説明

ヘマグルチニンに対する抗体、保存インフルエンザ抗原および免疫賦活性担体結合ドメインとを含む多機能性リンカータンパク質

本発明は、免疫学およびワクチンの分野に関する。特に、本発明は、タンパク質様物質、および呼吸器系病原体を原因とする感染に対するワクチンにおけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学およびワクチンの分野に関する。特に、本発明は、タンパク質様物質、および呼吸器系病原体を原因とする感染に対するワクチンにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスは、世界的に最も重要な呼吸器系病原体の1つである。インフルエンザウイルスは、典型的には、季節的な流行の間に世界の人口全体の10〜20%に感染し、年間、3〜5百万件の重度の疾病、および250,000〜500,000の死者をもたらす。米国において、インフルエンザは、平均で年間20,000名を死亡させるが、平均で114,000件のインフルエンザに関連する入院が、推定で年間120億ドルの経済的コストをもたらす。さらに、新規なインフルエンザ株がヒト集団において時折出現して、汎流行病の原因となる。1917年〜1920年のスペイン風邪汎流行病の死亡者数は、世界的に5千万を超える死者となり、新しいインフルエンザ汎流行病の危険性は常に存在する。ワクチン接種は、インフルエンザを制御するために最良の方法である。しかし、ワクチンが生涯で1〜3回だけ与えられる多くの他の病原体に対するワクチン接種とは対照的に、インフルエンザワクチンは、毎年投与されなければならない。
【0003】
インフルエンザは、その2つの主要な膜タンパク質であるヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)の抗原の特徴を変化させる特別な能力を示す。これは、ヒト集団において確立される適応免疫応答から逃れる連続的選択により生じる。ウイルスの高い変異率を原因として、特定のワクチン製剤は、通常、約1年しか作用しない。世界保健機構は、ワクチンの内容を毎年調整して、次の年に攻撃する最も可能性のあるウイルスの株を含むようにする。今日では、従来のワクチンは、3つの不活化インフルエンザウイルス(2つのA株と1つのB)からなるワクチンである。この3価インフルエンザワクチンは、来るインフルエンザの季節に流行するとWHOにより予測されるインフルエンザ株に基づいて毎年再処方される。例えば、2007年〜2008年の季節に年次的に更新された3価インフルエンザワクチンは、インフルエンザH3N2、H1N1およびBインフルエンザウイルスからのヘマグルチニン(HA)表面糖タンパク質成分からなる。
【0004】
インフルエンザワクチンは、ウイルスの主要な糖タンパク質であるそれらのHA含量に基づいて投薬される。毎年250百万用量を超えるインフルエンザワクチンが生産され、小児および高齢者における保護効力は、60%〜80%の範囲である。よって、小児および高齢者のような攻撃を受けやすい標的群において特に、改良されたインフルエンザワクチンに対する、まだ対処されていない必要性がある。インフルエンザワクチンを改良するための現在のアプローチは:
a.アジュバントの組み込み
b.さらなるインフルエンザ抗原成分の組み込み
c.体内のウイルス侵入部位での局所的な免疫応答を惹起して、ワクチンによる追加の防衛線を提供するストラテジー
を含む。
【0005】
インフルエンザワクチンは、今日では、有胚ニワトリ卵または組織培養で成長させたウイルスに由来する。ほとんどのインフルエンザワクチンは、弱毒化生ウイルス、不活化ウイルス、スプリットウイルスまたはHAサブユニットを含有する。例えば昆虫細胞を用いることによりHAサブユニット材料を生成する新しい技術が出現している。ワクチン成分、特にサブユニットワクチンの免疫原性を増加させる一般的な方法は、アジュバントを加えることである。ワクチン成分(抗原)を共有結合または非共有結合のいずれかでアジュバントに吸着または付着させることが有利であるとも一般的に考えられている。アルミニウム塩(ミョウバン)は、この目的のために用いられるヒトワクチンにおける最も一般的に用いられるアジュバントである。しかし、ミョウバンに吸着されたインフルエンザワクチンは毒性であり、よって、ヒトへの使用が認可されたインフルエンザワクチンは、本来、アジュバント化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/011216
【特許文献2】WO99/25836
【特許文献3】WO 02/101026
【特許文献4】WO 2004/102199
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Whitlow, Mら、1993. Protein Eng. 6:989〜995頁
【非特許文献2】Watabe, Tら(2007; Mol. Biol. Evol. 24: 1627〜1638頁)
【非特許文献3】Davies, J.およびRiechmann, L. 1996. Protein Eng. 9:531〜537頁
【非特許文献4】Muyldermans, S. 2001. J. Biotechnol. 74: 277〜302頁
【非特許文献5】Brumeanuら(Vaccine 2007、第25巻、2497〜2506頁)
【非特許文献6】Heiny ATら2007. PLoS ONE 2(11):e1190
【非特許文献7】Plotnicky, Hら2003. Virology 309:320〜329頁
【非特許文献8】De Filette, Mら2005. Virology 337:149〜161頁
【非特許文献9】De Filette, Mら2006. Vaccine 24:544〜551頁
【非特許文献10】Jorisら1992. FEMS Microbiol. Lett. 70:257〜264頁
【非特許文献11】「The structure of a LysM domain from E. coli membrane-bound lytic murein transglycosylase D (MltD)」Bateman A、Bycroft M. 2000. J. Mol. Biol. 299:1113〜11192頁
【非特許文献12】http://www.sanger.ac.uk/cgi-bin/Pfam/getacc?PF01476
【非特許文献13】Buist, G.ら1995. J. Bacteriol. 177:1554〜1563頁
【非特許文献14】Altschul, S. F.ら1990. J. Mol. Biol. 215:403
【非特許文献15】Altschul, S. F.ら1997. Nucleic Acid Res. 25:3389〜3402頁
【非特許文献16】Post-translational Modification: A Practical Approach (1999) S. J. Higgins、B. D. Hames編、ISBN13:978-0-19-963795-9
【非特許文献17】Norton P.M.ら1996. FEMS Immunol. Med. Microbiol. 14:167〜177頁
【非特許文献18】Norton P.M.ら1997. Vaccine 15:616〜619頁
【非特許文献19】Audouy S.A.ら2006. Vaccine 24:5434頁
