説明

ベクトルデータ伸張装置、及びベクトルデータ圧縮装置

【課題】
交差点等が頻出する都市部の道路を表示するカーナビゲーションシステムにおける道路データ等のベクトルデータの圧縮率を向上する。
【解決手段】
道路データを構成するベクトルデータ列が圧縮装置100に入力される。データ圧縮装置100のベクトル変換部130では、入力データであるXY座標の列に対して差分をとり、得られX座標およびY座標の差分データを所定のビット数毎に組み合わせて複数桁のバイト列を生成する。生成された複数桁のバイト列の各桁に対して、複数の圧縮部150で個別に圧縮を施し圧縮データを生成する。また、データ伸張装置200に入力された圧縮データから、データ圧縮装置100と逆の手順によりXY座標の列が復元される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベクトルデータを圧縮・伸張する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーションシステム(以下、カーナビとする)は、地図データを加工してユーザに交通案内情報を提供するものである。この地図データの記録手段として従来はDVD(Digital Versatile Disc)を使用していたが、近年はDVDよりも大容量、かつ高速なHDD(Hard Disk Drive)等、カーナビ内部の記録装置を使用する製品が主流になりつつある。
【0003】
HDD型のカーナビでは、道路や建物の建設・撤去等により地図データが古くなった場合、ユーザに適切な交通情報を提供するため、カーナビ内部のデータを最新のものに更新する必要がある。従来のDVD型のカーナビの場合、地図データを記録しているDVDをユーザへ販売し、ユーザが古いディスクと交換することによって容易に更新することができる。これに対してHDD型のカーナビの場合、ユーザがHDD自体の交換を行うことは困難であるため、通常は何らかの手段により地図データをHDDにコピーしなければならない。このコピーを行う手段として、地図データを記録しているDVDをカーナビに挿入してHDDへコピーする方式が一般的である。
【0004】
このとき、更新する必要がある地図データが巨大であるため、単純にデータをDVDに記録すると、DVDの枚数の増加、および更新所要時間の増加をもたらす。そのため、DVDに記録する地図データを圧縮することにより、DVD枚数や更新所要時間を短縮することが望まれている。こうした背景により、地図データを圧縮する手段として以下の技術が提案されている。
【0005】
まず、一般的な圧縮技術として、非特許文献1に記載のGZIP等の汎用のデータ圧縮技術がある。これらの技術は、一般的にデータサイズが小さくなるため有効である一方、入力データに依存しない汎用の圧縮技術であるため、地図データに特化したアプローチによってさらにデータサイズを削減する技術が提案されている。
【0006】
例えば特許文献1に記載の技術は、道路を構成する曲線を、一定距離の線分の集合として近似し、隣接する線分の間の偏角の列で道路を表現する。このように表現することによって、道路を構成するXY座標のデータ列は、偏角という1つのパラメータの列として表すことができ、データサイズを大幅に削減することができる。
【0007】
また、地図データに特化した別の圧縮方式として、特許文献2に記載の技術がある。この技術は、道路データを構成するベクトルデータを、隣り合うベクトルデータの差によって表記するものである。このように表記することにより、例えば道路が直線に近い形状の場合、隣り合うベクトルデータの差はX方向およびY方向ともにゼロに近づくため、単純にベクトルデータを記載するよりも少ない桁数で表記することができ、データサイズを削減することが可能となる。
【0008】
以上に示した技術を利用することによって、カーナビのHDDを書き換える際のデータサイズを削減することが可能となり、必要DVD枚数の削減や、更新所要時間の短縮が実現される。
【0009】
【非特許文献1】P.Deutsch,GZIP file format specification version 4.3,RFC1952,1996年5月
【特許文献1】特開2003−23357号公報
【特許文献2】特開2004−348564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の特許文献1および2に記載の技術には、以下の課題があると考えられる。
【0011】
まず、特許文献1に記載の技術は、道路を一定サイズの線分で近似して圧縮するものであるため、圧縮後のデータから元の地図データを正確に復元することは不可能である。すなわち、特許文献1に記載の技術は、いわゆる非可逆圧縮と呼ばれる技術に分類される。非可逆圧縮技術は、元データを正確に復元する必要性がない用途には非常に有効である一方、カーナビの地図データなど、データの完全性が強く求められる用途には向かない。
