説明

ヘスペレチンの生体利用率を増大させるためのフラボノイドの使用

本発明は、概してヘスペレチンの生体利用率の分野に関する。本発明の一実施形態は、ヘスペレチンの生体利用率を増大させ、結果的に、ヘスペレチンの有益な健康効果を最大にすることができる組成物を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してヘスペレチンの生体利用率の分野に関する。本発明の一実施形態は、ヘスペレチンの生体利用率を増大させ、結果として、ヘスペレチンの有益な健康効果を最大にすることができる組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
フラボノイド(図1)は、様々な部類に分けることができる、大きな一群のポリフェノール化合物からなる。フラボノイドは、例えば、果物、野菜、及び他の植物由来産物中に存在する。フラバノン(柑橘系フラボノイド)であるヘスペレチン(図2)は、オレンジ及びオレンジ果汁に存在する主要なフラボノイドである、ヘスペリジン(ヘスペレチン7−O−ルチノシド)のアグリコンである。ヘスペリジンは、レモン、ライム、及びマンダリンミカンを含めた他の柑橘系果実中にも存在し、ミント(Mentha piperita)などの幾つかの薬草にも見出すことができる。ヘスペリジン及びヘスペレチンは、抗炎症、抗酸化及び抗癌効果をもたらし、また骨喪失を防ぐことも報告されている。食習慣に応じて、ヘスペリジンの量は、フラボノイド総摂取量の重要な割合を占めることができる。しかし、尿中及び血漿中濃度のデータによれば、ヘスペレチンの生体利用率は、効率的な腸での代謝及び流出によって制限されている。
【0003】
故に、当技術分野では十分な量のヘスペレチンを対象に供給することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、現状技術を向上させ、十分な量、特にヘスペレチンの生体利用率を向上させるのに十分な量のヘスペレチンを対象に供給するための使用及び組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、この目的を独立請求項の主題によって実現することができた。従属請求項は本発明をさらに発展させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】フラボノイドの一般的な化学構造を示す図である。
【図2】フラバノン(柑橘系フラボノイド)であるヘスペレチンの化学構造を示す図である。
【図3a】ヘスペレチン7−O−グルクロニド代謝物とヘスペレチン7−O−硫酸代謝物の総和の頂端及び側底流出に及ぼす、様々なフラボノイド(10μM)の効果を示す図である。
【図3b】Caco−2細胞トランスウェル(transwell)モデル系において、頂端側を10μMのヘスペレチンに曝してから120分後に形成されたヘスペレチン7−O−グルクロニド代謝物とヘスペレチン7−O−硫酸代謝物の総和に及ぼす、様々なフラボノイド(10μM)の効果を、10μMのヘスペレチン(0.5%DMSO)のみに曝した、相当する実験の対照と共に示す図である。結果を、平均+標準偏差として示す。*=p<0.05、**=p<0.01、***=P<0.001 対照からの有意差あり。
【図4】Caco−2細胞トランスウェルモデル系において、頂端側を10μMのヘスペレチンに曝してから120分後に形成されたヘスペレチン代謝物の、側底輸送されたものと頂端輸送されたものの比率に及ぼす、様々なフラボノイド(10μM)の効果を、10μMのヘスペレチン(0.5%DMSO)のみに曝した、相当する実験の対照と共に示す図である。結果を、平均+標準偏差として示す。*=p<0.05、**=p<0.01、***=P<0.001 対照からの有意差あり。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特に、本発明者らは、ヘスペレチンの高度化及び長期化した生体利用を可能とする組成物及び使用を提供することによって、この目的を実現する。
【0008】
本特許は、ヘスペレチンの吸収を増大させ、結果として、ヘスペレチンの生体利用率を増大させる新規な方法を提供することによって、この目的を実現する。本発明者らは、腸のバリアをシミュレートする2コンパートメント細胞培養モデル系において、他の食用フラボノイドを含めた阻害化合物を同時投与することによってATP結合カセット(ABC)輸送体であるBCRPを頂端(腸管腔)側で阻害すると、柑橘系フラボノイドであるヘスペレチンの代謝物の頂端側への流出が減少し、且つ、側底(血液/血漿)側への流出が増加することをin vitroで実証する。
【0009】
こうした発見は、in vivoでヘスペレチンの生体利用率を増大させるために活用することができる。
【0010】
