説明

ヘッドサスペンション、ロードビーム、及びロードビームの製造方法

【課題】ロードビームの裏面側からスライダの位置決めを試みた場合であっても、スライダの位置決め精度を所定水準以上に維持する。
【解決手段】ロードビーム13の裏面側には、ディンプル部25の外側凸面の頂点に係る位置情報を表示するためのマーク51等が描かれている。かかるマーク51等をCCDカメラで撮像するとともに適宜の画像処理を施すことで、ロードビームの裏面側からマーク51等を通じてディンプル部25の外側凸面の頂点の位置を間接的に把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータの例えば外部記憶装置として内蔵されるディスク装置のスライダを支持するヘッドサスペンション、ロードビーム、及びロードビームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの例えば外部記憶装置として磁気ディスク装置や光ディスク装置等をはじめとするディスク装置が広く利用されている。このようなディスク装置、例えば磁気ディスク装置(HDD)は、磁気ヘッドスライダ(以下、「スライダ」と省略する。)を支持するためのヘッドサスペンションを備えている。
【0003】
このヘッドサスペンションは、ベースプレートと、フレキシャが設けられるロードビームとなどを含み、このロードビーム上には、さらにジンバルと呼ばれる板ばねが支持されている。スライダは、ジンバルの先端部にスライダ実装部として形成されたタング部上に接着剤等で接合されている。
【0004】
このようにしてスライダは、磁気ディスク媒体の表面に近接する方向に微弱なばね力で付勢される。ここで、上記ジンバル先端のタング部は、その周縁部のほとんどが、ジンバルの本体部分から切り離された領域として形成されている。さらに、このタング部は、ロードビームの先端部に形成された球面形状のディンプルによって、スライダの非搭載面側から支持されている。つまり、スライダは、その重心部分が、ジンバル先端のタング部を介しロードビーム先端のディンプルによって支持されるように、上記タング部上に位置決めされて接合される。
【0005】
したがって、タング部上のスライダは、磁気ディスク媒体の回転に伴って生ずる、いわゆる流体動圧効果により、サスペンションの付勢力に抗しつつディスク媒体の表面に対して僅かに浮上した状態で、ディンプルを支点とし、ディスクトラックの接線方向及び法線方向にその姿勢を自由に可変するように動作する。
【0006】
ここで、上述したスライダとディンプルとは、タング部を挟むかたちで各々が配設される。この際、スライダの姿勢制御を適切に行う目的で、スライダの重心点とディンプル部凸面の頂点とがちょうど重なり合うように位置決めすることがきわめて重要である(例えば特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、本願発明者の研究によると、一般に金型を用いたプレス加工によって略球面形状に成型されるディンプルにあっては、成型加工時における金型の配置ずれ等に起因して、ディンプル部外側凸面の頂点と、内側凹面の底点との位置関係が、例えば数ミクロンオーダーでずれる現象(以下「芯ずれ現象」という。)が生じる場合があることがわかった。かかる芯ずれ現象が生じた場合であって、ロードビームの裏面側からディンプル部内側凹面の底点抽出を通じてスライダの位置決めを行った場合には、表面上は精密な位置決めができている筈であるにもかかわらず、事実上、スライダの重心点とディンプル部外側凸面の頂点とがずれてしまうという問題が生じる。
【0008】
【特許文献1】特開2004−86984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、ロードビームの裏面側からスライダの位置決めを試みた場合に、スライダの位置決め精度が損なわれるおそれがある点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ロードビームの裏面側からスライダの位置決めを試みた場合であっても、スライダの位置決め精度を所定水準以上に維持することを目的として、本発明に係るロードビームは、スライダを所定方向に変位可能に支持する略球形状のディンプル部を有するロードビームであって、当該ロードビームの裏面側には、前記ディンプル部の凸面の頂点に係る位置情報を表示するためのマークが設けられている、ことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るロードビームは、スライダを所定方向に変位可能に支持する略球形状のディンプル部を有するロードビームであって、当該ロードビームの裏面側には、前記ディンプル部の凸面の頂点に係る位置情報を表示するためのマークが設けられているので、ロードビームの裏面側からマークを撮像するとともに適宜の画像処理を施すことで、マークを通じてディンプル部の外側凸面の頂点に係る位置を間接的に把握することができる。