説明

ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの製造方法

【課題】ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを容易に、安価に、且つ収率よく得る方法を提供する。
【解決手段】遷移金属触媒の存在下に、有機金属化合物を用いて、テトラフルオロエチレンからヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを製造する。その後、製造されたヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを、蒸留により精製してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの製造方法に関する。特に、入手容易なテトラフルオロエチレンからヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを製造できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン(CF=CFCF=CF)は、エッチング剤として極めて高性能であり、高い需要がある。そこで、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを容易に、安価に、且つ収率よく得る方法が研究されてきた。
【0003】
ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの合成方法としては、例えば、方法1(特許文献1及び2参照):
【0004】
【化1】

【0005】
方法2:
【0006】
【化2】

【0007】
等が知られているが、いずれの方法も、3段階の反応工程を必要とするため、手間がかかる上にコストが高く、また、収率も充分ではなかった。
【0008】
ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンは、工業的に安価なテトラフルオロエチレンを2量化する方法が考えられるが、テトラフルオロエチレンのC−F結合は、通常化学反応には不活性であって、これを置換する方法は限られた方法しか存在せず、このC−F結合を還元的にカップリングすることで、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを合成することは不可能であった。
【0009】
このように、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを容易に、安価に、且つ収率よく得る方法はいまだ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−192346号公報
【特許文献2】特開2001−192347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを容易に、安価に、且つ収率よく得る方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究をした結果、ニッケル又はパラジウムを含む触媒の存在下に、テトラフルオロエチレンと有機亜鉛化合物とを反応させることで、従来必要だった3段階の反応工程を1段階のみとすることができ、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを容易に、安価に、且つ収率よく得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下に示す製造方法を包含する。
項1.遷移金属触媒の存在下に、有機金属化合物を用いて、テトラフルオロエチレンからヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを製造する方法。
項2.遷移金属触媒が、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム又はコバルトを含む触媒である、項1に記載の方法。
項3.遷移金属触媒が、ニッケル又はパラジウムを含む触媒である、項1又は2に記載の方法。
項4.有機金属化合物が、有機亜鉛化合物である、項1〜3のいずれかに記載の方法。
項5.有機亜鉛化合物が、式(1):
Zn (1)
(式中、2個のRは同じか又は異なり、いずれも置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示す)
で表される化合物である、項4に記載の製造方法。
項6.有機亜鉛化合物が、式(2):
ZnX (2)
(式中、XはCl、Br又はIを示す)
で表される化合物と、式(3):
RMgX (3)
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基;XはCl、Br又はIを示す)

で表される化合物とから系中で作製される、項4又は5に記載の方法。項7.さらに、式(4):
MX (4)
(式中、MはLi、Na、K、Mg、Zn又はCu;n個のXは同じか又は異なり、いずれもCl、Br若しくはI、又は有機酸若しくは炭酸の共役塩基;nは1又は2である)
で表されるフッ素親和性化合物を添加する、項1〜6のいずれかに記載の方法。
項8.前記式(4)において、Xが、Cl、Br若しくはI、又はカルボン酸、スルホン酸若しくは炭酸の共役塩基である、項7に記載の方法。
項9.フッ素親和性化合物がLiI又はLiBrである、項7又は8に記載の方法。
項10.フッ素親和性化合物の投入量が、使用する有機金属化合物1モルに対して、1.1〜10モルである、項7〜9のいずれかに記載の方法。