【非特許文献20】van Roosmalenら(Mucosal vaccine delivery of antigens tightly bound to an adjuvant particle made from food-grade bacteria. (2006) Methods 38(2):144〜149頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在までに、インフルエンザに対して利用可能な広範囲なワクチンは存在しない。さらに、集団におけるワクチン接種率は、インフルエンザの季節的な大発生に関連する高い罹患率および死亡率にもかかわらず、多くの国で低い。毎年のインフルエンザワクチン中に存在するものよりも広範囲のインフルエンザに対する保護を提供するインフルエンザワクチンが利用できることは、より魅力的であり得、よって、インフルエンザワクチンの効果および/または使用の増加に貢献する。さらに、それらのサブタイプに関係なく複数のヒトインフルエンザA株に対して有効なワクチンは、新しいインフルエンザ汎流行病に対する対策としての備蓄のために考慮され得る。
【0009】
よって、本発明の目的は、改良されたインフルエンザワクチンを提供することである。特に、本発明者らは、非ワクチンインフルエンザ型に対する交差保護を提供する、ヒトでの使用に適するアジュバント化インフルエンザワクチンを提供することを目的とした。好ましくは、新規なワクチンの分子設計は、簡便で経済的な毎年の再処方を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的の少なくともいくつかは、変異の影響をより受けにくいインフルエンザ抗原成分を含む多機能性ポリペプチドであって、さらに、種々のHAサブタイプが「装填」でき、かつ免疫賦活性担体上に固定化または付着できるポリペプチドの開発により満たされた。
【0011】
よって、本発明は、(i)HAの複数の抗原サブタイプに非共有結合できる少なくとも1つのヘマグルチニン(HA)結合ドメイン(HBD)、(ii)保存インフルエンザタンパク質またはその抗原性フラグメント、および(iii)免疫賦活性担体結合ドメイン(IBD)を含むタンパク質様物質を提供する。好ましくは、抗原性フラグメントは、主要組織適合複合体(MHC)クラスIまたはIIにより提示され得る。よって、フラグメントは、典型的には、少なくとも約6または7アミノ酸残基長を有する。該タンパク質様物質をコードする核酸配列、および該核酸配列を含む宿主細胞も提供される。さらなる実施形態は、免疫賦活性担体に(そのIBDを介して)付着したタンパク質様物質、およびHAサブタイプが装填された複数の物質(例えば抗体フラグメント)を含む抗原装填免疫賦活性担体に関する。本明細書に開示されるタンパク質様物質は、アジュバント活性を有する免疫賦活性担体に、異なるHAサブタイプを、HA抗原生成プロセスを改変することなく、他の株に対するより広い(交差)保護を同時に提供しながら、容易に装填することを可能にする。タンパク質様物質は、「多機能性タンパク質アンカー(「Protan」と省略する)リンカー」ともいう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のタンパク質様物質中の異なるドメインの相対的位置は、変動し得る。ドメインは、互いに直接融合され得るか、またはスペーサー配列により間隔をおくことができる。典型的には、保存インフルエンザ(膜)タンパク質またはその抗原性フラグメント(またはその複数のコピー;以下を参照されたい)は、一方の側でHBDと、そして他方の側でIBDと、HBDおよびIBDがそれらの結合パートナー(それぞれHA抗原および免疫賦活性担体)に容易に接近することができるように接する。ある実施形態において、少なくとも1つのHBDとIBDは、それぞれ、上記のタンパク質様物質のC末端およびN末端に位置する。別の実施形態において、少なくとも1つのHBDとIBDは、それぞれ、タンパク質様物質のN末端およびC末端に位置する。ドメインは、タンパク質様物質の最も端に位置する必要はない。1つまたは複数のアミノ酸残基のひと続きが、HBDの一部でもなくIBDの一部でもない、上記の物質の両方の端に存在できる。
【0013】
好ましい実施形態において、タンパク質様物質のHA結合ドメインは、インフルエンザウイルスA型および/またはB型を起源とする複数のHAサブタイプに結合できる。HAサブタイプの例は、HA1、HA2、HA3、HA4、HA5、HA6、HA7、HA8、HA9、HA10、HA11、HA12、HA13、HA14、HA15およびHA16を含む。ある実施形態において、HA結合ドメインは、季節性インフルエンザに特異的なサブタイプ、例えばHA1およびHA3を認識できる。別の実施形態において、これは、HA5、HA7およびHA9のような汎流行インフルエンザに特異的な複数のサブタイプを認識する。
【0014】
インフルエンザHAサブタイプについての適切な結合ドメインは、種々の方法で得ることができる:
i.マウスの免疫化による抗体の選択、HAサブタイプへの広い範囲の結合を示すモノクローナルの選択、可変ドメインアミノ酸配列の決定;
ii.複数のHAサブタイプへの結合を示すscFvまたはナノボディを選択するための抗体ファージディスプレイライブラリーの使用;
iii.既知の結合範囲と可変ドメインの既知のアミノ酸配列とを有する、文献に記載された抗体。
【0015】
よって、ある態様において、本発明は、(i)HAの複数の抗原サブタイプに結合できる抗体またはその機能的フラグメント、(ii)保存インフルエンザタンパク質またはその抗原性フラグメント、および(iii)免疫賦活性担体結合ドメイン(IBD)を含むタンパク質様物質を提供する。
【0016】
HA結合ドメインは、例えば、スペーサーにより連結された可変軽鎖ドメイン(VL)と可変重鎖ドメイン(VH)とからなる単鎖抗体(scFv)である。任意のタイプのスペーサー配列を用いてよいが、これが、潜在的なタンパク質切断部位を含まず、機能的scFvを得るためにVLおよびVHドメインを正しく配置する十分な可動性を可能にすることを条件とする。VHとVLを結合させる適切なスペーサーは、スペーサー218である(Whitlow, Mら、1993. Protein Eng. 6:989〜995頁)。
【0017】
Watabe, Tら(2007; Mol. Biol. Evol. 24: 1627〜1638頁)は、HAに結合する既知の3D構造を有する4つのマウスモノクローナル抗体について記載している。これらの抗体のうち2つは、HAの受容体結合領域上のわずかに異なるエピトープに結合し(モノクローナルHC19およびHC63、構造2VIR.PDBおよび1KEN.PDB)、2つの抗体は、受容体結合に関与しないHAの側のより膜に近い領域上の1つのエピトープに結合する(HC45およびBH151、構造1QFU.PDBおよび1EO8.PDB)。著者らによると、抗体HC45およびBH151は、HAの抗原ドリフトが起こりにくく、より異なるHA変異体/サブタイプに結合できる。よって、ある実施形態において、本発明のタンパク質様物質中のHBDは、マウスモノクローナル抗体(mAb)、好ましくはmAb HC45またはBH151のVLおよびVH鎖を含む。しかし、原則として、抗原ドリフトに付されないエピトープを介して広範囲のHAサブタイプに結合でき、よって中和抗体として作用しない任意のVL-VHドメインを用い得ると理解される。HC45は、本発明を行うために特に有用である。なぜなら、これは、一連のHAサブタイプに対して最高の結合親和性を示すからである。この抗体のVLおよびVH鎖は、VLのC末端とVH鎖のN末端との間にリンカーを導入することにより単鎖抗体(scHC45)に組み合わせることができる。
【0018】
本発明のタンパク質様物質中のVL鎖とVH鎖とを連結する好ましいリンカーは、タンパク質分解に対して本質的に耐性であり、VL鎖とVH鎖とが相互作用するための十分な可動性を与えるものである。「218」リンカーが特に適切である(Whitlow, Mら1993、Protein Eng. 6:989〜995頁)。例えば、コンストラクトscHC45(252アミノ酸)のアミノ酸配列は、次のとおりである(「218」リンカー配列[斜体]が間にあるHC45 VL[太字]およびVH[下線]ドメイン):
