、雌ねじ部261Dに係止させることができる。したがって、ねじ摺接部120の雄ねじ部110からの突出量を最小限に抑えた状態で、ねじ摺接部120を拡開部325Bに当接させることができ、モジュール固定ねじ100の軽量化を図れ、より高精度に測定できる。
【0062】
(6)プローブ本体200のコネクタ正面部261Aに、コントローラ30と電気的に接続されたコネクタピン部263を設けている。さらに、センサモジュール300の摺接部322側に、コネクタピン部263に当接可能かつ力センサ1に電気的に接続されたコネクタ側基板350を設けている。
このため、センサモジュール300をプローブ本体200に位置決め固定する際に、コネクタピン部263およびコネクタ側基板350を当接させることにより、コントローラ30および力センサ1を各種信号の送受信が可能な状態にすることができる。
したがって、センサモジュール300の交換作業をさらに容易に実施できる。
【0063】
(7)コネクタピン部263に、コネクタ正面部261Aに直交する方向に進退可能な進退当接部263Bを設けている。
このため、コネクタピン部263やコネクタ側基板350における互いに当接する部分の形状によらず、これらが当接する際の圧力を略均一にすることができる。したがって、コネクタピン部263やコネクタ側基板350を精密に設計あるいは形成する必要がなく、製造性を向上させることができる。
【0064】
(8)進退当接部263Bをドーム状に形成し、コネクタ側基板350に当接される部分を球面状にしている。
このため、コネクタピン部263およびコネクタ側基板350を点接触させることができ、センサモジュール300をコネクタ正面部261Aに摺接させつつ中間閉塞部250の方向に移動させる際の摩擦抵抗を低減できる。
したがって、力センサ1をさらに容易に位置決めできる。
【0065】
(9)センサモジュール300に、コネクタ側基板350と電気的に接続され力センサ1固有の特性に関する固有特性情報を読み出し可能に記憶するICチップ370を設けている。
このため、センサモジュール300をプローブ本体200に位置決め固定する際に、コントローラ30にICチップ370の固有特性情報を読み出させて認識させることにより、駆動アクチュエータ22を力センサ1に対応する状態で制御させることができる。
したがって、ゲイン調整や周波数調整などの力センサ1固有の調整を容易にでき、利用拡大を容易に図ることができる。
【0066】
(10)接触式倣いプローブシステム10を、上述したようなプローブ20と、ICチップ370からの固有特性情報を取り込み、この固有特性情報に基づく力センサ1固有の特性に対応する制御によりスタイラス3の接触部を被測定物表面に接触させ、力センサ1からの検出信号が設定値に一致するように駆動アクチュエータ22を駆動させながら、スケール検出器24からの測定位置情報を取り込み、この測定位置情報からの被測定物の表面性状を測定するコントローラ30と、を備えた構成としている。
このため、上述した(1)〜(9)の作用効果を奏することが可能な接触式倣いプローブシステム10を提供できる。
【0067】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
【0068】
すなわち、力センサ1を、力センサ1のベース2とスタイラス3とを一体的に構成したが、これに限らず、別体であってもよい。つまり、ベース2とスタイラス3とを別体として構成し、ベース2に対してスタイラス3を接着固定するようにしてもよい。またスタイラス3を軸方向へ振動させるようにしたが、これに限らず、スタイラス3の軸に対して交差する方向に振動させるようにしてもよい。
また、加振型力センサ1を用いたが、これに限らず、被測定物との接触時に発生する測定力を検出し力検出信号として出力できる構造であれば、他のセンサであってもよい。
【0069】
そして、本発明の棒状部として、一端が弾性変形可能に形成されるとともに一端の側面から突出する突起部を設けた棒状部材を用い、係止孔部として、棒状部材が挿通されるとともに突起部が係合される係止部を設けた構成を適用してもよい。さらに、本発明の棒状部として、円柱状あるいは四角柱状の棒状部材を用い、係止孔部として、棒状部材が挿通されるとともにこの棒状部材を例えば弾性により締め付けることにより係止する構成を適用してもよい。
【0070】
また、ねじ摺接部120を、雄ねじ部110の外周方向に沿って断続的に、あるいは、外周の一部のみに設ける構成としてもよい。
【0071】
そして、雌ねじ部261Dの中心軸C1と、挿通孔部325の中心軸C2と、を一致させる構成、すなわち雌ねじ部261Dの中間閉塞部250側の端部から中間閉塞部250までの距離が、拡開部325Bの摺接部322側の端部から押圧部321までの距離よりも長くなる構成としてもよい。
【0072】
さらに、プローブ本体200にコネクタピン部263を設けないとともに、センサモジュール300にコネクタ側基板350を設けない構成として、コントローラ30および力センサ1を導線などの導通部材で接続する構成としてもよい。
【0073】
また、コネクタピン部263に進退当接部263Bを設けずに、ピン基部263Aの先端をコネクタ側基板350に当接させる構成としてもよい。
【0074】
そして、進退当接部263Bをドーム状に形成せずに、一面が閉口された筒状に形成する構成としてもよい。
【0075】
さらに、センサモジュール300に、ICチップ370を設けずに、力センサ1固有の特性に関する固有特性情報をコントローラ30に別途読み出させる構成としてもよい。例えば、固有特性情報が記録された光ディスクや磁気ディスクなどの記録媒体を読み出すドライブや、キーボードなどの固有特性情報を入力設定可能な入力手段を設ける構成としてもよい。
【0076】
そして、挿通孔部325における押圧部321側のみに拡開部325Bを設け、それ以外の部分を摺接部322側にしたがって押圧部321から離れる状態に傾斜させない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、被測定物の表面粗さを測定する表面粗さ測定機、形状測定機、輪郭測定機、真円度測定機、三次元測定機などに適用可能である。特に、微細形状の測定に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る接触式倣いプローブシステムの概略構成を示す模式図である。
【図2】前記一実施形態におけるプローブの構成を示す斜視図である。
【図3】前記一実施形態における被測定物表面を倣い走査する様子を示す概念図である。
【図4】前記一実施形態における本体固定部およびセンサモジュールの構成を示す斜視図である。
【図5】前記一実施形態における本体固定部およびセンサモジュールの要部の概略構成を示す断面図である。
【図6】前記一実施形態における本体コネクタ部の構成を示す正面図である。
【図7】前記一実施形態における図6のVII−VII線における断面図である。
【図8】前記一実施形態における本体側基板およびコネクタ側基板が電気的に接続された状態を示す断面図である。
【図9】前記一実施形態におけるセンサモジュールの構成を示す背面斜視図である。
【図10】力センサの構成を示す分解斜視図である。
【図11】力センサに与える加振信号と検出信号を示す図である。
【図12】力センサが被測定物と接触した際の検出信号の変化を示す図である。
【図13】力センサの検出信号の減衰率と測定力との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1…加振型力センサ
3…スタイラス
4…加振素子
5…検出素子
10…表面性状測定装置としての接触式倣いプローブシステム
20…プローブ
22…相対移動手段としての駆動アクチュエータ
24…位置検出手段としてのスケール検出器
