説明

ヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダ

【課題】車内に物品を保持するために用いられる、車両用シートのヘッドレストの支持ステイへの取付け具を有する物品ホルダを提供する。
【解決手段】物品ホルダ100は、長手方向の一端側にロック用孔11及び長手方向の他端側に取付け孔12を有する板状の基部材10と、ロック用孔11内を長手方向にスライド可能に取り付けられ、且つ、所定位置で基部材10を支持ステイに押圧するように、ロック用孔11に固定可能であるロック部材20と、例えば傘などの物品を保持するためのホルダ部材30とを備えている。この物品ホルダ100は、ヘッドレストにおける支持ステイ間の幅等にかかわらず、容易に、且つ、堅固に、ヘッドレストに取り付けることができ、安定して物品を保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内に物品を保持するために用いられる、ヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートのヘッドレスト部分に取り付けるための取り付け具を備え、傘等の物品を保持することができる物品ホルダが種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の車両用傘収納ケースは、2本のヘッドレストの支持ステイ(4)を挟み込むことができる長溝を備えている取り付け具(2)と、取付け具(2)の端部に形成されているフック(5)及びそれに取り付けられた傘収納ケース(6)とを備えている。長溝にヘッドレスト(3)の2本の支持ステイ(4)を挿入して、ヘッドレスト(3)で、上から取付け具(2)をシートに対し押圧することで、ヘッドレスト部分に固定するものである。当該固定手段は、ヘッドレスト(3)が上から取付け具(2)をシートに対し押圧するだけものであるので、特に保持する物品の重量が大きい場合など、取付け具(2)に大きい力が加わると、その力に耐え切れず、取付け具(2)が傘収納ケースの方向に移動して外れるという問題がある。
【0004】
これに対して、市販品である図12に示す物品ホルダ1は、長孔2と、取付け孔3と、傘収納ケース5を取付け可能なホルダ部4とを備えている。2つの支持ステイ6をそれぞれ長孔2及び取付け孔3に挿通させることで、物品ホルダ1をヘッドレストに取り付けることができる。そして、ホルダ部4に物品を保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−339510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12の物品ホルダ1は、2つの支持ステイ6を長孔2及び取付け孔3に挿通させているので、ヘッドレストから物品ホルダ1が外れることはないが、その構造上、長孔2及び取付け孔3の幅を、少なくとも支持ステイの径よりも大きくしなければならない。それにより、長孔2及び取り付け孔3内を支持ステイ6が相対的に移動可能である。即ち、車両が揺れたときなどにおいて、物品ホルダ1が前後左右にがたついて、物品の保持が不安定となるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、ヘッドレストにおける支持ステイ間の幅(設置間隔)にかかわらず、容易に、且つ、堅固に、ヘッドレストに取り付けることができる取付け具を有し、安定して物品を保持することができる物品ホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダは、車両用シートのヘッドレストの2本の支持ステイに取り付けられるヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダであって、
長手方向の一端側に位置する、一方の前記支持ステイを挿通可能な、長手方向に延在するロック用孔と、前記ロック用孔よりも長手方向の他端側に位置する、他方の前記支持ステイを挿通可能な、少なくとも1つ以上の取付け孔と、を備える板状の基部材と、
前記ロック用孔内を長手方向にスライド可能に取り付けられ、且つ、所定位置で、前記基部材を前記支持ステイに押圧するように、前記ロック用孔に固定可能であるロック部材と、