【0019】
【化1】

【0020】
さらなる実施形態において、HA結合ドメインは、いわゆる単一ドメイン抗体(dAb)またはラクダ化抗体である。軽鎖パートナーを天然に有さないラクダ抗体重鎖を模倣し、かつ凝集を妨げるために軽鎖の接触残基をより親水性の側鎖に置き換えるならば、通常の抗体の重鎖の可変部分(VH)を、結合のために用いることができる。これは、ラクダ化とよばれ、ラクダ化重鎖(cVH)が得られる。よって、以下のアミノ酸の変更が、重鎖中に入る必要がある:L11S、G44E、L45R、W47GおよびV37F/Y(Davies, J.およびRiechmann, L. 1996. Protein Eng. 9:531〜537頁;Muyldermans, S. 2001. J. Biotechnol. 74: 277〜302頁)。
【0021】
本発明者らは、本明細書において、以下のアミノ酸配列(129aa) を有するcVHドメイン(cVH45)をもたらすHC45マウスドメインのラクダ化バリアントを提供する:
【0022】
【化2】

【0023】
太字は、VHドメインをより可溶性にするアミノ酸置換である。下線部分は、VHドメインである。斜体のものは、VHドメインを抗体中の定常ドメインに連結するスペーサーである。ここでは、これは、VHドメインをタンパク質様物質の残りに連結するために用いられる。
【0024】
WO2007/011216は、対象の抗原に結合できる抗体のような1つまたは複数の抗原結合ドメインに融合したペプチドグリカン結合ドメインを含むポリペプチドを開示する。抗原の例は、ポリペプチド、炭水化物、脂質、ポリヌクレオチドならびに不活化ウイルス粒子および精製抗原決定基のような病原性抗原を含む。しかし、一方で保存インフルエンザ抗原、他方で高い変異率になりやすいインフルエンザ抗原のための結合ドメインが単一ポリペプチド中に同時に存在することは、当技術分野において開示も示唆もされていない。
【0025】
Brumeanuら(Vaccine 2007、第25巻、2497〜2506頁)は、PR8インフルエンザウイルスのHAのTおよびBウイルスエピトープをともに発現する2重抗原性免疫グロブリンの使用に基づいてインフルエンザワクチンを生成するための遺伝子工学的アプローチを開示している。これは、HAの複数の抗原サブタイプに非共有結合できる少なくとも1つのHA結合ドメインを開示していない。
【0026】
上記のように、本発明によるタンパク質様物質は、なかでも、保存インフルエンザタンパク質、例えば保存核タンパク質(NP)または保存マトリックスタンパク質(M)の存在を特徴とする。保存インフルエンザタンパク質配列は、Heiny ATら2007. PLoS ONE 2(11):e1190により記載される方法を用いて見出すことができる。例えば、タンパク質様物質は、インフルエンザ保存マトリックスM1(58〜66)ペプチドの1つまたは複数の(タンデム)コピーを含む(Plotnicky, Hら2003. Virology 309:320〜329頁)。
【0027】
ある態様において、これは、保存インフルエンザ膜タンパク質の細胞外部分を含む。好ましくは、これは、インフルエンザ膜タンパク質M2(M2e)の細胞外部分、好ましくはインフルエンザウイルスA型のM2eを含む。インフルエンザAのM2タンパク質(M2e)の保存23アミノ酸細胞外ペプチドドメインの使用が非常に適切である。M2eの上記の保存23アミノ酸細胞外ペプチドドメインに基づく広範囲のワクチン候補が開発されている(De Filette, Mら2005. Virology 337:149〜161頁)。M2eペプチドは、免疫原性に乏しいので、本発明のタンパク質様物質中に該ペプチドの2つ以上のコピーを、例えば2量体または3量体の構成で含むことが好ましい(図1を参照されたい)。このようなストラテジーは、M2e 3量体を、例えばB型肝炎コア抗原(HBcAg)と融合させたときに、既に用いられた。M2e-HBcAgワクチンは、マウスモデルにおいて免疫原性であり保護性であったが、追加のアジュバントをまだ必要とした(De Filette, Mら2006. Vaccine 24:544〜551頁)。
【0028】
本明細書で示すタンパク質様物質のその他の特徴的な要素の1つは、(抗原が装填された)HA結合ドメインと保存インフルエンザ抗原(例えばM2e 3量体)とを免疫賦活性担体に結合できる免疫賦活性担体結合ドメイン(IBD)である。ある実施形態において、IBDは、接近可能なペプチドグリカン表面を含む免疫賦活性担体に結合できるペプチドグリカン結合ドメインである。例えば、タンパク質様物質は、LysMドメイン、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)細胞壁ヒドロラーゼAcmAのC末端中のLysMドメイン(このドメインは、本明細書においてAcmA LysMドメインともいう)とのアミノ酸配列データベースにおける相同性探索により得られるアミノ酸配列、およびAcmA LysMドメインと少なくとも70%の配列同一性を示す配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0029】
ある実施形態において、IBDは、その配列がLysMドメインである、ペプチドグリカンに結合できるアミノ酸配列を含む。好ましくは、ポリペプチドは、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つのLysMドメインを含む。LysM(リシンモチーフ)ドメインは、約45残基長である。これは、細菌細胞壁分解に関与する種々の酵素において見出される(Jorisら1992. FEMS Microbiol. Lett. 70:257〜264頁)。LysMドメインは、普遍的ペプチドグリカン結合機能を有すると考えられる。このドメインの構造は既知である(「The structure of a LysM domain from E. coli membrane-bound lytic murein transglycosylase D (MltD)」Bateman A、Bycroft M. 2000. J. Mol. Biol. 299:1113〜11192頁)。LysMドメインの存在は、細菌タンパク質に限定されない。これらは、いくつかの真核タンパク質にも存在するが、これらは古細菌タンパク質には欠失している。細胞壁結合機能は、LysMドメインを含むいくつかのタンパク質に仮定されている。AcmAに類似し、かつ6つのLysMドメインを含むタンパク質であるエンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)の部分精製ムラミダーゼ-2は、同じ株のペプチドグリカンフラグメントに結合する。リステリア・モノシトゲネス(Listeria monocytogenes)のp60タンパク質は2つのLysMドメインを含み、細胞表面と結合することが示された。バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)のムロペプチダーゼLytEおよびLytFは、それらのN末端にそれぞれ3つおよび5つの反復を有し、ともに細胞壁に結合している。
【0030】
当業者は、公に利用可能なタンパク質配列データベースにおいて、当技術分野において知られる方法を用いて相同性に基づく探索を行うことにより、LysMドメインアミノ酸配列を同定できる。種々の既知のアルゴリズムが公に開示されており、多様な公で入手可能な市販のソフトウェアを用いることができる。その例は、これらに限定されないが、MacPattern(EMBL)、BLASTP(NCBI)、BLASTX(NCBI)およびFASTA(University of Virginia)を含む。ある実施形態において、LysMドメインについてPFAM受入番号PF01476(http://www.sanger.ac.uk/cgi-bin/Pfam/getacc?PF01476を参照されたい)を用いて、LysMドメインの基準を充足するアミノ酸配列を探索する。PFAMウェブサイトは、2つのプロファイル隠れマルコフモデル(プロファイルHMM)を提供し、これらを用いて配列ファミリーのコンセンサスの統計的記述を用いる高感度なデータベース探索を行うことができる。HMMERは、タンパク質配列分析のためのプロファイルHMMソフトウェアの自由に配布可能な実行手段である。
