説明

ヘッドランプクリーナ

【課題】洗浄領域を広範なものとし、ヘッドランプの照明部全体を洗浄できる、ヘッドランプクリーナを提供する。
【解決手段】ヘッドランプクリーナ1は、洗浄液の流路5を備えたノズルヘッド6と、ノズルヘッド6における流路5の終端に回転自在に収容されるピロボール8とを備え、ピロボール8は、洗浄液の流路5に連通し、回転軸11に沿って螺旋状に形成されたスクリュ状流路と、スクリュ状流路に連通し、回転軸11からずれた位置に形成された噴射口17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のヘッドランプに洗浄液を噴射して洗浄するヘッドランプクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車は、車両前部にヘッドランプが配設され、車両前方を照らすことができるように構成されている。このヘッドランプは、光源装置と、この背面を囲繞し、光源装置から発せられた後ろ向きの光を車両前方に反射させる反射体と、光源装置の前部に配設され光源装置をカバーする光透過性のレンズ体とから構成される。ヘッドランプはレンズ体が車両前部に露出して配設されることから、自動車の走行時には、レンズ体に排気ガス等の微粒成分や空気中に漂う塵埃、或いは、ヘッドランプの光に群がる虫等が付着してレンズ体表面を汚し、照度や明度が低下するという問題があった。
【0003】
そこで、ヘッドランプのレンズ体表面に洗浄液を噴射して洗浄するヘッドランプクリーナが車両前部に装備された自動車も普及している。照度や明度、あるいは、照明領域に関する走行安全性の観点から、このヘッドランプクリーナの洗浄によるヘッドランプの照明部配光回復率は、70%以上であることが望ましい。
【0004】
従来のヘッドランプクリーナ201は、図7〜図9に示すように、固定されたピロボール208,208の噴射口217,217から一定時間、透明度の回復が必要とされる回復必要エリアであるレンズ体204上の照明部203に対して放射状に洗浄液を噴射し、直接洗浄液がかかる噴射領域と、その周囲の飛散領域と、洗浄液が液垂れした液垂れ領域とから成る洗浄領域によって70%の配光回復率を達成するように設計されている。
【0005】
しかしながら、従来の洗浄領域218,218、特に噴射領域の面積は、図9に示すように、レンズ体204の照明部203の面積に比べて狭小に過ぎ、従って照明部203上における噴射領域の位置によっては、噴射領域、飛散領域、液垂れ領域の全てを足し合わせても70%の配光回復率を達成できないことが少なくなく、噴射領域の狙い位置選定が大変困難であった。また、自動車の走行時には、噴射条件が大きく変わってしまうため、噴射領域全体としてレンズ体上における照明部の全体をカバーできていない従来のヘッドランプクリーナでは、70%の配光回復率の達成は非常に困難なものとなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みて創作されたものであり、ヘッドランプクリーナによる洗浄液の噴射位置を回転させて洗浄領域をより広範なものとし、ヘッドランプの照明部全体を洗浄できるように構成されるヘッドランプクリーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、自動車のヘッドランプに洗浄液を噴射して洗浄するヘッドランプクリーナであって、洗浄液の流路を備えたノズルヘッドと、ノズルヘッドにおける流路の終端に回転自在に収容されるピロボールとを備え、ピロボールは、洗浄液の流路に連通し、回転軸に沿って螺旋状に形成されたスクリュ状流路と、このスクリュ状流路に連通し、回転軸からずれた位置に形成された噴射口とを備えることを特徴とする。
【0008】
スクリュ状流路は、回転軸に対して垂直な断面の形状が十字状であることが望ましい。
【0009】
ノズルヘッドは、一つの流路から複数の流路に分岐した分岐路が形成され、各分岐路の先には流路の終端が設けられ、該終端にはそれぞれピロボール収容部が画成され、各ピロボール収容部にはそれぞれピロボールが回転自在に収容されることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヘッドランプクリーナにおいて、回転軸からずれた位置に噴射口を有するピロボールを、回転自在にヘッドランプクリーナのノズルヘッドに装着して、洗浄液の噴射時に、この噴射力によってピロボールを回転させるように構成したことにより、噴射時には噴射口が回転するため、噴射領域がヘッドランプの照明部を広くカバーでき、配光回復率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図1〜図6を参照しながら詳細に説明する。この実施形態のヘッドランプクリーナ1は、洗浄液2を、自動車のヘッドランプ(図示省略)の、特に略円形に形成された照明部3を中心としたレンズ体4の外側表面に噴射して、レンズ体4表面の汚れを落としてレンズ体4の透光度を改善するためのものである。
