ベルト駆動装置及び画像形成装置
【課題】中間転写ベルト606の幅方向端部(エッジ)の段差の存在により、ベルトの寄り制御の精度が低下することを防止できる構造を実現する。
【解決手段】中間転写ベルト606の内周面に、段差を跨ぐように基準マーク3を設ける。そして、基準検知センサ2により基準マーク3の回転方向後端を検知した時点で、設定されたサンプリング周期でエッジ検知センサ1によりエッジの検知を開始する。このサンプリング周期Tsは、L1≦V×Ts、L2=K×(V×Ts)を満たすように設定する。ここで、L1は基準マーク3の周方向の長さ、Vは中間転写ベルト606の回転速度、L2は基準検知センサ2からエッジ検知センサ1までの周方向の長さ、Kは自然数である。これにより、エッジ検知センサ1が段差を検知することがなく、寄り制御を高精度で行える。
【解決手段】中間転写ベルト606の内周面に、段差を跨ぐように基準マーク3を設ける。そして、基準検知センサ2により基準マーク3の回転方向後端を検知した時点で、設定されたサンプリング周期でエッジ検知センサ1によりエッジの検知を開始する。このサンプリング周期Tsは、L1≦V×Ts、L2=K×(V×Ts)を満たすように設定する。ここで、L1は基準マーク3の周方向の長さ、Vは中間転写ベルト606の回転速度、L2は基準検知センサ2からエッジ検知センサ1までの周方向の長さ、Kは自然数である。これにより、エッジ検知センサ1が段差を検知することがなく、寄り制御を高精度で行える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルトを寄り制御しつつ回転駆動するベルト駆動装置、及び、このようなベルト駆動装置を有する、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置の印刷生産性を上げるための高速化に伴い、無端ベルト状の転写ベルトに複数の像担持体を並べて配置し、各色の作像プロセスを並行処理する構成のタンデム方式が主流となっている。例えば電子写真方式のフルカラー画像形成装置における中間転写ベルトがその代表例として挙げられるが、更なる高速化対応技術を安価な構成で提供することが求められている。
【0003】
中間転写ベルトは各色のトナー像が順次ベルト表面に重ねあわされて転写され、記録材に対してフルカラーのトナー像を一括的に転写するというものであり、駆動ローラをはじめとする複数のローラによって張架および走行駆動されている。このような、複数のローラに張架された無端ベルトは、ローラの外径精度や各ローラ間のアライメント精度などによって、走行駆動時にいずれかの端部方向に寄ってしまうという課題が一般的に知られている。
【0004】
このベルト寄りに対して、従来から、ベルトエッジ(幅方向端部)の位置変動を検知して、ベルトの内周保持部材の1つであるステアリングローラに傾きを与えることで、ベルトの寄りをコントロールする寄り制御が行われている。この寄り制御はベルト寄りきりによるベルト破損を防止することに効果がある。また、ベルトのエッジ位置を複数回検知することでベルトの搬送方向変動を検出し画像形成タイミングを調整することで色ずれも抑制する方法が提案されている。
【0005】
更に、その制御精度を向上させる為に、ベルトエッジ形状のデータを取得、記憶し、取得したデータと記憶したデータを比較した結果に基づいてステアリングの制御に反映させる方法が提案されている(特許文献1参照)。このベルトエッジ形状データの取得は、ベルトの周方向面上に設けられた基準マークの位置を基準検知センサで読み取り、基準マークの検知をトリガーにベルト1周でN回のサンプリングすることによって実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−295948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように、ベルトのエッジ形状を検知してベルトの寄り制御を行う場合、以下の問題があった。まず、中間転写ベルトなどの無端ベルトは、低コストで生産するため、ベルトの幅方向長さを複数個分の長さで成型し、後加工で実使用幅の長さに切断して得られる。即ち、実際に使用するベルトよりも幅方向の長さが長いベルト基材を製造し、このベルト基材を切断することにより実際に使用するベルトを得るようにしている。また、無端ベルトのエッジ形状の精度、エッジ部のベルト厚みムラの精度を確保する為に、後加工でベルトエッジ部を切断加工して使用する場合がある。
【0008】
何れにしても、ベルト基材を切断する場合、切断するための工具をベルトの周方向に沿って相対移動させる。この際、切断開始位置と切断終了位置とでずれが生じ、この部分が段差としてベルトの幅方向端部(エッジ)に存在することになる。即ち、切断する際には、ベルトを回転しつつ工具をこのベルトの所定位置に当てて切断するが、この切断作業の際もベルトの寄り制御を行う。このため、切断開始位置と切断終了位置とを一致させることが難しく、この部分に段差が生じてしまう。
【0009】
このようにエッジに段差を有する無端ベルトの寄り制御を、エッジ形状の検知結果(プロファイル)により実施する場合、段差を誤検知して寄り制御を好ましく行えない可能性がある。即ち、ベルトのエッジをサンプリングすると、図15に示す様な、段差Dを有するプロファイルを取得する。そして、このように取得したプロファイルを、記憶したプロファイルと比較して、その差分に応じて寄り制御を行うが、図16に示す様に、段差Dの位置が、取得プロファイルと記憶プロファイルとでずれる場合がある。即ち、ベルトの回転速度の変動などにより、時間軸でプロファイルに微小なずれが生じると、段差Dの位置も時間軸でずれて検知される。
【0010】
このように取得プロファイルと記憶プロファイルとで段差Dとの位置がずれて検知されると、図17に示す様に、段差Dの振幅が大きい分、その差分が大きく検知されてしまう。そして、実際には差分が大きくないにも拘らず、「差分が大きい」と誤検知されてしまう。このように誤検知された差分により寄り制御を行うと、ベルトの蛇行が大きくなったりするなど、想定していた制御から外れてしまう。即ち、寄り制御の精度が低下してしまう。
【0011】
特に、近年、画像形成装置の高速化に伴って、ベルトの回転速度が速くなり、ベルトエッジの切断段差がエッジ検知センサを通過する際に、センサが受ける衝撃は大きくなる。このため、切断段差を検知してしまうと、取得形状のノイズが大きくなったりして、取得プロファイルが不安定になり、制御上好ましくない。
【0012】
このような段差が存在することによる寄り制御の問題に対して、この段差を小さくすべくベルトの加工精度を向上させることが考えられる。但し、加工精度を向上させるとベルトの製造コストが増大することが避けられない。
【0013】
また、ベルトを複数周駆動して段差の位置を特定し、それに基づいて制御を行うことも考えられる。但し、ベルトを複数周駆動する分、画像形成装置の生産性が低下してしまう。したがって、何れの場合も、近年の画像形成装置の低コスト化、生産性の向上と言う要求に反してしまう。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑み、ベルトの幅方向端部の段差の存在により、ベルトの寄り制御の精度が低下することを防止できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、無端ベルトと、前記無端ベルトを回転駆動する駆動手段と、前記無端ベルトを回転方向に交差する幅方向に移動させる移動手段と、前記無端ベルトの基準位置を検知する基準検知手段と、前記無端ベルトの幅方向端部の形状を検出して、前記無端ベルトの幅方向位置を検知する端部検知手段と、前記基準検知手段により前記無端ベルトの基準位置を検知してから、設定されたサンプリング周期で前記無端ベルトの幅方向位置を前記端部検知手段に検知させ、この検知結果に基づいて前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、前記無端ベルトには、幅方向端部に存在する段差の位置を特定するための印が設けられ、前記サンプリング周期は、前記基準検知手段が前記印を基準位置として検知したタイミングに基づいて、前記端部検知手段による検知が前記段差から外れた位置で行われるように設定されている、ことを特徴とするベルト駆動装置にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、端部検知手段が段差を検知することはないため、ベルトの幅方向端部の段差の存在により、ベルトの寄り制御の精度が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【図2】図1の上半部を拡大して示す図。
【図3】中間転写ベルトのステアリング機構の概略斜視図。
【図4】感光ドラムと中間転写ユニットの概略斜視図。
