説明

ベンジル保護基等の水素添加反応による選択的脱保護

【課題】 分子内に水酸基およびアミノ基を有し、両官能基がアリールメチル基で保護された化合物について、水酸基側だけを選択的に脱保護化する方法によって、同一分子内に水酸基およびアミノ基を有して、アミノ基だけを保護した化合物を合成する有用な方法を提供する。
【解決手段】
分子内に式(1):
−Ar−OR1
(式中、R1は置換もしくは無置換のアリールメチル基を表す。Arは置換もしくは無置換の芳香環を表す。)で表される基と、式(2):
−NR2
(式中、R2は置換もしくは無置換のアリールメチル基を表す。)で表される基を含む化合物を、塩基性添加物の存在下で接触還元し、式(2)で表される基はそのままに、式(1)で表される基を式(1’):
−Ar−OH
とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンジル保護基等の水素添加反応による選択的脱保護、およびその反応を利用したβ3−アドレナリン受容体刺激薬として有用なインドール類の合成方法および合成中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機合成研究分野において、活性の高い官能基を保護することは重要な課題であり、これまでに膨大な知識、技術が蓄積されている。近年刊行された非特許文献1ではそれらが効率よくまとめられており、その概略を知ることができる。通常、「保護」は、不活性化したい官能基に、保護基と総称される化合物を直接結合させることにより行われる。同一分子内に水酸基およびアミノ基を有する化合物について、アミノ基だけを保護した化合物を合成する簡便な合成法は有機合成上重要な方法である。また、有機化合物の水酸基、アミノ基を保護する場合、ベンジル基に代表されるアリールメチル基は、幅広い反応条件下で保護基として使用できる安価で大変有用な骨格である。
【0003】
これまで、分子内に水酸基およびアミノ基を有しており両官能基がベンジル基等のアリールメチル基で保護された化合物の水酸基側だけを選択的に脱保護する方法は、専ら酸性条件下で行われてきた(例えば、非特許文献2および3参照)。しかしながら、酸性条件に不安定な官能基等を有する化合物には適応できないという問題点があった。
一方、パラジウム系触媒等を用いた接触還元は、他の官能基に影響を与えずにアリールメチル保護基のみを脱保護する有用な方法である。しかしながら、分子内に水酸基およびアミノ基を有し、両官能基がアリールメチル基で保護されている化合物の脱保護を通常の接触還元で行うと、両方の脱保護反応が進行してしまう。同一分子内に水酸基およびアミノ基を有しておりアミノ基だけを保護した化合物を得るためには、アミノ基のみを再び保護する必要があった(例えば、非特許文献4参照)。
このように、酸等に不安定な部分を温存したままで、分子内に水酸基およびアミノ基を有し、両官能基がアリールメチル基で保護された化合物の水酸基側だけを選択的に脱保護する有効な方法はこれまでに無かった。
【非特許文献1】Protective Groups in Organic Synthesis(3rd ed.), JOHN WILEY & SONS, INC.:New York, (1999)
【非特許文献2】Tetrahedron asymmetry, vol. 11, p1015-1925,(2000)
【非特許文献3】Synlett, vol. 8, p1139-1140, (2000)
【非特許文献4】Bioorganic medicinal chemistry, vol. 11, p3295-3305, (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、分子内に水酸基およびアミノ基を有し、両官能基がアリールメチル基で保護された化合物について、水酸基側だけを選択的に脱保護する方法によって、同一分子内に水酸基およびアミノ基を有して、アミノ基だけを保護した化合物を合成する有用な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討の結果、分子内に水酸基およびアミノ基を有し、両官能基がアリールメチル基で保護された化合物の水酸基側だけを選択的に脱保護する接触還元法を見出し、さらに本反応を利用したβ3アドレナリン受容体刺激薬として有用なインドール類の合成法および合成中間体を見出すことにより、本発明を完成した。
即ち本発明は、次のものに関する。
【0006】
〔1〕 分子内に式(1):
−Ar−OR1
(式中、R1は置換もしくは無置換のアリールメチル基を表す。Arは置換もしくは無置換の芳香環を表す。)で表される基と、式(2):
−NR2
(式中、R2は置換もしくは無置換のアリールメチル基を表す。)で表される基を含む化合物を、塩基性添加物の存在下で接触還元し、式(2)で表される基はそのままに、式(1)で表される基を式(1’):
−Ar−OH
とする製造方法。
〔2〕 式(3):
【0007】
【化1】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して置換もしくは無置換のアリールメチル基を表す。R3およびR4は同一または異なって、また複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。R5は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Arは置換もしくは無置換の芳香環を表す。nは0、1、2、または3を表す。)で表される化合物を、塩基性添加物の存在下で接触還元することからなる式(4):
【0008】
【化2】

(式中、R2、R3、R4、R5、Arおよびnは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物の製造方法。
〔3〕 R5が式(5):
【0009】
【化3】

