説明

ヘルメット用のバックル及びヘルメット

【課題】ヘルメットの装着に用いるバンドの連結の解除に要する力を抑えることと、構造の大型化を抑えることとの両立が可能なヘルメット用のバックル、及び、該バックルがバンドに用いられるヘルメットを提供する。
【解決手段】ヘルメット用のバックル50は、バンドの一端部に取り付けられるバンド係止部材55と、バンド係止部材55に傾動可能に取り付けられる解除部材70と、を備え、バンド係止部材55が、調整部35と係合する爪部62と、爪部62を調整部35に付勢する付勢力を爪部62に加える弾性板61と、を有し、解除部材70が、バンド係止部材55に連結された傾動中心である基端部52と、解除部材70の傾動によりバンドに対して接近及び離脱する先端部51と、基端部52と先端部51との間で付勢部に連結されるフック74と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットの装着に用いられるバンドを固定するヘルメット用のバックル、及び、該バックルがバンドに用いられるヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部に着用され、頭部を保護するヘルメットが知られている。こうしたヘルメットには、ヘルメットの外殻を構成する半球状の帽体(シェル)と、帽体の内部に設けられ、帽体との間に所定の間隔を保持するハンモックと、帽体内部に設けられ着用者の頭部を囲繞してヘルメットを固定させるヘッドバンドとが設けられている。また、ヘッドバンドにはその周長が着用者の頭部の大きさに合わせ調整できる機構が設けられている。そして、こうした調整機構を有するヘルメットのヘッドバンドとして、例えば特許文献1に記載のヘッドバンドがある。
【0003】
特許文献1に記載のヘッドバンドには、一方の端部に鋸歯状の被係合歯列が備えられ、他方の端部には、被係合歯列との係合によりバンドを連結するバックルが連結されている。このバックルは、鋸歯受けの突部を有する係合爪を備え、係合爪には指がかかる厚肉部が設けられている。そして、係合爪の厚肉部がバンド面から引き上げられることにより、バンドの被係合歯列と係合爪との係合状態が解除される。しかしながら、係止爪の肉厚部の操作に要する力は、係合力を強めて係合状態を安定させるようにするとそれに応じて強い力が必要になるなど、設計等に応じて変化するものとなっていた。そこで、設計等に応じて適宜変更される係合力に対し、操作に要する力を適切に調整することができるヘルメットのヘッドバンドとして、例えば特許文献2に記載のヘッドバンドがある。
【0004】
特許文献2に記載のヘッドバンドは、上記と同様に、同ヘッドバンドの一方の端部に鋸歯状の被係合部を備え、該バンドの他方の端部に鋸歯受けの突部を有する係合部をそれぞれ備えている。また、同ヘッドバンドには、係合部をバンド面に向けて押し下げる揺動部が設けられている。この揺動部は、その自由端を押し下げると回動軸を挟んで持ち上がる作用端を有しており、持ち上がる作用端が上記係合部に当接して該係合部をバンド面から押し上げるようになっている。このように係合部をバンド面から押し上げる力を、てこの原理を利用して揺動部から係止部に伝達するようにすることにより、設計などに応じて係合力を変更した場合であれ、該係合を解放する際、揺動部の自由端の操作に要する押圧力を適切な力に調整することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−49315号公報
【特許文献2】特許第4103043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献2のヘッドバンドによれば、係合部の係合解除に要する力を適切に調整することが可能にはなるものの、操作に要する力を一定にしようとすると、係止部の押し上げに強い力を要するほど、揺動部の自由端を回転軸から離し、自由端を押すことができる長さを長くしなければならなくなる。すなわち揺動部は、強い力に対応しようとすると、自由端がバンドに対して離れるようになるため、バンドから離れた部分が何かに引っかかるようなことを防止するために当該自由端の周囲を覆うように設けられている保護部の大きさが大きくなることなどが避けられないものとなっている。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであって、その目的は、ヘルメットの装着に用いるバンドの連結の解除に要する力を抑えることと、構造の大型化を抑えることとの両立が可能なヘルメット用のバックル、及び、該バックルがバンドに用いられるヘルメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ヘルメットの装着に用いられるバンドの一端部に設けられ、前記バンドの他端部に形成される被係合部との係合により前記バンドを連結するヘルメット用のバックルであって、前記バンドの前記一端部に取り付けられるバンド係止部材と、前記バンド係止部材に傾動可能に取り付けられる解除部材と、を備え、
前記バンド係止部材が、前記被係合部と係合する係合部と、前記係合部を前記被係合部に付勢する付勢力を前記係合部に加える付勢部と、を有し、前記解除部材が、前記バンド係止部材に連結された傾動中心である基端部と、当該解除部材の傾動により前記バンドに対して接近及び離脱する先端部と、前記基端部と前記先端部との間で前記付勢部に連結される連結部と、を有し、前記バンドから離脱する方向への傾動力を前記先端部が受けることにより、前記連結部を介して、前記付勢力に抗した解除力が前記係合部に加えられることを要旨とする。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、ヘッドバンドの設けられたヘルメットであって、前記ヘッドバンドは、前記ヘルメットに取り付けられる取付部と、前記取付部に設けられた2つの分岐部からそれぞれ分岐され、後頭部側である後方向にてバックルを介して連結される2つの分岐バンドとを有し、前記2つの分岐バンドのうちの一方の分岐バンドは、バンド面に被係合部を有し、前記2つの分岐バンドのうちの他方の分岐バンドは、前記一方の分岐バンドを挿通支持するバンド支持部を備え、前記バンド支持部が、前記2つの分岐バンドを連結させるバックルとして上述したヘルメット用のバックルを有することを要旨とする。
【0010】
このような構成によれば、解除部材の先端部がバンドから離間する方向に回転することにより、解除部材の連結部を介して、バンド係止部材の係合部に解除力が加えられ、バンド係止部材の係合部とバンドの被係合部との係合が解除されるようになる。この際、てこの原理を利用してのバンドの解除操作が行われるため、バンドの被係合部とバンド係止部材の係合部との係合を解除させるために現に要する力の強弱にかかわらず、解除部材の先端部の操作に要する力を適切に調整することができるようになる。