前記基部材に接続されている、物品を保持するためのホルダ部材と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダは、請求項1のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダにおいて、前記取付け孔は、前記基部の長手方向に延在する略長円状の孔として形成されており、前記基部材の前記他端側に向かうに従い、前記取付け孔幅が狭まっていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダは、請求項1又は2のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダにおいて、前記ロック用孔は、前記ロック用孔の他端側の端部において、前記ロック用孔に隣接する前記取付け孔が一体的に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダは、請求項1から3のいずれか一項のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダにおいて、前記ロック部材は、前記基部材の他端側に、前記支持レストに一端側から当接可能な、略半円弧状の円弧面を有する円弧部を備えており、前記基部材の一端側に向かうに従い、前記円弧部の幅が狭まっていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダは、請求項1から4のいずれか一項のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダにおいて、前記基部材は、前記ロック用孔の幅方向の両縁に長手方向に沿って形成されている複数のラチェット歯を備え、前記ロック部材は、前記ラチェット歯と噛み合うラチェット爪を備えており、
前記ラチェット歯と前記ラチェット爪との噛合関係に基づき、一端側から他端側への前記ロック部材の移動は許容されるが、他端側から一端側への前記ロック部材の移動は規制されることで、前記ロック用孔に前記ロック部材が固定されることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダは、請求項1から5のいずれか一項のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダにおいて、前記ホルダ部材は、前記基部材の端部に旋回可能に接続されている支持アームと、前記支持アームの先端に物品を保持するための保持部とを備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダは、請求項6のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダにおいて、前記支持アームは、前記支持アームの長手方向に沿って延在するスライド部を備えており、前記支持アームの前記スライド部が前記基部材の端部に接続されて、前記基部材に対し前記支持アームがスライド可能となっていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダは、請求項1から7のいずれか一項のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダにおいて、前記保持部が略C字形状であり、前記保持部に袋状の傘収納ケースを取り付けられる傘収納ケースホルダであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、ヘッドレストの一方の支持ステイをロック用孔に、及び、他方の支持ステイを取り付け孔に挿通した後に、ロック部材を、ロック用孔内の長手方向に沿って、一端側から他端側にスライドさせることで、ロック部材と一方の支持ステイが当接し、取付け孔を形成する側壁と他方の支持ステイが当接する。このようにして、前記ロック部材と前記取付け孔の側壁とで2本の支持ステイを挟み込んで押圧し、当該ロック部材をロック用孔に固定することで、当該物品ホルダはヘッドレストに固定される。
【0017】
即ち、ロック用孔と取付け孔に支持ステイを挿通させ、ロック部材をスライドさせロック用孔に固定するという動作だけで、容易且つ堅固に当該物品ホルダをヘッドステイに取り付けることができる。
【0018】
また、ロック部材と取付け孔の側壁とで2本の支持ステイを挟み込んで押圧した状態で、ロック部材がロック用孔に固定されるので、基部材に対してシートの左右方向に力が加えられても、当該押圧力が弱まることがなく、当該物品ホルダをヘッドレストに堅固に固定することができる。
【0019】