30…制御手段としてのコントローラ
100…固定部材としてのモジュール固定ねじ
110…棒状部としての雄ねじ部
120…固定突出部としてのねじ摺接部
200…プローブ本体
250…第2位置決め部としての中間閉塞部
261A…第1位置決め部としてのコネクタ正面部
261D…係止孔部としての雌ねじ部
263…本体接続部としてのコネクタピン部
263B…進退当接部
300…センサモジュール
321…押圧部
322…摺接部
325…挿通孔部
325B…傾斜部としての拡開部
350…モジュール接続部としてのコネクタ側基板
370…記憶部としてのICチップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ、および、表面性状測定装置に関する。例えば、加振型センサにより被測定物の形状や表面粗さなどの表面性状の測定に用いられるプローブ、および、表面性状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面を走査して被測定物の形状や表面粗さなど表面性状を測定する表面性状測定装置として、粗さ測定機、輪郭測定機、真円度測定機、三次元測定機などが知られている。
このような測定機において、接触部が被測定物の表面に接触した微小変位に基づいて被測定物表面を検出するセンサとして、例えば図10に示すような加振型力センサ(以下、力センサと適宜称す)1が利用されている。
【0003】
この図10に示す力センサ1は、金属製のベース2と、このベース2と一体的に形成されたスタイラス3と、このスタイラス3を振動(軸方向へ振動)させる加振素子4と、スタイラス3の振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子5とから構成されている。スタイラス3の先端には、ダイヤモンドチップやルビーなどで構成された接触部としての触針6が接着固定されている。加振素子4および検出素子5は、1枚の圧電素子によって構成され、ベース2の表裏にそれぞれ1枚ずつ接着固定されている。
【0004】
いま、図11に示すように、力センサ1の加振素子4に対して、特定の周波数と振幅をもつ加振信号Pi(電圧信号)を与えると、検出素子5では、特定の周波数と振幅の検出信号Qo(電圧信号)が得られる。
被測定物Wとの接触に伴う検出信号Qoの振幅変化を図12に示す。スタイラス3が被測定物Wと非接触状態にあるとき、スタイラス3の共振周波数で一定の振幅をもつ加振信号Piを加振素子4に加えると、スタイラス3が共振し、検出素子5に振幅Aoの検出信号Qoが得られる。スタイラス3が被測定物Wに接触すると、検出信号Qoの振幅がAoからAxに減衰する。
【0005】
この減衰率k(Ax/Ao)と測定力との間には、図13に示す関係がある。
ここで、スタイラス3(力センサ1)が被測定物Wに接触したときの検出信号Qoが非接触時の90%に減衰している場合(減衰率k=0.9の状態)を例にとる。図13の関係より、この接触状態における測定力は135[μN]であることがわかる。
従って、力センサ1を被測定物Wに接触させる際、減衰率kが常に一定となるように、駆動アクチュエータなどを用いて力センサ1と被測定物Wとの距離を制御すれば、測定力一定状態で被測定物Wの形状や粗さを測定することができる。
【0006】
このような力センサ1を有するプローブが設けられた表面形状測定装置では、スタイラス3が性能不良、もしくは、破損した場合、正常な動作をする力センサ1と交換する必要がある。このような場合、力センサ1単体を交換する方法が考えられる。
しかし、力センサ1単体を交換する場合、位置決めが困難となる。交換後の力センサ1の触針6の位置が、交換前の触針6の位置からずれると、測定精度に大きく影響を及ぼすおそれがある。
このため、プローブに対して再現性よく位置決め可能な構成が望まれている。
【0007】
一方、複数の部材を再現性よく位置決め可能な構成として、いわゆるピンロック方式を用いる構成が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0008】
特許文献1に記載のものは、チップ取付孔には、クランクピンの軸芯から偏心した軸芯を有する偏芯ピンが挿通されている。
そして、クランクピンを廻動させて、チップを側方壁面に当接させて固定する構成が採られている。
【0009】
特許文献2に記載のものは、ホルダの先端部位にインサートを載置するインサート座部が凹設されているとともに、このインサート座部に貫通してポケットが凹設されている。さらに、ピン部材のピンの根本部分にテーパー面が設けられているとともに、インサートの中央孔にピンと係合する部位に湾曲凸面が形成されている。
そして、固定ボルトによりポケットにピン部材を嵌合固定し、ピンでもってインサートの中央孔の孔壁を押圧して、インサートをインサート座部に固定する構成が採られている。
【0010】
【特許文献1】特開平10−217004号公報
【特許文献2】特開平10−100006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のような構成では、偏芯ピンによりチップを側方壁面のみに当接させる構成のため、チップが偏芯ピンの軸方向に位置ずれしてしまうおそれがある。
また、特許文献2のような構成では、インサートを固定するために、2つの部材、すなわち固定ボルトおよびピン部材が必要であり、構成が複雑になるとともに固定する際の作業効率が悪くなるおそれがある。
【0012】
本発明の目的は、簡単な構成で容易にかつより再現性よく力センサを位置決め可能なプローブ、および、表面性状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のプローブは、被測定物との接触時に発生する測定力を検出し力検出信号として出力する力センサと、この力センサによる被測定物の測定位置を検出し測定位置情報として出力する位置検出手段と、前記力センサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、を備えたプローブであって、前記相対移動手段に保持されるプローブ本体と、前記力センサが取り付けられるセンサモジュールと、前記センサモジュールに挿通されるとともに前記プローブ本体に挿入され前記センサモジュールを前記プローブ本体に着脱自在に位置決め固定する固定部材と、を備え、前記プローブ本体は、略平面状の第1位置決め部と、この第1位置決め部に立設された第2位置決め部と、前記第1位置決め部に設けられ前記固定部材が挿入されて着脱可能に係止される係止孔部と、を備え、前記センサモジュールは、前記第1位置決め部に摺接される摺接部と、前記第2位置決め部に押圧される押圧部と、前記摺接部側から前記摺接部と対向する側まで連通し前記固定部材が挿通される挿通孔部と、を備え、前記固定部材は、棒状に形成され前記挿通孔部に挿通されるとともに一端側が前記係止孔部に係止される棒状部と、この棒状部の他端側の側面から突出する固定突出部と、を備え、前記挿通孔部は、前記摺接部と対向する側の開口における前記押圧部側が前記摺接部側に向かうにしたがって前記押圧部から離れる状態に傾斜し前記固定突出部が当接可能な傾斜部を有するとともに、前記棒状部の太さより大きい孔幅に形成されたことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、固定部材に、棒状部と、固定突出部と、を設けている。また、相対移動手段に保持されるプローブ本体に、第1位置決め部と、この第1位置決め部に立設された第2位置決め部と、第1位置決め部に設けられた係止孔部と、を設けている。さらに、力センサが取り付けられるセンサモジュールに、第1位置決め部に摺接される摺接部と、第2位置決め部に押圧される押圧部と、摺接部側から摺接部と対向する側まで連通する挿通孔部と、を設けている。また、挿通孔部に、摺接部と対向する側の開口における押圧部側が摺接部側に向かうにしたがって押圧部から離れる状態に傾斜する傾斜部を設けている。そして、挿通孔部を、棒状部の太さよりも大きい孔幅に形成している。
