説明

ヘッド支持機構、ヘッド装置及びディスクドライブ装置

【課題】 耐振動特性及び耐衝撃特性を低下させることなく、磁気ヘッドスライダのアンロード特性を向上させることができるヘッド支持機構、ヘッド装置及びディスクドライブ装置を提供する。
【解決手段】 ロード/アンロード式のヘッド支持機構であって、ヘッドスライダを支持するためのサスペンションと、サスペンション上に設けられており、アンロード動作を行なう際に発熱してサスペンションの一部を加熱可能な少なくとも1つの発熱手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜磁気ヘッドや光ヘッドなどの記録及び/又は再生ヘッド素子を備えた浮上型ヘッドスライダを支持するロード/アンロード式のヘッド支持機構、このヘッド支持機構を備えたヘッド装置及びディスクドライブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクドライブ装置(ハードディスクドライブ(HDD)装置)では、ヘッド支持機構の先端部に取り付けられた磁気ヘッドスライダを、回転する磁気ディスクの表面から浮上させ、その状態で、この磁気ヘッドスライダに搭載された薄膜磁気ヘッド素子により磁気ディスクへの記録及び/又は磁気ディスクからの再生が行われる。
【0003】
近年、この種のHDD装置は、ノートパソコンのみならず、ポータブルオーディオプレーヤやデジタルカメラ、携帯電話等のモバイル性の高い機器に搭載され始め、これに伴ってさらなる小型化及び大容量化が要求されている。小型化及び大容量化のためには高記録密度化が必要となり、そのため、磁気ヘッド素子の小型化及び磁気ヘッドスライダの低浮上量化がますます進んでいる。
【0004】
一方、モバイル性の高い機器へ搭載するためには外乱振動に強くかつ耐衝撃性の高い構造が要求されるため、最近の小型のHDD装置は、磁気ヘッドスライダを動作時のみ磁気ディスク内のロード位置に配置し、非動作時には磁気ディスク外のアンロード位置に退避させる、ロード/アンロード方式の構造とすることが主流となっている。
【0005】
この種のロード/アンロード方式のHDD装置については、種々の文献に記載されている(例えば、特許文献1、2、3)。
【0006】
【特許文献1】特開平05−325465号公報
【特許文献2】特開2000−163901号公報
【特許文献3】特開2000−222838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
浮上量が低くなると、磁気ヘッドスライダと磁気ディスクとの間に流れる空気流がより圧縮され、この間に働く空気膜の剛性が高くなる。空気膜剛性が高くなると外乱振動の影響が低減されるので、磁気ヘッドスライダがロードされている時には、外乱振動に強く衝撃に対して安定動作するという良好な特性を示す。しかしながら、空気膜剛性が高い場合、非動作状態となってアンロードする際に磁気ヘッドスライダを磁気ディスク表面から引きはがしにくくなる。アンロードさせる際に磁気ヘッドスライダが引きはがしにくいと、磁気ヘッド支持機構を動かすボイスコイルモータ(VCM)がより大きなトルクを発生しなければならないのでこのVCMに過大な電流を流す必要が生じてくる。このため、消費電力が大きくなってしまうという問題が生じる。
【0008】
その結果、多くのHDD装置では、消費電力を低下させる等の通常動作に悪影響を及ぼすロード/アンロード特性を優先的に改善し、耐振動特性及び耐衝撃特性を犠牲にせざるを得なくなる。
【0009】
従って本発明の目的は、耐振動特性及び耐衝撃特性を低下させることなく、磁気ヘッドスライダのアンロード特性を向上させることができるヘッド支持機構、ヘッド装置及びディスクドライブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、ロード/アンロード式のヘッド支持機構であって、ヘッドスライダを支持するためのサスペンションと、サスペンション上に設けられており、アンロード動作を行なう際に発熱してサスペンションの一部を加熱可能な少なくとも1つの発熱手段とを備えたヘッド支持機構が提供される。
【0011】
アンロード動作を行なう際にサスペンションの一部が加熱可能となっているため、加熱によりサスペンションのピッチング方向の剛性(ピッチング剛性)が変化するか、加熱による材料の熱膨張量の差によってこのサスペンションに搭載されるヘッドスライダのピッチング角度が変化するから、ヘッドスライダのアンロードが非常に容易となる。しかも、アンロード動作を行なう時のみこのような加熱を行なってピッチング剛性を変化させたり、ピッチング角度を変化させているため、耐振動特性及び耐衝撃特性を優先して設計することが可能となる。