項11.製造されたヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを、蒸留により精製する工程を備える、項1〜10のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、今まで多くの反応工程を介して製造されてきたヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを、入手容易なテトラフルオロエチレンから1段階の反応工程のみで製造でき、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを容易に、安価に、且つ収率よく得られる。これにより、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンから製造される種々の機能材料の入手も容易となり、その普及も期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、遷移金属触媒の存在下に、有機金属化合物を用いて、テトラフルオロエチレンからヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを製造する。
【0015】
<遷移金属触媒>
遷移金属触媒としては、具体的には、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム又はコバルトを含む触媒が挙げられる。これらの触媒は、試薬として投入するもの又は反応中で生成するもの(触媒活性種)の両方を意味する。
【0016】
パラジウムを含む触媒としては、具体的にはパラジウム錯体が挙げられる。パラジウム錯体としては、0価パラジウム錯体;II価パラジウム錯体から反応中に発生した0価パラジウム錯体;又はこれらとケトン、ジケトン、ホスフィン、ジアミン及びビピリジルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(配位子)とを混合して得られる錯体が挙げられる。
【0017】
0価パラジウム錯体としては、特に限定はないが、例えば、Pd(dba)(dbaはジベンジリデンアセトン)、Pd(cod)(codはシクロオクタ−1,5−ジエン)、Pd(dppe)(dppeは1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)、Pd(PCy(Cyはシクロヘキシル基)、Pd(Pt−Bu(t−Buはt−ブチル基)及びPd(PPh(Phはフェニル基)等が挙げられる。
【0018】
II価パラジウム錯体としては、例えば、塩化パラジウム、臭化パラジウム、酢酸パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、ジクロロ(η−1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、又はこれらにトリフェニルホスフィン等のホスフィン配位子が配位した錯体等が挙げられる。これらのII価パラジウム錯体は、例えば、反応中に共存する還元種(ホスフィン、亜鉛、有機金属試薬等)により還元されて0価パラジウム錯体が生成する。
【0019】
上記の0価パラジウム錯体又はII価パラジウム錯体から還元により生じた0価パラジウム錯体は、反応中で、必要に応じて添加されるケトン、ジケトン、ホスフィン、ジアミン、ビピリジル等の化合物(配位子)と作用して、反応に関与する0価のパラジウム錯体に変換することもできる。なお、反応中において、0価のパラジウム錯体にこれらの配位子がいくつ配位しているかは必ずしも明らかでは無い。
【0020】
これらパラジウム錯体は上記の様な配位子を用いることで、反応基質との均一な溶液を形成させて反応に用いることが多いが、これ以外にもポリスチレン、ポリエチレン等のポリマー中に分散又は担持させた不均一系触媒としても用いることが可能である。このような不均一系触媒は、触媒の回収等のプロセス上の利点を有する。具体的な触媒構造としては、以下の化学式:
【0021】
【化3】

【0022】
に示すような、架橋したポリスチレン鎖にホスフィンを導入した、ポリマーホスフィンなどで金属原子を固定したもの等が挙げられる。
【0023】
また、これ以外にも、以下:
1)Kanbaraら、Macromolecules, 2000年、33巻、657頁
2)Yamamotoら、J. Polym. Sci., 2002年、40巻、2637頁
3)特開平06−32763号公報
4)特開2005−281454号公報
5)特開2009−527352号公報
に示す報告記載のポリマーホスフィンも利用可能である。
【0024】
ここで、ケトンとしては、特に制限されないが、ジベンジリデンアセトン等が挙げられる。
【0025】
ジケトンとしては、特に制限されないが、例えば、アセチルアセトン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1,3−ジフェニルプロパンジオン等のβジケトン等が挙げられる。
【0026】
ホスフィンとしては、ハロゲン−リン結合を有するホスフィン類では、それ自身が有機金属化合物と反応してしまうので、トリアルキルホスフィン又はトリアリールホスフィンが好ましい。トリアルキルホスフィンとしては、具体的には、トリシクロヘキシルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリt−ブチルホスフィン、トリテキシルホスフィン、トリアダマンチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、ジt−ブチルメチルホスフィン、トリビシクロ[2,2,2]オクチルホスフィン、トリノルボルニルホスフィン等のトリ(C3−20アルキル)ホスフィン等が挙げられる。また、トリアリールホスフィンとしては、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメシチルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン等のトリ(単環アリール)ホスフィン等が挙げられる。これらの中でも、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリt−ブチルホスフィンが好ましい。
【0027】
