説明

ベルト取付治具

【課題】プーリの側方に十分なスペースがない場合にも容易にベルトを取り付けることのできるベルト取付治具の提供。
【解決手段】覆い部29と内片27とを挟着部とする。挟着部と止着体23とで装着部32を構成する。止着体23をプーリ5に止着する。挟着部の内片27を止着体23の係合孔に係合させる。挟着部が止着体23の一部とプーリ5の一部を挟む。プーリ溝3に嵌めたベルト2が外周側から覆い部29で覆われる。ベルト2がプーリ溝3の溝底に向けて押えられる。プーリ5からのベルト2の外れが阻止される。プーリ5を回転させて、ベルト取付治具22をプーリ5と一体的に移動させる。ベルト2のうちのプーリ溝3に嵌った範囲が徐々に広がって、プーリ5にベルト2が取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面にプーリ溝を有するプーリを回転させながら、周方向に伸長可能なベルトを前記プーリ溝に取り付けるためのベルト取付治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、外周面にプーリ溝を有する複数のプーリにベルトを掛巻してなるベルト伝動機構には、ベルトを複数のプーリに取り付けてから所定のベルト張力を付与するように、テンションプーリなどの張力調整手段が設けられている。
【0003】
このような張力調整手段を不要にするため、プーリに取り付ける際に周方向に伸長させてプーリフランジを乗り越えさせるようにしたベルトが出現しており、さらに、特許文献1は、ベルトを周方向に伸長させながらプーリフランジを乗り越えさせてプーリ溝に嵌め込むためのベルト取付治具を開示している。
【0004】
図11に、特許文献1が開示するベルト取付治具を示す。ベルト取付治具101は、プーリ102に装着して使用するものであり、ベルト取付治具101よりもプーリ回転方向後方のプーリ溝103にベルト104を嵌めると共に、プーリフランジ105よりもプーリ軸方向外側に位置する保持面106にベルト104を掛けて保持するようになっている。さらに、ベルト104を他方のプーリに掛巻し、プーリ102を回転させてベルト取付治具101をプーリ回転方向前方に進め、ベルト104のうちのプーリ溝103に嵌る範囲を徐々に広げることにより、ベルト104がプーリ102に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−300172号公報(段落番号0028、0035、0036、0043、0044、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のベルト取付治具は、プーリフランジよりもプーリ軸方向外側に保持面を位置させてベルトを掛ける分、プーリの側方に例えばベルト幅と同程度のスペースを必要とする。そのため、プーリの側方に十分なスペースがある場合には、ベルトを容易に取り付けることができるものの、プーリの側方に十分なスペースがない場合には、プーリにベルト取付治具を装着してベルトを取り付けるのが難しくなりやすい。
【0007】
本発明は、プーリの側方に十分なスペースがない場合にも容易にベルトを取り付けることのできるベルト取付治具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るベルト取付治具は、周方向に伸長可能なベルトを外周面にプーリ溝を有するプーリに取り付けるためのものであり、このベルト取付治具をプーリと一体的に移動するよう装着するための装着部と、ベルトのうちのプーリ溝に嵌った部分の一部を覆ってベルトの一部のプーリ溝に嵌った状態を維持する覆い部とを備え、その装着部を、プーリに止着可能な止着体と、この止着体の一部とプーリの一部とを挟む少なくとも一対の挟着部と、から構成したものである。さらに、互いに対をなす挟着部は、ベルトの一部を止着体の一部とプーリの一部と共に挟んでベルトの一部をプーリ溝の溝底に向けて押えるよう、一方を覆い部と兼用し、他方を止着体に形成した係合部に係合可能としたものである。
【0009】
