説明

ベルト型濃縮機とベルト型濃縮機運転方法

【課題】分離液の洗浄液としての再利用が可能であり、機外に貯槽を有さないベルト型濃縮機を提供することである。さらに、洗浄液として再利用される分離液へのスカムの混入を低減し、洗浄ノズルの閉塞を防止する。
【解決手段】ベルト洗浄手段を備え、ベルトの下方側に分離液およびベルトを洗浄した後の洗浄排液を受けるトラフを備えるベルト型濃縮機を提供する。前記トラフはベルト進行方向に対して始端側と終端側に分割されており、始端側トラフには前記分離液を貯留する。前記貯留した分離液の一部は、前記洗浄手段に洗浄液として供給され、残りの分離液は、オーバーフローにより始端側トラフから終端側トラフへ流出し、終端側トラフから排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状のベルトを有し、分離液、洗浄排液をベルトの洗浄液として再利用することが可能な節水型のベルト型濃縮機において、機外に設けられる分離液、洗浄排液の貯槽を無くした省スペース型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚泥等の被処理物を処理する際に、汚泥固形分(SS)を水分から分離し、汚泥スラリーを濃縮するための装置の一つとして、ベルト型濃縮機が知られている。同様のベルト型濃縮機が特許文献1に開示されている。当該特許文献1に開示されているベルト型濃縮機は、フィルター状の無端ベルトに載せられたスラリーから無端ベルトを透過して得られる分離液を受ける貯槽と、これとは別に、無端ベルトの目詰まりを防ぐために、洗浄ノズルから噴出した洗浄液で無端ベルトを洗浄した後の洗浄排液を受ける貯槽を有する。これら2つの槽の貯留液は同一のライン内で混合され、一部は洗浄液として再利用され、残りは機外に排出される構成である。
本発明によって、分離液と洗浄排液を洗浄液として再利用することが可能であるが、洗浄排液にわずかながらSSが残留するため、これを洗浄液とすることで洗浄ノズルの閉塞等を引き起こす恐れがある。
特許文献2は、特許文献1に示される問題を解決すべく、分離液と洗浄排液を分割して集液した後、混合せずに前者は洗浄液として再利用、または機外に排出し、後者は処理前の汚泥スラリーに混入し、再度濃縮処理を行うベルト型濃縮機を開示している。
特許文献2では、分離液、洗浄排液を機外の貯槽に貯留させるため、貯槽が大きなスペースを必要とする。また、貯留した分離液を洗浄液として再利用しているが、分離液へのスカムの混入を防ぐ手段、及びスカムを除去する手段はなく、これを洗浄液として再利用することにより、洗浄ノズルの閉塞が頻発する恐れがある。
【特許文献1】特開昭55−27047号公報
【特許文献2】特開2008−73670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献2に記載の従来技術では、分離液、洗浄排液を機外の貯槽に貯留させるため、貯槽が大きなスペースを必要とする。また、貯留した分離液を洗浄液として再利用しているが、分離液へのスカムの混入を防ぐ手段、及びスカムを除去する手段はなく、これを洗浄液として再利用することにより、洗浄ノズルの閉塞が頻発する恐れがあった。
本発明の目的は、分離液の洗浄液としての再利用が可能であり、機外に貯槽を有さないベルト型濃縮機を提供することである。さらに、洗浄液として再利用される分離液へのスカムの混入を低減し、洗浄ノズルの閉塞を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、複数のローラ間に巻き掛けられローラの回転方向に沿って走行させられる通水性の無端ベルトを備え、前記無端ベルトの搬送面の始端側に汚泥を供給し、終端側に移送しながら汚泥中の水分を分離液として前記無端ベルトを透過させることにより汚泥を濃縮するベルト型濃縮機であって、
終端側から始端側へ戻る前記無端ベルトを洗浄液により洗浄する洗浄手段と、
前記無端ベルト下方側に前記分離液および前記無端ベルトを洗浄した後の洗浄排液を受けるトラフとを備え、前記トラフは始端側トラフと終端側トラフとに分割されており、始端側トラフには前記分離液を貯留するとともに、前記貯留した分離液を前記洗浄手段に前記洗浄液として供給する洗浄液供給手段を設けたことを特徴とするベルト型濃縮機を提供する。
【0005】
(発明の効果)
前記ベルト型濃縮機においては、分離液を洗浄液として再利用する際に、従来必要とされていた機外の貯槽を使用せず、本体の被処理物搬送面の下側底部に位置するトラフを貯槽の代替として使用する。本体底部のトラフは始端側、終端側に分割して形成されており、始端側のトラフに貯留した分離液を洗浄液として再利用する。