【0031】
L. ラクチスの主要な自己溶菌酵素であるAcmAのC末端領域は、3つの相同LysMドメインを含み、これらは非相同配列により分けられている。3つのAcmA LysMドメインのアミノ酸配列については、例えば図2を参照されたい(本質的にWO99/25836から引用)。ここでは、3つのLysMドメインをR1、R2およびR3により示す。AcmAのC末端領域は、自己溶菌酵素のペプチドグリカン結合を媒介することが示された(Buist, G.ら1995. J. Bacteriol. 177:1554〜1563頁)。
【0032】
ある実施形態において、本発明のタンパク質様物質のIBDは、AcmA中に存在するように少なくとも1つのLysMドメインを含む。AcmA LysMドメインの厳密なアミノ酸配列内の変動も含まれるが、但し、ペプチドグリカン結合機能が維持されることを条件とする。よって、アミノ酸の置換、欠失および/または挿入を、ペプチドグリカン結合能力を喪失することなく行うことができる。AcmA LysMドメインのいくらかの部分、例えば、ほとんどのLysMドメイン内で見出される保存GDTL、NおよびGQモチーフ(図2)は、変動するのにあまり適さない。しかし、その他の部分は、免疫賦活性担体に結合するIBDの効力に影響せずに変更してよい。例えば、AcmAの3つのLysMドメインのうちで非常に異なる性質(極性、非極性、親水性、疎水性)の位置でのアミノ酸残基は改変し得る。好ましくは、IBDは、L. ラクチスAcmAの3つのLysMドメインのうちの1つと少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、例えば92%、95%、97%または99%同一である配列を含む。本発明で用いるためのタンパク質様物質のIBDは、異なるかもしくは同じこのような(相同)AcmA LysMドメインの1つまたは複数を含んでよい。典型的には、LysMドメインは、互いに隣接して位置し、1つまたは複数のアミノ酸残基でおそらく分けられている。LysMドメインは、短い距離、例えば1〜15アミノ酸の間隔、または15〜100アミノ酸の中程度の距離、または150もしくはさらに200アミノ酸の間隔のような長い距離で分けられることが可能である。
【0033】
ある態様において、本発明は、AcmA LysMドメインと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約89%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、そしてあるいは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むIBDに関する。
【0034】
70、80、90、95、98、99または100パーセント配列同一性のようなポリペプチドについての「アミノ酸配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウインドウにて2つの最適に整列させた配列を比較することにより決定してよく、ここで、比較ウインドウ内のポリペプチド配列の部分は、2つのアミノ酸配列の最適アラインメントのために、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。パーセンテージは、(a)両方の配列中に生じる同一アミノ酸の位置の数を決定して、一致する位置の数を得て、(b)一致する位置の数を、比較ウインドウ内の位置の合計数で除し、(c)結果に100を乗じて、配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。比較のための配列の最適アラインメントは、既知のアルゴリズムのコンピュータ化された実行により、または視察により行うことができる。容易に利用可能な配列比較アルゴリズムおよび複数配列アラインメントアルゴリズムは、それぞれ、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)プログラム(Altschul, S. F.ら1990. J. Mol. Biol. 215:403;Altschul, S. F.ら1997. Nucleic Acid Res. 25:3389〜3402頁)およびClustalWプログラムであり、これらはともにインターネットで利用可能である。
【0035】
別の実施形態において、IBDは、AcmA LysMドメインとのアミノ酸配列データベースにおける相同性探索により得られるアミノ酸配列に存在するLysMドメインであって、物質を、グラム陽性微生物の細胞壁に付着させ得るLysMドメインを含む。好ましくは、得られるアミノ酸配列は、グラム陽性細菌を起源とするアミノ酸配列である。例えば、これは、細菌細胞壁ヒドロラーゼのアミノ酸配列である。好ましくは、得られるアミノ酸配列は、AcmA LysMドメインと少なくとも70%、より好ましくは80%、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示す。得られる配列の例は、特許出願WO99/25836の図11で見出すことができる。
【0036】
本発明のその他の態様は、本発明によるタンパク質様物質をコードする核酸配列、および該配列を含む(発現)ベクターに関する。これは、なかでも、宿主細胞におけるタンパク質様物質の生成を可能にし、この宿主細胞も、よって、本明細書に含まれる。原核または真核の起源の適切な宿主細胞は、ラクトコッカス亜種(Lactococcus ssp.)、ラクトバチルス亜種(Lactobacillus ssp.)、バチルス亜種(Bacillus ssp.)、ストレプトコッカス・カルノサス(Streptococcus carnosus)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)、サッカロミセス亜種(Saccharomyces ssp.)、ピキア亜種(Pichia ssp.)、クリベロミセス亜種(Kluyveromyces ssp.)、シゾフィラム亜種(Schizophyllum ssp.)、トリコデルマ亜種(Trichoderma ssp.)、ストレプトミセス亜種(Streptomyces ssp.)のような微生物、植物およびVero細胞、CHO細胞、MDCK細胞、PerC6のような哺乳類細胞を含む。ある実施形態において、本発明による核酸配列またはベクターを含むラクトコッカス亜種宿主細胞が提供される。別の実施形態において、宿主細胞はCHO株化細胞である。必要であれば、核酸配列を、コードされるタンパク質の生成レベルを増やすために、宿主のコドン使用のために設計し、最適化する。
【0037】
本発明によるタンパク質様物質を提供する方法も含まれる。これは、本発明による核酸配列またはベクターを含む宿主細胞を適切な培地中で培養して、物質の発現を可能にするステップと、物質を単離するステップとを含む。方法は、適切な発現ベクターを備える任意の型の適切な宿主細胞において行うことができる。ある実施形態において、宿主細胞は、微生物宿主細胞である。別の実施形態において、宿主細胞は、タンパク質様物質の哺乳類型の翻訳後修飾ができる真核宿主細胞である。最も一般的で最も理解されていないタンパク質の翻訳後修飾の1つが、これらのグリコシル化である。ヒトの糖タンパク質は、複合N-およびO-結合グリカンの驚くほど不均質な並びでグリコシル化され、これらは、細胞の小胞体およびゴルジ体に存在する酵素の調和された活性の生成物である。タンパク質のグリコシル化は、高度に調節され、分化、発達の間、異なる生理的条件および細胞培養条件の下で、そして疾患の場合に変化する。組換えタンパク質、特にヒト対象への投与の可能性が定められたもののグリコシル化は、非常に重要である。グリコシル化は、活性、機能、循環からのクリアランス、そして極めて重大には抗原性に著しく影響する。よって、本発明のタンパク質様物質の製造のために、N-およびO-型のグリカンでの修飾を提供できる宿主細胞を用いることが有利であり得る。後者は、当技術分野において知られており、微生物、真菌、哺乳類、昆虫および植物の宿主細胞を含む。