また先に挙げたように、ホスフィン単位をポリマー鎖に導入した不均一系触媒用のアリールホスフィンも好ましく用いることが出来る。具体的には以下の化学式:
【0028】
【化4】

【0029】
に示す、トリフェニルホスフィンの1つのフェニル基をポリマー鎖に結合させたトリアリールホスフィンが例示される。
【0030】
なお、目的の反応を進行させるためには、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等のような二座配位子を使用しないことが好ましい。
【0031】
ジアミンとしては、特に制限されないが、テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジフェニルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0032】
これらの配位子のうち、ホスフィン、ジアミン、ビピリジルの配位子が好ましく、さらにトリアリールホスフィンが好ましく、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。同様に、上述したような、トリフェニルホスフィンの1つのフェニル基を、ポリマー鎖に結合させたトリアリールホスフィン類も好ましい。
【0033】
また、ニッケルを含む触媒としては、具体的にはニッケル錯体が挙げられる。ニッケル錯体としては、0価ニッケル錯体;II価ニッケル錯体から反応中に発生した0価ニッケル錯体;又はこれらとケトン、ジケトン、ホスフィン、ジアミン及びビピリジルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(配位子)とを混合して得られる錯体が挙げられる。
【0034】
0価ニッケル錯体とは、特に限定はないが、例えば、Ni(cod)、Ni(cdd)(cddはシクロデカ−1,5−ジエン)、Ni(cdt)(cdtはシクロデカ−1,5,9−トリエン)、Ni(vch)(vchは4−ビニルシクロヘキセン)、Ni(CO)、(PCyNi−N≡N−Ni(PCy、Ni(PPh等が挙げられる。
【0035】
II価ニッケル錯体とは、例えば、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)、又はこれらにトリフェニルホスフィン等のホスフィン配位子が配位した錯体等が挙げられる。これらのII価ニッケル錯体は、例えば、反応中に共存する還元種(ホスフィン、亜鉛、有機金属試薬等)により還元されて0価ニッケル錯体が生成する。
【0036】
上記の0価ニッケル錯体又はII価ニッケル錯体から還元により生じた0価ニッケル錯体は、反応中で、必要に応じ添加される配位子と作用して、反応に関与する0価のニッケル錯体に変換することもできる。なお、反応中において、0価のニッケル錯体にこれらの配位子がいくつ配位しているかは必ずしも明らかでは無い。
【0037】
これらニッケル錯体は上記の様な配位子を用いることで、反応基質との均一な溶液を形成させて反応に用いることが多いが、これ以外にもポリスチレン、ポリエチレン等のポリマー中に分散又は担持させた不均一系触媒としても用いることが可能である。このような不均一系触媒は、触媒の回収等のプロセス上の利点を有する。具体的な触媒構造としては、以下の化学式:
【0038】
【化5】

【0039】
に示すような、架橋したポリスチレン鎖にホスフィンを導入した、ポリマーホスフィンなどで金属原子を固定したもの等が挙げられる。
【0040】
また、これ以外にも、以下:
1)Kanbaraら、Macromolecules, 2000年、33巻、657頁
2)Yamamotoら、J. Polym. Sci., 2002年、40巻、2637頁
3)特開平06−32763号公報
4)特開2005−281454号公報
5)特開2009−527352号公報
に示す報告記載のポリマーホスフィンも利用可能である。
【0041】
ここで、ケトンとしては、特に制限されないが、ジベンジリデンアセトン等が挙げられる。
【0042】
ジケトンとしては、特に制限されないが、例えば、アセチルアセトン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1,3−ジフェニルプロパンジオン等のβジケトン等が挙げられる。
【0043】
ここで、ホスフィンとしては、ハロゲン−リン結合を有するホスフィン類では、それ自身が有機金属化合物と反応してしまうので、トリアルキルホスフィン又はトリアリールホスフィンが好ましい。トリアルキルホスフィンとしては、具体的には、トリシクロヘキシルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリt−ブチルホスフィン、トリテキシルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリアダマンチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、ジt−ブチルメチルホスフィン、トリビシクロ[2,2,2]オクチルホスフィン、トリノルボルニルホスフィン等のトリ(C3−20アルキル)ホスフィン等が挙げられる。トリアリールホスフィンとしては、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメシチルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン等のトリ(単環アリール)ホスフィン等が挙げられる。
【0044】
また先に挙げたように、ホスフィン単位をポリマー鎖に導入した不均一系触媒用のアリールホスフィンも好ましく用いることが出来る。具体的には以下の化学式:
【0045】
【化6】

【0046】
に示す、トリフェニルホスフィンの1つのフェニル基をポリマー鎖に結合させたトリアリールホスフィンが例示される。
【0047】
なお、目的の反応を進行させるためには、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等のような二座配位子を使用しないことが好ましい。
【0048】