【0015】
このため、以下のようにして、プローブ本体にセンサモジュールを位置決め固定することが可能となる。
すなわち、センサモジュールを、摺接部が第1位置決め部に対向し、かつ、押圧部が第2位置決め部に対向する状態に位置させる。そして、挿通孔部の傾斜部に固定突出部を摺接させつつ、固定部材を挿通孔部に挿通させて、棒状部をプローブ本体の係止孔部に係止させることにより、プローブ本体にセンサモジュールを位置決め固定することが可能となる。
このとき、固定突出部を連続的にあるいは断続的に傾斜部に当接させつつ傾斜部の傾斜方向と交差する方向に移動させることにより、センサモジュールを第1位置決め部に摺接させつつ、押圧部に第2位置決め部を押圧させることが可能となる。したがって、第1位置決め部の面方向に対して、センサモジュールを再現性よく位置決めすることが可能となる。
また、固定突出部により傾斜部を第1位置決め部の方向に押圧した状態で、棒状部を係止孔部に係止させることが可能となる。したがって、第1位置決め部の面方向と略直交する方向に対して、センサモジュールを再現性よく位置決めすることが可能となる。
さらに、センサモジュールをプローブ本体に位置決め固定するために、固定部材のみを用いるだけでよく、構成が簡単になり位置決めする際の作業効率をあげることが可能となる。
よって、簡単な構成で容易にかつより再現性よく力センサを位置決め可能となる。
【0016】
本発明のプローブにおいて、前記力センサは、先端に接触部を有するスタイラスと、このスタイラスを振動させる加振素子と、前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子と、を備えたことが好ましい。
この発明によれば、力センサを、スタイラスと、加振素子と、検出素子とで構成している。
このため、小さい測定力で高精度な測定が可能ないわゆる加振型力センサの位置決めを、簡単な構成で容易にかつより再現性よく実施可能となり、より高精度な測定が可能なプローブを提供可能となる。
【0017】
本発明のプローブにおいて、前記係止孔部は、雌ねじ部であり、前記棒状部は、雄ねじ部であることが好ましい。
この発明によれば、係止孔部として雌ねじ部を適用するとともに、棒状部として雄ねじ部を適用している。
このため、棒状部を係止孔部に螺着するだけの簡単な構成で、プローブ本体にセンサモジュールを位置決め固定することが可能となり、より容易に力センサを位置決め可能となる。
【0018】
本発明のプローブにおいて、前記固定突出部は、前記棒状部の外周方向に沿って一連に設けられたことが好ましい。
この発明によれば、固定突出部を、棒状部の外周方向に沿って一連に設けている。
このため、固定部材をセンサモジュールに挿通させる際に、固定突出部の位置を意識することなく固定突出部を傾斜部に常時当接させることが可能となり、さらに容易に力センサを位置決め可能となる。
特に、棒状部として雄ねじ部を、係止孔部として雌ねじ部を適用した構成の場合、棒状部を螺着させる際に固定突出部を傾斜部に常時当接させることが可能となり、さらに容易に力センサを位置決め可能となる。
【0019】
本発明のプローブにおいて、前記挿通孔部は、前記傾斜部の前記摺接部側の端部から前記押圧部までの距離が、前記係止孔部の第2位置決め部側の端部から前記第2位置決め部までの距離と略等しくなる形状に形成されたことが好ましい。
この発明によれば、挿通孔部を、傾斜部の摺接部側の端部から押圧部までの距離が、係止孔部の第2位置決め部側の端部から第2位置決め部までの距離と略等しくなる形状に形成している。
このため、押圧部に第2位置決め部を押圧させた際に、傾斜部の摺接部側の端部と、係止孔部の第2位置決め部側の端部と、を略同一線上に位置させることが可能となり、棒状部を傾斜部の摺接部側の端部に略当接させた状態で、係止孔部に係止させることが可能となる。したがって、固定突出部の側面からの突出量を最小限に抑えた状態で、固定突出部を傾斜部に当接させることが可能となり、固定部材の軽量化を図れ、より高精度な測定が可能となる。
【0020】
本発明のプローブにおいて、前記プローブ本体は、前記第1位置決め部に設けられ前記相対移動手段を制御する制御手段と電気的に接続された本体接続部を有し、前記センサモジュールは、前記摺接部側における前記本体接続部に当接可能な位置に設けられ前記力センサに電気的に接続されかつ前記本体接続部との当接時に前記本体接続部と電気的に接続されるモジュール接続部を有することが好ましい。
この発明によれば、プローブ本体に、第1位置決め部に設けられ制御手段と電気的に接続された本体接続部を設けている。さらに、センサモジュールの摺接部側に、本体接続部に当接可能かつ力センサに電気的に接続されたモジュール接続部を設けている。
このため、センサモジュールをプローブ本体に位置決め固定する際に、本体接続部およびモジュール接続部を当接させることにより、制御手段および力センサを各種信号の送受信が可能な状態にすることが可能となる。
したがって、センサモジュールの交換作業をさらに容易に実施可能となる。
【0021】
本発明のプローブにおいて、前記本体接続部は、前記第1位置決め部に交差する方向に進退可能に設けられ前記モジュール接続部に当接される進退当接部を有することが好ましい。
この発明によれば、本体接続部に、第1位置決め部に交差する方向に進退可能な進退当接部を設けている。
このため、本体接続部やモジュール接続部における互いに当接する部分の形状によらず、これらが当接する際の圧力を略均一にすることが可能となる。したがって、本体接続部やモジュール接続部を精密に設計あるいは形成する必要がなく、製造性を向上させることが可能となる。
【0022】
本発明のプローブにおいて、前記本体接続部は、前記モジュール接続部に当接される部分が球面状に形成されていることが好ましい。
この発明によれば、本体接続部のモジュール接続部に当接される部分を球面状に形成している。
このため、本体接続部およびモジュール接続部を点接触させることが可能となり、センサモジュールを第1位置決め部に摺接させつつ第2位置決め部の方向に移動させる際の摩擦抵抗を低減可能となる。
したがって、力センサをさらに容易に位置決め可能となる。
【0023】
本発明のプローブにおいて、前記センサモジュールは、前記モジュール接続部と電気的に接続され前記力センサ固有の特性に関する固有特性情報を読み出し可能に記憶する記憶部を有することが好ましい。
この発明によれば、センサモジュールに、モジュール接続部と電気的に接続され力センサ固有の特性に関する固有特性情報を読み出し可能に記憶する記憶部を設けている。
このため、センサモジュールをプローブ本体に位置決め固定する際に、制御手段に記憶部の固有特性情報を読み出させて認識させることにより、相対移動手段を力センサに対応する状態で制御させることが可能となる。
したがって、ゲイン調整や周波数調整などの力センサ固有の調整が容易になり、利用拡大を容易に図ることが可能となる。
【0024】
本発明の表面性状測定装置は、上述したようなプローブと、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記力センサからの検出信号が設定値に一致するように前記相対移動手段を駆動させながら、前記位置検出手段からの測定位置情報を取り込み、この測定位置情報からの被測定物の表面性状を測定する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明の表面性状測定装置は、上述したようなプローブと、前記記憶部から固有特性情報を読み出し、この固有特性情報に基づく前記力センサ固有の特性に対応する制御により前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記力センサからの検出信号が設定値に一致するように前記相対移動手段を駆動させながら、前記位置検出手段からの測定位置情報を取り込み、この測定位置情報からの被測定物の表面性状を測定する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