【0012】
次に、特許文献2に記載の技術は、データの可逆性の観点では問題はないが、この技術が有効であるケースは、道路が緩やかな直線道路である場合に限定されるという問題がある。すなわち、例えば都市部の地図のように交差点が多数あり、道路の右折・左折が頻繁に出現する場合、隣接するベクトルデータの差が必ずしもゼロに近づくとは限らず、むしろベクトルデータの差が大きな値となることにより、かえってサイズの増加を招く可能性がある。
以上の点に鑑み、本発明は、ベクトルデータの圧縮において、ベクトルデータの可逆性を有しつつ、右折・左折等の直線ではないベクトルデータ列が出現する都市部の地図データなどに対して有効なベクトルデータ圧縮、伸張装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明は、道路データ等を構成するベクトルデータ列の出現頻度を確率的に表現してデータ圧縮を行う。一般的な地図上の道路では、あるベクトルデータが存在する場合、隣接する次のベクトルの方向・サイズには確率的な偏りがある。すなわち、直線道路を構成するベクトルデータ列の場合、隣接するベクトルはほぼ同じ方向を指し、交差点を含むベクトルデータ列では、隣接するベクトルの方向はほぼ直角に曲がり、緩やかなカーブを構成するベクトルデータ列では、ベクトルの方向は一定の曲率で曲がっていく。本発明のデータ圧縮装置およびデータ伸張装置は、こうした地図データ特有の確率的な偏りを利用して地図データを圧縮するものである。
【0014】
このような確率的な偏りを利用して圧縮を行うため、本発明は、ベクトルデータを圧縮するベクトルデータ圧縮装置であって、複数の要素データからなるベクトルデータを入力するデータ入力部と、これら複数の要素データの各々を所定の桁数で分割し、分割された要素データの同位桁を組み合わせることにより複数個のデータを生成するベクトル変換部と、これら複数個のデータの各々に対して圧縮処理を行うことにより圧縮データを生成する複数の圧縮部と、得られた圧縮データを出力するデータ出力部とを備えているベクトルデータ圧縮装置を提供するものである。
【0015】
また本発明は、圧縮されたベクトルデータを伸張するベクトルデータ伸張装置であって、圧縮データを読み込むデータ入力部と、この圧縮データを伸張する所定の個数の伸張部と、所定の個数の伸張データの各々を複数成分に分割して、分割されたデータを成分毎に結合することによりベクトルデータを復元するベクトル逆変換部と、復元されたデータを出力するデータ出力部とを備えているベクトルデータ伸張装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ベクトルデータを可逆的、且つ高い圧縮率で圧縮し、伸張することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0018】
以下、図1から図8を用いて、第一の実施例の地図データ更新システムについて説明する。本実施例は、HDD更新用の地図データを圧縮してDVDに記録し、この圧縮されたデータを記録しているDVDを用いてカーナビのHDDを書き換える更新システムについてのものである。
【0019】
図1は、地図データ更新システムの全体構成図を示したものである。本システムは、データ圧縮装置100、データ伸張装置200、および更新用DVD300から構成される。
【0020】
データ圧縮装置100は、後述する制御データ321と座標データ322からなる更新データ320を記録しているデータ記録部110、データ記録部110から更新データ320を読み込み、制御データ321はデータ出力部170へ、座標データ322はベクトル変換部130へそれぞれ出力するデータ入力部120、読み込まれた座標データ322を後述の手順に従って4バイトのベクトルデータに変換するベクトル変換部130、変換されたベクトルデータ4バイトの各々の桁毎に出現頻度を記録する頻度表記録部140、頻度表記録部140を参照してベクトルデータ4バイトの各々の桁毎に出現率を取得・更新する圧縮部150、圧縮部150が出力する出現率をもとに圧縮データを生成する符号化部160、制御データ321と生成された圧縮データを更新用DVD300に記録するデータ出力部170、および圧縮方式のパラメータを入力するパラメータ入力部180から構成される。なお、このデータ圧縮装置100は、記憶部であるデータ記録部110と頻度表記録部140、入出力部であるデータ入力部120、データ出力部170、パラメータ入力部180を除くベクトル変換部130、圧縮部150、符号化部160については、以下に詳述する機能をハードウェア、或いはプログラムによるソフトウェアどちらで構成しても良い。ソフトウェア処理の場合、データ圧縮装置100は、プログラムを実行する処理部としての中央処理部(CPU)をその内部に設置することは言うまでもない。なお、次に説明するデータ伸張装置200についても同様である。
