説明

ヘルメットのシールド装着装置

【課題】 所定の位置に引き出されたシールドの取付け角をスムーズに変更することができるヘルメットのシールド装着装置を提供すること。
【解決手段】 シールド10と、案内溝21を備えたシールドガイド板20と、シールド10と係合してシールド10と一体となってシールドガイド板20を移動する固定部材30とを備えたシールド装着装置100において、シールドガイド板20が案内溝21下端から上端方向に突出する凸部26を有しており、固定部材30が凸部26を係止する複数の係止部を備えた取付け角変更部33を有しており、シールド10が所定の位置まで引き出された状態において、凸部26と係合する取付け角変更部33の係止部を変更することにより、シールド10の取付け角が変わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドがヘルメット本体の前部内面に沿って上下方向に進退可能に取付けられるヘルメットのシールド装着装置であって、所定の位置まで引き出された状態のシールドの取付け角を変更可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘルメット本体の前部内面に沿って上下方向に進退可能なシールドをヘルメットに装着する装置として、シールドガイドの案内溝に沿ってフェイスシールドを変位可能に装着する機構がある(例えば、特許文献1、2)。しかし、これら文献に開示されているヘルメットのシールド装着装置はいずれも、所定の位置まで引き出された状態のシールドの取付け角を変更可能なものではない。
顔面保護板を昇降可能とする昇降機構を有する顔面保護板付ヘルメットにおいて、降下した顔面保護板を後方側に傾動可能とする傾動機構としては、例えば、特許文献3に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−89219号公報
【特許文献2】特開2009−203569号公報
【特許文献3】特開2003−49316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3には、眼鏡を掛けた着用者でも好適に使用可能とすることを目的として、顔面保護板を支持する支持板に設けた3本の案内孔のうち、中央の案内孔を延長しその下端部を外側の案内孔の下端部よりも下方に位置させ、中央の案内孔の延長部および下端部に顔面保護板を保持するための幅広部を設けた構成が開示されている。
しかし、同文献に開示された構成は、引き下ろし角度の大きい位置まで顔面保護板を引き下ろした後、支持板を湾曲させることにより、中央の案内孔に沿って顔面保護板をさらに引き寄せるものである。このため、引き出された顔面保護板の角度をスムーズに変更することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決することを目的としたものであり、所定の位置に引き出された状態のシールドの取付け角をスムーズに変更できるヘルメットのシールド装着装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明のヘルメットのシールド装着装置は、シールドと、当該シールドの進退を案内する案内溝を備えたシールドガイド板と、前記シールドと係合して前記シールドと一体となって前記シールドガイドを移動する固定部材とを備えたヘルメットのシールド装着装置において、前記シールドガイド板が前記案内溝下端から前記案内溝上端方向に突出する凸部を有しており、前記固定部が前記凸部を係止する複数の係止部を備えた取付け角変更部を有しており、前記シールドが所定の位置まで引き出された状態において、前記凸部を係止する前記取付け角変更部の前記係止部を変更することにより、前記シールドの取付け角が変わるものである。
この構成によれば、シールドが所定の位置まで引き出された状態で、凸部を係止する係止部を変更することにより、シールドガイド板を湾曲させることなくシールドの取付け角を変えることができる。
なお、シールドの「取付け角」とは、シールドガイド板の面に対するシールドの角度をいう。また、「所定の位置」とは、シールドの案内溝と係合する部分が、案内溝の下端に当接した状態となって、シールドをそれ以上引き出すことができない位置をいう。
請求項2の本発明は、請求項1に記載のヘルメットのシールド装着装置において、前記取付け角変更部が上下方向に変位可能な弾性を有する板バネの表面に形成されているものである。
上記の構成により、凸部を係止する係止部を変更する際、取付け角変更部が板バネの弾性により上下方向に移動するから、シールドの取付け角の変更をスムーズに行うことができる。