さらに、少なくとも1つ以上の取付け孔を備えているので、いずれかの取付け孔を選択して支持ステイを挿通することが可能である。即ち、当該物品ホルダは、車種によって支持ステイ間の幅が異なる場合にも対応して、ヘッドレストに取付けることができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、取付け孔は長手方向に延在し、取付け孔幅が他端側に向かうに従い狭まっている。このため、支持ステイの径と取付け孔幅とが等しいところで、支持ステイは、取付け孔の幅方向に対向する両側壁に当接する。この時、当該支持ステイは、上記対向する両側壁に幅方向から挟まれた上で一端側に向けて押圧されるので、基部材が長手方向及び幅方向に動かないように、片方の支持ステイに基部材を堅固に固定することができる。即ち、支持ステイの径が異なる場合でも、当該物品ホルダを、車両の前後左右にがたつくことなく、ヘッドレストに堅固に取り付けることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、ロック用孔の他端側の端部において、取付け孔が一体的に形成されている。即ち、ロック用孔1つで、取付け孔の機能を兼ねているので、当該物品ホルダの構造を簡易化することができ、製造コストの削減を達成することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、ロック部材は円弧部を有しており、基部材の一端側に向かうに従い円弧部の幅が狭まっている。即ち、支持ステイの径と円弧幅が等しいところで、支持ステイとロック部材の側壁とが当接し、当該支持ステイは、ロック部材の円弧部の幅方向に対向する側壁に挟まれた上で、ロック部材によって他端側に向けて押圧されるので、基部材を長手方向及び幅方向に堅固に片側の支持ステイに固定することができる。従って、支持ステイの径が異なる場合でも、当該物品ホルダを、車両の前後左右にがたつくことなく、ヘッドレストに堅固に取り付けることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、ロック部材をロック用孔に固定する手段として、基部材及びロック部材にラチェット歯及びラチェット爪を一体的に形成することで、固定する手段を別途設ける必要がないので、当該物品ホルダの構造を簡素化することができ、製造コストの削減を達成することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、ホルダ部材の支持アームが、基部材の端部に旋回可能に接続されている。即ち、使用者が物品ホルダに物品を保持させるにあたって、ホルダ部材を旋回させることで、シートの側部又は後部など、使用者の使い勝手が良い位置にホルダ部材を配置することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、基部材の端部と支持アームの接続部分をスライドさせることで、接続部分から保持部までの距離を調整することができる。シート幅又はシート厚が大きい場合は、当該距離を長くすれば、物品ホルダをシートに設置可能であり、他方、シート幅又はシート厚が小さい場合には、当該距離を短くすることで、シートに接してホルダ部材を配置して車内空間を広くとることができる。即ち、車種によって異なるシート幅又はシート厚に対応可能である。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、傘収納ケースを取り付けて、傘を保持することができる。また、保持部が略C字形状であり、袋状の傘収納ケースの収納口部が略C字形状となるので、傘を簡単に収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダの一実施形態の全体斜視図。
【図2】図1の物品ホルダにおける基部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はその平面図。
【図3】図1の物品ホルダにおけるロック部材を示し、(a)はその上方斜視図、(b)はその平面図、(c)はその下方斜視図、(d)はその底面図。
【図4】図1の物品ホルダにおけるホルダ部材及び傘収納ケースの斜視図。
【図5】図1の物品ホルダの分解斜視図。
【図6】図1の物品ホルダをヘッドレストに取り付ける様子を示した図であって、(a)は基部材をヘッドレストに配置する状態を表した斜視図、(b)は支持ステイをロック用孔及び取付け孔に挿通させた状態の平面図、(c)はロック部材及びロック用孔の要部拡大平面図、(d)は物品ホルダがヘッドレストに固定されている状態の平面図。
【図7】図1の物品ホルダが使用されている状態を示す外観斜視図。
【図8】(a)は、支持ステイの径が大きい場合に、物品ホルダがヘッドレストに固定されている状態の平面図、(b)から(d)は、支持ステイ間の幅が異なる場合に、物品ホルダがヘッドレストに固定されている状態の平面図。
【図9】図1の物品ホルダにおいて、(a)はホルダ部材が旋回した状態の平面図、(b)はホルダ部材が基部材の下に折り込まれている状態の平面図、(c)はホルダ部材がスライドしている状態の平面図。
【図10】物品ホルダをヘッドレストから取り外す動作を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は、ロック部材及びロック用孔の部分の拡大平面図。
【図11】(a)から(c)は、本発明のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダの変形例を示す図。
