説明

ベッド、起き上がり検出装置、及びプログラム

【課題】ベッド利用者がベッドから起き上がる動作を、他の事象と区別して検出する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】柵を備えたベッドにおいて、前記柵をベッドの側に引く力を少なくとも検出するように配置されたセンサと、前記センサから出力される信号に基づき、前記力のデータを取得する取得手段と、前記ベッドの利用者の起き上がりを判定するために使用する基準データを格納する記録手段と、前記取得手段により取得されたデータと、前記基準データとを比較して、起き上がりか否かを判定する判定手段とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドで寝ている利用者が、ベッドの柵を用いて起き上がろうとすることを検知する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院等の施設では、一般に、患者がベッドから離れることを防止したり、ベッドから転落することを防止するために、ベッドに柵が設けられる。このような柵を備えたベッドとしては種々のものが市販されているが、例えば、柵をベッド本体に差し込むだけの差込式のもの(特許文献1参照)や、柵を折り畳むことができる折り畳み式のもの(特許文献2、特許文献3参照)等がある。また、一般に柵は取り外し可能となっており、ベッド本体の差込口に柵を取り付けて使用する。
【0003】
病院等の施設において、柵が設けられた状態のベッドから患者が降りる場合、介護者が柵を折り畳みの状態等にするのが普通であるが、患者によっては介護者が見ていないときに柵の上を乗り越えてベッドから降りようとする場合があり、その場合には転落の危険がある。また、ベッドからの乗り降りに介助が必要な状態であるにも関わらず、患者によっては自力でベッドから降りようとすることがあり、その場合には転倒や転落の危険がある。
【0004】
介護者は常に患者を見ているわけにはいかないので、患者が柵の設けられたベッドから離床しようとすることを自動的に検知することが課題となっている。
【0005】
上記の課題を解決することを目的とした従来技術としては、第1に、ベッドの柵の上部の手すりの部分に筒状の接触センサを取り付け、接触センサを介して患者が手すりを握ったことを検知した場合にナースコール等で通知するシステムが知られている(例えば、http://www.technosj.co.jp/Fukushi/Haikai/Frame/TC.htm、2005年1月検索)。
【0006】
また、第2に、特許文献4には、ベッド本体上の被介護者が、離床しようとして転落する事故を防止することを目的とした技術が開示されている。この技術では、ベッド本体における柵の取り付け部分に、柵の下方向の荷重を検出するセンサを備え、荷重が所定の弁別閾値を越えたときに被介護者が離床しようとしていると判定している。
【0007】
また、第3に、一般的に離床センサと呼ばれる、ベッドの上やベッドの横に敷くマットタイプの圧力を検知するセンサが市販されている。この離床センサは、患者の肩や腰の辺りに敷き、患者の状態がベッドから離れたことを検知してナースコール等で通知する機能を持っている。
【特許文献1】特開平10−033596号公報
【特許文献2】特開2000−245781号公報
【特許文献3】特開平09−206338号公報
【特許文献4】特開2003−190227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の第1の従来技術では、布団が接触センサの上に乗った場合、医療機器を手すりの上に一時的に置いた場合、患者以外の人間が手すりに触れた場合等、患者が手すりを握ること以外の場合でも接触センサが反応してしまい、誤通知がされ易いという問題がある。また、第1の従来技術では、筒状の形状であるため、フレーム状の柵の上部にしか設置できず、柵の縦棒部分、曲線部分に設置できないという問題や、接触センサ自体に厚みがあるため、折り畳み式の柵に設置すると、ベッドマット等と干渉するという問題もある。
【0009】
また、上記の第2の従来技術では、被介護者が柵を下方向に押す荷重を検出して離床を判定している。しかし、被介護者が柵を下方向に押すタイミングは、被介護者がベッドから起き上がった後に、被介護者がまさにベッドを乗り越えようとしているタイミングに相当し、その直後に転落する可能性がある。従って、第2の従来技術により離床と判定されて介護者に通知がなされたとしても、介護者の駆け付けが間に合わず、転落の可能性があり、転落事故防止の技術として十分でないという問題がある。