これらの配位子のうち、トリアリールホスフィンが好ましく、特にトリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン等が好ましい。同様に、上述したような、トリフェニルホスフィンの1つのフェニル基を、ポリマー鎖に結合させたトリアリールホスフィン類も好ましい。
【0049】
ジアミンとしては、テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジフェニルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0050】
ニッケル錯体としては、系中で生じる0価のニッケル錯体を安定化させる機能が高いものが好ましい。具体的には、ホスフィン、ジアミン、ビピリジル等の配位子を有しているものが好ましく、特にホスフィンを有しているものが好ましい。これらの中でも、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリt−ブチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィンが好ましい。同様に、上述したような、トリフェニルホスフィンの1つのフェニル基を、ポリマー鎖に結合させたトリアリールホスフィン類も好ましい。
【0051】
その他、白金を含む触媒としては、Pt(PPh、Pt(cod)、Pt(dba)(dbaはジベンジリデンアセトン)、塩化白金、臭化白金、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)、ジクロロ(η−1,5−シクロオクタジエン)白金(II)、又はこれらにトリフェニルホスフィン等のホスフィン配位子が配位した錯体等;ルテニウムを含む触媒としては、(Cl)Ru(PPh、Ru(cot)(cod)(cotはシクロオクタ−1,3,5−トリエン)、塩化ルテニウム(III)、ジクロロ(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)、又はこれらにトリフェニルホスフィン等のホスフィン配位子が配位した錯体等;ロジウムを含む触媒としては、(Cl)Rh(PPh、塩化ロジウム(III)、クロロ(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム(III)、又はこれらにトリフェニルホスフィン等のホスフィン配位子が配位した錯体等;コバルトを含む触媒としては、(Cl)Co(PPh、(CCo(PPh(Cはシクロペンタジエニル基)、(CCo(cod)、トリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)、塩化コバルト(II)、又はこれらにトリフェニルホスフィン等のホスフィン配位子が配位した錯体等が挙げられる。
【0052】
上記の触媒のうち、目的とするヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの反応性、収率、選択性等の観点から、ニッケル又はパラジウムを含む触媒、なかでもパラジウムを含む触媒、さらにパラジウム錯体、特に0価のパラジウムのホスフィン錯体(とりわけトリフェニルホスフィン錯体又は以下の化学式:
【0053】
【化7】

【0054】
で示したポリマーホスフィン錯体)が好ましい。
【0055】
遷移金属触媒の使用量は、特に制限されるわけではないが、試薬として投入する遷移金属触媒の使用量は、後述する有機金属化合物1モルに対して、通常、0.0001〜0.5モル程度、好ましくは0.0001〜0.1モル程度である。
【0056】
配位子を投入する場合には、配位子の使用量は、後述する有機金属化合物1モルに対して、通常、0.0002〜1モル程度、好ましくは0.0002〜0.2モル程度である。また、配位子と触媒のモル比は、通常2/1〜10/1であり、好ましくは2/1〜4/1である。
【0057】
<有機金属化合物>
本発明で使用される有機金属化合物は、反応系内において、用いる溶媒と溶媒和物を形成していてもよい。また、市販されている試薬を用いることができ、また公知の方法で製造することもできる。この有機金属化合物としては、例えば、有機亜鉛化合物、有機スズ化合物、有機インジウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機アルミニウム化合物、有機ケイ素化合物等が挙げられる。
【0058】
有機亜鉛化合物の典型例としては、例えば、式(1−1)又は(1−2):
Zn (1−1)
(式中、2個のRは同じか又は異なり、いずれも置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示す)
RZnX (1−2)
(式中、Rは式(1−1)と同じ;XはCl、Br又はIを示す)
で表される化合物等が挙げられる。
【0059】
Rで示される置換基を有してもよいアリール基におけるアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル基等の単環、二環又は三環のアリール基が挙げられる。アリール基上の置換基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル等の低級(特にC1〜6)アルキル基;ビニル、アリル、クロチル等の低級(特にC2〜6)アルケニル基;メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ等の低級(特にC1〜6)アルコキシ基;フェニル、ナフチル等のアリール基等が挙げられる。アリール基は、上記置換基で1〜4個(特に1〜2個)置換されていてもよい。Rとして好ましくはフェニル基である。
【0060】
Rで示される置換基を有しても良いアルキル基におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル等の低級(特にC1〜6)アルキル基が挙げられる。アルキル基上の置換基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ等の低級(特にC1〜6)アルコキシ基;フェニル、ナフチル等のアリール基等が挙げられる。アルキル基は、上記置換基で1〜3個(特に1〜2個)置換されていてもよい。
