説明

ヘッドレスト

【課題】ヘッドレストに通過部を設けてもヘッドレストの外観性能の低下を抑制する。
【解決手段】ヘッドレスト32では、スリット後壁80、スリット前壁78にそれぞれトリム86、トリム92が設けられており、屈曲部88及び屈曲部94が、スリット82内に配置されて、スリット82を塞いている。また、屈曲部88及び屈曲部94は、ステーの連結部の通過方向に屈曲可能に形成されている。これにより、ヘッドレスト32をシートバックに組付ける際に、ステーが屈曲部88、屈曲部94を屈曲させつつスリット82内を通過する。ステー24がスリット82を通過した後は、屈曲部88及び屈曲部94がスリット82内に配置され、スリット82が屈曲部88及び屈曲部94によって塞がれて、スリット82からヘッドレスト32の内部が視認不能にされる。したがって、ヘッドレスト32にスリット82を設けてもヘッドレスト32の外観性能の低下を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックに設けられたステーが通過する通過部を有したヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のヘッドレストでは、パッド本体とピラー(ステー)とが一体に形成されており、ピラーの両端がパッド本体の下面から突出されている。また、パッド本体の外周部は、ヘッドレストカバーによって被覆されている。さらに、パッド本体の下面には、埋設用スリットが設けられており、埋設用スリットにヘッドレストカバーの前面側端末部と後面側端末部とが挿入されている。これにより、前面側端末部と後面側端末部とが外部に露出されないため、意匠性の高いヘッドレストを製作できる。
【0003】
ところで、このヘッドレストを車両のシートバックに組付ける際には、ピラーの両端をシートバックに挿入して、ヘッドレストをシートバックに組付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−218115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ヘッドレストでは、ピラーがシートバックに一体に設けられて、ピラーをヘッドレスト内に挿入することで、ヘッドレストがシートバックに組付けられるものがある。この場合には、略コ字形状をしたピラーの両端部がシートバックの上部に支持されて、ピラーがシートバックから上方へ突出されると共に、ピラーの長手方向中間部が、シートバックの上方においてシートバック幅方向に沿って配設されている。
【0006】
このため、ヘッドレストの下面には、ピラーを挿入させるための長尺状のスリットが設けられている。これにより、このスリットからヘッドレストの内部を視認することができるため、ヘッドレストの外観性能が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮し、ヘッドレストに通過部を設けてもヘッドレストの外観性能の低下を抑制できるヘッドレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のヘッドレストは、車両のシートバック側へ開口されて前記シートバックに設けられたステーが通過する開口部を有すると共に、前記開口部から挿入された前記ステーに保持されたパッド部と、前記開口部内にシートバック幅方向に沿って設けられかつ前記ステーが通過する通過部を有すると共に、前記パッド部の外周部を被覆した被覆部と、前記被覆部にシートバック幅方向に沿って設けられ、前記通過部内に配置されて前記通過部を塞ぐと共に、前記ステーの通過方向に屈曲可能に形成された蓋部と、を備えている。
【0009】
請求項1に記載のヘッドレストでは、パッド部が、車両のシートバック側へ開口された開口部を有しており、パッド部の外周部は被覆部に被覆されている。また、被覆部は通過部を有しており、通過部は開口部内にシートバック幅方向に沿って設けられている。
【0010】
シートバックに設けられたステーは、通過部を通過して、開口部からパッド部内に挿入される。これにより、パッド部がステーに保持される。
【0011】
ここで、被覆部には蓋部が設けられており、蓋部は、通過部内に配置されて通過部を塞ぐと共に、ステーの通過方向に屈曲可能に形成されている。これにより、ヘッドレストをシートバックに組付ける際には、ステーが蓋部を屈曲させつつ通過部を通過する。ステーが通過部を通過した後は、蓋部によって通過部が塞がれて、ヘッドレストの内部が視認不能にされる。
【0012】
請求項2に記載のヘッドレストは、請求項1に記載のヘッドレストにおいて、前記蓋部が前記通過部のシートバック前後方向の両側に設けられている。