【0021】
データ伸張装置200は、更新用DVD300から制御データ321と圧縮データを読み込み、制御データ321はデータ出力部260へ、圧縮データは復号化部220へそれぞれ出力するデータ入力部210、読み込まれた圧縮データをもとに4個の出現率を復号する復号化部220、復号された4個の出現率をもとに頻度表記録部240を参照してベクトルデータ4バイトを取得し、頻度表記録部240を更新する伸張部230、ベクトルデータ4バイトの各々の桁毎に出現頻度を記録する頻度表記録部240、ベクトルデータ4バイトを座標データ322に変換するベクトル逆変換部250、制御データ321および座標データ322からなる更新データを出力するデータ出力部260、出力された更新データを記録しているデータ記録部270、および伸張方式のパラメータを設定するパラメータ設定部280から構成される。
【0022】
更新用DVD300は、一般のDVDであり、前記の更新データが記録されている。なお、本実施例においてデータ圧縮装置とデータ伸張装置間で更新データを伝送する手段はDVDに限るものではなく、IP(Internet Protocol)に代表されるネットワーク通信技術や、例えば、USB(Universal Serial Bus)に代表されるバス通信技術等を用いても構わない。
【0023】
図2は、本実施例のシステムの動作説明を行うための、地図の例を示したものである。図に示す地図310には、黒丸で示す5つの交差点P1、P2、P3、P4、P5と、線分で示す道路が記載されている。また、各交差点のXY座標は(2023、1012)、(2545、1947)、(2987、2998)、(3415、1703)、(3872、2767)である。
【0024】
図3は、本実施例の地図データ更新システムが扱う、更新データ320の構成を示したものである。更新データ320は、制御データ321および座標データ322から構成される。座標データ322は、図2に示したような交差点等のノードの座標を記載するものであり、X座標323、Y座標324の列からなる。制御データ321は、座標以外のデータ、すなわちノード間の接続や、交通規制情報等を記録している。なお、制御データ321は、本実施例の圧縮対象データではないため説明を省略する。
【0025】
以下、データ圧縮、伸張装置におけるデータ圧縮および伸張処理の手順に従って説明する。なお、以降の説明では次の関数を使用する。まず、関数「ROTL」は、第一引数の値を、第二引数が示すビット数だけ左シフトするシフト演算関数を示す。関数「ROTR」は、第一引数の値を、第二引数が示すビット数だけ右シフトするシフト演算関数を示す。関数「AND」は、二つの引数の論理積演算を示す。関数「OR」は、二つの引数の論理和演算を示す。また、説明の便宜上、データの値はBCD(Binary−Coded Decimal、二進化十進コード)によって示すが、一般の16進数や10進数でも構わない。
【0026】
図4は、データ入力部120から入力される座標データを、ベクトル変換部130において4バイトのベクトルデータに変換する処理のフローチャートを示したものである。なお、この処理の例を図5に記載する。図5は、座標データの並びに応じた3つの例を示したものであり、上から、座標データがP1、P2、P3の順に並んでいる例(直線)、P1、P2、P4の順に並んでいる例(右折1)、P2、P3、P5の順に並んでいる例(右折2)である。
【0027】
図4を用いて、ベクトル変換部130の処理を説明する。まず、XY座標データ1組に対して、直前に入力されたXY座標データとの差分dXおよびdYを計算する(ステップS131)。なお、ステップ131におけるPrevXおよびPrevYは、直前に入力された座標を記録している変数である。次に、n=3からn=0まで、合計4回の繰り返し処理を行う(ステップS132およびステップS135、S136)。この繰り返し処理の内部では、まずdXおよびdYの下位4ビットを組み合わせて、8ビットのデータを作成してV[n]に格納する(ステップS133)。次に、dXおよびdYを各々4ビットずつ右シフトし、結果をdXおよびdYに格納する(ステップS134)。この処理を4回繰り返したのち、入力されたX座標、Y座標をそれぞれPrevX、PrevYに格納して終了する(ステップS137)。
【0028】
以上の処理の例を、図5を用いて説明する。座標データがP1、P2、P3と並んでいるとき、まずP2とP1の差分を計算する。この結果、dXは0522、dYは0935となる。計算されたdX、dYを、4ビット単位で分割し、4ビットずつ組み合わせることにより、4つの1バイトデータからなる4バイトのデータ00、59、23、25が生成される。次に、P3とP2の差分を計算し、4ビット単位で組み合わせることにより、4バイトのデータ00、59、45、21が生成される。座標データがP1、P2、P4と並んでいる場合の例、およびP2、P3、P5と並んでいる場合の例も同様である。
