説明

ヘッドスペースガスサンプラ

【課題】ヘッドスペースガスサンプラにおいて、オーブン内の熱が、動力伝達用二重軸を伝導して軸を支持する軸受の精度および寿命の劣化を惹起する。
【解決手段】ヘッドスペースガスサンプラにおけるオーブン1内部への動力伝達用の二重軸構造において、第一の中空軸4に2箇所以上の開孔4a、4bを備えるとともに第二の軸5の外側に螺旋状の突起5aを形成する。前記第二の軸5が回転すると螺旋状の突起5aに誘導されて前記二軸間に存在する空気に流れが発生し、その流れにつれて前記第一の中空軸4に開孔した一方の孔より外部の空気が吸い込まれ、二重軸の内側に位置する第二の軸5を伝わってくる熱を奪いながら他方の孔を経て外部へと放出される。この空気の循環により、常に外部の冷たい空気が軸5を冷却するので軸受12の温度上昇を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料や固体試料から揮発した試料ガスをヘッドスペース法により採取してガスクロマトグラフ装置等へ導入するためのヘッドスペースガスサンプラに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドスペース分析法は、容器内に収容した液体試料または固体試料を一定温度に一定時間加熱することにより比較的沸点の低い成分を揮発させ、容器内の上部空間からそれら成分を含むガスを一定量採取してガスクロマトグラフ装置等に導入して分析を行うものである。こうした方法を利用したクロマトグラフ分析は、例えば、食品中の香料の測定、水中の揮発性有機化合物の測定等に適している。
【0003】
従来のヘッドスペースガスサンプラの構成の概要を図3に示す。ヘッドスペースガスサンプラは主として、試料の温度調節をするオーブン1と試料の入った試料容器8aを前記オーブン1内に挿入する挿入装置9と試料容器8cをニードル14に貫通させるために試料容器8cを押し上げる押上装置10とオーブン1内で試料容器8bを搬送するためのターンテーブル2とオーブン1内の温度むらをなくすための攪拌用のファン6から構成されている。
【0004】
また、オーブン1内のターンテーブル2とファン6へは中空軸19および軸20を介して外部より回転動力が伝達される。軸20は軸受12を介して中空軸19に支持され、さらに中空軸19は軸受11を介してケース21に支持されており、軸20が中空軸19の中心を通る二重軸構造を持ち、省スペース化を図っている。
【0005】
前記ヘッドスペースガスサンプラにおいて、まずターンテーブル7の逃げ穴7aの上に試料容器8aが搭載され、次にシャッタ15が退避してオーブン1の試料容器の挿入口1aが開き、挿入装置9によってターンテーブル2の逃げ穴2aを通って試料容器8aが上方に突き上げられターンテーブル2に取り付けられている試料容器の保持具3に試料容器8bの状態に保持される。
【0006】
オーブン1に収納された試料容器8bは一定温度に一定時間加熱され、その間に揮発したガスが試料容器上部の空間に蓄積した後、ターンテーブル7を回転させてニードル14の直下の位置に、試料容器8cの状態で保持される。ニードル14の鉛直線下方にある押上装置10は、シャッタ16が退避した後ターンテーブル7の逃げ穴7b、オーブン1の挿入口1bおよびターンテーブル2の逃げ穴2bを通過して試料容器8cの下部を押し上げ、ニードル14の先端が試料容器8cのセプタム22を貫入し試料容器8cの上部空間に達する。前記試料容器8cの上部空間のガスはニードル14を経由してガスクロマトグラフ等の測定装置18に導入され分析される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−180306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
オーブン1内のターンテーブル2は、モータ(図示せず)の回転をタイミングベルト(図示せず)を介してプーリ17および中空軸19によって回転させられ、ファン6はモータ13により軸20を介して回転させられる。また、軸20は軸受12を介して中空軸19に支持され、さらに中空軸19は軸受11を介してケース21に支持されている。即ち、軸20が中空軸19の中心を通る二重軸構造によって外部から高温のオーブン1内に回転動力が伝達される。熱硬化性樹脂や半導体などの試料はオーブン1内を300℃程度の高温にする必要があり、そのため暖められたファン6の熱は二重軸を伝わって軸受12を高温に晒すため該軸受の精度および寿命の劣化を惹起する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