【0061】
上記の有機亜鉛化合物としては、例えば、式(1−1)又は(1−2)で表される有機亜鉛化合物を投入してもよいし、式(2):
ZnX (2)
(式中、XはCl、Br又はIを示す)
で表される化合物と、式(3):
RMgX (3)
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基で、式(1−1)又は(1−2)と同じである;XはCl、Br又はIを示す)
で表される化合物とを投入して式(1−1)又は(1−2)で表される化合物を形成してもよい。
【0062】
なお、X及びXは好ましくはBr又はClである。
【0063】
基質であるテトラフルオロエチレン(TFE)の使用量は、通常、有機金属化合物1モルに対して、0.1〜100モル程度、好ましくは0.5〜10モル程度を用いることができる。
【0064】
上記の有機亜鉛化合物以外の有機金属化合物としては、例えば、有機スズ化合物(RSnX4−n(Rは式(3)と同じ;Xは式(2)と同じ;n=1〜4の整数))、有機インジウム化合物(RInX3−n(Rは式(3)と同じ;Xは式(2)と同じ;n=1〜3の整数))、有機ジルコニウム化合物(RZrX4−n(Rは式(3)と同じ;Xは式(2)と同じ;n=1〜4の整数))、有機ホウ素化合物(RBX3−n(Rは式(3)と同じ;Xは式(2)と同じ;n=1〜3の整数))、有機アルミニウム化合物(RAlX3−n(Rは式(3)と同じ;Xは式(2)と同じ;n=1〜3の整数))、有機ケイ素化合物(RSiX4−n(Rは式(3)と同じ;Xは式(2)と同じ;n=1〜4の整数))等が挙げられる。
【0065】
<フッ素親和性化合物>
本発明の製造方法では、反応系にさらにフッ素親和性化合物を添加して、触媒反応を促進することができる。
【0066】
フッ素親和性化合物としては、フッ素原子との親和性を有するルイス酸性を有する金属イオンからなる塩化合物を挙げることができる。具体的には、式(4):
MX (4)
(式中、MはLi、Na、K、Mg、Zn又はCu;n個のXは同じか又は異なり、いずれもCl、Br若しくはI、又は有機酸(特にカルボン酸、スルホン酸等)若しくは炭酸の共役塩基;nは1又は2である)
で表されるフッ素親和性化合物が挙げられる。なお、MがCuの場合は、1価及び2価のいずれでもよい。
【0067】
例えば、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化銅、カルボン酸リチウム、カルボン酸ナトリウム、スルホン酸リチウム、スルホン酸ナトリウム、炭酸リチウム等が挙げられる。具体的には、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム;臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム等のハロゲン化ナトリウム;臭化カリウム、ヨウ化カリウム等のハロゲン化カリウム;臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウム;塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛;塩化銅(II)、塩化銅(I)、臭化銅(II)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(II)、ヨウ化銅(I)等のハロゲン化銅;酢酸リチウム、ギ酸リチウム等のカルボン酸リチウム;酢酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム;ベンゼンスルホン酸リチウム、トルエンスルホン酸リチウム等のスルホン酸リチウム;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸ナトリウム;炭酸リチウム等が挙げられる。好ましくは、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム、塩化亜鉛等のハロゲン化亜鉛又は酢酸リチウム等のカルボン酸リチウムである。
【0068】
フッ素親和性化合物を投入する場合、その使用量は、通常、有機金属化合物1モルに対して、1.1〜10モル程度、好ましくは1.5〜5モル程度とすることができる。
【0069】
<その他条件>
反応温度は特に制限されないが、通常、−100℃〜200℃、0℃〜150℃、好ましくは室温(20℃程度)〜100℃が挙げられる。C−F結合への遷移金属触媒の酸化的付加反応の促進の観点から、0℃〜150℃、好ましくは室温(20℃程度)〜100℃の加熱条件が挙げられる。反応で得られるヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの重合等の副反応が起きない程度に、その上限を設定することができる。
【0070】
また、反応時間も特に制限されないが、10分〜72時間程度が挙げられる。
【0071】
反応雰囲気は、特に限定されないが、有機金属化合物及び遷移金属触媒の活性を考慮して、通常アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行われる。また、反応圧力も、加圧下でも、常圧下でもよいし、減圧下でもよい。一般に加圧下で行うことが好ましく、その場合、0.1〜10MPa程度、好ましくは0.1〜1MPa程度である。
【0072】
使用する溶媒としては、反応に悪影響を与えない溶媒であれば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、グライム、ジグライム等のエーテル系溶媒;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル系溶媒等を使用することができる。中でも、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、ジオキサン、THF等が好ましく、特に、THF、ジオキサンが好ましい。
