説明

ヘアライン調化粧シートの製造方法

【課題】従来よりもデザイン上の自由度が増し、簡単かつ安価にヘアライン調化粧シートを作製することができ、高精細なヘアライン調化粧柄をシートに印刷することのできるヘアライン調化粧シートの製造方法を提供する。
【解決手段】メタルマスク版、印刷部の表面にヘアラインブラッシュ加工が施されてメタルマスク版上を移動するヘアラインスキージ、メジウム色のインキを使用したスクリーン印刷により、PETシート35にヘアラインスキージの印刷部でヘアライン調装飾柄39を印刷した後、スクリーン版、このスクリーン版上を移動するスキージ、金属色のインキ40を使用したスクリーン印刷により、PETシート35のヘアライン調装飾柄39の上に金属色のインキ40をベタ刷りしてヘアライン調化粧シート41とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヘアライン調化粧柄が印刷されたヘアライン調化粧シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器などでは、スイッチ用の表面シートとしてヘアライン調化粧シートが使用されている。このヘアライン調化粧シートを製造する方法は、いくつかある。
【0003】
まず、第1の製造方法は、図5に示すように、例えば、25μmの透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム11の全面にバンドグラインダを用いてヘアラインブラッシュ加工11aを施す。そして、図6に示すように、PETフィルム11のヘアラインブラッシュ加工11aを施した面にアルミニウムを蒸着させてアルミニウム蒸着層12を設けることにより、蒸着フィルム13とする。そして、蒸着フィルム13を100μmの透明なPETフィルムに接着剤で貼り付けることにより、ヘアライン調化粧シートとする(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
次に、第2の製造方法は、ヘアライン調化粧柄のパターンを有するスクリーン版とメジウム色のインキとスキージとを使用し、図7に示すように、スクリーン印刷によって100μmの透明なPETフィルム21にメジウム色のヘアライン調化粧柄22を印刷して印刷フィルム23とする。そして、図8に示すように、印刷フィルム23のヘアライン調化粧柄22を形成した面にスクリーン印刷によって金属色のインキをベタ刷りして金属色インキ層24を設けることにより、ヘアライン調化粧シート25とする(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−1444号公報
【特許文献2】特開2000−211234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した第1の製造方法では、PETフィルム11の全面にヘアラインブラッシュ加工11aを施すので、デザイン上の制限が多かった。また、蒸着フィルム13を100μmのPETフィルムに接着剤を用いて熱ラミネートしてヘアライン調化粧シートとするので、製造工数が多くなるとともに、多数の工具を使用することになり、高価なヘアライン調化粧シートとなる。
【0007】
また、第2の製造方法では、スクリーン印刷でヘアライン調化粧柄22を印刷しているので、すなわち、スクリーン版を使用してヘアライン調化粧柄22を印刷しているので、高精細なヘアライン調化粧柄22を印刷(表現)することは困難である。
【0008】
この発明は、上記したような不都合を解消するためになされたもので、従来よりもデザイン上の自由度が増し、簡単かつ安価にヘアライン調化粧シートを作製することができ、高精細なヘアライン調化粧柄をシートに印刷することのできるヘアライン調化粧シートの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、メタルマスク版、印刷部の表面にヘアラインブラッシュ加工が施されて前記メタルマスク版上を移動するヘアラインスキージ、メジウム色のインキを使用したスクリーン印刷により、シートに前記ヘアラインスキージの印刷部でヘアライン調装飾柄を印刷することを特徴とするヘアライン調化粧シートの製造方法である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、メタルマスク版、印刷部の表面にヘアラインブラッシュ加工が施されて前記メタルマスク版上を移動するヘアラインスキージ、メジウム色のインキを使用したスクリーン印刷により、シートに前記ヘアラインスキージの印刷部でヘアライン調装飾柄を印刷した後、スクリーン版、このスクリーン版上を移動するスキージ、金属色のインキを使用したスクリーン印刷により、前記シートの前記ヘアライン調装飾柄の上に前記金属色のインキをベタ刷りすることを特徴とするヘアライン調化粧シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、ヘアラインスキージの印刷部の表面にヘアラインブラッシュ加工を施したので、メタルマスク版上をヘアラインスキージを移動させることによってシートにヘアラインスキージの印刷部でヘアライン調装飾柄を選択的に印刷することができる。したがって、従来よりもデザイン上の自由度が増し、ヘアライン調化粧シートを簡単かつ安価に作製することができるとともに、ヘアラインスキージの印刷部(ヘアラインブラッシュ加工)で高精細なヘアライン調化粧柄をシートに印刷することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、シートのヘアライン調装飾柄の上に金属色のインキをベタ刷りしたので、金属調のヘアライン調化粧柄を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】はこの発明の一実施例であるヘアライン調化粧シートの製造方法で使用するヘアラインスキージの構成を示す正面図である。