【0012】
ヘッドランプクリーナ1は、図1及び図2に示すように、内部に洗浄液2を流す流路5を有する略L字パイプ状に形成されるノズルヘッド6と、このノズルヘッド6の先端部分に、ベアリング7を介して回転自在に配設されるピロボール8とを備える。
【0013】
ノズルヘッド6は、全体としては略L字パイプ状を成し、下方から略鉛直上向きに洗浄液を流す流路5を有する。この流路5は、流路5の上端を終端として、この終端から略水平方向に延び広がって画成されたピロボール収容部9に連通している。ピロボール収容部9は、ピロボール8の背面部のほぼ全体を囲繞し、ピロボール8が回転自在に収容されると共に、流路5を通過した洗浄液がピロボール8とピロボール収容部9との隙間から漏れ出すことのないように、ピロボール8が密栓的に収容されるように構成される。この回転自在性と密栓性とは、ピロボール8をピロボール収容部9に収容する際に介在されるベアリング7、及びピロボール8の後端部10と流路5の終端部との接合構造によって確保される。
【0014】
ピロボール8は、ベアリング7を介してピロボール収容部9に収容され、回転軸11を軸として回転可能に構成される。このピロボール8の外形は、この回転軸11を中心とする回転対称形であって且つ、比較的半径の小さな後端と、この後端に比して半径の大きな前端を有し、すなわち後端から前端にかけて適宜半径が広がる略ラッパ状に形成される。また、ピロボール8の軸方向における外形上の略中央部位には、一旦半径が窄まった括れ状のベアリング装着部12を有する。
【0015】
ピロボール8の後端には、洗浄液2を螺旋状に流下させるためのスクリュ状流路13が設けられ、このスクリュ状流路13の終端からピロボール8の前端に至る傾斜流路14が形成される。スクリュ状流路13は、ピロボール8の後端部10に円筒状に形成されたスクリュ部材収容部15と、このスクリュ部材収容部15に収容されるスクリュ部材16とから構成される。スクリュ部材16は、図3に示すように、軸方向に垂直な断面が十字状を成し、図4に示すように、断面十字状を成す十字状柱体を軸の周りに捻ったような形状に形成されて成り、ピロボール8に対して一体的に装着される。ただし、スクリュ部材16の捻りの軸は、ピロボール8の回転軸11と同軸上になるように設定される。
【0016】
スクリュ状流路13の終端からピロボール8前端に形成される噴射口17までに至る傾斜流路14は、前方に向かって、ピロボール8の回転軸11から半径方向外向きに傾斜して穿設される。即ち、ピロボール8前端に形成され洗浄液が噴射する噴射口17は、ピロボール8の回転軸11からずれた位置に形成される。
【0017】
以上においては、ヘッドランプクリーナ1のノズルヘッド6として、図1に示すように、一つのノズルヘッド6に対して一経路の洗浄液2の流路5、一つのピロボール8を備える実施形態を元に説明したが、一つのノズルヘッド6に対する流路5やピロボール8の数は必ずしも一つでなければならないというものではなく、例えば図5に別の実施形態として示すように、ノズルヘッド6の内部に形成される略鉛直に延びた流路5を、その上端で左右に分岐させてそれぞれの終端にピロボール収容部9,9を画成し、左右の両ピロボール収容部9,9にそれぞれピロボール8a,8bを回転自在に併設してもよい。
【0018】
ピロボール8a,8bが二つ併設されて構成されるヘッドランプクリーナ101を作動させた場合には、ノズルヘッド6の流路5内を略鉛直上向きに流れてきた洗浄液2は、流路5上端の分岐点で左右に分流し、それぞれの終端に配設されたピロボール8a,8bに流れ込む。この際、洗浄液2は、ピロボール8a,8bの後端部10,10に一体的に設けられた螺旋状のスクリュ状流路13,13を通過する。図4に示すように、洗浄液2がこのスクリュ状流路13,13を流下するとき、洗浄液2の経路が破線矢印で示すようにピロボール8a,8bの軸方向を中心としてこの軸の回りに曲げられるため、この反作用からスクリュ部材16,16に対して、矢印で示すように逆回転向きの偶力が働く。この結果、スクリュ部材16,16と一体化され且つノズルヘッド6に対して回転自在に収容されているピロボール8a,8bが、それらの回転軸を中心として回転する。
【0019】
