説明

ヘッドスライダの製造方法

【課題】ヘッドスライダの浮上特性を改善してヘッドスライダの電磁変換特性を向上させ、ヘッドスライダの表面に付着するバリ等によって媒体を損傷させることを防止したヘッドスライダを提供する。
【解決手段】ロウバー27のエアの流入端面上に端子32を形成する工程と、ロウバー27の媒体に対向する面に、ABS部を形成するパターンにしたがってレジストパターンを形成し、該レジストパターンをマスクとしてロウバー27をGroove面16まで掘り込みABS部14a、14bを形成する工程と、前記Groove面16上にSTEP部の下地層38a、38bを形成し、該下地層38a、38b上に前記端子32と電気的に接続してヒータ回路40を形成し、該ヒータ回路40が形成された下地層38a、38bを熱膨張材層42a、42bによって被覆してSTEP部15a、15bを形成する工程とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドスライダの製造方法に関し、より詳細にはウエハ基板から切り出ししたロウバーについての加工方法を特徴とするヘッドスライダの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記憶装置に用いられるヘッドスライダは、記録媒体に対向する面に、媒体が回転することによって生じるエア流によりヘッドスライダを浮上させるための段差部が形成されている。この段差部の形態は製品によってまちまちであるが、段差の高さが異なる複数の段差部を設けたヘッドスライダが提供されている。
図23は、段差高さが異なる段差部を備えたヘッドスライダ10の例である。このヘッドスライダ10はアルチック(Al2O3-TiC)を基材11とし、基材11の媒体に対向する面にABS部14a、14bとSTEP部15a、15bが設けられている。STEP部15a、15bは、ABS部14a、14bよりも一段低く形成され、ABS部14a、14bとSTEP部15a、15bの外側域がSTEP部15a、15bよりもさらに低く形成されたGroove面16となっている。なお、本明細書では、ABS部14a、14bの媒体に対向する面をABS面、STEP部15a、15bの媒体に対向する面をSTEP面という。
【0003】
ヘッドスライダ10の媒体に対向する面に垂直な基材11の一方の面にはリード素子およびライト素子を備えるセンサ部12が設けられている。このセンサ部12は、アルチックからなるウエハ基板上にリード素子等を形成するために成膜等の処理を施して形成されている。
【0004】
前述したABS部14a、14bおよびSTEP部15a、15b、Groove面16は、ウエハ基板上に成膜等の処理を施した後、ウエハ基板からロウバー(RowBar)を切り出し、ロウバーの媒体に対向する面を研磨加工した後、研磨面にイオンミリング等を施すことによって段差形状を形成して設けられる。
【特許文献1】特開2005−276284号公報
【特許文献2】特開2002−373477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のヘッドスライダの製造方法には以下のような課題があった。すなわち、ヘッドスライダの媒体に対向する面に段差部を形成する際には、ヘッドスライダに対してイオンミリングを施すため、その際に媒体に対向する面にバリが再付着し、このバリが媒体に接触して媒体を損傷させるおそれがある。
ヘッドスライダの製造工程には、アルチック基板を研磨したり切断したりする工程があり、この加工の際に発生するチッピングやクラック部からヘッドスライダの表面に付着したアルチック材の粒が脱粒し、動作時にヘッドスライダと媒体との間にアルチック材の粒が挟まれて、ディスククラッシュを起こすおそれがある。
【0006】
また、ABS面とSTEP面の段差高さは一定であるのに対して、ヘッドスライダが媒体のインナー側に位置するときとアウター側に位置するときとで、ヘッドスライダに対する媒体の回転速度が異なることからヘッドスライダの浮上量が変動するという問題がある。
