説明

ベンズイミダゾール化合物およびクロマトグラフリガンドとしてのその使用

【課題】高効率および高純度で免疫グロブリンを単離および精製する固相マトリックスと方法の提供。
【解決手段】a)一般式M-SP-L(式中、Mはマトリックス骨格を示し、SPはスペーサーを示し、Lは構造式(I):


ここで、R1は、-Z-N(R3)2等、R2は、-H、-ハロゲン、-OR4、-NH2、-アルキル、-NO2、-SO3H、-N(R3)C(O)N(R3)2、トリアゾール等、R3、R4、R5は-Hまたは置換もしくは非置換アルキル、Zは、単結合、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルケニレンまたは置換もしくは非置換アルキニレン、nは0〜4の整数であるリガンドまたはその互変異性体を示す)の固相マトリックスとその使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンズイミダゾール化合物およびクロマトグラフリガンドしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリンまたは抗体は、動物を攻撃する物質、細菌およびウイルスに対する動物の防御因子として機能する哺乳動物、鳥類、および魚類の様々な体液に存在する、非常に重要な種類のタンパク質を構成する。免疫グロブリンは典型的に、動物血液、乳、および唾液並びにその他の体液および分泌物に存在する。
【0003】
免疫グロブリンが有する生物学的活性は今日、ヒトおよび獣医学の診断、ヘルスケアおよび治療分野における種々の適用の範囲で利用される。
【0004】
上記の全ての免疫グロブリンの適用には粗原料からの何種類かの抗体の単離を必要とするが、各種の適用は最終純度および抗体生成物の認められ得る費用に関して様々なことを要求する。
【0005】
一般に、非常に広範囲の最終純度、収量、および生成費用を与える免疫グロブリンの単離に利用可能な非常に広範囲の種々の方法が存在する(例えば、非特許文献1を参照)。
【0006】
免疫グロブリンの単離のための伝統的な方法は、溶液中に他のグループのタンパク質を残したまま、免疫グロブリンを含むタンパク質分画の選択的可逆沈殿に基づく。典型的な沈殿剤は、エタノール、ポリエチレングリコール、硫酸アンモニウムおよびリン酸カリウムのようなリオトロピック(抗カオトロピック)塩、ならびにカプリル酸である。
【0007】
典型的に、これらの沈殿方法は非常に不純な生成物を与えると同時に時間がかかり、困難である。さらに、原料への沈殿剤の添加によって、他の目的のための上清の使用を困難にし、廃棄問題を生じる。これは、例えば、乳清および血漿からの免疫グロブリンの大規模精製について言及する場合に特に関連がある。
【0008】
イオン交換クロマトグラフィーは、免疫グロブリンの単離にしばしば使用される別の周知のタンパク質分画方法である。しかし、この方法は、種々の免疫グロブリンの等電点が異なると共に効率的な抗体の結合を保証するために必要なイオン強度およびpHにおける保持のために一般的に適用可能ではない。
【0009】
プロテインAおよびプロテインGのアフィニティークロマトグラフィーは、主に簡易使用および得られる高純度のために非常に普及しており、免疫グロブリンを単離および精製するための、特にモノクローナル抗体を単離するための広範な方法である。普及しているが、しかし、プロテインAおよびプロテインGによって、非常に高コスト、種々のモノクローナル抗体の変化する結合効率(特にマウスIgG)、プロテインA/プロテインGの生成物への漏出、および典型的な洗浄溶液、例えば、1M水酸化ナトリウム中のマトリックスの低い安定性のうちでいくつかの問題をユーザーに生じさせることを認識されたい。これらの各欠点は、個々の適用に特定の結果を有し、無意味から非常に深刻で間違いのない結果の範囲となる。
【0010】
従って、免疫グロブリンの単離および精製のための新規方法の必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Purification Tools for Monoclonal Antibodies, Gagnon, P., Validated Biosystems, 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、高効率および高純度で免疫グロブリンを単離および/または精製するために使用され得る、固相マトリックスおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、固相物質に特定の置換ベンズイミダゾールリガンドを結合させることで形成される固相マトリックスが、結合プロセスにおいて塩、特にリオトロピック塩をほとんど用いないか、用いないことに関しておよび広い範囲の免疫グロブリンと結合する能力に関して特別な利点を有し、広く異なる原料から異なる種の免疫グロブリンを単離および/または精製する方法において高効率で利用され得るという発見に基づく。さらに、これらのマトリックスが、NaOHの安定性に関して特別な利点を有し、固相マトリックスが使用後に再生される場合に特に関連する。
【0014】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕a)一般式M-SP-L
(式中、Mはマトリックス骨格を示し、SPはスペーサーを示し、Lは構造式(I):


ここで、
R1は、-Z-N(R3)2、-Z-SR3、または-Z-OR3である;
R2は、-H、-ハロゲン、-OR4、-NH2、-アルキル、-NO2、-SO3H、-N(R3)C(O)N(R3)2


である;
R3は、各存在について、独立して、-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R4は、各存在について、独立して、-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R5は、各存在について、独立して、-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
Zは、単結合、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルケニレンまたは置換もしくは非置換アルキニレンである;
nは0〜4の整数である;
但し、Lは、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-ニトロ-ベンゾイミダゾール、2-アミノ-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-ベンゾイミダゾールスルホン酸、および2-アミノメチル-ベンゾイミダゾールではない;
で表わされるリガンドまたはその互変異性体を示す)
の固相マトリックスと1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液を接触させる工程;
b)該溶液から、結合した免疫グロブリンを有する該固相マトリックスを分離する工程;
c)任意に該固相マトリックスを洗浄する工程;ならびに
d)該固相マトリックスから1つ以上の免疫グロブリンを遊離させるために該固相マトリックスを溶出剤と接触させ、それにより免疫グロブリンを単離する工程
を含む1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液から免疫グロブリンを単離する方法、
〔2〕Lが、構造式(II):


で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す、〔1〕記載の方法、
〔3〕Lが、以下の構造式:


で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す、〔1〕または〔2〕記載の方法、
〔4〕R5が-Hである、〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の方法、
〔5〕Zが単結合であり、nが1である、〔1〕〜〔4〕いずれかに記載の方法、
〔6〕R3が-Hである、〔1〕〜〔5〕いずれかに記載の方法、
〔7〕Lが、以下の構造式:



で表されるリガンドあるいはその互変異性体を示す、〔1〕〜〔6〕いずれかに記載の方法、
〔8〕1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液のpHが、2.0〜10.0の範囲である、〔1〕〜〔7〕いずれかに記載の方法、
〔9〕マトリックス骨格がアガロースである、〔1〕〜〔8〕いずれかに記載の方法、
〔10〕スペーサーSPが、以下の式:
-(O-CH2CH(OH)-CH2)m-
(式中、mは1〜10の整数である)
で表される、〔1〕〜〔9〕いずれかに記載の方法、
〔11〕1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液が、最大でも2.0のイオン強度に相当する全塩含有量および最大でも0.4Mの濃度のリオトロピック塩を有する、〔1〕〜〔10〕いずれかに記載の方法、
〔12〕1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液が、リオトロピック塩を有さない、〔1〕〜〔11〕いずれかに記載の方法、
〔13〕一般式:M-SP-L
(式中、Mはマトリックス骨格を示し、SPはスペーサーを示し、Lは構造式(I):


ここで、
R1は、-Z-N(R3)2、-Z-SR3、または-Z-OR3である;
R2は、-H、-ハロゲン、-OR4、-NH2、-アルキル、-NO2、-SO3H、-N(R3)C(O)N(R3)2


である;
R3は、各存在について、独立して、-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R4は、各存在について、独立して、-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R5は、各存在について、独立して、-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
Zは、単結合、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルケニレンまたは置換もしくは非置換アルキニレンである;
nは0〜4の整数である;
但し、Lは、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-ニトロ-ベンゾイミダゾール、2-アミノ-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-ベンゾイミダゾールスルホン酸、および2-アミノメチル-ベンゾイミダゾールではない、
で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す)
で表わされる、固相マトリックス、
〔14〕Lが、構造式(II):


で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す、〔13〕記載の固相マトリックス、
〔15〕Lが、以下の構造式:


で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す、〔13〕または〔14〕記載の固相マトリックス、
〔16〕R5が-Hである、〔13〕〜〔15〕いずれかに記載の固相マトリックス、
〔17〕Zが単結合であり、nが1である、〔13〕〜〔16〕いずれかに記載の固相マトリックス、
〔18〕R3が-Hである、〔13〕〜〔17〕いずれかに記載の固相マトリックス、
〔19〕Lが、以下の構造式:



で表されるリガンドあるいはその互変異性体を示す、〔13〕〜〔18〕いずれかに記載の固相マトリックス、
〔20〕マトリックス骨格がアガロースである、〔13〕〜〔19〕いずれかに記載の固相マトリックス、
〔21〕スペーサーSPが、以下の式:
-(O-CH2CH(OH)-CH2)m-
(式中、mは1〜10の整数である)
で表される、〔13〕〜〔20〕いずれかに記載の固相マトリックス、
〔22〕以下の構造式:


で表される化合物あるいはその互変異性体
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の固相マトリックスおよび方法は、高効率および高純度で免疫グロブリンを単離および/または精製するために使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の1つの態様は、
a)一般式:M−SP−Lの固相マトリックスと1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液を接触させる工程;
b)該溶液から結合した免疫グロブリンを有する該固相マトリックスを分離する工程;
c)任意に該固相マトリックスを洗浄する工程;ならびに
d)該固相マトリックスから1つ以上の免疫グロブリンを遊離させるために該固相マトリックスを溶離剤と接触させる工程
を含む1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液から免疫グロブリンを単離する方法
に関する。
【0017】
Mはマトリックス主鎖を示し、SPはスペーサーを示し、Lは構造式(I):


(I),
ここで、
R1は-Z-N(R3)2、-Z-SR3、または-Z-OR3である;
R2は-H、-ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Br、もしくは-I)、-OR4、-NH2、-アルキル、-NO2、-SO3H、-N(R3)C(O)N(R3)2

である;
R3は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R4は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R5は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
Zは単結合、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルケニレンまたは置換もしくは非置換アルキニレンである;
nは0〜4の整数である;
Lは2-メルカプト-5-ニトロ-ベンズイミダゾール、2-アミノ-ベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、および2-アミノメチル-ベンズイミダゾールでないことを条件とする
で表わされるリガンドまたはその互変異性体を示す。
【0018】
本発明はさらに、以下の式:M-SP-Lで表わされる複数の官能基を保有する官能化マトリックス主鎖を含む、固相マトリックスを提供する。
【0019】
本発明はまた、以下の構造式:


で表わされる化合物に関する。
【0020】
本発明は、本明細書に記載される固相マトリックスと1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液を接触させる工程を含む免疫グロブリンを単離および/または精製する方法に関する。本発明はまた、本明細書に記載される固相マトリックスに関する。従って、以下の説明は本発明による方法および本発明による固相マトリックスに関する。本発明はまた、本明細書に記載される固相マトリックスを作製するための特定のリガンドに関する。
【0021】
固相マトリックス
上記のように、本発明による方法は、固相マトリックスは以下の式:
M-SP-L
(式中、Mはマトリックス主鎖を表わし、SPはスペーサーを表わし、Lは構造式(I):


ここで:
R1は-Z-N(R3)2、-Z-SR3、または-Z-OR3である;
R2は-H、-ハロゲン、-OR4、-NH2、-アルキル、-NO2、-SO3H、
-N(R3)C(O)N(R3)2、または