【0012】
少なくとも1つの発熱手段が、サスペンションの一部を加熱することによってサスペンションのピッチング剛性を変化させるためのものであることが好ましい。
【0013】
サスペンションがヘッドスライダ搭載部を有するフレクシャとフレクシャを支持するロードビームとを備えており、少なくとも1つの発熱手段がヘッドスライダ搭載部よりサスペンションの先端側のフレクシャ上に設けられていることも好ましい。この場合、ヘッドスライダ搭載部が可撓性を有する舌部であり、少なくとも1つの発熱手段がこの舌部の基部に固着されていることがより好ましい。
【0014】
なお、本明細書において、サスペンションの先端側とは、サスペンション全体を見てヘッドスライダが搭載される側の自由端を意味しており、後端側とはその反対側の端を意味している。
【0015】
少なくとも1つの発熱手段が、サスペンションの一部を加熱することによってサスペンションに搭載されるヘッドスライダのピッチング角度を変化させるためのものであることも好ましい。この場合、少なくとも1つの発熱手段が、熱膨張率の異なる複数の材料を加熱することにより応力を発生させてピッチング角度を変化させるものであることがより好ましい。
【0016】
サスペンションがヘッドスライダ搭載部及びヘッドスライダ搭載部に沿って両側にそれぞれ配置されておりヘッドスライダ搭載部を支える2つの腕部(アウトリガー部)を有するフレクシャとこのフレクシャを支持するロードビームとを備えており、少なくとも1つの発熱手段が2つの腕部にそれぞれ設けられた2つの発熱手段からなることが好ましい。この場合、2つの発熱手段が2つの腕部のヘッドスライダ搭載側の面又はその反対側の面に固着されていることがより好ましい。なお、アウトリガー部とは、フレクシャの一部であり、ヘッドスライダ搭載部を支えるようにフレクシャ本体から伸長する腕部である。
【0017】
サスペンションがヘッドスライダ搭載部を有するフレクシャとフレクシャを支持するロードビームとを備えており、少なくとも1つの発熱手段がヘッドスライダ搭載部よりサスペンションの後端側のフレクシャ上又はロードビーム上に設けられていることも好ましい。
【0018】
少なくとも1つの発熱手段が、流れる電流により発熱する電熱手段であることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、さらに、上述したヘッド支持機構と、このヘッド支持機構上に装着されたヘッドスライダとを備えたヘッド装置が提供される。ここで、ヘッド装置とは、ヘッド素子を備えたヘッドスライダとその支持機構とを機械的、電気的に組み立てたアセンブリである。具体例を挙げる、磁気ヘッドスライダとサスペンションとのアセンブリの場合にはヘッドジンバルアセンブリ(HGA)と称され、磁気ヘッドスライダとこれを支持するサスペンション及び支持アームのアセンブリの場合にはヘッドアームアセンブリ(HAA)と称され、HAAが複数積み重ねられる場合にはヘッドスタックアセンブリ(HSA)と称されることが多い。
【0020】
本発明によれば、またさらに、上述のヘッド装置と、このヘッド装置が対向するディスクと、少なくとも1つの発熱手段を、アンロード動作を行なう際にのみ発熱させる駆動手段とを備えたディスクドライブ装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、加熱によりサスペンションのピッチング剛性が変化するか、加熱による材料の熱膨張量の差によってこのサスペンションに搭載されるヘッドスライダのピッチング角度が変化するから、ヘッドスライダのアンロードが非常に容易となる。しかも、アンロード動作を行なう時のみこのような加熱を行なってピッチング剛性を変化させたり、ピッチング角度を変化させているため、耐振動特性及び耐衝撃特性を優先して設計することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の一実施形態として、ロード/アンロード方式のHDD装置の全体構成を概略的に示す平面図である。この実施形態は、ランプロード式のHDD装置に係るものである。
【0023】