【0038】
本発明によるグリコシル化されたタンパク質様物質であって、適切な培地中で本発明による核酸配列またはベクターを含む宿主細胞を培養して、物質の発現を可能にし、該物質を単離することにより得ることができ、該宿主細胞が、N-およびO-型のグリコシル化を可能にする真核宿主細胞である物質も提供される。グリコシル化の程度は、当技術分野において知られる方法により容易に決定でき、例えばPost-translational Modification: A Practical Approach (1999) S. J. Higgins、B. D. Hames編、ISBN13:978-0-19-963795-9を参照されたい。本明細書において以下に示すように、哺乳類(CHO)細胞において生成されるタンパク質様物質の、免疫賦活性担体(GEM)への結合能力は、原核生物を起源とするIBD(LysMドメイン)のグリコシル化により影響されなかった。
【0039】
グリコシル化されたIBDを含むタンパク質様物質であって、該物質をコードする核酸コンストラクトを真核、好ましくは哺乳類の宿主細胞中で発現させることにより得ることができる物質も提供される。ある実施形態において、物質は、グリコシル化されたIBDに融合された対象のポリペプチドを含む。対象のポリペプチドは、好ましくは、N-および/またはO-グリコシル化されている。例えば、これは、真核またはウイルス起源の抗原である。タンパク質様物質は、LysMドメイン、ラクトコッカス・ラクチス細胞壁ヒドロラーゼAcmAのC末端中のLysMドメイン(このドメインは、本明細書においてAcmA LysMドメインともいう)とのアミノ酸配列データベースにおける相同性探索により得られるアミノ酸配列、およびAcmA LysMドメインと少なくとも70%の配列同一性を示す配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むグリコシル化されたペプチドグリカン結合ドメインを含んでよい。例えば、物質は、ラクトコッカス・ラクチス細胞壁ヒドロラーゼAcmAのグリコシル化されたC末端ペプチドグリカン結合ドメインを含む。
【0040】
さらなる態様は、(少なくとも1つのHBDを介して)HAの抗原サブタイプを備える、本発明によるタンパク質様物質に関する。このいわゆる「事前装填ポリペプチド」は、免疫賦活性担体に適切に付着される。
【0041】
よって、本発明は、本発明によるタンパク質様物質を備える免疫賦活性担体、およびそれを提供する方法も提供する。物質は、免疫賦活性担体に付着させる前に、HA抗原を事前装填することができる。あるいは、多機能性タンパク質リンカーを担体に付着させ、その後、これにHA抗原を装填することももちろん可能である。よって、本発明は、さらに、抗原装填免疫賦活性担体であって、HA抗原が、担体に付着しているタンパク質様物質のHBDに結合した担体を提供する(例示的実施形態について、図3を参照されたい)。
【0042】
HAが装填された免疫賦活性担体を提供する方法は、免疫賦活性担体を提供するステップと、(i)HAの複数の抗原サブタイプに結合できる少なくとも1つのヘマグルチニン(HA)結合ドメイン(HBD)、(ii)保存インフルエンザタンパク質またはその抗原性フラグメント、および(iii)上記のポリペプチドの上記の担体への付着を可能にする免疫賦活性担体結合ドメイン(IBD)を含むタンパク質様物質を提供するステップと、上記の免疫賦活性担体と上記のタンパク質様物質とを接触させるステップとを含むことができ、上記のタンパク質様物質を、抗原HAサブタイプと接触させるステップを任意選択で含む。免疫賦活性担体を提供するステップは、好ましくは、グラム陽性細菌からの生存不能球状ペプチドグリカン粒子を調製するステップを含む。上記の多機能性タンパク質様物質を提供するステップは、抗体ライブラリーから、好ましくはファージディスプレイ技術を用いて、HA結合ドメインを選択するステップを含んでよい。タンパク質様物質は、該物質をコードする核酸コンストラクトの組換え発現により宿主細胞で有利に生成される。選択した宿主細胞に依存して、この方法は、宿主細胞の培養培地または宿主細胞の抽出物もしくは可溶化物からタンパク質様物質を採集するステップを含んでよい。
【0043】
本明細書で用いる場合、用語「免疫賦活性担体」とは、対象への投与の際に、それに付着された抗原の免疫賦活特性を増進または改変する能力を有する部分のことをいう。よって、免疫賦活性担体は、アジュバント特性を有する。さらに、これは、ペプチドグリカンを含んで、ペプチドグリカン結合IBDを介する1つまたは複数のタンパク質様物質の付着を可能にする。非組換え免疫賦活性担体が好ましい。好ましい実施形態において、免疫賦活性担体複合体は、グラム陽性細菌から得られる生存不能球状ペプチドグリカン粒子(GEM粒子または「ゴースト」)である。GEM粒子を調製する方法は、以前に、例えば特許出願WO 02/101026およびWO 2004/102199に記載されている。このプロセスは、細菌の天然球状構造のほとんどを保持する。簡潔に、この方法は、グラム陽性細菌を、タンパク質、リポテイコ酸または炭水化物のような細胞壁成分を細胞壁材料から除去できる溶液で処理するステップを含む。得られるGEM粒子は、その後、所望の(抗原が装填された)多機能性タンパク質アンカーリンカーと接触させるまで貯蔵してよい。GEM粒子は、未処理のグラム陽性細菌よりも実質的により多い量のIBDを結合する。よって、GEM粒子上の抗原について、高い装填能力を達成できる(WO 02/101026)。GEM粒子は、機械的に破壊した細胞壁材料よりも、特定の細胞もしくは組織とよりよく結合することができ、かつ/または特定の細胞もしくは組織によってより容易に取り込まれる。GEM粒子が、マクロファージまたは樹状細胞を標的にする能力は、それらの機能的効力を増進する。本発明の非組換え非生存免疫賦活性担体複合体は、よって、ワクチン送達媒体として良好に適する。WO 02/101026およびWO2004/102199も参照されたい。
【0044】
GEM粒子は、原則的に、任意のグラム陽性細菌から調製できる。グラム陽性細菌の細胞壁は、ペプチドグリカン層、タンパク質、リポテイコ酸およびその他の修飾炭水化物の複雑なネットワークを含む。細菌細胞壁材料の化学的処理を用いて、タンパク質およびリポテイコ酸のような細胞壁成分を除去して、改良された結合特性を有するGEM粒子を得ることができる。好ましくは、本発明の抗原結合免疫賦活性担体複合体は、酸溶液を用いて得られるGEM粒子を含む(例えばWO 02/101026を参照されたい)。
【0045】