【図12】本発明の背景技術となる物品ホルダの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1は、ヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダ100の一実施形態を示す。物品ホルダ100は、基部材10、ロック部材20及び傘収納ケースホルダとしてのホルダ部材30を備える。以下、各部材について説明する。
【0030】
図2に示すとおり、基部材10の一端側をS1、他端側をS2として定める。長手状に形成されている板状の基部材10は、長手方向の一端側S1に位置するロック用孔11と、ロック用孔11よりも長手方向の他端側S2に位置する複数の取付け孔12と、基部材10の他端にホルダ部材30を接続するための接続部13とを備えている。
【0031】
ロック用孔11は長手方向に延在しており、当該ロック用孔11の幅方向の両縁に、長手方向に沿って複数のラチェット歯11aが形成されている。各ラチェット歯11aは、平面視略三角形状であり、その先端が他端側S2に向かうように傾斜して形成されている。
【0032】
各取付け孔12は、基部材10の長手方向に延びる略長円状に側壁12aによって区画形成されている。また、他端側S2に向かうに従い孔幅が狭まっており、幅広部12bと幅狭部12cとを有する。
【0033】
ロック用孔11及び取付け孔12の幅広部12bの各孔幅は、支持ステイ41を挿通可能に、支持ステイ41の径以上になるように、ロック用孔11及び取付け孔12は基部材10に貫通形成されている。さらに、ロック用孔11の他端側S2の端部において、ロック用孔11に取付け孔12が一体的に形成されている。
【0034】
また、円形の孔として基部材10の他端部に、接続部13が貫通形成されている。当該接続部13は内歯車状に歯切り加工されている。
【0035】
さらに、基部材10の長手方向に沿って、基部材10から垂直上方向に突出する肉厚部分としてリブ14が形成されており、基部材10を補強している。
【0036】
基部材10は、ABS樹脂やポリプロピレン等のプラスチックを用いた射出成形品であり、基部材10の上記各部位は射出成形時に一体成形されるものであるので、組付け性の容易化、部材点数の低減、及びコストの削減を図ることができる。また、本実施形態では、取付け孔12は基部材10に4つ形成されているが、取付け孔12の数は限定されない。
【0037】
図3に示すとおり、ロック部材20は、平面視が略H字形状であり、後述するように支持ステイ41と当接するための円弧部21と、複数のラチェット爪22と、当該ラチェット爪22を変位させるための一対の操作部23とを備えている。
【0038】
円弧部21は、ロック部材20の略中央に位置する円弧面21aと、当該円弧面21aからロック部材20の前側に延在している、一対の対向する側壁21bとからなり、円弧面21aに近づくに従い、両側壁間の距離(円弧部21の幅)が狭まっている。また、円弧部21の上端及び下端から鍔状に延在するように、フランジ部24a及び24bが形成されている。
【0039】
円弧面21aよりロック部材20の後側には、基部材10のロック用孔の両縁に形成されたラチェット歯11aに対応して、円弧部21の幅方向両外側に向けて突出する複数のラチェット爪22が形成されている。各ラチェット爪22は、平面視略三角形状であり、その先端がロック部材20の後側に向かうように傾斜している。そして、ロック部材20を撓ませて、各ラチェット爪22を円弧部21の幅方向内側に変位可能とする、操作部23が形成されている。
【0040】
当該ロック部材20は、ABS樹脂やポリプロピレン等を用いた射出成形品であり、ロック部材20の上記各部位は射出成形時に一体成形されるものであるので、組付け性の容易化、部材点数の低減、及びコストの削減を図ることができる。
【0041】
図4に示すとおり、ホルダ部材30は、長手状の支持アーム31と、保持部32とを備えている。支持アーム31は、当該支持アーム31の長手方向に沿って貫通形成されているスライド部33と、当該スライド部33の両側に隣接して長手方向に沿って突出形成されている一対のリブ34とを備えている。当該リブ34は支持アーム31を補強する役割を果たす。また、保持部32は、平面視が略C字形状であり、筒状の傘収納ケース35を取り付けることができ、当該傘収納ケース35に傘を保持することができる。取付け後は、傘収納ケース35の収納口35bを略C字形状に保つことができ、傘を容易に収納できる。
【0042】