同図において、10はハウジング、11はスピンドルモータにより軸12を中心にして回転駆動される磁気ディスク、13は先端部にサスペンション13aを介して磁気ヘッドスライダ14が装着されていると共に後端部にVCMのコイル部が装着されており、水平回動軸15を中心にして磁気ディスク11の表面と平行に回動可能なHAA、16は磁気ディスク11のデータ領域の外側の上方又は磁気ディスク11の外に設けられており、その傾斜した表面にHAA13の先端部、従ってサスペンション13aの先端部、が乗り上げてアンロード状態となるランプ、17はVCMのマグネット部をそれぞれ示している。
【0024】
磁気ヘッドスライダ14は、インダクティブ書込みヘッド素子と、巨大磁気抵抗効果(GMR)読出しヘッド素子又はトンネル磁気抵抗効果(TMR)読出しヘッド素子等の磁気抵抗効果(MR)読出しヘッド素子とをその後端(トレーリングエッジ)面に備えている。
【0025】
動作時(磁気ディスクの高速回転中)においては、磁気ヘッドスライダ14は磁気ディスク11の表面に対向して低浮上量で浮上しており、ロード状態にある。一方、非動作時(磁気ディスクの停止中、起動及び停止時の低速回転中)においては、HAA13の先端部がランプ16上にあり、従って磁気ヘッドスライダ14はアンロード状態にある。
【0026】
図2は本実施形態におけるHDD装置の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【0027】
同図において、20は磁気ディスク11を回転駆動するスピンドルモータ、21はこのスピンドルモータ20のドライバ、22はVCM23のドライバ、24は磁気ヘッド14のヘッドアンプ、25はコンピュータ26の制御に従ってモータドライバ21を、VCMドライバ22を、リードライトチャネル27を介してヘッドアンプ24を、さらにヒータ部材駆動回路28を制御するハードディスクコントローラ(HDC)をそれぞれ示している。ヒータ部材駆動回路28は、後述するヒータ部材を発熱させるための電流を供給する回路である。
【0028】
図3は本実施形態におけるHAAの先端部を概略的に示す斜視図である。
【0029】
同図に示すように、HAA13の先端部に設けられたサスペンション13aは、ある程度の弾性を有するロードビーム30と、その上に取り付けられたかなりの弾性を有するフレクシャ31と、フレクシャ31上に形成又は接着された例えばフレクシブルプリント基板(FPC)部材等の配線部材32とから主として構成されている。
【0030】
フレクシャ31は、ヘッド搭載部を構成する柔軟な舌部31aと、この舌部31aの両側に離隔して形成されておりこの舌部の基部につながるアウトリガー部31b及び31cとを備えている。
【0031】
フレクシャ31の舌部31a上には磁気ヘッドスライダ14が固着されており、その電極端子は配線部材32のトレース導体32a〜32dに接続されている各接続パッドに電気的にボンディングされている。
【0032】
フレクシャ31の舌部31aの先端側に位置する基部には、電熱式のヒータ部材33が固着されており、このヒータ部材33の図示されていない電極は配線部材32のトレース導体32e及び32fに電気的に接続されている。なお、ヒータ部材33を配線部材32とは別個に設けた配線部材に接続しても良いことは明らかである。
【0033】
このヒータ部材33は、配線部材32のトレース導体32e及び32fを介して図2に示すヒータ部材駆動回路28に接続されており、HDD装置がアンロードする際にのみ電流が流されて発熱する。これにより、フレクシャ31の舌部31aの基部が暖められるので、フレクシャのピッチング剛性が低下し、磁気ヘッドスライダ14の磁気ディスク11からの引きはがしが非常に容易となりアンロード特性が向上する。また、サスペンションの機械的な特性への影響も非常に小さい。即ち、アンロード動作を行なう時のみこのような加熱を行なってピッチング剛性を変化させたりピッチング角度を変化させる構成であるため、耐振動特性及び耐衝撃特性を優先して設計することが可能となる。
【0034】
なお、本実施形態において、ヒータ部材33がフレクシャ31の磁気ヘッドスライダ14と同じ側の面(表面)に固着されているが、ヒータ部材をフレクシャ31の磁気ヘッドスライダ14とは反対側の面(裏面)に固着しても良いことは明らかである。
【0035】
図4は本発明の他の実施形態におけるHAAの先端部を概略的に示す斜視図である。本実施形態の構成は、ヒータ部材に関連する構成を除いて図1の実施形態の構成とほぼ同様である。従って、図4において、図3のものと同様の構成要素については同じ参照番号を用いている。
【0036】