【図2】この発明の一実施例であるヘアライン調化粧シートの製造方法を示す説明図である。
【図3】この発明の一実施例であるヘアライン調化粧シートの製造方法を示す説明図である。
【図4】この発明の一実施例であるヘアライン調化粧シートの製造方法を示す説明図である。
【図5】従来のヘアライン調化粧シートの製造方法を示す説明図である。
【図6】従来のヘアライン調化粧シートの製造方法を示す説明図である。
【図7】従来のヘアライン調化粧シートの製造方法を示す説明図である。
【図8】従来のヘアライン調化粧シートの製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0015】
図1はこの発明の一実施例であるヘアライン調化粧シートの製造方法で使用するヘアラインスキージの構成を示す正面図、図2〜図4はこの発明の一実施例であるヘアライン調化粧シートの製造方法を示す説明図である。
【0016】
図1に示すヘアラインスキージ31はゴム硬度60のウレタンゴムで構成されている。そして、ヘアラインスキージ31の下端部に位置する印刷部31aの表面には、例えば、#200のサンドペーパーで擦った凹凸状のヘアラインブラッシュ加工31bが施されている。
【0017】
次に、図面を参照しながらヘアライン調化粧シートの製造方法について説明する。
【0018】
まず、例えば、図2に示すように、メタルマスク版33に設けた矩形の開口部33a内に矩形状で、厚さが100μmの被印刷物としての透明なPETシート35をはめ込む。このとき、メタルマスク版33の上面とPETシート35の上面とは、ほぼ同一面となっている。そして、メタルマスク版33上にメジウム色のインキ37を載せた後、ヘアラインスキージ31の印刷部31aを、メタルマスク版33上を移動させることにより、印刷部31aのヘアラインブラッシュ加工31bでPETシート35上に凹凸状のヘアライン調装飾柄39を印刷する。
【0019】
このようにヘアライン調装飾柄39が印刷されたPETシート35の断面は、図3に示す状態となる。
【0020】
この図3のPETシート35に通常のスクリーン印刷、すなわち、PETシート35の上側に配置したスクリーン版、このスクリーン版上を移動するスキージ、金属色のインキを使用したスクリーン印刷により、PETシート35のヘアライン調装飾柄39の上に金属色のインキ40をベタ刷りすると、図4に断面を示す状態のヘアライン調化粧シート41とすることができる。
【0021】
上述したように、この発明の一実施例によれば、ヘアラインスキージ31の印刷部31aの表面にヘアラインブラッシュ加工31bを施したので、メタルマスク版33上をヘアラインスキージ31を移動させることによってPETシート35にヘアラインスキージ31でヘアライン調装飾柄39を選択的に印刷することができる。したがって、ヘアライン調化粧シート41を簡単かつ安価に作製することができるとともに、ヘアラインスキージ31の印刷部31a(ヘアラインブラッシュ加工31b)で高精細なヘアライン調化粧柄39をPETシート35に印刷することができる。そして、PETシート35のヘアライン調装飾柄39の上に金属色のインキ40をベタ刷りしたので、金属調のヘアライン調化粧柄39を作製することができる。
【0022】
上記した実施例では、PETシート35のヘアライン調装飾柄39側に金属色のインキ40をベタ刷りしてヘアライン調装飾柄39を金属調にしたヘアライン調化粧シート41の例を示したが、ヘアライン調装飾柄を金属調にする必要がなければ、シートのヘアライン調装飾柄側に金属色のインキをベタ刷りしなくとも、ヘアライン調化粧シートとすることができる。また、PETシート35をメタルマスク版33の開口部33aにはめ込んで露出させ、ヘアライン調装飾柄39をPETシート35にスクリーン印刷する例を示したが、メタルマスク版でPETシートを覆ってメタルマスク版の開口部からPETシートの一部を露出させ、ヘアライン調装飾柄をPETシートの露出した部分にスクリーン印刷してもよい。
【符号の説明】
【0023】
31 ヘアラインスキージ
31a 印刷部
31b ヘアラインブラッシュ加工
33 メタルマスク版
33a 開口部
35 PETシート
37 インキ
39 ヘアライン調装飾柄
40 インキ
41 ヘアライン調化粧シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルマスク版、印刷部の表面にヘアラインブラッシュ加工が施されて前記メタルマスク版上を移動するヘアラインスキージ、メジウム色のインキを使用したスクリーン印刷により、シートに前記ヘアラインスキージの印刷部でヘアライン調装飾柄を印刷する、
ことを特徴とするヘアライン調化粧シートの製造方法。
【請求項2】
メタルマスク版、印刷部の表面にヘアラインブラッシュ加工が施されて前記メタルマスク版上を移動するヘアラインスキージ、メジウム色のインキを使用したスクリーン印刷により、シートに前記ヘアラインスキージの印刷部でヘアライン調装飾柄を印刷した後、
スクリーン版、このスクリーン版上を移動するスキージ、金属色のインキを使用したスクリーン印刷により、前記シートの前記ヘアライン調装飾柄側に前記金属色のインキをベタ刷りする、
ことを特徴とするヘアライン調化粧シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−173229(P2010−173229A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19792(P2009−19792)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】