【0006】
<請求項2記載の発明>
請求項2記載の発明は、前記洗浄手段は、終端側トラフの上方に設置されていることを特徴とする請求項1記載のベルト型濃縮機を提供する。
【0007】
(発明の効果)
前述のように、本体底部のトラフは、始端側、終端側に分割して形成されている。ベルト洗浄手段を終端側トラフ上部に設置することにより、SSを微量含む洗浄排液は終端側トラフにのみ排出され、始端側の分離液の貯槽に混入しないような形態をとっている。
【0008】
<請求項3記載の発明>
請求項3記載の発明は、前記貯留した分離液の一部を、始端側トラフから終端側トラフへオーバーフローさせることを特徴とする請求項1または2に記載のベルト型濃縮機を提供する。
【0009】
(発明の効果)
一度ベルトを透過した分離液に、貯槽内でスカムが生じることが知られているが、スカムは浮上性があるため、分離液の上層部分を終端側トラフへオーバーフローさせることにより、スカムを終端側トラフへ移動させることが可能である。また、終端側トラフにはスカムの堆積や、ベルト洗浄時にSSが飛散して付着するため、洗浄手段が設置されるのが通常であるが、前記オーバーフローした分離液が終端側トラフに絶えず流れ込むことにより、トラフが実質的に洗浄されるため、洗浄ラインの設置を省略することが可能となる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
請求項4記載の発明は、前記貯留した分離液を始端側トラフの下部から抜き出して前記洗浄手段に供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のベルト型濃縮機を提供する。
【0011】
(発明の効果)
前述の通り、分離液中に生じるスカムは浮上性があるため、トラフの底部付近から分離液を抜き出し洗浄手段に供給することにより、洗浄配管、洗浄ノズルへのスカムの混入による閉塞を防ぐことが可能である。
【0012】
<請求項5記載の発明>
請求項5記載の発明は、前記貯留した分離液量が所定のレベルを下回った場合に、別系統から洗浄液を供給するように切り替える手段を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のベルト型濃縮機を提供する。
【0013】
(発明の効果)
機外に貯槽を有さないため、排出される分離液が必要な洗浄液量に満たない場合や、運転開始時や終了時など汚泥供給を停止した状態でのベルトの洗浄運転の場合など、分離液を洗浄液として恒常的に供給することができなくなる可能性がある。そこで、分離液を貯留する始端側トラフにレベルスイッチ等の液量レベル検出手段を配し、トラフに貯留される液量が所定のレベルを下回った場合に、機外から別系統で洗浄液を供給するシステムを構築する。
【0014】
<請求項6記載の発明>
請求項6記載の発明は、複数のローラ間に巻き掛けられローラの回転方向に沿って走行させられる通水性の無端ベルトを備え、前記無端ベルトの搬送面の始端側に汚泥を供給し、終端側に移送しながら汚泥中の水分を分離液として前記無端ベルトを透過させることにより汚泥を濃縮するベルト型濃縮機の運転方法であって、
終端側から始端側に戻る前記無端ベルトを洗浄液により洗浄する洗浄手段と、
前記無端ベルト下方側に前記分離液及び前記無端ベルトを洗浄した後の洗浄排液を始端側と終端側とに分割して受けるトラフとを配置したベルト型濃縮機を使用し、始端側トラフに前記分離液を貯留するとともに、前記貯留した分離液を前記洗浄手段に前記洗浄液として供給することを特徴とするベルト型濃縮機の運転方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、節水効果を保持しながらも、機外に貯槽を有さない省スペース型のベルト型濃縮機を提供できるとともに、製造コストの削減を図ることができる。また、洗浄液として再利用される分離液へのスカムの混入を低減し、洗浄ノズルの閉塞を防止することが可能である。さらには、排液側トラフ(終端側トラフ)の洗浄ラインを必要としないため、製造コストを削減できるとともに、メンテナンスなどのランニングコストの削減を実現できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を図面に基づき以下詳細に説明する。図1は、本発明のベルト型濃縮機の一例の概略側面図を含むフローシートである。図1において、ベルト型濃縮器本体1の円筒状のドライブロール15,テンションロール16が、断面が前後面を向くように設置されており、無端状のベルト13が、ロール15,16に巻き掛けられている。ドライブロール15は、ベルト走行減速機4に連結されており、図1に示す矢印の方向にベルトの走行及び走行速度制御を可能としている。