(式中、Ar1は、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。R6およびR7は同一または異なって、また複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、保護された水酸基、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)で表される基である、〔2〕記載の製造方法。
〔4〕 Arが置換もしくは無置換のインドール環である、〔2〕または〔3〕記載の製造方法。
〔5〕 式(6):
【0010】
【化4】

(式中、R1、R2、R3、R4およびnは〔2〕と同じ意味を表す。R6、R7、Ar1およびmは〔3〕と同じ意味を表す。R8は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または窒素原子の保護基を表す。R9は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、保護された水酸基、または保護されたアミノ基を表す。)で表される化合物を、塩基性添加物の存在下で接触還元することからなる式(7):
【0011】
【化5】

(式中、R2、R3、R4、R6、R7、R8、R9、Ar1、nおよびmは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物の製造方法。
〔6〕 式(8):
【0012】
【化6】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリールメチル基を表す。R8は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または窒素原子の保護基を表す。R9は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、保護された水酸基、または保護されたアミノ基を表す。R10は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、保護された水酸基、または保護されたアミノ基を表す。R11は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。R12は水酸基の保護基を表す。R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)で表される化合物を、塩基性添加物の存在下で接触還元することからなる式(9):
【0013】
【化7】

(式中、R2、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は前記と同じ意味を表す。)で表される化合物の製造方法。
〔7〕 R13、R14、R15、およびR16が水素原子である、〔6〕記載の製造方法。
〔8〕 塩基性添加物が炭酸塩である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の製造方法。
〔9〕 接触還元の触媒がパラジウム系触媒である、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の製造方法。
〔10〕 R1およびR2がベンジル基である、〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の製造方法。
〔11〕 式(9):
【0014】
【化8】

(式中、R2は、置換もしくは無置換のアリールメチル基を表す。R8は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または窒素原子の保護基を表す。R9は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、保護された水酸基、または保護されたアミノ基を表す。R10は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、保護された水酸基、または保護されたアミノ基を表す。R11は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。R12は水酸基の保護基を表す。R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)で表される化合物。
〔12〕 式(10):
【0015】
【化9】