【図5】ベルト基材の斜視図。
【図6】ベルト基材を切断する構成を説明するための概略斜視図。
【図7】ベルト基材の切断途中を示す、図6と同様の図。
【図8】ベルト基材を切断した状態を示す概略斜視図。
【図9】ベルトの幅方向端部に存在する段差を拡大して示す概略斜視図。
【図10】ベルトの段差を跨ぐように設けた基準マーク周辺を拡大して示す概略斜視図。
【図11】ベルト寄り制御のブロック図。
【図12】中間転写ユニットの概略構成断面図。
【図13】ベルトの幅方向端部の取得プロファイルとサンプリング間隔を示す図。
【図14】ベルト寄り制御のフローチャート。
【図15】エッジ検知センサにより取得したベルトの幅方向端部のプロファイルを示す図。
【図16】ベルトの幅方向端部の取得プロファイルと記憶プロファイルとが時間軸でずれた状態を示す図。
【図17】図16の取得プロファイルと記憶プロファイルとの差分を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る実施形態について、図1ないし図14を用いて説明する。まず、図1を用いて本実施形態の画像形成装置の概略構成について説明する。なお、本発明は、電子写真方式、インクジェット方式などの画像形成装置に適用可能であるが、本実施形態は、本発明を電子写真方式の画像形成装置に適用したものである。
【0019】
[画像形成装置]
画像形成装置60は、4色の画像形成部613y、613m、613c、613kを中間転写ベルト606上に並べて配置した、所謂中間転写タンデム方式の画像形成装置であり、厚紙対応力や生産性に優れる点から近年主流になっている。このような画像形成装置60は、各画像形成部613y、613m、613c、613kでそれぞれ形成された各色のトナー像を中間転写ベルト606上に重ねて転写し、二次転写部T2で搬送されてきた記録材Sに中間転写ベルト606上のトナー像を転写する。この記録材Sの搬送プロセスについて説明する。
【0020】
[記録材の搬送プロセス]
記録材Sは、記録材収納庫61内のリフトアップ装置62上に積載される形で収納されており、給紙手段63により画像形成タイミングに合わせて給紙される。ここで、給紙手段63は給紙ローラ等による摩擦分離を利用する方式と、エアによる分離吸着を利用する方式が挙げられるが、図1ではこのうち後者を用いるものとする。
【0021】
給紙手段63により送り出された記録材Sは搬送ユニット64が有する搬送パス64aを通過し、レジストレーション装置65へと搬送される。レジストレーション装置65において斜行補正やタイミング補正を行った後、記録材Sは二次転写部T2へと送られる。
【0022】
二次転写部T2は、中間転写ベルト606を介して対向する二次転写内ローラ603と二次転写外ローラ66により形成される記録材Sへのトナー像転写ニップ部である。これら両ローラの間に所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えることで、中間転写ベルト606から記録材S上にトナー像を吸着させる。
【0023】
[画像形成プロセス]
以上説明した二次転写部T2までの記録材Sの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部T2まで送られて来る画像形成プロセスについて説明する。画像形成部613yは、像担持体である感光体(感光ドラム)608y、露光装置611y、現像装置610y、一次転写装置607y、および感光体クリーナ609y等から構成される。
【0024】
予め帯電手段により表面を一様に帯電され、図中反時計回りの方向に回転する感光体608yに対し、送られてきた画像情報の信号に基づいて露光装置611yが駆動され、回折手段612y等を適宜経由して潜像が形成される。感光体608y上に形成された静電潜像は、現像装置610yによるトナー現像を経て、感光体上にトナー像として顕在化する。
【0025】
その後、一次転写装置607yにより所定の加圧力および静電的負荷バイアスが与えられ、走行駆動する無端ベルトである中間転写ベルト606上にトナー像が転写される。転写後に感光体608y上に僅かに残った転写残トナーは感光体クリーナ609yにより回収され、再び次の画像形成に備える。
【0026】
以上説明した画像形成部613yは、イエロー(Y)の画像を形成する画像形成部である。図1の場合、他にマゼンタ(M)の画像を形成する画像形成部613m、シアン(C)の画像を形成する画像形成部613cおよびブラック(Bk)の画像を形成する画像形成部613kを有する。これらの画像形成部613m、613c、613kは、画像形成部613y等同様の構成及び作用を有するため、説明は省略する。なお、色数は4色に限定されるものではなく、また色の並び順もこの限りではない。
【0027】
無端ベルトである中間転写ベルト606は、内周保持部材である、駆動ローラ604、テンションローラでもあるステアリングローラ605、二次転写内ローラ603等のローラによって張架され、図1中矢印nの方向へと回転駆動される。上述のY、M、CおよびBkの各画像形成部613y、613m、613c、613kにより並列処理される各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト606上に一次転写された上流色のトナー像上に重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト606上に形成され、二次転写部T2へと搬送される。
【0028】
以上、それぞれ説明した記録材Sの搬送プロセスおよび画像形成プロセスを以って、二次転写部T2において記録材S上にフルカラーのトナー像が二次転写される。その後、記録材Sは定着前搬送部67により定着装置68へと搬送される。定着装置68は、対向するローラもしくはベルト等による所定の加圧力と、一般的にはヒータ等の熱源による加熱効果を加えて記録材S上にトナー像を溶融固着させる。
【0029】
このようにして得られた定着画像を有する記録材Sは、分岐搬送装置69により、そのまま排紙トレイ600上に排出されるか、もしくは両面画像形成を要する場合には反転搬送装置601へと搬送されるかの経路選択が行われる。両面画像形成を要する場合、反転搬送装置601へと送られた記録材Sはスイッチバック動作を行うことで先後端を入れ替え、両面搬送装置602へと搬送される。その後、記録材収納庫61より搬送されてくる後続ジョブの記録材とのタイミングを合わせて、搬送ユニット64が有する再給紙パス64bから合流し、同様に二次転写部T2へと送られる。裏面(2面目)の画像形成プロセスに関しては、上述の表面(1面目)の場合と同様なので説明は省略する。
【0030】
[中間転写ユニット]
次に、無端ベルトである中間転写ベルト606を回転駆動するベルト駆動装置である中間転写ユニット200について、図2ないし図4を用いて説明する。中間転写ユニット200は、中間転写ベルト606、駆動手段である駆動ローラ604、移動手段であるステアリングローラ605、基準検知手段である基準検知センサ2、端部検知手段であるエッジ検知センサ1、制御手段である制御部Cを備える。
【0031】
中間転写ベルト606は、上述したように無端ベルトで複数のローラにより張架され、不図示の駆動モータにより駆動される駆動ローラ604により、図2の矢印n方向に回転速度(走行速度)Vで回転駆動される。ここでステアリングローラ605は、他の内周保持部材に対するベルト張架面と交わる方向の平行度を逐次変化させるステアリングローラ傾斜手段であるステアリング機構201により支持されている。
【0032】
ステアリング機構201は、走行駆動時にベルトが斜めに走行する、いわゆるベルト寄りを修正する役割を担うものである。本実施形態では、図3に示すように、ステアリングローラ605を支持する両端の軸受部622、623のうち片側をステアリングアーム8が抱えている。ステアリングアーム8は、図示しない引張りバネなどの付勢手段によるモーメントが回動中心となる支持軸4に対して与えられ、常時ステアリングカム5のカム面に付勢するよう構成されている。ステアリングカム5は、図3のステアリングモータ624の軸上に取り付けられるなどして任意に位相が制御できるようになっている。
【0033】
したがって、ステアリングカム5が図2の矢印a方向に回転すると、ステアリングアーム8およびステアリングローラ605が矢印b方向へ揺動する。一方、ステアリングカム5を矢印aと逆側に駆動すればステアリングアーム8も矢印bと逆側へ揺動する。
【0034】
このように、本実施形態におけるステアリング機構201は、ステアリングローラ605の固定側の軸受部623を基準に他端の軸受部622を可動させることで、その軸アライメントを崩すようにしたものである。この軸アライメントの可変範囲は、ステアリングカム5のカム形状および支持軸4からステアリングローラ605までの距離によって決まり、ベルト寄りの修正に要する最大ステアリング量などから最適な値が割り付けられる。