【0073】
<精製工程>
反応により得られたヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンは、慣用されている精製方法により、例えば蒸留により精製することができる。また、反応により生成したヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンは反応系外へ、例えばガスの状態で抜出して、−70℃程度に冷却されたコールドトラップに捕集することができる。
【0074】
このように、本発明では、エッチング剤として非常に有用なヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを、容易に、安価に、且つ収率よく得ることができる。
【0075】
また、この方法により得られるヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを用いて、種々の有用な機能材料を容易に得ることができる。
【実施例】
【0076】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。なお、以下全ての操作は窒素雰囲気下で行った。
【0077】
また、実施例で用いる略号は、それぞれ
Ph:フェニル
dba:ジベンジリデンアセトン
THF:テトラヒドロフラン
TFE:テトラフルオロエチレン
Me:メチル
Et:エチル
Cy:シクロヘキシル
Cyp:シクロペンチル
である。
【0078】
実施例1
グローブボックス中、ZnPh(22.0mg、0.100mmol)、LiI(32.1mg、0.240mmol)、Pd(dba)(5.0mg、5.0×10−3mmol)、PPh(5.3mg、0.02mmol)をTHF(0.4mL)/THF−d(0.1mL)の混合溶媒に溶解させて得られる溶液を耐圧チューブに移し、α,α,α−トリフルオロトルエン(12.3μL、0.100mmol:NMR測定時の内部標準)を加え、チューブ内を脱気減圧した。さらにここにTFE(0.313mmol;3.5atmまで加圧した)を加え、室温で33時間反応させた。その後さらに、60℃で12時間加熱した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが11%の収率で得られたことを確認した。
【0079】
ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン
19F−NMR(THF/THF−d):δ −95.7(m,2F,CFF=CF−),−109.7(m,2F,CFF=CF−),−183.0(m,2F,CFF=CF−).
【0080】
実施例2
グローブボックス中、ZnPh(22.0mg、0.100mmol)、LiI(66.9mg、0.500mmol)をTHF(0.4mL)/THF−d(0.1mL)の混合溶媒に溶解させて得られる溶液を耐圧チューブに移し、Pd(dba)の0.5mMのTHF溶液(20μL、1×10−5mmol)をα,α,α−トリフルオロトルエン(12.3μL、0.100mmol:NMR測定時の内部標準)を加え、チューブ内を脱気減圧した。さらにここにTFE(0.313mmol;3.5atmまで加圧した)を加え、40℃で3時間加熱した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが12%の収率で得られたことを確認した。
【0081】
実施例3
グローブボックス中、LiI(32.1mg、0.240mmol)、Pd(dba)(5.0mg、5.0×10−3mmol)、PPh(5.3mg、0.02mmol)をTHF(0.4mL)/C(0.1mL)の混合溶媒に溶解させて得られる溶液を耐圧チューブに移し、ZnMeの1Mのヘキサン溶液(100μL、0.100mmol)と混合させた。続いて、α,α,α−トリフルオロトルエン(12.3μL、0.100mmol:NMR測定時の内部標準)を加え、チューブ内を脱気減圧した。さらにここにTFE(0.313mmol;3.5atmまで加圧した)を加え、60℃で16時間加熱した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが44%の収率で得られたことを確認した。
【0082】
実施例4
グローブボックス中、LiBr(20.8mg、0.240mmol)、Pd(dba)(5.0mg、5.0×10−3mmol)、PPh(5.3mg、0.02mmol)をTHF(0.4mL)/C(0.1mL)の混合溶媒に溶解させて得られる溶液を耐圧チューブに移し、ZnMeの1Mのヘキサン溶液(100μL、0.100mmol)と混合させた。続いて、α,α,α−トリフルオロトルエン(12.3μL、0.100mmol:NMR測定時の内部標準)を加え、チューブ内を脱気減圧した。さらにここにTFE(0.313mmol;3.5atmまで加圧した)を加え、60℃で16時間加熱した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが37%の収率で得られたことを確認した。
【0083】
実施例5
グローブボックス中、LiI(32.1mg、0.240mmol)、Pd(dba)(5.0mg、5.0×10−3mmol)、PPh(5.3mg、0.02mmol)をTHF(0.4mL)/C(0.1mL)の混合溶媒に溶解させて得られる溶液を耐圧チューブに移し、ZnMeの1Mのヘキサン溶液(115μL、0.115mmol)と混合させた。続いて、α,α,α−トリフルオロトルエン(12.3μL、0.100mmol:NMR測定時の内部標準)を加え、チューブ内を脱気減圧した。さらにここにTFE(0.313mmol;3.5atmまで加圧した)を加え、60℃で16時間加熱した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが47%の収率で得られたことを確認した。
【0084】
実施例6