これらの発明によれば、上述したようなプローブと同様の作用効果を奏することが可能な表面性状測定装置を提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
〔接触式倣いプローブシステムの構成〕
まず、本発明の一実施形態に係る表面性状測定装置としての接触式倣いプローブシステムの構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る接触式倣いプローブシステムの概略構成を示す模式図である。図2は、プローブの構成を示す斜視図である。図3は、被測定物表面を倣い走査する様子を示す概念図である。図4は、本体固定部およびセンサモジュールの構成を示す斜視図である。図5は、本体固定部およびセンサモジュールの要部の概略構成を示す断面図である。図6は、本体コネクタ部の構成を示す正面図である。図7は、図6のVII−VII線における断面図である。図8は、本体側基板およびコネクタ側基板が電気的に接続された状態を示す断面図である。図9は、センサモジュールの構成を示す背面斜視図である。
【0029】
接触式倣いプローブシステム10は、図1に示すように、プローブ20と、このプローブ20を制御する制御手段としてのコントローラ30とから構成されている。
【0030】
プローブ20は、図1および図2に示すように、略長方形箱状のケース体21と、固定部材としてのモジュール固定ねじ100と、プローブ本体200と、力センサ1を有しモジュール固定ねじ100によりプローブ本体200に着脱自在に位置決め固定されるセンサモジュール300と、プローブ本体200を保持し力センサ1を被測定物に対して進退させる相対移動手段としての駆動アクチュエータ22と、プローブ本体200に取り付けられたスケール23と、このスケール23に基づき駆動アクチュエータ22による力センサ1の変位量(つまり、力センサ1による被測定物の測定位置情報)を検出する位置検出手段としてのスケール検出器24とから構成されている。
プローブ本体200は、一部がケース体21の内部に収容される状態で設けられている。
駆動アクチュエータ22と、スケール23と、スケール検出器24と、は、ケース体21の内部に収容されている。
なお、モジュール固定ねじ100、プローブ本体200、および、センサモジュール300の詳細な構成については、後述する。
【0031】
コントローラ30は、力センサ1を振動させるために力センサ1に加振信号を与える発振器31と、力センサ1からの検出信号をアナログからデジタルに変換するA/D変換回路32と、スケール検出器24からの信号をカウントし力センサ1の測定位置情報を位置測定値として出力するカウンタ33と、A/D変換回路32からの出力(力フィードバック信号)と目標測定力との偏差を演算する演算器34と、この演算器34からの出力を入力とした力制御補償器35と、カウンタ33からの位置信号を微分して速度信号に変換する時間微分回路36と、この時間微分回路36からの出力とスイッチ37を介して取り込んだ力制御補償器35からの出力との偏差を求める演算器38と、この演算器38からの出力を入力とした速度補償器39と、この速度補償器39からの出力を基に駆動アクチュエータ22を駆動させる駆動アンプ40と、カウンタ33の測定値(位置情報)と目標位置との偏差を演算する演算器41と、この演算器41からの出力を入力とし出力をスイッチ37を通じて演算器38へ与える位置制御補償器42とから構成されている。
【0032】
このような接触式倣いプローブシステム10において、力一定倣い測定を実施する場合、図3に示すように、位置決め制御によりプローブ20を被測定物Wにアプローチし、プローブ20が被測定物Wに接触したら、力一定倣い制御に切り替える。そして、プローブ20または被測定物Wを駆動して、力一定倣い制御状態で被測定物Wの表面を走査する。この走査の間、形状測定位置として、プローブ20の位置または被測定物Wの位置を読み取る。
このような制御により、図3に示すように、測定力一定で被測定物の形状を倣うことが可能となる。
【0033】
次に、モジュール固定ねじ100、プローブ本体200、および、センサモジュール300の詳細な構成について説明する。
【0034】
モジュール固定ねじ100は、図2、図4、および、図5に示すように、棒状部としての雄ねじ部110と、この雄ねじ部110の一端に設けられ雄ねじ部110よりも径寸法が大きい円柱状の固定突出部としてのねじ摺接部120と、このねじ摺接部120の一端に設けられねじ摺接部120よりも径寸法が大きい円柱状のつまみ部130と構成されている。すなわち、ねじ摺接部120の外周面近傍部分は、雄ねじ部110の側面から突出し、かつ、外周方向に沿って一連に設けられている。
【0035】
プローブ本体200は、図1、図2、および、図4に示すように、略柱状に形成され一端側が駆動アクチュエータ22により保持される本体被保持部210と、この本体被保持部210の他端に設けられセンサモジュール300が着脱自在に位置決め固定される本体固定部220とから構成されている。
【0036】
本体固定部220は、略四角筒状の取付上部230と、この取付上部230の一方の開口側に一体的に設けられた断面コ字状の取付下部240と、取付上部230の取付下部240側の開口を閉塞する状態で設けられた第2位置決め部としての中間閉塞部250(図5参照)と、取付下部240および中間閉塞部250で形成された空間に嵌合された長方形ブロック状の本体コネクタ部260とから構成されている。
【0037】
取付上部230の取付下部240が設けられていない側の開口には、本体被保持部210の図示しない接続部が嵌合固定される。
【0038】
中間閉塞部250は、図5に示すように、平面状の立設平面部としての閉塞平面部251を有している。そして、中間閉塞部250は、閉塞平面部251が本体コネクタ部260のコネクタ正面部261Aとのなす角度が略90°となる状態で設けられている。
【0039】
本体コネクタ部260は、図4〜図8に示すように、長方形ブロック状のコネクタ基部261と、このコネクタ基部261に設けられたコネクタ円柱部262(図5では図示せず)と、このコネクタ円柱部262に設けられた本体接続部としてのコネクタピン部263(図5では図示せず)と、コネクタ基部261に設けられた本体側基板264とから構成されている。
【0040】
コネクタ基部261の長手方向一端側には、第1位置決め部としてのコネクタ正面部261Aおよびコネクタ背面部261Bを貫通する円形状のコネクタ嵌合孔部261Cが設けられている。また、コネクタ基部261の長手方向他端側には、モジュール固定ねじ100の雄ねじ部110が螺着される係止孔部としての雌ねじ部261Dが設けられている。この雌ねじ部261Dは、図5に示すように、直径寸法がR1、かつ、閉塞平面部251側の端部から閉塞平面部251までの距離がL1となる状態に形成されている。
【0041】
コネクタ円柱部262は、円柱状に形成され、コネクタ嵌合孔部261Cに嵌合固定されている。このコネクタ円柱部262には、平行な2平面を貫通する状態で設けられた6個のピン嵌合孔262Aが設けられている。これらピン嵌合孔262Aは、コネクタ円柱部262の円周方向に沿って略等間隔で設けられている。
【0042】