傘収納ケース35は筒状の袋部35aを有しており、傘を傘収納ケース35に差込み容易にするために、収納口35bが略C字形状になっている。また、袋部35aの一部が開閉可能にジッパー35cで結合されている。ジッパー35cを開くことで、傘の下端を収納口35bに差し込む必要がなく、横から傘を容易に傘収納ケース35に納めることができる。特に、狭い車両空間においては、天井にぶつけずに収納することができる。さらに、傘収納ケース35の下端部には、面ファスナー35eなどで、着脱自在に取り付けられた水受け35dを備えているとともに、傘収納ケース35の袋部35a下端は、水が通り抜けるようにメッシュ状に縫い合わされた縫合部35fを備えている。これによって、雨で濡れた傘を収納したとき、傘に付着した水滴が下方に落ちて、縫合部35fを通って水受け35dにたまるので、当該水受け35dを取り外して、傘を脱落させずに保持しつつ、雨水を排出することができる。即ち、車内の濡れを防ぐことができるとともに、袋部35aの下端に水がたまることがない。従って、傘収納ケース35をはやく乾かすことができ、ヘッドレストの支持ステイから物品ホルダ100本体を外さなくても排水することができるので、メンテナンスが容易となる。
【0043】
当該ホルダ部材30は、ABS樹脂やポリプロピレン等を用いた射出成形品であり、ホルダ部材30の上記各部位は射出成形時に一体成形されるものであるので、組付け性の容易化、部材点数の低減、及びコストの削減を図ることができる。
【0044】
図5は、物品ホルダ100の分解状態を示している。
【0045】
ロック部材20は基部材10のロック用孔11にスライド可能に取り付けられる。ロック用孔11の長手方向に沿った両縁端とフランジ部24a及び24bとが基部材10の上面及び下面から引掛かかり、ロック部材20がロック用孔11から容易に外れないように取り付けられている。
【0046】
また、ネジ部材15とそれに対応するナット部材16とによって、基部材10の接続部13とホルダ部材30のスライド部33とが旋回可能に接合される。ネジ部材15は、頭部が歯車状に歯切り加工されており、手で回しやすい形状になっている。ナット部材16は、その外径及び形状が接続部13の孔径及びスライド部33の幅に対応している筒部16aと、矩形状の鍔部16bとを備えている。接続部13の内歯と噛み合うように、筒部16aの一部分の外面が歯車状になっている。接続部13と筒部16aの歯を互いに噛み合わせることで、進ませる歯数に応じた所定角ごとに、ホルダ部材30を任意に旋回させることができ、使用者に優れた使用感を与える。スライド部33の両脇に設けられたリブ34間の幅と鍔部16bの幅は対応しており、当該リブ34は、ホルダ部材30がスライド移動する際にスライド移動を補助する役割も有している。
【0047】
図6は、物品ホルダ100をヘッドレスト40に取り付ける一連の動作について示している。まず、基部材10のロック用孔11に支持ホルダ41aを挿通させ、取付け孔12に支持ステイ41bを挿通させる。そして、各支持ホルダ41a及び41bを、ヘッドレスト40をシート400に取り付けるための穴42にそれぞれ挿入して、ヘッドレスト40をシート400に取り付ける(図6(a)参照)。
【0048】
次に、ロック部材20を、ロック用孔11内の長手方向に沿って、一端側S1から他端側S2にスライド移動させる(図6(b)参照)。ここで、図6(c)に示すように、ラチェット歯11aとラチェット爪22は、同じ向きに傾斜しているので、ロック部材20が一端側S1から他端側S2へ移動するときは噛み合わずに、スライド移動可能である。
【0049】
そして、図6(d)に示すように、ロック部材20の円弧部21と一方の支持ステイ41aが当接し、取付け孔12の側壁12aと他方の支持ステイ41bが当接する。円弧部21と側壁12aとで2本の支持ステイ41を挟み込んで押圧し、当該ロック部材20をロック用孔11に固定する。このとき、図6(c)に示すとおり、ロック部材20が一端側S1に移動しようとすると、ラチェット歯11aとラチェット爪22の噛合関係に基づきロック部材20の移動が阻止される。即ち、ロック部材20の円弧部21と取付け孔12の側壁12aとで2本の支持ステイ41を挟み込んだ状態で、物品ホルダ100がヘッドレスト40に固定される。
【0050】
従って、基部材の長手方向に大きな力が加えられても、基部材は左右にがたつくことなく、堅固に支持ステイに固定され、安定して物品を保持することができる。
【0051】
図7は、傘収納ケースを有する物品ホルダ100をヘッドレスト40に取り付けたときのシート400の全体斜視図である。
【0052】
図8(a)に、ヘッドレストの支持ステイ径が大きい場合における、物品ホルダ100をヘッドレストに取り付けた状態を示す。支持ステイ41Aaの径と円弧部21の幅とが等しいところで、支持ステイ41Aaが、対向する円弧部21の両側壁21bに当接する。また、支持ステイ41Abの径と取付け孔12の孔幅とが等しいところで、支持ステイ41Abが、対向する幅狭部12cの両側壁12aに当接する。従って、物品ホルダ100は、前後左右にがたつくことなく、ヘッドレストに固定される。
