説明

ヘキシルデカノールと短鎖脂肪酸とのエステル

本発明は、2−ヘキシルデカノールと一般式(I):R−COOH[式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝の飽和または不飽和アルキル基である。]で示される脂肪酸との1種以上のエステルの、化粧品および/または医薬品の製造におけるおよび/または製造のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキシルデカノールと短鎖脂肪酸とのエステル、並びに化粧品および/または医薬品の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケアおよびヘアケアのための化粧品分野、並びに医薬品分野において、消費者は非常に多くの要求を持っている。使用目的を決める洗浄効果およびケア効果の他に、可能な限り高い皮膚科学的適合性、良好な脂肪回復特性、洗練された外観、最適な官能効果および貯蔵安定性のような様々なパラメーターに価値がおかれる。
【0003】
ヒトの皮膚および毛髪の洗浄およびケアのために使用される製剤は、一般に、一連の界面活性物質に加えて特に油体および水を含んでなる。使用される油体/エモリエントは、例えば、炭化水素、エステル油、並びに植物性および動物性の油/脂肪/ワックスである。官能特性および最適な皮膚科学的適合性に関する市場の高い要求を満足させるため、新規な油体が継続的に開発され試されている。
【0004】
ヘキシルデカノールと脂肪酸とのエステルは、例えばUS 6,391,287(L' Oreal)から知られており、同特許には、二環式芳香族化合物のための共可溶化剤として、ヘキシルデシルカプリレート(=オクタノエート)、ヘキシルデシルラウレート(=ドデカノエート)、ヘキシルデシルパルミテート(=ヘキサデカノエート)およびヘキシルデシルステアレート(=オクタデカノエート)が記載されている。
【0005】
また、化合物ヘキシルデシル2−エチルヘキサノエートは、高級アルコール工業(株)からICEHの商品名で販売されている。
【0006】
US 5,656,664は、α−メチル分枝アルコールと酸とのエステル、および皮膚用「コンディショニング剤」としてのその使用を記載している。該エステルの欠点は、不十分な官能特性、および特に熱応力下での低い安定性である。
【0007】
Journal of the American Society, 第107巻、第24号、1985, 第7073頁、Scheme II, Example 11に、G. Kirchnerらは2−ヘキサデカノールとブタン酸とのエステルを記載している。
【0008】
より柔軟な使用範囲(例えば別の化粧品成分との適合性)を有し、かつ官能特性に対する高い要求を満足する新規な油体に対する要求がなお存在する。特に興味深いものは、皮膚に「軽い」と称される感触をもたらす油体である。皮膚への分布性および広がり性が非常に重要である。最近の消費者は、油体およびそれから製造された製剤が滑らかな皮膚感触をもたらし、皮膚がケアされたと感じることを求める。最近の化粧品および/または医薬品用原料に対する更なる要求は、それらが再生可能な植物性原料に基づいて得られることである。特に重要なものは、有利な官能特性を特徴とする化合物である。また、特に重要なものは、貯蔵安定な、特に高温で貯蔵安定な化合物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US 6,391,287
【特許文献2】US 5,656,664
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】G. Kirchnerら、Journal of the American Society, 第107巻、第24号、1985, 第7073頁、Scheme II, Example 11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、特に油体/エモリエントとして化粧品および/または医薬品に適しており、かつ官能的に著しく「軽い」皮膚感触をもたらす新規物質を提供することである。更に、該物質は、再生可能な植物性原料に基づいて得られるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
意外なことに、2−ヘキシルデカノールと短鎖脂肪酸とのエステルが、化粧品および/または医薬品に適しており、特に官能的に著しく有利な油体として該製剤に使用できることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のエステルは、従来技術で知られている化合物と比べて、有利な官能特性および高い安定性を特徴とする。
【0014】
本発明は、2−ヘキシルデカノールと一般式(I):
−COOH
[式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝の飽和または不飽和アルキル基である。]
で示される脂肪酸との1種以上のエステルの、化粧品および/または医薬品の製造におけるおよび/または製造のための使用を提供する。
【0015】
本発明のエステルは、化粧品および/または医薬品における油体として特に適している。
【0016】
本発明は更に、(R)−2−ヘキシルデシルブタン酸を除く、2−ヘキシルデカノールと一般式(I):
−COOH
[式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝の飽和または不飽和アルキル基である。]
で示される脂肪酸とのエステルを提供する。
【0017】
2−ヘキシルデカノールをエステルのアルコール成分として使用する。2−ヘキシルデカノール(同義語として、2−ヘキシル−1−デカノールまたは2−ヘキシルデシルアルコール)は、例えば、Eutanol(登録商標)G 16(Cognis Deutschand GmbH & Co KG)またはExxal(登録商標)16(Exxon Chemical Company)の商品名で市販されている。2−ヘキシルデカノールは、高温高圧でナトリウムまたは銅の影響下に(第一級)アルコールを自己縮合させることによって得られるいわゆるゲルベアルコールである。2−ヘキシルデカノールは、キラル炭素原子を有し、従って、R鏡像異性体、S鏡像異性体、それら2種の異性体の所望の混合物、およびラセミ化合物として存在できる。本発明における2−ヘキシルデカノールのエステルは、各々の鏡像異性体のエステル、それら鏡像異性体の混合物のエステルおよび対応するラセミ化合物のエステルのいずれも包含する。市販の2−ヘキシルデカノールは、一般に、ラセミ化合物である。