【0010】
更に、上記の第3の従来技術では、患者の体がベッドから離れ、センサに圧力がかからなくなったことを検知して、起き上がりを判定している。しかし、患者がベッドから起き上がったタイミングは、患者がベッドから降りようとする直前に相当するため、その際に転倒する可能性がある。従って、第2の従来技術と同様に、離床センサにより離床と判定されて介護者に通知がなされたとしても、介護者の駆け付けが間に合わず、転倒や転落の可能性があり、転落事故防止の技術として十分でないという問題がある。また、センサを設置する適切な位置は個人によって異なるためにセンサ設置には熟練が必要である。更に、設置位置が不適切な場合には、センサが寝返りなどにも反応してしまい、誤通知がされやすいという問題がある。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ベッド利用者がベッドから起き上がる動作を、他の事象と区別して検出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は、柵を備えたベッドであって、前記柵をベッドの側に引く力を少なくとも検出するように配置されたセンサと、前記センサから出力される信号に基づき、前記力のデータを取得する取得手段と、前記ベッドの利用者の起き上がりを判定するために使用する基準データを格納する記録手段と、前記取得手段により取得されたデータと、前記基準データとを比較して、起き上がりか否かを判定する判定手段とを有することを特徴とするベッドにより解決できる。
【0013】
また、本発明は、柵を備えたベッドの利用者の起き上がり動作を検出するための起き上がり検出装置であって、前記柵をベッドの側に引く力を少なくとも検出するように配置されたセンサから出力される信号に基づき、前記力のデータを取得する取得手段と、起き上がりを判定するために使用する基準データを格納する記録手段と、前記取得手段により取得されたデータと、前記基準データとを比較して、起き上がりか否かを判定する判定手段とを有することを特徴とする起き上がり検出装置として構成することもできる。
【0014】
また、前記センサは、前記柵の支柱における複数の面に取り付けられた複数のセンサであり、前記判定手段は、前記基準データとしての力の大きさ及びその方向と、前記複数のセンサからの信号から得られた力の大きさ及びその方向とを比較することにより、起き上がりか否かを判定するようにしてもよい。また、前記判定手段による判定結果に応じた処理を行う処理実行手段を更に備えてもよい。
【0015】
また、本発明は、上記起き上がり検出装置の機能をコンピュータに実現させるプログラムとして構成することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、柵をベッドの側に引く力を少なくとも検出するようにしたので、ベッド利用者がベッドから起き上がる動作、すなわち柵を乗り越えたり上体がベッドから起き上がるタイミングよりも早い段階の動作を、他の事象と区別して検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(システム構成)
図1に、本発明の実施の形態に係るシステム構成図を示す。図1に示すように、本実施の形態のシステムは、柵部分にセンサを備えたベッド5と、センサからの信号に基づきベッドの利用者の起き上がりを判定し、判定結果に応じた処理を実行する判定装置7(起き上がり検出装置とも呼ぶ)とを有している。更に、判定装置7には、判定装置7が判定結果を通知する相手先である外部装置9がネットワークを介して接続されている。また、図1には、以下の説明で用いる方向の定義が示されている。すなわち、ベッド利用者が寝るときの頭の方向を上方向、足の方向を下方向、ベッド内の利用者から見て柵からベッド内側を手前方向、ベッド内の利用者から見てベッドの外側を奥方向とする。なお、図1には手前側の柵の図示を省略している。また、判定装置7は、ベッドの本体内に備えられていてもよい。
【0019】