従って、ロードビームの裏面側からスライダの位置決めを試みた場合であっても、マークを通じてディンプル部の外側凸面の頂点に係る位置を簡易かつ高精度で取得することが可能となる結果として、スライダの位置決め精度向上に資することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ロードビームの裏面側からスライダの位置決めを試みた場合であっても、スライダの位置決め精度を所定水準以上に維持するといった目的を、スライダを所定方向に変位可能に支持する略球形状のディンプル部を有するロードビームの裏面側に、ディンプル部の凸面の頂点に係る位置情報を表示するためのマークを設けることで実現した。
【実施例】
【0013】
以下、本発明実施例に係るヘッドサスペンション、ロードビーム、及びロードビームの製造方法、について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明実施例でいうワークとは、加工対象物を総称する概念であり、最終製品となる以前の中間段階にある加工対象物をも含むものである。
【0014】
初めに、本発明に係るロードビームが組み込まれたヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
[本発明実施例に係るヘッドサスペンション]
図1(1)は、本発明実施例に係るヘッドサスペンションの全体構成を示す正面図、図1(2)は、本ヘッドサスペンションの全体構成を示す側面図、図1(3)は、本ヘッドサスペンションの全体構成を示す裏面図である。
【0016】
図1に示すように、ヘッドサスペンション11は、ロードビーム13と、ベースプレート15と、フレキシャ(flexure)17と、などを備えて構成されている。
【0017】
ロードビーム13は、後述するロードビームの製造方法により製造されるものであり、精密な薄板ばねから構成されて、後述するスライダに負荷荷重を与える機能を有している。ロードビーム13の材料としては、例えばSUS304あるいはSUS305などのオーステナイト系ステンレス鋼からなる金属板(板厚が例えば数10μm程度から100μm程度)が好ましい。SUS304の成分は、C:0.08%以下、Si:1 %以下、Mn:2 %以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Ni:8-10.5%、Cr:18-20 %、残りがFeである。
【0018】
ベースプレート15には、ロードビーム13の基部13aが、レーザ溶接等の溶着部14を介して固着接続される。ベースプレート15は、例えばばね性のある薄いステンレス鋼圧延板からなる一対のばね部15a(図1(3)参照)を有しており、このばね部15aを介して、ロードビーム13を支持するようになっている。ベースプレート15は、ボス部16を備え、ボス部16においてキャリッジ側のアーム(不図示)に取り付けられて、軸回りに旋回駆動されるように構成されている。なお、ベースプレート15は、アームに一体に形成されてキャリッジ側に取り付けられる構成を採用することもできる。ベースプレート15が旋回駆動されると、ディスクを横切る方向にヘッドサスペンション11が移動することにより、スライダ実装部19がディスク上における所要のトラック位置まで移動するようになっている。
【0019】
フレキシャ17は、ばね性を有する薄いステンレス鋼圧延板などの厚さ20μm程度の導電性金属薄板で構成され、レーザ溶接等によってロードビーム13に固着されている。フレキシャ17には、電気絶縁層を介して配線パターン(不図示)が形成されている。フレキシャ17は、スライダ実装部19を備えている。フレキシャ17における配線パターンの一端は、スライダ実装部19に設けてある書き込み用又は読み取り用の端子部19aに導通接続される一方、他端はベースプレート15側に延設されている。このスライダ実装部19には、ディスクのトラック(不図示)と対向可能な位置に設けたスライダ(不図示)と、スライダに内蔵されるトランスデューサ(不図示)等が設けられる。これにより、ディスクが高速回転することによってスライダがディスクから僅かに浮上し、ディスクとスライダとの間に周知のエアベアリング機構が形成されるようになっている。