【0029】
以上の変換の結果、直線の場合は、P2−P1およびP3−P2のどちらの結果も、生成される4バイトデータの1バイト目は00となり、2バイト目は59となる。また、右折の場合は、P4−P2およびP5−P3のどちらの結果も、生成される4バイトデータの1バイト目は09となり、2バイト目は82となる。この例は、生成される4バイトデータの各桁において、データの出現率に偏りがあることを示している。すなわち、適当な圧縮技術により、入力データの出現率の偏りを利用してデータを圧縮することが可能となる。
【0030】
図6および図7は、本実施例における圧縮部150および符号化部160による圧縮処理の一具体例を示したものである。なお、図6および図7に記載する圧縮処理は、適応型算術符号と呼ばれる公知の圧縮技術であるが、本実施例は、特定の圧縮技術に依存するものではなく、任意の圧縮技術を利用して構わない。ただ、図5に示すような都市部の道路地図データのように、入力データの出現率に偏りがある場合は、適応型算術符号の圧縮効率は向上する。図6および図7に示す適応型算術符号は、入力データ列を、0から1の間の特定区間に1対1に関連付け、この関連付けられた区間内の特定の値を、入力データに対する圧縮データとして扱う方式である。以下、この処理の概要を説明する。
【0031】
まず、図6は、1バイトの入力値を与えられた時の、図1の圧縮部150の処理の概念図を示したものである。圧縮部150は、頻度表記録部140に記録されている出現頻度表141を参照して、入力値に対応する確率区間を検索する(ステップS151)。たとえば、入力値が58である場合、58に対応する確率区間は0.21以上0.64未満である。確率区間を検索した後、出現頻度表141を更新し、入力値58の出現率を上げる(ステップS152)。ステップS151において検索された確率区間は、圧縮部150から符号化部160へ入力される。
【0032】
図7は、符号化部160への入力データ列が58、58、82、59、59であるときの、適応型算術符号による符号化部160の処理の概念図を示したものである。まず、最初の入力である58に対して、確率区間0.21以上0.64未満が選択される。そして、次の入力である58に対して、同区間内において、確率区間0.21以上0.64未満(なお実際は、この確率区間は、上述した図6における修正ステップS152により少し拡大しているが、便宜上同一区間として説明する)が選択される。すなわち、0.3003以上0.4852未満となる。このように符号化処理を繰り返すことによって、最後のデータである59が入力された際の確率区間が0.417325以上0.417327未満となった場合、この区間内の特定の値、例えば0.417325を圧縮データとする。
【0033】
このようにして符号化部160で生成された圧縮データは、制御データ321と合わせて、データ出力部170により更新用DVD300に記録される。
【0034】
以上が、データ圧縮装置100による、更新用DVD300の作成処理である。次に、データ伸張装置200による、更新用DVD300に格納されている圧縮データの伸張処理を説明する。
【0035】
図1のデータ伸張装置200では、まず、データ入力部210が更新用DVD300に格納されている制御データ321および圧縮データを読み込み、制御データ321はデータ出力部260へ、圧縮データは復号化部220へ出力する。復号化部220および伸張部230における復号処理は、図7に記載した符号化処理と同様である。すなわち、圧縮データが0.417325である場合、この値は0.21以上0.64未満であるため、頻度表記録部240を参照することにより最初のデータが58であることがわかる。同様に、確率区間を計算していくことにより、データ圧縮装置100で圧縮処理したデータ列58、58、82、59、59を復号できる。このようにして復号されたデータ列は、ベクトル逆変換部250により、XY座標データに変換される。
【0036】
図8は、ベクトル逆変換部250の処理を示すフローチャートである。ベクトル逆変換部250は、まず、変数dXおよびdYを初期化する(ステップS251)。次に、n=0からn=3までの4回の繰り返し処理を行う(ステップS252、S255、S256)。繰り返し処理の内部では、まず、伸張部230の出力である8ビットデータV[n]の上位4ビットをdXの下位4ビットに、V[n]の下位4ビットをdYの下位4ビットにセットする(ステップS253)。次に、dXおよびdYを、それぞれ4ビットずつ左へシフトする(ステップS254)。4回の繰り返し処理が終わったのち、得られたdXおよびdYを、直前のXY座標であるPrevXおよびPrevYに加算して、XY座標を取得する(ステップS257)。最後に、計算されたXY座標をPrevXおよびPrevYに記録して終了する(ステップS258)。