【0011】
また、バンド係止部材の係合部に加えられる付勢力の一部は、解除部材の連結部を介して、解除部材の先端部に作用し続けることになる。そのため、バンドから離される方向への傾動力を先端部が受けない場合、こうした先端部は、上述した付勢力に従ってバンドに近い位置に配置されるようになる。これにより、先端部を含む解除部材がそれの回転範囲においてバンドに近い状態でバンドが連結されるため、こうした解除部材を有するバックルを小型化することが可能になる。
【0012】
さらに本発明は、上述したヘルメット用のバックルにおいて、前記被係合部が、鋸歯状の被係合歯列を有し、前記係合部が、前記被係合歯列に係合可能な爪部を有し、前記付勢部が、前記爪部が連結されて該爪部に前記付勢力を加える片持ち梁とを有し、前記連結部が、前記片持ち梁の先端に連結されることを要旨とする。
【0013】
このような構成によれば、係合部における片持ち梁が、爪部に付勢力を加え、当該片持ち梁の先端に、解除部材の連結部が連結される。そのため、被係合歯列と爪部との隙間を同じ程度空けるうえでは、片持ち梁の先端以外に連結部が連結される態様と比べ、片持ち梁に加える力を小さくすることが可能である。そのため、バンドの被係合部とバンド係止部材の係合部との係合を解除するうえでは、解除部材の先端部に必要とされる回転力を小さくすることが可能であるから、バックルの操作性を高めることが可能にもなる。
【0014】
さらに本発明は、上述したヘルメット用のバックルにおいて、前記連結部が、前記片持ち梁の先端部と係合するフックを有し、前記フックの返しが、前記片持ち梁の先端部における前記バンド側と当接することを要旨とする。
【0015】
このような構成によれば、片持ち梁の先端部に対して当該先端部のバンド側から連結部が当接するため、片持ち梁とバンドとの間の空間をバンド係止部と解除部材との連結部位として利用することが可能になる。そのため、バックルの薄型化を図ることが可能になる。
【0016】
さらに本発明は、上述したヘルメット用のバックルにおいて、前記バンド係止部材が、バンド面に沿って延びる軸部を有し、前記解除部材の基端部が、前記軸部を回転可能に支持する軸受け部を有し、前記軸受け部が、前記軸部に嵌脱可能な樹脂製であることを要旨とする。
【0017】
このような構成によれば、バンド係止部材と解除部材とが、軸部と該軸部に嵌脱可能な樹脂製の軸受け部との嵌合により一体化されるため、バンド係止部材と解除部材とで構成されるバックルの組み立てが容易になる。また、バンド係止部材と解除部材とが軸部を介して回動可能に構成されるようになるため、解除部材の先端部の回転操作も容易となるとともに、先端部と基端部との間に解除操作の都度かかる疲労を減らすことができる。そのため、基端部とバンド係止部材とが可撓性の部材で連結されているような場合に比べて、解除操作の繰り返しに対する耐久性を向上させることができるようになる。
【0018】
さらに本発明は、上述したヘルメット用のバックルにおいて、前記解除部材が、前記バンド係止部材における前記バンドとは反対側を覆う板状をなし、前記バンド係止部が、前記解除部材の前記基端部における前記バンド側に当接する当接部を有し、前記当接部が、前記解除部材の前記基端部を前記バンドに対して離脱させる方向に付勢し、前記解除部材の前記先端部を前記バンドに対して接近させる方向に付勢することを要旨とする。
【0019】
このような構成によれば、解除操作されていない場合、解除部材の先端部はバンドに近い位置で保持されるようになる。そのため、バックルの小型化がより好適に行えるようになる。
【0020】
さらに本発明は、上述したヘルメット用のバックルにおいて、前記バンド係止部材及び前記解除部材が、前記バンドよりも硬質の樹脂材料にて形成されていることを要旨とする。
【0021】
このような構成によれば、バンド係止部材をバンドよりも硬質の部材を用いることで、バンド係止部材の付勢部が係合部に加える付勢力、あるいはバンド係止部材の当接部が解除部材に与える付勢力などを高めることができる。
【0022】
さらに本発明は、上述したヘルメットにおいて、前記バンドは、前記分岐部に回動可能に連結されていることを要旨とする。
このような構成によれば、バンドの締め付け位置を調整することができるため、着用者の感じる違和感を抑制することができる。また、バンドとしても、頭部の形状への適合性が向上し、適切な装着が期待される。
【0023】
さらに本発明は、上述したヘルメットにおいて、前記分岐部が、同心円状をなす複数の摺動溝を有し、前記分岐バンドが、前記分岐部に対向する面に同心円状をなして複数の前記摺動溝の各々に嵌合する複数の摺動突部を有することを要旨とする。
【0024】
このような構成によれば、分岐部の摺動溝と分岐バンドの摺動突部とが各々の全周に渡って嵌合するため、取付部に対して分岐バンドが回動可能になる一方、これらの嵌合力が高められもするため、こうした嵌合が外れるおそれが低減される。つまり、バンドは柔軟性のある材料から構成されているため、分岐部や分岐バンドは外力により歪むおそれがあるが、分岐部と分岐バンドとの嵌合している長さが長いことから、上述した歪みに対する嵌合状態の維持力が強くなる。また、摺動溝や摺動突部が分岐部や分岐バンドと同じ材料から形成されているため、嵌合を維持しつつある程度歪むこともできるようにもなる。これにより、ヘルメットのヘッドバンドの柔軟性が維持されるようになる。
【0025】
さらに本発明は、上述したヘルメットにおいて、前記分岐バンドが、ポリエチレンを含む樹脂材料により形成されていることを要旨とする。
このような構成によれば、バンドに形成される回動部に、適度な強度と柔軟性を付与することができるようになる。
【発明の効果】
【0026】
このようなヘルメット用のバックル、及び、該バックルがバンドに用いられるヘルメットによれば、ヘルメットの装着に用いるバンドの連結の解除に要する力を抑えることと、構造の大型化を抑えることとが両立可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るヘルメット用のバックルが設けられたヘルメットの具体化された一実施形態について、バックルの設けられているヘルメット後側の構造を示す背面図。
【図2】同実施形態のヘルメットに内装されるヘッドバンドの展開構造を示す平面図。
【図3】同実施形態のヘッドバンドの一部であって、バックル及びバックルが取り付けられるバンドの正面構造を示す正面図。
【図4】同実施形態のヘッドバンドの一部であって、バックルで係止されている2つのベルトの係合状態の斜視構造を示す斜視図。