【0020】
次に、本発明実施例に係るロードビーム、及びその製造方法について説明する。
【0021】
[本発明実施例に係るロードビーム、及びその製造方法]
図2(1)は、本発明実施例に係るロードビーム(プレス加工前)の正面図、図2(2)は、本ロードビーム(プレス加工後)の正面図、図2(3)は、本ロードビーム(プレス加工後)の側面図、図3は、ディンプル部の金型成形加工手順を示す説明図、図4(1)は、レーザ光照射による表面改質処理を実施することなく、ディンプル部25の立体成形加工を行った場合の比較例に係る画像、図4(2)は、ディンプル部25となる部分のうち裏面(内側凹面)側にレーザ光照射(固定焦点)による表面改質処理を実施した後に、ディンプル部25の立体成形加工を行った場合の実施例に係る画像、図5(1)は、ディンプル部を裏面(内側凹面)側から視た実施例に係る画像、図5(2)は、ディンプル部における底点抽出手順を示す実施例に係る画像、図6は、本発明実施例に係るロードビームにおいて解決すべき課題を示す説明図、図7は、本発明実施例に係るロードビームの製造方法を示す説明図、図8(1)は、ロードビーム(描画前)の要部裏面図、図8(2)は、第1実施例に係るロードビーム(描画後)の要部裏面図、図9(1),(2),(3)は、第2A,2B,2Cの各実施例に係るロードビーム(描画後)の要部裏面図、図10(1),(2),(3)は、第3A,3B,3Cの各実施例に係るロードビーム(描画後)の要部裏面図、図11は、第4実施例に係るロードビーム(描画後)の要部裏面図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、ロードビーム13の先端部分には、ロード/アンロード用のタブ部21が、ロードビーム13と一体に舌状に延出形成されている。タブ部21は、ディスクの停止時において、サスペンション11がディスクの側方に設定された退避ゾーン(不図示)に退避したとき、記録再生装置のガイド部(不図示)に摺動ガイドされることで、例えば合成樹脂の成形品よりなるランプブロックの傾斜支持面(不図示)に乗り上げるように構成されている。
【0023】
また、ロードビーム13は、タブ部21の他に、傾斜部23と、ディンプル部25と、その側縁部両側にわたり設けられる箱曲げ部27と、などをプレス加工成形することで製造される。
【0024】
ロードビーム(となる部分)13は、そのプレス成形加工前(図2(1)参照)においては、平板状態とされている。実際の製造工程では、略長方形状の金属材料ワークからエッチング等によって所定の輪郭形状に成型された平板状態のロードビーム13となる部分(図2(1)参照)が、複数連鎖状に配置されることになる。
【0025】
図2(2)及び(3)に示すように、ロードビーム13の先端部分には、傾斜部23が、反ディスク側へ所定の角度を持って傾斜形成される。前述のタブ部21は、傾斜部23から突設形成される。ディンプル部25は、ロードビーム13におけるスライダ実装部19に対応する位置に設けられ、スライダをロール及びピッチ方向に変位可能に支持する機能を有している。箱曲げ部27は、ロードビーム13本体の側縁部から前記傾斜部23の側縁部側にわたって形成される。傾斜部23は、タブ部21の基部を支えており、箱曲げ部27が傾斜部23を補強することでタブ部21の基部側を補強するようになっている。
【0026】
図2(1)に示すように、ロードビーム13となる部分のうち、ディンプル部25が形成される該当部分(図2(1)の点線網掛け部分25a参照)であって、少なくともディンプル部25における内側凹面(図2(3)の25b参照)となる該当部分に、その周辺部分を含んで、ロードビーム13が平板状態にある段階(ディンプル部25のプレス加工成形前段階)において、その表面状態を改質するためのレーザ光照射処理がなされる。
【0027】
ここで、「表面状態を改質するためのレーザ光照射処理」とは、ディンプル部25となる部分25aにレーザ光を照射することで照射面を急速加熱又は急速凝固(溶融)させることを通じて、その表面状態を改質することを意味する。なお、本発明で用いられるレーザの種類としては、例えば、半導体レーザ、YAGレーザ、炭酸ガスレーザなどのなかから適宜のものを用いることができる。なお、これらのレーザ照射条件は、ワークの材質等に応じて適切とされる条件が異なってくる。従って、本発明実施例に係るレーザ光照射処理を実施するにあたっては、ワークの材質等に応じた適切なレーザ照射条件を適宜設定すればよい。