フラボノイド並びにその代謝物は、腸管全体にわたって上皮細胞中に存在するABC輸送体の基質である。一般に、ABC輸送体は、腸細胞の頂端(腸管腔側)又は側底(血液/血漿側)膜に特異的に位置し、それぞれ、腸管腔中への戻し排出、又は血流中への取り込みを促進する。最も関係がある腸内ABC輸送体には、P糖タンパク質(Pgp)、多剤耐性タンパク質1及び2(MRP1及びMRP2)、並びに乳癌耐性タンパク質(BCRP)が含まれる。Pgp、MRP2及びBCRPは頂端膜に局在するのに対し、MRP1は側底膜に局在する。
【0011】
頂端膜に位置するABC輸送体によって媒介される効率的な腸での代謝及び流出は、フラボノイド及び/又はその代謝物の乏しい生体利用率の主な理由であると考えられる。
【0012】
本発明では、フラボノイドが、腸内に存在するBCRPを含めたABC輸送体の阻害剤であることを実証する。腸のバリアをシミュレートする、一般的に使用されるモデルであるCaco−2細胞単層を用いる2コンパートメントモデル系において、BCRPを阻害すると、柑橘系フラボノイドであるヘスペレチンの代謝物の頂端(腸管腔)側への流出が減少し、且つ側底(血液/血漿)側への流出が増加することを、in vitroで示す。
【0013】
したがって、本発明の一実施形態は、哺乳動物においてヘスペレチン((S/R)−2,3−ジヒドロ−5,7−ジヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)の生体利用率を増大させる製品を調製するための、少なくとも1種のフラボノイド化合物を含む組成物の使用に関する。
【0014】
例えば、本発明の一実施形態は、哺乳動物においてヘスペレチン((S/R)−2,3−ジヒドロ−5,7−ジヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)の生体利用率を増大させる製品を調製するための、少なくとも1種のフラボノイド化合物、但し前記フラボノイド化合物はヘスペレチンではない、を含む組成物の使用に関する。
【0015】
フラボノイドは、植物二次代謝物の一分類である。IUPAC命名法によれば、フラボノイドは、2−フェニルクロメン−4−オン(2−フェニル−1,4−ベンゾピロン)構造から誘導されるフラボン、3−フェニルクロメン−4−オン(3−フェニル−1,4−ベンゾピロン)構造から誘導されるイソフラボノイド、及び4−フェニルクマリン(4−フェニル−1,2−ベンゾピロン)構造から誘導されるネオフラボノイドに分類することができる。
【0016】
本発明で使用することができる典型的なフラボノイド化合物は、ケルセチン、フィセチン、クリシン、アカセチン、アピゲニン、ルテオリン、タンゲリチン、バイカレイン、スクテラレイン、オウゴニン、ジオスミン、及びフラボキサート、ケンフェロール、ミリセチン、フィセチン、イソラムネチン、パキポドール、ラムナジン、ヘスペリジン、ルチン、ガランギン、ケンフェリド、ゲニステイン、ダイゼイン、ビオカニンA、カテキン、エピカテキン、EGCG、フロレチン、並びにこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0017】
該フラボノイド化合物は、次の一般式を有する化合物
【化1】


(式中、炭素3、5、6、7、8、2’、3’、4’、5’及び/又は6’は、H、OH又はOCH基で、互いに等しく又は異なるように置換されている)の群から選択することができ、但し、該フラボノイド化合物はヘスペレチンではない。
【0018】
炭素は、以下の分子に示される通りに番号が付けられる。
【化2】

【0019】
本発明の一実施形態では、該フラボノイド化合物は食用フラボノイドであることが好ましい。
【0020】
ある化合物は、すでに食品中に存在するならば食用であるとみなされる。
【0021】
食用フラボノイドの優れた供給源としては、すべての柑橘系果実、液果類、イチョウ(ginkgo biloba)、タマネギ、パセリ、豆、茶、特に白茶及び緑茶、赤ワイン、シーバックソーン(seabuckthorn)、並びにチョコレート、好ましくはカカオ含有率が70%超であるチョコレートが挙げられる。
【0022】
上述の化合物及び/又はこれらの供給源は、本発明の構成物に使用することができる。これらの供給源のフラボノイド高含有画分もまた使用することができる。
【0023】
本発明の化合物、例えばフラボノイドは、ヘスペレチンの生体利用率を少なくともある程度向上させるのに、及び/又は、ヘスペレチンの投与によって治療若しくは予防することができる障害の症状を軽減若しくは抑止するのに十分な量で投与される。これを達成するのに適正な量は、「治療的に有効な用量」として定義される。この目的に有効な量は、疾患の重症度並びに/又は患者の体重及び全身状態などの、当業者に知られている幾つもの因子に依存することとなろう。予防的用途において、本発明による組成物は、疾患を発症するリスクを少なくともある程度低減するのに十分な量のヘスペレチンの投与によって治療又は予防することができる、特定の障害に罹患しやすい或いは特定の障害のリスクがある患者に投与される。そのような量は「予防的に有効な用量」と定義される。この正確な量もまた、患者の健康状態及び体重などの、患者特有の幾つもの因子に依存する。