請求項3の本発明は、請求項1に記載のヘルメットのシールド装着装置において、前記シールドが、前記シールドガイド板に向かって延びるように一体に延設されたスライド板部を備えており、前記案内溝が2つであり、2つの前記案内溝の間のレール部が、前記スライド板部と前記固定部材とにより挟まれているものである。
上記の構成により、シールドが所定の位置まで引き出された状態において、スライド板部によりシールドとシールドガイド板との間隔を保持することができる。このため、凸部を係止する係止部を変更する際、シールドとシールドガイド板とが干渉することを防止できる。
請求項4の本発明は、請求項3に記載のヘルメットのシールド装着装置において、前記レール部が他の部分よりも厚みの薄い薄肉部を備えており、前記シールドが所定の位置まで引き出された状態において、前記固定部材が前記薄肉部に位置するものである。
上記の構成により、スライド板部と固定部材との間に隙間が形成されて、固定部材が前方向に移動することができる範囲が大きくなる。このため、凸部を係止する取付け角変更部の係止部をスムーズに変更することができる。また、案内溝に沿ってシールドを移動させる場合には、スライド板部と固定部材との間にレール部の厚みの厚い部分が位置することから、進退の際にシールドががたつくことを防止できる。
請求項5の本発明は、請求項3に記載のヘルメットのシールド装着装置において、前記スライド板部の上端が前記シールドガイド板から離れる方向に曲がって延びているものである。
上記のように、スライド板部を、シールドからシールドガイド板に向かって延びた後にシールドガイド板から離れる方向に曲がったものとすれば、側面から見た場合に、シールドガイド板側に突出するなだらかな山状部分がスライド板部の上端付近に形成される。そして、スライド板部は、シールドの取付け角を変更する際、その上端がシールドガイド板表面から離れた状態で、山状部分の頂点付近でシールドガイド板表面と接することとなる。このため、シールドの取付け角変更をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシールド装着装置によれば、シールドが所定の位置まで引き出された状態において、シールドガイド板を湾曲させることなく、シールドの取付け角を変更することができる。したがって、シールドの取付け角変更をスムーズに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)シールドが格納位置に格納された状態におけるヘルメットの側面図、(b)シールドが使用位置に引き出された状態におけるヘルメットの側面図
【図2】本発明の実施形態に係るヘルメットのシールド装着装置を下方から見た分解斜視図
【図3】本発明の実施形態に係るヘルメットのシールド装着装置によりシールドがヘルメットに装着された状態を示す底面斜視図であり、(a)シールドが格納位置に格納された状態の底面斜視図、(b)シールドが使用位置に引き出された状態の底面斜視図
【図4】シールドが使用位置に引き出された状態におけるシールドの取付け角変更を説明する図であり、(a)シールドの取付け角を示すヘルメットの側面図、(b)取付け角変更前における固定部材と凸部との係止状態を斜め下方向から見た状態を示す斜視図、(c)取付け角変更後における固定部材と凸部との係止状態を斜め下方向から見た状態を示す斜視図
【図5】固定部材の取付け角変更部と凸状部との係止状態を説明する断面模式図であり、(a)取付け角変更前の状態を示す断面模式図、(b)取付け角変更後の係止状態を示す断面模式図
【図6】シールドが所定の位置まで引き出された状態を説明するためにヘルメット本体を取り除いて示した側面図
【図7】本発明の実施形態に係るヘルメットのシールド取付け角変更装置によりシールドがヘルメットに装着された状態を示す底面図であり、(a)シールドが格納位置に格納された状態の底面図、(b)シールドが使用位置に引き出された状態の底面図
【図8】図7(a)の丸で示したAの部分の概略を拡大して示す説明図
【図9】本発明の実施形態に係るヘルメットのシールド装着装置によりシールドがヘルメットに装着され格納された状態を説明するためにヘルメット本体を取り除いて示す(a)側面図、(b)平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のヘルメットのシールド装着装置(以下、適宜「シールド装着装置」という。)の実施形態について、以下に図面を参酌しながら説明する。
【0010】