【0013】
請求項2に記載のヘッドレストでは、通過部が、シートバック前後方向の両側から蓋部によって塞がれる。
【0014】
請求項3に記載のヘッドレストは、請求項2に記載のヘッドレストにおいて、前記蓋部が前記ステーの通過方向においてオーバーラップして配置されている。
【0015】
請求項3に記載のヘッドレストでは、蓋部がオーバーラップして配置されているため、通過部が蓋部によって確実に塞がれる。
【0016】
請求項4に記載のヘッドレストは、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のヘッドレストにおいて、前記パッド部内に設けられ、前記ステーに支持されることで前記パッド部を前記ステーに保持させると共に、前記蓋部を押圧することで前記蓋部を前記通過部内に配置させる押圧部を有した支持体を備えている。
【0017】
請求項4に記載のヘッドレストでは、パッド部内に設けられた支持体に押圧部が設けられており、蓋部が、押圧部に押圧されることで、通過部内に配置される。このため、パッド部に設けられた支持体を利用して、蓋部が通過部内に確実に配置される。
【0018】
請求項5に記載のヘッドレストは、請求項4に記載のヘッドレストにおいて、前記蓋部が前記支持体に連結されている。
【0019】
請求項5に記載のヘッドレストでは、ステーが通過部を通過する際に蓋部がステーによって屈曲されても、蓋部が支持体に支持されて、蓋部の姿勢が保持される。
【0020】
請求項6に記載のヘッドレストは、請求項5に記載のヘッドレストにおいて、前記蓋部に設けられると共に、前記支持体に係合可能に構成され、前記支持体に係合することで前記蓋部を前記支持体に連結させる係合部を備えている。
【0021】
請求項6に記載のヘッドレストでは、蓋部に設けられた係合部を支持体に係合させることで、蓋部が支持体に連結されるため、蓋部を前記支持体に連結させ易くできる。
【0022】
請求項7に記載のヘッドレストは、請求項4〜請求項6の何れか一項に記載のヘッドレストにおいて、前記押圧部が前記蓋部の前記シートバック幅方向中間部を押圧する。
【0023】
請求項7に記載のヘッドレストでは、蓋部のシートバック幅方向中間部が押圧部に押圧されるため、蓋部が効率よく通過部内に配置される。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載のヘッドレストによれば、ヘッドレストに通過部を設けてもヘッドレストの外観性能の低下を抑制できる。
【0025】
請求項2に記載のヘッドレストによれば、ヘッドレストの外観性能の低下を効果的に抑制できる。
【0026】
請求項3に記載のヘッドレストによれば、ヘッドレストの外観性能の低下を一層抑制できる。
【0027】
請求項4に記載のヘッドレストによれば、ヘッドレストの外観性能の低下を安定的に抑制できる。
【0028】
請求項5に記載のヘッドレストによれば、ステーが通過部を通過する際の蓋部の姿勢を保持できる。
【0029】
請求項6に記載のヘッドレストによれば、蓋部を支持体に連結させる際の組付け性を向上できる。
【0030】
請求項7に記載のヘッドレストによれば、蓋部を効率よく通過部内に配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係るヘッドレストが適用された車両用シートを示す車両左前方から見た斜視図である。
【図2】図1に示される車両用シートの要部を示す車両左前方から見た斜視図である。
【図3】図1において示されるヘッドレストとシートバックとを示す車両左方から見た断面図(図1の3−3線断面図)である。
【図4】図3に示されるワイヤ土台を示す下方から見た斜視図である。
【図5】図1に示されるヘッドレストの下部を示す車両左方から見た拡大した断面図(図4の5−5線断面図)である。
【図6】図1に示されるヘッドレストの下部を示す車両左方から見た拡大した断面図(図4の6−6線断面図)である。
【図7】図1に示されるヘッドレストを下方からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1には、本発明の実施の形態に係るヘッドレスト32が適用された車両用シート10が車両左前方から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車両右方(車幅方向一側)を矢印RHで示し、上方を矢印UPで示す。
【0033】
この図に示されるように、車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション12とシートバック14とを備えている。シートバック14は、シートクッション12の車両後方の端部に起立した状態で配置されており、シートバック14の幅方向が車幅方向と一致している。