である;
R3は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R4は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R5は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
Zは単結合、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルケニレンまたは置換もしくは非置換アルキニレンである;
nは0〜4の整数である;
Lは2-メルカプト-5-ニトロ-ベンズイミダゾール、2-アミノ-ベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、および2-アミノメチル-ベンズイミダゾールでないことを条件とする;
で表わされるリガンドまたはその互変異性体を示す)
で表わされる複数の官能基を保有する官能化マトリックス主鎖を含む固相マトリックスの使用を含む。
【0022】
1つの態様において、R1は-Z-N(R3)2、-Z-SR3、または-Z-OR3である。別の態様において、R1は-NH2、-SH、-CHSH、または-CH-NHである。
【0023】
1つの態様において、Zは単結合、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルケニレンまたは置換もしくは非置換アルキニレンである。別の態様において、ZはC1〜C10アルキレンである。別の態様において、ZはC1〜C5アルキレンである。別の態様において、Zは単結合である。
【0024】
1つの態様において、R2は各存在について、独立して-H、-ハロゲン、-OR4、-NH2、-アルキル、-NO2、-SO3H、-N(R3)C(O)N(R3)2

である。1つの態様において、R2は、


である。好ましくは、RはHである。別の態様において、R2は-Hである。別の態様において、R2はC1〜C10アルキルである。別の態様において、R2はC1〜C5アルキルである。
【0025】
1つの態様において、R3は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである。1つの態様において、R3は-Hである。別の態様において、R3はC1〜C10アルキルである。別の態様において、R3はC1〜C5アルキルである。
【0026】
1つの態様において、R4は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである。1つの態様において、R4は-Hである。別の態様において、R4はC1〜C10アルキルである。別の態様において、R4はC1〜C5アルキルである。
【0027】
1つの態様において、R5は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである。1つの態様において、R5は-Hである。別の態様において、R5はC1〜C10アルキルである。別の態様において、R5はC1〜C5アルキルである。
【0028】
1つの態様において、nは0〜4の整数である。別の態様において、nは1である。別の態様において、nは0である。
【0029】
特定の態様において、ZはC1〜C10アルキルである;R3は各存在について、独立して-HまたはC1〜C10アルキルである;R4は各存在について、独立して-HまたはC1〜C10アルキルである;R5は各存在について、独立して-HまたはC1〜C10アルキルである。
【0030】
別の特定の態様において、ZはC1〜C5アルキルである;R3は各存在について、独立して-HまたはC1〜C5アルキルである;R4は各存在について、独立して-HまたはC1〜C5アルキルである;R5は各存在について、独立して-HまたはC1〜C5アルキルである。
【0031】
別の特定の態様において、リガンドLは構造式(I)(式中、Zは単結合である;nは1であり、他の変化は構造式(I)について上記のとおりである。)で表わされる。より特定の態様において、Zは単結合である;nは1である;R3は各存在について、独立して-HまたはC1〜C10アルキルである;R4は各存在について、独立して-HまたはC1〜C10アルキルである;R5は各存在について、独立して-HまたはC1〜C10アルキルである。別のより特定の態様において、Zは単結合である;nは1である;R3は各存在について、独立して-HまたはC1〜C5アルキルである;R4は各存在について、独立して-HまたはC1〜C5アルキルである;R5は各存在について、独立して-HまたはC1〜C5アルキルである。
【0032】
別の特定の態様において、リガンドLは構造式(II):

で表わされるか、またはその互変異性体であり、変数は構造式(I)について上記のとおりである。より特定の態様において、R5は-Hである。別のより特定の態様において、Zは単結合またはC1〜C5アルキルである;R5は-Hである。
【0033】
別の特定の態様において、リガンドLは構造式(III):

で表わされるか、またはその互変異性体であり、変数は構造式(I)について上記のとおりである。より特定の態様において、R5は-Hである。別のより特定の態様において、Zは単結合またはC1〜C5アルキルである;R5は-Hである。
【0034】
特定の態様において、Lは以下の構造式:


で表わされるか、またはその互変異性体である。
【0035】
リガンドは、由来する個々および別々の化合物に対応する命名を用いて本明細書および以下において構造式で命名または記述されてもなお、実質的なリガンドLはかかる化合物の基であることを理解すべきである。リガンドは、リガンドの種々の結合位置でマトリックス主鎖に結合され得る。結合位置はリガンドの特徴に依存して変化する。リガンドの結合位置はマトリックス主鎖へのリガンドの結合のための反応条件下でリガンドの最も反応する位置である。例えば、リガンドは、「

」で示される結合位置を有する以下の構造式


で表わされる、ベンズイミダゾールの窒素に結合され得る。
【0036】
特定の態様において、R1が-Z-NHR3、-Z-SHまたは-Z-OHで表され、Zが単結合でない場合、-Lは、以下の構造式:


で表され得る。
【0037】
特定の場合において、以下:


に示す互変異性構造などの開示されたリガンドの互変異性型が存在する。
【0038】
本明細書において、リガンドの名称が示されているか、または構造式が示されている場合、該化合物について存在し得る全ての他の互変異性型が該構造式によって包含されることを理解されたい。
【0039】
固相マトリックスは、マトリックス主鎖として、タンパク質および他の生体分子、例えば、寒天-寒天およびアガロースなどの天然もしくは合成の多糖類;セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル;デンプン;ガーゴムおよびアラビアゴム、インドゴム(gum ghatti)、トラガカントゴム、ローカストゴム(locust bean gum)、キサンタンガムなどのゴム質;ペクチン;ムチン;デキストラン;キチン;キトサン;アルギネート;カラギーナン;ヘパリン;ゼラチン;ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミドなどのポリアミドなどの合成ポリマー;ポリイミド;ポリエステル;ポリエーテル;ポリビニルアルコールおよびポリスチレンなどのビニルポリマー化合物;ポリアルケン;アモルファスシリカおよび石英を含む二酸化ケイ素などのシリカ質物質などの無機物質;シリカ;金属のケイ酸塩、制御された孔径のガラスおよびセラミックス;金属の酸化物および硫化物、またはこれらの天然もしくは合成の有機または無機物質の組合せの固相分離に適用可能であることが、それ自体公知の任意の天然または合成の有機または無機物質を含み得る。
【0040】
マトリックス主鎖は、好ましくは、寒天-寒天、アガロース、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル、ポリ(メタ)アクリルアミドなどのポリアミド、ポリビニルアルコール、シリカおよび制御された孔径のガラスから選択される。
【0041】
マトリックス主鎖として特に興味深い固相物質は、例えば、Pharmacia Biotech, Sweden のSepharoseおよびSuperoseビーズなどの寒天またはアガロースビーズおよびBiorad, USAのBiogel A;Pharmacia BiotechのSephadexなどのデキストラン系ビーズ;Secheza, CzechoslovakiaのPerlozaセルロースなどのセルロース系ビーズおよび膜;Pharmacia BiotechのSephacrylおよびSuperdexなどの複合ビーズ;Toso-Haas, USAのFractogelなどの合成有機ポリマーのビーズ;Perceptive Biosystems, USAのPOROS媒体、Biorad のBio-Rex、Bio-Gel PおよびMacro Prep、TESSEKのHEMAおよびSeparon、およびBioSepra, USAのHyper DおよびTrisacryl媒体、EnzacrylおよびAzlactone、3M, USA;Bioprocesing, Englandの制御された孔径のガラス、PROSEP、およびSpherocil、BioSepraなどのシリカ質物質のビーズ;ならびにACTI-DISK、ACTI-MODおよびArbor Technologies, USAのCycloSepなどのビーズまたは膜の形態のコートシリカ複合体である。
【0042】
典型的に、マトリックス主鎖、ならびに得られる官能化された固相マトリックスは、例えば、不定形粒子または球状ビーズ、膜またはシート、成型表面または棒状の形態であり得る。さらに、固相物質は、タンパク質に対して完全もしくは一部透過性または完全に不透過性であり得る。本発明の特に興味深い態様において、マトリックスは、高性能適用では10〜60μmなど、および調製目的では50〜500μm、好ましくは、50〜300μmなどの1〜10000μm、好ましくは、10〜1000μmの範囲の大きさの不定形球状ビーズの形態である。
【0043】
マトリックスの特別な興味深い形態は、密度制御性粒子を含む集塊の形態の密度制御マトリックスである。非充填カラム、例えば、攪拌槽内の単純なバッチ吸着における流動または展開床クロマトグラフィーおよび種々のバッチ式クロマトグラフィー技術のための大規模操作において特に適用可能であるこれらの集塊は、参照によりその全体が本明細書に援用されるWO 92/00799に記載される。
【0044】
リガンドLは、リガンドおよび固相物質との間の直接化学反応によって、またはそれ自体マトリックス主鎖およびリガンドの連結を可能にすることが公知の適当な試薬による固相物質もしくはリガンドの事前の活性化によってのいずれかで、それ自体この目的に適用可能であることが公知の任意の型の共有結合によって固相物質に結合され得る。かかる適当な活性化試薬の例は、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、アリルグリシジルエーテル;ブタンジオールジグリシジルエーテルなどのビス-エポキシド;ジクロロプロパノール、ジビニルスルホンなどのハロゲン置換脂肪族化合物;カルボニルジイミダゾール;グルタルジアルデヒドなどのアルデヒド;キノン;臭化シアン;メタ-過ヨウ素酸ナトリウムなどの過ヨウ素酸塩;カルボジイミド;塩化シアヌルクロロ-トリアジン;塩化トシルおよび塩化トレシルなどの塩化スルホニル;N-ヒドロキシスクシニミド;2-フルオロ-1-メチルピリジニウムトルエン-4-スルホネート;オキサゾロン;マレイミド;ピリジルジスルフィド;ヒドラジド;ならびに臭化アリル/臭素である。これらのうち、活性化試薬は、単結合ではないスペーサー基SP、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、アリル-グリシジルエーテル;ビス-エポキシド;ハロゲン置換脂肪族化合物;ジビニルスルホン;アルデヒド;キノン;臭化シアン;クロロ-トリアジン;オキサゾロン;マレイミド;ピリジルジスルフィド;およびヒドラジドをそのままにする。特定の態様において、スペーサーSPは式: -(O-CH2CH(OH)-CH2)m-(式中、mは1〜10の整数である)で表される。より具体的には、mは1〜5の整数である。さらにより具体的には、mは1〜3の整数である。