【0028】
こうしたレーザ光照射処理を実施する際に、ロードビーム13となる部分のうち、ディンプル部25が形成される該当部分であって、ディンプル部25における外側凸面となる該当部分に、その周辺部分を含んで、レーザ光照射処理を実施しても良い。ここで、レーザ光の照射範囲として、ディンプル部25が形成される該当部分に加えて、その周辺部分をも含むように設定したのは、ディンプル部25が形成されるワーク上の該当部分については、もれなくその表面状態を改質しておくのが好ましいからである。
【0029】
すなわち、本発明実施例に係るロードビーム13では、ディンプル部25における内側凹面25bにレーザ光を照射することで照射面の状態が改質されている。具体的には、ディンプル部25における内側凹面25bは、ディンプル部25を立体的に加工成形した後に、前記内側凹面25bにレーザ光を照射することで照射面の状態が改質されている。好ましくは、本発明実施例に係るロードビーム13は、レーザ光を照射することで照射面の状態が改質された平板状態のワークにより、前記照射面にて、ディンプル部25を立体的に加工成形することで製造される。この場合、前記照射面は、ディンプル部25における少なくとも内側凹面25bである。
【0030】
ディンプル部25を加工成形するにあたっては、図3に示すように、略半円球状の平滑な成形凹部41が設けられるディンプル用パンチ43と、略半円球状の平滑な成形凸部45が設けられる固定側のディンプル用ダイ47と、からなるディンプル用金型セット49が用いられる。すなわち、まず、平板状態のワークにおける、ロードビーム13本体のディンプル部となる該当部分25a(図2(1)の点線網掛け部分参照)に対してその裏面側からレーザ光照射処理後のロードビーム半製品を、ディンプル用金型セット49における所定位置にセットする(図3(1)参照)。なお、ここで言うロードビーム半製品とは、ロードビーム13本体のディンプル部となる部分25aの表面側(外側凸面となる部分)にレーザ光を照射することで照射面の状態を改質した後の、例えばステンレス圧延鋼板等の金属製シートからなる平板状態のワークを含むことは当然として、上記と同様のレーザ光照射による表面状態改質後の、金属製シートからなる平板状態のワークからエッチング等によって所定の輪郭形状に成型されたロードビーム13となる部分が複数連鎖状に配置(ただし、単数配置の態様をも含む。)されたワークをも含む概念である。
【0031】
次に、ロードビーム半製品がセットされた固定側のディンプル用ダイ47に対して、ディンプル用パンチ43を下降させて所定の圧力をもってプレス加工する(図3(2)参照)。これにより、厚み方向に打圧されることで外観が略半円球状に加工成形されたディンプル部25を得る(図3(3)参照)。このとき、ディンプル部25における湾曲した内側凹面25bが平滑化されることで、良好な表面粗度をもって均一化された内側凹面25bを有するディンプル部25を得ることができる。
【0032】
ここで、上述したプレス加工によってディンプル部25を加工成形したときの、ディンプル部25を裏面(内側凹面)側からCCDカメラ(不図示)を用いて撮像して得た画像を比較観察してみる。
(比較観察結果)
図4(1),(2)に示すとおり、ディンプル部25内側凹面における底点の明るさについて、比較例と実施例を比較観察してみると、実施例では比較例と比べて、格段に明るい(明度が高い)ことがわかる。また、底点部分とその周辺部分の明るさについて、比較例と実施例を比較観察してみると、実施例では比較例と比べて、両者間の明るさの差がはっきりしていることがわかる。さらに、ディンプル部25における周縁部分(ディンプル部25の基部となる平坦部分)の明るさについて、比較例と実施例を比較観察してみると、実施例では比較例と比べて、格段に明るい(明度が高い)ことがわかる。
【0033】
従って、例えばディンプル部25の内側凹面側から撮像した画像を得た場合(図5(1)参照)に、同画像において、ディンプル部25内側凹面における底点の明るさがその周囲と比較して際だっているため、適宜の画像二値化処理を経た後にディンプル部25内側凹面における底点を抽出(図5(2)参照)することで、ロードビーム13の裏面側からディンプル部25の底点に係る位置情報を容易かつ高精度で取得可能となる。
