説明

ヘッダー配管システム

【課題】給水配管系内での死水発生を防止できるうえ、配管の圧力損失を低減できるヘッダー配管システムを提供する。
【解決手段】水道から分岐した給水配管2の末端に末端給水栓3を接続し、給水配管2の途中箇所に少なくとも1個のヘッダー4を介在接続する。ヘッダー4の胴軸方向の少なくとも3箇所に相対向する流入側分岐口6と流出側分岐口7を設ける。胴部5内の流入・流出側分岐口6,7同士の間は連通させる。或る流出側分岐口7と、この流出側分岐口7に対向しない流入側分岐口6との間はループ状配管12で接続し、該ループ状配管12の複数箇所からスプリンクラーヘッド13及び/又は給水栓14を分岐している。流入側分岐口6のうち少なくとも2個は、複数の流路2A,2B,2Cのいずれかにそれぞれ接続される。それらの流路に接続される流入側分岐口6のいずれかが、ループ状配管12に接続される流出側分岐口7に対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般住宅内やグループホーム内の台所、洗面所、浴室、トイレ、洗濯機周辺等に設置された各給水栓やスプリンクラー等に、ヘッダーを介して水道水を供給するヘッダー配管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅の水道水を利用した住宅用スプリンクラー設備として、上水道から分岐した給水配管の途中に閉鎖型のスプリンクラーヘッドを継手を介して接続し、給水配管の末端にトイレ等の末端給水栓を接続したものがある(例えば、特許文献1、2参照。)。
また、給水、給湯配管システムとして、一般住宅内の台所、洗面所、浴室、トイレ、洗濯機周辺等に設置された各給水栓・給湯栓に、給水・給湯ヘッダーから給水・給湯するヘッダー工法も公知である(特許文献3、4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−337号公報(図3)
【特許文献2】特開2008−73204号公報(図1)
【特許文献3】特開2003−138613号公報(図1、図4)
【特許文献4】特開2001−193109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上水道から分岐した給水配管の末端に、日常頻繁に使うトイレ等の末端給水栓を接続した上記住宅用スプリンクラー設備によれば、給水配管系内に停滞水、つまり死水が発生するのを防止できるという利点がある。また上記住宅用スプリンクラー設備によれば、水道配管に直結しているので、特別な貯水槽や送水ポンプを必要とせず、停電時にもスプリンクラーが作動するという利点もある。
上記ヘッダー工法は、元分岐工法であるので、複数の水栓を同時使用した場合でも、他水栓の流量変動の影響を受けにくいという利点がある。
【0005】
しかしながら、死水対策のために給水配管の末端をトイレ等の末端給水栓に接続する上記住宅用スプリンクラー設備では、比較的規模の大きいグループホームのように給水配管に多数のスプリンクラーヘッドを所定の取付ピッチで取り付けるとなると、配管長さが長くなり、それだけ配管の圧力損失が大きくなり、末端給水栓や末端近くの水栓又はスプリンクラーヘッドの水圧が低下して十分な放水量が得られないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、水道から分岐した給水配管の末端にトイレ等の末端給水栓を接続し、前記給水配管の途中箇所に少なくとも1個のヘッダーを介在接続するヘッダー配管システムにおいて、ヘッダーを改善するとともにループ状配管システムを採用することにより、給水配管系内での死水発生を防止できるうえ配管の圧力損失を低減できて末端給水栓やスプリンクラーヘッドや給水栓の水圧低下を防止できるヘッダー配管システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1に記載のように、発明の内容を理解し易くする為に図1〜図7に示した符号を参照して説明すると、水道から分岐した給水配管2の末端に末端給水栓3を接続し、給水配管2の途中箇所に少なくとも1個のヘッダー4を介在接続したヘッダー配管システムにおいて、前記給水配管2が複数の流路2A,2B,2Cにいったん分かれ、前記複数の流路2A,2B,2Cが前記末端給水栓3に接続される前に合流し、ヘッダー4は胴軸方向両端が閉塞された胴部5の胴軸方向の少なくとも3箇所にそれぞれ胴径方向に相対向する一対の流入側分岐口6と流出側分岐口7を設けており、胴部5内の胴軸方向に隣り合う流入・流出側分岐口6,7、6,7同士の間は連通させており、或る流出側分岐口7と、この流出側分岐口7に対向する流入側分岐口6とは別の流入側分岐口6との間は、ループ状配管12で接続し、該ループ状配管12の複数箇所からそれぞれスプリンクラーヘッド13及び/又は給水栓14を分岐しており、前記流入側分岐口6のうち少なくとも2個は、前記複数の流路2A,2B,2Cのいずれかにそれぞれ接続されており、前記複数の流路2A,2B,2Cのいずれかに接続される前記流入側分岐口6のいずれかが、前記ループ状配管12に接続される流出側分岐口7に対向していることに特徴を有するものである。