上記構成によれば、ベルトのうちのプーリ溝に嵌った部分の一部を覆い部で覆うので、従来のベルト取付治具のようにベルトをプーリの側方で保持することなく、プーリ溝からベルトが外れるのを阻止することができる。これにより、プーリの側方に十分なスペースがない場合であっても、ベルト取付治具を所定の位置に装着して、プーリを回転させながら容易にベルトを取り付けることができる。しかも、プーリの径方向におけるベルトの位置をプーリフランジの外周面と同程度に保ったままプーリの側方に導き出して保持する必要がないので、プーリを回転させながらベルトを取り付ける際のベルトの伸びを極力小さくして、ベルトやプーリ、プーリ軸などの負担を抑えることができる。
【0010】
しかも、挟着部の一方を覆い部と兼用するので、挟着部でプーリの一部を挟んでベルト取付治具を装着することによって、覆い部で、プーリ溝に嵌ったベルトを溝底に向けて押えることができる。これにより、プーリ溝からベルトが外れるのを阻止しつつ、プーリを回転させながらベルトを取り付ける際に、ベルトがプーリに対して滑るのを防止すると共に、プーリからベルト取付治具が脱落するのを防止することができる。しかも、覆い部がベルトを押えるので、ベルトの全幅を覆うことなく、ベルト幅方向における一部を覆ってベルトの外れを阻止することもでき、種々のベルト幅のベルトの取り付けに共通のベルト取付治具を採用することができる。
【0011】
さらに、止着体に形成した係合部に、覆い部と対をなす挟着部を係合するので、止着体をプーリに確実かつ安定して止着可能な構造とすると共に、係合部を挟着部と確実かつ安定して係合可能な構造として、挟着部のズレを生じにくくすることができる。これにより、他方の挟着部をプーリに直接係合する構造よりも、ベルト取付治具を安定して装着することができる。
【0012】
ここで、覆い部は、プーリの径方向外側からベルト背面の一部を覆うものであり、プーリの径方向外向きに突出させることなくプーリ溝からのベルトの外れを阻止することができ、プーリの側方及び外周側に要するスペースを極力小さくすることができる。なお、覆い部には、プーリフランジの近傍から径方向外向きに突出してベルト側面の一部を覆うものや、ベルト背面及びベルト側面の夫々一部を覆うものも採用可能である。
【0013】
この覆い部を境にして、プーリ回転方向の後方ではプーリ溝にベルトを嵌め、プーリ回転方向の前方ではプーリの軸方向手前側にベルトを通すことにより、ベルトを張力のない状態でプーリに掛けることができる。さらに、プーリを回転させたとき、これに追随して覆い部も周方向に回転するので、覆い部よりもプーリ回転方向前方でプーリの軸方向手前側を通るベルトが、半径方向外向きに移動して、プーリフランジの外周面よりも半径方向外側に至ったとき、プーリフランジを乗り越えてプーリ溝に嵌る。
【0014】
また、プーリに止着体を止着可能とするための構成として、プーリの側面に凹部が形成されている場合、この凹部に止着体を嵌合可能とした構成を例示でき、また、別の構成として、止着体に、プーリのセンターボルトに嵌合可能な嵌合部を設けた構成を例示できる。
【0015】
これらの構成によれば、凹部に止着体を嵌合させたり、止着体に設けた嵌合部をプーリのセンターボルトに嵌合させたりするだけで、ズレなどを生じさせることなく、止着体を確実かつ安定して止着することができる。
【0016】
なお、ベルト取付治具をプーリと一体的に移動させるには、ベルト取付治具の装着部を例えばプーリ軸に装着するよう構成するなど、どのような手法を採用してもよいが、ベルト取付治具を直接にプーリに固定するようにすれば、ベルト取付治具をプーリと一体的に移動させるための構造を簡単にすることができる。さらに、ベルト取付治具をプーリに固定するには、ねじ止めなど、種々の手法を採用することができ、また、ベルト取付治具がプーリとベルトとを結束可能な紐状の構造を備えることにより、ベルトをプーリに固定すると共に、ベルト背面及びベルト側面の夫々一部を覆うことができる。
【0017】
さらに、互いに対をなす挟着部の間隔を調節可能な調節ボルトを設けた構成も採用可能である。
【0018】
この構成によれば、挟着部の間隔を調節する調節ボルトを設けるので、簡単な構造を採用しつつ、対をなす挟着部でプーリ及びベルトを確実かつ必要十分な強さで挟むことができ、しかも、挟着部の間隔を調節可能なことにより、同一のベルト取付治具をプーリ径などが異なる種々のプーリに装着することができる。なお、対をなす挟着部の間隔を調節可能とするための構成としては、調節ボルトだけでなく、スプリングの付勢力やマグネットの磁力、エア圧、油圧などを利用することもできる。