【0035】
なお、中間転写ベルト606には所定の張力を付与する必要がある。このため、本実施形態ではステアリングローラ605が、図3に示す付勢バネ625、626により中間転写ベルト606の張架面に対し交わる方向に付勢保持され、テンションローラの役割も同時に兼ねている。また、アイドラローラ621を感光体608y〜608kとステアリングローラ605の間に配置することで、ステアリング動作に伴う一次転写部近傍のベルト面が大きく変動しないように抑制している。
【0036】
また、本実施形態の場合、図2、4に示すように、ベルトの回転方向に交差(略直交)する幅方向におけるベルト位置を検知するエッジ検知センサ1を備えている。エッジ検知センサ1は、ベルトの幅方向端部の形状を検出して、このベルトの幅方向位置を検知する。本実施形態の場合、例えば、ベルトの幅方向端部に接触するアーム式の接触子が倒れた量をギャップセンサなどにより中間転写ベルト606のエッジ形状F1を検出し、その移動量(すなわちベルトの寄り量)に変換する。なお、エッジ検知センサ1としては、このような接触式以外のもので、例えば、レーザを使用した非接触式のものでも良い。要は、ベルトの幅方向端部の形状を検出できれば良い。
【0037】
更に、図2に示すように、中間転写ベルト606の内周面には中間転写ベルト606の回転方向(周方向)の基準位置となる基準マーク3(シート状のシールなど)が貼り付けられている。基準マーク3は、中間転写ベルト606の走行中に基準検知センサ2によって検知される。基準検知センサ2は、中間転写ベルト606の内周面に対向するように配置され、例えば、内周面に向けて光を照射し、その反射光を検知することにより基準マーク3を検知する。この基準検知センサ2の中間転写ベルト606の回転方向の位置は、後述する関係を満たす。
【0038】
[中間転写ベルトのエッジ形状及び構成について]
次に、図5ないし図9を用いて中間転写ベルト606のエッジ形状と、基準マーク3の貼り付け位置の詳細に関して説明する。中間転写ベルト606を製造する場合、図5に示すように、まず、中間転写ユニット200に取り付けられる(実際に使用される)中間転写ベルト606よりも幅方向の長さが長い無端状のベルト基材700を製造する。本実施形態の場合、ベルト基材700の幅は、中間転写ベルト606の幅の約2倍強の長さとしている。そして、このベルト基材700を、幅方向所定位置である、図5の点線E1部で周方向に沿って切断することにより、1回の成型と切断加工で2本の中間転写ベルトを生産できる。
【0039】
また生産過程でベルト基材700の端部エリア(点線E2、点線E3の外側)において、バリやヒケが生じたり、ベルト基材700の周方向に厚みが不安定でムラ生じたりする場合がある。この場合には、点線E2、点線E3部を切断して中間転写ベルト606のエッジ精度を確保する。
【0040】
以上のベルト基材700の切断は、図6に示すようなベルト基材カット装置300で実施される。ベルト基材700は、不図示の駆動ローラ及びテンションローラにより張架され、テンションローラにより矢印T方向へ張力が付与され、駆動ローラにより矢印m方向に駆動される。切断作業は、ベルト基材700を駆動ローラにより回転させつつ、図6に示すようにカット手段であるカッター301により、点線E1上の周方向任意のC部から切断が開始される。即ち、C部が切断開始位置である。そして、ベルト基材700を1周させて、カッター301によりベルト基材700を切断する。
【0041】
なお、点線E2及び点線E3においても、必要に応じて同様に切断動作が行われる。この場合、カッター301は、各点線位置にそれぞれ複数個配置して、これら各位置を同時に切断するようにしても良いし、1個或いは複数個のカッターを、幅方向に移動させて各々の位置で順次切断するようにしても良い。
【0042】
図8は、ベルト基材700を点線E1〜E3で切断した状態を示す。図5のベルト基材700は以上のように切断され、図8に示すような2本の中間転写ベルト606、606aが作成される。このように製造される中間転写ベルト606、606aの幅方向端部には、図8に示すエッジ形状F1、F3、F1´、F2、がそれぞれ形成される。
【0043】
ここで、図7に示す様に、ベルト基材700を駆動走行させながら切断する際に、このベルト基材700を張架する駆動ローラやテンションローラなどの張架ローラ3のミスアライメント等により、寄り動作が発生する。この寄り動作は、装置の調整等によって寄り量を抑制する工夫がなされるが、その寄り量をゼロにすることは難しい。このため、ベルト基材700を切断すべく回転駆動すると、ベルト基材700が図7のsq方向に寄ってしまう。そして、図9に示すように、切断開始位置D1と切断終了位置D2の幅方向位置にずれが生じる。この結果、中間転写ベルト606の1周のエッジ形状F1において、段差Dが生じる。
【0044】
本実施形態では、このように製造過程で生じる段差Dに対応した位置に、図10に示すように、この段差Dの位置を特定するための印である基準マーク3を設けている。即ち、中間転写ベルト606の内周面に、幅方向端部に存在する段差D(切断開始位置D1と切断終了位置D2)を回転方向に跨ぐように、基準マーク3を設けている。この基準マーク3の回転方向の長さは、段差Dの回転方向の長さよりも長く、所定の範囲L1を有する。したがって、段差Dは回転方向に関し、この所定の範囲L1内に位置する。
【0045】
このような基準マーク3は、シールを貼ることで設けても良いし、塗料などを直接塗布することにより設けても良い。更には磁石などを貼り付けて磁気を検知するようにしても良い。何れにしても、基準マーク3を設けて基準検知センサ2によってこの基準マーク3を検知することにより、段差Dの位置を特定することができる。なお、基準マークは、上述の所定の範囲L1の少なくとも後端に設けられていれば良い。また、段差Dの位置を特定するためには、段差Dとの位置関係が明らかな位置に印が存在すれば良い。例えば、段差Dからベルトの周方向に所定の長さずれた位置に印を設けても良い。
【0046】
[ステアリング制御とベルトエッジ検知について]
次に、図11ないし図14を用いて本実施形態におけるベルト寄りを修正するステアリング制御、及び、ベルトエッジ検知について説明する。図11に示すように、本実施形態の制御部Cは、エッジ検知センサ1の検知結果から、予め設定された目標エッジ位置との差分をベルトエッジ差分算出手段51により算出し、これに基づいて制御コントローラ50が中間転写ユニット200を制御する。
【0047】
ここで、予め設定された目標エッジ位置は、エッジ検知センサ1により中間転写ベルト606のエッジをサンプリングして、エッジ形状のプロファイルを取得し、このプロファイルに基づいて定めている。即ち、このプロファイルを記憶手段503に記憶し、実際の寄り制御時に検知したベルトのエッジ形状のプロファイルとの差分を算出する。そして、この差分に基づき、ベルトを目標位置へと寄り制御を行う。
【0048】
また、サンプリングは、基準検知センサ2により中間転写ベルト606の基準位置を検知してから、設定されたサンプリング周期で行うが、本実施形態の場合、この基準位置は、基準マーク3(所定の範囲L1)の回転方向端部としている。即ち、基準検知センサ2が基準マーク3の回転方向端部(ここでは後端)を検知すると、エッジ検知センサ1により、次述するように設定されたサンプリング周期でベルトのエッジを検知する。また、サンプリング周期は、1周ごとに、即ち、基準検知センサ2が基準マーク3の回転方向後端を検知するごとにリセットされる。
【0049】
本実施形態の場合、このようなベルトのエッジ検知は、中間転写ベルト606の1周ごとに、エッジ検知センサ1によるサンプリングを複数回行うが、この検知間隔時間(サンプリング周期)Tsは、次のように設定している。即ち、サンプリング周期は、基準検知センサ2が基準マーク3を基準位置として検知したタイミングに基づいて、エッジ検知センサ1による検知が段差Dから外れた位置で行われるように設定されている。
【0050】
具体的には、次のように行っている。図12に示すように、基準マーク3の周方向の長さ(所定の範囲)をL1、中間転写ベルト606の矢印n方向への回転速度をV、基準検知センサ2の検知位置Hsからエッジ検知センサ1の検知位置Esまでの周方向の長さをL2とする。なお、L2は、回転方向nに関し、基準検知センサ2から二次転写内ローラ603、駆動ローラ604を通るエッジ検知センサ1までの長さである。また、基準検知センサ2が基準マーク3の回転方向端部を検知した時点で、エッジ検知センサ1が検知を開始する。
【0051】
この時に以下の2つの関係式を満たすようにしている。なお、Kは自然数である。
L1≦V×Ts
L2=K×(V×Ts)
【0052】