【0034】
図2に示すように、シートバック14内には、シートバックフレーム16が設けられている。シートバックフレーム16は、略板状の下部フレーム18を備えており、下部フレーム18はシートバックフレーム16の下部に配置されている。下部フレーム18の上方には、断面略コ字形状に屈曲された一対のサイドフレーム20が設けられており、各サイドフレーム20は下部フレーム18に連結されている。シートバックフレーム16には、上部において、略パイプ状の上部フレーム22が設けられている。上部フレーム22は車両前方から見て略コ字形状に屈曲されており、上部フレーム22の両端部が、一対のサイドフレーム20にそれぞれ固定されている。
【0035】
シートバックフレーム16の上方には、金属により製作された長尺パイプ状のステー24が設けられている。ステー24は車両前方から見て略コ字形状に屈曲されており、ステー24の両端部が、上部フレーム22の長手方向中間部に固定されている。ステー24の車両左方の部分には、第1支持部26が設けられており、第1支持部26は上部フレーム22から上方へ延設されている。ステー24の車両右方の部分には、第2支持部28が設けられており、第2支持部28は上部フレーム22から上方へ延設されている。第1支持部26及び第2支持部28の上部には、連結部30が掛け渡されており、連結部30は、シートバック14の上方において、車幅方向に沿って配置されている。
【0036】
第1支持部26には、車両前方の部分において、車両左方から見て断面略台形状の第1凹部26Aが複数(本実施の形態では6つ)設けられており、第1凹部26Aは車両前方に開口されている。また、第2支持部28には、車両前方の部分において、車両左方から見て断面略台形状の第2凹部28Aが複数(本実施の形態では6つ)設けられており、第2凹部28Aは車両前方に開口されている。また、各第2凹部28Aの上下方向の位置は、それぞれ各第1凹部26Aの上下方向の位置と同じ位置に設定されている。
【0037】
シートバック14の上方にはヘッドレスト32が設けられている。ヘッドレスト32内には、前述したステー24が挿入されており、ヘッドレスト32はステー24によって上下方向にスライド移動可能に支持されている。
【0038】
図3に示すように、ヘッドレスト32は、パッド部としてのウレタン等の発泡材により製作されたパッド34を備えている。パッド34は、前側パッド34Aと後側パッド34Bとで構成されている。前側パッド34Aはパッド34の車両前方の部分に配置されており、後側パッド34Bはパッド34の車両後方の部分に配置されている。パッド34には、下面において、開口部としての断面略矩形状の凹部36が設けられており、凹部36は下方(シートバック14側)へ向けて開口されている。
【0039】
図2及び図3に示すように、パッド34内には、支持体としての有底筒状のステーカバー37が設けられている。ステーカバー37は、下方に向けて開口されて、前側パッド34Aと後側パッド34Bとによって狭持されている。ステーカバー37の下部には、略直方体状のフランジ部38が一体に設けられている。フランジ部38には、下面において、断面円形状の複数(本実施の形態では10個であり、図3には2個示されている)の取付螺子部40が貫通形成されており、取付螺子部40には、内周部において、雌螺子が形成されている。
【0040】
また、フランジ部38には、下面において、後述するワイヤ62を収容するための断面略矩形状のワイヤ収容部42が凹状に形成されている。ワイヤ収容部42には、下方から見て断面略長尺トラック形状のステー収容部44が形成されており、ステー収容部44内には、前述したステー24が上下方向に摺動可能に収容されている。これにより、上述したように、ヘッドレスト32がステー24に上下方向にスライド移動可能に支持されている。
【0041】
図3及び図4に示すように、パッド34内には、パッド34の凹部36とステーカバー37との間において、支持体としての略直方体状のワイヤ土台46が設けられている。ワイヤ土台46には、ステーカバー37の取付螺子部40に対応する位置において、断面円形状の複数(本実施の形態では10個)の取付孔48が貫通形成されている。また、各取付孔48の下方には、断面円形状のザグリ部48Aが設けられている。ザグリ部48Aは、取付孔48に対して拡径に形成されると共に、取付孔48と同軸上に配置されて、取付孔48に連通している。各取付孔48には、略円柱状の螺子50が挿通されており、螺子50が取付螺子部40に螺合することで、ワイヤ土台46がステーカバー37に固定されている。これにより、ヘッドレスト32が上下方向に移動される際には、ステーカバー37と共にワイヤ土台46が車両上下方向へ移動される。