(式中、R2、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は〔11〕と同じ意味を表す。)で表される、〔11〕記載の化合物。
〔13〕 R9およびR10がともに存在しない、〔12〕記載の化合物。
〔14〕 R13、R14、R15、およびR16が水素原子である、〔11〕〜〔13〕のいずれかに記載の化合物。
【発明の効果】
【0016】
〔1〕〜〔10〕の合成方法は、分子内に水酸基およびアミノ基を有して、両官能基がアリールメチル基で保護された化合物の水酸基側だけを高選択的に接触水素添加法により脱保護できる点で重要であり、収率も良く、副生成物が少ない。
〔11〕〜〔14〕の化合物は、医薬品の合成中間体として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明における各種の用語を詳細に説明すると次の通りである。なお、特に指示のない限り、各々の基の説明は他の基の一部である場合も含む。
【0018】
ハロゲン原子としては例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0019】
アルキル基としては、例えば直鎖または分枝した炭素原子数1〜6個のアルキル基等が挙げられ、具体的には例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−ブチル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、3−ペンチル、3−メチルブチル、ヘキシル、3−ヘキシル、4−メチルペンチル等が挙げられる。好ましいアルキル基としては、直鎖または分枝した炭素原子数1〜4個のアルキル基等が挙げられる。
【0020】
アルコキシ基としては、上記アルキル基の結合手に酸素原子が結合した基が挙げられる。好ましいアルコキシ基としては、直鎖または分枝した炭素原子数1〜4個のアルコキシ基等が挙げられる。
【0021】
アルカノイル基としては、例えばホルミル、アセチルまたはプロパノイル等の炭素原子数1〜6のアルカノイル基などが挙げられる。好ましいアルカノイル基としては、炭素原子数1〜4個のアルカノイル基等が挙げられる。
【0022】
アラルキル基のアリール部分としては、例えばフェニル、1−または2−ナフチル等の炭素原子数10以下のアリール基等が、アルキル部分としては、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素原子数6以下のアルキル基等が挙げられる。代表的なアラルキル基としては、例えばベンジル基、1−または2−フェニルエチル基等が挙げられる。
【0023】
置換アルキル基、および置換アルコキシ基の置換基は一個または同一もしくは異なって複数個あってもよく、置換基としては、例えばハロゲン原子、シアノ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、水酸基、保護された水酸基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アルカノイルアミノ基、アルキルスルホンアミド基、フタルイミド基、アリール基(ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基によって、1または複数、同一または異なって置換されていてもよい)またはヘテロアリール基(ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基によって、1または複数、同一または異なって置換されていてもよい)等が挙げられる。
【0024】
アリール基としては、例えばフェニル、1−または2−ナフチル等の炭素原子数10以下のアリール基等が挙げられる。
【0025】
ヘテロアリール基としては、例えば窒素原子を1〜2個含む5〜6員単環式の基、窒素原子を1〜2個と酸素原子を1個もしくは硫黄原子を1個含む5〜6員単環式の基、酸素原子を1個もしくは硫黄原子を1個含む5員単環式の基、または窒素原子1〜4個を含み、6員環と5または6員環が縮合した二環式の基等が挙げられ、具体的には、例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、ピラジニル、2−ピリミジニル、3−ピリダジニル、3−オキサジアゾリル、2−チアゾリル、3−イソチアゾリル、2−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−キノリル、8−キノリル、2−キナゾリニル、インドリルまたは8−プリニル等が挙げられる。
【0026】
芳香環としては、例えばアリール環またはヘテロアリール環の環上の2つの水素原子が結合手に変わった二価の基が挙げられる。
アリール環としては、例えばベンゼンまたはナフタレン等の炭素原子数10以下のアリール環等が挙げられる。
ヘテロアリール環としては、例えば窒素原子を1〜2個含む5〜6員の単環のもの、窒素原子を1〜2個と酸素原子を1個もしくは硫黄原子を1個含む5〜6員の単環のもの、酸素原子を1個もしくは硫黄原子を1個含む5員の単環のもの、または窒素原子1〜4個を含み、6員環と5または6員環が縮合した二環のもの等が挙げられ、具体的には、例えば、ピリジン、イミダゾリン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、オキサジアゾリン、チアゾリン、イソチアゾリン、オキサゾリン、イソオキサゾリン、フラン、チオフェン、キノリン、キナゾリン、インドールまたはプリン等が挙げられる。
【0027】
置換アリール基、置換ヘテロアリール基、置換芳香環、置換アリール環、置換へテロアリール環、および置換インドール環の置換基は一個または同一もしくは異なって複数あってもよく、置換基としては、例えばハロゲン原子等で置換されてもよいアルキル基、ハロゲン原子等で置換されてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、保護された水酸基、または保護されたアミノ基等が挙げられる。
5における置換されてもよいアルキル基における置換基としての置換アリールの置換基としては、上記と同じものが挙げられる。
【0028】
アリールメチル基のアリール部分としては、上記のアリール基として例示したものが挙げられる。
置換アリールメチル基のアリール部分の置換基は一個または同一もしくは異なって複数個あってもよく、置換基としては、例えばハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基等が挙げられる。好ましい置換基としては、例えばメトキシ等のアルコキシ基等が挙げられる。
メチル部分の置換基は一個または同一もしくは異なって複数個あってもよく、置換基としては、例えばアルキル基、またはアリール基等が挙げられる。
好ましい置換もしくは無置換のアリールメチル基としては、例えばベンジル、1−フェニルエチル、1−ナフチルエチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル等が挙げられる。
【0029】
水酸基の保護基としては、例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、tert−ブチルジメチルシリルなどのトリアルキルシリル基、テトラヒドロピラン−2−イル、メトキシメチル、メトキシエトキシメチルなどのアセタール型保護基、またはtert−ブトキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0030】
アミノ基の保護基としては、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニルなどのアルケニルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニルなどのアラルキルオキシカルボニル基、ベンジルなどのアラルキル基、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイルなどのアシル基、p−トルエンスルホニル、ベンゼンスルホニルなどのアリールスルホニル基、またはメタンスルホニルなどのアルキルスルホニル基などが挙げられる。
【0031】
次に本発明の合成方法および合成中間体について詳細に説明する。
(A) 分子内に式(1)で表される基と式(2)で表される基を含む化合物の合成方法
分子内に式(1):
−Ar−OR1
(式中、R1およびArは上記と同じ意味を表す。)で表される基と、式(2):
−NR2
(式中、R2は上記と同じ意味を表す。)で表される基を含む化合物は、分子内に式(1’):
−Ar−OH
(式中、Arは上記と同じ意味を表す。)で表される基と、式(2’):
−NH−
で表される基を含む化合物のアミノ基と水酸基を、それぞれ置換されてもよいアリールメチル基で保護することにより合成できる。この場合、保護基の導入は、通常用いられる方法(例えば、PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS(3rd ed.)、JOHN WILEY & SONS, INC.:New York、(1999)記載の方法等)によって行うことができる。
また、分子内に式(1):
−Ar−OR1
(式中、R1およびArは上記と同じ意味を表す。)で表される基を含む化合物と、分子内に式(2):
−NR2
(式中、R2は上記と同じ意味を表す。)で表される基を含む化合物とを反応させることにより合成することも可能である。
【0032】
(B) 式(3)で表される化合物の合成方法
【0033】
【化10】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、Arおよびnは上記と同じ意味を表す。)
式(11)で表される化合物のアミノ基と水酸基を、それぞれ置換されてもよいアリールメチル基で保護することにより式(3)で表される化合物が合成できる。この場合、保護基の導入は、上記と同様の方法によって行うことができる。
また、式(3)の化合物は、分子内に式(1):
−Ar−OR1
(式中、R1およびArは上記と同じ意味を表す。)で表される基を含む化合物と、分子内に式(2):
−NR2
(式中、R2は上記と同じ意味を表す。)で表される基を含む化合物とを反応させることにより合成することも可能である。
例えば、下記に示すように、式(2a)で表される化合物と式(1a)で表される化合物を、例えばトリエチルアミン等の塩基の存在下、例えばジメチルホルムアミド等の溶媒中反応させて、式(3)で表される化合物を合成することができる。
【0034】
【化11】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、Arおよびnは上記と同じ意味を表す。X0は、塩素原子、臭素原子等の脱離基を表す。)
【0035】
(C)〔6〕の合成方法
【0036】
【化12】