【0008】
これによると、ループ状配管12の両端は、或る流出側分岐口7と、この流出側分岐口7に対向する流入側分岐口6とは別の流入側分岐口6とに接続されている。そのため、或るループ状配管12から分岐した一つ又は二つ以上のスプリンクラーヘッド13が作動したり、あるいは給水栓14が使用されたりすると、ループ状配管12の両端に接続されている流入側分岐口6と流出側分岐口7との双方から、水が供給される。それらの双方から水が供給されるので、それらのうち一方のみから水が供給される場合に比べ、供給される水における圧力損失は小さくなる。
【0009】
さらに、流入側分岐口6のうち少なくとも2箇所は、複数の流路2A,2B,2Cに接続されている。これにより、複数の流路2A,2B,2Cのうち1つのみから水が供給される場合に比べ、ヘッダー4に流入するまでの水における圧力損失は小さくなる。
【0010】
さらに、給水配管2の途中箇所にヘッダー4が介在接続されているため、ヘッダー4よりも下流側で水が排出されると、ヘッダー4の内部の水圧は低下する。この時、流入側分岐口6のうちループ状配管12に接続される流出側分岐口7に対向するものに、複数の流路2A,2B,2Cのいずれかが接続されている。これにより、その流出側分岐口7に対向する流入側分岐口6付近の水圧は、ループ状配管12に接続される流入側分岐口6付近の水圧よりも高くなる。すなわち、ループ状配管12内において水圧の勾配が生じる。水圧の勾配が生じるので、ループ状配管12内に水の流れが生じる。水の流れが生じるので、死水発生を防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のヘッダー配管システムによれば、給水配管系内での死水発生を防止できるうえ、配管の圧力損失を低減でき、末端給水栓やスプリンクラーヘッドや給水栓の水圧の低下を防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を示すヘッダー配管システムの構成図である。
【図2】図1のヘッダー配管システムに採用するヘッダーを一部破断状態で示す平面図である。
【図3】図1のヘッダー配管システムに採用するヘッダーの一側面図である。
【図4】図1のヘッダー配管システムに採用するヘッダーを一部破断状態で示す正面図である。
【図5】図2における一部拡大図である。
【図6】図4における一部拡大図である。
【図7】図1のヘッダー配管システムの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。
【0014】
本発明に係るヘッダー配管システム1は、図1に示すように、上水道から分岐した給水配管2系内での死水発生を防止するために給水配管2の末端はトイレ(トイレタンク)、風呂場、あるいは台所等の末端給水栓3に接続している。そして、給水配管2は複数の流路2A,2B,2Cにいったん分かれ、末端給水栓3に接続される前に合流している。さらに、給水配管2の途中箇所に、少なくとも1個のヘッダー4、図示例では第1のヘッダー4A、第2のヘッダー4B、第3のヘッダー4C、第4のヘッダー4Dの4個のヘッダー4を介在接続している。
【0015】
図2〜図6に示すように、各ヘッダー4は胴軸方向両端が閉塞された胴部5の胴軸方向の数箇所にそれぞれ胴径方向に相対向する一対の流入側分岐口6と流出側分岐口7を設けている。胴部5内の胴軸方向に隣り合う流入・流出側分岐口6,7、6,7同士間は連通させている。
【0016】
図示例では、ヘッダー4は連結式ヘッダーを示しており、複数個の一端用、他端用、中間用のクロス型(十文字型)の胴部5a、5b、5cをリング8および継手11を介して連結するものである。
【0017】