好ましい実施形態において、免疫賦活性担体は、非病原性細菌、好ましくは食品グレードの細菌またはG.R.A.S.(一般に安全と認められる)の資格を有する細菌から調製される。ある実施形態において、細胞壁材料は、ラクトコッカス、ラクトバチルス、バチルス、またはマイコバクテリウム(Mycobacterium)の亜種に由来する。ラクトコッカス・ラクチスのようなグラム陽性の食品グレードの細菌の使用は、ワクチン送達媒体としてサルモネラ(Salmonella)またはマイコバクテリウムのようなその他の細菌の使用よりも著しい利点を提供する。L. ラクチスは、ヒト組織内で複製またはヒト組織に侵入せず、低い固有免疫を有すると報告されている(Norton P.M.ら1996. FEMS Immunol. Med. Microbiol. 14:167〜177頁)。破傷風毒素フラグメントCを発現するL. ラクチスは、担体細菌が投与前に死滅していても破傷風毒素の致死的負荷に対してマウスを保護する抗体を粘膜送達の後に誘導することが示されている(Norton P.M.ら1997. Vaccine 15:616〜619頁)。本明細書で開示される免疫賦活性担体中の非組換えGEM粒子とは対照的に、これらの細菌は、特に大規模経口免疫化プログラムにおいて用いられる場合に、環境中に拡散される組換えDNAをまだ含んでいる。この環境中への組換えDNAの制御不能な流出は、他の細菌または他の(微)生物による遺伝子の取り込みの危険性を有し得る。
【0046】
上記のように、本発明のある特定の目的は、インフルエンザワクチンの年次的再処方のための用途の広く柔軟な系を提供することである。それぞれの物質が広範囲のHAサブタイプに結合できる複数のタンパク質様物質を免疫賦活性担体に結合させることにより、3つ全ての株のHA抗原がHA抗原生成プロセスを改変することなく担体に付着された、アジュバント化(例えばGEMベースの)インフルエンザワクチンを処方することが可能である。よって、ある実施形態において、本発明は、HAの少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの異なる抗原サブタイプを含む、抗原装填免疫賦活性担体を提供する。好ましくは、これは、2つの異なるインフルエンザA型株のHA、および1つのインフルエンザB型株のHAを含む。
【0047】
別の態様は、本明細書に開示される抗原装填免疫賦活性担体、および医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。これは、例えば、粘膜投与、好ましくは鼻腔内または経口投与用に処方されたワクチン組成物である。ある実施形態において、ワクチンは、3価のインフルエンザワクチン、好ましくは粘膜投与用の3価のインフルエンザワクチンである。最近用いられているインフルエンザワクチンは、非経口経路により投与される。しかし、鼻腔内ワクチンは、インフルエンザ感染が上気道の粘膜部位から開始するので、魅力的である。このような送達経路の利点は、粘膜ワクチン接種が、天然の感染により近く類似するということである。気道は、インフルエンザの感染の部位であるだけでなく、インフルエンザウイルス感染に対する防御の部位でもある。鼻腔内免疫化の後に誘導される免疫応答は、宿主侵入の非常に初期にて粘膜におけるウイルスの透過および複製を妨げ得る。
【0048】
本発明は、特に、アジュバント化ワクチンを提供する。ワクチンと同時投与される適切なアジュバントは、通常、侵入病原体に対する強い粘膜保護を達成することが要求される。これらのアジュバントは、それらの免疫賦活効果を、マクロファージ、B細胞およびT細胞のような種々の免疫細胞と相互作用しかつそれらを活性化することによりおそらく働かせる。GEM粒子は、このようなアジュバント/担体系を構成する。本発明の担体/アジュバント系は、例えばGEM粒子からなる。これらの粒子は、toll様受容体、最も具体的には、これに限定されないがTLR2受容体により自然免疫系に作用する。TLR2のようなTLRによる認識は、マウスおよびヒトの新生児、ならびに樹状細胞のような成体抗原提示細胞の活性化および成熟をもたらす。前臨床動物研究において、GEM粒子は、ポリペプチド抗原と混合したときに、ある程度まではタンパク質様抗原に対する全身および局所的免疫応答を刺激した(Audouy S.A.ら2006. Vaccine 24:5434頁)。GEM粒子は、粘膜および非経口ワクチンにおいてアジュバント活性を提供する。ワクチンの粘膜投与は、投与部位から離れた部位でさえ局所的抗体応答をしばしばもたらす。例えば、鼻腔内投与されたGEMベースのワクチンは、膣において分泌型IgA抗体を惹起する。インフルエンザの場合、気道における局所的応答は、ウイルスの体内への侵入を妨げるために重要である。
【0049】
本発明は、さらに、それを必要とする対象におけるインフルエンザの予防的処置の方法であって、該対象に、本発明の医薬組成物の有効投与量を投与するステップを含む方法に関する。好ましくは、上記の投与するステップは、ワクチンの粘膜適用を含む。対象は、例えばインフルエンザに感染すると重度の生命を脅かす疾患を発症する危険性が高いかまたは増加しているヒト対象である。危険性のある人は、小児、高齢者、健康管理従事者、免疫低下個体、および心臓病の患者を含む。また、鳥類および哺乳類、特にヒトにおける鳥インフルエンザ(avian influenza)(「鳥インフルエンザ(bird flu)」)の(予防的)処置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】保存インフルエンザタンパク質フラグメントM2eの3量体、単鎖可変フラグメント(scFv;パネルA)またはラクダ化重鎖(cVH;パネルB)のいずれかからなるHA結合ドメイン、および免疫賦活性担体に結合できるペプチドグリカン結合ドメイン(Protan)を含むタンパク質様物質の例の模式図である。
【図2】AcmA反復1〜3(R1、R2およびR3)およびLysMコンセンサス配列のアミノ酸配列を示す図である。Xは、任意の天然に存在するアミノ酸を示す。ダッシュ(-)は、記載する位置でのアミノ酸欠失を示す。コンセンサス配列内の下線を付したアミノ酸は、本文第9頁で言及した高度に保存されたモチーフを示す。
【図3】HA装填タンパク質様物質が付着したペプチドグリカンを含む免疫賦活性担体(GEM)の模式図である。ここに示す実施形態において、物質は、そのペプチドグリカン結合ドメイン(Protan)、保存インフルエンザ膜タンパク質(M2eの3つのコピー)、およびHA結合ドメインを介して担体に付着する。
【図4】scHC45-M2e-Protanポリペプチドのアミノ酸配列を示す図である。ポリペプチドは、以下のドメインを含む:scHC45(2〜259)、M2e 3量体(260〜332)およびProtan(333〜550)。予測されるN-グリコシル化部位は、太字で示し、下線を付す。
【図5】リンカーおよびHA結合のExperion Pro260チップ分析(詳細は本文を参照されたい)を示す図である。レーン:1) CHO細胞で生成したscHC45-M2e-Protan(「リンカー」)からの無細胞上清。2)CHO細胞で生成したGFPからの無細胞上清とインキュベートしたGEM。3)リンカーとインキュベートしたGEM。4)A/Beijing/262/95スプリットビリオン。5)B/Shangdong/7/97スプリットビリオン。6)Vaxigrip 2008-2009インフルエンザワクチン(Sanofi Pasteur)。7)A/Beijing/262/95とインキュベートしたGEM。8)B/Shangdong/7/97とインキュベートしたGEM。9)VaxigripとインキュベートしたGEM。10)A/Beijing/262/95とインキュベートした結合リンカーを有するGEM。11)B/Shangdong/7/97とインキュベートした結合リンカーを有するGEM。12)Vaxigripとインキュベートした結合リンカーを有するGEM。L:分子量マーカーを含むレーン、kDaでのサイズは左に示す。各レーンは、1.2および260kDaにバンドを示し、これらは内部の系のピークを示す。scHC45-M2e-Protanリンカーの位置は、右に示す(リンカー)。異なるヘマグルチニン(HA)サブタイプの位置も右に示す。GEM粒子を含むレーンは、分解されたラクトコッカスタンパク質を示す黒い不鮮明なバンドを示し、これらは右に示す(GEMタンパク質)。
【実施例】
【0051】