【0024】
本発明の化合物は一般に、治療的に有効な用量及び/又は予防的に有効な用量で投与される。
【0025】
例えばフラボノイドは、0.1mg〜10000mg、好ましくは1mg〜1000mg、より好ましくは10mg〜500mgの範囲内の1日用量で投与することができる。
【0026】
本発明の組成物は、ヘスペレチンを含有することができるが、含有する必要はない。該組成物は、ヘスペレチンをさらに追加することなく、それ自体で投与することができる。その場合には、通常の食物の取り込みで摂取される或いは他の任意の方法で取られる及び/又は摂取される、ヘスペレチンの生体利用率を増大させるのに有効となろう。
【0027】
或いは、該組成物はヘスペレチンも含有することができる。該組成物は、自然な量でヘスペレチンを含有してもよいし、又はヘスペレチンが増強されていてもよい。
【0028】
例えばヘスペレチンは、0.01mg〜10000mg、好ましくは1mg〜1000mg、より好ましくは10mg〜500mgの範囲内の1日用量に相当する濃度で、該組成物及び/又は製品中に存在することができる。
【0029】
ヘスペレチンは、純粋な化合物として、ヘスペレチンが増強された抽出物として、又はヘスペレチンを自然に含有する通常の食品として供給することができる。例えば、ヘスペレチンは、ミントなどの薬草から、或いは柑橘系果実、特にオレンジ、マンダリンミカン、レモン、ライム、及び/又はグレープフルーツからの抽出物の形で供給することができる。
【0030】
該製品は、本発明の組成物を対象に投与するために使用することができるいかなる製品であってもよい。
【0031】
例えば該製品は、食物製品、ペット用食物製品、栄養補助食品、食品添加物、美容用組成物、又は医薬品でもよい。
【0032】
食物製品には、例えば飲料及び栄養補助食品が含まれる。
【0033】
該組成物は、人間、ペット、又は家畜を対象とすることができる。
【0034】
典型的には、本発明の製品は、ヘスペレチンの有効性を増大させるために使用することができる。
【0035】
ヘスペレチンは、多数のモデル系によって表される通りに、例えば生体の抗酸化防御を増大させることが知られている(参照により本明細書に組み込まれる文書である、Beneventa−Garcia&Castillo、J Agric Food Chem.2008;56(15):6185〜6205)。
【0036】
したがって、本発明の製品は、生体の抗酸化防御を増大させるために使用することができる。そうしたものとして、本発明の製品は美容用組成物であってもよく、また老化皮膚に関連する障害を治療又は予防することが意図されていてもよい。
【0037】
ヘスペレチンは、哺乳動物の皮膚及び頭皮における、皮脂制御及び座瘡の治療に有効であることも報告された(米国特許第5,587,176号)。したがって、本発明の製品は、例えば医薬品又は美容用組成物として、座瘡の予防又は治療にも使用することができる。
【0038】
ヘスペレチンには抗炎症効果があることがさらに知られている(参照により本明細書に組み込まれる文書である、Galatiら、Farmaco.1994;49(11):709〜712)。
【0039】
よって、本発明の製品は、炎症性障害を治療又は予防するために、追加的又は代替的に使用することができる。特に、本発明の製品は、体の炎症レベルを低下させるために使用することができる。
【0040】
本発明の製品によって治療又は予防することができる典型的な炎症性障害は、敗血症、感染症、火傷などの急性炎症、及び、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、壊死性腸炎などの慢性炎症、紫外線若しくは化学物質誘発性皮膚炎などの皮膚炎、湿疹、反応性皮膚、乾癬、白斑、炎症性腸症候群、肝炎、アルコール性肝硬変、アレルギー、アトピー、骨炎、リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス(systemic lupus)、グージェロー−シェーグレン症候群(Gougerot−Sjogren’s syndrome)、ライター症候群、灰白髄炎、皮膚筋炎、甲状腺炎、バゼドウ病、橋本病、I型糖尿病、アジソン病、自己免疫肝炎、小児脂肪便症、ビールマー病、多発性硬化症、筋無力症、脳脊髄炎、眼炎、肥満関連炎症、加齢性軽度炎症、ブラウ症候群、循環器疾患、アテローム性動脈硬化症、メタボリック症候群、歯肉炎、及び耳下腺炎(paronditis)からなる群から選択することができる。
【0041】
本発明の一実施形態では、該製品は、炎症性障害を治療又は予防するために使用することができる食物製品である。