【0017】
ベルト13としては、樹脂製(ポリエステル等)、あるいは金属製の線材により構成されたメッシュ構造の金属ベルト等、通常ベルト型濃縮機に使用されるものを使用できる。
【0018】
下水処理過程における沈殿池等から得られた固形分を含む汚泥スラリーは、凝集剤を添加され、凝集混合槽2へ送られる。撹拌装置3により凝集剤と混合された汚泥スラリーは、流入シュート14より、走行するベルト13の始端付近に投入される。前記汚泥スラリーは、含まれる水分が重力作用により分離液としてベルト13裏面側へ透過しながらベルト13上で濃縮されるとともに、もう一方の末端(終端)側まで搬送され、排出シュート17へ排出される。前記濃縮効果を促進し、SSの回収率を向上させるため、ベルト13の上方に汚泥スラリーのすき返しと濾過面の更新を行い、濃縮を促進するためのシケイン、ベルトの終端付近に汚泥スラリーをベルトに軽く押しつけ、さらなる濃縮効果を上げるためのプレスストリップ、終端に配置されたドライブロール15近傍にベルト上の残存汚泥を掻き取るためのスクレーパーを設置することが好ましい(図示せず)。
【0019】
ベルト型濃縮機本体1のベルト下方の底部には、トラフが始端側トラフ6,終端側トラフ7に分割されて形成されている。ベルトを透過した分離液は、前記始端側トラフ6,終端側トラフ7に流下する。始端側トラフ6に流下した分離液は、運転中は始端側トラフ6の排出配管が閉じられることにより貯留されるとともに、所定の貯留量を超えると隣接する終端側トラフ7へオーバーフローにより流出する。また、終端側トラフ7に流下した分離液は、始端側トラフ6よりオーバーフローにより流出した分離液とともに、終端側トラフ7の底部に設けられた排出ノズルより機外に排出される。始端側トラフ6,終端側トラフ7を含む本体底部の幅及び長さは、ベルト幅、ベルト長(ロールに巻き掛けられた状態)よりいずれも大きく、分離液及び後述の洗浄排液をすべて受けることが可能である。
【0020】
始端側トラフ6に貯留された分離液は、始端側トラフの下部から抜き出され、洗浄液ポンプ5により自動操作三方ボールバルブ18、複式ストレーナー12を通過して、終端側トラフ7の上方に設置された洗浄ノズル9より、ベルト13の洗浄液として供給される。洗浄ノズル9は、ベルト13の終端で折り返された下側ベルトを上下方向に挟むように終端側トラフの上方に配置される。洗浄ノズル9の一方は、ベルト表側(下側)に配置され、上方向に洗浄液を噴出し、もう一方はベルト裏側(ベルト内空隙)に配置され、下方向に洗浄液を噴出する。噴出された洗浄液でベルト13のメッシュ構造の隙間に入り込んだ微量の残存SSを除くことにより、ベルト13の目詰まりが解消され連続使用が可能となる。本実施形態では、ベルトの表裏両面に洗浄ノズル9を配置しているが、いずれか一方のみの配置でもよい。
【0021】
始端側トラフ6に貯留された分離液のうち洗浄手段に供給した残りの分離液は、終端側トラフ7へトラフ幅方向全面からオーバーフローさせることにより流出し、ベルト洗浄の排水とともに終端側トラフ7の排出ノズルより機外へ排出される。始端側トラフ6に貯留された分離液にはスカムの発生が散見されるが、スカムには浮上性があり前記オーバーフローにより、前記スカムのほとんどが終端側トラフ7へ流出し、排出される。ベルト洗浄液は、ベルトの隙間に入り込んだSSを確実に除くため、高い水圧で噴出される。そのため、洗浄排液はSSを含んだ状態でかなり広範に終端側トラフ底面や壁面に分散し、該底面や壁面へのSSの付着を引き起こすが、終端側トラフ7は、前記分離液のオーバーフローにより常時洗い流されており、終端側トラフ7の底面や壁面へのSSの堆積を防ぐことができる。
【0022】
前記始端側トラフ6からの洗浄液供給経路の他に、機外から(例えば処理水など)の洗浄液供給経路も設けられている。前記始端側トラフ6底部付近に液量レベルスイッチ21が配置され、始端側トラフ6の分離液残量の検出信号に基づき、自動操作三方ボールバルブ18の切り替えを行い、前記2系統の洗浄液供給経路を適時選択、変更することにより、洗浄液を安定的に供給する。すなわち、始端側トラフ6の分離液量が十分であれば始端側トラフからの洗浄液供給経路による洗浄液供給を行い、逆に不足している場合は、機外からの洗浄液供給経路による洗浄液供給を行うことができ、連続した洗浄が可能となっている。さらに、貯留されている分離液量の低下による、洗浄液側へのスカムの流出を未然に防ぐことができ、洗浄ノズルの閉塞を防止することが可能となっている。液量レベルスイッチ21とバルブ18の設定によっては、前述の分離液オーバーフローによる終端側トラフの洗浄工程のため、一定時間、機外からの洗浄液供給に切り替えることも可能である。