図1(a)は、シールドが格納位置に格納された状態におけるヘルメットの側面図を示し、図1(b)は、シールドが使用位置に引き出された状態におけるヘルメットの側面図を示している。同図に示すように、本発明のシールド装着装置は、不要な場合にシールドをヘルメット内の所定位置に格納し、必要な場合にシールドをヘルメット内から引き出して使用位置(使用状態における所定の位置)に保持するものである。
【0011】
図2は、本実施形態に係るヘルメットのシールド装着装置を下方から見た分解斜視図である。同図に示すように、シールド装着装置100は、シールド10と、シールド10の進退を案内する案内溝21を備えたシールドガイド板20と、案内溝21とシールド10とを係合させ、シールド10と一体に移動する固定部材30とを備えている。そして、シールドガイド板20をヘルメット本体200内に固定した状態で、ヘルメット本体200とシールドガイド板20との間でシールド10を進退させ、使用しない場合には格納位置へ格納し、必要な場合にヘルメット内から引き出して所定位置に保持する。
【0012】
ヘルメット本体200の内側には、シールド装着装置100の他にハンモックが備えられているが、本実施形態では説明を省略する。ハンモックは、ヘルメット本体200に加わる外力を吸収緩和する作用を有する一般に用いられているものを用いればよい。
【0013】
シールド10は、必要に応じてヘルメット装着者の顔面を保護するために用いられるものである。シールド10は、使用位置に引き出した状態での作業を可能とするために、一般に透明な素材を成型して形成されるものである。また、装着者の顔面に合うように顔面中央を頂部として湾曲した面として形成されている。シールド10を引き出した状態での作業において、ヘルメット装着者は、シールド10を介して種々のものを見る。このため、シールドの透明性を良好にすることは、作業における安全性および快適性の向上につながる。また、シールドの透明性を長期間維持することにより、交換サイクルが長くなるから、コストの削減にもつながる。
【0014】
シールドガイド板20は、合成樹脂により弾性変形可能な板状に形成されてなるものであり、案内溝21および縁ガイド部22を備えている。
案内溝21は、シールドガイド板20の中央に上下方向に延びるように2本形成されている。シールド10および固定部材30は、この案内溝21に沿って移動するものである。なお、本実施形態においては、ヘルメット本体200が装着された状態を基準として上下を示すこととする。すなわち、ヘルメット本体200の頂部側を上とし、その反対側を下とする。
【0015】
また、案内溝21の下端のシールド10と反対側の面に、案内溝21上端方向に突出する凸部26が形成されている。この凸部を係止するシールド支持部32の取付け角変更部33の係止部を変更することにより、シールド10の取付け角を変更することができる。
【0016】
すなわち、シールド10が所定の位置まで引き出された状態において、凸部26を係止する取付け角変更部33の係止部を変更して固定部材30を前方に移動させることにより、スライド脚12を介してシールド10を前側に押し出すことができる。固定部材30の係止部を変更することによって、スライド板部13とレール部23との接点が支点となり、固定部材30によってシールド10が押し出された状態を維持することができる結果として、シールド10の取付け角を変更することができる。なお、シールド10が押し出されてシールド10の取付け角が変更された状態においては、シールド縁部11は縁ガイド部22の奥の面22a(図8参照)から離れた状態となっている。
【0017】
縁ガイド部22は、シールドガイド板20の両端に形成されている。シールド10が案内溝21に沿って移動する際、シールド10とシールドガイド板20との間隔を維持するように、シールド10両端のシールド縁部11を縁ガイド部22が支持する。縁ガイド部22を設けることにより、シールド10が進退する際、縁ガイド部22およびスライド板部13を支持するレール部23の3つの部分により、シールド10とシールドガイド板20との間隔が維持される。したがって、シールド10とシールドガイド板20との接触を抑制することができる。
【0018】
一方、従来のシールド保持構造(例えば、特許文献3)では、シールドとシールドガイド板との間に間隔を形成する手段は設けられていない。このため、シールドが進退する際、くり返しシールドガイド板20と接することとなる。したがって、シールドの進退によってシールドが曇ることによる安全性および快適性の低下を解消するために、早期にシールドを交換することが必要であった。
これに対して、本実施形態のシールド装着装置100によれば、3つの部分でシールド10とシールドガイド板20との間隔を維持し、シールド10に曇りが生じることを抑制できる。したがって、シールド10の曇りによる安全性および快適性の低下、ならびに交換コストを抑えることができる。
