説明

ヘイズ値を減少させた抗菌性コンタクトレンズおよびその調製

本発明は、金属を含有する抗菌性レンズ、および、当該抗菌性レンズの製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願〕
本願は、2006年10月31日に出願された米国仮特許出願第60/863,709号の非仮特許出願である。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、抗菌性レンズの調製方法に関するものである。
【0003】
〔発明の背景〕
1950年代以降、視力を改善するためのコンタクトレンズは、商業的に使用されるようになってきた。第一期のコンタクトレンズは、硬質材料で形成されていた。当該コンタクトレンズは、目が覚めている間、患者によって使用され、かつ、洗浄のために取り外された。このコンタクトレンズの分野における現在の開発は、洗浄のために取り外さずに、数日以上の連続装用が可能なソフトコンタクトレンズを生み出した。多くの患者が当該ソフトコンタクトレンズを快適性の増大から好むが、当該ソフトコンタクトレンズはユーザーに多少の拒絶反応を生じさせることがある。当該ソフトコンタクトレンズの長期使用は、ソフトコンタクトレンズ表面上での細菌または他の微生物、特に緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の増殖を促進することがある。細菌または他の微生物の増殖は、コンタクトレンズによる急性結膜充血およびこの同類の症状等、有害な副作用を生じることがある。細菌または他の微生物の問題が十中八九、ソフトコンタクトレンズの長期使用に関連しているが、細菌または他の微生物の増殖は、ハードコンタクトレンズ装用者にも同様に生じる。
【0004】
米国特許第5,820,918号明細書は、殺菌性または放射線不透過性化合物等、水溶液中で低溶解性を呈する医療用化合物と共に、吸水性ポリマー材料から構成される医療装置を開示している。しかし、当該特許文献中の実施例に開示された手順は、コンタクトレンズ等の眼用装置に適していない不透明な装置をもたらす。
【0005】
したがって、依然として、コンタクトレンズの表面上での細菌または他の微生物の増殖、および/または、当該表面への細菌または他の微生物の付着を抑制するコンタクトレンズを製造する必要がある。さらに、コンタクトレンズの表面上での細菌または他の微生物の増殖、および/または、当該表面への細菌または他の微生物の付着を促進しないコンタクトレンズを製造する必要がある。また、細菌または他の微生物の増殖に関係した拒絶反応を抑制するコンタクトレンズを製造する必要がある。さらに、依然として、ユーザーが上述のコンタクトレンズを通して明瞭に見えるようにする上で適した透明度を有するレンズを製造する方法で、上述したコンタクトレンズを製造する必要がある。これらの要求は、以下の本発明によって満たされる。
【0006】
〔本発明の詳細な記述〕
本発明は、金属塩を含む抗菌性レンズ、当該金属塩から本質的になる抗菌性レンズ、あるいは、当該金属塩からなる抗菌性レンズを調製する方法を含むものであり、当該方法は、
(a)硬化レンズを、塩前駆体を含有する溶液で処理するステップ、および
(b)ステップ(a)で処理されたレンズを、金属剤を含有する溶液で処理するステップを含むものであり、当該ステップから本質的になるものであり、あるいは、当該ステップからなるものであり、ここで、当該塩前駆体含有溶液中での塩前駆体のモル比に対する当該金属剤含有溶液中での金属剤のモル比が約0.2を超えるものである。この明細書で使用されているように、用語「抗菌性レンズ」とは、以下の特性:レンズへの細菌または他の微生物の付着の抑制、レンズ上での細菌または他の微生物の増殖の抑制、および、レンズの表面上またはレンズの周辺領域内での細菌または他の微生物に対する殺菌のうち、一つ以上の特性を呈するレンズを意味する。本発明の目的上、レンズへの細菌または他の微生物の付着、レンズ上での細菌または他の微生物の増殖、および、レンズの表面上の細菌または他の微生物の存在は、全体的に「微生物のコロニー形成」と呼ばれる。好適には、本発明のレンズは、生存している細菌または他の微生物において少なくとも約0.25の対数減少値を呈するものであり、より好ましくは少なくとも約0.5の対数減少値を呈するものであり、最も好ましくは少なくとも約1.0の対数減少値を(90%以上の抑制効果)呈するものである。このような細菌または他の微生物は、眼内で見出される生物、特に、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アカントアメーバ属(Acanthamoeba species)、黄色ブドウ球菌(Staphyoccus aureus)、大腸菌(Escherichia. coli)、表皮ブドウ球菌(Staphyoccus epidermidis)、および、霊菌(Serratia marcesens)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0007】