【0034】
ところで、本願発明者の研究によると、一般に金型を用いたプレス加工によって略球面形状に成型されるディンプル部25にあっては、成型加工時における金型の配置ずれ等に起因して、図6に示すように、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out と、内側凹面の底点25 c_in との位置関係が、例えば数ミクロンオーダーでずれる芯ずれ現象が生じる場合があることがわかった。かかる芯ずれ現象が生じた場合であって、ロードビーム13の裏面側からディンプル部25内側凹面の底点25 c_in 抽出を通じてスライダの位置決めを行った場合には、表面上は精密な位置決めができたとしても、事実上、スライダの重心点とディンプル部外側凸面の頂点25 c_out とがずれてしまう結果として、スライダの姿勢制御を適切に行うことができなくなるという問題が生じてくる。
【0035】
そこで、本発明実施例に係るロードビームでは、その裏面側には、ディンプル部25の外側凸面の頂点25 c_out に係る位置情報を表示するためのマーク(例えば図8(2)の符合「51」に係る円形状の線図マーク参照)が設けられている。
【0036】
また、ロードビームの裏面側からスライダの位置決めを試みた場合であっても、スライダの位置決め精度を所定水準以上に維持することを目的として、本発明実施例に係るロードビームの製造方法では、図7に示すように、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out を抽出する工程(ステップS11)と、ステップS11で抽出した頂点25 c_out に基づいて、当該頂点25 c_out に係る位置情報を表示するためのマークをロードビーム13の裏面側に描く工程(ステップS12)と、を採用している。
【0037】
ステップS12に記載した通り、ディンプル部25の外側凸面の頂点25 c_out を抽出するにあたっては、例えば、本願出願人が出願し既に公開されている、当該引用によってその記載内容が本願明細書に取り込まれる、特開2006−308425号公報に記載の測定装置を適用することができる。具体的には、同公報に記載の測定装置は、簡単な構成で正確な測長及び位置の確認を可能とするために、被測定物の一面上の第1の場所(ディンプル部25の外側凸面の頂点25 c_out )及び第2の場所(ディンプル部25の内側凹面の底点25 c_in )からの反射光をそれぞれ取り込む第1及び第2の平行プリズムと、第1及び第2の平行プリズムからの光を収束又は発散させる光学レンズと、光学レンズからの光を取り込み、第1の場所及び第2の場所の映像を電気信号に変換するイメージセンサと、電気信号に基づき第1の場所及び第2の場所の映像を一つの画面に表示する表示装置と、を有する。この測定装置によれば、被測定点の場所がそれぞれ表面(ディンプル部25の外側凸面の頂点25 c_out )、裏面(ディンプル部25の内側凹面の底点25 c_in )に離れて存在する場合であっても、各点の画像をそれぞれイメージセンサを介して取り込むとともに、共通の二次元座標軸上で各点の画像を重ね合わせてビットマップ展開するといった画像処理を施すことを通じて、二次元座標軸上における各点の位置情報(二次元座標情報)、並びに相対的な位置関係(芯ずれ現象が生じているか否かに係る位置関係)を認識することができる。ただし、本発明は、ディンプル部25の外側凸面の頂点25 c_out に係る位置情報を抽出するための手法を限定する趣旨ではない。従って、いかなる手法によってディンプル部25の外側凸面の頂点25 c_out に係る位置情報を抽出しようとも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
ステップS12では、図8(1),(2)にその描画前後のロードビーム13における裏面側のディンプル部25(要部)を例示するように、ロードビーム13の裏面側には、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out に係る位置情報を表示するためのマーク51が描かれている。第1実施例に係るマーク(図8(2)参照)は、前述の測定装置を用いて予め求めておいた二次元座標軸上におけるディンプル部外側凸面の頂点25 c_out に係る位置情報(二次元座標情報)を原点として、ディンプル部25の外周縁に、円形状の線図を描いたものである。