(実施例1:CHO細胞でのscHC45-M2e-Protanリンカーの生成、GEM粒子へのリンカーの結合、およびGEM-リンカー複合体へのHAの装填)
この実施例は、i)HBD、保存インフルエンザペプチド、およびIBD(Protan)を含むリンカーポリペプチドのGEM粒子への付着、およびii)その後に続く、付着したリンカーポリペプチドを有するGEM上へのHAの装填について記載する。
【0052】
scHC45-M2e-Protanと命名された融合タンパク質(「リンカー」)は、チャイニーズハムスター卵巣細胞で生成し、GEM粒子に結合させた。得られたGEM-リンカー複合体を用いて、GEM-リンカー複合体への特異的非共有結合形成により溶液からHAタンパク質を捕捉した。scHC45-M2e-Protanポリペプチドは、HBD(scHC45)、23アミノ酸保存インフルエンザペプチド(M2e)の3量体、およびIBD(Protan)の遺伝子融合体を含む。scHC45 HA結合ドメインは、抗体HC45のVLおよびVHドメインから、「218」ペプチドをVLのC末端とVH鎖のN末端との間のリンカーとして用いて作製したscFVである。CHO細胞に、InvitrogenからのpcDNA3.1発現ベクター中で哺乳類分泌シグナルの後ろにクローニングした、哺乳類コドンに最適化したscH45-M2e-ProtanのDNA配列を一過的に形質移入した。分泌されたscHC45-M2e-Protanポリペプチドのアミノ酸配列を、図4に示す。
【0053】
組換え産生細胞の除去の後に、scHC45-M2e-Protanリンカーを、ラクトコッカスのGEM粒子に、ハイブリッドリンカー中のProtan部分を用いることにより付着した。リンカー中のscFV部分はHAに結合できたので、HAがGEM粒子上に固定化された。
【0054】
[株および成長条件]
[CHO細胞でのタンパク質発現]
CHO-S懸濁細胞(Invitrogen)を、6mMのL-グルタミン(Gibco Cat. 25030)を補ったFreeStyle CHO培地(Gibco Cat. 12651)中で培養した。細胞を37℃および5% CO2にて1Lの四角形の瓶で、CO2振とうインキュベーター(INFORS)中、110rpmにて維持した。細胞を1〜2×105細胞mL-1の播種密度にて3〜4日ごとに継代培養した。細胞に、2×106細胞mL-1の細胞密度にて、25kDa PEI(Polysciences Cat. 23966)とプラスミドDNAとの混合物を一過的に形質移入した。培養物を、次いで、振とう条件下で6日間インキュベートし、この時点で上清を、1500rpmにて15分間の遠心分離により回収した。
【0055】
[一般的な分子生物学]
[コンストラクトの作製]
リンカータンパク質のDNA配列を、標準的なプロトコルに従ってpcDNA3.1(+)発現ベクター(Invitrogen)中にクローニングした。コンストラクトは、コザック配列GCCACCをATG開始コドンの前に含んでいた。このコンストラクトは、発現されるタンパク質の分泌を可能にする。プラスミド調製物は、2.5LのE. コリ振とうフラスコ培養物から、7〜12mg DNAの平均収率であった。DNAは形質移入グレードであり、内毒素を含まなかった。DNAを水に1mg/mlにて溶解し、-70℃にて用時まで貯蔵した。
【0056】
[GEMの生成]
GEMは、van Roosmalenら(Mucosal vaccine delivery of antigens tightly bound to an adjuvant particle made from food-grade bacteria. (2006) Methods 38(2):144〜149頁)に以前に記載されたようにして、L. ラクチス細胞の熱酸前処理により生成した。GEMの乾燥重量は、1mlの試料を水で洗浄してPBSを除き、ペレットを真空乾燥後に秤量することにより3重で決定した。
【0057】
[GEMへのscHC45-M2e-Protanリンカーの結合]
リンカーをGEMに結合させる結合実験において、168μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)中の2.8mgのGEMを、scHC45-M2e-Protan産生細胞からの15mlの無細胞上清と混合した。10分間のインキュベーションの後に、試料を18000×gでの遠心分離に付し、ペレットを500μlのPBSで2回洗浄し、168μlの合計容量のPBSに再懸濁した。Bio-Rad Experion Pro260チップを、ペレット中のタンパク質の分析のために用いた(図5を参照されたい)。リンカーの結合と可能性のある凝集とを区別するために、GEMを168μlのPBSで置き換えた対照を用いた(レーン1)。さらに、GFP(緑色蛍光タンパク質)産生CHO株化細胞からの15mlの無細胞上清をGEMと混合して、(宿主由来)タンパク質の非特異的結合が生じることを排除した対照実験を行った(レーン2)。レーン3は、GEMへのscHC45-M2e-Protan(Experionソフトウェアによると約155kDa)の結合を示す。このタンパク質は、GEMをGFPとインキュベートしたとき(レーン2)も、元の無細胞上清中(レーン1)にも見ることができず、このことは、scHC45-M2e-ProtanポリペプチドがGEMに特異的に結合し、結合が濃縮ステップであることを示す。Protan融合体をCHO細胞で生成した。組換え生成タンパク質のグリコシル化は、一般的な現象である。Protanドメインは6つの推定グリコシル化部位を含むので(図4)、グリコシル化が予測される。驚くべきことに、Protan部分のグリコシル化は、GEM粒子に結合するその能力に干渉しない。
【0058】
[GEM-scHC45-M2e-ProtanへのHAの結合]
GEM粒子に付着したscHC45-M2e-Protanポリペプチドのヘマグルチニン結合活性を、以下のようにして調べた。付着したscHC45-M2eポリペプチドを有するGEMを、以下の株からの50μgのHAとインキュベートした:
-A/Beijing/262/95(H1N1)株
-B/Shangdong/7/97株
-A/Brisbane/59/2007(H1N1)株
A/Brisbane/10/2007(H3N2)株
B/Florida/4/2006株
を含む市販ワクチンであるVaxigrip(Sanofi Pasteur)2008/2009。
【0059】
図5のレーン4、5および6は、Experion Pro260チップでの分析後の結合のために用いたHA株を示す。対照として、リンカーポリペプチドを欠くGEMを、等量のHAとインキュベートした。インキュベーションの後に、GEMを500μlのPBSで2回洗浄し、168μlの合計容量のPBSに再懸濁し、Experion Pro260チップで分析した。scHC45-M2e-Protanリンカーが存在しない場合、レーン7、8および9にそれぞれ示すように、HAの結合は観察されない。GEM scHC45-M2e-Protanリンカー複合体の存在下では、レーン10、11および12にそれぞれ示すように、A/Beijing/262/95、B/Shangdong/7/97およびVaxigrip 2008からのHAの、GEM-scHC45-M2e-PAへの結合が生じた。この実験は、異なるインフルエンザA株からのHAが、ハイブリッドポリペプチドリンカーscHC45-M2e-Protanを用いてGEM粒子上に固定化できることを証明する。驚くべきことに、インフルエンザB株からのHAも、scHC45- M2e-Protanリンカーを含むGEM上に固定化された。
【0060】