この明細書で使用されているように、用語「金属塩」とは、一般式:[M]a[X]bを有する、あらゆる分子を意味し、ここで、Xは、あらゆる負帯電イオンを含み、aは1以上であり、bは1以上であり、Mは、以下のイオン:Al+3、Co+2、Co+3、Ca+2、Mg+2、Ni+2、Ti+2、Ti+3、Ti+4、V+2、V+3、V+5、Sr+2、Fe+2、Fe+3、Au+2、Au+3、Au+1、Pd+2、Pd+4、Pt+2、Pt+4、Cu+1、Cu+2、Mn+2、Mn+3、Mn+4、Zn+2、および、これらの同類に限定されないが、これらのイオン群から選択された、いずれかの正帯電金属である。Xの例は、CO3-2、NO3-1、PO4-3、Cl-1、I-1、Br-1、S-2、O-2、および、これらの同類を含むが、これらに限定されるものではない。さらに、Xは、C1-5アルキルCO2-1等、CO3-2、NO3-1、PO4-3、Cl-1、I-1、Br-1、S-2、O-2、および、これらの同類を含有する負帯電イオンを含む。この明細書で使用されているように、用語「金属塩」は、国際公開WO03/011351号に開示されたゼオライトを含まない。この特許出願は、参照によって、この明細書にそっくりそのまま組み込まれる。好適には、aは、1、2または3である。好適には、bは、1、2または3である。好適な金属イオンは、Mg+2、Zn+2、Cu+1、Cu+2、Au+2、Au+3、Au+1、Pd+2、Pd+4、Pt+2、Pt+4、Ag+2およびAg+1である。特に好適な金属イオンは、Ag+1である。適切な金属塩の例は、硫化マンガン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫化銅、および、リン酸銅を含むが、これらに限定されるものではない。銀塩の例は、硝酸銀、硫酸銀、ヨウ素酸銀、炭酸銀、リン酸銀、硫化銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、および、酸化銀を含むが、これらに限定されるものではない。好適な銀塩は、ヨウ化銀、塩化銀、および、臭化銀である。本発明のレンズは、眼用レンズ(当該レンズの詳細な記述は後述する)であり、当該レンズの透明度は、ユーザーにとって心配事である。眼科目的に適した透明度を有するレンズを製造するために、金属塩粒子の直径が好ましくは約10ミクロン(10マイクロメートル)未満であり、より好ましくは約1マイクロメートル未満であり、さらに好ましくは約400ナノメートル未満である。レンズ中の金属塩の粒子サイズは、以下の方法によって測定されてもよい。
【0008】
走査型電子顕微鏡(SEM)用のサンプルは、検査サンプルを固定するために、半分に切断され、穴開けされ、二つの小ネジに打ち付けられた、直径25ミリメートルのアルミニウム製ホルダー内に垂直にレンズ全体を取り付けることによって、プロファイル解析用に調製された。当該レンズは、そのレンズ材料の半分が当該ホルダーの表面より上に出るように、固定された。その後、1枚刃の清浄なカミソリは、切断面を引き裂かないように一回の滑らかな行程で、レンズを半分に切断するために使用された。その後、これらのサンプルには、伝導性を確保するために、真空蒸発装置内で炭素被膜処理が施された。これらのサンプルの遠端には、伝導性をより良好にするためにコロイド状炭素塗料が塗布された。
【0009】
サンプルは、残りのレンズ半体を取り、直径に近い部分から切片を切り出すことによって表面解析用に調製され、その後に、当該切片が、凹面を上にした状態で、上面上に二つの炭素製の両面「粘着タブ」を備えた直径25ミリメートルのホルダー上に注意深く置かれた。レンズ表面は、二つの「粘着タブ」上に当該レンズ材料の凸面側を上にして残りのレンズ弦を取り付けることによって、レンズの凸面についても、分析された。両方の場合において、清浄なテフロン(登録商標)材料シート(厚さ0.032インチ(約0.0813センチメートル))は、コンタクトレンズが平坦になるように、炭素製「粘着タブ」にコンタクトレンズを押圧するために使用された。これらのサンプルには、炭素真空蒸発装置(a carbon vacuum evaporator)内で、20ナノメートル〜40ナノメートルの純正仕様(Spec-Pure)タイプのグラファイトで被膜処理が施された。これらのサンプルの遠端には、伝導性をより良好にするためにコロイド状炭素塗料が塗布された。
【0010】
三つの画像(左側位置、中間位置および右側位置)は、各レンズの凸面および凹面の両方から、種々の倍率で得られた。プロファイル画像は、5000倍および12,500倍の倍率で得られた。各位置(左側位置、中間位置および右側位置)のレンズ切片については、レンズの厚みにもよるが、約5〜10個の画像が、レンズの凸面側の縁部分から開始して、レンズの凹面側の縁部分までを走査して得られた。当該複数の画像は、一緒に「縫合」されることで、レンズ内におけるヨウ化銀の粒子サイズおよび当該粒子サイズの分布に関する情報を得た。
【0011】
レンズ面およびプロファイルの両方に関する粒子サイズの分布測定は、シオン(Scion)社製の画像解析ソフトウエアを用いて、倍率5000倍の画像から抽出された。これらの結果は、各ロットの三枚のレンズからまとめられた。
【0012】
全画像は、5キロボルトのエネルギを有する電子線で得られた。二次電子(SE)画像および後方散乱電子(BSE)画像の両方が得られたが、背景と比較してヨウ化銀粒子に対して高コントラストが得られることに起因して、粒子サイズ分析に倍率5000倍の後方散乱電子(BSE)画像のみが使用された。
【0013】
レンズ中の金属の含有率は、レンズの全重量に基づいて測定される。金属が銀である場合に、銀の好適な含有率は、レンズの乾燥重量に基づいて、約0.00001重量%(0.1ppm)〜約10.0重量%、好ましくは約0.0001重量%(1ppm)〜約1.0重量%、最も好ましくは約0.001重量%(10ppm)〜約0.1重量%である。金属塩の添加では、金属塩の分子量が、金属イオンの重量%の金属塩への変換率を決定する。銀塩の好適な含有率は、レンズの乾燥重量に基づいて、約0.00003重量%(0.3ppm)〜約30.0重量%、好ましくは約0.0003重量%(3ppm)〜約3.0重量%、最も好ましくは約0.003重量%(30ppm)〜約0.3重量%である。
【0014】