すなわち、ディンプル部における頂点25 c_out と底点25 c_in の画像をイメージセンサで取り込み、これら各点の画像を共通の二次元座標軸上で重ね合わせてビットマップ展開するといった画像処理を施すことを通じて、二次元座標軸上における各点の位置情報(二次元座標情報)を認識し、認識した二次元座標軸上における各点の位置情報(二次元座標情報)のうち、頂点25 c_out に係る位置情報(二次元座標情報)を、円形状の線図を描く際の原点として利用するものである。逆に、こうして描かれた円形状の線図マーク51をCCDカメラで撮像するとともに適宜の画像処理を施すことで、円形状線図マーク51を通じてディンプル部外側凸面の頂点25 c_out に係る位置を簡易かつ高精度で取得することができる。なお、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out に係る位置情報を表示するためのマーク51は、同頂点25 c_out に係る位置情報を表示するという機能を果たすことができさえすれば、いかなるものをも採用することができる。また、マーク51は、例えばレーザ光を所要の線図に従って照射することで描くことができる。ただし、レーザマーキング法以外にも、プレス加工、又はエッチング等による線図引きなど、適宜の手段を用いることができる。従って、かかる適宜の手段を用いたマーク付与態様であっても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
また、第2A〜第2C実施例に係るマーク(図9(1),(2),(3)参照)53は、ディンプル部25の外周縁に、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out がその交点と重なる一又は複数の十字形状の線図を描いたものである。かかる十字形状の線図マーク53をCCDカメラで撮像するとともに適宜の画像処理を施すことで、線図マーク53を通じてディンプル部外側凸面の頂点25 c_out に係る位置を簡易かつ高精度で取得することができる。
【0040】
そして、第3A〜第3C実施例に係るマーク(図10(1),(2),(3)参照)55は、ディンプル部25の外周縁に、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out を挟んで対称に位置する少なくとも一対のドットを描いたものである。かかる一対のドットマーク55をCCDカメラで撮像するとともに適宜の画像処理を施すことで、少なくとも一対のドットマーク55を通じてディンプル部外側凸面の頂点25 c_out に係る位置を簡易かつ高精度で取得することができる。
【0041】
なお、上述の本発明実施例中、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out に係る位置情報を表示するためのマークとして、同頂点25 c_out を原点とする円形状の線図マーク51、同頂点25 c_out がその交点と重なる一又は複数の十字形状の線図マーク53、又は、同頂点25 c_out を挟んで対称に位置する少なくとも一対のドットマーク55を例示して説明したが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、例えば、図11に示すように、ロードビーム13の裏面側に、ディンプル部内側凹面の底点25 c_in に対する外側凸面の頂点25 c_out のずれ量及び方向が例えばベクトル線図の態様で描かれた第4実施例に係るベクトル線図マーク57も、本発明の技術的範囲に含まれる。ここで、ディンプル部内側凹面の底点25 c_in に対する外側凸面の頂点25 c_out のずれ量及び方向は、ディンプル部における頂点25 c_out と底点25 c_in の画像をイメージセンサで取り込み、これら各点の画像を共通の二次元座標軸上で重ね合わせてビットマップ展開するといった画像処理を施すことを通じて、二次元座標軸上における各点の位置情報(二次元座標情報)を認識し、認識した各点の位置情報に基づいて求めればよい。なお、第4実施例に係るベクトル線図マーク57のずれ量については、一般にミクロンオーダーと極微細であるため、ロードビーム13の裏面側にベクトル線図マーク57を描画する際において、そのずれ量の認識を容易にする目的で、例えば100倍等の適宜の倍率で拡大することができる。本第4実施例において、本発明実施例で開示した、ディンプル部内側凹面の底点25 c_in に係る高精度の位置情報を原点として採用し、この原点を基準としたずれ量及び方向を表示するように構成すれば、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out をきわめて高精度で取得することができるようになる。