【0019】
固定部材30は、合成樹脂を成型して形成されるものであり、シールドガイド板20内側(装着者側)表面において、案内溝21を貫通して突出するシールド10のスライド脚12を係止して抜け止めを行う部材である。固定部材30がスライド脚12を係止することにより、シールド10のスライド脚12がシールドガイド板20の案内溝21を貫通した状態を維持する。固定部材30は、上述のように案内溝21とシールド10とを係合させた状態で、シールド10と一体に案内溝21に沿って移動する。
【0020】
スライド脚12は、シールド10のシールドガイド板20側の面に設けられており、少なくともその一部がスライド板部13に形成されている。ここで、スライド板部13とは、シールド10の上部に、シールドガイド板20に向かって延びるようにシールド10と一体に延設された部分をいう。スライド脚12がスライド板部13に形成されていることから、固定部材30がスライド脚12を係止した状態では、2つの案内溝21の間のレール部23がシールド10のスライド板部13と固定部材30によって挟まれた状態となっている。
【0021】
固定部材30の中央部には、上向きコ字状のスリットを設けて形成された、上方から下方に向かって延びる片持ち状の弾性係止片31が設けられている。弾性係止片31の先端部には係止爪が形成されている。弾性係止片31をレール部23の係止爪に係止することにより、シールド10を格納位置または使用位置に保持することができる。レール部23の固定部材30側の表面には、係止爪24および係止爪25が形成されている。係止爪24はシールド10または固定部材30が案内溝21の上端に当接した位置でシールド10を保持するためのものであり、係止爪25はシールド10または固定部材30が案内溝21の下端に当接した位置でシールド10を保持するためのものである。弾性係止片31の係合爪と係止爪24・25とは、弾性係止片31の弾性により圧接係合して、シールド10の位置を維持する。
【0022】
弾性係止片31をレール部23上端付近の係止爪24と係合させれば、シールド10がヘルメット本体200内の格納位置に格納された状態を維持することができる。また、弾性係止片31をレール部23の下端付近の係止爪25と係合させれば、シールド10が使用位置に引き出された状態を維持することができる。
【0023】
固定部材30の下端には、案内溝21を貫通し、シールドガイド板20から突出するシールド支持部32が形成されている。このシールド支持部32がシールド10に当接することによって、シールド10とシールドガイド板20との間隔を維持することができるから、両者の接触を防止することができる。また、シールド支持部32の下面(凸部26と当接する面)には、凸部26を係止するための係止部を複数備えた取付け角変更部33が形成されている。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係るヘルメットのシールド取付け角変更装置によりシールドがヘルメットに装着された状態を示す底面斜視図であり、(a)はシールドが格納位置に格納された状態の底面斜視図を示し、(b)はシールドが使用位置に引き出された状態の底面斜視図を示している。
【0025】
シールド10は、シールドガイド板20に向かって延びるようにシールド10から一体に延設されたスライド板部13を備えている。シールドガイド板20の案内溝21は2つ形成されており、スライド板部13に設けられている2つのスライド脚12が、それぞれレール部23を貫通した状態で、固定部材30により係止される(図2参照)。これにより、案内溝21の間のレール部23が、シールド10のスライド板部13と固定部材30によって挟まれた状態となり、シールドガイド板20の案内溝21に沿ってシールド10を進退させることができる。
【0026】
シールドガイド板20に向かって延びているスライド板部13において、シールド10と案内溝21とを係合させることより、シールド10とシールドガイド板20との間の間隔Dを維持できる。このため、シールド10が進退する際のみならず、所定位置に引き出された状態においても、シールド10とシールドガイド板20とが接触することを防止し、シールド10の取付け角変更をスムーズに行うことができる。
【0027】
図3(a)に示すように、シールドガイド板20のレール部23は、厚みの薄い薄肉部27を備えている。そして、図3(b)に示すように、シールド10が引き出されて、案内溝21の下端に係止された状態(弾性係止片31と係止爪25とが係合した状態、所定の位置、使用位置)においては、固定部材30全体が薄肉部27に位置する。すなわち、薄肉部27は、シールド10が引き出されて所定の位置にある状態において、レール部23の固定部材30が位置する部分にのみ形成されている。