ヘッドスライダの浮上量の変動を抑える方法として、センサ部にヒータ回路を設けてヒータ回路に通電し、センサ部(熱膨張材)の熱膨張を利用してセンサ部と媒体面との離間間隔を制御する方法(DFH:Dynamic Flighing Height)がある。しかしながら、この方法の場合は、センサ部の近くにヒータ回路を配置するため、センサ部の特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、ヘッドスライダの素子部ABS面にヒータ回路を設ける方法も考えられるが、センサ部にヒータ回路を設ける場合と同様に、センサ部あるいはヘッドスライダが媒体面に近づくためにディスククラッシュを起こす危険がある。
【0007】
本発明はこれらの課題を解消すべくなされたものであり、ヘッドスライダの浮上特性を改善してヘッドスライダの電磁変換特性を向上させるとともに、ヘッドスライダの表面に付着するバリ等によって媒体を損傷させることを防止したヘッドスライダの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を備える。
すなわち、ヘッドスライダの製造方法において、ロウバーのエアの流入端面上に端子を形成する工程と、ロウバーの媒体に対向する面に、ABS部を形成するパターンにしたがってレジストパターンを形成し、該レジストパターンをマスクとしてロウバーをGroove面まで掘り込みABS部を形成する工程と、前記Groove面上にSTEP部の下地層を形成し、該下地層上に前記端子と電気的に接続してヒータ回路を形成し、該ヒータ回路が形成された下地層を熱膨張材層によって被覆してSTEP部を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記ABS部を形成した後、該ABS部に下地層を形成し、該下地層上に前記端子と電気的に接続してヒータ回路を形成し、該ヒータ回路が形成された下地層を熱膨張材層によって被覆する工程を備えていることを特徴とする。これによって、ABS部にもヒータ回路を備えたヘッドスライダが得られる。
また、前記ABS部と前記STEP部とを形成した後、前記ABS部のABS面を仕上げ研磨する研磨工程を備えていることにより、ABS面をより高精度に形成することができる。
【0010】
また、前記ABS部とSTEP部とを形成した後、ロウバーを支持治具に支持してロウバーを個片のヘッドスライダに切断する工程と、前記支持治具に支持されたヘッドスライダのABS面を仕上げ研磨する研磨工程とを備えていることを特徴とする。
また、前記ABS部とSTEP部とを形成した後、ロウバーを支持治具に支持してロウバーを個片のヘッドスライダに切断する工程と、前記支持治具にヘッドスライダを支持し、該ヘッドスライダの外面を保護膜によって被覆する工程とを備えていることを特徴とする。ロウバーを個片のヘッドスライダに切断した後にヘッドスライダの外面を保護膜によって被覆することにより、ヘッドスライダの側面を含めて保護膜により被覆することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るヘッドスライダの製造方法によれば、STEP部にヒータ回路を作り込んだことによって、STEP部の熱膨張を利用してSTEP面の高さを調節することができ、ヘッドスライダの加工工程における製造ばらつきを吸収して、より特性のすぐれたヘッドスライダとして提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るヘッドスライダの製造方法の実施の形態について説明する。
(基本となる製造工程)
図1〜7は、ヘッドスライダの基本的な製造工程を示す。図1は、ヘッドスライダーの基材として用いるアルチック(Al2O3-TiC)基板20を示す。図2は、このアルチック基板20上に、成膜等の処理を施してリード素子およびライト素子を備えた素子部22を形成した状態を示す。素子部22は、アルチック基板20上に、多数個が縦横に整列した配置に形成される。
【0013】
図3は、素子部22が形成されたアルチック基板20を、素子部22の配列方向に合わせて複数のブロックに切断した状態を示す。一つ一つのブロックは、素子部22が長手方向に直列に連結したロウバーが複数個重なったスタックバー24に形成されている。