グローブボックス中、LiI(32.1mg、0.240mmol)、Pd(dba)(5.0mg、5.0×10−3mmol)、PPh(5.3mg、0.02mmol)をTHF−d(0.5mL)に溶解させて得られる溶液を耐圧チューブに移し、ZnEt(12.4mg、0.100mmol)と混合させた。続いて、α,α,α−トリフルオロトルエン(12.3μL、0.100mmol:NMR測定時の内部標準)を加え、チューブ内を脱気減圧した。さらにここにTFE(0.313mmol;3.5atmまで加圧した)を加え、室温で9時間反応させた。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが26%の収率で得られたことを確認した。
【0085】
実施例7
グローブボックス中、LiI(32.1mg、0.240mmol)、Pd(dba)(0.1mg、1.0×10−4mmol)、PCy(0.95mg、4.0×10−3mmol)をTHF−d(0.5mL)に溶解させて得られる溶液を耐圧チューブに移し、ZnEt(12.4mg、0.100mmol)と混合させた。続いて、α,α,α−トリフルオロトルエン(12.3μL、0.100mmol:NMR測定時の内部標準)を加え、チューブ内を脱気減圧した。さらにここにTFE(0.313mmol;3.5atmまで加圧した)を加え、60℃で10時間加熱した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが39%の収率で得られたことを確認した。
【0086】
実施例8
グローブボックス中、LiI(32.1mg、0.240mmol)、Pd(dba)(0.1mg、1.0×10−4mmol)、PCyp(0.95mg、4.0×10−3mmol)をTHF−d(0.5mL)に溶解させて得られる溶液を耐圧チューブに移し、ZnEt(12.4mg、0.100mmol)と混合させた。続いて、α,α,α−トリフルオロトルエン(12.3μL、0.100mmol:NMR測定時の内部標準)を加え、チューブ内を脱気減圧した。さらにここにTFE(0.313mmol;3.5atmまで加圧した)を加え、60℃で10時間加熱した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが42%の収率で得られたことを確認した。
【0087】
実施例9
グローブボックス中、LiI(32.1mg、0.240mmol)、Pd(dba)(0.01mg、1.0×10−5mmol)、PCy(0.01mg、4.0×10−5mmol)をTHF−d(0.5mL)に溶解させて得られる溶液を耐圧チューブに移し、ZnEt(12.4mg、0.100mmol)と混合させた。続いて、α,α,α−トリフルオロトルエン(12.3μL、0.100mmol:NMR測定時の内部標準)を加え、チューブ内を脱気減圧した。さらにここにTFE(0.313mmol;3.5atmまで加圧した)を加え、60℃で18時間加熱した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが55%の収率で得られたことを確認した。
【0088】
実施例10
グローブボックス中、Pd(dba)(5.0mg、5.0×10−3mmol)、PPh(5.3mg、0.02mmol)をTHF(0.4mL)/C(0.1mL)の混合溶媒に溶解させて得られる溶液を耐圧チューブに移し、ZnCl(13.6mg、0.100mmol)及びPhMgBrの1MのTHF溶液(200μL、0.200mmol)と混合させた。続いて、α,α,α−トリフルオロトルエン(12.3μL、0.100mmol:NMR測定時の内部標準)を加え、チューブ内を脱気減圧した。さらにここにTFE(0.313mmol;3.5atmまで加圧した)を加え、室温で44時間反応させた。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが13%の収率で得られたことを確認した。
【0089】
実施例11
グローブボックス中、LiI(18.5mg、0.138mmol)、Pd(dba)(5.0mg、5.0×10−3mmol)、PPh(5.3mg、0.02mmol)を1,4−ジオキサン(0.4mL)/C(0.1mL)の混合溶媒に溶解させて得られる溶液を耐圧チューブに移し、ZnMeの1Mのヘキサン溶液(115μL、0.115mmol)と混合させた。続いて、α,α,α−トリフルオロトルエン(12.3μL、0.100mmol:NMR測定時の内部標準)を加え、チューブ内を脱気減圧した。さらにここにTFE(0.313mmol;3.5atmまで加圧した)を加え、60℃で59時間加熱した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが13%の収率で得られたことを確認した。
【0090】
実施例12
グローブボックス中、LiI(18.5mg、0.138mmol)、Pd(dba)(5.0mg、5.0×10−3mmol)、PPh(5.3mg、0.02mmol)をTHF(0.4mL)/C(0.1mL)の混合溶媒に溶解させて得られる溶液を耐圧チューブに移し、ZnMeの1Mのヘキサン溶液(115μL、0.115mmol)と混合させた。続いて、α,α,α−トリフルオロトルエン(12.3μL、0.100mmol:NMR測定時の内部標準)を加え、チューブ内を脱気減圧した。さらにここにTFE(0.313mmol;3.5atmまで加圧した)を加え、60℃で16時間加熱した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが23%の収率で得られたことを確認した。
【0091】
実施例13