【0028】
この構成により、レール部23の厚みを薄くした分だけ固定部材30を前方向(図4(a)に矢印で示した方向)に移動させることが容易になる。このため、凸部26を係止する取付け角変更部33の係止部をスムーズに変更することができる(図4、図5参照)。
また、係止爪25と固定部材30との係止を外して案内溝21に沿ってシールド10を進退させる際には、固定部材30とスライド板部13とはレール部23の厚みの厚い部分を挟むため、シールド10が進退する際に、薄肉部27を原因とするがたつきが生じることはない。
【0029】
図4は、シールドが使用位置に引き出された状態におけるシールドの取付け角変更を説明する図であり、(a)がシールドの取付け角を示すヘルメットの側面図であり、(b)が取付け角変更前における固定部材と凸部との係止状態を斜め下方向から見た状態を示す斜視図であり、(c)が取付け角変更後における固定部材と凸部との係止状態を斜め下方向から見た状態を示す斜視図である。
【0030】
図4(a)においては、使用位置に引き出された状態のシールド10を実線で示し、その状態において取付け角が変更されたシールド10を破線で示す。シールド10の取付け角変更前においては、図4(b)に示すように、凸部26が取付け角変更部33の端から2番目の係止部33aに係止されている。この状態で図4(a)に矢印で示した方向にシールド10を押し出すことにより、図4(c)に示すように、取付け角変更部33における凸部26の係止位置を取付け角変更部33の端から1番目の係止部33bに変更することができる。このようにして、シールド10を実線で示した位置から破線で示した位置に移動させて取付け角を変更することができる。
【0031】
上述したように、シールド10が所定の位置まで引き出され、弾性係止片31が係止爪25に係止されている状態において、シールド10を押し出すことにより、凸部26を係止する取付け角変更部33の係合部を係止部33aから係止部33bに変更し、シールド10の取付け角を変えることができる。このように、シールド装着装置100によれば、シールドガイド板20を湾曲させることなく、シールド10の取付け角変更を直感的かつスムーズに行うことができる。
【0032】
また、支持板を撓ませて顔面保護板の角度を変更する従来の方式では、製品誤差が大きく、顔面保護板の角度が不安定になるという問題がある。しかし、シールド装着装置100は、シールドガイド板20を湾曲させることなく、シールド10の取付け角を変更するものである。このため、製品誤差の小さい安定したシールド取付け角のものとすることができる。
【0033】
図5は固定部材の取付け角変更部と凸状部との係止状態を説明する断面模式図であり、(a)が取付け角変更前の係止状態を示すものであり、(b)が取付け角変更後の係止状態を示すものである。これらの図に示すように、シールド装着装置100の取付け角変更部33は2つの断面山型の係止部33a、33bを備えている。なお、係止部の数は2つに限られるものではなく、3つ以上としても良い。
【0034】
図5(a)に示すように、取付け角変更部33は上下方向に変位可能な弾性を有する板バネ状のシールド支持部32の凸部26側の面に形成されている。このため、図5(a)に示すように、係止部33aと凸部26とが係合している状態で、シールド支持部32を前方(実線矢印の方向)に移動させると、シールド支持部32の弾性によりシールド支持部32が上方向(破線矢印の方向)に撓む。すなわち、係止部33aと凸部26とが係合している状態で、シールド10を前方に移動させる方向の力が加えられると(図4(a)参照)、その力がスライド脚12を介して固定部材30に伝えられ、シールド支持部32は、前方に移動すると共に、その弾性により撓んで取付け角変更部33が上方に移動する。これにより、取付け角変更部33が凸部26上をスムーズに動いて乗り越えることができる。そして、係止部33aが凸部26を乗り越えた後、シールド支持部32の弾性により、取付け角変更部33が図5(b)に破線矢印で示した方向に戻り、係止部33bに凸部26が係止される。
【0035】
上記のように、シールド10が所定の位置まで引き出された状態において凸部26を係止する取付け角変更部33の係止部を係止部33aから係止部33bに変更する際、シールド支持部32の弾性によって取付け角変更部33が上下方向に移動することにより、シールド10の取付け角変更をスムーズに行うことができる。