【0045】
特定の場合において、活性化試薬は、例えば、ジビニルスルホンが活性化試薬として使用される場合のように、固相マトリックスへの免疫グロブリンの結合に寄与する官能性の一部を構成することさえあり得る。他の場合では、活性化試薬は、官能基とマトリックスの反応中、マトリックスから放出される。これは、カルボジイミダゾールおよびカルボジイミドが使用される場合である。
【0046】
特定の態様において、活性化剤は臭化アリル/臭素である。
【0047】
上記の可能性により、マトリックスMおよびリガンドLを連結する任意のスペーサーSPの存在を規定することが重要になる。本発明の状況では、スペーサーSPは、活性化試薬の一部とみなされ、マトリックスおよびリガンド間の連結を形成する。したがって、スペーサーSPは、関与する活性化試薬およびカップリング反応に対応する。いくつかの場合において、例えば、カルボジイミドを使用する場合、活性化試薬は、マトリックスまたはリガンド試薬の活性化形態を形成する。カップリング後、活性化試薬の一部はリガンドおよびマトリックス間に残らず、したがって、SPは単に単結合となる。
【0048】
他の場合において、スペーサーSPは、結合特性をもたらす官能基、すなわち、リガンドの一体化した部分であり、これは、スペーサーSPが、チオール、アミン、酸性基、スルホン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、ニトリル基または水素結合、静電結合または斥力、電荷移動などを介して相互作用することができる他の基などの機能的に活性な部位または置換基を含む場合、特に重要である。
【0049】
さらに他の場合では、スペーサーSPは、固相マトリックスの結合特性に重要な役割を果たす芳香族環または複素環を含み得る。これは、例えば、キノンまたはクロロトリアジンが固相マトリックスまたはリガンドの活性化剤として使用される場合であり得る。
【0050】
特定の態様において、スペーサーSPは、単結合またはエピクロロヒドリン、アリル-グリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテルなどのビス-エポキシド、1,3-ジクロロプロパン-2-オールなどのハロゲン置換脂肪族化合物、グルタルジアルデヒドなどのアルデヒド、ジビニルスルホン、キノン、臭化シアン、塩化シアヌルなどのクロロ-トリアジン、2-フルオロ-1-メチルピリジニウムトルエン-4-スルホネート、マレイミド、オキサゾロン、およびヒドラジドから選択される活性化試薬由来のビラジカルである。
【0051】
特定の態様において、スペーサーSPは、例えば、式-CH2-CH(OH)-CH2-(エピクロロヒドリン由来)、-(CH2)3-O-CH2-CH(OH)-CH2-(アリル-グリシジルエーテル由来)もしくは-CH2-CH(OH)-CH2-O-(CH2)4-O-CH2-CH(OH)-CH2-(ブタン-ジオールジグリシジルエーテル由来)の短鎖脂肪族ビラジカル;または単結合から選択される。
【0052】
固相マトリックスから、溶出される生成物(例えば、免疫グロブリン)への物質(例えば、リガンドおよび/またはスペーサー)の漏出のリスクのため、リガンド(またはリガンド+任意のスペーサー)の分子量は、できるだけ小さく都合よく選択される。プロテインA、プロテインG、合成ペプチドおよび他の比較的高い分子量のリガンド(例えば、染料)を使用することの主な欠点は、それぞれ分子量間の差が小さいことおよび成分が互いに結合する自然な傾向から、溶出された免疫グロブリンから、任意の放出されたリガンド(任意にスペーサーを含む)を分離することが困難であり得るか、不可能でさえあり得ることである。これは、免疫グロブリンが治療剤として使用される場合、患者にアレルギー性ショックまたは他の重症な症状が引き起こし、有害な影響を有し得る。リガンド(そのスペーサーを含む)の分子量が小さいほど、より効率的に任意の漏出リガンドが免疫グロブリン生成物から分離され得る。リガンド(またはリガンド-スペーサーアームコンジュゲート)が可能な限り小さい分子量を有することの別の重要な利点は、患者への注射/摂取前、免疫グロブリンから分離されなかったかもしれない任意の漏出物質により、最小限の抗原性を示し、したがって、一般に分子量が小さいほど高分子量リガンドよりも生物に対して比較的許容され易くなることである。
【0053】
したがって、リガンドLは、500ダルトン未満、好ましくは400ダルトン未満、より好ましくは250ダルトン未満またはさらに200ダルトン未満などの300ダルトン未満の分子量を有することが好ましい。
【0054】
リガンド-スペーサーアームコンジュゲート(-SP-L)に関して、分子量は、500ダルトン未満、より好ましくは300ダルトン未満またはさらに260ダルトン未満などの400ダルトン未満であることが好ましい。
【0055】
本発明によれば、マトリックスは、単独またはスペーサーSP(マトリックス主鎖とさえ)との組合せで免疫グロブリンとの結合を可能にするリガンドを含む。リガンドの必須部分は、置換されたベンズイミダゾールであることがわかった。
【0056】
同じマトリックス主鎖に対して本明細書に規定された異なるリガンドの2種類以上の組合せが、免疫グロブリンの高い結合効率および/または高い純度に関して特定の利点をもたらし得ることが構想される。しかしながら、本発明の重要な態様において、固相マトリックス上の官能基は全て実質的に同一である。
【0057】
また、正荷電アミノ基または負荷電カルボン酸、スルホン酸またはリン酸基などの負または正の荷電部分を既に含むマトリックスにリガンドをカップリングさせることにより、結合効率および生成物の純度の向上が見られ得る。