即ち、この2式を満たすように、サンプリング周期Ts、エッジ検知センサ1と基準検知センサ2との位置関係、基準マーク3の周方向の長さL1等を適切に設定する。具体的には、エッジ検知センサ1と基準検知センサ2との位置関係(L2)、中間転写ベルト606の回転速度Vが定まっているとすると、基準マーク3の周方向の長さL1に対応させて、サンプリング周期Tsを設定することになる。
【0053】
基準マーク3の回転方向の長さL1を、サンプリングの間隔(V×Ts)以下とすることにより、この基準マーク3の範囲内に存在する段差Dの回転方向前後でサンプリングが行われる。また、基準検知センサ2とエッジ検知センサ1との間の距離を、サンプリングの間隔の自然数倍とする。これにより、基準検知センサ2が基準マーク3の回転方向後端を検知したタイミングでエッジ検知センサ1が検知を開始すれば、上述のサンプリングの間隔では、エッジ検知センサ1が段差Dを検知することはない。なお、検知する基準マーク3の位置は回転方向前端でも良い。
【0054】
例えば、K=11と設定すると、図13に破線で示すタイミングでエッジ検知センサ1によるサンプリングが行われる。即ち、基準検知センサ2が基準マーク3の後端を検知したことをトリガーに中間転写ベルト606のエッジ形状F1の取得が開始されるため、エッジ検知センサ1が段差Dを検知することはない。
【0055】
なお、サンプリング周期は、エッジ検知センサ1が検知を開始するタイミングを、基準検知センサ2が基準マーク3の回転方向後端を検知したタイミングからずらせば、上述の関係を満たさなくても良い。例えば、基準検知センサ2が検知してから所定時間経過後に、エッジ検知センサ1が検知を開始するようにした場合、この所定時間を考慮して、サンプリング周期を設定する。
【0056】
このような本実施形態のステアリング制御とベルトエッジ検知の流れについて、図14を用いて説明する。まず、作像指示や、各種画像調整モードにおいて中間転写ベルト606の駆動開始が指示されると(S800)、図11の制御コントローラ50からベルト駆動モータドライバ500に駆動開始指令が送信される(S801)。引続き、ステアリング機構201によるベルト寄り制御が開始される(S802)。基準検知センサ2が中間転写ベルト606内周面の基準マーク3の後端を検知すると(S803のYes)、制御コントローラ50は、上述のサンプリング周期Tsでエッジ検知センサ1のベルトエッジ位置データを取得する(S804)。
【0057】
そして、ベルトエッジ差分算出手段51により、予め設定された目標エッジ位置との差分が算出される(S805)。制御コントローラ50においては、ベルト位置検知手段であるエッジ検知センサ1の複数回Nの検知結果を用いることで、所謂PID制御の演算則に従って、ステアリングカム5の目標位相が算出される(S806)。その目標位相にしたがってステアリングカム駆動モータドライバ501に駆動指令が送信される(S807)。
【0058】
そして以降、S803からS807までの動作は中間転写ベルトが駆動動作されている間は所定の制御間隔で常時繰り返される(S808)。作像や各種画像調整モードが終了すると、ベルト駆動モータドライバへ駆動停止指令が送信され(S809)、中間転写ベルト606の回転が停止する(S810)。
【0059】
本実施形態の場合、エッジ形状F1データの取得時は、段差D近傍をサンプリングすることがなくなる為、得られたエッジ形状F1のデータの中に、段差Dのノイズが含まれることがなくなり、中間転写ベルト606の寄り量を高精度に検出できる。このため、段差Dの存在により寄り制御の精度が低下することを防止できる。これにより、中間転写ベルト606が駆動されている間は、安定したステアリング制御(寄り制御)を行うことができ、主走査色ずれ等の画像精度を向上させることができる。
【0060】
また、従来構成に対して追加する部品等もない為、コストUPなしに機能を向上させることができる。更に切断段差の位置を確実に認識できる構成である為、段差を認識する為の動作時間が短縮可能となり、更なる生産性の向上、高速化が可能となる。
【0061】
<他の実施形態>
上述の実施形態の場合、ベルトのエッジに存在する段差が1個の場合について説明したが、複数ある場合でも本発明を適用可能である。この場合、複数の段差を特定し、それぞれに関連した印を設け、その印の検知に基づいてエッジ検知のサンプリング周期を設定する。例えば、上述のL1、L2の式をそれぞれの段差で満たすようにすうる。この際、L2は各段差との位置関係で関連付けて設定する。
【0062】
また、上述の実施形態では、中間転写方式の画像形成装置に本発明を適用した場合について説明したが、感光体などの像担持体から、記録材搬送ベルトにより搬送される記録材に直接転写する方式にも適用可能である。この場合、記録材搬送ベルトの寄り制御を上述の実施形態と同様に行う。
【0063】
また、本発明は、このような中間転写ベルトや記録材搬送ベルトの駆動装置以外にも、例えば、定着装置で無端ベルトを使用する構造にも適用可能である。また、上述の画像形成装置以外でも、回転駆動される無端ベルトを有するベルト駆動装置により制御に好ましく適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1・・・エッジ検知センサ(端部検知手段)、2・・・基準検知センサ(基準検知手段)、3・・・基準マーク(印)、200・・・中間転写ユニット(ベルト駆動装置)、604・・・駆動ローラ(駆動手段)、605・・・ステアリングローラ(移動手段)、606・・・中間転写ベルト(無端ベルト)、608・・・感光体(像担持体)、700・・・ベルト基材、C・・・制御部(制御手段)、D・・・段差
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルトを寄り制御しつつ回転駆動するベルト駆動装置、及び、このようなベルト駆動装置を有する、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置の印刷生産性を上げるための高速化に伴い、無端ベルト状の転写ベルトに複数の像担持体を並べて配置し、各色の作像プロセスを並行処理する構成のタンデム方式が主流となっている。例えば電子写真方式のフルカラー画像形成装置における中間転写ベルトがその代表例として挙げられるが、更なる高速化対応技術を安価な構成で提供することが求められている。
【0003】
中間転写ベルトは各色のトナー像が順次ベルト表面に重ねあわされて転写され、記録材に対してフルカラーのトナー像を一括的に転写するというものであり、駆動ローラをはじめとする複数のローラによって張架および走行駆動されている。このような、複数のローラに張架された無端ベルトは、ローラの外径精度や各ローラ間のアライメント精度などによって、走行駆動時にいずれかの端部方向に寄ってしまうという課題が一般的に知られている。
【0004】
このベルト寄りに対して、従来から、ベルトエッジ(幅方向端部)の位置変動を検知して、ベルトの内周保持部材の1つであるステアリングローラに傾きを与えることで、ベルトの寄りをコントロールする寄り制御が行われている。この寄り制御はベルト寄りきりによるベルト破損を防止することに効果がある。また、ベルトのエッジ位置を複数回検知することでベルトの搬送方向変動を検出し画像形成タイミングを調整することで色ずれも抑制する方法が提案されている。
【0005】
更に、その制御精度を向上させる為に、ベルトエッジ形状のデータを取得、記憶し、取得したデータと記憶したデータを比較した結果に基づいてステアリングの制御に反映させる方法が提案されている(特許文献1参照)。このベルトエッジ形状データの取得は、ベルトの周方向面上に設けられた基準マークの位置を基準検知センサで読み取り、基準マークの検知をトリガーにベルト1周でN回のサンプリングすることによって実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−295948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように、ベルトのエッジ形状を検知してベルトの寄り制御を行う場合、以下の問題があった。まず、中間転写ベルトなどの無端ベルトは、低コストで生産するため、ベルトの幅方向長さを複数個分の長さで成型し、後加工で実使用幅の長さに切断して得られる。即ち、実際に使用するベルトよりも幅方向の長さが長いベルト基材を製造し、このベルト基材を切断することにより実際に使用するベルトを得るようにしている。また、無端ベルトのエッジ形状の精度、エッジ部のベルト厚みムラの精度を確保する為に、後加工でベルトエッジ部を切断加工して使用する場合がある。
【0008】
何れにしても、ベルト基材を切断する場合、切断するための工具をベルトの周方向に沿って相対移動させる。この際、切断開始位置と切断終了位置とでずれが生じ、この部分が段差としてベルトの幅方向端部(エッジ)に存在することになる。即ち、切断する際には、ベルトを回転しつつ工具をこのベルトの所定位置に当てて切断するが、この切断作業の際もベルトの寄り制御を行う。このため、切断開始位置と切断終了位置とを一致させることが難しく、この部分に段差が生じてしまう。