【0042】
本発明の別の実施形態では、該製品は、炎症性障害を治療又は予防するために使用することができる美容用組成物である。
【0043】
ヘスペレチンは、他のフラボノイドについて報告されているように、第II相酵素を誘導することによって毒素から防御することがさらに知られている(参照により本明細書に組み込まれる文書である、Young Jin Moon、Xiaodong Wang及びMarilyn E.Morris Toxicology in Vitro第20巻、第2版、2006年3月、187〜210ページ)。
【0044】
よって、本発明の製品は、対象を毒素から防御するために代替的又は追加的に使用することができる。理論にとらわれたくはないが、本発明者らは、毒素からのこの防御効果は、第II相酵素の産生の増大によって実現すると現在考えている。第II相酵素とは次のようなものである(UDP−グルクロン酸転移酵素、グルタチオン−S−転移酵素(GST)、キノン還元酵素(QR)、及び硫酸転移酵素)。本発明の製品が防御することができる典型的な毒素には、求電子物質、及び/又は求電子反応性代謝物を有する化合物が含まれる。
【0045】
本発明の一実施形態では、該製品は、毒素から防御するために使用することができる食物製品である。
【0046】
本発明の別の実施形態では、該製品は、毒素から防御するために使用することができる美容用組成物である。
【0047】
ヘスペレチンは、静脈瘤、痔核、又は静脈性潰瘍の形成を予防することがさらに知られている(参照により本明細書に組み込まれる文書である、Lyseng−Williamsonら、Drugs.2003;63(1):71〜100)。
【0048】
よって、本発明の組成物は、静脈瘤、痔核、又は静脈性潰瘍の形成を治療又は予防するために代替的又は追加的に使用することができる。
【0049】
本発明の一実施形態では、該製品は、静脈瘤、痔核、又は静脈性潰瘍の形成を治療又は予防するために使用することができる美容用組成物である。
【0050】
本発明の別の実施形態では、該製品は、静脈瘤、痔核、又は静脈性潰瘍の形成を治療又は予防するために使用することができる医薬組成物である。
【0051】
ヘスペレチンは、高脂血症治療薬としてもさらに知られている(参照により本明細書に組み込まれる文書である、Choiら、Bioorg Med Chem.2004年7月1日;12(13):3599〜605)。
【0052】
よって、本発明の製品は、血中の高コレステロールレベルを治療又は予防するため、HDLコレステロールレベルを増大させるため、及び/又はトリグリセリドレベルを低下させるために、代替的又は追加的に使用することができる。この場合、本発明の製品は、例えば食物製品でもよい。
【0053】
ヘスペレチンは、ヒトのウイルスに対する抗ウイルス効果があることがさらに知られている(参照により本明細書に組み込まれる文書である、Kaulら、J Med Virol.1985年1月;15(1):71〜9)。
【0054】
よって、本発明の製品は、ウイルス感染症、特に単純ヘルペスI型及び/又はインフルエンザ感染症を治療又は予防するために、代替的又は追加的に使用することができる。
【0055】
本発明の一実施形態では、該製品は、ウイルス感染症、特に単純ヘルペスI型及び/又はインフルエンザ感染症を治療又は予防するために使うことができる美容用組成物である。
【0056】
本発明の別の実施形態では、該製品は、ウイルス感染症、特に単純ヘルペスI型及び/又はインフルエンザ感染症を治療又は予防するために使うことができる医薬組成物である。
【0057】
ヘスペレチンは、アゾキシメタン誘発性の結腸癌を低減させることも示された(参照により本明細書に組み込まれる文書である、Miyagiら、Nutr Cancer.2000;36(2):224〜9)。
【0058】
したがって、本発明の製品は、癌増殖を治療、予防、又は低減するために、代替的又は追加的に使用することができる。
【0059】
本発明の一実施形態では、該製品は、癌増殖を治療、予防、又は低減するために使用することができる医薬組成物である。
【0060】
本発明のさらなる実施形態では、該製品は、癌増殖を治療、予防、又は低減するために使用することができる食物製品である。
【0061】
本発明のさらなる実施形態は、
少なくとも1種のフラボノイド化合物、但し前記フラボノイド化合物はヘスペレチンではない、及び
ヘスペレチン
を含み、少なくとも1種のフラボノイド化合物及びヘスペレチンが、1日用量あたり10ng〜10000mgの量で各々存在する、
組成物である。
【0062】
少なくとも1種の該フラボノイド化合物は、次の一般式を有する化合物
【化3】


(式中、炭素3、5、6、7、8、2’、3’、4’、5’及び/又は6’は、H、OH又はOCH基で、互いに等しく又は異なるように置換されている)でもよく、但し前記化合物はヘスペレチンではない。