【0058】
また、リガンド濃度は本発明によるマトリックスの機能的特徴に非常に重要であり得、例えば、リガンドは、1つのリガンド濃度で免疫グロブリンの高度な選択的結合性を示し得るが、リガンド濃度の増加は、結合選択性の減少をもたらす。当業者に周知のように、あまりにも高いリガンド濃度は、リガンドの固相主鎖上での間隔が狭すぎるため、多結合点の機構による望ましくない不純物の強い結合をもたらし得る。リガンド濃度が低く維持される場合、リガンドは、より広い間隔で配置され、したがって、多数の部位での結合による不純物の結合を引き起こさない。あまりに高いリガンド濃度の別の負の効果は、多数の結合部位による必要なタンパク質、例えば、免疫グロブリンの結合のリスクである。かかる多数の結合は、適切な溶出バッファーによるタンパク質、例えば、免疫グロブリンの放出に困難をもたらし得る。ある場合において、かかるものから高度に置換された固相マトリックスへの生成物の放出のために強い変性条件および有機溶媒を用いることが必要でさえあり得、結果として生物学的活性の低下を伴う。
【0059】
固相マトリックスのリガンド濃度は、いくつかの異なる方法で開示され得る。リガンド濃度を示す方法の1つは、乾燥物質1グラムあたりに存在するリガンドの量(例えば、単位μmol/g 乾燥物質)を開示することである。これは、例えば、リガンド濃度が固相マトリックスの乾燥(例えば、凍結乾燥)試料の元素分析によって測定される場合、直接得られる結果である。しかしながら、リガンド濃度はまた、1mlの湿潤および沈降固相マトリックス(しばしば、1mlの充填床マトリックスともいう)上に存在するリガンドの量として開示され得る。これは、水和固相マトリックスの乾燥物質含量が同時に測定された場合(すなわち、乾燥物質のグラム/ml 湿潤沈降固相マトリックス)、乾燥固相マトリックス(例えば、μmol/g 乾燥物質)に基づく測定値から容易に計算される数値である。リガンド濃度を開示するさらに別の方法は、1グラムの湿潤だが吸引ドレーンマトリックス上に存在するリガンドの量としてである。これもまた、湿潤だが吸引ドレーンマトリックス1グラムあたりの固相乾燥物質含量が同時に測定された場合、乾燥物質に基づく測定値から容易に計算される数値である。
【0060】
したがって、本発明の固相マトリックスのリガンド濃度は、好ましくは、100〜990μmol/g、より好ましくは200〜980μmol/g、特に、250〜975μmol/gなどの10〜990μmol/g 固相マトリックスの乾燥物質の範囲である、または本発明の固相マトリックスのリガンド濃度は、好ましくは、10〜120μmol/ml、より好ましくは15〜100μmol/ml、特に20〜80μmol/mlなどの1〜145μmol/ml水和沈降固相マトリックスの範囲であるか、または本発明の固相マトリックスのリガンド濃度は、好ましくは、10〜110μmol/g、より好ましくは20〜100μmol/g、特に20〜90μmol/gなどの1〜130μmol/g 湿潤だが吸引ドレーン固相マトリックスの範囲である。
【0061】
固相マトリックスの合成
一般的に、固相マトリックスは、それ自体は公知の方法に従って、例えば、それ自体は公知の適当な試薬によるマトリックス主鎖の活性化後、活性化されたマトリックス主鎖へのリガンドのカップリング、任意に、まずスペーサーを活性化されたマトリックス主鎖カップリングさせた後、適当な縮合試薬によりリガンドをスペーサーにカップリングさせることまたはスペーサーのさらに第2の活性化の後にリガンドをカップリングさせることによりリガンドおよびマトリックス主鎖の間にスペーサーSPを組み込むことにより本発明の共有結合リガンドを含むように誘導され得る。
【0062】
試薬の順序および選択は、カップリングされる実際のリガンドおよび誘導されるマトリックス主鎖に依存し得、例えば、ヒドロキシル、アミノ、メルカプトおよびシラノールなどの反応基の含量などが考慮される。いくつかの場合において、マトリックス主鎖の代わりにリガンドを活性化または誘導した後、誘導されたリガンドを固相マトリックス主鎖と反応させることが好ましい場合がある。
【0063】
したがって、本発明による固相マトリックスの好ましい合成方法では、マトリックス主鎖をまず、マトリックス主鎖と反応することができる試薬と反応させ、それにより、これをリガンドとのさらなる反応のために活性化し、任意に活性化試薬を洗い流した後、活性化されたマトリックス主鎖をリガンドを含む溶液と反応させ、任意に、その後、共有結合により固定化されたリガンドを含む固相マトリックスを、余剰の反応体に対してマトリックスを洗浄する1種類以上の適当な溶液で洗浄する。
【0064】
いくつかの場合において、2つの試薬を混合することによりリガンドの活性化およびカップリングを合わせ、反応を平行して行なうことが可能であり得る。これは、コストおよび時間が節約されるとともに、廃水の容量が最小限となるため、大きな利点である。したがって、活性化およびカップリング工程は、好ましくは1つに合わせた工程で行なわれる。
【0065】
さらに、これは、活性化および/またはカップリング反応が、反応媒体に有機溶媒を添加する必要なしで行なわれ得る場合、重要な利点である。これらの有機溶媒は、しばしば、反応性試薬を可溶化するため、または反応性種の加水分解が最小限に維持されることを確実にするために使用される。しかしながら、有機溶媒の使用は、爆発の危険、健康障害のリスク、廃棄物の問題および溶媒自体の比較的高いコストのため、コストおよびプロセスのリスクが増える。したがって、活性化および/またはカップリング手順は、好ましくは、反応媒体への有機溶媒の添加なしで行なわれる。
【0066】
特定の態様において、本発明は、上記の構造式(I)、(II)および(III)で表される化合物に関する。特定の態様において、本発明の化合物は、以下の構造式:


から選択される。上記の化合物は、本明細書に記載された本発明の固相マトリックスを調製するためのリガンドとしての機能を果たす。
【0067】
免疫グロブリンの単離
一般に、免疫グロブリンを単離するための本発明の方法は、いくつかの工程: (a) 固相マトリックスの平衡;(b) 免疫グロブリン溶液との固相マトリックスの接触;(c)固相の洗浄;(d)溶液からの固相の分離;(d) 結合された免疫グロブリンの溶出;(e)固相マトリックスの再生に分けられ得る。
【0068】
しかしながら、これは、全ての工程がその都度行なわれるか、まとめて行なわれるか具体的な適用に依存し得る。したがって、必須の工程は接触、分離および溶出工程のみであり、平衡、洗浄および再生工程は、実際の適用と関連する具体的な要件に従って行なっても行なわなくてもよい。分離工程の型は、実際の設定(下記参照)に依存する。
【0069】
平衡
固相マトリックスを、免疫グロブリン含有溶液と接触させる前に、マトリックスおよび溶液の両方が、免疫グロブリンの必要な結合をもたらす状態であるのを確実にすることが好ましい。したがって、この点において、pH、イオン強度および温度、ならびにいくつかの場合において、免疫グロブリンの結合を促進するため、および/または不純物の結合を防ぐための異なる種類の物質の添加などのパラメータを調整することが必要であり得る。
【0070】
したがって、溶液(例えば、pH、イオン強度などを調整するため、または洗剤の導入のためのバッファー)で洗浄することにより固相マトリックスの平衡を行ない、固相に必要な特性をもたらすことは、任意の工程である。
【0071】
接触
固相マトリックスが、球形または不定形いずれかの粒子の形態である場合、1種類以上の免疫グロブリンを含有する溶液の接触が、充填床カラム内または固相マトリックスを含有する流動/展開床カラム内いずれかで行なわれ得る。また、免疫グロブリン(1つまたは複数)の結合を可能にする一定時間、固相マトリックスが溶液と混合される単純なバッチ操作でも行なわれ得る。
【0072】
固相マトリックスが透過性または半透過性膜またはシートの形態である場合はいつでも、接触は、一般的に、免疫グロブリンが、表面上および/または多孔質構造内に固定化されたリガンドと密接に接触するが確実となるように、免疫グロブリン含有溶液を膜またはシートの表面全体および/または多孔質構造中にポンピングすること/押し込むことにより行なわれる。
【0073】
この方法のさらなるガイドラインは、「Purification Tools for Monoclonal Antibodies」、Gagnon, P., Validated Biosystems, 1996に示されている。
【0074】
洗浄
固相マトリックスを免疫グロブリン含有溶液と接触させた後、任意に、他のタンパク質、脂質、核酸またはマトリックス由来の他の不純物などの未結合または弱く結合された物質を除去するための洗浄手順が行なわれる。しかしながら、非常に高い純度の免疫グロブリンが不可欠でないいくつかの場合において、洗浄手順は省略され得、プロセス工程ならびに洗浄溶液が節約される。
【0075】
非常に高い純度の免疫グロブリンが必要である他の場合では、溶出を開始する前に、異なる洗浄バッファーを用いるいくつかの異なる洗浄手順が使用され得る。
【0076】
使用される洗浄バッファーは、クロマトグラフィーの吸着剤および免疫グロブリンに結合するリガンドの性質に依存する。洗浄バッファーは、吸着剤への免疫グロブリンの結合を撹乱すべきでない、すなわち、pH、塩濃度および他の添加剤は、不純物を含有し、吸着剤内およびその周囲に存在する溶液と洗浄バッファーとの単純な置換、またはこれとさらに吸着剤に結合された不純物の放出の組合せのいずれかによって、望ましくない不純物のみが除去されるように調整すべきである。マトリックスに結合された不純物の放出は、pHおよび/またはイオン強度の変更、あるいは洗浄バッファーに吸着剤もしくは不純物のいずれかと競合的に相互作用する物質を添加し、それによる吸着剤からの不純物の除去のいずれかによって達成され得る。
【0077】
洗浄(本発明による方法の操作(c))は、好ましくは、免疫グロブリンを含有する溶液から残部を除去するため、および他の型の生体分子を除去するために行なわれる。
【0078】
溶出
結合された免疫グロブリンの溶出は、一般的に、結合された免疫グロブリンを含む固相マトリックスを、マトリックス上のリガンドから免疫グロブリンを放出させる溶液と接触させることにより行なわれる。免疫グロブリンはこれにより溶液中に放出され、マトリックスから洗い流され得る。免疫グロブリンを放出させるために使用される溶液は、一般的に、免疫グロブリンの結合に使用されたものと異なる特徴を有するべきであり、例えば、溶液は、異なるpH、異なるイオン強度、異なる温度を有し得る、および/または有機溶媒 (好ましくは、少量のみ)、洗剤、カオトロピック剤または他の変性試薬を含み得る。これらの異なるパラメータの変更の組合せもまた、一般的に使用される。
【0079】
また、溶出は、状態を結合から非結合状態に徐々に変更する溶液を適用すること、典型的に勾配溶出と呼ばれる手順により行なわれ得る。
【0080】
免疫グロブリンは、いったん固相マトリックスから溶出溶液中に放出されたら、ここから、それ自体は公知の異なる任意の手段によって回収され得る。最も単純な場合では、免疫グロブリンは何も変更なく直接使用され得るが、多くの場合、なんらかの濃縮手順、例えば、限外濾過、凍結乾燥または沈殿(例えば、塩析)が好ましい。免疫グロブリン溶液はまた、任意の種類のさらなる処理工程においてさらに非常に良好に精製され得る。
【0081】
再生
固相マトリックスは、任意に清浄され、すなわち、免疫グロブリンの溶出後に再生される。この手順は、典型的に、固相の表面を汚染する不純物の蓄積を最小限にするため、および/または微生物の増殖やプロセス中に使用される固相や装置からの排出による生成物の汚染を回避するためにマトリックスを滅菌するために定期的に行なわれる。かかる再生工程を行なう標準的な方法は、マトリックスを清浄すること、および/または微生物を殺傷することができる溶液で固相マトリックスを洗浄することである。これらの目的に典型的な溶液は、例えば、0.1〜1.0M水酸化ナトリウム;過酸または過酸化水素の溶液;塩酸グアニジニウムなどの変性剤;次亜鉛素酸塩溶液などの活性塩素を含む溶液、エタノールなどの有機溶媒;洗剤などであり得る。この目的に特に好ましい方法は、非常に高い効率、低コスト、塩酸での中和の容易性および廃棄物の問題がないことにより、0.1〜1.0M水酸化ナトリウムを使用することである。
【0082】
本発明の特定の態様において、該方法は、(i)平衡(任意の工程)、(ii)接触、(iii)洗浄(任意の工程)、(iv)分離、(v)溶出、および(vi)再生を含み、ここで、工程(i)〜(v)のサイクルは、再生前に1回以上繰返され、再生後に固相マトリックスが再使用される。
【0083】