コネクタピン部263は、ピン嵌合孔262Aに嵌合固定される円筒状のピン基部263Aと、このピン基部263Aの一端に設けられピン基部263Aの軸方向に進退可能に設けられた進退当接部263Bと、ピン基部263Aの他端から突出するピン突出部263Cとから構成されている。
進退当接部263Bは、導電性を有する材料により、ピン基部263Aの一端側の開口を閉塞するドーム状に形成されている。
ピン突出部263Cは、導電性を有する材料により形成され、例えば導線などの図示しない導電部材により進退当接部263Bに電気的に接続されている。
【0043】
本体側基板264は、コネクタ嵌合孔部261Cを閉塞し、かつ、雌ねじ部261Dを閉塞しない状態で設けられている。この本体側基板264には、コネクタピン部263のピン突出部263Cおよびピン基部263Aの端部が嵌合固定される基板孔部264Aが設けられている。
この本体側基板264は、コネクタピン部263の進退当接部263Bおよびコントローラ30を電気的に接続する。
【0044】
センサモジュール300は、図2、図4、図5、および、図9に示すように、力センサ1が取り付けられるとともにモジュール固定ねじ100により本体コネクタ部260に固定されるモジュール基部310と、このモジュール基部310に設けられたモジュール接続部としてのコネクタ側基板350と、モジュール基部310に設けられたセンサ側基板360と、このセンサ側基板360に設けられた記憶部としてのICチップ370と、モジュール基部310の一部を覆う略円筒状の保護カバー380とから構成されている。
【0045】
モジュール基部310は、断面コ字状に形成されたモジュールコネクタ部320と、このモジュールコネクタ部320の一端側に設けられた半円筒状のセンサ取付部330と、このセンサ取付部330のモジュールコネクタ部320側の開口を閉塞するモジュール閉塞部340とから構成されている。
【0046】
モジュールコネクタ部320における他端側の端部、すなわちセンサ取付部330が設けられていない側の端部は、平面状に形成され、プローブ本体200への取付時に閉塞平面部251に押圧される押圧部321とされている。
また、モジュールコネクタ部320における断面コ字状の開口端に対応する部分は、この断面コ字状の開口面に平行な平面状に形成され、プローブ本体200への取付時にコネクタ正面部261Aに摺接される摺接部322とされている。
さらに、モジュールコネクタ部320における一端側には、断面コ字状の開口側と反対側に四角板状に膨出するねじ孔形成部323が設けられている。このねじ孔形成部323の膨出方向先端は、摺接部322と平行な平面状のねじ孔形成先端面部324とされている。そして、ねじ孔形成部323には、ねじ孔形成先端面部324から摺接部322側にかけて設けられ、モジュール固定ねじ100の雄ねじ部110が挿通される挿通孔部325が設けられている。
【0047】
この挿通孔部325は、摺接部322側から軸方向略中央にかけて同一の直径寸法に形成された直径同一部325Aと、軸方向略中央からねじ孔形成先端面部324にかけて拡開する形状に形成された傾斜部としての拡開部325Bと、を備えている。
直径同一部325Aは、直径寸法がR1よりも大きいR2に形成されている。また、直径同一部325Aは、中心軸C2が雌ねじ部261Dの中心軸C1に対して偏芯した状態で設けられ、押圧部321側の端部から押圧部321までの距離がL1となる形状に形成されている。
すなわち、挿通孔部325は、摺接部322と反対側の開口における押圧部321側が、摺接部322側に向かうにしたがって押圧部321から離れる状態に傾斜する形状に形成されている。また、挿通孔部325は、雄ねじ部110の太さよりも大きい直径寸法に形成されている。さらに、挿通孔部325は、拡開部325Bの摺接部322側の端部から押圧部321までの距離が、閉塞平面部251側の端部から閉塞平面部251までの距離と等しい形状に形成されている。
【0048】
センサ取付部330におけるモジュールコネクタ部320が設けられていない側の端部近傍には、図9に示すように、保護カバー380の図示しない孔部からスタイラス3が突出する状態で、力センサ1が取り付けられている。
【0049】
コネクタ側基板350には、モジュール固定ねじ100の雄ねじ部110が挿通される基板挿通孔351が設けられている。このコネクタ側基板350は、モジュールコネクタ部320における断面コ字状の内部空間に嵌合する状態で設けられている。そして、センサモジュール300のプローブ本体200への取付時に、図8に示すように、コネクタピン部263の進退当接部263Bをピン突出部263C側に移動させるとともに、進退当接部263Bを介して本体側基板264に電気的に接続される。
【0050】
センサ側基板360は、センサ取付部330における半円筒状の内部空間に嵌合する状態で設けられている。このセンサ側基板360は、コネクタ側基板350、ICチップ370、および、力センサ1に電気的に接続されている。このセンサ側基板360は、コネクタ側基板350、コネクタピン部263、および、本体側基板264を介して、ICチップ370および力センサ1と、コントローラ30とを電気的に接続する。
【0051】
ICチップ370には、力センサ1固有の特性、例えば補正値などの固有特性情報が記録されている。この固有特性情報は、コントローラ30により適宜読み出され、駆動アクチュエータ22の駆動制御に利用される。
【0052】
〔センサモジュールの交換動作〕
次に、センサモジュール300の交換動作について説明する。
【0053】
作業者は、例えば破損したセンサモジュール300をプローブ本体200から取り外す。そして、新たなセンサモジュール300を、図5に示すように、押圧部321が閉塞平面部251に対応する状態に位置させる。さらに、センサモジュール300をプローブ本体200側へ移動させ、摺接部322をコネクタ正面部261Aに当接させる。このとき、挿通孔部325における直径同一部325Aの押圧部321側の端部と、雌ねじ部261Dの閉塞平面部251側の端部と、が略同一線上に位置する。
【0054】
次に、モジュール固定ねじ100を挿通孔部325に挿通させ、雄ねじ部110を雌ねじ部261Dに螺着させる。そして、モジュール固定ねじ100をさらに回転させて、ねじ摺接部120を拡開部325Bの接触点Gに接触させる。
この後、モジュール固定ねじ100をさらに回転させて、ねじ摺接部120で拡開部325Bを押圧させることにより、センサモジュール300をコネクタ正面部261Aに摺接させつつ、押圧部321に閉塞平面部251を押圧させる。これにより、センサモジュール300は、コネクタ正面部261Aの面方向に対して位置決めされる。
また、ねじ摺接部120により拡開部325Bをコネクタ正面部261Aの方向に押圧させることにより、センサモジュール300は、コネクタ正面部261Aの面方向と直交する方向に対して位置決めされる。
【0055】
さらに、センサモジュール300がプローブ本体200に位置決め固定されると、図8に示すように、コネクタ側基板350により進退当接部263Bが押圧され、ICチップ370および力センサ1と、コントローラ30とが電気的に接続される。
これにより、センサモジュール300の交換動作が終了する。
【0056】
〔実施形態の作用効果〕
上述した実施形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
【0057】