用語「溶液」とは、塩前駆体を溶解させる水性組成物または有機性組成物を云う。好適な溶液は、水溶液である。溶液は、ホウ酸ナトリウム/ホウ酸、賦形剤、界面活性剤、湿潤剤、および、これらの同類等の緩衝化塩類を含有してもよい。用語「塩前駆体」とは、金属イオンで置換できる陽イオンを含有する、あらゆる化合物または組成物を云う。溶液中での塩前駆体の濃度は、当該溶液の全重量に基づいて、約0.00001重量%〜約10.0重量%(0.1ppm〜100,000ppm)、好ましくは約0.0001重量%〜約1.0重量%(1ppm〜10,000ppm)、最も好ましくは約0.001重量%〜約0.1重量%(10ppm〜1000ppm)である。塩前駆体の例は、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、硫化ナトリウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、硫化リチウム、臭化カリウム、塩化カリウム、硫化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、臭化ルビジウム、塩化ルビジウム、硫化ルビジウム、ヨウ化セシウム、臭化セシウム、塩化セシウム、硫化セシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硫化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫化マグネシウム、テトラクロロ銀酸ナトリウム(sodium tetrachloro argentate)、および、これらの同類等の無機分子を含むが、これらに限定されるものではない。有機分子の例は、テトラアルキル乳酸アンモニウム(tetra-alkyl ammonium lactate);テトラアルキル硫酸アンモニウム;テトラアルキル塩化アンモニウム、テトラアルキル臭化アンモニウムまたはテトラアルキルヨウ化アンモニウム等のハロゲン化四級アンモニウム(quaternary ammonium halide)を含むが、これらに限定されるものではない。好適な塩前駆体は、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化リチウム、硫化リチウム、硫化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、および、テトラクロロ銀酸ナトリウムからなる群より選択されるものであり、特に好適な塩前駆体はヨウ化ナトリウムである。
【0015】
用語「金属剤」とは、金属イオンを含有する、あらゆる組成物(水溶液を含む)を云う。このような組成物の例は、硝酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀(silver triflate)、または、酢酸銀、硫酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸銅、硫酸銅、および、これらの同類の水溶液または有機性溶液を含むが、これらに限定されるものではなく、ここで、溶液中の金属剤の濃度が約1マイクログラム/ミリリットル以上である。好適な金属剤が硝酸銀水溶液であり、ここで、溶液中の硝酸銀の濃度は、当該溶液の全重量に基づいて、約0.0001重量%以上から約2重量%までであり、より好ましくは約0.001重量%超から約0.1重量%までである。用語「処理」とは、金属剤溶液または塩前駆体溶液をレンズに接触させる、あらゆる方法を云うものであり、ここで、好適な方法は、当該金属剤溶液または塩前駆体溶液中にレンズを浸漬させることである。処理は、金属剤または塩前駆体の溶液中でレンズを加熱することを含めることができるが、処理は、周囲温度で実行されることが好ましい。この処理時間は、約30秒から約24時間までの任意の時間、好ましくは約30秒〜約15分間、続くことができる。
【0016】
この明細書で使用されているように、用語「モル比」とは、塩前駆体に対する金属剤の比を云う。溶液中にppmの単位で含有される金属剤の濃度を、当該金属剤の分子量で除することで第1の数字が算出されると共に、溶液中にppmの単位で含有される塩前駆体の濃度を、当該塩前駆体の分子量で除することで第2の数字が算出される。第2の数字に対する第1の数字の比は、上述のモル比である。例えば、仮に金属剤が硝酸銀(500ppm、分子量169.88)であり、かつ、塩前駆体がヨウ化ナトリウム(700ppm、分子量149.89)である場合では、第1の数字が4.67であり、かつ、第2の数字が2.94である。これらの条件でのモル比は、0.63である。適切なヘイズ値を有する本発明のレンズを製造するためには、好ましくはモル比が約0.2を超える値であり、より好ましくはモル比が約0.4を超える値であり、さらに好ましくはモル比が約0.6〜約2.4であり、最も好ましくはモル比が約0.6〜約10.0である。
【0017】
この明細書で使用されているように、用語「レンズ」は、眼球内または眼球上に配する眼用装置を云う。これらの眼用装置は、光学補正、創傷治療、薬剤送出、診断的機能、美容上の強調すなわち効果、あるいは、これらの特性の組み合わせを付与することができる。用語「レンズ」は、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、眼内レンズ、被せレンズ(overlay lenses)、眼球用挿入体(ocular inserts)、および、光学挿入体(optical inserts)を含むが、これらに限定されるものではない。ソフトコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルおよびフルオロヒドロゲルを含むが、これらに限定されない、シリコーンエラストマーまたはヒドロゲルから形成される。
【0018】