【0019】
また、プーリの側面に凹部が形成されている場合、互いに対をなす挟着部を、プーリを凹部の内周側とプーリ溝の外周側とから挟むよう設定した構成も採用可能である。
【0020】
この構成によれば、プーリの側面の凹部を利用して、プーリ及びベルトを挟むことができ、プーリの外周部分を挟むだけでベルト取付治具を装着することができるので、挟着部の構造を簡単にすると共に、ベルト取付治具の小型化を図ることができる。なお、プーリの凹部を利用して外周部分を挟む代わりに、プーリのセンターボルトとプーリ溝の外周側とを挟むこともできる。
【0021】
また、装着部をプーリに止着可能な止着体とし、この止着体と覆い部とを一体に設けた構成も採用可能である。
【0022】
この構成によれば、止着体をプーリに確実かつ安定して止着可能な構造として、所定の位置からズレたり外れたりすることなく、覆い部を安定して配置することができる。
【0023】
また、プーリと接触する部位に、他の部位よりも軟質の軟質材を設けた構成も採用可能である。
【0024】
この構成によれば、例えばベルト取付治具の本体が金属で形成されている場合、プーリと接触する部位に合成樹脂やゴムなどの軟質材を設けることによって、ベルトを取り付ける際に、ベルト取付治具に接触したプーリを傷つけるのを防止することができる。ここで、本明細書において、軟質とは、二つの素材が擦れたときに、より傷がつきやすい性質をいう。
【0025】
また、プーリのフランジの一部を覆うフランジカバーを設けた構成も採用可能である。
【0026】
この構成によれば、プーリ溝に嵌まったベルトが、覆い部を境にしてプーリの軸方向手前側を通るよう、プーリフランジを乗り越える部位において、そのベルトがプーリフランジと直接に擦れて傷がつくのを防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のとおり、本発明によると、ベルトのうちのプーリ溝に嵌った部分の一部を覆い部で覆って、プーリ溝からベルトが外れるのを阻止するので、従来のようにベルトをプーリの側方で保持する必要がなく、プーリの側方に十分なスペースがない場合にも容易にベルトを取り付けることができる。さらに、ベルトをプーリ溝の溝底に向けて押えることにより、覆い部をプーリの径方向外向きに突出させることなく、かつ、覆い部でベルトの全幅を覆うことなく、ベルトの外れを阻止することができる。
【0028】
これにより、プーリの側方及び外周側に配置された他の部品と干渉することなくベルトを取り付けることができると共に、ベルト幅方向における一部を覆ってベルトの外れを阻止することができる。その結果、種々のプーリ径、ベルト幅及びレイアウトのベルト・プーリシステムにおいて、共通のベルト取付治具を用いることができ、ベルト取付治具の汎用性を高めると共に、そのコストを安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1参考形態のベルト取付治具を装着したプーリの斜視図
【図2】第1参考形態のベルト取付治具の斜視図
【図3】第1参考形態のベルト取付治具を装着したプーリの断面図
【図4】第1参考形態のベルト取付治具を用いて一対のプーリにベルトを取り付ける様子を示す図
【図5】第2参考形態のベルト取付治具を装着したプーリの斜視図
【図6】第2参考形態のベルト取付治具の斜視図
【図7】第2参考形態のベルト取付治具を装着したプーリの断面図
【図8】本発明の実施形態のベルト取付治具を装着したプーリの斜視図
【図9】本発明の実施形態のベルト取付治具の斜視図
【図10】本発明の実施形態のベルト取付治具を装着したプーリの断面図
【図11】従来のベルト取付治具を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、ベルト取付治具の第1参考形態及び第2参考形態と、本発明に係るベルト取付治具の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0031】
[第1参考形態]