【図5】同実施形態のバックルの斜視構造を示す斜視図。
【図6】同実施形態のバックルについて、図4の6−6線における断面構造を示す断面図。
【図7】同実施形態のバックルについて、ベルトの係合が開放される状態における断面構造を示す断面図。
【図8】同実施形態のヘルメットについて、ベルトが回動支持される分岐部の分解構造を示す平面図。
【図9】本発明に係るヘルメット用のバックルのその他の実施形態について、バックルを構成する係止部の斜視構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のヘルメット用のバックル及び該バックルを備えるヘルメットが具体化された一実施形態について、図1に従って説明する。なお、このヘルメットは主に人の頭部に着用される頭部保護用のヘルメットである。
【0029】
図1に示されるように、ヘルメットは、その外殻が中空半球状の帽体10により構成されている。帽体10は、例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体等のABS樹脂によって形成されたものであり、中空の半球形状が形成する周状の開口である開口部12には外周側に折り返された折り返し部14が設けられている。なお、図示された後側に対し、図示されていない前側には雨や落下物等から使用者の顔面を保護するように外周方向に突出する庇部が設けられていてもよい。なお、このヘルメットは、後側に後頭部側を配置させ、前側に顔面を向けるようにして着用者の頭部に装着される。また、このヘルメットは、帽体10において、開口部12の開口する側が下側であり、半球形状の頂部側が上側である。
【0030】
帽体10には、着用者の頭部に対して帽体10の位置を固定する周状のヘッドバンド20が開口部12に沿って周状に設けられている。ヘッドバンド20は、一方の端部としてヘッドバンド20の外周側面であるバンド面31に被係合歯列としての複数の凹部32が形成されている分岐バンドとしての調整バンド30を有し、他方の端部としてヘッドバンド20の外周側面であるバンド面41に調整バンド30を重ね合わさせて保持する分岐バンドとしての保持バンド40を有している。保持バンド40には、そこに重ね合わされた調整バンド30の位置を保持バンド40に連結することのできるバックル50が設けられている。バックル50は、保持バンド40と調整バンド30との連結を開放操作により解除することもできる。これにより、ヘッドバンド20は、保持バンド40に重ねあわされる調整バンド30の長さの変化に応じて調整される周長に基づいて頭部に対する締め付け具合が調整されるようになっている。そして、適切に調整された締め付け状態は、バックル50が調整バンド30と保持バンド40とを連結し続けることにより維持されるようになっている。
【0031】
次に、図2を参照してヘッドバンド20について詳しく説明する。なお、図2は、帽体10から取り外されたヘッドバンド20を外周面側が示されるように展開した平面図であり、このヘッドバンド20は、帽体10に取り付けられた状態では、両端部がヘルメットの後側(後頭部側)に配置され、中央部がヘルメットの前側(顔面側)に配置される。
【0032】
ヘッドバンド20には、ヘルメットの前側から後側に渡り開口部12を半周以上該開口部12に沿って延びるメインバンド21が設けられているとともに、上述した調整バンド30及び保持バンド40がメインバンド21の後側寄りから下後側に向けて分岐されて延びるバンドとしてそれぞれ設けられている。
【0033】
メインバンド21、調整バンド30及び保持バンド40はそれぞれ、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、もしくは高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレンからなる樹脂材料から形成されている。本実施形態のLDPEは、例えば、密度0.910〜0.925[g/cm]、結晶化度45〜55[%]、融点98〜115[℃]であり、L−LDPEは、例えば、密度0.918〜0.940[g/cm]、結晶化度50〜60[%]、融点122〜124[℃]である。また、HDPEは、例えば、密度0.941〜0.970[g/cm]、結晶化度65〜85[%]、融点130〜137[℃]である。なお、ヘッドバンド20は、通常、柔らかい材料であると被り心地が向上する傾向にあるが一方、少し硬い材料であるほうが嵌合時などの強度が向上する傾向にもあることから、本実施形態では、これら被り心地と強度とに関する条件を好適な状態にすることのできる材料としてポリエチレンが選択されている。
【0034】
メインバンド21は、帽体10の内周面に対向する位置に4つのバンド係止部22を備えており、それらバンド係止部22が、各バンド係止部22に対応して帽体10の内周面に形成されている図示しないヘッドバンド取付部に嵌合されるようになっている。つまり、帽体10内側の各ヘッドバンド取付部に、対応するバンド係止部22が嵌合されることによって、ヘッドバンド20が帽体10に取り付けられる。また、メインバンド21は、後側寄りである端部側にあって、連続する2つのバンド係止部22の間に設定される分岐位置にそれぞれ分岐部23A,23Bを備えており、一方の分岐部23Aから調整バンド30が分岐され、他方の分岐部23Bから保持バンド40が分岐されている。
【0035】
調整バンド30は、一方の分岐部23Aに後側に延びるように連結されており、一方の分岐部23Aに連結される連結部33と、連結部33から後方下側に延びる中間部34と、中間部34より後方に延び、保持バンド40に重ね合わせることのできる被係合部としての調整部35とが設けられている。調整部35は保持バンド40に重ね合わせることができるように直線状に形成されているとともに、上述した複数の凹部32がバンド面31に形成されている。各凹部32は、バンド幅方向に対して直交する方向に長い矩形状に形成されているとともに、図4に示すように、バンド先端側に厚み方向に垂直な側面を有し、バンド分岐部側である基端側に厚み方向に対して傾斜する傾斜面を有している。
【0036】
図3に示すように、保持バンド40は、他方の分岐部23Bに後側下側に延びるように連結されており、他方の分岐部23Bに連結される連結部43と、連結部43から後方下側に延びる中間部44と、中間部44より後方に延び、調整バンド30を重ね合わせることのできるバンド支持部としての保持部45とが設けられている。保持部45は調整バンド30を重ね合わせることができるように直線状に形成されている。保持部45のバンド面41には、バンド先端側にはバックルを取り付けるバックル取付部46と、バックル取付部46よりもバンド分岐部側である基端側には重ね合わされた調整バンド30をバンド面41に沿わせて保持するバンド保持部47とが形成されている。