【0009】
このようにエッジに段差を有する無端ベルトの寄り制御を、エッジ形状の検知結果(プロファイル)により実施する場合、段差を誤検知して寄り制御を好ましく行えない可能性がある。即ち、ベルトのエッジをサンプリングすると、図15に示す様な、段差Dを有するプロファイルを取得する。そして、このように取得したプロファイルを、記憶したプロファイルと比較して、その差分に応じて寄り制御を行うが、図16に示す様に、段差Dの位置が、取得プロファイルと記憶プロファイルとでずれる場合がある。即ち、ベルトの回転速度の変動などにより、時間軸でプロファイルに微小なずれが生じると、段差Dの位置も時間軸でずれて検知される。
【0010】
このように取得プロファイルと記憶プロファイルとで段差Dとの位置がずれて検知されると、図17に示す様に、段差Dの振幅が大きい分、その差分が大きく検知されてしまう。そして、実際には差分が大きくないにも拘らず、「差分が大きい」と誤検知されてしまう。このように誤検知された差分により寄り制御を行うと、ベルトの蛇行が大きくなったりするなど、想定していた制御から外れてしまう。即ち、寄り制御の精度が低下してしまう。
【0011】
特に、近年、画像形成装置の高速化に伴って、ベルトの回転速度が速くなり、ベルトエッジの切断段差がエッジ検知センサを通過する際に、センサが受ける衝撃は大きくなる。このため、切断段差を検知してしまうと、取得形状のノイズが大きくなったりして、取得プロファイルが不安定になり、制御上好ましくない。
【0012】
このような段差が存在することによる寄り制御の問題に対して、この段差を小さくすべくベルトの加工精度を向上させることが考えられる。但し、加工精度を向上させるとベルトの製造コストが増大することが避けられない。
【0013】
また、ベルトを複数周駆動して段差の位置を特定し、それに基づいて制御を行うことも考えられる。但し、ベルトを複数周駆動する分、画像形成装置の生産性が低下してしまう。したがって、何れの場合も、近年の画像形成装置の低コスト化、生産性の向上と言う要求に反してしまう。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑み、ベルトの幅方向端部の段差の存在により、ベルトの寄り制御の精度が低下することを防止できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、無端ベルトと、前記無端ベルトを回転駆動する駆動手段と、前記無端ベルトを回転方向に交差する幅方向に移動させる移動手段と、前記無端ベルトの基準位置を検知する基準検知手段と、前記無端ベルトの幅方向端部の形状を検出して、前記無端ベルトの幅方向位置を検知する端部検知手段と、前記基準検知手段により前記無端ベルトの基準位置を検知してから、設定されたサンプリング周期で前記無端ベルトの幅方向位置を前記端部検知手段に検知させ、この検知結果に基づいて前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、前記無端ベルトには、幅方向端部に存在する段差の位置を特定するための印が設けられ、前記サンプリング周期は、前記基準検知手段が前記印を基準位置として検知したタイミングに基づいて、前記端部検知手段による検知が前記段差から外れた位置で行われるように設定されている、ことを特徴とするベルト駆動装置にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、端部検知手段が段差を検知することはないため、ベルトの幅方向端部の段差の存在により、ベルトの寄り制御の精度が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【図2】図1の上半部を拡大して示す図。
【図3】中間転写ベルトのステアリング機構の概略斜視図。
【図4】感光ドラムと中間転写ユニットの概略斜視図。
【図5】ベルト基材の斜視図。
【図6】ベルト基材を切断する構成を説明するための概略斜視図。
【図7】ベルト基材の切断途中を示す、図6と同様の図。
【図8】ベルト基材を切断した状態を示す概略斜視図。
【図9】ベルトの幅方向端部に存在する段差を拡大して示す概略斜視図。
【図10】ベルトの段差を跨ぐように設けた基準マーク周辺を拡大して示す概略斜視図。
【図11】ベルト寄り制御のブロック図。
【図12】中間転写ユニットの概略構成断面図。
【図13】ベルトの幅方向端部の取得プロファイルとサンプリング間隔を示す図。
【図14】ベルト寄り制御のフローチャート。
【図15】エッジ検知センサにより取得したベルトの幅方向端部のプロファイルを示す図。
【図16】ベルトの幅方向端部の取得プロファイルと記憶プロファイルとが時間軸でずれた状態を示す図。
【図17】図16の取得プロファイルと記憶プロファイルとの差分を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る実施形態について、図1ないし図14を用いて説明する。まず、図1を用いて本実施形態の画像形成装置の概略構成について説明する。なお、本発明は、電子写真方式、インクジェット方式などの画像形成装置に適用可能であるが、本実施形態は、本発明を電子写真方式の画像形成装置に適用したものである。
【0019】
[画像形成装置]
画像形成装置60は、4色の画像形成部613y、613m、613c、613kを中間転写ベルト606上に並べて配置した、所謂中間転写タンデム方式の画像形成装置であり、厚紙対応力や生産性に優れる点から近年主流になっている。このような画像形成装置60は、各画像形成部613y、613m、613c、613kでそれぞれ形成された各色のトナー像を中間転写ベルト606上に重ねて転写し、二次転写部T2で搬送されてきた記録材Sに中間転写ベルト606上のトナー像を転写する。この記録材Sの搬送プロセスについて説明する。
【0020】
[記録材の搬送プロセス]
記録材Sは、記録材収納庫61内のリフトアップ装置62上に積載される形で収納されており、給紙手段63により画像形成タイミングに合わせて給紙される。ここで、給紙手段63は給紙ローラ等による摩擦分離を利用する方式と、エアによる分離吸着を利用する方式が挙げられるが、図1ではこのうち後者を用いるものとする。
【0021】
給紙手段63により送り出された記録材Sは搬送ユニット64が有する搬送パス64aを通過し、レジストレーション装置65へと搬送される。レジストレーション装置65において斜行補正やタイミング補正を行った後、記録材Sは二次転写部T2へと送られる。
【0022】
二次転写部T2は、中間転写ベルト606を介して対向する二次転写内ローラ603と二次転写外ローラ66により形成される記録材Sへのトナー像転写ニップ部である。これら両ローラの間に所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えることで、中間転写ベルト606から記録材S上にトナー像を吸着させる。
【0023】
[画像形成プロセス]
以上説明した二次転写部T2までの記録材Sの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部T2まで送られて来る画像形成プロセスについて説明する。画像形成部613yは、像担持体である感光体(感光ドラム)608y、露光装置611y、現像装置610y、一次転写装置607y、および感光体クリーナ609y等から構成される。
【0024】
予め帯電手段により表面を一様に帯電され、図中反時計回りの方向に回転する感光体608yに対し、送られてきた画像情報の信号に基づいて露光装置611yが駆動され、回折手段612y等を適宜経由して潜像が形成される。感光体608y上に形成された静電潜像は、現像装置610yによるトナー現像を経て、感光体上にトナー像として顕在化する。
【0025】
その後、一次転写装置607yにより所定の加圧力および静電的負荷バイアスが与えられ、走行駆動する無端ベルトである中間転写ベルト606上にトナー像が転写される。転写後に感光体608y上に僅かに残った転写残トナーは感光体クリーナ609yにより回収され、再び次の画像形成に備える。
【0026】
以上説明した画像形成部613yは、イエロー(Y)の画像を形成する画像形成部である。図1の場合、他にマゼンタ(M)の画像を形成する画像形成部613m、シアン(C)の画像を形成する画像形成部613cおよびブラック(Bk)の画像を形成する画像形成部613kを有する。これらの画像形成部613m、613c、613kは、画像形成部613y等同様の構成及び作用を有するため、説明は省略する。なお、色数は4色に限定されるものではなく、また色の並び順もこの限りではない。
【0027】