柵に取り付けられたセンサは、ベッドの利用者が柵を手前方向に引っ張る力を少なくとも検出できるものである。本実施の形態では、少なくとも手前方向に引っ張る力を検出することにより、利用者が柵を乗り越えたり上体がベッドから起き上がるタイミングよりも早い段階の動作である、柵の支柱等を掴んで起き上がる動作を検出する。
【0020】
(センサ配置)
図2は、柵におけるセンサの配置位置の例を示す図である。なお、図2に示すベッドは、柵の上部部材とそれを支える支柱とからなる柵をベッド本体の差込口に差し込んで使用するタイプのものである。
図2は、3種類の配置の例を示しており、これらのうち少なくとも1種類のセンサが備えられていればよい。センサ配置位置1は、圧力センサを柵の上部の部材と支柱との接合部分の、支柱の側面に取り付けるものである。センサ配置位置2は、圧力センサをベッド本体と柵との接合部分の、支柱の側面に取り付けるものである。また、センサ配置位置3は、歪みセンサを柵の支柱の中央近辺の側面に取り付けるものである。なお、センサ配置位置1は、柵の上部の部材が、ベッド本体と他の部材(例えばベッド上側の側板等)を介して接続されている場合に有効である。
【0021】
図3は、センサを支柱に取り付けた状態での、支柱の水平方向の断面図である。方向は図3内共通で図3(a)に示すとおりである。図3(a)に示すように、断面が四角形の支柱の各側面に圧力センサ11〜14を取り付けることにより、水平面上の全ての方向の力を検出できる。手前方向に引っ張る力を検出するだけであれば、図3(b)に示すように、支柱の手前方向側の側面のみに圧力センサ11を取り付ければよい。また、四角形ではなく円柱の支柱の場合には、例えば、図3(c)、図3(d)のように取り付けることができる。また、支柱側でなく、センサ配置位置1であれば柵の上部部材側、センサ配置位置2であればベッド本体の柵差込口側に圧力センサを取り付けてもよい。その場合の断面例を図3(e)に示す。なお、圧力センサとしては、薄膜にした感圧導電性ゴム、ピエゾセンサ等を用いることができる。
【0022】
図3(f)は、歪みセンサを支柱に取り付けた状態での支柱の水平方向の断面図である。図3(f)に示すように2面に歪みセンサ15、16を取り付けるほか、全方向を検出可能とするために、4面に取り付けてもよい。歪みセンサとしては、ひずみゲージとして一般に市販されているものを使用することが可能である。歪みセンサでは、支柱に向かい合うように配置された2枚の歪みセンサの出力値の差分を用いることにより、歪みの方向(内側、外側)と歪みの大きさを求め、それに基づき力の大きさと向きを求めることが可能である。
【0023】
圧力センサもしくは歪みセンサは、例えば、ベッドの利用者が握る可能性が高い1本の支柱に取り付けてもよいし、当該支柱の周辺の複数の支柱に取り付けるようにしてもよい。なお、1本の支柱に取り付ける場合において、利用者がその支柱でなくその支柱の近くを握った場合でも、力を検出することは可能である。
【0024】
また、図2に示したようなタイプの柵以外の場合でも、ベッド本体と柵を取り付ける部分であって、柵からベッド本体に力が作用する部分であれば圧力センサを取り付けることが可能である。更に、そのような部分を持たない柵であっても、柵の構造体内における接合部分等に圧力センサを組み込むことができる。また、歪みセンサを用いることにより、接合部分のない柵の場合でも力を検出することが可能である。
【0025】
(起き上がり判定方法)
次に、起き上がりの判定方法について図4を用いて説明する。
【0026】
図4は、ベッドの利用者が起き上がり動作を行うときの柵にかかる力を時系列で示したイメージ図である。なお、図はあくまでも一例を示すためのイメージ図である。
【0027】
ベッドの利用者が起き上がる時、まず、利用者は柵の支柱を掴んで自分自身の体を柵の方向に引き寄せる。従って、このときには、柵に対して主に手前方向に引く力が作用する(タイミング1)。続いて利用者は、支柱を掴んで自分の体をベッドの下方向に動かす。すなわちこのときには、柵に対して主に上方向に押す力が作用する(タイミング2)。その後、利用者は、柵の支柱もしくは柵の上部部材を掴むことにより上体を起こす動作を行う。従って、このときには、柵に対して主に手前方向に引っ張る力が作用する(タイミング3)。
【0028】
上記のように、利用者が起き上がるときには、少なくとも柵を手前方向に引っ張る力が作用することから、柵を手前方向に予め定めた力より大きな力で引っ張ることを検知したときに利用者が起き上がろうとしていることを判定できる。図4の例で言えば、予め定めた力を閾値1とすることにより、起き上がりの最初の動作を検知することができる。