図4から分かるように、本実施形態においては、フレクシャ31のアウトリガー部31b及び31cの磁気ヘッドスライダ14と同じ側の面(表面)に電熱式の2つのヒータ部材43a及び43bがそれぞれ固着されている。これらヒータ部材43a及び43bの図示されていない電極は配線部材32のトレース導体32e及び32fにそれぞれ電気的に接続されている。なお、ヒータ部材43a及び43bを配線部材32とは別個に設けた配線部材に接続しても良いことは明らかである。
【0037】
これらヒータ部材43a及び43bは、配線部材32のトレース導体32e及び32fをそれぞれ介して図2に示すヒータ部材駆動回路28に接続されており、HDD装置がアンロードする際にのみ電流が流されて発熱する。これにより、フレクシャ31のアウトリガー部31b及び31cが暖められるので、フレクシャのピッチング剛性が低下し、磁気ヘッドスライダ14の磁気ディスク11からの引きはがしが非常に容易となりアンロード特性が向上する。また、サスペンションの機械的な特性への影響も非常に小さい。即ち、アンロード動作を行なう時のみこのような加熱を行なってピッチング剛性を変化させたりピッチング角度を変化させる構成であるため、耐振動特性及び耐衝撃特性を優先して設計することが可能となる。
【0038】
図5は、本発明のさらに他の実施形態におけるHAAの先端部を概略的に示す斜視図である。本実施形態の構成は、ヒータ部材に関連する構成を除いて図1の実施形態の構成とほぼ同様である。従って、図5において、図3のものと同様の構成要素については同じ参照番号を用いている。
【0039】
図5から分かるように、本実施形態においては、フレクシャ31のアウトリガー部31b及び31cの磁気ヘッドスライダ14とは反対側の面(裏面)に電熱式の2つのヒータ部材53a及び53bがそれぞれ固着されている。これらヒータ部材53a及び53bの図示されていない電極は、ビアホール等を介して配線部材32の2本のトレース導体にそれぞれ電気的に接続されている。なお、ヒータ部材53a及び53bをフレクシャの裏面に別個に設けた配線部材に接続しても良いことは明らかである。
【0040】
これらヒータ部材53a及び53bは、配線部材32の2本のトレース導体をそれぞれ介して図2に示すヒータ部材駆動回路28に接続されており、HDD装置がアンロードする際にのみ電流が流されて発熱する。これにより、フレクシャ31のアウトリガー部31b及び31cが暖められるので、フレクシャのピッチング剛性が低下し、磁気ヘッドスライダ14の磁気ディスク11からの引きはがしが非常に容易となりアンロード特性が向上する。また、サスペンションの機械的な特性への影響も非常に小さい。即ち、アンロード動作を行なう時のみこのような加熱を行なってピッチング剛性を変化させたりピッチング角度を変化させる構成であるため、耐振動特性及び耐衝撃特性を優先して設計することが可能となる。
【0041】
図4及び図5の実施形態の構成においてフレクシャのアウトリガー部にヒータ部材を固着し、温度上昇によるサスペンションのピッチング剛性の低下をシミュレートした。その結果、ヒータ部材による温度上昇が0℃(室温)の場合に1.3037(μNm/deg.)のピッチング剛性を有するサスペンションが、加熱されて温度上昇が77℃となると、約半分の0.6599(μNm/deg.)にピッチング剛性が低下した。
【0042】
図6はサスペンションのピッチング剛性とアンロード時の浮上量の変化との関係をシミュレートした結果を表す特性図である。
【0043】
同図のaは上述した室温の場合のピッチング剛性に相当するピッチング剛性を有するサスペンション、bはaの5倍のピッチング剛性を有するサスペンション、cはaの5分の1のピッチング剛性を有するサスペンションの場合である。ピッチング剛性が最も小さいcのサスペンションが最もスムーズにアンロードされることが分かる。
【0044】
なお、図5の実施形態において、ヒータ部材53a及び53bの構成材料として、フレクシャ31のアウトリガー部31b及び31cの構成材料(例えばステンレス鋼板)と熱膨張率が異なるもの(例えば銅部材)を用いれば、加熱によって反りが生じ、フレクシャ31上に搭載される磁気ヘッドスライダ14のピッチング角度が変化するから、その意味でも、磁気ヘッドスライダのアンロードが非常に容易となる。
【0045】
ヒータ部材とアウトリガー部の熱膨張率を異ならせることの他に、アウトリガー部を熱膨張率の互いに異なる多層で構成すれば、磁気ヘッドスライダ14のピッチング角度を変化させることが可能となる。
