説明

ベルト固定機構及び搬送装置

【課題】タイミングベルトの固定部分の圧縮量を正確に調整可能であって、タイミングベルトの固定が緩まないベルト固定機構を提案する。
【解決手段】一面に複数の歯が並列されたタイミングベルト11を固定するベルト固定機構Bにおいて、前記歯に噛み合う歯列が成形された係合部材21と、前記タイミングベルト11の平滑面を押圧する押圧部材22と、前記タイミングベルト11を前記係合部材21と前記押圧部材22とにより所定圧で挟持した状態で前記係合部材21と前記押圧部材22とを固定する固定部材23と、前記係合部材21及び前記押圧部材22の一方に連結されて他方の前記タイミングベルト11の厚さ方向への移動を規制する規制部材24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト固定機構及び搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物や材料、工作物等を搬送する搬送装置としては、例えば、プーリにタイミングベルトを掛け渡したベルトプーリ機構を用いたものがある。このベルトプーリ機構において、タイミングベルトの端部をテーブル等に取り付けるには、タイミングベルトの規定歯数相当長を規定締付力で押圧して固定する必要があるので、専用のベルト固定機構が用いられている。
【0003】
従来のベルト固定機構の一例が、下記特許文献1に開示されている。
該特許文献1では、断面略L字型のロックプレートを、折曲部を軸に回動自在に支持し、長辺を操作辺、短辺を係合辺とし、操作辺を摘んでロックプレートを回動させることによって、係合辺でタイミングベルトに噛み合わせた係合部材を押圧することにより、タイミングベルトを固定している。
【特許文献1】特開2004−316759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タイミングベルトの取り付けには、上記のように、タイミングベルトの規定歯数相当長を規定締付力で押圧して固定し、タイミングベルトの固定部分の圧縮量を管理することが必要である。
しかしながら、上記特許文献1の技術では、タイミングベルトを簡便に固定することはできるが、タイミングベルトの圧縮量を調整することができないという問題がある。
【0005】
また、他のベルト固定機構には、タイミングベルトの取り付け及び当該取り付け時の圧縮量の調整をネジ止めで行うものがある。
上記のものとしては、例えば、一対の金属板でタイミングベルトを厚さ方向に挟み、タイミングベルトの幅方向両側で上記一対の金属板同士をネジ止めするものがある。しかしながら、これにはタイミングベルトの両側に空間が必要であるため、不都合なことがある。
【0006】
タイミングベルトの両側にネジ止めのための空間を用意できない場合等には、タイミングベルトを挟む金属板及びタイミングベルトに孔を開け、この孔にネジを通し、タイミングベルト越しに両金属板をネジ止めする手法が用いられる。
しかし、この場合には、金属板同士が接触せずに、弾性を持つタイミングベルトを介した締結となるので、締結が緩みやすくなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、タイミングベルトの固定部分の圧縮量を正確に調整可能であって、タイミングベルトの固定が緩まないベルト固定機構及び搬送装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るベルト固定機構及び搬送装置では、以下の手段を採用した。
第1の発明としては、一面に複数の歯が並列されたタイミングベルトを固定するベルト固定機構において、前記歯に噛み合う歯列が成形された係合部材と、前記タイミングベルトの平滑面を押圧する押圧部材と、前記タイミングベルトを前記係合部材と前記押圧部材とにより所定圧で挟持した状態で前記係合部材と前記押圧部材とを固定する固定部材と、前記係合部材及び前記押圧部材の一方に連結されて他方の前記タイミングベルトの厚さ方向への移動を規制する規制部材と、を備えることを特徴とするものを採用した。
【0009】
次に、上記ベルト固定機構において、前記規制部材は、前記係合部材及び前記押圧部材の一方の他方から離反する方向への移動を抑止するものを採用した。
【0010】
また、上記ベルト固定機構において、前記係合部材は、前記タイミングベルトの幅方向に平行な方向から見たとき前記規制部材と共に略コ字形状をなすように前記規制部材に連結され、前記押圧部材は、前記コ字形状で囲まれる位置に位置するものを採用した。
【0011】
更に、上記ベルト固定機構において、前記固定部材は、前記押圧部材及び前記タイミングベルトに形成された孔を通ったネジを前記係合部材に螺合させるものを採用した。
【0012】
第2の発明に係る搬送装置としては、少なくとも一対のプーリと、前記プーリに掛け渡されるタイミングベルトと、前記タイミングベルトに取り付けられ被搬送物が載置されるテーブルと、前記タイミングベルトを循環させる駆動力を発するモータと、前記テーブルと前記タイミングベルトとを固定する固定機構としての上記第1の発明のベルト固定機構と、を備えることを特徴とするものを採用した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タイミングベルトを係合部材と押圧部材とで挟み、係合部材と押圧部材とを固定部材で固定すると共に、規制部材が、係合部材と押圧部材とがタイミングベルトの厚さ方向に相対移動することを規制するので、タイミングベルトの厚さを適正値に規制することができるため、タイミングベルトの圧縮量を正確に調整でき、また、規制部材によって、タイミングベルトの弾性力が固定部材による締結を緩ませる方向に働くことを抑えられるので、固定部材による締結が緩むことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るベルト固定機構Bを備える搬送装置Aの平面図である。また、図2は、搬送装置Aの正面図であり、図3は、搬送装置Aの概略構造を示す縦断正面図である。
