説明

ベルト搬送装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】無端ベルトに対し適正な張力を付与するとともに耐久性にも優れたテンション機構を有するベルト搬送装置、並びにそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】支持フレーム31には支軸37が突設されており、支軸37を中心として揺動可能な樹脂製のアーム部材40が取り付けられている。アーム部材40にはテンションローラ11の回転軸11aを支持する板金製の摺動部材50が摺動可能に保持されている。摺動部材50はアーム部材40に対し、第1ガイドリブ43a、43bとベアリング部材55の外周面との接触、及び第2ガイドリブ53a、53bと第1軸受け部41の外周面との接触によって支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトや中間転写ベルトのような無端ベルトを回転駆動させるベルト搬送装置、及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の画像形成装置が提案されているが、その中に、所定方向に回動される無端状の搬送ベルトと、この搬送ベルトに沿って設けられた画像形成部とを備え、搬送ベルトにより搬送されてくる記録媒体上に画像形成部で形成されたトナー像を転写する方式の画像形成装置や、複数の画像形成部により無端状の中間転写ベルト上にトナー像を順次重ね合わせた後、記録媒体上に一度に転写する中間転写方式の画像形成装置がある。
【0003】
上述したような無端状の搬送ベルト或いは中間転写ベルトを用いた画像形成装置においては、ベルトの張力を一定に保持するためのテンション機構が設けられている。例えば特許文献1及び2には、テンションローラの両端部を支持する支持アームまたは軸受けホルダにスプリング(引っ張りバネ)を連結して、ブラケットまたはステアリングアームに対し支持アームまたは軸受けホルダを所定の付勢力で摺動自在に支持する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−56294号公報
【特許文献2】特開2005−292480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2の構成では、スライドレールを介して固定部材(ブラケット、ステアリングアーム)とスライド部材(支持アーム、軸受けホルダ)とを摺動可能に支持しているため、固定部材とスライド部材との接触がレール面全体となっていた。その結果、両部材間の摩擦力が大きくなり、スライド部材が円滑に摺動しない可能性があった。また、固定部材またはスライド部材が樹脂材料で形成されている場合は摩耗による耐用年数の低下の問題もあった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、無端ベルトに対し適正な張力を付与するとともに耐久性にも優れたテンション機構を有するベルト搬送装置、並びにそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、無端ベルトと、該無端ベルトに所定の張力を付与するテンションローラと前記無端ベルトに回転駆動力を付与する駆動ローラとを含む複数の懸架ローラと、前記テンションローラに張力を付与するテンション機構と、を備えたベルト搬送装置において、前記テンション機構は、本体フレームに突設された支軸に回転自在に外挿される円筒状の第1軸受け部を有するアーム部材と、該アーム部材に摺動可能に支持され前記テンションローラの一端を回転自在に保持する円筒状の第2軸受け部を有する摺動部材と、該摺動部材を前記無端ベルトに張力を付与する方向に付勢する付勢部材と、を備え、前記アーム部材には前記摺動部材の摺動方向に沿って前記第2軸受け部の外周面を挟むように延在する一対の第1ガイドリブが形成され、前記摺動部材には前記第1ガイドリブと略平行であり前記第1軸受け部の外周面を挟むように延在する一対の第2ガイドリブが形成されており、前記摺動部材は、前記第1ガイドリブと前記第2軸受け部との係合、及び前記第2ガイドリブと前記第1軸受け部との係合によって前記アーム部材に支持されることを特徴としている。
【0008】
また本発明は、上記構成のベルト搬送装置において、前記付勢部材は、前記支軸と前記第2軸受け部とを結ぶ直線上に配置された圧縮バネであることを特徴としている。
【0009】