左右それぞれのピロボール8a,8bは、図5に示すように回転するので、ピロボール8a,8b前端における回転軸11a,11bからずれた位置に形成された噴射口17a,17bの軌跡は円軌道となる。回転するピロボール8a,8bの前端の噴射口17a,17bからは、洗浄液2が、ピロボール8a,8b前端の内部に形成された傾斜流路14,14の延長線上の前方に向かって円錐状に広がりながら噴射される。従って、円軌道を描きながら洗浄液2が噴射される噴射口17a,17bから放たれる噴射領域18a,18bは、三次元的には、連続的に円錐状に噴射された洗浄液2が、更に連続的に円軌道を成すことで、より大きな円錐乃至中空円錐形を成し、二次元的には、図6(a)〜(c)に連続的に示すように、円乃至楕円または穴開き円乃至穴開き楕円形の、従来に比してより大きな面積となる。つまり、左右のピロボール8a,8bの噴射口17a,17bから噴射されて成る全噴射領域は、左側のピロボール8aの噴射口17aから放たれる噴射領域18aと、右側のピロボール8bの噴射口17bから放たれる噴射領域18bとを重ね合わせたものとなる。
【0020】
ここで、全噴射領域が、左側のピロボール8aの噴射口17aから放たれる略円形の噴射領域18aの描く外円19aと、右側のピロボール8bの噴射口17bから放たれる略円形の噴射領域18bの描く外円19bとが、二つの交点20a,20bをもって重なり、これら二つの交点20a,20b間の距離が、ヘッドランプのレンズ体4に設けられる略円形の照明部3の直径以上に設定される。全噴射領域がこのような状態となるようにヘッドランプクリーナ1を構成することによって、ヘッドランプの照明部3全体に洗浄液2が行き渡ることになり、配光回復率を高めることができる。例えば、70%の配光回復率を十分に達成することが可能となる。
【0021】
以上説明したように、本発明のヘッドランプクリーナ及びそのノズルヘッド構造は、回転軸からずれた位置に噴射口を有する回転自在なピロボールを、洗浄液の流れによって回転させながら洗浄液を噴射させるように構成したことによって、洗浄液を効率的により広い面積に噴射することができるように構成されるものであって、その主旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るヘッドランプクリーナの分解斜視図である。
【図2】図1に示すヘッドランプクリーナの組み立て状態におけるノズルヘッドの断面を示す断面図である。
【図3】図2におけるピロボールの後端部分のA−A断面を示す断面図である。
【図4】図1に示すスクリュ部材の拡大図であって、洗浄液の螺旋状の流れと、スクリュ部材の回転の様子を示す斜視図である。
【図5】別の実施形態のヘッドランプクリーナの構成を示す概念図である。
【図6】図5のヘッドランプクリーナの使用状態を示す概念図である。
【図7】従来のヘッドランプクリーナの構成を示す概念図である。
【図8】図7におけるB−B断面を示す断面図である。
【図9】図7のヘッドランプクリーナの使用状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0023】
1,101 ヘッドランプクリーナ
2 洗浄液
3 照明部
4 レンズ体
5 流路
6 ノズルヘッド
7 ベアリング
8 ピロボール
8a ピロボール
8b ピロボール
9 ピロボール収容部
10 後端部
11 回転軸
11a 回転軸
11b 回転軸
12 ベアリング装着部
13 スクリュ状流路
14 傾斜流路
15 スクリュ部材収容部
16 スクリュ部材
17 噴射口
17a 噴射口
17b 噴射口
18a 噴射領域
18b 噴射領域
19a 外円
19b 外円
20a 交点
20b 交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のヘッドランプに洗浄液を噴射して洗浄するヘッドランプクリーナであって、
洗浄液の流路を備えたノズルヘッドと、上記ノズルヘッドにおける上記流路の終端に回転自在に収容されるピロボールとを備え、
上記ピロボールは、上記洗浄液の流路に連通し、回転軸に沿って螺旋状に形成されたスクリュ状流路と、このスクリュ状流路に連通し、上記回転軸からずれた位置に形成された噴射口とを備えることを特徴とする、ヘッドランプクリーナ。
【請求項2】
前記スクリュ状流路は、回転軸に対して垂直な断面の形状が十字状であることを特徴とする、請求項1に記載のヘッドランプクリーナ。
【請求項3】
前記ノズルヘッドは、一つの流路から複数の流路に分岐した分岐路が形成され、上記各分岐路の先には上記流路の終端が設けられ、該終端にはそれぞれピロボール収容部が画成され、これらピロボール収容部にはそれぞれピロボールが回転自在に収容されることを特徴とする、請求項1または2に記載のヘッドランプクリーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−214635(P2009−214635A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58852(P2008−58852)
【出願日】平成20年3月8日(2008.3.8)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】