【0029】
また、起き上がる際に柵に作用する力の方向をより詳細に調べることにより、その方向の力に対する閾値を設定し、動作検出の際には、その方向に当該閾値より大きな力が検出されたときに起き上がりと判定することとしてもよい。なお、力の方向は、図3(a)等のように各側面に圧力センサ等を配置すれば、各センサの設置面の法線方向の力のベクトル和を取ることにより容易に算出可能である。
【0030】
また、上記のように予め定めた方向で閾値より大きな力が得られた時点で起き上がりであると判定することの他、予め定めた方向の閾値より大きな力が所定の時間継続した場合に起き上がりであると判定することとしてもよい。この場合は、例えば起き上がり動作でないのに瞬間的に力が加わって誤判定がなされるといったことを防止できる。
【0031】
また、柵にかかる力と方向の時間変化から起き上がりを検出してもよい。例えば、図4に示したような起き上がり時の力の推移を予め実験等を行ってデータ化しておき、起き上がり検出時において、センサから得られるデータの推移と、予め記録しておいたデータとの近似性の相関値をとって、相関値が一定の値以上である場合に起き上がりと判定することができる。
【0032】
また、図4の時間変化を用いる場合において、例えば、手前方向に閾値1以上の大きさの力がかかり、次に予め定めた時間経過後に、上方向に閾値2以上の大きさの力がかかり、更に所定時間が経過した後に、再び手前方向に対して閾値3以上の大きさの力がかかると、起き上がりであると判定するようにしてもよい。
【0033】
更に、力がかかる方向、力の大きさを入力としたHMM(Hidden Markov Model)を用いて、起き上がり動作を検出することも可能である。
【0034】
また、単に力の大きさを比較するのではなく、力の積分値とそれに対応する基準データとを比較したり、また、力の変化に特徴が見られる利用者の場合には、力ベクトルの微分値(変化)とそれに対応する基準データとを比較して判定を行ってもよい。
【0035】
(判定装置)
次に、上記のような判定方法に基づいた判定を実行する判定装置について説明する。
【0036】
図5に判定装置の機能構成図を示す。この判定装置は、各種データを格納する記録部21と、各センサからの信号の入力を受けて、力のデータとして記録部21に出力するセンサ信号取得部23と、記録部21に記録されたセンサデータを読み出して、起き上がり動作の検出を行い、判定結果を出力する判定部25と、判定結果に基づく処理を実行する処理実行部27とを有している。判定装置は、ロジック回路を用いて実現してもよいし、センサからの信号を受信する回路を備えたコンピュータに、判定処理を行うプログラムを搭載したものとして実現してもよい。また、当該プログラムをCD−ROM、メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0037】
記録部21は、図6に示すように、判定基準記録領域211とセンサデータ記録領域212を有している。判定基準記録領域211には、判定のための基準データが記録される。例えば、図3(b)のような場合であって、手前方向の力の大きさのみで起き上がりを判定する場合には、その力の閾値Aが記録される。また、力の大きさとその継続時間で判定を行う場合は、閾値Bと時間が記録される。また、力の方向とその方向の力の大きさで起き上がりを判定する場合には、その方向と力の大きさの閾値Cが記録される。また、時間変化での判定を行う場合には、時間毎の方向と力が時系列データとして記録される。
【0038】
また、図6のように、判定の方法に応じた各領域に上記の各データを格納しておき、判定部25がどの領域のデータを使用するかを選択できるようにすることもできる。なお、力の向きを判定基準に含める場合において、力の向きが基準と一致すると判断できる範囲を予め定めておき、力の向きの誤差許容範囲として記録しておく。
【0039】
判定基準記録領域211へのデータ記録方法については、手動で設定する方法と、自動的に設定する方法とがある。
【0040】
手動で設定する場合の例としては、予め「力の大きさ」、「力の向き」、「時間の長さ」等を用意しておき、それを判定装置に入力する。このような具体的な値を指定する代わりに、利用者の体重のみを入力することとしてもよい。この場合、判定装置がその体重にふさわしい力の大きさを基準値として設定する。また、方向については、主要な方向に掛かる力の比という形で入力してもよい。