また本発明は、上記構成のベルト搬送装置において、前記無端ベルトの蛇行を検知する蛇行検知手段と、該蛇行検知手段の検知結果に基づいて前記支軸を中心として前記アーム部材を揺動させる偏芯カムと、を有し、前記テンションローラの傾きを調整するアライメント調整機構を備えたことを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成のベルト搬送装置において、前記支軸を中心として、前記偏芯カムと前記アーム部材との接触点と、前記第2軸受け部とが略等距離の位置にあることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成のベルト搬送装置において、前記摺動部材には、前記無端ベルト上に残存したトナーを回収するベルトクリーニングユニットが固定されることを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成のベルト搬送装置を備えた画像形成装置であって、前記無端ベルトは、記録媒体を搬送する搬送ベルトであることを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記構成のベルト搬送装置を備えた画像形成装置であって、前記無端ベルトは、記録媒体に転写するためのトナー像が順次積層される中間転写ベルトであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の構成によれば、摺動部材の摺動方向に垂直な方向から見て、摺動部材はアーム部材に対し片側2点(両側合わせて4点)のみで支持される。従って、アーム部材と摺動部材の接触面積が小さくなり、両部材の摩擦を極力小さくすることができ、摺動部材が円滑に摺動可能になるとともに、アーム部材若しくは摺動部材の摩耗も低減することができる。
【0015】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成のベルト搬送装置において、付勢部材として、支軸と第2軸受け部とを結ぶ直線上に圧縮バネを配置することにより、引っ張りバネを用いた場合におけるバネ両端のフック部の変形を防止することができる。また、テンションローラを支持する第2軸受け部に圧縮バネの付勢力を直接且つ効率良く作用させることができる。
【0016】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成のベルト搬送装置において、無端ベルトの蛇行を検知する蛇行検知手段と、該蛇行検知手段の検知結果に基づいて支軸を中心としてアーム部材を揺動させる偏芯カムと、を有するアライメント調整機構を設けることにより、テンション機構とアライメント調整機構を1つのローラに集約することができ、ベルト搬送装置内のローラ本数を削減することができる。
【0017】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第3の構成のベルト搬送装置において、支軸を中心として、偏芯カムとアーム部材との接触点を、第2軸受け部と略等距離の位置に設けることにより、偏芯カムの回転による径変化量とテンションローラの揺動量とが略等しくなるため、テンションローラのアライメント調整に必要な偏芯カムの回転量を簡単に決定することができる。
【0018】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第4のいずれかの構成のベルト搬送装置において、無端ベルト上に残存したトナーを回収するベルトクリーニングユニットを摺動部材に固定することにより、ベルトクリーニングユニットがテンションローラと共に揺動するため、ベルトクリーニングユニットと無端ベルト表面との位置関係が変化しない。従って、テンションローラのアライメント調整量に係わらずクリーニング性能を維持することができる。
【0019】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1乃至第5のいずれかの構成のベルト搬送装置を用いて記録媒体に転写するためのトナー像が順次積層される中間転写ベルトに張力を付与することにより、摺動部材の摩耗によるテンション機構の耐用年数の低下を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の第7の構成によれば、上記第1乃至第5のいずれかの構成のベルト搬送装置を用いて記録媒体を搬送するための搬送ベルトに張力を付与することにより、摺動部材の摩耗によるテンション機構の耐用年数の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のベルト搬送装置を備えた第1実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図
【図2】図1における画像形成部Pa付近の拡大図
【図3】本発明のベルト搬送装置の外観斜視図
【図4】図3の手前側におけるテンションローラの回転軸周辺の拡大斜視図
【図5】図3の手前側の支持フレーム31に装着されるアーム部材40及び摺動部材50を分解した状態を示す斜視図
【図6】図3の奥側の支持フレーム32に装着されるアーム部材40及び摺動部材50を分解した状態を示す斜視図
【図7】テンションローラのアライメント調整機構をベルト搬送装置の内側から見た斜視図
【図8】アライメント調整機構を構成するカム駆動機構をベルト搬送装置の内側から見た斜視図
【図9】カム駆動機構をベルト搬送装置の外側から見た斜視図
【図10】本発明のベルト搬送装置を備えた第2実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明のベルト搬送装置を備えた第1実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図である。本実施形態では、タンデム型カラー画像形成装置の中間転写ベルトのベルト搬送装置について説明する。