無端ベルトである中間転写ベルト606は、内周保持部材である、駆動ローラ604、テンションローラでもあるステアリングローラ605、二次転写内ローラ603等のローラによって張架され、図1中矢印nの方向へと回転駆動される。上述のY、M、CおよびBkの各画像形成部613y、613m、613c、613kにより並列処理される各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト606上に一次転写された上流色のトナー像上に重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト606上に形成され、二次転写部T2へと搬送される。
【0028】
以上、それぞれ説明した記録材Sの搬送プロセスおよび画像形成プロセスを以って、二次転写部T2において記録材S上にフルカラーのトナー像が二次転写される。その後、記録材Sは定着前搬送部67により定着装置68へと搬送される。定着装置68は、対向するローラもしくはベルト等による所定の加圧力と、一般的にはヒータ等の熱源による加熱効果を加えて記録材S上にトナー像を溶融固着させる。
【0029】
このようにして得られた定着画像を有する記録材Sは、分岐搬送装置69により、そのまま排紙トレイ600上に排出されるか、もしくは両面画像形成を要する場合には反転搬送装置601へと搬送されるかの経路選択が行われる。両面画像形成を要する場合、反転搬送装置601へと送られた記録材Sはスイッチバック動作を行うことで先後端を入れ替え、両面搬送装置602へと搬送される。その後、記録材収納庫61より搬送されてくる後続ジョブの記録材とのタイミングを合わせて、搬送ユニット64が有する再給紙パス64bから合流し、同様に二次転写部T2へと送られる。裏面(2面目)の画像形成プロセスに関しては、上述の表面(1面目)の場合と同様なので説明は省略する。
【0030】
[中間転写ユニット]
次に、無端ベルトである中間転写ベルト606を回転駆動するベルト駆動装置である中間転写ユニット200について、図2ないし図4を用いて説明する。中間転写ユニット200は、中間転写ベルト606、駆動手段である駆動ローラ604、移動手段であるステアリングローラ605、基準検知手段である基準検知センサ2、端部検知手段であるエッジ検知センサ1、制御手段である制御部Cを備える。
【0031】
中間転写ベルト606は、上述したように無端ベルトで複数のローラにより張架され、不図示の駆動モータにより駆動される駆動ローラ604により、図2の矢印n方向に回転速度(走行速度)Vで回転駆動される。ここでステアリングローラ605は、他の内周保持部材に対するベルト張架面と交わる方向の平行度を逐次変化させるステアリングローラ傾斜手段であるステアリング機構201により支持されている。
【0032】
ステアリング機構201は、走行駆動時にベルトが斜めに走行する、いわゆるベルト寄りを修正する役割を担うものである。本実施形態では、図3に示すように、ステアリングローラ605を支持する両端の軸受部622、623のうち片側をステアリングアーム8が抱えている。ステアリングアーム8は、図示しない引張りバネなどの付勢手段によるモーメントが回動中心となる支持軸4に対して与えられ、常時ステアリングカム5のカム面に付勢するよう構成されている。ステアリングカム5は、図3のステアリングモータ624の軸上に取り付けられるなどして任意に位相が制御できるようになっている。
【0033】
したがって、ステアリングカム5が図2の矢印a方向に回転すると、ステアリングアーム8およびステアリングローラ605が矢印b方向へ揺動する。一方、ステアリングカム5を矢印aと逆側に駆動すればステアリングアーム8も矢印bと逆側へ揺動する。
【0034】
このように、本実施形態におけるステアリング機構201は、ステアリングローラ605の固定側の軸受部623を基準に他端の軸受部622を可動させることで、その軸アライメントを崩すようにしたものである。この軸アライメントの可変範囲は、ステアリングカム5のカム形状および支持軸4からステアリングローラ605までの距離によって決まり、ベルト寄りの修正に要する最大ステアリング量などから最適な値が割り付けられる。
【0035】
なお、中間転写ベルト606には所定の張力を付与する必要がある。このため、本実施形態ではステアリングローラ605が、図3に示す付勢バネ625、626により中間転写ベルト606の張架面に対し交わる方向に付勢保持され、テンションローラの役割も同時に兼ねている。また、アイドラローラ621を感光体608y〜608kとステアリングローラ605の間に配置することで、ステアリング動作に伴う一次転写部近傍のベルト面が大きく変動しないように抑制している。
【0036】
また、本実施形態の場合、図2、4に示すように、ベルトの回転方向に交差(略直交)する幅方向におけるベルト位置を検知するエッジ検知センサ1を備えている。エッジ検知センサ1は、ベルトの幅方向端部の形状を検出して、このベルトの幅方向位置を検知する。本実施形態の場合、例えば、ベルトの幅方向端部に接触するアーム式の接触子が倒れた量をギャップセンサなどにより中間転写ベルト606のエッジ形状F1を検出し、その移動量(すなわちベルトの寄り量)に変換する。なお、エッジ検知センサ1としては、このような接触式以外のもので、例えば、レーザを使用した非接触式のものでも良い。要は、ベルトの幅方向端部の形状を検出できれば良い。
【0037】
更に、図2に示すように、中間転写ベルト606の内周面には中間転写ベルト606の回転方向(周方向)の基準位置となる基準マーク3(シート状のシールなど)が貼り付けられている。基準マーク3は、中間転写ベルト606の走行中に基準検知センサ2によって検知される。基準検知センサ2は、中間転写ベルト606の内周面に対向するように配置され、例えば、内周面に向けて光を照射し、その反射光を検知することにより基準マーク3を検知する。この基準検知センサ2の中間転写ベルト606の回転方向の位置は、後述する関係を満たす。
【0038】
[中間転写ベルトのエッジ形状及び構成について]
次に、図5ないし図9を用いて中間転写ベルト606のエッジ形状と、基準マーク3の貼り付け位置の詳細に関して説明する。中間転写ベルト606を製造する場合、図5に示すように、まず、中間転写ユニット200に取り付けられる(実際に使用される)中間転写ベルト606よりも幅方向の長さが長い無端状のベルト基材700を製造する。本実施形態の場合、ベルト基材700の幅は、中間転写ベルト606の幅の約2倍強の長さとしている。そして、このベルト基材700を、幅方向所定位置である、図5の点線E1部で周方向に沿って切断することにより、1回の成型と切断加工で2本の中間転写ベルトを生産できる。
【0039】
また生産過程でベルト基材700の端部エリア(点線E2、点線E3の外側)において、バリやヒケが生じたり、ベルト基材700の周方向に厚みが不安定でムラ生じたりする場合がある。この場合には、点線E2、点線E3部を切断して中間転写ベルト606のエッジ精度を確保する。
【0040】
以上のベルト基材700の切断は、図6に示すようなベルト基材カット装置300で実施される。ベルト基材700は、不図示の駆動ローラ及びテンションローラにより張架され、テンションローラにより矢印T方向へ張力が付与され、駆動ローラにより矢印m方向に駆動される。切断作業は、ベルト基材700を駆動ローラにより回転させつつ、図6に示すようにカット手段であるカッター301により、点線E1上の周方向任意のC部から切断が開始される。即ち、C部が切断開始位置である。そして、ベルト基材700を1周させて、カッター301によりベルト基材700を切断する。
【0041】
なお、点線E2及び点線E3においても、必要に応じて同様に切断動作が行われる。この場合、カッター301は、各点線位置にそれぞれ複数個配置して、これら各位置を同時に切断するようにしても良いし、1個或いは複数個のカッターを、幅方向に移動させて各々の位置で順次切断するようにしても良い。
【0042】
図8は、ベルト基材700を点線E1〜E3で切断した状態を示す。図5のベルト基材700は以上のように切断され、図8に示すような2本の中間転写ベルト606、606aが作成される。このように製造される中間転写ベルト606、606aの幅方向端部には、図8に示すエッジ形状F1、F3、F1´、F2、がそれぞれ形成される。
【0043】
ここで、図7に示す様に、ベルト基材700を駆動走行させながら切断する際に、このベルト基材700を張架する駆動ローラやテンションローラなどの張架ローラ3のミスアライメント等により、寄り動作が発生する。この寄り動作は、装置の調整等によって寄り量を抑制する工夫がなされるが、その寄り量をゼロにすることは難しい。このため、ベルト基材700を切断すべく回転駆動すると、ベルト基材700が図7のsq方向に寄ってしまう。そして、図9に示すように、切断開始位置D1と切断終了位置D2の幅方向位置にずれが生じる。この結果、中間転写ベルト606の1周のエッジ形状F1において、段差Dが生じる。
