説明

ベルト式脱液装置

【課題】 簡易な構成で以って高圧を用いないで効率よく脱液すること。
【解決手段】 複数のローラ21,21間に回転可能に巻回した無端構造の搬送ろ過ベルト30と、搬送ろ過ベルト30の上方に対向して配置した無端構造のトップろ過ベルト40と、トップろ過ベルト40の内方に配設した吸引装置50とを具備し、吸引装置50によりトップろ過ベルト40を通じてケーキ状の凝集固形物Cの脱液を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海洋、港湾、湖沼、若しくは河川の浚渫ヘドロや各種土木工事で発生する泥水、上下水道、またはし尿処理の水処理過程で発生する排水、または汚泥、および汚濁物質を含む工業排水や一般排水等の多量の液体を含むスラリー状物(以下「濁水」という)に凝集剤を混合してフロック化させた凝集固形物を脱液する、ベルト式脱液装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のベルト式脱液装置としては、特許文献1により公知である。
このベルト式脱液装置は有孔構造を呈する内外ふたつの搬送ベルトの一部の水平区間を重合させて配置し、等速移動するこれらのベルト間に供給した被脱液物が両ベルトの水平区間を移動する際に、内方のベルト面を濾過面として脱液して分離回収する一方、脱液されて残った残滓を両ベルトの水平区間の終端で回収し得る構成になっている。
【特許文献1】特開平6−134220号公報
【0003】
従来のベルト式脱液技術は、脱液率が低い問題があった。
また高圧フィルタープレス等による強力な圧縮力を利用して脱液する方法も知られているが、その処理コストが高くつき、そのため浚渫事業のコストアップを招いて浚渫事業の促進化を阻害する大きな要因となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは少なくとも次のひとつのベルト式脱液装置を提供することにある。
(1)高圧を用いないで脱液することが可能であること。
(2)脱液効率を改善できること。
(3)脱液コストの低減が図れること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、本願の第1発明は、濁水を凝集反応させたケーキ状の凝集固形物を脱液するベルト式脱液装置であって、複数のローラ間に回転可能に巻回した無端構造の搬送ろ過ベルトと、搬送ろ過ベルトの上方に対向して配置し、複数のローラ間に回転可能に巻回した無端構造のトップろ過ベルトと、トップろ過ベルトの内方に配設し、トップろ過ベルトの裏面を負圧吸引する吸引装置とを具備し、前記吸引装置によりトップろ過ベルトを通じてケーキ状の凝集固形物の脱液を可能に構成したことを特徴とするものである。
本願の第2発明は、前記第1発明において、重合して配置した上下一対のろ過ベルトの裏面に、ケーキ状の凝集固形物を圧搾する補助ローラを付設したことを特徴とするものである。
本願の第3発明は、前記第1発明または第2発明において、前記吸引装置がトップろ過ベルトのベルト裏面へ向けて配置した吸引ノズルと、吸引ノズルに負圧を発生する吸引ポンプとを具備することを特徴とするものである。
本願の第4発明は、前記第3発明において、吸引ノズルを補助ローラの近傍に配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は少なくとも次のひとつの効果を得ることができる。
(1)トップろ過ベルトの内方に配設した吸引装置により、トップろ過ベルトを通じてトップろ過ベルトを通じてケーキ状の凝集固形物の脱液を可能に構成したから、上下一対のろ過ベルトの挟圧による脱液との併用が可能となって、高圧を用いないでケーキ状の凝集固形物の脱液を効率よく行うことができる。
(2)上下一対のろ過ベルトに圧搾用の補助ローラを付設することでケーキ状の凝集固形物の脱液効率が格段に向上する。
(3)高額な特殊設備を不要とするので、脱液コストの低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0008】
(1)固液分離処理システムの概要
図1にベルト式脱液装置10を含む固液分離処理システムの概略図を示す。
符号10は濁液Aを凝集反応させた凝集固形物Bを貯留して定量を排出する固液分離装置、20は本発明に係るベルト式脱液装置を示す。
【0009】
固液分離装置10はタンク11と、このタンク11内に濁水Aの供給量に見合った凝集剤を供給可能な凝集剤供給装置12を具備していて、濁水Aを凝集させてタンク11内で浄水Bと凝集固形物Cに固液分離し得るようになっている。
浄水Bはタンク11外へ排出し、タンク11内に濃縮されて残留したケーキ状の凝集固形物Cをタンク11の底部の可変式のゲート13からベルト式脱液装置20へ排出できるようになっている。
【0010】