【0023】
図1の画像形成装置100は以下のような構成になっている。画像形成装置100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0024】
この画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により図1において時計回りに回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次転写された後、二次転写ローラ9において記録媒体の一例としての転写紙P上に一度に転写され、さらに、定着部7において転写紙P上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを図1において反時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0025】
トナー像が転写される転写紙Pは、装置下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラ12a及びレジストローラ12bを介して二次転写ローラ9へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。
【0026】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電器2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光ユニット4と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像ユニット3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)を除去するクリーニング装置5a、5b、5c及び5dが設けられている。
【0027】
ユーザにより画像形成開始が入力されると、先ず、帯電器2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光ユニット4によって光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。現像ユニット3a〜3dには、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色のトナーが補給装置(図示せず)によって所定量充填されている。このトナーは、現像ユニット3a〜3dにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光ユニット4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0028】
そして、一次転写ローラ6a〜6dにより一次転写ローラ6a〜6dと感光体ドラム1a〜1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a〜1d上のシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング装置5a〜5dにより除去される。
【0029】
中間転写ベルト8は、下流側の駆動ローラ10と上流側のテンションローラ11とに掛け渡されており、駆動モータ(図示せず)による駆動ローラ10の回転に伴い中間転写ベルト8が時計回りに回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラ12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラ9へ搬送され、フルカラー画像が転写される。トナー像が転写された転写紙Pは定着部7へと搬送される。
【0030】
また、画像形成部Paの上流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナーを除去するためのベルトクリーニングユニット19が配置され、駆動ローラ10のさらに下流側には中間転写ベルト8の蛇行を検知する蛇行検知センサ21が配置されている。蛇行検知センサ21は、発光部及び受光部(図示せず)が設けられたコ字型の検出部で中間転写ベルト8のエッジ部を表裏から挟むように配置されている。そして、発光部から受光部までの光路をエッジ部が遮光する位置によってエッジ部の位置を検知し、中間転写ベルト8の蛇行方向及び蛇行量を検知可能となっている。
【0031】
定着部7に搬送された転写紙Pは、定着ローラ対13により加熱及び加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。転写紙Pの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラ対15によって排出トレイ17に排出される。
【0032】