【0042】
ワイヤ土台46には、中央部において、略六角形状の貫通孔52が貫通形成されている。貫通孔52は、ワイヤ収容部42を介してステー収容部44と連通しており、貫通孔52内をステー24の連結部30が通過可能に構成されている。また、貫通孔52の車幅方向両端部には、断面略半円状の一対のステー挿通部52A、52Bがそれぞれ設けられており、ステー挿通部52A、52Bにステー24の第1支持部26及び第2支持部28が挿通されている。
【0043】
貫通孔52の内周部には、車両後方部かつ車幅方向中間部において、押圧部としての略直方体状の押片54が設けられている。押片54は貫通孔52の内周部から車両前方へ突出されている。また、貫通孔52の内周部には、車両前方部かつ車幅方向中間部において、押圧部としての略直方体状の押片56が設けられている。押片56は貫通孔52の内周部から車両後方へ突出されている。
【0044】
ワイヤ土台46には、貫通孔52の車両後方において、略矩形状の一対の係合孔58が貫通形成されている。係合孔58は、長手方向を車幅方向と平行にして配置されて、ワイヤ土台46の押片54に対して対称の位置に配置されている。また、ワイヤ土台46には、貫通孔52の車両前方において、略矩形状の一対の係合孔60が貫通形成されている。係合孔60は、長手方向を車幅方向と平行にして配置されて、ワイヤ土台46の押片56に対して対称の位置に配置されている。
【0045】
図3に示すように、ステーカバー37のワイヤ収容部42内には、長尺棒状のワイヤ62が収容されている。ワイヤ62は、弾性を有するばね材により製作されており、長手方向を車幅方向にして配置されている。ワイヤ62の車両左方の端部(一端部)は、車両右方へ移動可能にステーカバー37に支持されており、ワイヤ62の車両右方の端部(他端部)は、車幅方向へ移動不能にステーカバー37に支持されている。また、ワイヤ62の長手方向中間部は、ステー24の第1凹部26A及び第2凹部28Aに係合されている。このため、ヘッドレスト32の上下方向の移動がワイヤ62によって阻止されて、ヘッドレスト32が所定の位置においてステー24に保持されている。
【0046】
図4に示すように、ワイヤ62の車両左方の端には、操作ノブ64が連結されている。操作ノブ64を車両右方へ押圧すると、ワイヤ62の長手方向中間部が弾性変形して、ワイヤ62とステー24の第1凹部26A及び第2凹部28Aとの係合が解除可能に構成されている。これにより、ヘッドレスト32の上下方向の移動が可能に構成されている。
【0047】
図7に示すように、パッド34の外側には、被覆部としての布により製作された中空の略楕円柱状の表皮70が設けられている。表皮70は、長尺略矩状に形成されたメイン表皮72を備えている。メイン表皮72の長手方向両端部には面取部72Aが4箇所設けられており、メイン表皮72は、パッド34の凹部36の位置において、開口されて、パッド34の下面、車両前側面及び車両後側面を被覆している。また、表皮70は、略楕円形状の一対のサイド表皮74A、74Bを備えている。サイド表皮74A、74Bは、メイン表皮72に縫合されて、操作ノブ64を露出させた状態でパッド34の車幅方向両側面を被覆している。さらに、表皮70は、略三角形状の一対のロア表皮76A、76Bを備えている。ロア表皮76A、76Bはメイン表皮72の面取部72A及びサイド表皮74A、74Bに縫合されて、パッド34の下面を被覆している。
【0048】
図5〜図7に示すように、メイン表皮72の長手方向一端部(車両前方の端部)は、パッド34の凹部36の位置において、上方に折り曲げられており、これにより、スリット前壁78が車幅方向に沿って設けられている。さらに、メイン表皮72の長手方向一端部は、スリット前壁78の上部において、下方に折り曲げられて、重ね合わされた状態で縫製されている。
【0049】
また、メイン表皮72の長手方向他端部(車両後方の端部)は、パッド34の凹部36の位置において、上方に折り曲げられており、これにより、スリット後壁80が車幅方向に沿って設けられている。さらに、メイン表皮72の長手方向他端部は、スリット後壁80の上部において、下方に折り曲げられて、重ね合わされた状態で縫製されている。
【0050】