(式中、R1、R2、R8、R9、R10、R11およびR12上記と同じ意味を表す。X1は脱離基を表す。)
【0037】
式(12)で表される化合物を、通常1.0〜2.0当量、好ましくは1.5〜2.0当量の式(13)で表される化合物と反応させ、次いで通常1.0〜5.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量の式(14)で表される化合物と反応させることにより、式(15)で表される化合物を合成することができる。
式(12)で表される化合物は、公知化合物であるか公知化合物から公知の方法(例えば文献(J.Am.Chem.Soc.,1954,76,5579またはJ.Med.Chem.,1985,28,892)記載の方法等)により合成できる化合物である。
式(12)で表される化合物と式(13)で表される化合物との反応溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は単独でまたは2種以上混合して用いられる。反応温度としては通常0℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃で行う。反応時間としては10分から1日程度であり、通常10分から3時間程度で反応が終了する。
【0038】
このようにして得られる式(12')で表される化合物と、式(14)で表される化合物との反応溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は単独でまたは2種以上混合して用いられる。反応温度としては通常0℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃で行う。反応時間としては10分から1日程度であり、通常10分から3時間程度で反応が終了する。
反応混合物中にはX1で表される脱離基と式(14)で表される化合物のアミノ基の水素原子から酸が生成し、式(14)で表される化合物と塩を形成して系中に析出する場合があるのでこれを防止する為、またR12で表される保護基が脱離する場合があるのでこれを防止する為等の目的で、必要に応じ通常1.0〜2.0当量、好ましくは1.5〜2.0当量の塩基を加えることができる。塩基としては、例えばトリエチルアミンなどのアミン類等が挙げられる。本反応に於いては、式(12')で表される化合物が生成した反応混合液のまま、または反応後の反応混合液を濃縮した後、上記条件下で式(14)で表される化合物と反応させることもできる。
式(14)で表される化合物は、公知化合物であるか公知化合物から公知の方法(例えば文献(Organic Process Research & Development 2003,7,285−288またはBull.Chem.Soc.Jpn.,1986,59,2537)記載の方法等)により合成できる化合物である。
【0039】
式(15)で表される化合物を、還元することにより、式(8')で表される化合物を合成することができる。還元剤としては、水素化リチウムアルミニウムおよび水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムなどが挙げられ、これらは2.0〜10.0当量、好ましくは3.0〜8.0当量用いられる。反応溶媒としては例えばジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は単独でまたは2種以上混合して用いられる。反応温度としては通常0℃〜60℃、好ましくは0℃〜30℃で行う。反応時間としては10分から1日程度であり、通常30分から8時間程度で反応が終了する。
1で表される脱離基としては、例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子などのハロゲン原子等が挙げられる。
【0040】
(D)〔1〕〜〔3〕の合成方法
分子内に式(1):
−Ar−OR1
(式中、R1およびArは上記と同じ意味を表す。)で表される基と、式(2):
−NR2
(式中、R2は上記と同じ意味を表す。)で表される基を含む化合物を、塩基性添加物の存在下で接触還元し、式(2)で表される基はそのままに、式(1)で表される基を式(1’):
−Ar−OH
で表される基に変換した化合物を合成することができる。
反応溶媒としては例えばメタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、酢酸などのプロトン性極性溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は単独でまたは2種以上混合して用いられる。反応温度としては通常20℃〜溶媒の沸点までの温度、好ましくは20℃〜40℃で行う。接触還元としては例えば触媒存在下での水素と反応させる接触水素添加反応等が挙げられ、触媒としては、例えばパラジウム炭素、水酸化パラジウムに代表されるパラジウム系触媒等の不均一触媒が挙げられる。また塩基性添加物としては、例えば炭酸カリウム、炭酸セシウムなどの炭酸塩等が挙げられ、これらは0.5〜4モル倍、好ましくは1.0〜3モル倍用いられる。反応時間としては5分から1日程度であり、通常10分から3時間程度で反応が終了する。
【0041】
上記と同様の方法で次の合成方法も行う事ができる。
【0042】
【化13】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、Arおよびnは上記と同じ意味を表す。)
【0043】
上記と同様の方法で次の合成方法も行う事ができる。
【0044】
【化14】

(式中、R1、R2、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は前記と同じ意味を表す。)
【0045】
(D)式(9)で表される化合物から式(19)で表される化合物への変換
この様にして得られる式(9)で表される化合物は、例えば、β3アドレナリン受容体刺激薬として有用な、WO03/106418に記載の化合物の合成に用いることができる。
【0046】
【化15】