【0042】
[実施例の効果]
以上説明したように、本発明実施例に係るロードビーム13によれば、ディンプル部25における内側凹面25bが均一かつ平滑な加工面とされて、この加工面は、スライダと接する正面側とは異なる裏面側の内側凹面であるから、従って、例えばディンプル部25の内側凹面側から撮像を含む画像処理を行った場合に、ディンプル部凹面の底点25 c_in を容易かつ高精度で取得可能となる結果として、スライダの位置決め精度向上に資することができる。
【0043】
また、本発明実施例に係るロードビーム13の裏面側には、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out に係る位置情報を表示するためのマーク51,53,55が描かれているので、ロードビームの裏面側からCCDカメラでマーク51,53,55を撮像するとともに適宜の画像処理を施すことで、ロードビーム13の裏面側に描かれているマーク51,53,55を通じてディンプル部外側凸面の頂点25 c_out を間接的に把握することができる。従って、ロードビーム13の裏面側からスライダの位置決めを試みた場合であっても、ロードビーム13の裏面側に描かれているマーク51,53,55を通じてディンプル部外側凸面の頂点25 c_out に係る位置を簡易かつ高精度で取得することが可能となる結果として、スライダの位置決め精度向上に資することができる。
【0044】
一方、本発明実施例に係るロードビームの製造方法では、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out を抽出する工程と、抽出した頂点25 c_out に基づいて、この頂点25 c_out に係る位置情報を表示するためのマークをロードビーム13の裏面側に描く工程と、を採用したので、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out を容易かつ高精度で取得可能なロードビームを得ることができる。
【0045】
また、本発明実施例に係るロードビームの製造方法によって製造されるロードビーム13には、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out に係る位置情報を表示するためのマーク51,53,55が設けられているので、ロードビーム13の裏面側に描かれているマーク51,53,55を通じてディンプル部外側凸面の頂点25 c_out に係る位置を簡易かつ高精度で取得することが可能となる結果として、スライダの位置決め精度向上に資することができる。
【0046】
そして、上述の効果を奏するロードビームを備えた本発明実施例に係るヘッドサスペンション11によれば、スライダの位置決め精度向上に起因して、スライダにおける姿勢制御の適正化を期することができる。
【0047】
[その他]
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは技術思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うヘッドサスペンション、ロードビーム、及びロードビームの製造方法、もまた、本発明における技術的範囲の射程に包含されるものである。
【0048】
すなわち、本発明実施例中、芯ずれ現象が生じているか否かにかかわらず、ロードビームの裏面側に、ディンプル部25の外側凸面の頂点25 c_out に係る位置情報を表示するためのマークを描く例をあげて説明したが、かかる実施例の変形例として、例えば、ディンプル部外側凸面の頂点25 c_out と、内側凹面の底点25 c_in との間の相対位置関係を前述した手順で取得し、取得した両点の位置関係に基づいて、芯ずれ現象が生じているか否かを判定し、かかる判定結果に基づいて、マークの描画に伴って、芯ずれ現象の発生有無を表示したり、又は、芯ずれ現象が生じていない旨の判定が下されたときにはマークの描画を省略するように構成してもよい。
【0049】