【0041】
自動で設定する場合の例としては、利用者に起き上がり動作を行ってもらい、例えば、手前引っ張り方向の力として得られたデータのうちの最大値の8割程度の大きさを閾値として記録する。また、時系列で方向を含む力のデータを記録しておくことにより、力の方向と大きさの時間変化で判定を行う際の基準データ(教師データ)とすることができる。また、教師データが複数ある場合には、教師データの平均値、メディアン値などを用いる。更に、HMMを用いる場合、教師データを用いてHMMの学習を行う。
【0042】
さて、記録部21におけるセンサデータ領域212には、センサ信号取得部23から出力されるセンサ毎の力のデータが、一定時間間隔で時間と対応付けて記録される。なお、歪みセンサから得られた力の場合には、力の大きさとその向きが記録される。例えば、図3(f)に示したように、手前と奥に歪みセンサを配置した場合は、力の大きさと、その力が手前方向に作用している力か、奥方向に作用している力かが記録される。
【0043】
なお、これらの記録の方法は一例であり、複数センサから求められる力の方向を含むベクトルとして記録したり、あるいは、よりセンサ信号そのものに近い値(歪みそのもの、電圧、等)で記録してもよい。また、時間と対応付けて記録されるセンサデータは、一定時間長のみ記録されるものとし、前に記録されたデータは時間の経過とともに削除されていくものとすることができる。
【0044】
(判定部の処理)
以下、図7のフローチャートを参照して、図3(f)のように向かい合う2枚の歪みセンサを用いて起き上がり検出を行う場合における判定部25の処理を説明する。なお、図7の例は、センサデータ領域212に、センサ毎の歪みの値が記録される場合の例である。
【0045】
判定部25は、順次センサデータが記録されているセンサデータ領域から、2つの歪みセンサの最新のデータを読み出す(ステップ1)。そして2つのデータの差分を算出し、力と力の向きを算出する(ステップ2)。どちら側のセンサのデータからどちら側のセンサのデータを引くかを予め決めておけば、差分結果の符号で力の向きを決定でき、歪みの大きさと、歪みセンサが付けられた柵について予め測定した求めておいた係数とから力の大きさを算出できる。
【0046】
判定部25は、力の向きがベッドの手前方向であるか否かを判定し(ステップ3)、手前方向であれば、判定基準記録領域211から取得した閾値と、センサ出力から求めた力の大きさとを比較し(ステップ4)、力の大きさが閾値より大きければ、起き上がりと判定し、結果を出力する(ステップ5)。ステップ3において手前方向でない場合、もしくは、ステップ4において力の大きさが閾値以下である場合には、次に記録されるセンサデータの取得を行い、再度上記の処理を実行する。
【0047】
次に、図3(a)に示したような4枚の圧力センサを用いて起き上がり判定を行う場合における判定部25の処理を、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0048】
まず、センサデータ領域から4枚のセンサのセンサデータを取得する(ステップ11)。そして、各センサデータから力の方向を算出する(ステップ12)。その後、力の方向が判定基準の力の方向に対して所定の範囲内にあるか否かを判定する(ステップ13)。所定の範囲内にあれば、次に、算出した力の方向での力の大きさが基準の閾値よりも大きいかどうかを判定する(ステップ14)。閾値よりも大きければ、起き上がりと判定し、判定結果を出力する(ステップ15)。上記のステップ13、ステップ14でNoの場合は、次のセンサデータに基づき上記の処理を再度実行する。なお、歪みセンサを4枚使用する場合も、図8のフローの流れと同様にして判定を行うことができる。
【0049】
次に、所定の時間長の間、力が閾値より大きくなっている場合に起き上がりと判定する場合を、歪みセンサのほうを例にとって図9のフローチャートを参照して説明する。
【0050】