本例では固液分離装置10が濁水Aの凝集反応と浄水Bの排水を同一のタンク11内で行う形態である場合について示すが、ケーキ状の凝集固形物Bをベルト式脱液装置20へ供給できる形態であれば、公知の供給形態を適用できる。
【0011】
(2)ベルト式脱液装置
ベルト式脱液装置20は複数のローラ21,21間に回転可能に巻回した無端構造の搬送ろ過ベルト30と、搬送ろ過ベルト30の上方に対向して配置され、複数のローラ22,22間に回転可能に巻回した無端構造のトップろ過ベルト40と、トップろ過ベルト40の内方に配設し、トップろ過ベルト40の裏面を負圧吸引する吸引装置50を具備している。
搬送ろ過ベルト30とトップろ過ベルト40は同一の移動速度で回転し、後述するように凝集固形物Cが両ベルト30,40の対向した重合範囲を通過する際に、両ベルト30,40を通して凝集固形物Cの脱液が行われる。
以下、各部について詳述する。
【0012】
[搬送ろ過ベルト]
搬送ろ過ベルト30はフロック化したSSの透過を阻止し得る透水性を有する多孔質性の材料で形成されていて、搭載した搬送対象の凝集固結物B中の水分のみが自重により搬送ろ過ベルト30を透過して脱液し、搬送ろ過ベルト30の内方に配置した集水タンク23へ排水し得るようになっている。
また搬送ろ過ベルト30には所定の間隔を隔てて複数の補助ローラ24が配設されていて、これらの補助ローラ24により搬送ろ過ベルト30の上半の区間に亘って、ベルト裏面を支持する。
搬送ろ過ベルト30の排出側の内部には、ベルト裏面へ向けて噴射ノズル25が配置してあって、コンプレッサー等を通じて連続的、又は間欠的に供給されるエアを噴射ノズル25からベルト裏面へ向けて高圧噴射することで、搬送ろ過ベルト30に付着して残存した凝集固形物Cの残滓を除去すると共に、微孔内に詰ったSS粒子をきれいに除去して本来のろ過性能を持続できる構成になっている。
【0013】
[トップろ過ベルト]
トップろ過ベルト40もフロック化したSSの透過を阻止し得る透水性を有する多孔質性の材料で形成されていて、吸引装置50との協働により搬送ろ過ベルト30に搭載した搬送対象の凝集固結物B中の水分を吸引により脱液し得るようになっている。
搬送ろ過ベルト30と対向するトップろ過ベルト40の内側には所定の間隔を隔てて複数の補助ローラ26が配設されている。これらの複数の補助ローラ26によってトップろ過ベルト40の下半の区間に亘りベルト裏面を支持する。
トップろ過ベルト40の補助ローラ26の配置位置は前記した搬送ろ過ベルト30の補助ローラ24と同一鉛直線上に位置して上下一対となするように配設位置を一致させておくと、ろ過ベルト40,40の変形を抑止して効率のよい脱液を実現できる。
【0014】
上記した搬送ろ過ベルト30とトップろ過ベルト40の断面形状は、図3に示すようなフラットタイプの他に、両側を傾斜させた皿状(略U字形)タイプの何れの形態であってもよい。
図4のように、上下の搬送ろ過ベルト30とトップろ過ベルト40のの断面形状を皿状(略U字形)に形成することにより、移送中に凝集固形物Cのこぼれ落ちを回避しながら搬送することが可能となる。
【0015】
[吸引装置]
吸引装置50はトップろ過ベルト40の下半部にベルト裏面へ向けて配置した吸引ノズル51と、吸引ノズル51に負圧を発生する吸引ポンプ52と、吸引ポンプ52を駆動するモータ等の駆動原53を具備する。
吸引ノズル51はトップろ過ベルト40の下半部であれば任意の位置でよいが、補助ローラ26の近傍に配置すると、上下一対の補助ローラ25,26で挟持して圧搾した状況の下で凝集固結物B中の水分を効率的に吸引することが可能となる。
吸引ノズル51の下部の吸引口の寸法は、トップろ過ベルト40の横断幅と等しいかそれより小さいサイズとする。
【0016】
(3)脱水方法
つぎに脱水方法について説明する。
図1において、固液分離装置10のタンク11内で濁水Aに凝集剤を混合して凝集させて浄水Bと凝集固形物Cとに固液分離させ、タンク11内で濃縮したケーキ状の凝集固形物Cが開放されたゲート13を通じてベルト式脱液装置20の左方に連続して供給する。
ケーキ状の凝集固形物Cの供給量は、上下一対のろ過ベルト30,40に十分挟み込みできるだけの量とする。
【0017】
搬送ろ過ベルト30の左方に供給された凝集固形物Cは、搬送の途中に内部の浄水Bが搬送ろ過ベルト30の有孔構造のベルト面にろ過されて排水される。
【0018】
また凝集固形物Cは同一速度で移動する上下一対のろ過ベルト30,40に挟まれて搬送される。
凝集固形物Cはこの上下一対のろ過ベルト30,40に挟み込まれた状態のまま搬送される過程において、内部の浄水Bが下方の搬送ろ過ベルト30のベルト面にろ過されて排水される。
【0019】
凝集固形物Cをこの上下一対のろ過ベルト30,40に挟み込んで搬送するときに吸引装置50を稼動させて、各吸引ノズル51を通じてトップろ過ベルト40の下半部のベルト裏面を負圧吸引する。
【0020】