最後に、本発明実施例中、ディンプル部内側凹面の底点25 c_in にレーザ光による表面改質処理を施すことで、当該底点25 c_in に係る高精度の位置情報を取得する例をあげて説明したが、本発明はこの実施例を前提として構成されるものではない。従って、本発明は、レーザ光による表面改質処理を施すことなしに製造されるロードビーム又はヘッドサスペンションをも、その技術的範囲の射程に捉えていることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1(1),(2),(3)は、本発明実施例に係るヘッドサスペンションの全体構成を示す正面図、側面図、及び裏面図である。
【図2】図2(1),(2),(3)は、本発明実施例に係るロードビーム(成形加工前)の正面図、本ロードビーム(成形加工後)の正面図、及び本ロードビーム(成形加工後)の側面図である。
【図3】図3は、本発明実施例に係るロードビームの製造方法を示す説明図である。
【図4】図4(1)は、レーザ光照射による表面改質処理を実施することなく、ディンプル部25の立体成形加工を行った場合の比較例に係る画像、図4(2)は、ディンプル部25となる部分のうち裏面(内側凹面)側にレーザ光照射(固定焦点)による表面改質処理を実施した後に、ディンプル部25の立体成形加工を行った場合の実施例に係る画像を示す説明図である。
【図5】図5(1)は、ディンプル部を裏面(内側凹面)側から視た実施例に係る画像、図5(2)は、ディンプル部における底点抽出手順を示す実施例に係る画像を示す説明図である。
【図6】図6は、本発明実施例に係るロードビームの解決すべき課題の説明図である。
【図7】図7は、本発明実施例に係るロードビームの製造方法を示す説明図である。
【図8】図8(1)は、ロードビーム(描画前)の要部裏面図、図7(2)は、第1実施例に係るロードビーム(描画後)の要部裏面図である。
【図9】図9(1),(2),(3)は、第2A,2B,2Cの各実施例に係るロードビーム(描画後)の要部裏面図である。
【図10】図10(1),(2),(3)は、第3A,3B,3Cの各実施例に係るロードビーム(描画後)の要部裏面図である。
【図11】図11は、第4実施例に係るロードビーム(描画後)の要部裏面図である。
【符号の説明】
【0051】
11 ヘッドサスペンション
13 ロードビーム
15 ベースプレート
17 フレキシャ
19 スライダ実装部
21 タブ部
23 傾斜部
25 ディンプル部
25a ディンプル部となる部分
25b ディンプル部の内側凹部
27 箱曲げ部
41 成形凹部
43 ディンプル用パンチ
45 成形凸部
47 ディンプル用ダイ
49 ディンプル用金型セット
51 円形状の線図マーク(マーク)
53 十字形状の線図マーク(マーク)
55 一対のドットマーク(マーク)
57 ベクトル線図マーク(マーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダを所定方向に変位可能に支持する略球形状のディンプル部を有するロードビームであって、
当該ロードビームの裏面側には、前記ディンプル部の凸面の頂点に係る位置情報を表示するためのマークが設けられている、
ことを特徴とするロードビーム。
【請求項2】
請求項1記載のロードビームであって、
前記マークは、レーザ光を照射することで描かれている、
ことを特徴とするロードビーム。
【請求項3】
スライダを所定方向に変位可能に支持する略球形状のディンプル部を有するロードビームを製造するための方法であって、
前記ディンプル部の凸面の頂点を抽出する工程と、
前記抽出した頂点に基づいて、当該頂点に係る位置情報を表示するためのマークを当該ロードビームの裏面側に描く工程と、
を備えたことを特徴とするロードビームの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のロードビームの製造方法であって、
前記マークは、レーザ光を照射することで描かれている、
ことを特徴とするロードビームの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載のロードビームを備えたことを特徴とするヘッドサスペンション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−93770(P2009−93770A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265481(P2007−265481)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】