まず、タイマーをリセットする(ステップ21)。続いて、2つの歪みセンサのデータを読み出す(ステップ22)。そして2つのデータの差分を算出し、力と力の向きを算出する(ステップ23)。力の向きがベッドの手前方向であるか否かを判定し(ステップ24)、手前方向であれば、判定基準記録領域211から取得した閾値と、センサ出力から求めた力の大きさとを比較し(ステップ25)、力の大きさが閾値より大きければ、タイマーが所定時間になったかを判定する(ステップ26)。ステップ24において手前方向でない場合、もしくは、ステップ25において力の大きさが閾値以下である場合には、タイマーをリセットして次に記録されるセンサデータの取得を行い、処理を再度行う。
【0051】
ステップ26において、所定時間になっていない場合、次のセンサデータを取得し、ステップ22からの処理を再度行う。ステップ26において、所定時間になった場合に、起き上がりであると判定し、結果を出力する(ステップ27)。
【0052】
次に、時系列のセンサデータを用いて判定を行う場合の例を図10を用いて説明する。以下の説明では、“力”は方向を含むものであるとする。
【0053】
まず、力を算出し、(ステップ31)、算出した力の大きさが予め定めた基準値と比較して所定値より大きいか否かを判定する(ステップ32)。これは、利用者が動作を開始したか否かを判定するためのものである。所定値より大きい場合に、上記の力のデータと判定基準となる時系列データの最初のデータとの差分の大きさを求め、これまでの累積値(最初は0)に加える(ステップ33)。そして、起き上がり動作について予め定めた所定の時間が経過したか否かを判定し(ステップ34)、経過していなければ、次のセンサデータから力を求め(ステップ35)、ステップ33、34の処理を行う。なお、ステップ33においては、基準データとしては、現時点と対応する時間のデータを用いる。
【0054】
所定の時間が経過したら、累積値と予め定めた基準値とを比較し(ステップ36)、差が所定範囲内であれば、起き上がりであると判定し、結果を出力する(ステップ37)。なお、特に時系列データを用いて判定を行う処理には種々のものがあり、上記の処理は一例に過ぎない。
【0055】
(処理実行部の処理)
上記のようにして起き上がりと判定された場合に、処理実行部27は、例えば、ナースコールのセンタ装置に起き上がりがあった旨の通知を行う。これにより、看護師等への通報がなされる。また、外部の記録装置に記録して、履歴情報として閲覧することができるように構成することもできる。
【0056】
(効果について)
上記のように、本実施の形態で説明したセンサの配置及び判定方法を用いることにより、柵に布団や他の物品がかけられたり、他の人間が手すりに触った場合と、起き上がり動作との識別が可能となる。これは、柵に布団や他の物品がかけられたり、他の人間が手すりに触った場合には、主に柵を上から押す力がかかるのに対し、本実施の形態の技術では柵を手前方向に引っ張る力を検出して起き上がりを判定しているからである。
【0057】
また、特にベッド利用者が布団をはねのけてその布団を柵に押し付ける動作を行なった場合には、柵を引っ張る方向とは逆向きの力が柵に作用するので、起き上がりと布団のはねのけ動作も区別できる。更に、機器や看護師等が柵に触れた場合も、力の向きや大きさ(判定機能の中に時間変化が含まれている場合には、時間変化も)が異なるために、起き上がり動作と区別することができる。
【0058】
更に、本実施の形態の技術では柵の上部全体をセンサで覆う必要がないので、従来の第1の技術ようなセンサの形状上の問題を解消できる。また、衛生上の問題がなく、柵の手すりのどこを使って起き上がろうとしても検出ができるという効果もある。
【0059】
また、本実施の形態の技術によれば、柵を乗り越えたり上体がベッドから起き上がるタイミングよりも早い段階の動作である、柵を掴んで上体を起こすタイミングを検出することができるため、従来の第2の技術での看護師の駆け付けが間に合わないといった問題を解消でき、ベッドからの転落事故を効果的に防止できる。
【0060】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内で種々変更・応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係るシステム構成図である。
【図2】センサの配置位置の例を示す図である。
【図3】センサを支柱に取り付けた状態での、支柱の水平方向の断面図である。
【図4】起き上がりの判定方法を説明するための図である。
【図5】判定装置の機能構成図である。
【図6】記録部21の内容を示す図である。