【0018】
一般式(I):
−COOH
[式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝の飽和または不飽和アルキル基である。]
で示される脂肪酸を、脂肪酸成分として使用する。
【0019】
として、例えば下記のものが適している:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル[=1−メチルエチル]、プロペニル、イソブチル[=2−メチルプロピル]、sec−ブチル[=1−メチルプロピル]、tert−ブチル[=1,1−ジメチルエチル]、ブト−2−エニル、ブト−3−エニル、ブト−1−エニル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、3−エチルブチル、1−へキセニル、2−へキセニル、3−へキセニル、4−へキセニル、5−へキセニル。
【0020】
本発明の1つの態様では、Rが1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝の飽和アルキル基、特に好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖飽和アルキル基である、一般式(I)で示される脂肪酸を使用する。
【0021】
本発明における特に適したエステルは、以下のものである:
2−ヘキシルデシル酢酸エステル(R=CH)、
2−ヘキシルデシルプロパン酸エステル(R=C)、
2−ヘキシルデシルペンタン酸エステル(R=C)、
2−ヘキシルデシルヘキサン酸エステル(R=C11)、
2−ヘキシルデシルヘプタン酸エステル(R=C13)。
【0022】
本発明において特に有利に使用されるエステルは、以下のものである:
2−ヘキシルデシル酢酸エステル(R=CH)、
2−ヘキシルデシルプロパン酸エステル(R=C)、
2−ヘキシルデシルブタン酸エステル(R=C)、
2−ヘキシルデシルペンタン酸エステル(R=C)、
2−ヘキシルデシルヘキサン酸エステル(R=C11)、
2−ヘキシルデシルヘプタン酸エステル(R=C13)。
【0023】
製造方法
本発明のエステルは、当業者に知られているエステル化法によって製造される。従って、例えば、触媒の存在下で脂肪酸をヘキシルデカノールでエステル化させ得る。
【0024】
アルコール成分と脂肪酸成分の両方を、例えばパーム核油またはココナツ油のような植物性原料から得ることができる。従って、本発明のエステルは、再生可能な原料に基づいてもっぱら得ることができる。
【0025】
化粧品および/または医薬品への使用
意外なことに、本発明のエステルが、化粧品の製造に特に適しており、化粧品における油体/エモリエントおよび/または粘稠度調節剤として特に適していることが認められた。本発明のエステルは更に、医薬品の製造に適しており、本発明に従って、例えば油体のような技術的助剤として使用される。本発明のエステルは、例えば、ヘアシャンプー、ヘアローション、フォームバス、シャワーバス、クリーム、ジェル、ローション、アルコール性および水性/アルコール性溶液、エマルション、ワックス/脂肪塊、スティック製剤、粉末または軟膏のような化粧品の製造に役立つ。これらの組成物は、更なる助剤および添加剤として、穏やかな界面活性剤、油体、乳化剤、真珠光沢ワックス、粘稠度調節剤、増粘剤、過脂化剤、安定剤、ポリマー、シリコーン化合物、脂肪、ワックス、レシチン、リン脂質、生体活性成分、紫外線太陽光線保護因子、酸化防止剤、消臭剤、制汗剤、フケ防止剤、フィルム形成剤、膨潤剤、防虫剤、セルフタンニング剤、チロシン阻害剤(脱色剤)、ヒドロトロープ、可溶化剤、防腐剤、香油、染料などを含んでなることもできる。本発明のエステルを油体として使用することが好ましい。
【0026】
本発明のエステルは、例えば拡散挙動または揮発性のような特性を確立するために、いわゆる「ライトエモリエント」として化粧品に使用され得る。本発明のエステルは、更に、安定な粘度を有する化粧品の製造を可能にする。従来技術の1−メチル分枝エステルと比べて、本発明のエステルは、改善された官能特性および特に熱応力下での高い安定性を特徴とする。
【0027】
本発明のエステルは、単独でまたは互いの所望の混合物として使用され得る。
【実施例】
【0028】
製造例
1mol(116g)のヘキサン酸、1.1mol(297g)の2−ヘキシルデカノール(Guerbitol(登録商標)16)、および0.22gのFascat(登録商標)2001(シュウ酸錫)を混合し、水を分離しながら240℃で3時間加熱した。次いで、30cmの塔を通して、生成物を蒸留した(0.8mbarで153〜168℃)。無色無臭の油として、生成物を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−ヘキシルデカノールと一般式(I):
−COOH
[式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝の飽和または不飽和アルキル基である。]
で示される脂肪酸との1種以上のエステルの、化粧品および/または医薬品の製造におけるおよび/または製造のための使用。
【請求項2】
油体としての請求項1に記載の使用。
【請求項3】
(R)−2−ヘキシルデシルブタン酸を除く、2−ヘキシルデカノールと一般式(I):
−COOH
[式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝の飽和または不飽和アルキル基である。]
で示される脂肪酸とのエステル。
【請求項4】
2−ヘキシルデシル酢酸エステル、2−ヘキシルデシルプロパン酸エステル、2−ヘキシルデシルペンタン酸エステル、2−ヘキシルデシルヘキサン酸エステルおよび2−ヘキシルデシルヘプタン酸エステルからなる群から選択される請求項3に記載のエステル。

【公表番号】特表2010−524988(P2010−524988A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504507(P2010−504507)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003067
【国際公開番号】WO2008/131863
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】