【0023】
実際の運転において、始端側トラフに貯留された分離液のうち洗浄液として再利用されるのは全体の1割程度であり、ほとんどの分離液は終端側トラフにオーバーフローし、終端側トラフから機外に排出される。そのため、前記機外からの洗浄液供給経路を使用するのは、運転開始時や終了時など汚泥供給を停止した状態でのベルトの洗浄運転の場合、あるいは通常の運転が困難な状況等に限られると想定される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、下水汚泥処理など、大量のスラリー状物質の固液分離を必要とする分野において、従来の機能を保持しつつ、より製造コスト、稼働コストが低く、スペースをとらない濃縮機を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るベルト型濃縮機及び配管フローシートである。
【符号の説明】
【0026】
1…ベルト濃縮機本体
2…凝集混合槽
3…撹拌装置
4…ベルト走行減速機
5…ベルト洗浄液ポンプ
6…始端側トラフ
7…終端側トラフ
8…分離液
9…洗浄ノズル
10…ボールバルブ
11…流量計
12…複式ストレーナー
13…ベルト
14…流入シュート
15…ドライブロール
16…テンションロール
17…排出シュート
18…自動操作三方ボールバルブ
19…圧力計
20…圧力スイッチ
21…レベルスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラ間に巻き掛けられローラの回転方向に沿って走行させられる通水性の無端ベルトを備え、
前記無端ベルトの搬送面の始端側に汚泥を供給し、終端側に移送しながら汚泥中の水分を分離液として前記無端ベルトを透過させることにより汚泥を濃縮するベルト型濃縮機であって、
終端側から始端側へ戻る前記無端ベルトを洗浄液により洗浄する洗浄手段と、
前記無端ベルト下方側に前記分離液および前記無端ベルトを洗浄した後の洗浄排液を受けるトラフとを備え、
前記トラフは始端側トラフと終端側トラフとに分割されており、
始端側トラフには前記分離液を貯留するとともに、前記貯留した分離液を前記洗浄手段に前記洗浄液として供給する洗浄液供給手段を設けたことを特徴とするベルト型濃縮機。
【請求項2】
前記洗浄手段は、終端側トラフの上方に設置されていることを特徴とする請求項1記載のベルト型濃縮機。
【請求項3】
前記貯留した分離液の一部を、始端側トラフから終端側トラフへオーバーフローさせることを特徴とする請求項1または2に記載のベルト型濃縮機。
【請求項4】
前記貯留した分離液を始端側トラフの下部から抜き出して前記洗浄手段に供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のベルト型濃縮機。
【請求項5】
前記貯留した分離液量が所定のレベルを下回った場合に、別系統から洗浄液を前記洗浄手段に供給するように切り替える手段を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のベルト型濃縮機。
【請求項6】
複数のローラ間に巻き掛けられローラの回転方向に沿って走行させられる通水性の無端ベルトを備え、
前記無端ベルトの搬送面の始端側に汚泥を供給し、終端側に移送しながら汚泥中の水分を分離液として前記無端ベルトを透過させることにより汚泥を濃縮するベルト型濃縮機の運転方法であって、
終端側から始端側に戻る前記無端ベルトを洗浄液により洗浄する洗浄手段と、
前記無端ベルト下方側に前記分離液及び前記無端ベルトを洗浄した後の洗浄排液を始端側と終端側とに分割して受けるトラフとを配置したベルト型濃縮機を使用し、
始端側トラフに前記分離液を貯留するとともに、前記貯留した分離液を前記洗浄手段に前記洗浄液として供給することを特徴とするベルト型濃縮機の運転方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−137187(P2010−137187A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317974(P2008−317974)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】