【図7】向かい合う2枚の歪みセンサを用いて起き上がり検出を行う場合における判定部の処理のフローチャートである。
【図8】4枚の圧力センサを用いて起き上がり判定を行う場合における判定部の処理のフローチャートである。
【図9】所定の時間の間、力が閾値より大きくなっている場合に起き上がりと判定する処理のフローチャートである。
【図10】時系列のセンサデータを用いて判定を行う場合の処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
5 ベッド
7 判定装置
9 外部装置
11〜14 圧力センサ
15、16 歪みセンサ
21 記録部
23 センサ信号取得部
25 判定部
27 処理実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柵を備えたベッドであって、
前記柵をベッドの側に引く力を少なくとも検出するように配置されたセンサと、
前記センサから出力される信号に基づき、前記力のデータを取得する取得手段と、
前記ベッドの利用者の起き上がりを判定するために使用する基準データを格納する記録手段と、
前記取得手段により取得されたデータと、前記基準データとを比較して、起き上がりか否かを判定する判定手段と
を有することを特徴とするベッド。
【請求項2】
前記センサは、前記柵における前記ベッドの側とその裏側に取り付けられた歪みセンサである請求項1に記載のベッド。
【請求項3】
前記センサは、前記柵と前記ベッドとの接合部分における前記ベッドの側に配置される圧力センサを含む請求項1に記載のベッド。
【請求項4】
前記センサは、前記柵の支柱における複数の面に取り付けられた複数のセンサであり、前記判定手段は、前記基準データとしての力の大きさ及びその方向と、前記複数のセンサからの信号から得られた力の大きさ及びその方向とを比較することにより、起き上がりか否かを判定する請求項1に記載のベッド。
【請求項5】
前記判定手段による判定結果に応じた処理を行う処理実行手段を更に有する請求項1に記載のベッド。
【請求項6】
柵を備えたベッドの利用者の起き上がり動作を検出するための起き上がり検出装置であって、
前記柵をベッドの側に引く力を少なくとも検出するように配置されたセンサから出力される信号に基づき、前記力のデータを取得する取得手段と、
起き上がりを判定するために使用する基準データを格納する記録手段と、
前記取得手段により取得されたデータと、前記基準データとを比較して、起き上がりか否かを判定する判定手段と
を有することを特徴とする起き上がり検出装置。
【請求項7】
前記センサは、前記柵の支柱における複数の面に取り付けられた複数のセンサであり、前記判定手段は、前記基準データとしての力の大きさ及びその方向と、前記複数のセンサからの信号から得られた力の大きさ及びその方向とを比較することにより、起き上がりか否かを判定する請求項6に記載の起き上がり検出装置。
【請求項8】
前記判定手段による判定結果に応じた処理を行う処理実行手段を更に有する請求項6に記載の起き上がり検出装置。
【請求項9】
柵を備えたベッドの利用者の起き上がり動作を検出するための起き上がり検出装置の機能をコンピュータに実現させるプログラムであって、前記コンピュータを、
前記柵をベッドの側に引く力を少なくとも検出するように配置されたセンサから出力される信号に基づき、前記力のデータを取得する取得手段、
起き上がりを判定するために使用する基準データを記憶装置に格納する記録手段、
前記取得手段により取得されたデータと、前記基準データとを比較して、起き上がりか否かを判定する判定手段、
として機能させるプログラム。
【請求項10】
前記センサは、前記柵の支柱における複数の面に取り付けられた複数のセンサであり、前記判定手段は、前記基準データとしての力の大きさ及びその方向と、前記複数のセンサからの信号から得られた力の大きさ及びその方向とを比較することにより、起き上がりか否かを判定する請求項9に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−223650(P2006−223650A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42568(P2005−42568)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】