(式中、R2、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は上記と同じ意味を表す。
9aは、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、またはアミノ基を表す。
10aは、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、またはアミノ基を表す。
17は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
18は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
2は脱離基を表す。)
式(9)で表される化合物は、β3アドレナリン受容体刺激薬として有用な式(19)で表される化合物へ導くことができる。
式(9)で表される化合物を、炭酸セシウムの存在下、式(16)で表される化合物と反応させることにより、式(17)で表される化合物を合成することができる。
炭酸セシウムの使用量としては、式(9)で表される化合物に対し通常1.0〜5.0当量、好ましくは1.2〜2.0当量が挙げられる。
式(16)で表される化合物の使用量としては、式(9)で表される化合物に対し通常1.0〜3.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量が挙げられる。
反応溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。反応温度としては通常0℃〜溶媒の沸点までの温度で行うが、0℃〜30℃で行うのが、収率の向上がみられる点と、副生成物が少なくその後の精製が容易になる点で好ましい。
反応時間としては通常10分から1日程度であり、好ましくは10分から3時間程度で反応が終了する。
このようにして得られる式(17)で表される化合物の、R12およびR2で表される水酸基およびアミノ基の保護基を脱保護して式(18)で表される化合物を合成することができる。反応条件としては文献公知の方法(例えば、Green, T. W.およびWuts, P. G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc. (1999)等)が挙げられる。
このようにして得られる式(18)で表される化合物を、塩基性条件下または酸性条件下で処理することにより、式(19)で表される化合物を合成することができる。
塩基としては、例えば水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物等、酸としては、例えば塩酸、硫酸等の無機酸等が挙げられ、塩基または酸の使用量としては、通常1.0〜10.0当量、好ましくは2.0〜5.0当量が挙げられる。
反応溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、またはそれらの混合溶媒等が挙げられる。反応温度としては通常0℃〜100℃、好ましくは10℃〜30℃が挙げられる。
反応時間としては通常10分から1日程度であり、好ましくは10分から3時間程度で反応が終了する。
【0047】
式(18)において、R9および/またはR10が、それぞれ保護された水酸基および/または保護されたアミノ基である場合、さらに文献公知の方法(例えば、Green, T. W.およびWuts, P. G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc. (1999)等)により脱保護を行い、それぞれ水酸基またはアミノ基へと変換して、式(19)で表される化合物を合成することができる。
9およびR10における保護された水酸基および保護されたアミノ基の保護基としては、式(18)を合成するまでの反応において脱保護されないものであれば、いかなる保護基でもよい。
2で表される脱離基としては例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子などのハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基などのアルキルスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ、パラトルエンスルホニルオキシなどのアリールスルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0048】
上記説明した各反応により得られる化合物は、慣用の分離手段である分別再結晶法、クロマトグラフィーを用いた精製方法、溶媒抽出法、再沈殿等により単離精製することができる。
またいずれの反応においても得られる生成物は、反応条件により酸付加塩または遊離塩基の形をとる。これらの生成物は常法により所望の酸付加塩または遊離塩基の形に変換することができる。
前記各反応により得られる本発明の化合物または原料化合物がラセミ体またはジアステレオマー混合物である場合には、常法、例えば欧州特許出願公開第455006号明細書に記載の方法に従って各立体異性体に分離することができる。
なお、以上説明した反応において、特定の保護基を例示した場合に限らず、各出発化合物がカルボキシ基や水酸基、アミノ基のような、反応に活性な基を有する場合には、これらの基を予め適当な保護基で保護しておき、本反応を実施した後に保護基を除去することにより、目的化合物を合成することができる。保護、脱保護の方法としては各々の保護基に応じ、文献(例えば、Green, T. W.およびWuts, P. G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc. (1999)等)記載の方法により行うことができる。
【0049】
このようにして得られる式(19)で表される化合物は、これらを医薬として用いるにあたり経口的または非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば、その溶液、乳剤、懸濁液の剤型にしたものを注射の型で非経口投与することができる。坐剤の型で直腸投与することもできる。前記の適当な投与剤型は、例えば、許容される通常の担体、賦型剤、結合剤、安定剤、希釈剤に本発明化合物を配合することにより製造することができる。注射剤型で用いる場合には、例えば、許容される緩衝剤、溶解補助剤、等張剤を添加することもできる。投与量および投与回数は、例えば、対象疾患、症状、年齢、体重、投与形態によって異なるが、通常は成人に対し1日あたり0.1〜2000mg好ましくは1〜200mgを1回または数回(例えば2〜4回)に分けて投与することができる。
【0050】
以下に実施例および参考例により本発明の製造方法および製造中間体をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0051】
参考例1−1
(2R)−N−ベンジル−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルアセトアミドの合成
窒素雰囲気下、(2R)−ヒドロキシ(ピリジン−3−イル)酢酸・硫酸塩(32.3g)のテトラヒドロフラン(300mL)溶液に、氷冷下でベンジルアミン(15mL)、トリエチルアミン(25mL)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(23.0g)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(37.0g)を加え、室温で4時間攪拌した。反応液に飽和重曹水(150mL)と水(150mL)を加え、室温で30分攪拌した後、酢酸エチル(600mL)で2回抽出した。有機層を10%食塩水、飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣に酢酸エチルを加えて超音波照射し、溶媒を減圧留去した。残渣に酢酸エチルを加えて氷冷下で攪拌後、固体をろ取して標題化合物(31.6g,収率100%)を得た。
LC/MS;(M+1)=243,保持時間=0.84分.
分析条件(以下、分析条件Aと表記する):
本体:API 150EX(アプライドバイオシステムズ社)
イオン化法:ESI
カラム:CombiScreen Hydrosphere C18 S−5μm(4.6×50mm)(YMC社)
移動相:
A液:0.05%トリフルオロ酢酸水
B液:0.035%トリフルオロ酢酸アセトニトリル
流速:3.5mL/min
HPLC条件:
0.0min→0.5min:A液90%一定
0.5min→4.2min:A液90%→1%
4.2min→4.4min:A液1%一定
4.4min→4.8min:A液1%→99%
4.8min→6.3min:A液99%一定
【0052】
参考例1−2
(1R)−2−(ベンジルアミノ)−1−ピリジン−3−イルエタノール・2塩酸塩の合成
窒素雰囲気下、(2R)−N−ベンジル−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルアセトアミド(30.0g)のテトラヒドロフラン(660mL)溶液に、氷冷下で水素化ホウ素ナトリウム(22.5g)を加え、30℃以下で三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(94mL)を加え、6時間加熱還流した。反応液を50℃に冷却し、10%塩酸メタノール溶液(420mL)を滴下後、1時間加熱還流した。反応液を氷冷後、ろ過して、テトラヒドロフラン(200mL)で洗浄した。ろ液に酢酸エチル(800mL)と水(1000mL)および20%水酸化ナトリウム水溶液(280mL)を加えて分配し、水層を酢酸エチル(1000mL)で2回抽出した。有機層を飽和食塩水(800mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣(24.0g)にメタノール(180mL)を加えて還流し、室温まで冷却後、1M−塩酸ジエチルエーテル溶液(30mL)を加え、種晶を入れ、1M−塩酸ジエチルエーテル溶液(210mL)を加え、室温で攪拌した。テトラヒドロフラン(360mL)を加えて氷冷し、結晶をろ取して標題化合物(28.7g,収率77%)を得た。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:9.72(brs,1H),9.56(brs,1H),8.88(d,1H,J=1.6Hz),8.84(dd,1H,J=1.0,5.6Hz),8.50(d,1H,J=8.1Hz),8.00(dd,1H,J=5.6,8.1Hz),7.60−7.58(m,2H),7.45−7.39(m,3H),5.35(dd,1H,J=3.4,8.6Hz),4.20(s,2H),3.31−3.27(m,1H),3.14−3.09(m,1H).