例えば、用語「レンズ」は、米国特許第5,710,302号明細書、国際公開WO9421698号、欧州特許第406161号、日本特許出願JP2000016905号、米国特許第5,998,498号明細書、米国特許出願09/532,943号、米国特許第6,087,415号明細書、米国特許第5,760,100号明細書、米国特許第5,776,999号明細書、米国特許第5,789,461号明細書、米国特許第5,849,811号明細書および米国特許第5,965,631号明細書に記述されたソフトコンタクトレンズ処方から形成されたレンズを含むが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明の金属塩は、市販のソフトコンタクトレンズ処方中に添加されてもよい。ソフトコンタクトレンズの処方例は、エタフィルコンA、ゲンフィルコンA、レネフィルコンA、ポリマコン(polymacon)、アクアフィルコン(acquafilcon)A、バラフィルコンA、ガリフィルコンA、セノフィルコンAおよびロトラフィルコンAの各処方を含むが、これらに限定されるものではない。好適なコンタクトレンズ処方は、米国特許第5,998,498号明細書、米国特許出願09/532,943号、2000年8月30日に出願された米国特許出願09/532,943号の一部継続出願、国際公開WO03/22321号、米国特許第6,087,415号明細書、米国特許第5,760,100号明細書、米国特許第5,776,999号明細書、米国特許第5,789,461号明細書、米国特許第5,849,811号明細書および米国特許第5,965,631号明細書で調製されるような、エタフィルコンA、バラフィルコンA、アクアフィルコンA、ガリフィルコンA、ロトラフィルコンA、および、シリコーンヒドロゲルである。これらの特許文献ばかりでなく、この段落で開示された他の全特許文献は、参照によって、この明細書にそっくりそのまま組み込まれる。
【0019】
好適には、金属塩は、シリコーンヒドロゲル成分から形成されるレンズに添加される。シリコーン含有成分は、モノマー、マクロマーまたはプレポリマー中に、少なくとも一つの[-Si-O-Si]基を含有する成分である。好適には、ケイ素原子(Si)、および、これらのケイ素原子に結合した酸素原子(O)は、シリコーン含有成分の全分子量に対して、20重量%を超える量で、より好ましくは30重量%を超える量で、当該シリコーン含有成分中に存在している。有用なシリコーン含有成分は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミドおよびスチリルの各官能基等の重合性官能基を含む。シリコーンヒドロゲル処方中に含有され得るシリコーン含有成分の例は、シリコーンマクロマー類、プレポリマー類およびモノマー類を含むが、これらに限定されるものではない。シリコーンマクロマー類の例は、米国特許第4,259,467号明細書、米国特許第4,260,725号明細書および米国特許第4,261,875号明細書に記述された親水性ペンダント基でメタクリレート化されたポリジメチルシロキサン;米国特許第4,136,250号明細書、米国特許第4,153,641号明細書、米国特許第4,189,546号明細書、米国特許第4,182,822号明細書、米国特許第4,343,927号明細書、米国特許第4,254,248号明細書、米国特許第4,355,147号明細書、米国特許第4,276,402号明細書、米国特許第4,327,203号明細書、米国特許第4,341,889号明細書、米国特許第4,486,577号明細書、米国特許第4,605,712号明細書、米国特許第4,543,398号明細書、米国特許第4,661,575号明細書、米国特許第4,703,097号明細書、米国特許第4,837,289号明細書、米国特許第4,954,586号明細書、米国特許第4,954,587号明細書、米国特許第5,346,946号明細書、米国特許第5,358,995号明細書、米国特許第5,387,632号明細書、米国特許第5,451,617号明細書、米国特許第5,486,579号明細書、米国特許第5,962,548号明細書、米国特許第5,981,615号明細書、米国特許第5,981,675号明細書および米国特許第6,039,913号明細書に記述された重合性官能基を有するポリジメチルシロキサンマクロマー類;米国特許第5,010,141号明細書、米国特許第5,057,578号明細書、米国特許第5,314,960号明細書、米国特許第5,371,147号明細書および米国特許第5,336,797号明細書に記述されているような親水性モノマー類を組み入れたポリシロキサンマクロマー類;米国特許第4,871,785号明細書および米国特許第5,034,461号明細書に記述されているようなポリジメチルシロキサン部およびポリエーテル部を含むマクロマー類;これらの組み合わせ、ならびに、これらの同類を含むが、これに限定されるものではない。この明細書で引用された全特許文献は、参照によって、この明細書にそっくりそのまま組み込まれる。
【0020】
米国特許第5,760,100号明細書、米国特許第5,776,999号明細書、米国特許第5,789,461号明細書、米国特許第5,807,944号明細書、米国特許第5,965,631号明細書および米国特許第5,958,440号明細書に記述されたシリコーンおよび/またはフッ素含有マクロマー類が使用されてもよい。適切なシリコーンモノマー類は、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシランおよび国際公開WO03/22321号に開示された物質等のヒドロキシ官能性シリコーン含有モノマー類、ならびに、米国特許第4,120,570号明細書、米国特許第4,139,692号明細書、米国特許第4,463,149号明細書、米国特許第4,450,264号明細書、米国特許第4,525,563号明細書、米国特許第5,998,498号明細書、米国特許第3,808,178号明細書、米国特許第4,139,513号明細書、米国特許第5,070,215号明細書、米国特許第5,710,302号明細書、米国特許第5,714,557号明細書、および、米国特許第5,908,906号明細書に記述されたモノメタクリロキシプロピル末端化ポリジメチルシロキサン(mPDMS)含有モノマー類またはシロキサンモノマー類を含む。
【0021】