【0063】
該フラボノイド化合物は、ケルセチン、フィセチン、クリシン、アカセチン、アピゲニン、ルテオリン、タンゲリチン、バイカレイン、スクテラレイン、オウゴニン、ジオスミン、及びフラボキサート、ケンフェロール、ミリセチン、フィセチン、イソラムネチン、パキポドール、ラムナジン、ヘスペリジン、ルチン、ガランギン、ケンフェリド、ゲニステイン、ダイゼイン、ビオカニンA、カテキン、エピカテキン、EGCG、フロレチン、並びにこれらの組合せからなる群からも選択することができる。
【0064】
例えば、本発明の組成物は、ヘスペレチンを少なくとも1000mg/kg組成物、例えば少なくとも2000mg/kg組成物の量で含有することができる。
【0065】
追加的又は代替的に、本発明の組成物は、ヘスペレチンではない少なくとも1種のフラボノイド化合物を、少なくとも1000mg/kg組成物、例えば少なくとも2000mg/kg組成物の量で含有することができる。
【0066】
本明細書に記載した本発明のすべての特徴は、開示した通りの本発明の範囲から逸脱することなく自由に組み合わせることができることを、当業者であれば理解されよう。特に、本発明の使用のために記載した特徴は、本発明の組成物及び/又は製品に適用可能であり、その逆も成り立つ。
【0067】
本発明のさらなる利点と特徴は、次の実施例及び図から明らかであろう。
【実施例】
【0068】
Caco−2細胞単層を、2コンパートメント細胞培養系を仕切る透過性フィルター上で増殖させた。元々は結腸腺腫内癌から由来しているが、分化したCaco−2細胞は、Pgp、MRP1、MRP2及びBCRPを含めたABC輸送体タンパク質、並びに代謝酵素の発現を伴う分極した層の形成を含めた、腸管腸細胞の形態学的及び生物学的特性を示すことが知られている。
【0069】
頂端区画中の細胞をヘスペレチン又はヘスペレチンと他のフラボノイドとの組合せに曝した、Caco−2細胞単層トランスウェルモデルを使用して、Caco−2細胞によって形成された腸内のヘスペレチン抱合体の形成及び輸送を研究した。頂端区画に加えた10μM(5nmol)ヘスペレチンに曝した状態で120分。ヘスペレチン並びに2種類の代謝物を側底側で検出することができたが、代謝物は側底区画と比べると大きく上回る量で頂端区画中に検出された。これらの代謝物は、ヘスペレチン7−O−グルクロニド、及びヘスペレチン7−O−硫酸であると同定された。
【0070】
フラボノイドは、既知のBCRP阻害剤である(参照により本明細書に組み込まれる文書である、Katayamaら、Cancer Chemother Pharmacol.2007;60(6):789〜97、Zhangら、Biochem Pharmacol.2005;70(4):627〜639、Zhangら、Drug Metab Dispos.2005;33(3):341〜8、Zhangら、Mol Pharmacol.2004;65(5):1208〜16、Zhangら、Pharm Res.2004;21(7):1263〜73、Imaiら、Cancer Res.2004;64(12):4346〜52、Ahmed−Belkacemら、Cancer Res.2005;65(11):4852〜60、Coorayら、Biochem Biophys Res Commun.2004;317(1):269〜36、Yoshikawaら、J Exp Ther Oncol.2004;4(1):25〜35、Wang&Morris、Drug Metab Dispos.2007;35(2):268〜74、Henrichら、J Biomol Screen.2006;11(2):176〜83)。これらの研究には、野生型又はBCRP陰性細胞と比較したBCRP過剰発現細胞株における、ニトロフラントイン、トポテカン、ミトキサントロン、及び蛍光フェオホルビドAなどのBCRP基質の細胞内蓄積に及ぼす、又はBCRP基質への細胞抵抗性に及ぼす、フラボノイドの効果のin vitro研究が主に含まれる。
【0071】
BCRPが、本研究のCaco−2細胞単層からのヘスペレチン代謝物の流出を主に担うABC輸送体であるという理由から、優れたBCRP阻害剤であることが文献から周知である、又は同時投与化合物としてBCRPに影響を及ぼさないことが周知である、様々なフラボノイドの同時投与効果を研究する実験を実施した。ある事例では細胞外に輸送される代謝物が減少したものの(図3b)、側底側に輸送されるヘスペレチン代謝物の量は有意に増加した。結果(図3〜4)は、特定のフラボノイドを同時投与すると、ヘスペレチン代謝物の頂端への流出が減少し、その一方でヘスペレチン代謝物の側底側への輸送が増加することを示している。これにより、腸の輸送バリアをシミュレートするモデルにおいて、ヘスペレチンと他のフラボノイドを同時投与すると、ヘスペレチンの生体利用率を増大させることがin vitroで実証され、したがって、ヘスペレチンと他のフラボノイドとの同時投与は、in vivoでヘスペレチンの生体利用率を向上させるための戦略になり得ると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物においてヘスペレチン((S/R)−2,3−ジヒドロ−5,7−ジヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)の生体利用率を増大させる製品を調製するための、少なくとも1種のフラボノイド化合物、但し前記フラボノイド化合物はヘスペレチンではない、を含む組成物の使用。