【0046】
図5の実施形態のようにフレクシャのアウトリガー部にフレクシャとは熱膨張率の異なるヒータ部材を固着し、加熱した場合の熱膨張率の差によるサスペンションのピッチング角度(スライダの浮上面と磁気ディスク表面との前後方向の角度)の変化をシミュレートした。その結果、ヒータ部材温度が300K(約27℃)の場合にピッチング角度が0.383度である磁気ヘッドスライダが、加熱されて温度が350K(約77℃)となると、0.560度と大きくなり、空気膜剛性が低下することから磁気ヘッドスライダのアンロードが非常に容易となることが分かる。
【0047】
図7は本発明のまたさらに他の実施形態におけるHAAの先端部を概略的に示す斜視図である。本実施形態の構成は、ヒータ部材に関連する構成を除いて図1の実施形態の構成とほぼ同様である。従って、図7において、図3のものと同様の構成要素については同じ参照番号を用いている。
【0048】
図7から分かるように、本実施形態においては、フレクシャ31のロードビーム30への固定部(溶接部)であって磁気ヘッドスライダ14と同じ側の面(表面)に電熱式のヒータ部材73が固着されている。このヒータ部材73の図示されていない電極は配線部材32のトレース導体32e及び32fにそれぞれ電気的に接続されている。なお、ヒータ部材73を配線部材32とは別個に設けた配線部材に接続しても良いことは明らかである。
【0049】
ヒータ部材73は、配線部材32のトレース導体32e及び32fをそれぞれ介して図2に示すヒータ部材駆動回路28に接続されており、HDD装置がアンロードする際にのみ電流が流されて発熱する。これにより、サスペンションをその機械的特性を劣化させることなく加熱できる。この場合、フレクシャのピッチング剛性の低下はさほど期待できないが、ロードビーム30全体が大きく反るため、回転の半径が大きくなり、より大きなピッチング角度変化を期待することができる。その結果、磁気ヘッドスライダ14の磁気ディスク11からの引きはがしが非常に容易となりアンロード特性が向上する。即ち、アンロード動作を行なう時のみこのような加熱を行なってピッチング剛性を変化させたりピッチング角度を変化させる構成であるため、耐振動特性及び耐衝撃特性を優先して設計することが可能となる。
【0050】
なお、本実施形態において、ヒータ部材73がフレクシャ31の磁気ヘッドスライダ14と同じ側の面(表面)に固着されているが、ヒータ部材をフレクシャ31の磁気ヘッドスライダ14とは反対側の面(裏面)に固着しても良いことは明らかである。
【0051】
また、ヒータ部材73の固着位置は、フレクシャ31とロードビーム30との溶接部である必要はなく、フレクシャのヘッド搭載部(舌部31a)より後端側であればどの位置であっても良く、さらに、フレクシャ31ではなくロードビーム30に直接固着しても良い。
【0052】
以上述べた実施形態及び変更態様は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態として、HDD装置の全体構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図1の実施形態におけるHDD装置の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】図1の実施形態におけるHAAの先端部を概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態におけるHAAの先端部を概略的に示す斜視図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態におけるHAAの先端部を概略的に示す斜視図である。
【図6】サスペンションのピッチング剛性とアンロード時の浮上量の変化との関係をシミュレートした結果を表す特性図である。
【図7】本発明のまたさらに他の実施形態におけるHAAの先端部を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
10 ハウジング
11 磁気ディスク
12 軸
13 HAA
13a サスペンション
14 磁気ヘッドスライダ
15 水平回動軸
16 ランプ
17 VCMのマグネット部
20 スピンドルモータ
21 スピンドルモータのドライバ
22 VCMドライバ
23 VCM
24 磁気ヘッドのヘッドアンプ
25 HDC
26 コンピュータ
27 リードライトチャネル
28 ヒータ部材駆動回路
30 ロードビーム