【0037】
バックル取付部46には、バンド面41から突出し、保持バンド40の延びる向きに沿って延びる2つのバックル保持部46Aが保持バンド40の幅方向に対向するように配置されている。対向する2つのバックル保持部46Aの間には、調整バンド30が挿通可能であるとともに、バックル50を嵌合可能である間隔が確保されている。つまり、バックル50はバックル取付部46に嵌め込まれることで、各側面51A,51Bをそれぞれ対応するバックル保持部46Aに対向させるようにしてバックル取付部46に取り付けられる。
【0038】
また、図4を併せ参照すると、各バックル保持部46Aにはバックル50を嵌合させるための2つの嵌合孔46a,46bが保持バンド40の延びる向きに所定の間隔を空けてそれぞれ設けられている。バンド保持部47には、バンド面41から突出する複数のかぎ爪48が保持バンド40の延びる方向に沿って2列となるように設けられているとともに、2列の間には、調整バンド30の幅以上である調整バンド30を挿通させることができる間隔が確保されている。また、各列のかぎ爪48の先端部は、他方の列方向に突出された突出部を有しているとともに、突出部とバンド面41との間に調整バンド30の厚み以上である調整バンド30を挿通させることができる間隔が確保されている。これにより、2列のかぎ爪48の間に調整バンド30が挿通されると、並列するかぎ爪48の間に調整バンド30の幅方向が保持されるとともに、突出部とバンド面41との間に調整バンド30の厚み方向が保持される。
【0039】
バックル50には、結合を解除操作するためバンド面41から離間する方向へ移動可能な自由端部である先端部51と、保持バンド40に連結される基端部52とが設けられている。本実施形態では、バックル取付部46に取り付けられたバックル50は、保持バンド40に対する調整バンド30の進入方向に対向する側である、保持バンド40の先端側にバックル50の先端部51が配置され、保持バンド40に対する調整バンド30の退出方向に対向する側である保持バンド40の基端側にバックル50の基端部52が配置される。そして、着用者が先端部51をバンドから離間させるように、先端部から基端部に力を加えるように操作すると、保持バンド40には調整バンド30から離間させる、つまり調整バンド30が保持バンド40から引き抜かれるように力が加わる。これにより、先端部51の係合解除操作が、調整バンド30を保持バンド40から引き抜かせる操作にもなり、バックル50の解除操作が、ヘッドバンド20の解除に要するバックルの係合解除及びバンドの引き抜きにかかる複数の操作を一体として行わせることができるようになる。
【0040】
図5に示すように、バックル50は、保持バンド40に嵌合固定されて調整バンド30を係止するバンド係止部材55と、調整バンド30に対するバンド係止部材55の係止を解除する解除部材70とから構成されている。
【0041】
バンド係止部材55は、2つのバックル保持部46Aの間に嵌合されるとともに、保持バンド40に重ね合わせられる調整バンド30を保持バンド40のバンド面41との間で挟み込むようになっている。バンド係止部材55には、バンド面41に当接するように配置され、バックル保持部46Aに沿う向きに延びる2つの支持部材56が設けられている。2つの支持部材56は、それぞれ対応するバックル保持部46Aに沿うように並列に対向配置されることで、調整バンド30を幅方向から挟むように配置される。
【0042】
また、バンド係止部材55には、並列に対向配置された2つの支持部材56の間隔を調整バンド30を挿通可能な間隔に維持する連絡部材57が設けられている。連絡部材57は支持部材56の先端部51に設けられている。連絡部材57は、2つの支持部材56に直交するように配置されているとともに、バンド面41との間隔が調整バンド30の厚みより長い間隔となるようにも配置されている。これにより、バンド係止部材55は、支持部材56にて支持される連絡部材57を、保持バンド40との間に挿通された調整バンド30を跨がせる態様にて支持する。
【0043】
各支持部材56には、対応するバックル保持部46Aに対向する方向、つまり他方の支持部材56に対向しない方向に突出する2つの凸部59が所定の間隔で設けられている。2つの凸部59の間には所定の間隔が確保されており、当該所定の間隔はバックル保持部46Aに設けられている2つの嵌合孔46a,46bの間隔と同じ間隔となっているため、2つの支持部材56を2つのバックル保持部46Aの間に嵌合させることで各凸部59が対応する嵌合孔46a,46bに嵌合する。これにより、バンド係止部材55がバックル保持部46Aに嵌合固定される。すなわち、バックル50が保持バンド40に取り付けられるようになる。
【0044】
また、支持部材56には、連絡部材57から基端部52寄りの位置に、各支持部材56が対向する向きに突出する凸ガイド60が設けられている。凸ガイド60は、凸ガイド60とバンド面41との間の間隔が調整バンド30の厚さよりも少し広い間隔に設定されており、バンド係止部材55に挿通された調整バンド30が、保持バンド40又は凸ガイド60に当接しつつ、凸ガイド60とバンド面41との間に保持されるようにしている。
【0045】
これにより、バンド係止部材55は、バックル保持部46Aに取り付けられた状態で、バンド面41と、2つの支持部材56と、2つの凸ガイド60とにより区画される空間に調整バンド30を挿通させることが可能になっている。
【0046】
また、バンド係止部材55には、連絡部材57から基端部52の方向に延びる片持ち梁状の付勢部としての弾性板61が設けられている。弾性板61は基端が連絡部材57に接続されているものの、2つの支持部材56の間に並列配置されている、つまり他の部分はバンド係止部材55に接続されていないため、弾性板61の先端がバンド面41の方向やバンド面41の反対方向に弾性変形することが可能となっている。
【0047】
図6に示すように、弾性板61の先端には、バンド面41に向けて係合部としての爪部62が突出している。爪部62は、断面外形が略三角形状に形成されており、弾性板61の先端(基端部52)に向く面が弾性板61に対し略直角な面、つまりバンド面41(31)に対して略直交する面として、バンド面41(31)方向に突出されている。また、爪部62は、弾性板61の基端(先端部51)に向く面が弾性板61に対し傾斜を有する面、つまりバンド面41(31)に対して傾斜する面として、バンド面41(31)方向に突出されている。さらに、バンド面41(31)方向に突出されている爪部62の先端は、凸ガイド60よりもバンド面41寄りまで延びている。このことから、弾性板61は、バンド面41と凸ガイド60との間に進入してきた調整バンド30を厚み方向に押圧する力を付勢力として爪部62に加え、その爪部62を調整バンド30のバンド面31に形成された凹部32に進入させ、嵌合させる。