(1)プローブ20のモジュール固定ねじ100に、雄ねじ部110と、この雄ねじ部110に設けられたねじ摺接部120と、を設けている。また、駆動アクチュエータ22に保持されるプローブ本体200に、コネクタ正面部261Aと、このコネクタ正面部261Aに立設された中間閉塞部250と、コネクタ正面部261Aに設けられた雌ねじ部261Dと、を設けている。さらに、力センサ1が取り付けられるセンサモジュール300に、コネクタ正面部261Aに摺接される摺接部322と、中間閉塞部250に押圧される押圧部321と、摺接部322側からねじ孔形成先端面部324側までを連通する挿通孔部325と、を設けている。また、挿通孔部325に、ねじ孔形成先端面部324側の開口における押圧部321側が、摺接部322側に向かうにしたがって押圧部321から離れる状態に傾斜する拡開部325Bを設けている。そして、挿通孔部325を、雄ねじ部110の太さよりも大きい孔幅に形成している。
このため、以下のようにして、プローブ本体200にセンサモジュール300を位置決め固定することができる。
すなわち、センサモジュール300を、摺接部322がコネクタ正面部261Aに対向し、かつ、押圧部321が閉塞平面部251に対向する状態に位置させる。そして、拡開部325Bにねじ摺接部120を摺接させつつ、モジュール固定ねじ100を挿通孔部325に挿通させて、雄ねじ部110を雌ねじ部261Dに螺着させることにより、プローブ本体200にセンサモジュール300を位置決め固定することができる。
このとき、ねじ摺接部120を連続的に拡開部325Bに当接させつつ挿通孔部325の軸方向に移動させることにより、センサモジュール300をコネクタ正面部261Aに摺接させつつ、押圧部321に中間閉塞部250を押圧させることができる。したがって、コネクタ正面部261Aの面方向に対して、センサモジュール300を再現性よく位置決めすることができる。
また、ねじ摺接部120により拡開部325Bをコネクタ正面部261Aの方向に押圧した状態で、雄ねじ部110を雌ねじ部261Dに螺着させることができる。したがって、コネクタ正面部261Aの面方向と略直交する方向に対して、センサモジュール300を再現性よく位置決めすることができる。
さらに、センサモジュール300をプローブ本体200に位置決めするために、モジュール固定ねじ100のみを用いるだけでよく、構成が簡単になり位置決めする際の作業効率をあげることができる。
よって、簡単な構成で容易にかつより再現性よく力センサ1を位置決めできる。
【0058】
(2)本発明の力センサとして、スタイラス3と、加振素子4と、検出素子5とから構成される加振型力センサ1を適用している。
このため、小さい測定力で高精度な測定が可能な加振型力センサ1の位置決めを、簡単な構成で容易にかつより再現性よく実施でき、より高精度な測定が可能なプローブ20を提供できる。
【0059】
(3)本発明の係止孔部として雌ねじ部261Dを適用するとともに、棒状部として雄ねじ部110を適用している。
このため、雄ねじ部110を雌ねじ部261Dに螺着するだけの簡単な構成で、プローブ本体200にセンサモジュール300を位置決め固定することができ、より容易に力センサ1を位置決めできる。
【0060】
(4)ねじ摺接部120を、雄ねじ部110の外周方向に沿って一連に設けている。
このため、雄ねじ部110を螺着させる際にねじ摺接部120を拡開部325Bに常時当接させることができ、さらに容易に力センサ1を位置決め可能となる。
【0061】
(5)挿通孔部325を、拡開部325Bの摺接部322側の端部から押圧部321までの距離が、雌ねじ部261Dの中間閉塞部250側の端部から中間閉塞部250までの距離と略等しくなる形状に形成している。
このため、押圧部321に中間閉塞部250を押圧させた際に、拡開部325Bの摺接部322側の端部と、雌ねじ部261Dの中間閉塞部250側の端部と、を略同一線上に位置させることができ、雄ねじ部110を拡開部325Bの摺接部322側の端部に略当接させた状態で、雌ねじ部261Dに係止させることができる。したがって、ねじ摺接部120の雄ねじ部110からの突出量を最小限に抑えた状態で、ねじ摺接部120を拡開部325Bに当接させることができ、モジュール固定ねじ100の軽量化を図れ、より高精度に測定できる。
【0062】
(6)プローブ本体200のコネクタ正面部261Aに、コントローラ30と電気的に接続されたコネクタピン部263を設けている。さらに、センサモジュール300の摺接部322側に、コネクタピン部263に当接可能かつ力センサ1に電気的に接続されたコネクタ側基板350を設けている。
このため、センサモジュール300をプローブ本体200に位置決め固定する際に、コネクタピン部263およびコネクタ側基板350を当接させることにより、コントローラ30および力センサ1を各種信号の送受信が可能な状態にすることができる。
したがって、センサモジュール300の交換作業をさらに容易に実施できる。
【0063】
(7)コネクタピン部263に、コネクタ正面部261Aに直交する方向に進退可能な進退当接部263Bを設けている。
このため、コネクタピン部263やコネクタ側基板350における互いに当接する部分の形状によらず、これらが当接する際の圧力を略均一にすることができる。したがって、コネクタピン部263やコネクタ側基板350を精密に設計あるいは形成する必要がなく、製造性を向上させることができる。
【0064】
(8)進退当接部263Bをドーム状に形成し、コネクタ側基板350に当接される部分を球面状にしている。
このため、コネクタピン部263およびコネクタ側基板350を点接触させることができ、センサモジュール300をコネクタ正面部261Aに摺接させつつ中間閉塞部250の方向に移動させる際の摩擦抵抗を低減できる。
したがって、力センサ1をさらに容易に位置決めできる。
【0065】
(9)センサモジュール300に、コネクタ側基板350と電気的に接続され力センサ1固有の特性に関する固有特性情報を読み出し可能に記憶するICチップ370を設けている。
このため、センサモジュール300をプローブ本体200に位置決め固定する際に、コントローラ30にICチップ370の固有特性情報を読み出させて認識させることにより、駆動アクチュエータ22を力センサ1に対応する状態で制御させることができる。
したがって、ゲイン調整や周波数調整などの力センサ1固有の調整を容易にでき、利用拡大を容易に図ることができる。
【0066】
(10)接触式倣いプローブシステム10を、上述したようなプローブ20と、ICチップ370からの固有特性情報を取り込み、この固有特性情報に基づく力センサ1固有の特性に対応する制御によりスタイラス3の接触部を被測定物表面に接触させ、力センサ1からの検出信号が設定値に一致するように駆動アクチュエータ22を駆動させながら、スケール検出器24からの測定位置情報を取り込み、この測定位置情報からの被測定物の表面性状を測定するコントローラ30と、を備えた構成としている。
このため、上述した(1)〜(9)の作用効果を奏することが可能な接触式倣いプローブシステム10を提供できる。
【0067】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
【0068】
すなわち、力センサ1を、力センサ1のベース2とスタイラス3とを一体的に構成したが、これに限らず、別体であってもよい。つまり、ベース2とスタイラス3とを別体として構成し、ベース2に対してスタイラス3を接着固定するようにしてもよい。またスタイラス3を軸方向へ振動させるようにしたが、これに限らず、スタイラス3の軸に対して交差する方向に振動させるようにしてもよい。
また、加振型力センサ1を用いたが、これに限らず、被測定物との接触時に発生する測定力を検出し力検出信号として出力できる構造であれば、他のセンサであってもよい。
【0069】
そして、本発明の棒状部として、一端が弾性変形可能に形成されるとともに一端の側面から突出する突起部を設けた棒状部材を用い、係止孔部として、棒状部材が挿通されるとともに突起部が係合される係止部を設けた構成を適用してもよい。さらに、本発明の棒状部として、円柱状あるいは四角柱状の棒状部材を用い、係止孔部として、棒状部材が挿通されるとともにこの棒状部材を例えば弾性により締め付けることにより係止する構成を適用してもよい。