【0044】
本実施形態では、このように製造過程で生じる段差Dに対応した位置に、図10に示すように、この段差Dの位置を特定するための印である基準マーク3を設けている。即ち、中間転写ベルト606の内周面に、幅方向端部に存在する段差D(切断開始位置D1と切断終了位置D2)を回転方向に跨ぐように、基準マーク3を設けている。この基準マーク3の回転方向の長さは、段差Dの回転方向の長さよりも長く、所定の範囲L1を有する。したがって、段差Dは回転方向に関し、この所定の範囲L1内に位置する。
【0045】
このような基準マーク3は、シールを貼ることで設けても良いし、塗料などを直接塗布することにより設けても良い。更には磁石などを貼り付けて磁気を検知するようにしても良い。何れにしても、基準マーク3を設けて基準検知センサ2によってこの基準マーク3を検知することにより、段差Dの位置を特定することができる。なお、基準マークは、上述の所定の範囲L1の少なくとも後端に設けられていれば良い。また、段差Dの位置を特定するためには、段差Dとの位置関係が明らかな位置に印が存在すれば良い。例えば、段差Dからベルトの周方向に所定の長さずれた位置に印を設けても良い。
【0046】
[ステアリング制御とベルトエッジ検知について]
次に、図11ないし図14を用いて本実施形態におけるベルト寄りを修正するステアリング制御、及び、ベルトエッジ検知について説明する。図11に示すように、本実施形態の制御部Cは、エッジ検知センサ1の検知結果から、予め設定された目標エッジ位置との差分をベルトエッジ差分算出手段51により算出し、これに基づいて制御コントローラ50が中間転写ユニット200を制御する。
【0047】
ここで、予め設定された目標エッジ位置は、エッジ検知センサ1により中間転写ベルト606のエッジをサンプリングして、エッジ形状のプロファイルを取得し、このプロファイルに基づいて定めている。即ち、このプロファイルを記憶手段503に記憶し、実際の寄り制御時に検知したベルトのエッジ形状のプロファイルとの差分を算出する。そして、この差分に基づき、ベルトを目標位置へと寄り制御を行う。
【0048】
また、サンプリングは、基準検知センサ2により中間転写ベルト606の基準位置を検知してから、設定されたサンプリング周期で行うが、本実施形態の場合、この基準位置は、基準マーク3(所定の範囲L1)の回転方向端部としている。即ち、基準検知センサ2が基準マーク3の回転方向端部(ここでは後端)を検知すると、エッジ検知センサ1により、次述するように設定されたサンプリング周期でベルトのエッジを検知する。また、サンプリング周期は、1周ごとに、即ち、基準検知センサ2が基準マーク3の回転方向後端を検知するごとにリセットされる。
【0049】
本実施形態の場合、このようなベルトのエッジ検知は、中間転写ベルト606の1周ごとに、エッジ検知センサ1によるサンプリングを複数回行うが、この検知間隔時間(サンプリング周期)Tsは、次のように設定している。即ち、サンプリング周期は、基準検知センサ2が基準マーク3を基準位置として検知したタイミングに基づいて、エッジ検知センサ1による検知が段差Dから外れた位置で行われるように設定されている。
【0050】
具体的には、次のように行っている。図12に示すように、基準マーク3の周方向の長さ(所定の範囲)をL1、中間転写ベルト606の矢印n方向への回転速度をV、基準検知センサ2の検知位置Hsからエッジ検知センサ1の検知位置Esまでの周方向の長さをL2とする。なお、L2は、回転方向nに関し、基準検知センサ2から二次転写内ローラ603、駆動ローラ604を通るエッジ検知センサ1までの長さである。また、基準検知センサ2が基準マーク3の回転方向端部を検知した時点で、エッジ検知センサ1が検知を開始する。
【0051】
この時に以下の2つの関係式を満たすようにしている。なお、Kは自然数である。
L1≦V×Ts
L2=K×(V×Ts)
【0052】
即ち、この2式を満たすように、サンプリング周期Ts、エッジ検知センサ1と基準検知センサ2との位置関係、基準マーク3の周方向の長さL1等を適切に設定する。具体的には、エッジ検知センサ1と基準検知センサ2との位置関係(L2)、中間転写ベルト606の回転速度Vが定まっているとすると、基準マーク3の周方向の長さL1に対応させて、サンプリング周期Tsを設定することになる。
【0053】
基準マーク3の回転方向の長さL1を、サンプリングの間隔(V×Ts)以下とすることにより、この基準マーク3の範囲内に存在する段差Dの回転方向前後でサンプリングが行われる。また、基準検知センサ2とエッジ検知センサ1との間の距離を、サンプリングの間隔の自然数倍とする。これにより、基準検知センサ2が基準マーク3の回転方向後端を検知したタイミングでエッジ検知センサ1が検知を開始すれば、上述のサンプリングの間隔では、エッジ検知センサ1が段差Dを検知することはない。なお、検知する基準マーク3の位置は回転方向前端でも良い。
【0054】
例えば、K=11と設定すると、図13に破線で示すタイミングでエッジ検知センサ1によるサンプリングが行われる。即ち、基準検知センサ2が基準マーク3の後端を検知したことをトリガーに中間転写ベルト606のエッジ形状F1の取得が開始されるため、エッジ検知センサ1が段差Dを検知することはない。
【0055】
なお、サンプリング周期は、エッジ検知センサ1が検知を開始するタイミングを、基準検知センサ2が基準マーク3の回転方向後端を検知したタイミングからずらせば、上述の関係を満たさなくても良い。例えば、基準検知センサ2が検知してから所定時間経過後に、エッジ検知センサ1が検知を開始するようにした場合、この所定時間を考慮して、サンプリング周期を設定する。
【0056】
このような本実施形態のステアリング制御とベルトエッジ検知の流れについて、図14を用いて説明する。まず、作像指示や、各種画像調整モードにおいて中間転写ベルト606の駆動開始が指示されると(S800)、図11の制御コントローラ50からベルト駆動モータドライバ500に駆動開始指令が送信される(S801)。引続き、ステアリング機構201によるベルト寄り制御が開始される(S802)。基準検知センサ2が中間転写ベルト606内周面の基準マーク3の後端を検知すると(S803のYes)、制御コントローラ50は、上述のサンプリング周期Tsでエッジ検知センサ1のベルトエッジ位置データを取得する(S804)。
【0057】
そして、ベルトエッジ差分算出手段51により、予め設定された目標エッジ位置との差分が算出される(S805)。制御コントローラ50においては、ベルト位置検知手段であるエッジ検知センサ1の複数回Nの検知結果を用いることで、所謂PID制御の演算則に従って、ステアリングカム5の目標位相が算出される(S806)。その目標位相にしたがってステアリングカム駆動モータドライバ501に駆動指令が送信される(S807)。
【0058】
そして以降、S803からS807までの動作は中間転写ベルトが駆動動作されている間は所定の制御間隔で常時繰り返される(S808)。作像や各種画像調整モードが終了すると、ベルト駆動モータドライバへ駆動停止指令が送信され(S809)、中間転写ベルト606の回転が停止する(S810)。
【0059】
本実施形態の場合、エッジ形状F1データの取得時は、段差D近傍をサンプリングすることがなくなる為、得られたエッジ形状F1のデータの中に、段差Dのノイズが含まれることがなくなり、中間転写ベルト606の寄り量を高精度に検出できる。このため、段差Dの存在により寄り制御の精度が低下することを防止できる。これにより、中間転写ベルト606が駆動されている間は、安定したステアリング制御(寄り制御)を行うことができ、主走査色ずれ等の画像精度を向上させることができる。
【0060】
また、従来構成に対して追加する部品等もない為、コストUPなしに機能を向上させることができる。更に切断段差の位置を確実に認識できる構成である為、段差を認識する為の動作時間が短縮可能となり、更なる生産性の向上、高速化が可能となる。
【0061】
<他の実施形態>
上述の実施形態の場合、ベルトのエッジに存在する段差が1個の場合について説明したが、複数ある場合でも本発明を適用可能である。この場合、複数の段差を特定し、それぞれに関連した印を設け、その印の検知に基づいてエッジ検知のサンプリング周期を設定する。例えば、上述のL1、L2の式をそれぞれの段差で満たすようにすうる。この際、L2は各段差との位置関係で関連付けて設定する。
【0062】
また、上述の実施形態では、中間転写方式の画像形成装置に本発明を適用した場合について説明したが、感光体などの像担持体から、記録材搬送ベルトにより搬送される記録材に直接転写する方式にも適用可能である。この場合、記録材搬送ベルトの寄り制御を上述の実施形態と同様に行う。
【0063】