【請求項2】
フラボノイド化合物が、次の一般式を有する化合物
【化1】


(式中、炭素3、5、6、7、8、2’、3’、4’、5’及び/又は6’は、H、OH又はOCH基で、互いに等しく又は異なるように置換されている)の群から選択され、但し前記化合物はヘスペレチンではない、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
少なくとも1種のフラボノイド化合物が、ケルセチン、フィセチン、クリシン、アカセチン、アピゲニン、ルテオリン、タンゲリチン、バイカレイン、スクテラレイン、オウゴニン、ジオスミン、及びフラボキサート、ケンフェロール、ミリセチン、フィセチン、イソラムネチン、パキポドール、ラムナジン、ヘスペリジン、ルチン、ガランギン、ケンフェリド、ゲニステイン、ダイゼイン、ビオカニンA、カテキン、エピカテキン、EGCG、フロレチン、並びにこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記化合物が、食用フラボノイドの群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
少なくとも1種のフラボノイド化合物が、1日用量あたり0.01mg〜10000mgの量で前記製品中に存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
ヘスペレチンの健康特性を向上させるための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記組成物が、1日用量あたり、好ましくは0.1mg〜10000mg、より好ましくは1mg〜1000mg、さらにより好ましくは10mg〜500mgの量でヘスペレチンをさらに含み、並びに/或いは、ヘスペレチンが、ミントなどの薬草から、又は柑橘系果実、特にオレンジ、マンダリンミカン、レモン、ライム、及び/若しくはグレープフルーツからの抽出物の形で供給される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
生体の抗酸化防御を増大させるための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
炎症を治療又は予防するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
生体を毒素から防御するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
静脈瘤、痔核、又は静脈性潰瘍の形成を治療又は予防するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
血中の高コレステロールレベルを治療又は予防するため、HDLコレステロールレベルを増大させるため、及び/又は、トリグリセリドのレベルを低下させるための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
ウイルス感染症、特に単純ヘルペスI型及び/又はインフルエンザ感染症を治療又は予防するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
癌増殖を治療、予防、又は低減するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
少なくとも1種のフラボノイド化合物、但し前記フラボノイド化合物はヘスペレチンではない、及びヘスペレチンを含み、少なくとも1種のフラボノイド化合物及びヘスペレチンが、1日用量あたり10ng〜10000mgの量で各々存在する、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−522030(P2012−522030A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502640(P2012−502640)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054215
【国際公開番号】WO2010/112510
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】