搬送装置Aは、ベルト張設装置M、ベルト固定機構B、テーブル1、ガイドレール2及びモータ3を備えている。
【0015】
ベルト張設装置Mは、タイミングベルト11、一対のプーリ12,13及び支持部14,15を備えている。
タイミングベルト11は、心材入りゴム製の帯状部材であり、一方の面を平滑面とされ、他方の面に歯が成形されたものである。このタイミングベルト11の両端は、テーブル1の両端に固定されて、テーブル1と合わせて無端状にされ、プーリ12,13に所定張力で掛け渡される。
【0016】
プーリ12,13は、タイミングベルト11の歯型に合う歯が外周面に成形された円盤状のものであり、中央を支持部14,15でそれぞれ支持される。
一方の支持部14は、一方のプーリ12を支持すると共に、モータ3に連結されている。そして、プーリ12を介してタイミングベルト11にモータ3の駆動力を伝達する。
他方の支持部15は、他方のプーリ13を回転自在に支持する。
【0017】
テーブル1は、搬送装置Aの搬送対象物が載置される台であって、台座1aの両端にタイミングベルト11の各端部が固定される。
ガイドレール2は、一対の長尺状のガイド面2aを上面に有する箱型の部材であって、平面を上向きにしてガイド面2a上に載置されたテーブル1を、下側からスライド自在に支持するものである。
モータ3は、プーリ12を回転させてタイミングベルト11を循環させる駆動力を発するものである。
【0018】
図4は、ベルト固定機構Bの外観を示す斜視図であり、図5は、ベルト固定機構Bの一部であるカバープレート24(後述する)を取り外した状態を示す斜視図である。
また、図6は、ベルト固定機構Bの構成を示す部分断面図である。
ベルト固定機構Bは、タイミングベルト11をテーブル1の台座1aに固定するものであって、係合板21、押圧片22、ボルト23及びカバープレート24を備えている。
【0019】
係合板21(係合部材)は、タイミングベルト11の歯型に合致する歯が規定数成形された厚板であって、テーブル1の移動方向に沿って台座1aから延出するように、テーブル1の台座1aに一体的に設けられている。
押圧片22(押圧部材)は、所定厚さに形成された略平坦な厚板であって、係合板21上のタイミングベルト11の平滑面に載置されて、この平滑面を押圧するものである。
ボルト23(固定部材、ネジ)は、足部23aと頭部23bとからなり、足部23aにネジ切りされている。
【0020】
係合板21には、ボルト23の足部23aに切られたネジが螺合するネジ孔21aが切ってある。
押圧片22には、ボルト23の足部23aが通る貫通孔22aが形成されている。この貫通孔22aと前述のネジ孔21aとは、対応する位置に形成されており、更に、タイミングベルト11にも、貫通孔22aに対応させて孔11aが形成されている。
なお、押圧片22の一方の面には、該面よりもボルト23の頭部23bを沈ませるために座刳りが形成されている。
そして、ボルト23は、押圧片22、タイミングベルト11を通って、係合板21に螺合することにより、タイミングベルト11をテーブル1に対して固定する。
【0021】
カバープレート24(規制部材)は、本発明の特徴的構成要素であって、テーブル1の移動方向に沿ってテーブル1の両端から延出するように、テーブル1の両端に固定される厚板である。
このカバープレート24は、該カバープレート24の上面がテーブル1の上面を延長し、下面が、タイミングベルト11を規定の圧縮量だけ圧縮しているときの押圧片22の上面を押さえる位置となる厚さに形成されている。
また、カバープレート24のテーブル1側端部には、テーブル1の下面に入り込む段部24aが突出させて形成されている。カバープレート24をテーブル1に取り付ける際、段部24aをテーブル1の端の下側角部に当てることによって、上記設計寸法通りに取り付けることが容易となり、したがって、タイミングベルト11の圧縮量を規定通りにすることが容易になる。
【0022】
上記構成のベルト固定機構Bを備える搬送装置Aは、モータ3の駆動力がプーリ12を介して伝達されることにより、タイミングベルト11が循環し、テーブル1が移動するという周知の動作を行う。
【0023】
次に、上記構成のベルト固定機構Bについて説明する。
本搬送装置Aにおいて、タイミングベルト11を固定する際には、まず、係合板21の歯にタイミングベルト11の端の歯を規定歯数分噛み合わせる。続いて、タイミングベルト11の平滑面に押圧片22を載置する。
そして、ボルト23の足部23aを、押圧片22の貫通孔22a及びタイミングベルト11の孔11aに通して、係合板21のネジ孔21aに螺合させる。このとき、ボルト23の螺合長さによって、タイミングベルト11の締付力を調整し、タイミングベルト11の圧縮量が規定値になるよう管理する。
【0024】