また、本発明は、このような中間転写ベルトや記録材搬送ベルトの駆動装置以外にも、例えば、定着装置で無端ベルトを使用する構造にも適用可能である。また、上述の画像形成装置以外でも、回転駆動される無端ベルトを有するベルト駆動装置により制御に好ましく適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1・・・エッジ検知センサ(端部検知手段)、2・・・基準検知センサ(基準検知手段)、3・・・基準マーク(印)、200・・・中間転写ユニット(ベルト駆動装置)、604・・・駆動ローラ(駆動手段)、605・・・ステアリングローラ(移動手段)、606・・・中間転写ベルト(無端ベルト)、608・・・感光体(像担持体)、700・・・ベルト基材、C・・・制御部(制御手段)、D・・・段差
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルトと、
前記無端ベルトを回転駆動する駆動手段と、
前記無端ベルトを回転方向に交差する幅方向に移動させる移動手段と、
前記無端ベルトの基準位置を検知する基準検知手段と、
前記無端ベルトの幅方向端部の形状を検出して、前記無端ベルトの幅方向位置を検知する端部検知手段と、
前記基準検知手段により前記無端ベルトの基準位置を検知してから、設定されたサンプリング周期で前記無端ベルトの幅方向位置を前記端部検知手段に検知させ、この検知結果に基づいて前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記無端ベルトには、幅方向端部に存在する段差の位置を特定するための印が設けられ、
前記サンプリング周期は、前記基準検知手段が前記印を基準位置として検知したタイミングに基づいて、前記端部検知手段による検知が前記段差から外れた位置で行われるように設定されている、
ことを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項2】
前記印は、前記段差の回転方向の長さよりも長く前記段差を回転方向に跨ぐような所定の範囲L1の、少なくとも回転方向端部に設けられ、
前記基準検知手段が前記印を検知した時点で、前記端部検知手段が検知を開始し、
前記サンプリング周期をTs、前記無端ベルトの回転速度をV、前記無端ベルトの回転方向に関し、前記基準検知手段から前記端部検知手段までの長さをL2、Kを自然数としたとき、
L1≦V×Ts
L2=K×(V×Ts)
を満たす、
ことを特徴とする、請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
前記印は、前記無端ベルトの前記段差を回転方向に跨ぐように設けられた長さL1の基準マークであり、
前記基準検知手段は、前記基準マークの回転方向端部を前記基準位置として検知する、
ことを特徴とする、請求項2に記載のベルト駆動装置。
【請求項4】
前記無端ベルトは、前記無端ベルトよりも幅方向の長さが長い無端状のベルト基材を、幅方向所定位置で周方向に沿って切断して得たものであり、
前記段差は、この切断の際に生じる、切断開始位置と切断終了位置とのずれである、
ことを特徴とする、請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載のベルト駆動装置。
【請求項5】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体からトナー像が転写される中間転写ベルトを有し、幅方向位置を制御しつつ前記中間転写ベルトを回転駆動するベルト駆動装置と、を備え、
前記中間転写ベルトからトナー像を記録材に転写して画像形成を行う画像形成装置において、
前記ベルト駆動装置は請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載のベルト駆動装置であり、前記中間転写ベルトは前記無端ベルトである、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
トナー像を担持する像担持体と、
記録材を搬送する記録材搬送ベルトを有し、回転する前記記録材搬送ベルトの幅方向位置を制御するベルト駆動装置と、を備え、
前記像担持体から前記記録材搬送ベルトにより搬送される記録材にトナー像を転写して画像形成を行う画像形成装置において、
前記ベルト駆動装置は請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載のベルト駆動装置であり、前記記録材搬送ベルトは前記無端ベルトである、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
無端ベルトと、
前記無端ベルトを回転駆動する駆動手段と、
前記無端ベルトを回転方向に交差する幅方向に移動させる移動手段と、
前記無端ベルトの基準位置を検知する基準検知手段と、
前記無端ベルトの幅方向端部の形状を検出して、前記無端ベルトの幅方向位置を検知する端部検知手段と、
前記基準検知手段により前記無端ベルトの基準位置を検知してから、設定されたサンプリング周期で前記無端ベルトの幅方向位置を前記端部検知手段に検知させ、この検知結果に基づいて前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記無端ベルトには、幅方向端部に存在する段差の位置を特定するための印が設けられ、
前記サンプリング周期は、前記基準検知手段が前記印を基準位置として検知したタイミングに基づいて、前記端部検知手段による検知が前記段差から外れた位置で行われるように設定されている、
ことを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項2】
前記印は、前記段差の回転方向の長さよりも長く前記段差を回転方向に跨ぐような所定の範囲L1の、少なくとも回転方向端部に設けられ、
前記基準検知手段が前記印を検知した時点で、前記端部検知手段が検知を開始し、
前記サンプリング周期をTs、前記無端ベルトの回転速度をV、前記無端ベルトの回転方向に関し、前記基準検知手段から前記端部検知手段までの長さをL2、Kを自然数としたとき、
L1≦V×Ts
L2=K×(V×Ts)
を満たす、
ことを特徴とする、請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
前記印は、前記無端ベルトの前記段差を回転方向に跨ぐように設けられた長さL1の基準マークであり、
前記基準検知手段は、前記基準マークの回転方向端部を前記基準位置として検知する、
ことを特徴とする、請求項2に記載のベルト駆動装置。
【請求項4】
前記無端ベルトは、前記無端ベルトよりも幅方向の長さが長い無端状のベルト基材を、幅方向所定位置で周方向に沿って切断して得たものであり、
前記段差は、この切断の際に生じる、切断開始位置と切断終了位置とのずれである、
ことを特徴とする、請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載のベルト駆動装置。
【請求項5】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体からトナー像が転写される中間転写ベルトを有し、幅方向位置を制御しつつ前記中間転写ベルトを回転駆動するベルト駆動装置と、を備え、
前記中間転写ベルトからトナー像を記録材に転写して画像形成を行う画像形成装置において、
前記ベルト駆動装置は請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載のベルト駆動装置であり、前記中間転写ベルトは前記無端ベルトである、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
トナー像を担持する像担持体と、
記録材を搬送する記録材搬送ベルトを有し、回転する前記記録材搬送ベルトの幅方向位置を制御するベルト駆動装置と、を備え、
前記像担持体から前記記録材搬送ベルトにより搬送される記録材にトナー像を転写して画像形成を行う画像形成装置において、
前記ベルト駆動装置は請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載のベルト駆動装置であり、前記記録材搬送ベルトは前記無端ベルトである、
ことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−54109(P2013−54109A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190724(P2011−190724)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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