図1〜図4に示すように、ベルト取付治具1は、例えばエンジンのベルト・プーリシステムにおいて、周方向に伸長可能なベルト2を外周面にプーリ溝3、4を有する例えば一対のプーリ5、6に取り付けるためのものであり、プーリ5の外周部の側方に配置される治具本体7と、ベルト2のうちのプーリ溝3に嵌った部分の一部を覆って、そのプーリ溝3に嵌った状態を維持する覆い部8と、このベルト取付治具1をプーリ5と一体的に移動するよう装着するための装着部9と、を備え、例えば側面に凹部10が形成された一方のプーリ5に装着して、このプーリ5を他方のプーリ6と共に回転させながら、ベルト2を取り付けるようになっている。
【0032】
ベルト2は、テンショナーなどの張力調整手段を不要にするよう、周方向に伸長可能とされたVリブドベルトなどであり、例えばベルト本体にポリアミドからなる心線を埋設した構造とすることによって、ベルト2がベルト・プーリシステムに取り付けられた状態で、周方向の伸び率を2〜5%に設定される。なお、ベルト2は、平ベルトなどのVリブドベルト以外のベルトであってもよい。
【0033】
治具本体7は、例えば金属製で、両端部に外片11及び内片12を有するコ字形の板状とされ、その外片11及び内片12をプーリ5の外周部の側方からそれぞれプーリ5の外周側及び凹部10に侵入させるようにして配置される。
【0034】
覆い部8は、プーリ溝3よりも幅狭で、外片11から内向きにわずかに突出するよう形成され、ベルト取付治具1をプーリ5に装着することにより、覆い部8がベルト2をプーリ溝3の溝底に向けて押えるようになっている。
【0035】
装着部9は、外片11に形成された覆い部8と、内片12に設けられた調節ボルト13とからなり、覆い部8と調節ボルト13の先端とが、プーリ5の外周部を凹部10の内周側とプーリ溝3の外周側とから挟む一対の挟着部とされる。
【0036】
調節ボルト13は、内片12に螺合されて、その先端と覆い部8との間隔を調節可能とされ、ベルト2の一部をプーリ5の外周部と共に挟むことにより、挟着部のうちの一方と兼用される覆い部8で、ベルト2をプーリ溝3の溝底に向けて必要かつ十分に押えるようになっている。
【0037】
次に、ベルト取付治具1を用いて一対のプーリ5、6にベルト2を取り付ける手順を説明する。
【0038】
図4に示すように、まず、ベルト2をプーリ6のプーリ溝4に嵌めると共に、プーリ5の外周部の側方にベルト取付治具1を配置して、プーリ5のうち、ベルト取付治具1よりもプーリ回転方向後方のプーリ溝3にベルト2を嵌める。また、ベルト取付治具1よりもプーリ回転方向前方のベルト2を、プーリフランジ14を跨がせるように引き出して、プーリ5の側方を通るようにする。この状態ではベルト2に張力は作用しておらず、プーリ5、6に容易にベルト2を掛けることができる。
【0039】
さらに、治具本体7の外片11及び内片12をそれぞれプーリ5の外周側及び凹部10に侵入させて、調節ボルト13を締め付け、覆い部8と調節ボルト13の先端とで、ベルト2の一部と共にプーリ5の外周部を径方向に挟む。これにより、ベルト取付治具1がプーリ5に装着されると共に、ベルト取付治具1の覆い部8がベルト2をプーリ溝3の溝底に向けて押える。
【0040】
次いで、例えばプーリ5のセンターボルト15に市販の工具16を装着して、プーリ5を回転させる。これにより、ベルト2を伸長させながら、ベルト取付治具1がプーリ回転方向前方に進み、ベルト2のうちのプーリ溝3に嵌る範囲が広がっていき、やがて、ベルト2が完全にプーリ溝3に嵌ってプーリ5に取り付けられる。
【0041】
その後、調節ボルト13を緩めてプーリ5からベルト取付治具1を取り外すことにより、ベルト2の取り付けが完了する。
【0042】
なお、ベルト取付治具1を装着するプーリ5は、駆動側プーリ及び被動側プーリのいずれであってもよい。また、プーリ5を回転させてベルト2を取り付けるのに、ベルト取付治具1を装着したプーリ5を直接回転させるだけでなく、他方のプーリ6を回転させることにより、ベルト2を介して、ベルト取付治具1を装着したプーリ5を回転させるようにしてもよい。
【0043】
上記構成によれば、ベルト取付治具1の覆い部8でベルト2を押えるので、従来のベルト取付治具のようにプーリ5の側方でベルト2を保持することなく、かつ、プーリ5の外周側に大きく突出することなく、プーリ5からのベルト2の外れを阻止することができる。これにより、プーリ5の側方及び外周側に十分なスペースがないプーリレイアウトであっても、他の部品等と干渉させることなく、プーリ5、6にベルト2を取り付けることができる。
【0044】