スリット前壁78とスリット後壁80とは、車両前後方向に離間した状態で対向して配置されている。これにより、スリット前壁78とスリット後壁80との間に通過部としてのスリット82が貫通形成されている。スリット82は、パッド34の凹部36内に車幅方向に沿って配置されて、ワイヤ土台46の貫通孔52と連通している。また、スリット82内をステー24の連結部30が上下方向に通過可能に構成されている。さらに、スリット82の車幅方向両側には、略半円形状の一対の挿通部84A、84Bが設けられている(図7参照)。挿通部84A、84Bはスリット82に連通しており、挿通部84A、84B内にステー24の第1支持部26及び第2支持部28がそれぞれ挿通している。
【0051】
スリット後壁80の車両後方には、蓋部としての布により製作された長尺状のトリム86が設けられている。トリム86は、スリット後壁80(車幅方向)に沿って配置されると共に、車両左方から見てループ状に折り曲げられて、一端と他端とが重なり合った状態で、スリット後壁80に縫製されている。これにより、トリム86はメイン表皮72に縫合(連結)されている。また、トリム86の先端側の部分(スリット後壁80に縫製されていない部分)が屈曲部88とされており、屈曲部88は上下方向(連結部30の通過方向)に屈曲可能に構成されている。
【0052】
また、トリム86は、押片54に押圧されて、スリット後壁80の上部において車両前方へ折り曲げられている。これにより、トリム86が、スリット後壁80からスリット前壁78に向けて延在されると共に、屈曲部88がスリット82内に配置されている。このため、スリット82は屈曲部88(トリム86)によって塞がれている。
【0053】
トリム86の車両後方には、ワイヤ土台46の係合孔58に対応する位置において、係合部としての一対のフック90が設けられている(図4及び図6参照)。フック90は、車両左方から見て断面略J字状に形成されると共に、車幅方向に沿って長尺状に形成されている。フック90の一端部は、板状に形成されて、トリム86に縫製されている。これにより、フック90がトリム86に連結されている。フック90の他端部には、フック部90Aが設けられており、フック部90Aは係合孔58内に挿入されて、フック90がワイヤ土台46に係合されている。これにより、フック90を介してトリム86がワイヤ土台46に連結されている。
【0054】
スリット前壁78の車両前方には、蓋部としての布により製作された長尺状のトリム92が設けられている。トリム92は、スリット前壁78(車幅方向)に沿って配置されると共に、車両左方から見てループ状に折り曲げられて、一端と他端とが重なり合った状態で、スリット前壁78に縫製されている。これにより、トリム92はメイン表皮72に縫合(連結)されている。また、トリム92の先端の部分(スリット前壁78に縫製されていない部分)が屈曲部94とされており、屈曲部94は上下方向(連結部30の通過方向)に屈曲可能に構成されている。
【0055】
また、トリム92は、押片56に押圧されて、スリット前壁78の上部において車両後方へ折り曲げられている。これにより、トリム92が、スリット前壁78からスリット後壁80に向けて延在されると共に、屈曲部94がスリット82内に配置されている。また、屈曲部94は屈曲部88の上方に配置されており、屈曲部94と屈曲部88とは上下方向にオーバーラップしている。このため、スリット82は屈曲部94(トリム92)によっても塞がれている。
【0056】
トリム92の車両前方には、ワイヤ土台46の係合孔60に対応する位置において、係合部としての一対のフック96が設けられている(図4及び図6参照)。フック96は、車両左方から見て断面略J字形状に形成されると共に、車幅方向に沿って長尺状に形成されている。フック96の一端部は、板状に形成されて、トリム92に縫製されている。これにより、フック96がトリム92に連結されている。フック96の他端部には、フック部96Aが設けられており、フック部96Aが係合孔60内に挿入されて、フック96がワイヤ土台46に係合されている。これにより、フック96を介してトリム92がワイヤ土台46に連結されている。
【0057】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0058】
本実施の形態のヘッドレスト32が適用された車両用シート10では、シートバック14からステー24が上方へ突出されている。また、ステー24の連結部30は、シートバック14の上方において、車幅方向に沿って配置されている。
【0059】
ヘッドレスト32を車両用シート10に組付ける際には、ステー24の連結部30をヘッドレスト32のスリット82内に挿入させる。この際には、スリット82内に配置されたトリム86の屈曲部88がステー24の連結部30に押されて上方へ屈曲されると共に、トリム92の屈曲部94が上方へ屈曲される。これにより、ステー24がスリット82内に挿入されると共に、ステー24の第1支持部26及び第2支持部28が挿通部84A、84Bに挿入される。