図4は、スタックバー24からロウバー27に加工する工程を示す。この工程ではスタックバー24を導電性セラミックからなる支持治具25に接着して支持し、研磨定盤26上でスタックバー24のセンサ露出面(ABS面)を研磨してセンサ部を規定寸法に仕上げる。
なお、一般的なヘッドスライダの製造工程では、この研磨工程でABS面およびセンサ部を規定寸法まで仕上げるが、本発明の製造方法では、後工程でABS面を仕上げ研磨加工し、センサ部を最終的に位置出しするから、この研磨加工では、最終の規定寸法よりも仕上げ研磨での研磨しろを残すように加工する。
研磨加工後、スタックバー24の最表面のロウバー27をスタックバー24から切り出しし、導電性セラミックからなるセット板28にセットする(図5)。
【0014】
スタックバー24からロウバー27を切り出すごとに、スタックバー24の切り出し面を研磨加工し、スタックバー24の最表面のロウバー27を切り出しする操作を順次行いながらセット板28にロウバー27をセットする(図5)。ロウバー27は研磨面が表側となるようにセット板28にセットする。
次いで、ロウバー27をセット板28にセットした状態で、ロウバー27のABS部、STEP部を加工する。図6は、ロウバー27の研磨面にABS部とSTEP部を加工した状態を示す。
【0015】
図7は、ロウバー27の研磨面にABS部とSTEP部とを形成した後、セラミックツール29にロウバー27を接着し、ロウバー27を一つ一つのヘッドスライダ30に切断する工程を示す。こうして、ABS部とSTEP部とを備えるヘッドスライダ30が得られる。
【0016】
(特徴的な製造工程)
上述した図1〜図7に示す製造工程は、ヘッドスライダの基本的な製造工程を示したものである。本実施形態の製造工程において特徴的な工程は、上述した図5〜7における製造工程、すなわち、ロウバー27にABS部とSTEP部等を形成する工程から最終的にロウバー27を個片のヘッドスライダ30に加工するまでの工程である。
図8〜21は、アルチック基板から切り出されたロウバーに対して加工を施す工程を示す。図8〜21において、ロウバーを拡大して示す図面では、説明上、ロウバー27の単位スライダ部分を示している。
【0017】
図8は、研磨加工後のロウバー27(単位スライダ部分)を示す。ロウバー27はアルチックからなる基材20aと、基材20aの一方の面(図では下面)に形成された素子部22とからなる。素子部22は、ロウバー27に形成されるヘッドスライダの配置に合わせてロウバー27の長手方向に所定間隔に形成されている。 図9はこのロウバー27のLE面(エアの流入端側の面)にヒータ回路の端子32を形成した状態を示す。端子32は、ロウバー27のLE面にレジストを塗布し、端子32を形成する部位が、底面にLE面が露出する凹部となるようにレジストを露光および現像し、スパッタリングによって凹部内に金属を充填して形成することができる。端子32は、銅等の導電金属をスパッタリングすることによって形成する。
【0018】
端子32のロウバー27の研磨面20bと平行になる端面には、後工程でヒータ回路を形成する際にヒータ回路の回路端が接続される部位となる。したがって、ヒータ回路を形成する工程で、ヒータ回路の回路端が接合しやすい位置に形成する。
ロウバー27のLE面に端子32を形成する方法としては、ロウバー27の研磨面側からスパッタリング等を施して形成することも可能であるが、ロウバー27のLE面側にレジストパターンを形成し、LE面側からスパッタリングする方法の方が容易である。
【0019】
次に、ロウバー27の端子32が形成された面(LE面)をアルミナ等の絶縁材34によって被覆する(図10)。絶縁材34は端子32のLE面と平行な端面を露出させるようにLE面を被覆する。たとえば、フォトリソグラフィー法により、端子32のLE面に平行な面をレジストにより被覆し、絶縁材をスパッタリングし、レジストを除去することによって、端子32の端面を露出させた状態にロウバー27のLE面を絶縁材34によって被覆することができる。
【0020】
図11、12は、ロウバー27の研磨面20bにABS部(図23のABS部14a、14b)を形成する工程を示す。