一方、転写紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着部7を通過した転写紙Pの一部を一旦排出ローラ対15から装置外部にまで突出させる。その後、転写紙Pは排出ローラ15を逆回転させることにより分岐部14で用紙搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態で二次転写ローラ9に再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラ9により転写紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着部7に搬送されてトナー像が定着された後、排出トレイ17に排出される。
【0033】
図2は、図1における画像形成部Pa付近の拡大図である。なお、画像形成部Pb〜Pdについても基本的に同様の構成であるため説明を省略する。感光体ドラム1aの周囲には、ドラム回転方向(図2の反時計回り)に沿って帯電器2a、現像ユニット3a、クリーニング装置5aが配設され、中間転写ベルト8を挟んで一次転写ローラ6aが配置されている。また、感光体ドラム1aに対し中間転写ベルト8の回転方向上流側には中間転写ベルト8を挟んでテンションローラ11に対向するベルトクリーニングローラ19aを備えたベルトクリーニングユニット19が配置されている。
【0034】
帯電器2aは、感光体ドラム1aに接触してドラム表面に帯電バイアスを印加する帯電ローラ22と、帯電ローラ22をクリーニングするための帯電クリーニングローラ23とを有している。現像ユニット3aは、2本の攪拌搬送スクリュー24と、磁気ローラ25と、現像ローラ26とを有しており、現像ローラ26にトナーと同極性(正)の現像バイアスを印加してドラム表面にトナーを飛翔させる。
【0035】
クリーニング装置5aは、摺擦ローラ27、クリーニングブレード28、及び回収スクリュー29を有している。摺擦ローラ27は感光体ドラム1aに所定の圧力で圧接されており、図示しない駆動手段により感光体ドラム1aとの当接面において同一方向に回転駆動されるが、その周速は感光体ドラム1aの周速よりも速く(ここでは1.2倍)制御されている。摺擦ローラ27としては、例えば金属シャフトの周囲にローラ体としてEPDMゴム製でアスカC硬度55°の発泡体層を形成した構造が挙げられる。ローラ体の材質としてはEPDMゴムに限定されず、他の材質のゴムや発泡ゴム体であっても良く、アスカC硬度が10〜90°の範囲のものが好適に使用される。
【0036】
感光体ドラム1a表面の、摺擦ローラ27との当接面よりも回転方向下流側には、クリーニングブレード28が感光体ドラム1aに当接した状態で固定されている。クリーニングブレード28としては、例えばJIS硬度が78°のポリウレタンゴム製のブレードが用いられ、その当接点において感光体接線方向に対し所定の角度で取り付けられている。なお、クリーニングブレード28の材質及び硬度、寸法、感光体ドラム1aへの食い込み量及び圧接力等は、感光体ドラム1aの仕様に応じて適宜設定される。
【0037】
摺擦ローラ27及びクリーニングブレード28によって感光体ドラム1a表面から除去された残留トナーは、回収スクリュー29の回転に伴ってクリーニング装置5aの外部に排出され、トナー回収容器(図示せず)に搬送されて貯留される。本発明に用いられるトナーとしては、トナー粒子表面に研磨剤としてシリカ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、アルミナ等が埋め込まれて表面に一部突出するように保持されたものや、研磨剤がトナー表面に静電的に付着しているものが用いられる。
【0038】
図3は、図1に示した画像形成装置のベルト搬送装置の外観斜視図である。図1と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。なお、図3ではベルト搬送装置を図1の上方向(一次転写ローラ6a〜6d側)から見た状態を示している。ベルト搬送装置30は、2枚の支持フレーム31、32の間に駆動ローラ10及びテンションローラ11を含む複数の懸架ローラが支持されており、無端状の中間転写ベルト8が張架されている。支持フレーム31、32のテンションローラ11に隣接する側の端部にはベルトクリーニングユニット19が付設されている。
【0039】
図4は、図3の手前側におけるテンションローラの回転軸周辺の拡大斜視図である。なお、図4では支持フレーム31に装着される部材の一部を取り外した状態を示している。支持フレーム31には支軸37が突設されており、支軸37を中心として揺動可能な樹脂製のアーム部材40が取り付けられている。アーム部材40にはテンションローラ11の回転軸11aを支持する板金製の摺動部材50が摺動可能に保持されている。アーム部材40、摺動部材50は、後述する圧縮バネ60(図5参照)と共にテンションローラ11に所定の張力を付与するテンション機構を構成している。また、ベルトクリーニングユニット19は摺動部材50に固定されている。
【0040】