適切な追加のシロキサン含有モノマー類は、米国特許第4,711,943号明細書に記述された3-メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)のアミド類似体、米国特許第5,070,215号明細書に記述されたビニルカルバメートまたはカーボネート類似体、および、米国特許第6,020,445号明細書に収録されたモノマー類、モノメタクリロキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン類、3-メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサン、および、これらの組み合わせを含む。
【0022】
ソフトコンタクトレンズ処方に加えて、ハードコンタクトレンズも使用されてもよい。ハードコンタクトレンズ処方の例は、ポリ(メチル)メタクリレートのポリマー類、シリコンアクリレート(silicon acrylates)、シリコーンアクリレート(silicone acrylates)、フルオロアクリレート、フルオロエーテル、ポリアセチレンおよびポリイミドを含むが、これらに限定されないポリマー類から形成されるものであり、ここで、代表例の調製は、日本特許出願JP200010055号、日本特許第6123860号および米国特許第4,330,383号明細書に見出されることができる。本発明の眼内レンズは、公知の材料を用いて形成され得る。例えば、当該レンズは、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネートまたはこれらの同類の材料、および、これらの組み合わせを含むが、これらに限定されない硬質材料から形成されてもよい。さらに、ヒドロゲル、シリコーン材料、アクリル系材料、フルオロカーボン材料、および、これらの同類の材料、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない可撓性材料が使用されてもよい。典型的な眼内レンズは、国際公開WO0026698号、国際公開WO0022460号、国際公開WO9929750号、国際公開WO9927978号、国際公開WO0022459号、および、日本特許出願JP2000107277号、米国特許第4,301,012号明細書、米国特許第4,872,876号明細書、米国特許第4,863,464号明細書、米国特許第4,725,277号明細書、米国特許第4,731,079号明細書に記述されている。この出願に記述された全参考文献は、参照によって、この明細書にそっくりそのまま組み込まれる。
【0023】
金属塩が本発明の教示に従って組み込まれる場合には、望ましくない霞み(haze)を実質的に有しない眼用装置が製造されることが見出された。好適には、本発明のレンズは、エタフィルコンA、ゲンフィルコンA、ガリフィルコンA、レネフィルコンA、ポリマコン(polymacon)、アクアフィルコン(acquafilcon)A、バラフィルコンAおよびロトラフィルコンAから形成されたレンズなどのレンズに匹敵する光学的な透明度を有する程度に、光学的に透明である。具体的には、本発明のレンズは、約200%未満、好ましくは約150%未満、より好ましくは約100%未満、さらに好ましくは約60%未満、よりさらに好ましくは約50%未満のヘイズ値パーセント(a percent haze)を有している。
【0024】
ヘイズ値の百分率は、以下の方法を用いて測定される。検査用の水和(hudrated)レンズは、室温で、平坦な黒色背景上に置かれた、20ミリメートル×40ミリメートル×10ミリメートルの透明なガラス製セル内のホウ酸緩衝食塩水中に配置されており、当該レンズを収容したセル下方から当該セルの法線に対して66°の角度で、光ファイバ灯(屈折力(power)4〜5.4に設定された口径0.5インチ(約1.27センチメートル)の光導波路を備えたチタン・ツール・サプライ・コーポレーション(Titan Tool Supply Co.)製の光ファイバ灯)からの光を照射し、かつ、レンズプラットホームの14ミリメートル上方に配置されたビデオカメラ(ナビター(Navitar)社製ズームレンズTV Zoom 7000を備えたカメラDVC1300C:19130RGB)で、レンズを収容したセルの法線上から、当該レンズ画像を撮影する。背景の散乱は、ソフトウエアEPIX XCAP V1.0を用いて空のセルの画像を減じることによって、当該レンズの散乱から差し引かれる。散乱光が差し引かれた画像は、当該レンズ中央の10ミリメートルの部分上に統合された後に、レンズ無しをヘイズ値ゼロとして設定し、ヘイズ値100に適宜設定されるジオプター:−1.00のクーパー・サージカル・インク薄型レンズ(CSI Thin Lens(登録商標))と比較することによって定量分析される。五枚のレンズが分析されて、これらの結果は、標準品としてのクーパー・サージカル・インクレンズ(CSI Lens)の百分率として、ヘイズ値を得るように平均化される。
【0025】
用語「硬化」とは、レンズを形成するためのレンズ成分(すなわち、モノマー類、プレポリマー類、マクロマー類およびこれらに同類の成分)の混合物を反応させるために使用される多くの方法のいずれかの方法を云う。レンズは、光または熱によって硬化され得る。好適な硬化方法は、エネルギ放射による方法であり、好ましくは、紫外線または可視光照射による方法、最も好ましくは可視光照射による方法である。本発明のレンズ処方は、震盪または撹拌等、この技術分野における当業者にとって公知の方法のいずれかによって形成され、かつ、ポリマー製品または装置を公知の方法によって形成するために使用され得るものである。
【0026】
例えば、本発明の抗菌性レンズは、反応性成分および任意の希釈剤(複数の希釈剤)を重合開始剤と混合させ、かつ、旋盤加工、切断加工およびこれらの同類の加工によって適切な形状に形成されうる生成物を形成する上で適した条件で硬化させることによって調製されてもよい。または、反応性混合物は、成形型内に配された後に、適切な製品となるように硬化されてもよい。