【0048】
これらのことから、調整バンド30がバックル50に進入するとき、凹部32の傾斜面が爪部62の傾斜面に当接する。そのため、こうした凹部32に進入方向への力が加えられると、凹部32の傾斜面が爪部62の傾斜面を介して弾性板61を押し上げつつ進入方向へ移動するようになる。その一方、調整バンド30がバックル50から引き抜かれるとき、凹部32の垂直な側面が爪部62の垂直面に当接する。そのため、こうした凹部32に引き抜かれる方向に力が加えられると、調整バンド30の凹部32と爪部62が係合し、相互の相対位置関係を変化させられない状態となり、保持バンド40に対しする位置が保持されるようになる。
【0049】
弾性板61の爪部62よりさらに先端には、被連結部63が形成されている。被連結部63はバンド面41に対向する面を有し、当該面にバンド面41に対向する溝を有している。
【0050】
なお、バンド係止部材55は、ポリカーボネート(PC)やポリアセタール(POM)などの熱可塑性樹脂から形成されている。ポリカーボネートやポリアセタールは、調整バンド30と係合する爪部62に適切な耐久性を付与させるとともに、爪部62が係合される調整バンド30の凹部32等の摩耗を適切に抑制させることができる。また、弾性板61に適切な弾性力を付与させることもできる。なお、熱可塑性樹脂として、ポリエチレンや、ポリスチレンや、ポリ塩化ビニルなどを用いてもよい。
【0051】
各支持部材56には、基端部52側の外側側面であって、対応するバックル保持部46Aに対向する側面からバックル保持部46Aに向けて突出する円柱状の軸部64が形成されている。つまり、軸部64は、支持部材56から他方の支持部材56に対向しない方向に突出されている。なお、バックル保持部46Aは、軸部64に対応する部分に軸部64に干渉しないような凹みが形成されている。2つの軸部64は、それぞれ連絡部材57から等間隔の位置に配置されている。つまり、2つの軸部64は、保持バンド40の延びる向きに略直交するとともに、バンド面41に対して並行する1つの軸上に配置されるように形成されている。
【0052】
また、各支持部材56の間には、基端部52側の内側側面に樹脂ばね65が架設されている。樹脂ばね65は、両支持部材56の間に、さらに基端部52側に突出する当接部としての突出部66を有している。本実施形態で、樹脂ばね65は、2つの支持部材56を連結する棒状部材であり、突出部66は基端部52側に迂回するような態様で基端部52側に突出形成されている。
【0053】
図5に示すように、解除部材70は、バンド係止部材55による調整バンド30の保持バンド40への係合を解除するための部材であり、ポリカーボネート(PC)などの熱可塑性樹脂から形成されている。なお、熱可塑性樹脂として、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリスチレン、又は、ポリ塩化ビニルなどを用いてもよい。
【0054】
解除部材70は、バンド面41に並行して対向するように設けられる板状の基材71を備えているとともに、上述の先端部51が基材71において保持バンド40の先端方向に設けられ、上述の基端部52が基材71において保持バンド40の基端方向に設けられている。また、解除部材70は、基端部52にはバンド係止部材55の2つの軸部64をそれぞれ回動可能に嵌合させる2つの軸受け部72を備え、先端部51には解除部材70を操作させる操作部73を備えている。さらに、解除部材70は、軸受け部72と操作部73との間にバンド係止部材55の被連結部63にバンド面41側から当接する連結部としてのフック74と、軸受け部72から先端部51に対して離間する方向に延設される受圧部75とを備えている。なお、本実施形態においては、受圧部75に解除部材70成形用の樹脂ゲート部を設けていることから、その部分に凹部を設けて、成形後に樹脂ゲート部の樹脂が受圧部75から突出しないようにしている。
【0055】
各軸受け部72は、基材71から突出する形状に形成されており、対応する軸部64を保持する円形空間72Aが形成されているとともに、突出方向先端には、当該円形空間72Aに外部から軸部64を嵌め込むための切り込み72Bが形成されている。これにより、軸部64を嵌合された軸受け部72は、軸部64の中心軸を回動中心にして回動することができるようになる。
【0056】
操作部73は、着用者が指をかけ操作するための部分であり、指をかけ易くするための凹部が形成されている。また、指をかけやすくするためや、指により探りやすくするため、操作部73を基材71からバンド面41と反対の方向、すなわち外側方向に盛り上げるようにしてもよい。
【0057】
フック74は、係合される被連結部63をバンド面41の反対方向に引き上げるための部分であり、基材71からバンド面41に向けて突出されているとともに、先端には先端部51側に延出された返し部74Aが形成されている。返し部74Aは、基材71に対向する面に溝が形成されているとともに、当該溝を被連結部63に形成されている溝に対向させて嵌合させることができるようになっている。また、フック74は、軸受け部72と操作部73との間に設けられているため、フック74を移動させるために要する力を、てこの原理により調整させることを可能にさせている。すなわち、作用点をフック74とし、支点を軸受け部72とし、力点を操作部73とする構造により、操作部73に加えられた力が、より大きな力となってフック74に作用するようになっている。
【0058】
受圧部75は、軸受け部72から先端部51の反対方向、つまり基端部52に配置されている。基端部52は、バンド面41に近づくように傾斜されている基材71に対応するため、受圧部75は、樹脂ばね65からバンド面41に沿って突出する突出部66に当接するようになっている。
【0059】
次に、このヘルメット用のバックルの作用について、図7を参照して説明する。
図7に示すように、先端部51をバンド面31(41)から離間させる方向、図の矢印方向に押し上げると、解除部材70の基材71が軸部64を傾動中心に傾動する。この傾動に伴って、フック74がバンド面31(41)から離間する方向に移動するとともに、フック74の返し部74Aが弾性板61の被連結部63に当接し、被連結部63をバンド面31(41)から離間する方向に移動させる。被連結部63のバンド面31(41)から離間する方向への移動に伴って、弾性板61と爪部62とがバンド面31(41)から離間する方向へ移動して、爪部62は調整バンド30の凹部32から離脱するようになる。これにより、調整バンド30と保持バンド40との係合が解除され、すなわち解除部材70に作用する傾動力が当該係合の解除力に変換され、保持バンド40から調整バンド30を引き抜くことが可能となる。