そのため、この上下一対のろ過ベルト30,40に挟み込まれて移送される凝集固形物Cは、トップろ過ベルト40の下半部のベルト面にろ過されて内部の浄水Cが負圧吸引されて排水される。
【0021】
殊に図2に拡大して示すように、上下一対の補助ローラ24,26で以って凝集固形物Cが圧搾されて内部の浄水Bが、一対の補助ローラ24,26の搬送方向の上流側に集まる。吸引ノズル51は上下一対の補助ローラ24,26の搬送方向の上流側に配設してあるから、上下一対の補助ローラ24,26で以って搾り出された凝集固結物C中の浄水Bを吸引ノズル51で以って効果的に吸引して排水することが可能となる。
【0022】
上記したように凝集固結物Cは上下一対のろ過ベルト30,40を通過する家庭において、上下一対の補助ローラ24,26を含む一対のろ過ベルト30,40の挟圧力と、吸引装置50の負圧吸引とにより内部の水分が上下両方向に効率的に脱液され、その含有水分量が著しく低下する。
【0023】
大半の水分を脱液された凝集固結物Cはろ過ベルト30,40の左方から排出される。
搬送ろ過ベルト30に付着して残存した凝集固形物Cの残滓やベルト面の微孔内に詰ったSS粒子は、噴射ノズル25からベルト裏面へ向けて噴射される高圧エアによって吹き飛ばされる。
したがって、搬送ろ過ベルト30は本来のろ過性能を回復する。
以上の工程を繰り返し行うことで、水分を多量に含むケーキ状の凝集固形物Cを連続して脱液処理する。
【0024】
以上は吸引装置50の吸引ノズル51を補助ローラ26の近傍に配置した場合について説明したが、吸引ノズル51はトップろ過ベルト40の裏面であれば補助ローラ26から離れた位置に設けてもよい。
【0025】
また噴射ノズル25はトップろ過ベルト40側にも設けて、トップろ過ベルト40に付着した凝集固形物Cの残滓やベルト面の微孔内に詰ったSS粒子を除去するようにしてもよい。
【0026】
また、以上は上下の補助ローラ24、26を同一鉛直線上に位置した場合について説明したが、上下の各補助ローラ24、26を、移送方向に沿ってずらして互い違いに設置してもよい。
各補助ローラ24と補助ローラ26を互い違いにすらして設置することで、各ベルト30,40が各補助ローラ24、26に接する距離を長くできることから、補助ローラ24、26の設置数を削減しつつ、脱液の効率化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るベルト式脱液装置の断面モデル図
【図2】上下一対のろ過ベルトの部分拡大断面図
【図3】フラットタイプの上下一対のろ過ベルトの断面図
【図4】皿状タイプの図2におけるIV−IVの断面図
【符号の説明】
【0028】
A・・・・・・濁水
B・・・・・・浄水
C・・・・・・凝集固形付設
10・・・・・固液分離装置
11・・・・・タンク
12・・・・・凝集剤供給装置
13・・・・・ゲート
20・・・・・ベルト式脱液装置
21・・・・・ローラ
22・・・・・ローラ
23・・・・・集水タンク
24・・・・・補助ローラ
25・・・・・噴射ノズル
26・・・・・補助ローラ
30・・・・・搬送ろ過ベルト
40・・・・・トップろ過ベルト
50・・・・・吸引装置
51・・・・・吸引ノズル
52・・・・・ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濁水を凝集反応させたケーキ状の凝集固形物を脱液するベルト式脱液装置であって、
複数のローラ間に回転可能に巻回した無端構造の搬送ろ過ベルトと、
搬送ろ過ベルトの上方に対向して配置し、複数のローラ間に回転可能に巻回した無端構造のトップろ過ベルトと、
トップろ過ベルトの内方に配設し、トップろ過ベルトの裏面を負圧吸引する吸引装置とを具備し、
前記吸引装置によりトップろ過ベルトを通じてケーキ状の凝集固形物の脱液を可能に構成したことを特徴とする、
ベルト式脱液装置。
【請求項2】
請求項1において、重合して配置した上下一対のろ過ベルトの裏面に、ケーキ状の凝集固形物を圧搾する補助ローラを付設したことを特徴とする、ベルト式脱液装置。
【請求項3】
請求項1また請求項2において、前記吸引装置がトップろ過ベルトのベルト裏面へ向けて配置した吸引ノズルと、吸引ノズルに負圧を発生する吸引ポンプとを具備することを特徴とする、ベルト式脱液装置。
【請求項4】
請求項3において、吸引ノズルを補助ローラの近傍に配置したことを特徴とする、ベルト式脱液装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−334524(P2006−334524A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163334(P2005−163334)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000194756)成和リニューアルワークス株式会社 (32)
【Fターム(参考)】