【0027】
コンタクトレンズの製造において、レンズ処方を処理するための種々のプロセスは、公知であり、回転成形法および静的成形(static casting)法を含む。回転成形法は、米国特許第3,408,429号明細書および米国特許第3,660,545号明細書に開示されており、静的成形法は、米国特許第4,113,224号明細書および米国特許第4,197,266号明細書に開示されている。本発明の抗菌性レンズを製造するための好適な方法は、成型法である。ヒドロゲルレンズの場合において、この成形法では、レンズ処方が最終的な所望のレンズに近似した形状を有する成形型内に配されて、当該レンズ処方が、このレンズ処方中の成分が重合化する条件に置かれることで、硬化した円盤状部材を生成するものであり、この円盤状部材は、多くの異なる処理ステップにさらされ、当該処理ステップは、重合化したレンズを最終的な包装内に封入する前に、当該レンズを膨潤させるか、あるいは他に、平衡化させるために、当該レンズを液体(水、無機塩類、または、有機溶液など)で処理するステップを含むものである。これらの方法は、米国特許第4,495,313号明細書、米国特許第4,680,336号明細書、米国特許第4,889,664号明細書および米国特許第5,039,459号明細書にも記述されており、これらの特許文献は、参照によって、この明細書に組み込まれる。膨潤されず、あるいは他に、平衡化されなかった重合化レンズは、本発明の目的の硬化レンズとみなされる。
【0028】
さらに、本発明は、金属塩を含む抗菌性レンズ、当該金属塩から本質的になる抗菌性レンズ、あるいは、当該金属塩からなる抗菌性レンズを調製する方法を含み、ここで、当該方法は、
(a)硬化レンズを、金属剤を含有する溶液で処理するステップ;および
(b)ステップ(a)で処理されたレンズを、塩前駆体を含有する溶液で処理するステップを含むものであり、当該ステップから本質的になるものであり、あるいは、当該ステップからなるものであり、ここで、当該塩前駆体含有溶液中での塩前駆体のモル比に対する当該金属剤含有溶液中での金属剤のモル比が約0.2を超えるものである。用語「抗菌性レンズ」、「金属塩」、「塩前駆体」、「金属剤」、「溶液」、「モル比」および「処理」は、すべて、上述した意味および好適な範囲を有している。
【0029】
またさらに、本発明は、金属塩を含む抗菌性レンズ、当該金属塩から本質的になる抗菌性レンズ、あるいは、当該金属塩からなる抗菌性レンズであって、ある方法によって形成された、抗菌性レンズを含み、ここで、当該方法は、
(a)硬化レンズを、塩前駆体を含有する溶液で処理するステップ;および
(b)ステップ(a)で処理されたレンズを、金属剤を含有する溶液で処理するステップを含むものであり、当該ステップから本質的になるものであり、あるいは、当該ステップからなるものであり、ここで、当該塩前駆体含有溶液中での塩前駆体のモル比に対する当該金属剤含有溶液中での金属剤のモル比が約0.2を超えるものである。用語「抗菌性レンズ」、「金属塩」、「塩前駆体」、「金属剤」、「溶液」、「モル比」および「処理」は、すべて、上述した意味および好適な範囲を有している。
【0030】
またさらに、本発明は、金属塩を含む抗菌性レンズ、当該金属塩から本質的になる抗菌性レンズ、あるいは、当該金属塩からなる抗菌性レンズであって、ある方法によって形成された抗菌性レンズを含み、ここで、当該方法は、
(a)硬化レンズを、金属剤を含有する溶液で処理するステップ;および
(b)ステップ(a)で処理されたレンズを、塩前駆体を含有する溶液で処理するステップを含むものであり、当該ステップから本質的になるものであり、あるいは、当該ステップからなるものであり、ここで、当該塩前駆体含有溶液中での塩前駆体のモル比に対する当該金属剤含有溶液中での金属剤のモル比が約0.2を超えるものである。用語「抗菌性レンズ」、「金属塩」、「塩前駆体」、「金属剤」、「溶液」、「モル比」および「処理」は、すべて、上述した意味および好適な範囲を有している。
【0031】
ヘイズ値がレンズの透明度に関する一つの測定値であるが、レンズは、全体的に低い透明度を有することができるが、堆積された金属剤の金属剤の局所領域(「局所的堆積領域」)を含むこともできる。本発明のレンズ、および、当該レンズの製造方法に関する利点の一つは、局所的堆積領域の減少である。この利点は、以下の方法に従う暗視野の顕微鏡によって実証され得る。
【0032】
検査される検査用水和レンズは、キンブル・ガラス・インク(Kimble Glass, Inc.)社製の結晶皿(a crystallization dish)[KIMAX 23000 5035、50ミリメートル×35ミリメートル]内に配置される。当該結晶皿には、0.45マイクロメートル以下の孔径のフィルタで濾過されたホウ酸緩衝硫酸ナトリウム溶液(SSPS、10ミリリットル〜12ミリリットル)が添加される。当該レンズは、反射光から得られる画像における不適切な結果(artifacts)を最小限にするために、当該結晶皿の中央付近に配置される。ニコン(Nikon)社製の顕微鏡SMZ1500は、検査用に使用される。当該レンズを収容する結晶皿は、光が通過する試料台(light stage)上に配置される。光源は、最も高い光強度に設定され、かつ、顕微鏡は、暗視野(D.F.)モードに設定される。顕微鏡上の光量調整絞りは、全開に設定される。画像の撮影に使用されるソフトウエアは、「http://www.olympus-sis.com/によって製造されたアキント(Aquinto)」(以前は、アキント(Aquinto)として公知であった)と呼ばれている。ニコン(Nikon)社製のデジタルカメラDXM1200Fは、画像を撮影するために、以下のカメラ設定条件(プログラム・アキント(Program Aquinto)で設定):「水平ミラー」、「垂直ミラー」、「対数値」および「自動更新」が設定から除外され、「露光時間」=53.0555ミリ秒、「色フィルタ」=灰色、「撮影モード」=960×768画素という条件で設定されて使用される。「最適」タブ(プログラム・アキント(Program Aquinto)で設定)下で、全フィルタは、「フィルタなし」に設定される。撮影された画像は、局所的堆積領域を探すために、評価される。