【0053】
また、支持ステイの径が小さい場合は、取付け孔12の幅および円弧部21の幅がさらに狭い部分で、支持ステイがそれぞれの側壁に当接することで、物品ホルダ100は、前後左右にがたつくことなく、ヘッドレストに固定される。
【0054】
従って、支持ステイの径が異なる場合においても、物品ホルダ100は、前後左右にがたつくことなくヘッドレストに固定されるので、物品を安定して保持することができる。
【0055】
図8(b)〜(d)にヘッドレストの両支持ステイ間の幅が異なる場合の取り付けの状態図を示す。両支持ステイ間の幅に応じて、一方の支持ステイ41bを挿通する取付け孔12を複数の取付け孔から選択することが可能である。そして、他方の支持ステイ41aは長手方向に延在するロック用孔11内に挿通されればよい。従って、支持ステイ41の幅が車種によって異なる場合においても、物品ホルダ100をヘッドレストに取り付けることができる。また、取付け孔及びロック用孔に支持ステイが挿通される限りにおいて、物品ホルダ100をヘッドレストに取り付ける位置を左右に調整することができる。
【0056】
図9は、ホルダ部材30が旋回した状態およびスライドした状態を示す。ホルダ部材30は、接続部13を支点として360度旋回可能である(図8(a)参照)。即ち、使用者が物品ホルダ100に物品を保持させる際に、ホルダ部30を旋回させて、例えばシートの側部又は後部など、使用者の使い勝手が良い位置にホルダ部材30を配置して物品を保持することができる。
【0057】
また、図9(b)に示すとおり、基部材10の下にホルダ部材30を旋回させて折り込むことで、物品ホルダ100を使用しないときにコンパクトに収納可能である。
【0058】
図9(c)に示すとおり、ホルダ部材30がスライド部33内をスライド移動することで、接続部13から保持部32の距離を調整できる。シート幅又はシート厚が大きいときは、当該距離を大きくすれば、物品ホルダ100をシートに設置可能であり、シート幅又はシート厚が小さいときは、当該距離を小さくすることで、シートに接してホルダ部材30を配置して車内空間を広くとることができる。
【0059】
図10は、ヘッドレスト40から物品ホルダ100を取り外す際の動作について示す。図10(b)に示すとおり、ロック部材20の後側に設けられた両操作部23を内側(互いに接近する方向)に押圧することで、ロック部材20の後側が変形して、ラチェット爪22がラチェット歯11aから離脱する。操作部23を押圧した状態で、ロック部材20を一端側S1にスライド移動させる。このとき、ラチェット爪22とラチェット歯11aとは噛み合わずに、ロック部材20は一端側S1にスライド移動する。そして、支持ステイ41をシートから引き抜くことで、物品ホルダ100をヘッドレスト40から容易に取り外すことができる。
【0060】
(変形例1)
図11(a)は、変形例としての物品ホルダ100Aを示す。物品ホルダ100Aにおいて、ロック用孔11Aと取り付け孔12Aとが分離されており、取り付け孔12Aの幅が一様であり、さらに、ホルダ部材30Aにスライド部が設けられていないが、物品ホルダ100Aは、本発明の「安定して物品を保持する」という目的を達成することができる。
【0061】
(変形例2)
図11(b)は、変形例としての物品ホルダ100Bを示す。ホルダ部材は基部材のいずれの位置に接続させてもよく、ホルダ部材30Bと基部材10Bとは、基部材10Bの一端側S1Bの端部の接続部13Bで接続されている。また、取付け孔の形状も上述の実施形態に限られず、取付け孔12Bは、幅狭部が三角形状になるように他端側S2Bが狭まっている。そして、ホルダ部材30Bの保持部32Bをカップホルダとすることもでき、当該物品ホルダ100Bは、ペットボトルや飲料用カップ等を保持することができる。
【0062】
(変形例3)
図11(c)は、変形例としての物品ホルダ100Cを示す。ホルダ部材30Cと基部材10Cとは、基部材10Cの略中央部で接続されている。取付け孔12Cは、三角形状の孔であり他端側S2Cが狭まっている。ホルダ部材30Cの保持部32Cはクリップであり、当該物品ホルダ100Cは所望の物品を把持することができる。
【0063】
上述した実施形態や変形例において、ロック部材をロック用孔に固定する手段は、ラチェット歯とラチェット爪であるが、ロック用孔にラチェット歯を設けず、ロック用孔の長手方向の縁に複数のネジ穴を設けて、ロック部材を当該ネジ穴に固定するという固定手段も採用し得る。
【0064】
本実施形態において、各部材はABS樹脂やポリプロピレン等によって射出成形されているが、金属板等に加工を施して形成してもよい。