また、凸部26が係止部33bに係止されている状態のときには、シールド10を後方に移動させることにより、シールド10の取付け角変更をスムーズに行うことができる。
【0036】
図6は、シールドが所定の位置まで引き出された状態を説明するためにヘルメット本体を取り除いて示した側面図である。
同図に示すように、スライド板部13の上端13aは、シールドガイド板20から離れる方向に曲がって延びている。このため、シールド10が所定の位置まで引き出された状態において、スライド板部13の上端13aがシールドガイド板20の表面から離れた状態となる。したがって、シールド10を前に押し出して、その取付け角をα1からα2に変更する場合、スライド板部13は上端13aではなく面でシールドガイド板20と接触する。これにより、シールド10の取付け角の変更をスムーズに行うことができる。
【0037】
図7は、本発明の実施形態に係るヘルメットのシールド装着装置によりシールドがヘルメットに装着された状態を示す底面図であり、(a)はシールドが格納位置に格納された状態を、(b)はシールドが使用位置に引き出された状態をそれぞれ示している。
図7(a)に示すように、シールド10が格納位置に格納された状態では、弾性係止片31は係止爪24に係止されている。また、図7(b)に示すように、シールド10が使用位置に引き出された状態では、弾性係止片31は係止爪25に係止されている。
【0038】
これらの図に示すように、シールド10が格納位置から使用位置まで移動する際、シールド縁部11がシールド10面を挟むコ字状の形状をしている縁ガイド部22の内側に位置している。このように、シールド縁部11を縁ガイド部22内に位置させることにより、シールド10が移動する際、シールド10とシールドガイド板20との間隔Dを保持することができると共に、シールド10の左右のぐらつきを抑制することができる。したがって、シールド10をスムーズに移動させることができる。
【0039】
図8は、図7(a)の丸で示したAの部分の概略を拡大して示す説明図である。同図に示すように、シールド10の進退の際、シールド縁部11がコ字状の縁ガイド部22内側の2つの側面22bに挟まれた奥の面22aに接することで、シールド10とシールドガイド板20との間隔Dを維持することができる。また、この際、シールド10両側が、縁ガイド部22の側面22bにより支持されるから、シールド10の左右方向のぐらつきを抑制することができる。
【0040】
シールド10を進退させる際に、シールド10に大きな力が加えられた場合、縁ガイド部22内に位置するシールド縁部11が、一時的に縁ガイド部22の外に出ることがある。このような場合、縁ガイド部22とヘルメット本体200内面との間に隙間があると、その隙間にシールド縁部11が入り込むことがある。シールド縁部11が隙間に入り込むと、シールド10とシールドガイド板20との間隔Dを保持できなくなるから、シールド10がシールドガイド板20に接触するおそれがある。
【0041】
そこで、シールド装着装置100の縁ガイド部22は、そのコ字状の端部22cがヘルメット本体200の内面に固定されている。すなわち、縁ガイド部22は、シールド10の外側に位置する側の端部22cがヘルメット本体200内面に接した状態で固定されている。このため、一時的にシールド縁部11がコ字状の縁ガイド部22の外に位置した場合にも、その後、確実にシールド縁部11を縁ガイド部22内に位置させて、シールド10とシールドガイド板20との間隔Dを維持することができる。
【0042】
縁ガイド部22は、係止片22d(図9参照)をヘルメット本体200の係止孔201に差し込んで取り外し可能な状態で係止することにより、ヘルメット本体200の内面に固定されている。
【0043】
シールド装着装置100は、シールド10を交換可能とするため、ヘルメット本体200から取り外し可能となっている。このため、シールド10の交換作業を装着者が行うこととなる。ここで、縁ガイド部22が奥の面22aよりも後ろ側のみでヘルメット本体200の内側に接するように固定され、端部22cがヘルメット本体200の内側に固定されていないと、縁ガイド部22とヘルメット本体200との間に隙間が形成される。したがって、装着者がシールド装着装置100をヘルメット本体200に取付ける際、シールド縁部11を縁ガイド部22ではなく、誤って縁ガイド部22とヘルメット本体200との間の隙間に配置してしまうおそれがある。シールド縁部11が誤った位置に配置されると、シールド装着装置100の機能が発揮されないこととなる。
【0044】