【0060】
ステー24の連結部30がスリット82内を通過すると、屈曲部88及び屈曲部94はワイヤ土台46の押片54及び押片56にそれぞれ押圧されているため、屈曲部88及び屈曲部94がスリット82内に配置される。
【0061】
ステー24をヘッドレスト32内にさらに挿入させると、ステー24の連結部30がワイヤ土台46の貫通孔52を通過すると共に、ステー24の第1支持部26及び第2支持部28がワイヤ土台46のステー挿通部52A、52B内を挿通して、ステー24がステーカバー37のステー収容部44内に挿入される。この際に、ワイヤ62の長手方向中間部がステー24の第1凹部26A及び第2凹部28Aに係合されて、ヘッドレスト32の上下方向の移動がワイヤ62によって阻止される。これにより、ヘッドレスト32が所定の位置においてステー24に保持される。
【0062】
ここで、メイン表皮72のスリット後壁80及びスリット前壁78には、それぞれトリム86及びトリム92が設けられており、トリム86の屈曲部88及びトリム92の屈曲部94が、スリット82内に配置されて、スリット82を塞いている。また、屈曲部88及び屈曲部94は、ステー24の連結部30の通過方向(上下方向)に屈曲可能に形成されている。これにより、ヘッドレスト32をシートバック14に組付ける際には、ステー24が屈曲部88及び屈曲部94を屈曲させつつスリット82内を通過する。また、ステー24がスリット82を通過した後は、再び屈曲部88及び屈曲部94がスリット82内に配置されるため、スリット82が屈曲部88及び屈曲部94によって塞がれて、スリット82からヘッドレスト32の内部が視認不能にされる。したがって、ヘッドレスト32にスリット82を設けてもヘッドレスト32の外観性能の低下を抑制できる。
【0063】
また、スリット82の車両前後方向両側に、それぞれトリム86及びトリム92が設けられており、トリム86の屈曲部88及びトリム92の屈曲部94がスリット82内を塞いでいる。このため、ヘッドレスト32の内部がトリム86及びトリム92によって効果的に視認不能にされる。これにより、ヘッドレスト32の外観性能の低下を効果的に抑制できる。
【0064】
さらに、トリム92の屈曲部94はトリム86の屈曲部88の上方に配置されており、屈曲部88と屈曲部94とは上下方向にオーバーラップしている。このため、スリット82が屈曲部88(トリム86)及び屈曲部94(トリム92)によって確実に塞がれる。これにより、ヘッドレスト32の外観性能の低下を一層抑制できる。
【0065】
また、ワイヤ土台46には押片54及び押片56が設けられており、押片54及び押片56がそれぞれトリム86及びトリム92を押圧することで、屈曲部88及び屈曲部94がスリット82内に配置されている。これにより、パッド34内に設けられたワイヤ土台46を利用して、屈曲部88及び屈曲部94をスリット82内に確実に配置させることができる。したがって、ヘッドレスト32の外観性能の低下を安定的に抑制できる。
【0066】
さらに、トリム86及びトリム92は、フック90及びフック96を介してワイヤ土台46に連結されている。このため、ステー24がスリット82を通過する際に、屈曲部88及び屈曲部94がステー24の連結部30によって屈曲されても、トリム86及びトリム92がワイヤ土台46に支持されるため、トリム86及びトリム92の姿勢を保持できる。
【0067】
また、トリム86及びトリム92には、それぞれフック90及びフック96が連結されている。さらに、フック90のフック部90A及びフック96のフック部96Aがそれぞれワイヤ土台46の係合孔58及び係合孔60に係合されることで、トリム86及びトリム92がワイヤ土台46に連結される。このため、トリム86及びトリム92をワイヤ土台46に連結させ易くでき、組付け性を向上できる。
【0068】
さらに、押片54及び押片56はワイヤ土台46の貫通孔52の車幅方向中間部に設けられており、トリム86及びトリム92の車幅方向中間部がそれぞれ押片54及び押片56に押圧される。このため、トリム86及びトリム92を効率よくスリット82内に配置できる。
【0069】
なお、本実施の形態では、スリット82の車両前後方向両側に、それぞれトリム86及びトリム92が設けられて、屈曲部88及び屈曲部94がスリット82内を塞いでいる。これに替えて、トリム86及びトリム92の何れか一方を、メイン表皮72のスリット後壁80及びスリット前壁78の何れか一方に設けて、屈曲部88及び屈曲部94の何れか一方がスリット82内を塞いでもよい。
【0070】