また、調節ボルト13で挟着部の間隔を調節するので、種々の形状のプーリに装着することができる。しかも、覆い部8でベルト2を全幅に渡って覆うことなく、ベルト2を必要十分に押えて、プーリ5からの外れを阻止することができるので、種々のベルト幅のベルト・プーリシステムに共通のベルト取付治具1を用いることができる。
【0045】
これにより、例えば、プーリ5のプーリ径がφ90〜180mmで、ベルト2が3リブ〜8リブ(ベルト幅が10mm〜25mm)、プーリ5の側方のクリアランスが10mm程度、プーリ5の外周側のクリアランスが5mm程度の範囲で、共通のベルト取付治具1を用いることができ、その汎用性を高めることができる。なお、ベルト取付治具1の適用範囲は、上記の範囲とは別の適用範囲に適宜設定することができる。
【0046】
また、ベルト取付治具1の覆い部8がベルト2をプーリ溝3に向けて押えるので、ベルト2のプーリ溝3に対する滑りを防止することができる。また、プーリ5の側方でベルト2を保持する従来のベルト取付治具のようにベルト2をベルト幅分だけプーリの側方に引き出す必要がなく、ベルト取付時のベルト2の伸びに伴う張力を極力小さくして、ベルト2、プーリ5、6及びプーリ軸の負担を小さくすることができる。
【0047】
[第2参考形態]
図5〜図7に示すように、第2参考形態のベルト取付治具17は、第1参考形態のベルト取付治具1とほぼ同じ構成であるが、調節ボルト13を設けることなく、コ字形の治具本体18をそのままベルト取付治具17とした構造とされる。
【0048】
覆い部19は、治具本体18の外片から突出することなく、外片がそのまま覆い部19と兼用され、この覆い部19としての外片と内片20とが、ベルト取付治具17の装着部21を構成する挟着部とされる。また、覆い部19及び内片20は、これらが接触するベルト2の背面及び凹部10の内周面と同程度の曲率を有する曲面に形成されている。
【0049】
覆い部19と内片20との間隔は、ベルト2の背面から凹部10の内周面までの距離と同程度に設定され、覆い部19及び内片20でベルト2とプーリ5の外周部とを挟むことにより、ベルト取付治具17がプーリ5に装着されると共に、ベルト2がわずかに圧縮変形されてプーリ溝3の溝底に向けて押えられる。
【0050】
上記構成によれば、第1参考形態のベルト取付治具1よりも簡単な構造を採用しつつ、第1参考形態と同様、プーリ5の側方及び外周側に十分なスペースがないプーリレイアウトであっても、他の部品等と干渉させることなく、プーリ5、6にベルト2を取り付けることができる。なお、他の構成は、第1参考形態と同じである。
【0051】
[実施形態]
図8〜図10に示すように、実施形態のベルト取付治具22は、第1参考形態及び第2参考形態のベルト取付治具1、17とほぼ同じ構成であるが、プーリ5に止着可能な止着体23が設けられている。
【0052】
止着体23は、樹脂やゴム、金属などからなる円板状とされ、その中央穴を貫通するよう、プーリ5のセンターボルト15に嵌合可能な嵌合部としての嵌合筒24がねじ止めされている。この止着体23は、プーリ5の凹部10に嵌合されると共に、嵌合筒24がプーリ5のセンターボルト15に嵌合されて、プーリ5に止着される。
【0053】
治具本体25は、例えば金属製で、外片26及び内片27を有するコ字形の板状とされ、内片27を除く部位のプーリ5と接触する側に、治具本体25よりも軟質の樹脂やゴムなどの軟質材28が設けられている。軟質材28は、プーリ5に装着した際にプーリ5に傷がつくのを防止すると共に、外片26を覆う部位がベルト取付治具22の覆い部29として機能する。
【0054】
この治具本体25は、一対の挟着部のうちの覆い部29がベルト2をプーリ溝3の溝底に向けて押えると共に、内片27が止着体23の中央付近に形成された係合部としての係合孔30に係合される。また、治具本体25は、その内端付近に螺合されたボルト31によって、止着体23と確実に一体化される。
【0055】
これにより、止着体23と、治具本体25の挟着部としての覆い部29及び内片27とがベルト取付治具22の装着部32を構成し、覆い部29と内片27とが、ベルト2とプーリの外周部とを止着体23の外周部と共に挟むようになっている。
【0056】