【0037】
以上の処理を行うことにより、圧縮データは、元の座標データ322に伸張される。データ出力部260は、伸張された座標データ322、および制御データ321を、データ記録部270に記録する。
【0038】
なお、以上の処理において、データの圧縮率をより高めるため、ベクトルデータ圧縮装置100におけるベクトル変換部130、圧縮部150の動作、およびベクトルデータ伸張装置200におけるベクトル逆変換部250、伸張部230の動作を設定可能とする構成にしても構わない。この実現手段の例を以下に示す。
【0039】
図9は、本実施例のベクトルデータ圧縮装置100におけるパラメータ入力部180が表示するパラメータ入力画面181の例を示したものである。パラメータ入力画面181には、データフォーマット入力欄182、ベクトルデータフォーマット入力欄183、圧縮レベル入力欄184が存在する。データフォーマット入力欄182には、入力データをいかなる桁数で分割するかを指定する。図9に示す例では、設定情報の先頭の文字列は「X1:4」で始まっており、これは「4ビットをX1という変数で扱う」という意味である。続く文字列も同様の意味である。次の、ベクトルデータフォーマット入力欄183には、データフォーマット入力欄182で指定されたフォーマットをどのように変換するかを指定する。図9に示す例では、「X1,Y1,・・・」となっており、これは「変数X1、Y1、・・・の順に並び替える」という意味である。最後の圧縮レベル入力欄184には、圧縮部150および伸張部230が参照する圧縮レベルを指定する。図9に示す例は、4個の圧縮部150および伸張部230における圧縮レベルを、それぞれ「6,6,3,1」とすることを意味する。
【0040】
以上のように設定した後、OKボタン185を押下することにより、設定情報がベクトル変換部130、および圧縮部150に設定され、データ出力部170を介して、制御データ321および座標データ322とともに更新用DVD300に記録される。設定情報が更新用DVD300に記録されている場合、データ伸張装置200では、データ入力部210が設定情報を読み込み、パラメータ設定部280に出力する。パラメータ設定部280では、取得した設定情報をベクトル逆変換部250および伸張部230に設定する。この設定を行った後に、データ入力部210は制御データ321および座標データ322を読み込み、データ伸張処理を行う。
【0041】
これらの処理によって、データの圧縮率をより高めることが可能となる。上述したベクトルデータ圧縮装置およびベクトルデータ伸張装置を提供することにより、更新データを交差点・直線等の地図の特徴を踏まえて圧縮し、この圧縮データを含む更新データによってデータ伸張装置200内のデータを更新することが可能となる。
【0042】
以上、図面を用いて詳述してきた本発明は、交差点等が頻出する都市部の地図データ等のベクトルデータにおいて、高い圧縮率で圧縮することができ、カーナビにおける地図更新、各種GIS(Geographic Information System、地理情報システム)、ネットワーク通信による地図データの配信等に利用可能である。なお、本発明は、地図のベクトルデータに限るものではなく、三次元ポリゴンデータ等の圧縮にも応用できる。
【0043】
尚、平面(2次元)地図であれば、X方向ベクトルおよびY方向ベクトルの代わりに、L方向ベクトルとΘ回転ベクトルを用いてもよい。また、3次元地図であれば、X方向ベクトル、Y方向ベクトルに加え、Z方向ベクトルを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第一の実施例の地図データ更新システムの全体構成図。
【図2】第一の実施例の交差点を含む地図データの例を示す図。
【図3】第一の実施例の更新用データの一例を示す構成図。
【図4】第一の実施例のベクトル符号化部の処理を示すフローチャート図。
【図5】第一の実施例のべクトル符号化部の処理の概要を示す説明図。
【図6】第一の実施例の算術符号による圧縮および伸張の処理を示す説明図。
【図7】第一の実施例の算術符号による符号化を示す説明図。
【図8】第一の実施例のベクトル逆変換部の処理を示すフローチャート図。
【図9】第一の実施例のパラメータ入力画面の例を示す図。
【符号の説明】
【0045】
100…データ圧縮装置、130…ベクトル変換部、150…圧縮部、160…符号化部、200…データ伸張装置、220…復号化部、230…伸張部、250…ベクトル逆変換部、300…更新用DVD。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮されたデータを伸張するベクトルデータ伸張装置であって、
圧縮データを読み込むデータ入力部と、
前記圧縮データを伸張して伸張データを出力する所定数の伸張部と、