図5は、図3の手前側の支持フレーム31に装着されるアーム部材40及び摺動部材50を分解した状態を示す斜視図である。アーム部材40の略中央部には、支軸37が摺動可能に挿入される円筒状の第1軸受け部41が形成されている。第1軸受け部41の側面に突設されたボス42には圧縮バネ60の一端が圧入されている。また、摺動部材50に固定されたベアリング部材55の外周面に接触する第1ガイドリブ43a、43bが圧縮バネ60を上下方向から挟むように形成されている。
【0041】
第1軸受け部41を挟んでアーム部材40の圧縮バネ60と反対側には、アライメント調整機構の偏芯カム77(図7参照)が内接する楕円形状のカム孔45が形成されている。カム孔45は、支軸37からカム孔45と偏芯カム77との接触点(偏芯カム77のアーム部材40に対する作用点)までの距離が、支軸37からベアリング部材55までの距離と略等距離となる位置に形成されている。第1軸受け部41とカム孔45との間には、アーム部材40及び摺動部材50を組み立てる際に圧縮バネ60を一時的に保持するフック状の保持部47が設けられている。
【0042】
摺動部材50にはアーム部材40の第1軸受け部41が係合する長孔状の開口部51が形成されている。開口部51の上下端縁には第1軸受け部41の外周面と接触する第2ガイドリブ53a、53bが形成されており、テンションローラ11側に位置する開口部51の端部には圧縮バネ60の他端を受けるバネ台座54が形成されている。摺動部材50の一端にはテンションローラ11の回転軸11aが挿入される第2軸受け部としてのベアリング部材55が固定されている。ベアリング部材55の外径は第1軸受け部41の外径と略同一に設計されている。なお、図5では第1ガイドリブ43a、43bとベアリング部材55との位置関係を示すためにベアリング部材55をアーム部材40側に記載しているが、実際にはベアリング部材55は係止爪56によって摺動部材50側に固定されている。
【0043】
図6は、図3の奥側の支持フレーム32に装着されるアーム部材40及び摺動部材50を分解した状態を示す斜視図である。支持フレーム32に装着されるアーム部材40にはカム孔45が形成されておらず、代わりに支持フレーム32に固定するためのビス孔48が形成されている。また、ベルトクリーニングユニット19(図4参照)は他の板金部材を介して摺動部材50に固定される。他の部分の構成は図5に示した支持フレーム31側のアーム部材40及び摺動部材50と同様であるため説明を省略する。なお、図6においてもベアリング部材55をアーム部材40側に記載しているが、実際にはベアリング部材55は係止爪56によって摺動部材50側に固定されている。
【0044】
上記の構成とすることにより、摺動部材50はアーム部材40に対し、第1ガイドリブ43a、43bとベアリング部材55の外周面との接触、及び第2ガイドリブ53a、53bと第1軸受け部41の外周面との接触によって支持されている。即ち、摺動部材50の摺動方向に垂直な方向(摺動部材50の揺動方向)から見て、摺動部材50はアーム部材40に対し2点(上下合わせて4点)のみで支持される。従って、アーム部材40と摺動部材50の摩擦を極力小さくすることができ、摺動部材50が円滑に摺動可能になるとともにアーム部材40の摩耗も低減することができる。
【0045】
また、摺動部材50を付勢する部材として引っ張りバネを用いた場合、引っ張りバネを係止するためにバネの両端に形成されるフック部が変形して摺動部材50に掛かる付勢力が変化してしまう可能性がある。これに対し、本発明のように圧縮バネを用いた場合は、ボス42及びバネ台座54で圧縮バネ60を保持できるためフック部が不要となり、摺動部材50に掛かる付勢力が変化するおそれがない。さらに、第1軸受け部41とベアリング部材55とを結ぶ直線上に圧縮バネ60を配置することにより、圧縮バネ60の付勢力が回転軸11aを支持するベアリング部材55に効率良く伝達される。
【0046】
また、支軸37を中心として、カム孔45と偏芯カム77との接触点と、ベアリング部材55とを略等距離の位置に配置することにより、偏芯カム77の回転による径変化量とテンションローラ11の揺動量とが略等しくなるため、テンションローラ11のアライメント調整に必要な偏芯カム77の回転量を簡単に決定することができる。
【0047】
さらに、ベルトクリーニングユニット19を摺動部材50に固定することにより、ベルトクリーニングユニット19がテンションローラ11と共に揺動するため、後述するアライメント調整を行った場合でもベルトクリーニングユニット19と中間転写ベルト8の表面との位置関係が変化しない。従って、テンションローラ11のアライメント調整量に係わらず良好なクリーニング性能を維持することができる。
【0048】
図7は、テンションローラのアライメント調整機構をベルト搬送装置の内側から見た斜視図、図8及び図9は、アライメント調整機構を構成するカム駆動機構をベルト搬送装置の内側及び外側から見た部分斜視図である。カム駆動機構70は、支持フレーム31に固定されたアライメント調整モータ35と、アライメント調整モータ35の駆動出力軸に固定されたウオームギヤ71と、ウオームギヤ71に噛み合うギヤ歯が形成されたウオームホイル72と、ウオームホイル72と噛み合う多段ギヤ73と、多段ギヤ73に噛み合う大径部75aと、小径部75bとを有する二段ギヤ75と、二段ギヤ75の回転軸75cを中心として一体形成された偏芯カム77とで構成されている。そして、偏芯カム77は、アーム部材40に形成されたカム孔45の内周面に接触するように配置されている。