【0060】
また、解除部材70の先端部51を引く際、先端部51にはバックル50を基端部52方向に押す力が印加されることため、バックル50からの基端部52方向への力が保持バンド40に印加されて保持バンド40は基端部の方向に引かれるようになる。ところで、ヘッドバンド20を緩めるためには、保持バンド40及び調整バンド30の少なくとも一方を、保持バンド40又は調整バンド30の基端部の方向に引くことに保持バンド40と調整バンド30との重ね合わせ長さを短くするようにする。つまり、解除部材70の先端部51を引くことにより、調整バンド30と保持バンド40との係合が解除されるとともに、保持バンド40はその基端部の方向に引かれるようになるため、通常、別々に操作することが必要である、バンドの解除と緩めが、一つの動作で行えるようになる。
【0061】
図7に示すように、本実施形態では、保持バンド40を右に移動させると調整バンド30が引き抜ける、つまりヘッドバンド20が緩むような構造となっている。この場合、後頭部に回した右手でバックル50を操作すると、バックル50には、先端部51を引き上げてバンドから離間させる力とともに、腕が自然な位置へ戻る方向である右方向への力も自ずと印加されるようになる。このため、上述した、バンドの解除と緩めが、手や腕の自然の動きの中で一つの動作として行うことができるようになる。
【0062】
次に、メインバンド21と、調整バンド30及び保持バンド40との分岐構造について、図8を参照して説明する。なお、他方の分岐部23Bと保持バンド40との分岐構造は、一方の分岐部23Aと調整バンド30との分岐構造に対して鏡像関係にある点が相違するものの、その他の構造は同様である。このことから、以下では、一方の分岐部23Aと調整バンド30との分岐構造について説明をする一方、他方の分岐部23Bと保持バンド40との分岐構造についてはその説明を割愛する。
【0063】
図8に示すように、メインバンド21の一方の分岐部23Aには、円状に形成された第1凸部90と、第1凸部90の外周に同心円状に形成された第2凸部91と、第2凸部91の外周に同心状に形成された第3凸部92と、第3凸部92の外周に同心円の円弧からなる第4凸部93とがそれぞれ設けられている。また、第1凸部90の中央には第1凸部90などの円の中心を含む貫通孔90Aが形成されている。第3凸部92の突端部であって外側面には、該外側面の周を4分割した円弧状からなる4つのリブ部92aが設けられている。第4凸部93は、調整バンド30が可動してもよい範囲を考慮すると、第3凸部92からメインバンド21の前側の部分に、円の中心に対して100°〜180°の範囲に設けられることが好ましく、利便性の高い可動範囲を考慮すると略170°に設けられる、つまり中心角が略170°であることが特に好ましい。この設定により、後に詳述するように、調整バンド30の必要以上の回転を抑えることができるようにしている。メインバンド21の後側の部分には、位置決めピン94が突出形成されている。
【0064】
また、調整バンド30の連結部33には、中心軸80と、中心軸80の外側に同心円状に形成された第1突出部82と、第1突出部82の外周に同心円状に形成された第2突出部83と、第2突出部83の外周に同心円状に形成された第3突出部84とが設けられている。中心軸80の先端には、調整バンド30に向いて開く形状の折り返し部81が設けられている。第3突出部84の内側周面には外周側へ凹む溝部が形成されている。連結部33から延びる中間部34には、第3突出部84の外周に沿って円弧状のピンガイド部85が凹設されている。ピンガイド部85は、中間部34に弧状に形成されている部分であって、内側の内周面が第3突出部84の外周により構成されている。またピンガイド部85は、凹部内には円弧の両端にストッパ86がそれぞれ設けられ、第3突出部84の内側内周面に対向する外側内周面には円の中心方向へ突出する複数の円弧状凸部87の間の複数の凹みからなる複数の位置決めガイド88が設けられている。
【0065】
そして、メインバンド21の一方の分岐部23Aに、調整バンド30の連結部33が嵌合される。つまり、貫通孔90Aに中心軸80が挿通されるとともに、貫通孔90Aを挿通した中心軸80の折り返し部81が開くことにより、中心軸80が貫通孔90Aから抜けないようになっている。また、第1凸部90と第2凸部91との間に形成される摺動溝には、摺動突部としての第1突出部82が嵌合され、第1突出部82と第2突出部83との間に形成される摺動溝には、摺動突部としての第2凸部91が嵌合される。第3突出部84の内周外面には第3凸部92が当接嵌合され、第3凸部92の先端のリブ部92aの折り返しが開くことにより、第3突出部84の内周外面に形成された溝部に嵌り込み、第3突出部84から第3凸部92が抜けないようになっている。さらに、第3突出部84の外周は第4凸部93に当接することで、第3突出部84の内周から第3凸部92が抜けることを防止するようにしている。
【0066】
また、ピンガイド部85には、位置決めピン94が挿入配置される。ピンガイド部85において位置決めガイド88が形成されている部分は、位置決めピン94の幅と同様の空間を内側内周面と外側内周面との間に有しているが、円弧状凸部87が設けられている部分の幅は狭くなっているため、位置決めピン94はいずれかの位置決めガイド88の位置に固定保持されるようになる。なお、円弧状凸部87が設けられている部分の幅は狭いだけなので強い力を加えることで、円弧状凸部87を隣接する他の位置決めガイド88に移動させることもできる。これにより、メインバンド21に対する調整バンド30の位置決めが確実な操作感で行われるようになるとともに、位置決め位置が好適に保持されるようになる。すなわち、調整バンド30は、ピンガイド部85の内部を円弧状凸部87が移動可能である角度に対応する角度範囲だけ一方の分岐部23Aに対して回動できるようになる。また、メインバンド21の第4凸部93に設定された中心角によれば、第4凸部93の両端部は連結部33の中心軸80を中心に調整バンド30が回転したとき、連結部33から中間部34に至る部分が当接することで、調整バンド30の必要以上の回転を抑えることが可能となる。
【0067】