【0070】
また、ねじ摺接部120を、雄ねじ部110の外周方向に沿って断続的に、あるいは、外周の一部のみに設ける構成としてもよい。
【0071】
そして、雌ねじ部261Dの中心軸C1と、挿通孔部325の中心軸C2と、を一致させる構成、すなわち雌ねじ部261Dの中間閉塞部250側の端部から中間閉塞部250までの距離が、拡開部325Bの摺接部322側の端部から押圧部321までの距離よりも長くなる構成としてもよい。
【0072】
さらに、プローブ本体200にコネクタピン部263を設けないとともに、センサモジュール300にコネクタ側基板350を設けない構成として、コントローラ30および力センサ1を導線などの導通部材で接続する構成としてもよい。
【0073】
また、コネクタピン部263に進退当接部263Bを設けずに、ピン基部263Aの先端をコネクタ側基板350に当接させる構成としてもよい。
【0074】
そして、進退当接部263Bをドーム状に形成せずに、一面が閉口された筒状に形成する構成としてもよい。
【0075】
さらに、センサモジュール300に、ICチップ370を設けずに、力センサ1固有の特性に関する固有特性情報をコントローラ30に別途読み出させる構成としてもよい。例えば、固有特性情報が記録された光ディスクや磁気ディスクなどの記録媒体を読み出すドライブや、キーボードなどの固有特性情報を入力設定可能な入力手段を設ける構成としてもよい。
【0076】
そして、挿通孔部325における押圧部321側のみに拡開部325Bを設け、それ以外の部分を摺接部322側にしたがって押圧部321から離れる状態に傾斜させない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、被測定物の表面粗さを測定する表面粗さ測定機、形状測定機、輪郭測定機、真円度測定機、三次元測定機などに適用可能である。特に、微細形状の測定に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る接触式倣いプローブシステムの概略構成を示す模式図である。
【図2】前記一実施形態におけるプローブの構成を示す斜視図である。
【図3】前記一実施形態における被測定物表面を倣い走査する様子を示す概念図である。
【図4】前記一実施形態における本体固定部およびセンサモジュールの構成を示す斜視図である。
【図5】前記一実施形態における本体固定部およびセンサモジュールの要部の概略構成を示す断面図である。
【図6】前記一実施形態における本体コネクタ部の構成を示す正面図である。
【図7】前記一実施形態における図6のVII−VII線における断面図である。
【図8】前記一実施形態における本体側基板およびコネクタ側基板が電気的に接続された状態を示す断面図である。
【図9】前記一実施形態におけるセンサモジュールの構成を示す背面斜視図である。
【図10】力センサの構成を示す分解斜視図である。
【図11】力センサに与える加振信号と検出信号を示す図である。
【図12】力センサが被測定物と接触した際の検出信号の変化を示す図である。
【図13】力センサの検出信号の減衰率と測定力との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1…加振型力センサ
3…スタイラス
4…加振素子
5…検出素子
10…表面性状測定装置としての接触式倣いプローブシステム
20…プローブ
22…相対移動手段としての駆動アクチュエータ
24…位置検出手段としてのスケール検出器
30…制御手段としてのコントローラ
100…固定部材としてのモジュール固定ねじ
110…棒状部としての雄ねじ部
120…固定突出部としてのねじ摺接部
200…プローブ本体
250…第2位置決め部としての中間閉塞部
261A…第1位置決め部としてのコネクタ正面部
261D…係止孔部としての雌ねじ部
263…本体接続部としてのコネクタピン部
263B…進退当接部
300…センサモジュール
321…押圧部
322…摺接部
325…挿通孔部
325B…傾斜部としての拡開部
350…モジュール接続部としてのコネクタ側基板
370…記憶部としてのICチップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物との接触時に発生する測定力を検出し力検出信号として出力する力センサと、この力センサによる被測定物の測定位置を検出し測定位置情報として出力する位置検出手段と、前記力センサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、を備えたプローブであって、
前記相対移動手段に保持されるプローブ本体と、
前記力センサが取り付けられるセンサモジュールと、
前記センサモジュールに挿通されるとともに前記プローブ本体に挿入され前記センサモジュールを前記プローブ本体に着脱自在に位置決め固定する固定部材と、
を備え、
前記プローブ本体は、略平面状の第1位置決め部と、この第1位置決め部に立設された第2位置決め部と、前記第1位置決め部に設けられ前記固定部材が挿入されて着脱可能に係止される係止孔部と、を備え、
前記センサモジュールは、前記第1位置決め部に摺接される摺接部と、前記第2位置決め部に押圧される押圧部と、前記摺接部側から前記摺接部と対向する側まで連通し前記固定部材が挿通される挿通孔部と、を備え、
前記固定部材は、棒状に形成され前記挿通孔部に挿通されるとともに一端側が前記係止孔部に係止される棒状部と、この棒状部の他端側の側面から突出する固定突出部と、を備え、
前記挿通孔部は、前記摺接部と対向する側の開口における前記押圧部側が前記摺接部側に向かうにしたがって前記押圧部から離れる状態に傾斜し前記固定突出部が当接可能な傾斜部を有するとともに、前記棒状部の太さより大きい孔幅に形成された
ことを特徴とするプローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブにおいて、
前記力センサは、先端に接触部を有するスタイラスと、このスタイラスを振動させる加振素子と、前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子と、を備えた
ことを特徴とするプローブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプローブにおいて、
前記係止孔部は、雌ねじ部であり、
前記棒状部は、雄ねじ部である
ことを特徴とするプローブ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプローブにおいて、
前記固定突出部は、前記棒状部の外周方向に沿って一連に設けられた
ことを特徴とするプローブ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプローブにおいて、
前記挿通孔部は、前記傾斜部の前記摺接部側の端部から前記押圧部までの距離が、前記係止孔部の第2位置決め部側の端部から前記第2位置決め部までの距離と略等しくなる形状に形成された
ことを特徴とするプローブ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプローブにおいて、
前記プローブ本体は、前記第1位置決め部に設けられ前記相対移動手段を制御する制御手段と電気的に接続された本体接続部を有し、
前記センサモジュールは、前記摺接部側における前記本体接続部に当接可能な位置に設けられ前記力センサに電気的に接続されかつ前記本体接続部との当接時に前記本体接続部と電気的に接続されるモジュール接続部を有する
ことを特徴とするプローブ。
【請求項7】
請求項6に記載のプローブにおいて、
前記本体接続部は、前記第1位置決め部に交差する方向に進退可能に設けられ前記モジュール接続部に当接される進退当接部を有する