一端用、他端用、中間用の各胴部5a、5b、5cには胴径方向に相対向する一対の流入側分岐口6と流出側分岐口7を有し、一端用、他端用胴部5a、5bは各端部側が閉塞されている。一端用、他端用、中間用の各胴部5a、5b、5cは相互に両端に雄ねじ10を有する筒形の継手11を介して連結される。すなわち、一端用、他端用の各胴部5a、5bの開口側端部、および中間用の胴部5cの開口両端部にそれぞれ設けた雌ねじ12にそれぞれ継手11の雄ねじ10をねじ込むことにより一端用胴部5a、中間用胴部5c、および他端用胴部5bは相互に連結される。この際、一端用、他端用の各胴部5a、5bの開口側端部、および中間用の胴部5cの開口両端部にそれぞれの流路の直径を細く絞るリング8が組み込まれる。また、各流入側分岐口6と流出側分岐口7にもリング9が組み込まれる。
【0018】
図1に示すように、或る流出側分岐口7と、この流出側分岐口7に対向しない流入側分岐口6との間は、ループ状配管12で接続する。これにより、図7に示すように、ループ状配管12の下流側に連通するヘッダー4内の流入側分岐口6とこれに対向する流出側分岐口7との間には下流側流路15が形成され、ループ状配管12の上流側に連通するヘッダー4内の流出側分岐口7とこれに対向する流入側分岐口6との間には上流側流路16が形成され、ヘッダー4内においてこれら上流側流路16と下流側流路15との間はリング8および継手11を介して連通される。そして、ループ状配管12の数箇所からそれぞれ一つ又は複数個の閉鎖型のスプリンクラーヘッド13及び給水栓14の双方を分岐するか、スプリンクラーヘッド13又は給水栓14のいずれか一方のみを分岐する。
【0019】
いま、例えば、図7に示すように、或るループ状配管12から分岐した一つ又は二つ以上のスプリンクラーヘッド13が作動するか、あるいは給水栓14が使用されると、或る流出側分岐口7と、この流出側分岐口7に対向する流入側分岐口6とは別の流入側分岐口6との双方から、水が供給される。それらの双方から水が供給されるので、それらのうち一方のみから水が供給される場合に比べ、供給される水における圧力損失は小さくなる。さらに、流入側分岐口6のうち少なくとも2箇所は、複数の流路2A,2B,2Cに接続されている。これにより、複数の流路2A,2B,2Cのうち1つのみから水が供給される場合に比べ、ヘッダー4に流入するまでの水における圧力損失は小さくなる。さらに、ヘッダー4よりも下流側で水が排出されると、給水配管2の途中箇所にヘッダー4が介在接続されているため、ヘッダー4の内部の水圧は低下する。この時、ループ状配管12に接続される流出側分岐口7に対向する流入側分岐口6に、複数の流路2A,2B,2Cのいずれかが接続されている。これにより、その流出側分岐口7に対向する流入側分岐口6付近の水圧は、ループ状配管12に接続される流入側分岐口6付近の水圧よりも高くなる。すなわち、ループ状配管12内において水圧の勾配が生じる。水圧の勾配が生じるので、ループ状配管12内に水の流れが生じる。水の流れが生じるので、死水発生を防止できる。
【符号の説明】
【0020】
1 ヘッダー配管システム
2 給水配管
3 末端給水栓
4 ヘッダー
5 胴部
6 流入側分岐口
7 流出側分岐口
8 リング
12 ループ状配管
13 スプリンクラーヘッド
14 給水栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道から分岐した給水配管の末端に末端給水栓を接続し、前記給水配管の途中箇所に少なくとも1個のヘッダーを介在接続したヘッダー配管システムにおいて、前記給水配管が複数の流路にいったん分かれ、前記複数の流路が前記末端給水栓に接続される前に合流し、前記ヘッダーは胴軸方向両端が閉塞された胴部の胴軸方向の少なくとも3箇所にそれぞれ胴径方向に相対向する一対の流入側分岐口と流出側分岐口とを設けており、前記胴部内の胴軸方向に隣り合う前記流入・流出側分岐口同士の間は連通させており、或る流出側分岐口と、この流出側分岐口に対向する流入側分岐口とは別の流入側分岐口との間は、ループ状配管で接続し、該ループ状配管の複数箇所からスプリンクラーヘッド及び/又は給水栓を分岐しており、前記流入側分岐口のうち少なくとも2個は、前記複数の流路のいずれかにそれぞれ接続されており、前記複数の流路のいずれかに接続される前記流入側分岐口のいずれかが、前記ループ状配管に接続される流出側分岐口に対向していることを特徴とする、ヘッダー配管システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−236251(P2010−236251A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84890(P2009−84890)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000114905)ヤマトプロテック株式会社 (46)
【Fターム(参考)】