【0049】
蛇行検知センサ21(図1参照)により中間転写ベルト8の蛇行が検知されると、検知信号が制御部(図示せず)に送信され、制御部において中間転写ベルト8の蛇行方向及び蛇行量が算出される。そして、制御部からアライメント調整モータ35に制御信号が送信され、ウオームギヤ71、ウオームホイル72、及び多段ギヤ73を介して偏芯カム77を所定方向に所定量だけ回転する。
【0050】
これにより、カム孔45の内周面に接触する偏芯カム77の回転中心(回転軸75c)から外周面までの距離が変化するため、アーム部材40が第1軸受け部41を中心に上又は下方向に揺動し、アーム部材40に固定された摺動部材50も上又は下方向に所定角度だけ揺動する。従って、テンションローラ11の回転軸11aの一端が摺動部材50と共に揺動するため、テンションローラ11に張架された中間転写ベルト8を所定角度傾けて蛇行を補正することができる。
【0051】
例えば、中間転写ベルト8が装置前側(図3の手前側)に蛇行している場合、偏芯カム77を図8の時計回りに回転させてテンションローラ11の前側端部を所定量上昇させてやる。これにより、中間転写ベルト8の傾斜は図3の手前から奥に向かって下り勾配となるため、中間転写ベルト8は回動に伴い徐々に奥側にずれ、手前方向への蛇行が補正される。また、中間転写ベルト8が装置奥側に蛇行している場合は、偏芯カム77を逆方向(図7の反時計回り)に回転させてテンションローラ11の前側端部を所定量下降させ、中間転写ベルト8の傾斜を手前から奥に向かって上り勾配とすれば良い。
【0052】
図9に示すように、多段ギヤ73には、偏芯カム77の位置(回転角)を検出するための多数のスリット80aが等間隔で形成されたパルス板80が一体形成されている。また、多段ギヤ73にはギヤ歯の形成されていない軸受け面が設けられており、この軸受け面には偏芯カム77の基準位置(ホームポジション)を検出するためのホームポジション検出部材81が回転自在に支持されている。ホームポジション検出部材81の外周面には、二段ギヤ75の小径部75bと噛み合うギヤ歯が形成されている。
【0053】
また、多段ギヤ73の斜め上方には、偏芯カム77のホームポジション及びカム位置(回転角)を検出するカム位置検出センサ83が配置されている。カム位置検出センサ83は、蛇行検知センサ21と同様のPI(フォトインタラプタ)センサであり、発光部及び受光部が設けられたコ字型の検出部83aでパルス板80及びホームポジション検出部材81の外周縁近傍を表裏から挟むように配置されている。
【0054】
上記構成により、多段ギヤ73の回転に伴い、パルス板80及びホームポジション検出部材81はそれぞれ多段ギヤ73と同方向に異なる速度で回転する。ここでは、ホームポジション検出部材81の回転速度がパルス板80(多段ギヤ73)の回転速度の1/9となるように、多段ギヤ73及び二段ギヤ75のギヤ比が設定されている。多段ギヤ73、二段ギヤ75、及びホームポジション検出部材81の位相は、遮光部81aが検出部83aの光路を開放状態から遮光状態に切り換えるとき、偏芯カム77がホームポジションとなるように調整されている。また、ここでは偏芯カム77の最も小径の部分がアーム部材40のカム孔45と接触する位置をホームポジションとしている。
【0055】
図10は、本発明のベルト搬送装置を備えた第2実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図である。本実施形態では、用紙P上に各色の画像を直接転写するタイプのタンデム型カラー画像形成装置において、用紙Pを各画像形成部Pa〜Pbに順次搬送する搬送ベルト90のベルト搬送装置として用いている。アーム部材40、摺動部材50、及び圧縮バネ60から成るテンション機構の構成、蛇行の検知方法並びに蛇行補正方法については第1実施形態と全く同様であるため説明は省略する。
【0056】
本実施形態においても、アーム部材40と摺動部材50とが2点(上下あわせて4点)でのみ接触するため、摺動部材50が円滑に摺動可能になるとともにアーム部材40の摩耗も低減することができる。
【0057】
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記実施形態においては、蛇行検知センサ21として発光部と受光部を備えた光センサを用いているが、例えばベルト表面に光を射出し、反射光を測定する反射型センサ等の他のセンサを用いても良い。また、ベルト表面に蛇行を検知するためのマーキングを施しておいても良い。
【0058】
また、上記各実施形態ではテンションローラ11をアライメント調整用のローラとしたが、無端ベルトが張架される他のローラをアライメント調整用のローラとしても良いし、アライメント調整機構を複数のローラに設けても良い。さらに、ベアリング部材55に代えて、例えば焼結軸受けを摺動部材50に固定して第2軸受け部としても良い。