【0033】
本発明を説明するために、以下の実施例が収録される。これらの実施例は、本発明を限定するものではない。当該実施例は、本発明を実施する方法を示唆するだけであることを意味する。コンタクトレンズばかりでなく、他の特殊な製品に精通している者は、本発明を実施する他の方法を見出す場合がある。しかし、当該方法は、本発明の範囲内にあるものとみなされる。
【0034】
〔実施例〕
以下の略称および原料(stock)は、実施例に使用された。
〔硫酸ナトリウム包装用溶液(SSPS)〕
硫酸ナトリウム包装用溶液(SSPS)は、脱イオン水(H2O)に以下の成分を含有している。
1.40重量%の硫酸ナトリウム
0.185重量%のホウ酸ナトリウム[1330-43-4]、マリンクロート(Mallinckrodt)社製
0.926重量%のホウ酸[10043-35-3]、マリンクロート(Mallinckrodt)社製
0.005重量%のメチルセルロース
【0035】
〔硝酸銀溶液700ppm〕
0.7グラムの硝酸銀
1000ミリリットルの脱イオン水
〔ヨウ化ナトリウム溶液〕
1.1グラムのヨウ化ナトリウム
1000グラムの脱イオン水(50ppmのメチルセルロース含有)
【0036】
〔実施例1〕
〔硬化レンズからの抗菌性レンズの調製〕
硬化され、かつ、水和されたガリフィルコンA系レンズは、50ppmのメチルセルロース(レンズ一枚当たり3ミリリットルの1100マイクログラム/ミリリットルの溶液)を含有する1100ppmのヨウ化ナトリウム溶液を充填した瓶内に配置される。当該レンズは、当該瓶から、過剰のヨウ化ナトリウム溶液が除去されたブリスターパックへ移された。硝酸銀溶液(700マイクログラム/ミリリットルの硝酸銀脱イオン水溶液800マイクロリットル)は、2〜5分間で、当該ブリスターパック内に添加された。硝酸銀溶液が除去されると共に、当該レンズが、脱イオン水を収容する瓶内に配置され、かつ、約30分間、放置された。脱イオン水は、新鮮な脱イオン水と交換され、かつ、更に30分間、放置された。その後、当該溶液は、ホウ酸緩衝硫酸ナトリウム溶液(SSPS)と交換された。当該レンズは、ホウ酸緩衝硫酸ナトリウム溶液(SSPS)を収容するブリスターパックへ移された。ブリスターパックが封止され、125℃で18分間、加圧殺菌されて、ヘイズ値および銀の含有量について分析された。レンズ一枚当たりの銀の平均含有量は、約16.0マイクログラムであると確認された。
【0037】
レンズに対する加圧殺菌後における当該レンズ中の銀の含有量は、中性子放射化機器分析法(INAA)によって確認された。中性子放射化機器分析法(INAA)は、原子炉内での中性子の放射による特定の放射性核種の人工的な誘導に基づく定性的かつ定量的な元素分析法である。サンプルに対する照射後に、放射性核種の崩壊によって放出される固有ガンマ線の定量的な測定が行われる。特定エネルギで検出されたガンマ線は、高度の特異性があることを考慮に入れる必要がある特定の放射性核種の存在を示すものである。ベッカー・ディー・エー(Becker, D.A.);グリーンバーグ・アール・アール(Greenberg, R.R.);ストーン・エス・エフ(Stone, S.F.)による放射分析核化学誌(J. Radioanal. Nucl. Chem.)、1992年、第160(1)巻、第41頁〜第53頁;ベッカー・ディー・エー(Becker, D.A.);アンダーソン・ディー・エル(Anderson, D.L.);リンドストローム・アール・エム(Lindstrom, R.M.);グリーンバーグ・アール・アール(Greenberg, R.R.);ガリティ・ケイ・エム(Garrity, K.M.);マッケイ・イー・エー(Mackey, E.A.)による放射分析核化学誌、1994年、第179(1)巻、第149頁〜第154頁。コンタクトレンズ材料中の銀の含有量を定量化するために使用される中性子放射化機器分析法(INAA)の手順は、以下の二つの核反応を使用する:
1.放射化反応において、110Agは、原子炉で生成された放射性中性子の捕獲後に、安定な109Ag(同位体存在度=48.16%)から生成される。
2.減衰反応において、110Ag(τ1/2=24.6秒)は、この放射性核種に特異的なエネルギ(657.8キロ電子ボルト)で生じる、銀の初期濃度に比例した量の陰電子の放射によって、主として崩壊する。
標準品およびサンプルに対する照射による110Agの崩壊に特異的なガンマ線の放出は、ガンマ線分光分析法、定評のある波高分析法によって測定され、これにより、検体の濃度測定値を得る。
【0038】
〔実施例2:高ヘイズ値〕
ガリフィルコンA系レンズは、ヨウ化ナトリウム5000ppmおよび硝酸銀500ppmの濃度を有する溶液を用いて、実施例1と同様に処理されて、16.7±0.4マイクログラムの銀の含有量、クーパー・サージカル・インク(CSI)レンズに対するヘイズ値の百分率175.7±18.8%、モル比:0.09のデータを得た。
【0039】
〔実施例3:低ヘイズ値〕
ガリフィルコンA系レンズは、ヨウ化ナトリウム1100ppmおよび硝酸銀700ppmの濃度を有する溶液を用いて、実施例1と同様に処理されて、16.0±0.3マイクログラムの銀の含有量、クーパー・サージカル・インク(CSI)レンズに対するヘイズ値の百分率37.6±7.8%、モル比:0.56のデータを得た。
【0040】
〔実施例4〕
〔硬化レンズからの抗菌性レンズの調製〕