図11は、ABS部の平面形状に合わせてロウバー27の研磨面にレジストパターン36a、36bを形成した状態を示す。ロウバー27の研磨面20bにレジストをコーティングし、露光および現像により、ABS部の形状に合わせてレジストパターン36a、36bを形成する。
【0021】
図12は、ロウバー27の研磨面20bにイオンミリングを施し、ABS部14a、14bとGroove面16を加工した状態を示す。ABS部14a、14bは、レジストパターン36a、36bにより基材20aが保護され、基材20aの表面の高さに形成されるのに対して、Groove面16はABS部14a、14bから一段、下がった位置にまで掘り込まれて形成される。
【0022】
ABS部とSTEP部を備えるヘッドスライダの従来の製造工程では、ABS部の外側域をまずSTEP面との高さの差分をイオンミリングし、次いでABS部とSTEP部をレジストによって被覆してSTEP部の外側域をイオンミリングしGroove面まで掘り込んでいる。すなわち、ABS部、STEP部、Groove面の段差分ごと順番にイオンミリングして、ABS面、STEP面、Groove面を形成している。本実施形態では、ABS部14a、14bを形成する際に、STEP面の高さを超えて、一気に、Groove面16まで加工してしまうことが特徴的である。
【0023】
なお、レジストパターン36a、36bを形成する際には、イオンミリングの際に端子32を保護するため、端子32までレジストパターン36aによって被覆するようにする。また、素子部22のうち、とくにセンサ部を保護するため、レジストパターン36bによってセンサ部が被覆されるようにパターニングする。
本実施形態のヘッドスライダでは、ABS部14a、14bは、素子部22と端子32側に2つに分離した島状の形態に形成している。このABS部は、レジストパターンをパターニングすることによって任意の形態に形成することができる。
【0024】
図13〜図15は、STEP部15a、15bを形成する工程である。図13は、Groove面16上に、STEP部15a、15bの下地層38a、38bを形成した状態を示す。この下地層38a、38bは、STEP部15a、15bの平面形状に合わせて形成する。
本実施形態では、STEP部15a、15bにヒータ回路を作り込む形態としている。この場合は、ヒータ回路から基材20aへの熱伝導を抑制するため熱伝導率の低い材料によって下地層38a、38bを形成するのがよい。また、ヒータ回路を作り込む場合には、基材20aと電気的に絶縁するため、アルミナ等の電気的絶縁体によって形成する。
なお、STEP部15a、15bにヒータ回路を作り込まない場合には、下地層38a、38bは、金属等の熱の良導体を用いてもよいし、導電体によって形成してもよい。この場合は、下地層38a、38b自体がSTEP部15a、15bとなる。
【0025】
下地層38a、38bは、ロウバー27のGroove面16が形成された面をレジストにより被覆し、下地層38a、38bを形成する領域が開口するようにレジストパターンを形成し、アルミナ等の下地層38a、38bを構成する材料をスパッタリングして形成する。図13は、下地層38a、38bを形成した後、レジストパターンを除去した状態である。
【0026】
本実施形態ではSTEP部15a、15bにヒータ回路を形成するから、下地層38a、38bを形成した後、下地層38a、38bの表面領域内にヒータ回路40をパターン形成する。ヒータ回路40は、下地層38a、38bをレジストによって被覆し、ヒータ回路40のパターンにしたがってレジストをパターニングし、TiあるいはTa等の導電材料あるいは抵抗材料をスパッタリングして形成する。下地層38a、38bの表面上に、細幅に屈曲する形状にヒータ回路40を形成することによって、適宜導電材料を用いて所要の発熱体としてヒータ回路40を形成することができる(図14)。
ヒータ回路40は回路の端部を端子32と電気的に接続させる必要がある。このため、ヒータ回路40を形成するレジストパターンを形成する際には、ヒータ回路40の回路端が端子32の端面上まで延びるようにパターニングする。端子32は、媒体に対向する端面が露出して形成されているから、レジストパターンを形成した後、導電材料をスパッタリングすることによって端子32とヒータ回路40とが連結され、電気的に接続した状態になる。