ところで、ポリエチレンから形成される分岐部23Aと連結部33とは外力により歪むおそれがある。本実施形態では、分岐部23Aと連結部33とに同様の可撓性を持たせることによって、多少の撓みに対しては、分岐部23Aと連結部33とが同様に歪むことができるようになる。また、分岐部23Aと連結部33とを複数の凸部と突出部との組み合わせにより嵌合させることによって、多少の撓みに対して嵌合を維持するとともに、可動性をも維持することができるようになっている。
【0068】
以上説明したように、本実施形態のヘルメット用のバックルによれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)解除部材70の先端部51がバンドから離間する方向に回転することにより、解除部材70のフック74を介して、バンド係止部材55の爪部62に解除力が加えられ、バンド係止部材55の爪部62とバンドの調整部35との係合が解除されるようになる。この際、てこの原理を利用してのバンドの解除操作が行われるため、バンドの調整部35とバンド係止部材55の爪部62との係合を解除させるために現に要する力の強弱にかかわらず、解除部材70の先端部51の操作に要する力を適切に調整することができるようになる。
【0069】
また、バンド係止部材55の爪部62に加えられる付勢力の一部は、解除部材70のフック74を介して、解除部材70の先端部51に作用し続けることになる。そのため、バンドから離される方向への傾動力を先端部51が受けない場合、こうした先端部51は、上述した付勢力に従ってバンドに近い位置に配置されるようになる。これにより、先端部51を含む解除部材70がそれの回転範囲においてバンドに近い状態でバンドが連結されるため、こうした解除部材70を有するバックルを小型化することが可能になる。
【0070】
(2)爪部62における片持ち梁状の弾性板61が、爪部62に付勢力を加え、当該弾性板61の先端に、解除部材70のフック74が連結される。そのため、複数の凹部32と爪部62との隙間を同じ程度空けるうえでは、弾性板61の先端以外にフック74が連結される態様と比べ、弾性板61に加える力を小さくすることが可能である。そのため、バンドの調整部35とバンド係止部材55の爪部62との係合を解除するうえでは、解除部材70の先端部51に必要とされる回転力を小さくすることが可能であるから、バックルの操作性を高めることが可能にもなる。
【0071】
(3)弾性板61の先端部に対して当該先端部のバンド側からフック74が当接するため、弾性板61とバンドとの間の空間をバンド係止部材55と解除部材70との連結部位として利用することが可能になる。そのため、バックルの薄型化を図ることが可能になる。
【0072】
(4)バンド係止部材55と解除部材70とが、軸部64と該軸部64に嵌脱可能な樹脂製の軸受け部72との嵌合により一体化されるため、バンド係止部材55と解除部材70とで構成されるバックル50の組み立てが容易になる。また、バンド係止部材55と解除部材70とが軸部64を介して回動可能に構成されるようになるため、解除部材70の先端部51の回転操作も容易となるとともに、先端部51と基端部52との間に解除操作の都度かかる疲労を減らすことができる。そのため、基端部52とバンド係止部材55とが可撓性の部材で連結されているような場合に比べて、解除操作の繰り返しに対する耐久性を向上させることができるようになる。
【0073】
(5)解除操作されていない場合、解除部材70の先端部51はバンドに近い位置で保持されるようになる。そのため、バックルの小型化がより好適に行えるようになる。
(6)バンド係止部材55をバンドよりも硬質の部材を用いることで、バンド係止部材55の弾性板61が爪部62に加える付勢力、あるいはバンド係止部材55の突出部66が解除部材70に与える付勢力などを高めることができる。
【0074】
(7)バックル50によりバンドの締め付け位置を調整することができるため、着用者の感じる違和感を抑制することができる。また、バンドとしても、頭部の形状への適合性が向上し、適切な装着が期待される。
【0075】
(8)分岐部23A(23B)の摺動溝と調整バンド30や保持バンド40の摺動突部とが各々の全周に渡って嵌合するため、取付部に対して調整バンド30や保持バンド40が回動可能になる一方、これらの嵌合力が高められもするため、こうした嵌合が外れるおそれが低減される。つまり、バンドは柔軟性のある材料から構成されているため、分岐部や各バンドは外力により歪むおそれがあるが、分岐部と各バンドとの嵌合している長さが長いことから、上述した歪みに対する嵌合状態の維持力が強くなる。また、摺動溝や摺動突部が分岐部や各バンドと同じ材料から形成されているため、嵌合を維持しつつある程度歪むこともできるようにもなる。これにより、ヘルメットのヘッドバンドの柔軟性が維持されるようになる。
【0076】
(9)バンドに形成される回動可能な分岐構造に、適度な強度と柔軟性を付与することができるようになる。
(その他の実施形態)
なお上記実施形態は、以下の態様で実施することもできる。
【0077】
・上記実施形態では、バンド係止部材55の連絡部材57から爪62部まで所定の幅の弾性板61が延設されている場合について例示した。しかしこれに限らず、弾性板は爪部を調整バンドに押し付けて調整バンドの凹部に嵌合させることがでるのであればどのような形状で設けられていてもよい。例えば、図9に示すように、連絡部材57から延出される弾性板を、薄肉部61Aと爪支持部61Bとから構成してもよい。すなわち、薄肉部61Aの肉厚を連絡部材57に対して薄くしたり、薄肉部61Aの幅を爪支持部61Bに比べて狭くしたりするようにしてもよい。このように、薄肉部61Aの肉厚を変化させたり、幅を変化させたりすることによって、調整バンドに対する爪部62の押し付け圧を調整して、バックルによる解除操作に要する力を弾性板61により調整することができるようにすることができる。これにより、ヘルメット用のバックルとしての設計自由度が高くなるようになる。
【0078】
・上記実施形態では、棒状の樹脂ばね65を迂回させる態様で突出部66を設ける場合について例示した。しかしこれに限らず、支持部材に直交するように直線状に設けた樹脂ばねから突出部が突出形成されるようにして設けられてもよい。つまり、解除部材の回動軸を挟んで自由端の反対側に対してバンド面から離間する方向へ力を付勢することができるようになっていればよい。これにより、バックルの設計自由度が高まり、バックルにおける操作部材の位置保持が好適に行えるようになる。
【0079】