ことを特徴とするプローブ。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のプローブにおいて、
前記本体接続部は、前記モジュール接続部に当接される部分が球面状に形成されている
ことを特徴とするプローブ。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のプローブにおいて、
前記センサモジュールは、前記モジュール接続部と電気的に接続され前記力センサ固有の特性に関する固有特性情報を読み出し可能に記憶する記憶部を有する
ことを特徴とするプローブ。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のプローブと、
前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記力センサからの検出信号が設定値に一致するように前記相対移動手段を駆動させながら、前記位置検出手段からの測定位置情報を取り込み、この測定位置情報からの被測定物の表面性状を測定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項11】
請求項9に記載のプローブと、
前記記憶部から固有特性情報を読み出し、この固有特性情報に基づく前記力センサ固有の特性に対応する制御により前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記力センサからの検出信号が設定値に一致するように前記相対移動手段を駆動させながら、前記位置検出手段からの測定位置情報を取り込み、この測定位置情報からの被測定物の表面性状を測定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項1】
被測定物との接触時に発生する測定力を検出し力検出信号として出力する力センサと、この力センサによる被測定物の測定位置を検出し測定位置情報として出力する位置検出手段と、前記力センサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、を備えたプローブであって、
前記相対移動手段に保持されるプローブ本体と、
前記力センサが取り付けられるセンサモジュールと、
前記センサモジュールに挿通されるとともに前記プローブ本体に挿入され前記センサモジュールを前記プローブ本体に着脱自在に位置決め固定する固定部材と、
を備え、
前記プローブ本体は、略平面状の第1位置決め部と、この第1位置決め部に立設された第2位置決め部と、前記第1位置決め部に設けられ前記固定部材が挿入されて着脱可能に係止される係止孔部と、を備え、
前記センサモジュールは、前記第1位置決め部に摺接される摺接部と、前記第2位置決め部に押圧される押圧部と、前記摺接部側から前記摺接部と対向する側まで連通し前記固定部材が挿通される挿通孔部と、を備え、
前記固定部材は、棒状に形成され前記挿通孔部に挿通されるとともに一端側が前記係止孔部に係止される棒状部と、この棒状部の他端側の側面から突出する固定突出部と、を備え、
前記挿通孔部は、前記摺接部と対向する側の開口における前記押圧部側が前記摺接部側に向かうにしたがって前記押圧部から離れる状態に傾斜し前記固定突出部が当接可能な傾斜部を有するとともに、前記棒状部の太さより大きい孔幅に形成された
ことを特徴とするプローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブにおいて、
前記力センサは、先端に接触部を有するスタイラスと、このスタイラスを振動させる加振素子と、前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子と、を備えた
ことを特徴とするプローブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプローブにおいて、
前記係止孔部は、雌ねじ部であり、
前記棒状部は、雄ねじ部である
ことを特徴とするプローブ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプローブにおいて、
前記固定突出部は、前記棒状部の外周方向に沿って一連に設けられた
ことを特徴とするプローブ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプローブにおいて、
前記挿通孔部は、前記傾斜部の前記摺接部側の端部から前記押圧部までの距離が、前記係止孔部の第2位置決め部側の端部から前記第2位置決め部までの距離と略等しくなる形状に形成された
ことを特徴とするプローブ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプローブにおいて、
前記プローブ本体は、前記第1位置決め部に設けられ前記相対移動手段を制御する制御手段と電気的に接続された本体接続部を有し、
前記センサモジュールは、前記摺接部側における前記本体接続部に当接可能な位置に設けられ前記力センサに電気的に接続されかつ前記本体接続部との当接時に前記本体接続部と電気的に接続されるモジュール接続部を有する
ことを特徴とするプローブ。
【請求項7】
請求項6に記載のプローブにおいて、
前記本体接続部は、前記第1位置決め部に交差する方向に進退可能に設けられ前記モジュール接続部に当接される進退当接部を有する
ことを特徴とするプローブ。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のプローブにおいて、
前記本体接続部は、前記モジュール接続部に当接される部分が球面状に形成されている
ことを特徴とするプローブ。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のプローブにおいて、
前記センサモジュールは、前記モジュール接続部と電気的に接続され前記力センサ固有の特性に関する固有特性情報を読み出し可能に記憶する記憶部を有する
ことを特徴とするプローブ。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のプローブと、
前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記力センサからの検出信号が設定値に一致するように前記相対移動手段を駆動させながら、前記位置検出手段からの測定位置情報を取り込み、この測定位置情報からの被測定物の表面性状を測定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項11】
請求項9に記載のプローブと、
前記記憶部から固有特性情報を読み出し、この固有特性情報に基づく前記力センサ固有の特性に対応する制御により前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記力センサからの検出信号が設定値に一致するように前記相対移動手段を駆動させながら、前記位置検出手段からの測定位置情報を取り込み、この測定位置情報からの被測定物の表面性状を測定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする表面性状測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−309698(P2007−309698A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136878(P2006−136878)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
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