試料を加熱するためのオーブンを備え、該オーブン内において試料容器を搭載して搬送するターンテーブルに動力を伝達するための第一の中空軸および該中空軸の内側を通りファンに回転動力を伝達するための第二の軸を該オーブン下部より内部へ貫通したヘッドスペース分析に用いられるヘッドスペースガスサンプラにおいて、第一の手段として、前記第一の中空軸に軸方向に離れて2箇所以上の開孔を備えるとともに前記第二の軸の外側に螺旋状の突起を形成する。また第二の手段として、前記第一の中空軸は軸方向に離れて2箇所以上の開孔を穿設するとともに、内側に螺旋状の突起を形成する。さらに前記第一および第二の手段における螺旋状の突起はJIS規格に合致したねじで形成してもよい。前記JIS規格ねじは、一般的に行われている加工方法であり、安価でまた容易に加工が可能である。
【発明の効果】
【0010】
前記第一の手段によって、前記モータ13によって前記第二の軸が回転すると該第二の軸に形成された螺旋状の突起に誘導されて前記二軸間に存在する空気に流れが発生し、その流れにつれて前記第一の中空軸に開孔した一方の孔より外部の空気が吸い込まれ、二重軸の内側に位置する第二の軸を伝わってくる熱を奪いながら他方の孔を経て外部へと放出される。
【0011】
また前記第二の手段によって、モータ(図示せず)の回転によってタイミングベルト(図示せず)およびプーリ17を介して第一の中空軸19が回転すると該第一の中空軸19の内側に形成された螺旋状の突起に誘導されて前記二軸間に存在する空気に流れが発生し、その流れにつれて前記第一の中空軸に開孔した一方の孔より外部の空気が吸い込まれ、二重軸の内側に位置する第二の軸を伝わってくる熱を奪いながら他方の孔を経て外部へと放出される。この空気の循環により、常に外部の冷たい空気が軸を冷却するので前記軸受の温度上昇を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるヘッドスペースガスサンプラの構成の概要を示す図である。
【図2】本発明による変形実施例のヘッドスペースガスサンプラの構成の概要を示す図である。
【図3】従来のヘッドスペースガスサンプラの構成の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、従来型のヘッドスペースガスサンプラにおけるオーブン内部への動力伝達用の二重軸構造において、第一の中空軸に2箇所以上の開孔を穿設するとともに第二の軸の外側または第一の軸の内側に螺旋状の突起を形成する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例を図1に従って説明する。図1は本実施例のヘッドスペースガスサンプラの構成の概要を示す図である。本発明のヘッドスペースガスサンプラは主として、試料の温度調節をするオーブン1と試料の入った試料容器8aを前記オーブン1内に挿入する挿入装置9と試料容器8cをニードル14に貫通させるために試料容器8cを押し上げる押上装置10とオーブン1内で試料容器8bを搬送するためのターンテーブル2とオーブン1内の温度むらをなくすための攪拌用のファン6から構成されている。
【0015】
前記ヘッドスペースガスサンプラにおいて、まずターンテーブル7の逃げ穴7aの上に試料容器8aが搭載され、次にシャッタ15が退避してオーブン1の試料容器の挿入口1aが開き、挿入装置9によってターンテーブル2の逃げ穴2aを通って試料容器8aが上方に突き上げられターンテーブル2に取り付けられている試料容器の保持具3に試料容器8bの状態に保持される。
【0016】
オーブン1に収納された試料容器8bは一定温度に一定時間加熱され、その間に揮発したガスが試料容器上部の空間に蓄積した後、ターンテーブルを回転させてニードル14の直下の位置に、試料容器8cの状態で保持される。ニードル14の鉛直線下方にある押上装置10は、シャッタ16が退避した後ターンテーブル7の逃げ穴7b、オーブン1の挿入口1bおよびターンテーブル2の逃げ穴2bを通過して試料容器8cの下部を押し上げ、ニードル14の先端が試料容器8cのセプタム22を貫入し試料容器8cの上部空間に達する。前記試料容器8cの上部空間のガスはニードル14を経由してガスクロマトグラフ等の測定装置18に導入され分析される。
【0017】
ところで、オーブン1内のターンテーブル2とファン6へは中空軸4および中実の軸5を介して外部より回転動力が伝達される。軸5は軸受12を介して中空軸4に支持され、さらに中空軸4は軸受11を介してケース21に支持されており、軸5が中空軸4の中心を通る二重軸構造を有している。また、前記中空軸4には開孔4aおよび4bが穿設されているとともに前記軸5の外側に螺旋状の突起5aが形成されている。なお前記螺旋状の突起5aは、一般的に行われている安価でまた容易な加工方法であるJIS規格に合致したねじで形成してもよい。