【0027】
本実施形態では、ABS部14a、14bを挟む配置に一対のSTEP部を配置している。したがって、ABS部14a、14bを挟む配置に下地層38a、38bを形成し、それぞれにヒータ回路40を形成し、それぞれのヒータ回路40を端子32に接続する構成としている。ヒータ回路40にはプラスとマイナスの一対の端子32が接続するから、本実施形態では、ヒータ回路40用として4つの端子32が設けられている。
【0028】
ヒータ回路40を形成した後、ヒータ回路40を内層に埋没させるようにして下地層38a、38bを熱膨張材層42a、42bによって被覆する(図15)。熱膨張材層42a、42bも下地層38a、38bの平面パターンに合わせてレジストパターンを形成し、熱膨張材をスパッタリングすることによって形成することができる。熱膨張材層42a、42bには、ヒータ回路40の発熱によって熱膨張しやすい材料を使用する。
熱膨張材層42a、42bには、たとえばTiWを使用することができる。熱膨張材層42a、42bが導電体の場合には、絶縁層を介在させて熱膨張材層42a、42bを設ける必要がある。
【0029】
熱膨張材層42a、42bの表面がSTEP面、すなわちヘッドスライダの外面となるから、耐蝕性、媒体との潤滑性を考慮して熱膨張材層42a、42bを構成する材料を選択する。熱膨張材層42a、42bを、最外層に耐蝕性材を使用し、絶縁層を介して内層に熱膨張率の高い金属層を形成した複数層を積層した構造とすることもできる。
STEP部15a、15bの外面がSTEP面を規定するから、下地層38a、38bと熱膨張材層42a、42bを成膜する際に、それぞれの厚さを制御してSTEP面がGroove面16に対して所定の段差面となるように設定する。
【0030】
図16、17は、ABS部14aにヒータ回路41を形成する工程を示す。本実施形態では、端子32に近い側のABS部14aにヒータ回路41を形成する。
図16は、ヒータ回路41をABS部14aの内部に埋設するために、ABS部14aに凹部141を形成した状態を示す。本実施形態のヘッドスライダの製造方法では、ABS部を所定の高さに仕上げるため、後工程でABS部14a、14bを研磨加工する。そのため、ABS部14aに形成するヒータ回路41は、ABS部14aの内部に埋設して形成する必要がある。ABS部14aに形成する凹部141は、凹部141内に形成する下地層38cとヒータ回路41とヒータ回路41を被覆する熱膨張材層の厚さを吸収する深さに形成する。凹部141はABS部14aの領域内をイオンミリングすることによって形成することができる。
【0031】
図17は、ABS部14aにヒータ回路41を形成し、ヒータ回路41を熱膨張材層44によって被覆した状態を示す。ヒータ回路41もヒータ回路40と同様に導電材料を屈曲パターンに形成することによって発熱体として形成することができる。ヒータ回路41も回路端が端子32に接続するように形成する。ヒータ回路41の形成方法はヒータ回路40の形成方法と同様である。
本実施形態ではABS部14aを挟んでSTEP部15a、15bを配置している。端子32はこれらのABS部14a、STEP部15a、15bの側方位置に合わせて、合計6個形成されている。
【0032】
本実施形態では素子部22のセンサ部に影響を及ぼさないように、LE面側のABS部14aにヒータ回路41を設けたが、センサ部に対する影響が問題にならなければ、素子部22側のABS部14bにヒータ回路を形成することも可能である。
また、本実施形態では、STEP部15a、15bにヒータ回路40を形成してからABS部14a、14bにヒータ回路41を形成したが、ヒータ回路40を形成する工程は逆であってもよい。
また、本実施形態では、ABS部14a、14bとSTEP部15a、15bの双方にヒータ回路を設けたが、ABS部とSTEP部の一方にのみヒータ回路を設けた構成とすることも可能である。
【0033】
ヒータ回路41を形成した後、ロウバー27をセラミックツール29に接着し、セラミックツール29にロウバー27を接着した状態で個片のヘッドスライダ30に切断する(図18)。