上記構成によれば、第1、第2参考形態と同様、プーリ5の側方及び外周側に十分なスペースがないプーリレイアウトであっても、他の部品等と干渉させることなく、プーリ5、6にベルト2を取り付けることができる。しかも、プーリ5に止着体23を確実に止着して、この止着体23に治具本体25の内片27を係合させるので、プーリ5に直接に治具本体25を装着する場合よりも、治具本体25の位置ずれをより生じにくくすることができる。なお、他の構成は、第1、第2参考形態と同じである。
【0057】
なお、上記の第1参考形態、第2参考形態及び実施形態に適宜変更を加えることができる。例えば、第1参考形態の調節ボルト13に代えて、マグネットの磁力や、スプリングの付勢力、エア圧、油圧等を利用して、プーリの一部を挟むと共に、ベルト2を押えるようにしてもよい。また、挟着部は、プーリ5の外周部を挟むだけでなく、センターボルト15とプーリ5の外周側とを挟むようにしてもよい。
【0058】
実施形態のように、止着体23と、治具本体25の挟着部としての覆い部29及び内片27とで装着部32を構成する代わりに、止着体だけで装着部を構成して、この止着体と一体に覆い部を設けることもできる。
【0059】
覆い部は、ベルト2をプーリ溝3の溝底に向けて押えるものに限らず、単に、ベルト2の背面側及び側方のいずれか又は両方を覆って、ベルト2がプーリ溝3から外れるのを阻止するものであってもよい。さらに、ベルト取付治具がベルト2とプーリ5とを結束してベルト2の背面側及び側方を覆いつつプーリ5に装着可能な紐状構造を備えてもよい。
【0060】
ベルト取付治具は、プーリ5と一体に移動するものであればよく、プーリ5に装着する代わりに、例えば、プーリ5のプーリ軸に装着するようにしてもよい。また、プーリフランジ14の一部を覆うフランジカバーを設けて、プーリフランジ14を乗り越える部位のベルト2が直接プーリフランジ14と擦れて損傷するのを防止してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1、17、22 ベルト取付治具
2 ベルト
3、4 プーリ溝
5、6 プーリ
7、18、25 治具本体
8、19、29 覆い部
9、21、32 装着部
10 凹部
11、26 外片
12、20、27 内片
13 調節ボルト
14 プーリフランジ
15 センターボルト
16 工具
23 止着体
24 嵌合筒
28 軟質材
30 係合孔
31 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に伸長可能なベルトを外周面にプーリ溝を有するプーリに取り付けるためのベルト取付治具であって、当該ベルト取付治具を前記プーリと一体的に移動するよう装着するための装着部と、前記ベルトのうちのプーリ溝に嵌った部分の一部を覆って前記ベルトの一部のプーリ溝に嵌った状態を維持する覆い部とを備え、
前記装着部は、前記プーリに止着可能な止着体と、該止着体の一部とプーリの一部とを挟む少なくとも一対の挟着部と、からなり、
互いに対をなす前記挟着部は、ベルトの一部を前記止着体の一部とプーリの一部と共に挟んでベルトの一部をプーリ溝の溝底に向けて押えるよう、一方が前記覆い部と兼用され、他方が前記止着体に形成された係合部に係合可能とされたことを特徴とするベルト取付治具。
【請求項2】
前記プーリの側面に凹部が形成され、該凹部に前記止着体が嵌合可能とされたことを特徴とする請求項1に記載のベルト取付治具。
【請求項3】
前記止着体に、プーリのセンターボルトに嵌合可能な嵌合部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト取付治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−21642(P2012−21642A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11626(P2011−11626)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【分割の表示】特願2010−158576(P2010−158576)の分割
【原出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000115245)ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社 (101)
【Fターム(参考)】