【0018】
前記モータ13によって前記軸5が回転すると螺旋状の突起5aに誘導されて前記二軸間に存在する空気に流れが発生し、その流れにつれて前記中空軸4の下部に配設された開孔4aより外部の空気が吸い込まれ、二重軸の内側に位置する軸5を伝わってくる熱を奪いながら前記中空軸4の上部に配設された開孔4bを経て外部へと放出される。ただし前記螺旋状の突起5aは、軸5の回転によって周りの空気が下から上に運ばれるように形成されている。この空気の循環により、常に外部の冷たい空気が軸5を冷却するので前記軸受12の温度上昇を防ぐことができる。
【実施例2】
【0019】
本発明の変形実施例を図2に従って説明する。図2は本変形実施例のヘッドスペースガスサンプラの構成の概略を示す図である。本変形実施例のヘッドスペースガスサンプラは基本的な構成は図1の実施例と同じであるが、動力伝達の二重軸構造が一部異なる。本変形実施例では、中空軸23に開孔23aおよび23bを穿設し、さらにその内側に螺旋状の突起23cを形成したものである。なお前記螺旋状の突起23cは、一般的に行われている安価でまた容易な加工方法であるJIS規格に合致したねじで形成してもよい。
【0020】
モータ(図示せず)の回転をタイミングベルト(図示せず)およびプーリ17を介して中空軸23が回転させられると中空軸23の螺旋状の突起23cに誘導されて前記二軸間に存在する空気に流れが発生し、その流れにつれて前記中空軸23の下部に配設された開孔23aより外部の空気が吸い込まれ、二重軸の内側に位置する軸20を伝わってくる熱を奪いながら前記中空軸23の上部に配設された開孔23bを経て外部へと放出される。ただし前記螺旋状の突起23cは、中空軸23の回転によって周りの空気が下から上に運ばれるように形成されている。この空気の循環により、常に外部の冷たい空気が軸20を冷却するので前記軸受12の温度上昇を防ぐことができる。なお前記軸20は円柱状の形状をしている。
【0021】
なお、図1から図3において、同一の符号で示される部品は同一の機能を有するものである。
【符号の説明】
【0022】
1 オーブン
1a 挿入口
1b 挿入口
2 ターンテーブル
2a 逃げ穴
2b 逃げ穴
3 保持具
4 中空軸
4a 開孔
4b 開孔
5 軸
5a 突起
6 ファン
7 ターンテーブル
7a 逃げ穴
7b 逃げ穴
8a 試料容器
8b 試料容器
8c 試料容器
9 挿入装置
10 押上装置
11 軸受
12 軸受
13 モータ
14 ニードル
15 シャッタ
16 シャッタ
17 プーリ
18 測定装置
19 中空軸
20 軸
21 ケース
22 セプタム
23 中空軸
23a 開孔
23b 開孔
23c 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を加熱するためのオーブンを備え、該オーブン内において試料容器を搭載して搬送するターンテーブルに動力を伝達するための第一の中空軸および該中空軸の内側を通りファンに回転動力を伝達するための第二の軸を該オーブン下部より内部へ貫通したヘッドスペース分析に用いられるヘッドスペースガスサンプラにおいて、前記第一の中空軸は軸方向に離れて2箇所以上の開孔を備えるとともに、前記第二の軸は外側に螺旋状の突起を備えたことを特徴とするヘッドスペースガスサンプラ。
【請求項2】
前記第二の軸の螺旋状の突起はJIS規格に合致したねじであることを特徴とする請求項1記載のヘッドスペースガスサンプラ。
【請求項3】
試料を加熱するためのオーブンを備え、該オーブン内において試料容器を搭載して搬送するターンテーブルに動力を伝達するための第一の中空軸および該中空軸の内側を通りファンに回転動力を伝達するための第二の軸を該オーブン下部より内部へ貫通したヘッドスペース分析に用いられるヘッドスペースガスサンプラにおいて、前記第一の中空軸は軸方向に離れて2箇所以上の開孔を穿設するとともに、内側に螺旋状の突起を形成したことを特徴とするヘッドスペースガスサンプラ。
【請求項4】
前記第一の中空軸の螺旋状の突起はJIS規格に合致したねじであることを特徴とする請求項3記載のヘッドスペースガスサンプラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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