その後、カバープレート24をテーブル1の端にネジ止めする。このとき、段部24aをテーブル1の端の下面に入れ込み、段部24aをテーブル1の端の下側角部に当てることによって、容易にカバープレート24を位置決めできる。
このとき、カバープレート24の段部24aがテーブル1の下面に入らなければ、ボルト23のねじ込みが不足していると判断することができる。また、逆に、カバープレート24の下面と押圧片22の上面との間に隙間ができれば、ボルト23のねじ込みが過剰であると判断することができる。
【0025】
このように、本実施形態によれば、タイミングベルト11を係合板21と押圧片22とで挟み、係合板21と押圧片22とをボルト23で固定すると共に、カバープレート24が、係合板21と押圧片22とがタイミングベルト11の厚さ方向に相対移動することを規制するので、タイミングベルト11の厚さを適正値に規制することができるため、タイミングベルト11の圧縮量を正確に調整でき、また、カバープレート24によって、タイミングベルト11の弾性力がボルト23による締結を緩ませる方向に働くことを抑えられるので、ボルト23による締結が緩むことを防止できる。
【0026】
なお、実施にあたっては、上記実施形態に限らず、他の方法によって、ベルト固定機構を構成してもよい。
ここで、図7は、ベルト固定機構B´の他の例を示す部分断面図である。
このベルト固定機構B´と、図1〜7に示す上記実施形態におけるベルト固定機構Bとの差異は、ベルト固定機構B´にはカバープレート24がないことと、ベルト固定機構B´は座金30を備えていることである。
【0027】
座金30は、小径部30aと、この小径部30aより径が大きい大径部30bとからなり、タイミングベルト11の孔11a及び押圧片22の貫通孔22aは、小径部30aと同じ径に形成される。
また、座金30は、ボルト23の足部23aが通る孔30cを有する。
【0028】
このようなベルト固定機構B´においては、係合板21と押圧片22とは、間に座金30が存在した状態でボルト23により固定されるので、金属同士が圧接しての締結となるため、ボルト23が緩むことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るベルト固定機構を備える搬送装置の平面図である。
【図2】上記実施形態に係る搬送装置の正面図である。
【図3】上記実施形態に係る搬送装置の概略構造を示す縦断正面図である。
【図4】ベルト固定機構の外観を示す斜視図である。
【図5】ベルト固定機構の一部であるカバープレートを取り外した状態を示す斜視図である。
【図6】ベルト固定機構の構成を示す部分断面図である。
【図7】他のベルト固定機構の例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0030】
A…搬送装置、 B…ベルト固定機構、 1…テーブル、 3…モータ、 11…タイミングベルト、 12,13…プーリ、 21…係合板(係合部材)、 22…押圧片(押圧部材)、 23…ボルト(固定部材、ネジ)、 24…カバープレート(規制部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に複数の歯が並列されたタイミングベルトを固定するベルト固定機構において、
前記歯に噛み合う歯列が成形された係合部材と、
前記タイミングベルトの平滑面を押圧する押圧部材と、
前記タイミングベルトを前記係合部材と前記押圧部材とにより所定圧で挟持した状態で前記係合部材と前記押圧部材とを固定する固定部材と、
前記係合部材及び前記押圧部材の一方に連結されて他方の前記タイミングベルトの厚さ方向への移動を規制する規制部材と、
を備えることを特徴とするベルト固定機構。
【請求項2】
前記規制部材は、
前記係合部材及び前記押圧部材の一方の他方から離反する方向への移動を抑止する
ことを特徴とする請求項1に記載のベルト固定機構。
【請求項3】
前記係合部材は、前記タイミングベルトの幅方向に平行な方向から見たとき前記規制部材と共に略コ字形状をなすように前記規制部材に連結され、
前記押圧部材は、前記コ字形状で囲まれる位置に位置する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト固定機構。
【請求項4】
前記固定部材は、前記押圧部材及び前記タイミングベルトに形成された孔を通ったネジを前記係合部材に螺合させるものである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のベルト固定機構。
【請求項5】
少なくとも一対のプーリと、
前記プーリに掛け渡されるタイミングベルトと、
前記タイミングベルトに取り付けられ、被搬送物が載置されるテーブルと、
前記タイミングベルトを循環させる駆動力を発するモータと、
前記テーブルと前記タイミングベルトとを固定する固定機構としての請求項1から4のいずれかに記載のベルト固定機構と、
を備えることを特徴とする搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−14141(P2009−14141A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178409(P2007−178409)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】