所定数の前記伸張部が出力する前記伸張データ各々を複数の成分に分割し、分割した前記伸張データを成分毎に結合することによりベクトルデータを復元するベクトル逆変換部と、
復元された前記ベクトルデータを出力するデータ出力部と
を備えたベクトルデータ伸張装置。
【請求項2】
請求項1記載のベクトルデータ伸張装置であって、
前記ベクトルデータはXY座標データを含むデータであり、
前記ベクトル逆変換部で、前記伸張データ各々を分割する前記成分は、X方向成分およびY方向成分であり、
前記ベクトル逆変換部は、分割した前記伸張データをXY方向成分毎に結合することにより前記ベクトルデータを復元する
ベクトルデータ伸張装置。
【請求項3】
請求項1記載のベクトルデータ伸張装置であって、
前記ベクトル逆変換部は、分割した前記伸張データを成分毎に結合して得た結合データを、直前のデータに対する差分値として扱い、前記結合データと前記直前のデータを加算して前記データ出力部に出力する
ベクトルデータ伸張装置。
【請求項4】
請求項2記載のベクトルデータ伸張装置であって、
前記ベクトル逆変換部は、分割した前記伸張データを前記XY方向成分毎に結合して得た結合データを、直前のデータに対する差分値として扱い、前記結合データと前記直前のデータを加算して前記データ出力部に出力する
ベクトルデータ伸張装置。
【請求項5】
請求項2記載のベクトルデータ伸張装置であって、
前記ベクトルデータは地図データである
ベクトルデータ伸張装置。
【請求項6】
請求項4記載のベクトルデータ伸張装置であって、
前記ベクトルデータは地図データであり、前記座標データは道路上の座標を示す
ベクトルデータ伸張装置。
【請求項7】
請求項1記載のベクトルデータ伸張装置であって、
前記データ入力部は、前記ベクトルデータの復元に用いる設定情報を読み込むと共に、
前記設定情報を所定数の前記伸張部に設定するパラメータ設定部を更に有する
ベクトルデータ伸張装置。
【請求項8】
ベクトルデータを圧縮するベクトルデータ圧縮装置であって、
複数の要素データからなる前記ベクトルデータを入力するデータ入力部と、
複数の前記要素データ各々を所定の桁数で分割し、分割した前記要素データの同位桁を組み合わせることにより複数の結合データを生成するベクトル変換部と、
複数の前記結合データ各々を圧縮処理して圧縮データを生成する複数の圧縮部と、
複数の前記圧縮部が生成した前記圧縮データを出力するデータ出力部と
を有するベクトルデータ圧縮装置。
【請求項9】
請求項8記載のベクトルデータ圧縮装置であって、
前記データ入力部に入力される前記ベクトルデータの複数の前記要素データは、XY座標におけるX方向データおよびY方向データであり、
前記ベクトル変換部は、前記X方向データおよび前記Y方向データを一定ビット数毎に分割し、分割した前記X方向データおよび前記Y方向データのビット位置が同一であるものを組み合わせて複数の前記結合データを生成する
ベクトルデータ圧縮装置。
【請求項10】
請求項8記載のベクトルデータ圧縮装置であって、
前記ベクトル変換部は、複数の前記結合データ各々について、直前のデータに対する差分データを算出し、前記差分データを複数の前記圧縮部に出力する
ベクトルデータ圧縮装置。
【請求項11】
請求項9記載のベクトルデータ圧縮装置であって、
前記ベクトル変換部は、分割した前記X方向データおよび前記Y方向データのビット位置が同一であるものを組み合わせることにより得た複数の前記結合データ各々について、直前のデータに対する差分データを算出し、前記差分データを複数の前記圧縮部に出力する
ベクトルデータ圧縮装置。
【請求項12】
請求項9記載のベクトルデータ圧縮装置であって、
前記データ入力部に入力される前記ベクトルデータは地図データであり、前記X方向データおよび前記Y方向データは、道路上のXY座標を示す
ベクトルデータ圧縮装置。
【請求項13】
請求項11記載のベクトルデータ圧縮装置であって、
前記データ入力部に入力される前記ベクトルデータは地図データであり、前記X方向データおよび前記Y方向データは、道路上のXY座標を示す
ベクトルデータ圧縮装置。
【請求項14】
請求項8記載のベクトルデータ圧縮装置であって、
前記所定の桁数を含む前記ベクトルデータの圧縮に関する設定情報を入力するパラメータ入力部を更に有する
ベクトルデータ圧縮装置。
【請求項15】
請求項8記載のベクトルデータ圧縮装置であって、
複数の前記圧縮部における圧縮処理は、適応型算術符号である
ベクトルデータ圧縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−55308(P2009−55308A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219747(P2007−219747)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】