グローブボックス中、tetrakis(triphenylphosphine)palladium, polymer-bound 200-400 mesh, 2% cross-linked with divinylbenzene(20.0mg,0.01〜0.018mmol),LiI(32.2mg,0.240mmol)のTHF−d(0.4mL)/C(0.1mL)溶液を耐圧チューブ中に調製し、これに(CZn(12.5mg,0.100mmol)とα,α,α−trifluorotoluene(12.3μL,0.100mmol:19F−NMR測定時の内部標準)を加えた。さらにここにTFE(0.313mmol、0.35MPaまで封入した)を加えた。この反応溶液を40℃で48時間さらに60℃で21時間放置した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロブタジエンが43%の収率で得られたことを確認した。
【0092】
実施例14
グローブボックス中、tetrakis(triphenylphosphine)palladium, polymer-bound 200-400 mesh, 2% cross-linked with divinylbenzene(2.0mg,0.001〜0.0018mmol),LiI(66.9mg,0.500mmol)のTHF−d(0.4mL)/C(0.1mL)溶液を耐圧チューブ中に調製し、これに(CZn(12.5mg,0.100mmol)とα,α,α−trifluorotoluene(12.3μL,0.100mmol:19F−NMR測定時の内部標準)を加えた。さらにここにTFE(0.313mmol、0.35MPaまで封入した)を加えた。この反応溶液を60℃で95時間放置した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロブタジエンが39%の収率で得られたことを確認した。
【0093】
実施例15
グローブボックス中、tetrakis(triphenylphosphine)palladium, polymer-bound 200-400 mesh, 2% cross-linked with divinylbenzene(2.0mg,0.001〜0.0018mmol),LiI(66.9mg,0.500mmol)のTHF(0.4mL)/THF−d(0.1mL)溶液を耐圧チューブ中に調製し、これに(CZn(12.5mg,0.100mmol)とα,α,α−trifluorotoluene(12.3μL,0.100mmol:19F−NMR測定時の内部標準)を加えた。さらにここにTFE(0.313mmol、0.35MPaまで封入した)を加えた。この反応溶液を60℃で25時間放置した。反応を19F−NMRで追跡し、内部標準より、ヘキサフルオロブタジエンが46%の収率で得られたことを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属触媒の存在下に、有機金属化合物を用いて、テトラフルオロエチレンからヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを製造する方法。
【請求項2】
遷移金属触媒が、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム又はコバルトを含む触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遷移金属触媒が、ニッケル又はパラジウムを含む触媒である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
有機金属化合物が、有機亜鉛化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
有機亜鉛化合物が、式(1−1)又は(1−2):
Zn (1−1)
(式中、2個のRは同じか又は異なり、いずれも置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示す)
RZnX (1−2)
(式中、Rは式(1−1)と同じ;XはCl、Br又はIを示す)
で表される化合物である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
有機亜鉛化合物が、式(2):
ZnX (2)
(式中、XはCl、Br又はIを示す)
で表される化合物と、式(3):
RMgX (3)
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基;XはCl、Br又はIを示す)
で表される化合物とから系中で作製される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
さらに、式(4):
MX (4)
(式中、MはLi、Na、K、Mg、Zn又はCu;n個のXは同じか又は異なり、いずれもCl、Br若しくはI、又は有機酸若しくは炭酸の共役塩基;nは1又は2である)
で表されるフッ素親和性化合物を添加する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記式(4)において、Xが、Cl、Br若しくはI、又はカルボン酸、スルホン酸若しくは炭酸の共役塩基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
フッ素親和性化合物がLiI又はLiBrである、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
フッ素親和性化合物の投入量が、使用する有機金属化合物1モルに対して、1.1〜10モルである、請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
製造されたヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを、蒸留により精製する工程を備える、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2012−67068(P2012−67068A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53403(P2011−53403)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】