31 フレクシャ
31a 舌部
31b、31c アウトリガー部
32 配線部材
33、43a、43b、53a、53b、73 ヒータ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロード/アンロード式のヘッド支持機構であって、ヘッドスライダを支持するためのサスペンションと、該サスペンション上に設けられており、アンロード動作を行なう際に発熱して該サスペンションの一部を加熱可能な少なくとも1つの発熱手段とを備えたことを特徴とするヘッド支持機構。
【請求項2】
前記少なくとも1つの発熱手段が、前記サスペンションの一部を加熱することによって該サスペンションのピッチング方向の剛性を変化させるためのものであることを特徴とする請求項1に記載のヘッド支持機構。
【請求項3】
前記サスペンションがヘッドスライダ搭載部を有するフレクシャと該フレクシャを支持するロードビームとを備えており、前記少なくとも1つの発熱手段が前記ヘッドスライダ搭載部より該サスペンションの先端側の前記フレクシャ上に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッド支持機構。
【請求項4】
前記ヘッドスライダ搭載部が可撓性を有する舌部であり、前記少なくとも1つの発熱手段が該舌部の基部に固着されていることを特徴とする請求項3に記載のヘッド支持機構。
【請求項5】
前記少なくとも1つの発熱手段が、前記サスペンションの一部を加熱することによって該サスペンションに搭載されるヘッドスライダのピッチング角度を変化させるためのものであることを特徴とする請求項1に記載のヘッド支持機構。
【請求項6】
前記少なくとも1つの発熱手段が、熱膨張率の異なる複数の材料を加熱することにより応力を発生させて前記ピッチング角度を変化させるものであることを特徴とする請求項5に記載のヘッド支持機構。
【請求項7】
前記サスペンションがヘッドスライダ搭載部及び該ヘッドスライダ搭載部に沿って両側にそれぞれ配置されており該ヘッドスライダ搭載部を支える2つの腕部を有するフレクシャと該フレクシャを支持するロードビームとを備えており、前記少なくとも1つの発熱手段が該2つの腕部にそれぞれ設けられた2つの発熱手段からなることを特徴とする請求項1、2、5又は6に記載のヘッド支持機構。
【請求項8】
前記2つの発熱手段が前記2つの腕部のヘッドスライダ搭載側の面に固着されていることを特徴とする請求項7に記載のヘッド支持機構。
【請求項9】
前記2つの発熱手段が前記2つの腕部のヘッドスライダ搭載側とは反対側の面に固着されていることを特徴とする請求項7に記載のヘッド支持機構。
【請求項10】
前記サスペンションがヘッドスライダ搭載部を有するフレクシャと該フレクシャを支持するロードビームとを備えており、前記少なくとも1つの発熱手段が前記ヘッドスライダ搭載部より該サスペンションの後端側の前記フレクシャ上に設けられていることを特徴とする請求項1、5又は6に記載のヘッド支持機構。
【請求項11】
前記サスペンションがヘッドスライダ搭載部を有するフレクシャと該フレクシャを支持するロードビームとを備えており、前記少なくとも1つの発熱手段が前記ヘッドスライダ搭載部より該サスペンションの後端側の前記ロードビーム上に設けられていることを特徴とする請求項1、5又は6に記載のヘッド支持機構。
【請求項12】
前記少なくとも1つの発熱手段が、流れる電流により発熱する電熱手段であることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のヘッド支持機構。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のヘッド支持機構と、該ヘッド支持機構上に装着されたヘッドスライダとを備えたことを特徴とするヘッド装置。
【請求項14】
請求項13に記載のヘッド装置と、該ヘッド装置が対向するディスクと、前記少なくとも1つの発熱手段をアンロード動作を行なう際にのみ発熱させる駆動手段とを備えたことを特徴とするディスクドライブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−172620(P2006−172620A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364382(P2004−364382)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】