次いで、セラミックツール29からヘッドスライダ30を剥離せず、研磨定盤26を用いてABS部14a、14bのABS面を高さ出しする。同時にこの研磨加工により、素子部22に形成されているセンサ部を規定寸法に仕上げる。このように後加工によって、ABS面を仕上げ研磨することによって、ABS面の高さを高精度に加工することができる。本実施形態のようにABS部14aにヒータ回路41を形成するような場合には、最終的にABS面を平坦面に仕上げ、ABS面の高さを精度出しする上で、仕上げ研磨することは有効である。
【0034】
図20に、研磨加工を施した状態のヘッドスライダ30を示す。この段階ではヘッドスライダ30はセラミックツール29に接着されている。隣り合ったヘッドスライダの中間位置でロウバー27を切断したことにより、個々のヘッドスライダ30は左右対称形となる。
ヘッドスライダの加工工程においては、イオンミリングや切断加工によってヘッドスライダの表面にバリ等が付着することが生じ得る。ヘッドスライダ30を個片に形成した後に、ABS面を研磨加工することによって、ABS面を超えて突出するバリあるいは付着物が除去されるから、ABS面がヘッドスライダの最外層面となる。したがって、動作時にヘッドスライダ30のABS面等に付着したばり等によって媒体が損傷することを防止することができる。
【0035】
図21は、セラミックツール29にヘッドスライダ30を支持した状態で、ヘッドスライダ30の外面を保護膜46によって被覆した状態を示す。保護膜46としては、Si膜、DLC膜が使用できる。ヘッドスライダ30に対して保護材をスパッタリングして保護膜46を形成することにより、ヘッドスライダ30の媒体に対向する面、エアの流入端側の面、ヘッドスライダの両側面が保護膜46によって被覆される。こうして、ヘッドスライダ30の略全面が保護膜46によって被覆されることにより、ヘッドスライダ30からアルチック基材が脱粒するといった問題が回避される。
ヘッドスライダ30の外面を保護膜46によって被覆した後、セラミックツール29からヘッドスライダ30を剥離して、最終的に個片のヘッドスライダ30が得られる。
【0036】
図22は、図21のA−A線断面図を示す。ヘッドスライダ30の媒体に対向する面では、ABS部14aのABS面が最も突出した面となり、次いでSTEP部15a、15bのSTEP面が次に低位の面となり、Groove面16が最も低位の面となる。
STEP部15a、15bは、下地層38a、38bとヒータ回路40と熱膨張材層42a、42bとからなる。ABS部14aは、アルチックからなる基材部分と、凹部内に形成された下地層38cとヒータ回路41と熱膨張材層44とからなる。
実施形態におけるABS面とSTEP面との段差は0.1〜0.2μm程度であり、Groove面16とSTEP面との段差は1〜2μm程度である。これらの段差は製品によって適宜設定される。
【0037】
上記実施形態の製造方法によって得られたヘッドスライダ30をヘッドサスペンションに搭載する際には、素子部22に設けられたセンサ部と記録、再生用の制御回路とを電気的に接続する一方、ヒータ回路40、41に接続する端子32とヒータ制御用の回路とを電気的に接続する。ヒータ制御用の回路を制御することにより、ABS部14a、14bおよびSTEP部15a、15bの熱膨張量を制御し、ABS面やSTEP面の高さを制御する。
本実施形態のヘッドスライダの製造方法によれば、ABS部14a、14bとSTEP部15a、15bに容易にヒータ回路40、41を形成することができ、ABS面やSTEP面の高さを制御することが可能となることから、加工工程でのABS面やSTEP面の高さのばらつきを吸収して、電磁変換特性のすぐれたヘッドスライダとして提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ヘッドスライダの製造に用いるアルチック基板の斜視図である。
【図2】アルチック基板に素子部を形成した状態を示す斜視図である。
【図3】アルチック基板から切断したスタックバーの斜視図である。
【図4】ロウバーを加工する方法を示す説明図である。
【図5】セット板にロウバーをセットした状態の平面図である。
【図6】ロウバーに加工を施した状態の平面図である。