そこで、シールド装着装置100の縁ガイド部22は、縁ガイド部22の端部22cがヘルメット本体200内面に接した状態で固定されている。これにより、シールド縁部11を配置する正しい位置を知らない者が取付けた場合でも、シールド縁部11は必ず縁ガイド部22内に配置されることとなる。したがって、シールド装着装置100は、シールド10とシールドガイド板20との間隔を保持する機能を確実に発揮することができる。
【0045】
図9は、本発明の実施形態に係るヘルメットのシールド装着装置によりシールドがヘルメットに装着された状態を説明するためにヘルメット本体を取り除いて示した、(a)側面図および(b)平面図である。
【0046】
図9(a)に示すように、シールド10は、シールドガイド板20に向かって延びるように一体に延設されたスライド板部13を備えている。これにより、シールド縁部11を支持する縁ガイド部22にスライド板部13を加えた部分で、シールド10とシールドガイド板20との間隔Dを維持することができる。したがって、シールド10が案内溝21(図7(a)(b)参照)に沿って進退する際に、シールド10とシールドガイド板20との間に所定の間隔Dが維持された状態を保持して、両者が接触することを防止できる。
【0047】
図9(b)に示すように、固定部材30(図2参照)は、レール部23を貫通してシールドガイド板20から突出したシールド支持部32を備えている。シールド10とシールドガイド板20との間隔が小さくなると、シールド支持部32がシールド10に当たる。このため、シールド支持部32によっても、シールド10とシールドガイド板20との間の間隔を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、種々の建築作業や土木作業、重機の運転、建物内外における警備、作業において、衝撃などから保護して安全を確保するヘルメット用のシールド装着装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 シールド
11 シールド縁部
12 スライド脚
13 スライド板部
13a 上端
20 シールドガイド板
21 案内溝
22 縁ガイド部
22c 端部
23 レール部
24,25 係止爪
26 凸部
27 薄肉部
30 固定部材
31 弾性係止片
32 シールド支持部
33 取付け角変更部
33a、33b 係止部
100 シールド装着装置
200 ヘルメット本体
D シールドとシールドガイド板との間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドと、当該シールドの進退を案内する案内溝を備えたシールドガイド板と、前記シールドと係合して前記シールドと一体となって前記シールドガイドを移動する固定部材とを備えたヘルメットのシールド装着装置において、
前記シールドガイド板が前記案内溝下端から前記案内溝上端方向に突出する凸部を有しており、前記固定部が前記凸部を係止する複数の係止部を備えた取付け角変更部を有しており、前記シールドが所定の位置まで引き出された状態において、前記凸部を係止する前記取付け角変更部の前記係止部を変更することにより、前記シールドの取付け角が変わることを特徴とするヘルメットのシールド装着装置。
【請求項2】
前記取付け角変更部が上下方向に変位可能な弾性を有する板バネの表面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘルメットのシールド装着装置。
【請求項3】
前記シールドが、前記シールドガイド板に向かって延びるように一体に延設されたスライド板部を備えており、前記案内溝が2つであり、2つの前記案内溝の間のレール部が、前記スライド板部と前記固定部材とにより挟まれていることを特徴とする請求項1に記載のヘルメットのシールド装着装置。
【請求項4】
前記レール部が他の部分よりも厚みの薄い薄肉部を備えており、前記シールドが所定の位置まで引き出された状態において、前記固定部材が前記薄肉部に位置することを特徴とする請求項3に記載のヘルメットのシールド装着装置。
【請求項5】
前記スライド板部の上端が前記シールドガイド板から離れる方向に曲がって延びているものであることを特徴とする請求項3に記載のヘルメットのシールド装着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−83012(P2013−83012A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223434(P2011−223434)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000149930)株式会社谷沢製作所 (48)
【Fターム(参考)】