・上記実施形態では、解除部材70はバンド係止部材55に対して回動可能である場合について例示した。しかしこれに限らず、バンド係止部材の爪部をバンドの反対方向へ移動させるために解除部材をバンドの反対方向に操作できるのであれよい。例えば、解除部材がバンド係止部材に板状の部材により連結されるなど、解除部材がバンド係止部材に対して撓むなどして移動可能になっているのであれば、解除部材の係止部材に対する固定の態様はどのような態様であってもよい。これにより、バックル構造の自由度が向上されるようになる。
【0080】
・上記実施形態では、解除部材70とバンド係止部材55とが別部材からなる場合について例示した。しかしこれに限らず、バンド係止部材の爪部をバンドの反対方向へ移動させるために解除部材をバンドの反対方向に操作できるのであれば、解除部材とバンド係止部材とが一体の部材より形成されていてもよい。この場合、解除部材をバンド係止部材に対して撓むように形成すればよい。これにより、バックル構造の自由度が向上されるようになる。
【0081】
・上記実施形態では、解除部材70は受圧部75を付勢される場合を例示した。しかしこれに限らず、解除部材は、受圧部を付勢されなくてもよい。この場合、バンド係止部材に樹脂ばねも不要である。この場合であっても、被連結部とフックとが当接することで解除部材の操作部のバンド面からの離間を防ぐことができる。これにより、ヘルメット用のバックルとしての設計自由度が向上するようになる。
【符号の説明】
【0082】
10…帽体、12…開口部、14…折り返し部、20…ヘッドバンド、21…メインバンド、22…バンド係止部、23A…分岐部、23B…分岐部、30…調整バンド、31…バンド面、32…凹部、33…連結部、34…中間部、35…調整部、40…保持バンド、41…バンド面、43…連結部、44…中間部、45…保持部、46…バックル取付部、46A…バックル保持部、46a,46b…嵌合孔、47…バンド保持部、48…かぎ爪部、50…バックル、51…先端部、51A,51B…側面、52…基端部、55…バンド係止部材、56…支持部材、57…連絡部材、59…凸部、60…凸ガイド、61…弾性板、61A…薄肉部、61B…爪形成部、62…爪部、63…被連結部、64…軸部、65…樹脂ばね、66…突出部、70…解除部材、71…基材、72…軸受け部、72A…円形空間、72B…切り込み、73…操作部、74…フック、74A…返し部、75…受圧部、80…中心軸、81…折り返し部、82…第1突出部、83…第2突出部、84…第3突出部、85…ピンガイド部、86…ストッパ、87…円弧状凸部、88…位置決めガイド、90…第1凸部、90A…貫通孔、91…第2凸部、92…第3凸部、92a…リブ部、93…第4凸部、94…位置決めピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットの装着に用いられるバンドの一端部に設けられ、前記バンドの他端部に形成される被係合部との係合により前記バンドを連結するヘルメット用のバックルであって、
前記バンドの前記一端部に取り付けられるバンド係止部材と、
前記バンド係止部材に傾動可能に取り付けられる解除部材と、を備え、
前記バンド係止部材が、
前記被係合部と係合する係合部と、
前記係合部を前記被係合部に付勢する付勢力を前記係合部に加える付勢部と、を有し、
前記解除部材が、
前記バンド係止部材に連結された傾動中心である基端部と、
当該解除部材の傾動により前記バンドに対して接近及び離脱する先端部と、
前記基端部と前記先端部との間で前記付勢部に連結される連結部と、を有し、
前記バンドから離脱する方向への傾動力を前記先端部が受けることにより、前記連結部を介して、前記付勢力に抗した解除力が前記係合部に加えられる
ことを特徴とするヘルメット用のバックル。
【請求項2】
前記被係合部が、鋸歯状の被係合歯列を有し、
前記係合部が、前記被係合歯列に係合可能な爪部を有し、
前記付勢部が、前記爪部が連結されて該爪部に前記付勢力を加える片持ち梁とを有し、
前記連結部が、前記片持ち梁の先端に連結される
請求項1に記載のヘルメット用のバックル。
【請求項3】
前記連結部が、前記片持ち梁の先端部と係合するフックを有し、
前記フックの返しが、前記片持ち梁の先端部における前記バンド側と当接する
請求項2に記載のヘルメット用のバックル。
【請求項4】
前記バンド係止部材が、バンド面に沿って延びる軸部を有し、
前記解除部材の基端部が、前記軸部を回転可能に支持する軸受け部を有し、
前記軸受け部が、前記軸部に嵌脱可能な樹脂製である
請求項1〜3のいずれか一項に記載のヘルメット用のバックル。
【請求項5】
前記解除部材が、前記バンド係止部材における前記バンドとは反対側を覆う板状をなし、
前記バンド係止部が、前記解除部材の前記基端部における前記バンド側に当接する当接部を有し、
前記当接部が、前記解除部材の前記基端部を前記バンドに対して離脱させる方向に付勢し、前記解除部材の前記先端部を前記バンドに対して接近させる方向に付勢する
請求項1〜4のいずれか一項に記載のヘルメット用のバックル。
【請求項6】
前記バンド係止部材及び前記解除部材が、前記バンドよりも硬質の樹脂材料にて形成されている
請求項1〜5のいずれか一項に記載のヘルメット用のバックル。
【請求項7】
ヘッドバンドの設けられたヘルメットであって、
前記ヘッドバンドは、前記ヘルメットに取り付けられる取付部と、前記取付部に設けられた2つの分岐部からそれぞれ分岐され、後頭部側である後方向にてバックルを介して連結される2つの分岐バンドとを有し、
前記2つの分岐バンドのうちの一方の分岐バンドは、バンド面に被係合部を有し、
前記2つの分岐バンドのうちの他方の分岐バンドは、前記一方の分岐バンドを挿通支持するバンド支持部を備え、
前記バンド支持部が、前記2つの分岐バンドを連結させるバックルとして請求項1〜6のいずれか一項に記載のヘルメット用のバックルを有する
ことを特徴とするヘルメット。
【請求項8】
前記バンドは、前記分岐部に回動可能に連結されている
請求項7に記載のヘルメット。
【請求項9】
前記分岐部が、同心円状をなす複数の摺動溝を有し、
前記分岐バンドが、前記分岐部に対向する面に同心円状をなして複数の前記摺動溝の各々に嵌合する複数の摺動突部を有する
請求項8に記載のヘルメット。
【請求項10】
前記分岐バンドが、ポリエチレンを含む樹脂材料により形成されている
請求項8又は9に記載のヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−102839(P2013−102839A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247109(P2011−247109)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(500272347)DICプラスチック株式会社 (27)
【Fターム(参考)】