まとめると、これらの結果は、グリコシル化されたscHC45-M2e-ProtanリンカーがGEM粒子に結合でき、かつ、異なるインフルエンザ株からの広範囲のHAタンパク質が、GEM-リンカー複合体上に固定化できることを証明する。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)HAの複数の抗原サブタイプに非共有結合できる少なくとも1つのヘマグルチニン(HA)結合ドメイン(HBD)、(ii)保存インフルエンザタンパク質またはその抗原性フラグメント、および(iii)免疫賦活性担体結合ドメイン(IBD)を含むタンパク質様物質。
【請求項2】
前記HBDが、インフルエンザウイルスA型および/またはB型を起源とする複数のHAサブタイプに結合できる、請求項1に記載のタンパク質様物質。
【請求項3】
前記HBDが、抗体またはその機能的フラグメントである、請求項1または2に記載のタンパク質様物質。
【請求項4】
前記HBDが、ラクダ化VH鎖(cVH)を含む、請求項3に記載のタンパク質様物質。
【請求項5】
前記HBDが、マウスモノクローナル抗体(mAb)、好ましくはmAb HC45またはBH151のVHおよびVL鎖を含む、請求項3に記載のタンパク質様物質。
【請求項6】
前記VHおよびVL鎖が、タンパク質分解耐性の可動性リンカーにより結合されており、好ましくは、前記リンカーが、Gly-Ser-Thr-Ser-Gly-Ser-Gly-Lys-Pro-Gly-Ser-Gly-Glu-Gly-Ser-Thr-Lys-Glyのアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のタンパク質様物質。
【請求項7】
保存インフルエンザタンパク質が、保存核タンパク質、保存マトリックスタンパク質または保存膜タンパク質である、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質様物質。
【請求項8】
保存インフルエンザタンパク質が、インフルエンザ膜タンパク質、好ましくはインフルエンザウイルスA型のM2の保存細胞外部分である、請求項7に記載のタンパク質様物質。
【請求項9】
前記保存インフルエンザタンパク質またはその抗原性フラグメントの少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの反復を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のタンパク質様物質。
【請求項10】
前記IBDが、LysMドメイン、ラクトコッカス・ラクチス細胞壁ヒドロラーゼAcmAのC末端中のLysMドメイン(前記ドメインは、本明細書においてAcmA LysMドメインとも称されている)とのアミノ酸配列データベースにおける相同性探索により得られるアミノ酸配列、およびAcmA LysMドメインと少なくとも70%の配列同一性を示す配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドグリカン結合ドメインである、請求項1から9のいずれか一項に記載のタンパク質様物質。
【請求項11】
前記IBDが、ラクトコッカス・ラクチス細胞壁ヒドロラーゼAcmAのC末端ペプチドグリカン結合ドメインを含む、請求項10に記載のタンパク質様物質。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のタンパク質様物質をコードする核酸配列。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項14】
請求項12に記載の核酸配列または請求項13に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載のタンパク質様物質を提供する方法であって、請求項14に記載の宿主細胞を適切な培地中で培養して物質の発現を可能にするステップと、物質を単離するステップとを含む方法。
【請求項16】
前記宿主細胞が、真核宿主細胞、好ましくは哺乳類宿主細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法により得ることができる、少なくとも1つのN-またはO-結合グリカンを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のタンパク質様物質。
【請求項18】
グリコシル化された免疫賦活性担体結合ドメイン(IBD)に融合された対象のポリペプチドを含むタンパク質様物質であって、物質をコードする核酸コンストラクトを真核宿主細胞、好ましくは哺乳類宿主細胞中で発現させることにより得ることができるタンパク質様物質。
【請求項19】
グリコシル化されたIBDが、LysMドメイン、ラクトコッカス・ラクチス細胞壁ヒドロラーゼAcmAのC末端中のLysMドメイン(前記ドメインは、本明細書においてAcmA LysMドメインとも称されている)とのアミノ酸配列データベースにおける相同性探索により得られるアミノ酸配列、およびAcmA LysMドメインと少なくとも70%の配列同一性を示す配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むグリコシル化されたペプチドグリカン結合ドメインである、請求項18に記載のタンパク質様物質。
【請求項20】
ラクトコッカス・ラクチス細胞壁ヒドロラーゼAcmAのグリコシル化されたC末端ペプチドグリカン結合ドメインを含む、請求項19に記載のタンパク質様物質。
【請求項21】
前記少なくとも1つのHBDが、HAの抗原サブタイプに結合している、請求項1から11または17のいずれか一項に記載のタンパク質様物質。
【請求項22】
請求項1から11または17から20のいずれか一項に記載のタンパク質様物質を備える免疫賦活性担体。
【請求項23】
グラム陽性細菌から得られる生存不能球状ペプチドグリカン粒子(GEM粒子)である、請求項22に記載のタンパク質様物質を備える免疫賦活性担体。
【請求項24】
前記細菌が、非病原性細菌、好ましくは食品グレードの細菌であり、より好ましくは、前記細菌が、ラクトコッカス、ラクトバチルス、バチルスおよびマイコバクテリウムの亜種からなる群から選択される、請求項23に記載のタンパク質様物質を備える免疫賦活性担体。
【請求項25】
HAの少なくとも1つの抗原サブタイプが、タンパク質様物質のHBDに結合している請求項22から24のいずれかに記載の免疫賦活性担体を含む抗原装填免疫賦活性担体。
【請求項26】
HBDに結合しているHAの少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの異なる抗原サブタイプを含む請求項25に記載の抗原装填免疫賦活性担体。
【請求項27】
2つの異なるインフルエンザA型株のHA、および1つのインフルエンザB型株のHAを含む請求項25または26に記載の抗原装填免疫賦活性担体。
【請求項28】
請求項25から27のいずれか一項に記載の抗原装填免疫賦活性担体、および医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項29】
粘膜投与用、より好ましくは鼻腔内投与用に処方されたワクチン組成物である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
ヒトで使用する3価インフルエンザワクチンである、請求項28または29に記載の医薬組成物。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−502652(P2012−502652A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527762(P2011−527762)
【出願日】平成21年9月22日(2009.9.22)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050568
【国際公開番号】WO2010/033031
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(510285171)
【Fターム(参考)】