【0065】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る、ヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダは、車両用シートのヘッドレストに取り付けて、使用者の要望に応じ、傘やペットボトルなどの物品を保持する用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
100 物品ホルダ
10 基部材
11 ロック用孔
11a ラチェット歯
12 取付け孔
13 接続部
20 ロック部材
21 円弧部
22 ラチェット爪
30 ホルダ部材
31 支持アーム
32 保持部
33 スライド部
35 傘収納ケース
400 シート
40 ヘッドレスト
41 支持ステイ
S1 一端側
S2 他端側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのヘッドレストの2本の支持ステイに取り付けられるヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダであって、
長手方向の一端側に位置する、一方の前記支持ステイを挿通可能な、長手方向に延在するロック用孔と、前記ロック用孔よりも長手方向の他端側に位置する、他方の前記支持ステイを挿通可能な、少なくとも1つ以上の取付け孔と、を備える板状の基部材と、
前記ロック用孔内を長手方向にスライド可能に取り付けられ、且つ、所定位置で、前記基部材を前記支持ステイに押圧するように、前記ロック用孔に固定可能であるロック部材と、
前記基部材に接続されている、物品を保持するためのホルダ部材と、を備えていることを特徴とする、ヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダ。
【請求項2】
前記取付け孔は、前記基部の長手方向に延在する略長円状の孔として形成されており、前記基部材の前記他端側に向かうに従い、前記取付け孔幅が狭まっていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダ。
【請求項3】
前記ロック用孔は、前記ロック用孔の他端側の端部において、前記ロック用孔に隣接する前記取付け孔が一体的に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダ。
【請求項4】
前記ロック部材は、前記基部材の他端側に、前記支持レストに一端側から当接可能な、略半円弧状の円弧面を有する円弧部を備えており、前記基部材の一端側に向かうに従い、前記円弧部の幅が狭まっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダ。
【請求項5】
前記基部材は、前記ロック用孔の幅方向の両縁に長手方向に沿って形成されている複数のラチェット歯を備え、前記ロック部材は、前記ラチェット歯と噛み合うラチェット爪を備えており、
前記ラチェット歯と前記ラチェット爪との噛合関係に基づき、一端側から他端側への前記ロック部材の移動は許容されるが、他端側から一端側への前記ロック部材の移動は規制されることで、前記ロック用孔に前記ロック部材が固定されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダ。
【請求項6】
前記ホルダ部材は、前記基部材の端部に旋回可能に接続されている支持アームと、前記支持アームの先端に物品を保持するための保持部とを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダ。
【請求項7】
前記支持アームは、前記支持アームの長手方向に沿って延在するスライド部を備えており、前記支持アームの前記スライド部が前記基部材の端部に接続されて、前記基部材に対し前記支持アームがスライド可能となっていることを特徴とする請求項6に記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダ。
【請求項8】
前記保持部が略C字形状であり、前記保持部に袋状の傘収納ケースを取り付けられる傘収納ケースホルダであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のヘッドレストへの取付け具を有する物品ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−46210(P2011−46210A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193817(P2009−193817)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(391052585)株式会社ボンフォーム (13)
【Fターム(参考)】