【0059】
また、本発明は上記実施形態のようなタンデム型のカラー画像形成装置に限らず、モノクロ複写機やデジタル複合機、ファクシミリやレーザプリンタ等、搬送ベルトや中間転写ベルトを用いる種々の画像形成装置に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、搬送ベルトや中間転写ベルトのような無端ベルトを回転駆動させるベルト搬送装置に利用可能である。本発明の利用により、テンション機構を構成するアーム部材と摺動部材の摩擦を極力小さくすることができ、摺動部材が円滑に摺動可能になるとともに、アーム部材若しくは摺動部材の摩耗も低減することができる。
【0061】
また、本発明のベルト搬送装置を、カラー画像形成装置の中間転写ベルトや搬送ベルトの搬送に用いた場合、アーム部材若しくは摺動部材の摩耗によるテンション機構の耐用年数の低下を抑制できる画像形成装置の提供が可能となる。
【符号の説明】
【0062】
Pa〜Pd 画像形成部
8 中間転写ベルト(無端ベルト)
10 駆動ローラ
11 テンションローラ
21 蛇行検知センサ(蛇行検知手段)
30 中間転写ユニット(ベルト搬送装置)
31、32 支持フレーム
35 アライメント調整モータ
37 支軸
40 アーム部材
43a、43b 第1ガイドリブ
41 第1軸受け部
50 摺動部材
53a、53b 第2ガイドリブ
55 ベアリング部材(第2軸受け部)
45 圧縮バネ(付勢部材)
70 カム駆動機構
71 ウオームギヤ
72 ウオームホイル
73 多段ギヤ
75 大径ギヤ
77 偏芯カム
80 パルス板
80a スリット
81 ホームポジション検出部材
83 カム位置検出センサ
83a 検出部
90 搬送ベルト(無端ベルト)
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルトと、
該無端ベルトに所定の張力を付与するテンションローラと前記無端ベルトに回転駆動力を付与する駆動ローラとを含む複数の懸架ローラと、
前記テンションローラに張力を付与するテンション機構と、
を備えたベルト搬送装置において、
前記テンション機構は、本体フレームに突設された支軸に回転自在に外挿される円筒状の第1軸受け部を有するアーム部材と、該アーム部材に摺動可能に支持され前記テンションローラの一端を回転自在に保持する円筒状の第2軸受け部を有する摺動部材と、該摺動部材を前記無端ベルトに張力を付与する方向に付勢する付勢部材と、を備え、
前記アーム部材には前記摺動部材の摺動方向に沿って前記第2軸受け部の外周面を挟むように延在する一対の第1ガイドリブが形成され、前記摺動部材には前記第1ガイドリブと略平行であり前記第1軸受け部の外周面を挟むように延在する一対の第2ガイドリブが形成されており、前記摺動部材は、前記第1ガイドリブと前記第2軸受け部との係合、及び前記第2ガイドリブと前記第1軸受け部との係合によって前記アーム部材に支持されることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記支軸と前記第2軸受け部とを結ぶ直線上に配置された圧縮バネであることを特徴とする請求項1に記載のベルト搬送装置。
【請求項3】
前記無端ベルトの蛇行を検知する蛇行検知手段と、
該蛇行検知手段の検知結果に基づいて前記支軸を中心として前記アーム部材を揺動させる偏芯カムと、を有し、前記テンションローラの傾きを調整するアライメント調整機構を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベルト搬送装置。
【請求項4】
前記支軸を中心として、前記偏芯カムと前記アーム部材との接触点と、前記第2軸受け部とが略等距離の位置にあることを特徴とする請求項3に記載のベルト搬送装置。
【請求項5】
前記摺動部材には、前記無端ベルト上に残存したトナーを回収するベルトクリーニングユニットが固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のベルト搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のベルト搬送装置を備えた画像形成装置であって、前記無端ベルトは、記録媒体に転写するためのトナー像が順次積層される中間転写ベルトであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のベルト搬送装置を備えた画像形成装置であって、前記無端ベルトは、記録媒体を搬送する搬送ベルトであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−246276(P2011−246276A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124067(P2010−124067)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】