【図7】ロウバーから個片のヘッドスライダに切断する方法を示す説明図である。
【図8】ロウバーの構成を拡大して示す斜視図である。
【図9】ロウバーに端子を形成した状態の斜視図である。
【図10】ロウバーのLE面を絶縁材によって被覆した状態の斜視図である。
【図11】ロウバーの研磨面にABS部を形成するレジストパターンを形成した状態の斜視図である。
【図12】ロウバーにABS部とGroove面を形成した状態の斜視図である。
【図13】ロウバーにSTEP部の下地層を形成した状態の斜視図である。
【図14】下地層にヒータ回路を形成した状態の斜視図である。
【図15】ヒータ回路を熱膨張材層によって被覆した状態の斜視図である。
【図16】ABS部にヒータ回路を形成する凹部を形成した状態の斜視図である。
【図17】ABS部にヒータ回路を形成した状態の斜視図である。
【図18】ロウバーを個片のヘッドスライダに切断する方法を示す斜視図である。
【図19】ABS面を仕上げ研磨する方法を示す説明図である。
【図20】研磨後のヘッドスライダの斜視図である。
【図21】保護膜によって被覆されたヘッドスライダの斜視図である。
【図22】ABS面、STEP面、Groove面の配置を示す説明図である。
【図23】ABS部とSTEP部とを備えるヘッドスライダの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ヘッドスライダ
12 センサ部
14a、14b ABS部
15a、15b STEP部
16 Groove面
20 アルチック基板
20a 基材
20b 研磨面
22 素子部
24 スタックバー
25 支持治具
26 研磨定盤
27 ロウバー
28 セット板
29 セラミックツール
30 ヘッドスライダ
32 端子
34 絶縁材
36a、36b レジストパターン
38a、38b、38c 下地層
40、41 ヒータ回路
42a、42b、44 熱膨張材層
46 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロウバーのエアの流入端面上に端子を形成する工程と、
ロウバーの媒体に対向する面に、ABS部を形成するパターンにしたがってレジストパターンを形成し、該レジストパターンをマスクとしてロウバーをGroove面まで掘り込みABS部を形成する工程と、
前記Groove面上にSTEP部の下地層を形成し、該下地層上に前記端子と電気的に接続してヒータ回路を形成し、該ヒータ回路が形成された下地層を熱膨張材層によって被覆してSTEP部を形成する工程
とを備えることを特徴とするヘッドスライダの製造方法。
【請求項2】
前記ABS部を形成した後、該ABS部に下地層を形成し、該下地層上に前記端子と電気的に接続してヒータ回路を形成し、該ヒータ回路が形成された下地層を熱膨張材層によって被覆する工程を備えていることを特徴とする請求項1記載のヘッドスライダの製造方法。
【請求項3】
前記ABS部と前記STEP部とを形成した後、前記ABS部のABS面を仕上げ研磨する研磨工程を備えていることを特徴とする請求項1または2記載のヘッドスライダの製造方法。
【請求項4】
前記ABS部とSTEP部とを形成した後、ロウバーを支持治具に支持してロウバーを個片のヘッドスライダに切断する工程と、
前記支持治具に支持されたヘッドスライダのABS面を仕上げ研磨する研磨工程とを備えていることを特徴とする請求項1または2記載のヘッドスライダの製造方法。
【請求項5】
前記ABS部とSTEP部とを形成した後、ロウバーを支持治具に支持してロウバーを個片のヘッドスライダに切断する工程と、
前記支持治具にヘッドスライダを支持し、該ヘッドスライダの外面を保護膜によって被覆する工程とを備えていることを特徴とする請求項1、2または4記載のヘッドスライダの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−230799(P2009−230799A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74435(P2008−74435)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】