【0053】
参考例1−3
(2R)−N−ベンジル−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−ピリジン−3−イルエタンアミンの合成
窒素雰囲気下、(1R)−2−(ベンジルアミノ)−1−ピリジン−3−イルエタノール・2塩酸塩(25.0g)のN−メチルピロリドン(250mL)溶液に、塩化tert−ブチルジメチルシラン(31.3g)とイミダゾール(25.4g)を加え、室温で一晩攪拌した。さらにt−ブチルジメチルシラン(0.50g)とイミダゾール(0.50g)を加え、室温で攪拌後、反応液に水と飽和重曹水を加え、トルエンで3回抽出した。有機層を半飽和食塩水で3回、続いて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム〜飽和アンモニアクロロホルム溶液/メタノール=100/1)で精製することにより、標題化合物(27.2g,収率96%)を得た。
LC/MS;(M+1)=343,保持時間=2.59分(分析条件A).
【0054】
参考例1−4
N−ベンジル−2−[7−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]−N−((2R)−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−ピリジン−3−イルエチル)−2−オキソアセトアミドの合成
窒素雰囲気下、7−ベンジルオキシインドール(1.51g)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、氷冷下にて、二塩化オキサリル(0.65mL)を滴下し、室温で3時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、テトラヒドロフラン(20mL)を加えて溶液Aを得た。窒素雰囲気下、氷冷下にて(2R)−N−ベンジル−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−ピリジン−3−イルエタンアミン(1.93g)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液にトリエチルアミン(2.0mL)を加え、これに溶液Aを滴下し、室温で2時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を10%炭酸カリウム水溶液で2回、続いて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=2/1〜1/1)で精製することにより、標題化合物(3.40g,収率97%)を得た。
LC/MS;(M+1)=620,保持時間=3.88分(分析条件A).
【0055】
参考例1−5
(2R)−N−ベンジル−N−{2−[7−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]エチル}−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−ピリジン−3−イルエタンアミンの合成
窒素雰囲気下、氷冷下にて、水素化アルミニウムリチウム(2.46g)のシクロペンチルメチルエーテル(50mL)溶液に、N−ベンジル−2−[7−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]−N−((2R)−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−ピリジン−3−イルエチル)−2−オキソアセトアミド(5.02g)のシクロペンチルメチルエーテル(60mL)溶液を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液を氷冷し、アンモニア水(9.5mL)とシクロペンチルメチルエーテル(120mL)を交互に加え、室温で1.5時間攪拌し、その後セライトを入れて攪拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮して、標題化合物(4.73g,収率99%)を得た。
LC/MS;(M+1)=592,保持時間=3.31分(分析条件A).
【0056】
実施例1
(2R)−N−ベンジル−N−[2−(7−ヒドロキシ−1H−インドール−3−イル)エチル]−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−ピリジン−3−イルエタンアミン・ビス(4−メチルベンゼンスルホン酸)塩の合成
(2R)−N−ベンジル−N−{2−[7−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]エチル}−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−ピリジン−3−イルエタンアミン(337mg)の酢酸エチル(5mL)溶液に炭酸カリウム(157mg)と10%パラジウム/炭素(50%wet)(168mg)を加え、水素雰囲気下、20〜30℃で2時間攪拌後、反応液をセライトろ過した。
LC/MS;(M+1)=502,保持時間=2.84分(分析条件A).
氷冷下、ろ液にp−トルエンスルホン酸・一水和物(216mg)の酢酸エチル(5mL)を加え、しばらく攪拌した後、溶媒を減圧留去した。残渣にジエチルエーテルを加え、超音波照射することにより、結晶化させ、結晶をろ取して標題化合物(419mg,収率87%)を得た。
【0057】
参考例2−1
(2R)−N−ベンジル−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−N−(2−{7−[(1S)−1−メチル−2−モルホリン−4−イル−2−オキソエトキシ]−1H−インドール−3−イル−}エチル)−2−ピリジン−3−イルエタンアミンの合成
窒素雰囲気下、(2R)−N−ベンジル−N−[2−(7−ヒドロキシ−1H−インドール−3−イル)エチル]−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−ピリジン−3−イルエタンアミン・ビス(4−メチルベンゼンスルホン酸)塩(379mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(3.5mL)溶液に氷冷下、炭酸セシウム(584mg)を加え、10分攪拌した。これに(1R)−1−メチル−2−モルホリン−4−イル−2−オキソエチル 4−メチルベンセンスルホン酸エステル(特開2000−273085号公報参照)(147mg)を加え、室温で2.5時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を水、半飽和食塩水で2回、および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン=1/3/0.1〜0/4/0.1〜酢酸エチル/メタノール/トリエチルアミン=25/1/0.5)で精製することにより、標題化合物(233mg,収率81%)を得た。
LC/MS;(M+1)=643,保持時間=2.92分(分析条件A).
【0058】
参考例2−2
((2R)−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−N−(2−{7−[(1S)−1−メチル−2−モルホリン−4−イル−2−オキソエトキシ]−1H−インドール−3−イル−}エチル)−2−ピリジン−3−イルエタンアミンの合成
(2R)−N−ベンジル−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−N−(2−{7−[(1S)−1−メチル−2−モルホリン−4−イル−2−オキソエトキシ]−1H−インドール−3−イル−}エチル)−2−ピリジン−3−イルエタンアミン(76.6mg)のメタノール(1mL)溶液に、20%水酸化パラジウム/炭素(50%wet)(7.7mg)を加え、水素雰囲気下、40℃で3.5時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール/トリエチルアミン=30/1/0.1〜20/1/0.1〜10/1/0.1)で精製することにより、標題化合物(53.8mg,収率82%)を得た。
LC/MS;(M+1)=553,保持時間=2.61分(分析条件A).
【0059】
参考例2−3
(1R)−2−((2−(7−((1S)−1−メチル−2−モルホリン−4−イル−2−オキソエトキシ)−1H−インドール−3−イル)エチル)アミノ)−1−ピリジン−3−イルエタノールの合成
窒素雰囲気下、((2R)−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−N−(2−{7−[(1S)−1−メチル−2−モルホリン−4−イル−2−オキソエトキシ]−1H−インドール−3−イル−}エチル)−2−ピリジン−3−イルエタンアミン(53.8mg)のテトラヒドロフラン(1mL)溶液に、氷冷下、1M−フッ化テトラn−ブチルアンモニウム/テトラヒドロフラン溶液(0.15mL)を加え、氷冷から室温で4時間攪拌した。反応液に水と飽和食塩水を加え、クロロホルムで5回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣を分取薄相クロマトグラフィー(飽和アンモニアクロロホルム溶液/メタノール=10/1)で精製することにより、標題化合物(37.7mg,収率88%)を得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:8.83(brs,1H),8.85(d,1H,J=1.8Hz),8.49(dd,1H,J=4.8,1.3Hz),7.69(d,1H,J=7.9Hz),7.23−7.26(m,2H),7.01(d,1H,J=1.8Hz),6.99(dd,1H,J=8.0,7.7Hz),6.63(d,1H,J=7.7Hz),5.15(q,1H,J=6.6Hz),4.70(dd,1H,J=9.3,3.4Hz),3.41−3.61(m,8H),2.94−3.08(m,4H),2.93(dd,1H,J=12.2,3.4Hz),2.69(dd,1H,J=12.2,9.3Hz),1.65(d,3H,J=6.6Hz).
【0060】