また、本実施の形態では、屈曲部88と屈曲部94とは上下方向にオーバーラップしている。これに替えて、屈曲部88と屈曲部94とが上下方向にオーバーラップせずに、屈曲部88及び屈曲部94の先端部がスリット82の車両前後方向中間部に配置されてもよい。
【0071】
さらに、本実施の形態では、ワイヤ土台46には押片54及び押片56が設けられており、押片54及び押片56がそれぞれトリム86及びトリム92を押圧することで、屈曲部88及び屈曲部94がスリット82内に配置される。これに替えて、トリム86及びトリム92をスリット82に配置させる部材をトリム86及びトリム92に設けてもよい。例えば、弾性を有する断面L字形の樹脂により製作されたプレートをトリム86及びトリム92の内部に設けることで、該プレートの弾性力によって屈曲部88及び屈曲部94をスリット82内に配置させてもよい。
【0072】
また、本実施の形態では、押片54及び押片56はワイヤ土台46の貫通孔52の車幅方向中間部にそれぞれ設けられているが、押片54及び押片56を複数設けてもよい。
【0073】
さらに、本実施の形態では、トリム86及びトリム92がメイン表皮72と別体に構成されている。これに替えて、トリム86及びトリム92をメイン表皮72と一体に設けてもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、前側パッド34Aと後側パッド34Bとの間に、ステーカバー37及びワイヤ土台46が配置されており、前側パッド34Aと後側パッド34Bとが表皮70によって被覆されている。これに替えて、前側パッド34A及び後側パッド34Bを一体にすると共に、一体化された前側パッド34A及び後側パッド34Bをステーカバー37、ワイヤ土台46、及び表皮70と一体成形させてもよい。この場合には、例えば、前側パッド34A及び後側パッド34Bを製作する金型の内部に表皮70を配置させると共に、表皮70の内側にステーカバー37及びワイヤ土台46を配置させる。さらに、表皮70とステーカバー37及びワイヤ土台46との間に発泡材を注入させて、この発泡材を発泡させることで、一体化された前側パッド34A及び後側パッド34Bとステーカバー37、ワイヤ土台46、及び表皮70とを一体成形させてもよい。
【符号の説明】
【0075】
14 シートバック
24 ステー
32 ヘッドレスト
34 パッド(パッド部)
36 凹部(開口部)
46 ワイヤ土台(支持体)
54 押片(押圧部)
56 押片(押圧部)
70 表皮(被覆部)
82 スリット(通過部)
86 トリム(蓋部)
90 フック(係合部)
92 トリム(蓋部)
96 フック(係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートバック側へ開口されて前記シートバックに設けられたステーが通過する開口部を有すると共に、前記開口部から挿入された前記ステーに保持されたパッド部と、
前記開口部内にシートバック幅方向に沿って設けられかつ前記ステーが通過する通過部を有すると共に、前記パッド部の外周部を被覆した被覆部と、
前記被覆部にシートバック幅方向に沿って設けられ、前記通過部内に配置されて前記通過部を塞ぐと共に、前記ステーの通過方向に屈曲可能に形成された蓋部と、
を備えたヘッドレスト。
【請求項2】
前記蓋部が前記通過部のシートバック前後方向の両側に設けられた請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記蓋部が前記ステーの通過方向にオーバーラップして配置された請求項2に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記パッド部内に設けられ、前記ステーに支持されることで前記パッド部を前記ステーに保持させると共に、前記蓋部を押圧することで前記蓋部を前記通過部内に配置させる押圧部を有した支持体を備えた請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記蓋部が前記支持体に連結された請求項4に記載のヘッドレスト。
【請求項6】
前記蓋部に設けられると共に、前記支持体に係合可能に構成され、前記支持体に係合することで前記蓋部を前記支持体に連結させる係合部を備えた請求項5に記載のヘッドレスト。
【請求項7】
前記押圧部が前記蓋部のシートバック幅方向中間部を押圧する請求項4〜請求項6の何れか一項に記載のヘッドレスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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