硬化され、かつ、水和されたガリフィルコンA系レンズは、50ppmのメチルセルロース(レンズ一枚当たり3ミリリットル)を含有するヨウ化ナトリウム溶液を充填した瓶内に配置される。当該レンズは、当該瓶から、過剰のヨウ化ナトリウム溶液が除去されたブリスターパックへ移された。硝酸銀溶液(800マイクロリットル)は、2〜5分間で、当該ブリスターパック内に添加された(表1の濃度および時間を参照されたい)。硝酸銀溶液が除去されて、当該レンズが、脱イオン水を収容する瓶内に配置され、かつ、約30分間、放置された。脱イオン水は、新鮮な脱イオン水と交換され、かつ、更に30分間、放置された。その後、当該溶液は、ホウ酸緩衝硫酸ナトリウム水溶液(SSPS)と交換された。当該レンズは、ホウ酸緩衝硫酸ナトリウム水溶液(SSPS)を収容するブリスターパックへ移された。ブリスターパックが封止され、125℃で18分間、加圧殺菌されて、ヘイズ値および銀の含有量について分析された。図1は、表1のデータを示すグラフである。図1は、約0.2以上のモル比がレンズのヘイズ値の百分率を減少させることを示している。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】モル比とヘイズ値との相関関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩を含む抗菌性レンズを調製する方法において、
前記方法は、
(a)硬化レンズを、塩前駆体を含有する溶液で処理するステップと、
(b)ステップ(a)で処理された前記レンズを、金属剤を含有する溶液で処理するステップと、
を含み、
前記塩前駆体含有溶液中での前記塩前駆体のモル比に対する前記金属剤含有溶液中での前記金属剤のモル比が約0.2を超える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記モル比は、約0.2〜約10.0である、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記モル比は、約0.4〜約2.4である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記モル比は、約0.6〜約2.4である、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記モル比は、約0.8〜約2.4である、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記金属塩がヨウ化銀であり、前記塩前駆体がヨウ化ナトリウムであり、前記金属剤が硝酸銀である、方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法において、
前記モル比は、約0.2〜約10.0である、方法。
【請求項8】
金属塩を含む抗菌性レンズを調製する方法において、
前記方法は、
(a)硬化レンズを、金属剤を含有する溶液で処理するステップと、
(b)ステップ(a)で処理された前記レンズを、塩前駆体を含有する溶液で処理するステップと、
を含み、
前記塩前駆体含有溶液中での前記塩前駆体のモル比に対する前記金属剤含有溶液中での前記金属剤のモル比が約0.2を超える、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記金属塩がヨウ化銀であり、前記塩前駆体がヨウ化ナトリウムであり、前記金属剤が硝酸銀である、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記モル比は、約0.2〜約10.0である、方法。
【請求項11】
金属塩を含み、ある方法によって形成された抗菌性レンズにおいて、
前記方法は、
(a)硬化レンズを、塩前駆体を含有する溶液で処理するステップ;および
(b)ステップ(a)で処理された前記レンズを、金属剤を含有する溶液で処理するステップを含み、
前記塩前駆体含有溶液中での前記塩前駆体のモル比に対する前記金属剤含有溶液中での前記金属剤のモル比が約0.2を超える、抗菌性レンズ。
【請求項12】
請求項11に記載の抗菌性レンズにおいて、
前記金属塩がヨウ化銀であり、前記塩前駆体がヨウ化ナトリウムであり、前記金属剤が硝酸銀である、抗菌性レンズ。
【請求項13】
請求項12に記載の抗菌性レンズにおいて、
前記モル比は、約0.2〜約10.0である、抗菌性レンズ。
【請求項14】
金属塩を含み、ある方法によって形成された抗菌性レンズにおいて、
前記方法は、
(a)硬化レンズを、金属剤を含有する溶液で処理するステップ;および
(b)ステップ(a)で処理された前記レンズを、塩前駆体を含有する溶液で処理するステップを含み、
前記塩前駆体含有溶液中での前記塩前駆体のモル比に対する前記金属剤含有溶液中での前記金属剤のモル比が約0.2を超える、抗菌性レンズ。
【請求項15】
請求項14に記載の抗菌性レンズにおいて、
前記金属塩がヨウ化銀であり、前記塩前駆体がヨウ化ナトリウムであり、前記金属剤が硝酸銀である、抗菌性レンズ。
【請求項16】
請求項15に記載の抗菌性レンズにおいて、
前記モル比は、約0.2〜約10.0である、抗菌性レンズ。

【図1】
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【公表番号】特表2010−508548(P2010−508548A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534918(P2009−534918)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/082776
【国際公開番号】WO2008/055087
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(591175675)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (44)
【Fターム(参考)】