参考例3
(2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)プロパン酸の合成。
(1R)−2−((2−(7−((1S)−1−メチル−2−モルホリン−4−イル−2−オキソエトキシ)−1H−インドール−3−イル)エチル)アミノ)−1−ピリジン−3−イルエタノール(5.63g,12.8mmol)のメタノール(30mL)溶液に、テトラヒドロフラン(30mL)、2規定水酸化リチウム(30mL)を加え、室温で2時間攪拌した。0℃で反応液に1規定塩酸を加えて中性として、リン酸標準緩衝液(pH6.8,10mL)を加えた。減圧濃縮し、さらにトルエンを加えて共沸し、残渣に水を加えて、析出物を濾取し減圧乾燥することにより表題化合物(4.17g,収率88%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ:1.55(3H,d,J=6.6Hz),2.60-2.90(5H,m),3.02(1H,dd,J=12.3,3.3Hz),4.60(1H,q,J=6.6Hz),4.93(1H,dd,J=9.9,3.3Hz),6.50(1H,d,J=7.7Hz),6.70(1H,dd,J=7.9,7.7Hz),6.78(1H,d,J=1.8Hz),6.91(1H,d,J=7.9Hz),7.38(1H,dd,J=7.7,4.7Hz),7.79(1H,ddd,J=7.7,1.8,1.5Hz),8.49(1H,dd,J=4.7,1.5Hz),8.59(1H,d,J=1.8Hz),10.87(1H,d,J=1.6Hz).
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の製造法は、分子内に水酸基およびアミノ基を有し、両官能基がアリールメチル基で保護された化合物について、水酸基側だけを選択的に脱保護する方法によって、同一分子内に水酸基およびアミノ基を有して、アミノ基だけを保護した化合物を合成する有用な方法である。また、本反応を利用したβ3アドレナリン受容体刺激薬として有用なインドール類の合成法および合成中間体を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に式(1):
−Ar−OR1
(式中、R1は置換もしくは無置換のアリールメチル基を表す。Arは置換もしくは無置換の芳香環を表す。)で表される基と、式(2):
−NR2
(式中、R2は置換もしくは無置換のアリールメチル基を表す。)で表される基を含む化合物を、塩基性添加物の存在下で接触還元し、式(2)で表される基はそのままに、式(1)で表される基を式(1’):
−Ar−OH
とする製造方法。
【請求項2】
式(3):
【化1】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して置換もしくは無置換のアリールメチル基を表す。R3およびR4は同一または異なって、また複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。R5は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Arは置換もしくは無置換の芳香環を表す。nは0、1、2、または3を表す。)で表される化合物を、塩基性添加物の存在下で接触還元することからなる式(4):
【化2】

(式中、R2、R3、R4、R5、Arおよびnは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項3】
5が式(5):
【化3】

(式中、Ar1は、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。R6およびR7は同一または異なって、また複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、保護された水酸基、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)で表される基である、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
Arが置換もしくは無置換のインドール環である、請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項5】
式(6):
【化4】

(式中、R1、R2、R3、R4およびnは請求項2と同じ意味を表す。R6、R7、Ar1およびmは請求項3と同じ意味を表す。R8は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または窒素原子の保護基を表す。R9は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、保護された水酸基、または保護されたアミノ基を表す。)で表される化合物を、塩基性添加物の存在下で接触還元することからなる式(7):
【化5】

(式中、R2、R3、R4、R6、R7、R8、R9、Ar1、nおよびmは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項6】
式(8):
【化6】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリールメチル基を表す。R8は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または窒素原子の保護基を表す。R9は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、保護された水酸基、または保護されたアミノ基を表す。R10は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、保護された水酸基、または保護されたアミノ基を表す。R11は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。R12は水酸基の保護基を表す。R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)で表される化合物を、塩基性添加物の存在下で接触還元することからなる式(9):
【化7】

(式中、R2、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は前記と同じ意味を表す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項7】
13、R14、R15、およびR16が水素原子である、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
塩基性添加物が炭酸塩である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
接触還元の触媒がパラジウム系触媒である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
1およびR2がベンジル基である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
式(9):
【化8】

(式中、R2は、置換もしくは無置換のアリールメチル基を表す。R8は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または窒素原子の保護基を表す。R9は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、保護された水酸基、または保護されたアミノ基を表す。R10は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、保護された水酸基、または保護されたアミノ基を表す。R11は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。R12は水酸基の保護基を表す。R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)で表される化合物。
【請求項12】
式(10):
【化9】

(式中、R2、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は請求項11と同じ意味を表す。)で表される、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
9およびR10がともに存在しない、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
13、R14、R15、およびR16が水素原子である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の化合物。


【公開番号】特開2006−169114(P2006−169114A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359141(P2004−359141)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】