結合、洗浄および溶出工程(1つまたは複数)の両方に使用される条件は、得られる結合効率、免疫グロブリンの収率および純度に非常に決定的であり得る。本発明による異なる固相マトリックスは、最適な結果を確実にするため、異なる結合条件、洗浄条件および溶出条件を必要とし得る。同様に、原料物質の性質は、該特別な単離手順に選択される条件に対して非常に重要な影響を有し、例えば、ハイブリドーマ細胞培養上清中のモノクローナル抗体の非常に希釈した溶液(典型的に、10〜100μg/ml)は、腹水液(1〜5mg/ml)などのより濃縮された溶液中に存在する同じ型の抗体と異なった機能をする。例えば、乳清 (1〜2mg/ml)中に存在する免疫グロブリンは、血漿/血清 (5〜20mg/ml)など由来の免疫グロブリンとは異なる条件を必要とする。
【0084】
また、組成物、すなわち、異なる型の不純物の内容物は、異なる原料物質間で有意に異なり得、例えば、卵黄は、ハイブリドーマ細胞培養上清と比べて非常に異なる組成を有する。
【0085】
上記のように、一般的に、固相マトリックスに対する抗体の結合を増強するため、免疫グロブリン含有溶液に異なる物質を添加することが可能である。
【0086】
特定の態様において、本発明は、少なくとも30%などの少なくとも10%、好ましくは少なくとも70%などの少なくとも50%、より好ましくは、90%、特に、少なくとも99%などの少なくとも80%の純度の単離された免疫グロブリンをもたらす免疫グロブリンの単離のための方法に関する。
【0087】
上記のように、固相マトリックスの結合効率最大pH値は、2.0〜10.0の範囲、たいていは3.0〜9.0の範囲であると考えられる。したがって、ほぼ最大に近い単離プロセスを行なうことは最も重要である(これは、もちろん、免疫グロブリン/固相マトリックスの異なる組合せで異なり得る)。したがって、免疫グロブリンを含む溶液(または一般にタンパク質) のpHは、好ましくは、3.0〜9.0の範囲などの2.0〜10の範囲である。しかしながら、リガンド型およびマトリックス主鎖に応じて、pH範囲は、好ましくは、3.0〜7.0または6.0〜9.0である。
【0088】
リガンドが酸性基を含む場合、免疫グロブリンを含有する溶液のpHは、特定の型のマトリックスに対する予測される結合効率最大値に対応して、2.0〜6.0の範囲、より好ましくは、3.0〜5.5の範囲または4.0〜5.5の範囲などの2.5〜5.5の範囲であることが好ましいと考えられる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「酸性基」は、約6.0未満のpKa値を有する基をいう。
【0090】
上記の接触させる工程に関し、免疫グロブリンがマトリックスに結合するためには、過剰量のリオトロピック塩を添加することは必要でないことがわかった。したがって、例えばNaClを含む免疫グロブリンを含む溶液の全塩含有量は、最大2.0、好ましくは、0.05〜1.4などの0.05〜2.0の範囲で、特に0.05〜1.0の範囲のイオン強度に相当するようなものであることが必要であるにすぎない。代替的な要件として、リオトロピック塩それ自体の濃度は、できるだけ低くあるべきであり、したがって、リオトロピック塩の濃度は、最大0.4M、好ましくは最大0.3M、特に、最大0.1Mなどの最大0.2Mである場合、免疫グロブリンを含有する溶液を操作することが可能であることが示された。特定の態様において、リオトロピック塩は使用されない。
【0091】
リオトロピック塩の例は、リオトロピックイオンのホフマイスターシリーズが示された「Purification Tools for Monoclonal Antibodies」、Gagnon、P., Validated Biosystems, 1996に示されている。
【0092】
特定の態様において、1種類以上の免疫グロブリンを含有する溶液は、2.0〜10.0の範囲のpHおよび最大2.0のイオン強度に相当する全塩含有量を有する。
【0093】
溶液中の免疫グロブリンの濃度に関し、固相マトリックスは非常に広い範囲の濃度範囲で機能し得ると考えられ、したがって、固相マトリックスは、0.001〜0.2、好ましくは0.01〜0.1のmg/mlのハイブリドーマ細胞培養上清、0.2〜2.0mg/mlの乳および乳清、5.0〜20mg/mlの種々の動物の血清および血漿、ならびに20〜80mg/mlの初乳の範囲さえの免疫グロブリンを含有する溶液中の免疫グロブリン濃度に等しく効率的に機能すると考えられる。
【0094】
本発明は、固相マトリックス1グラムあたり0.2〜2または5.0〜25 mgの範囲などの固相マトリックス1グラムあたり0.1〜30mgの範囲の免疫グロブリンを含む溶液に特に適することがわかった。
【0095】
したがって、免疫グロブリンを含有する溶液は、粗発酵培養液;ハイブリドーマ細胞培養物などの哺乳動物細胞培養物;大腸菌などの遺伝子操作された微生物の培養物由来の発酵培養液;マウスおよびラットの腹水液などの腹水液;ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ウサギ、ヤギ、モルモットおよびロバ由来の乳、乳清、血液、血漿および血清;ならびにニワトリ卵黄などの卵黄などの、免疫グロブリンの人工的ならびに生物学的に誘導されたものなどの溶液であり得る。
【0096】
さらに、高純度の免疫グロブリンは、免疫グロブリンを含有する溶液が負電荷の洗剤を含む場合に得られ得る。理論には全く拘束されないが、洗剤がマトリックスへの他の生体分子の付着を抑制すると考えられる。かかる洗剤の例は、硫酸オクチル、ブロモフェノールブルー、スルホン酸オクタン、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、およびスルホン酸ヘキサンである。特定の態様において、負電荷の洗剤は使用されない。
【0097】
また、本発明の方法の洗浄工程において、おそらく同じ理由で、負電荷の洗剤を使用することが有利である。洗剤は、単独またはバッファー、例えばリオトロピック塩バッファーとの組合せで使用され得る。洗浄工程におけるリオトロピック塩の使用(少容量)は、結合プロセス(操作(a))におけるリオトロピック塩の使用と比べて、少しだけ廃棄物の問題を示す(結合プロセスは、大量の使用を含むことがほとんどの場合であるため)。特定の態様において、洗剤およびリオトロピック塩は、洗浄工程で使用されない。
【0098】
また、本発明による方法における使用についての固相マトリックスの優れた特性は、溶出工程における有機溶媒の使用なしでも示され得、したがって、好ましくは、使用される溶離剤は、10%(v/v)未満、より好ましくは5%未満の有機溶媒を含む。最も好ましくは、有機溶媒は全く使用されない。
【0099】
また、大量の無毒性溶媒、例えば、プロピレングリコール、例えば40%までのプロピレングリコールが使用され得る。
【0100】
接触工程ならびにその後の工程、すなわち分離、洗浄および溶出は、種々の様式で行なわれ得る。選択される物理的手段は、しばしば、規模およびプロセスが繰返されなければならないかどうかによって指示される。本発明による固相マトリックスは、開発および工業目的に使用されるほぼ任意の状況で使用され得る。したがって、固相マトリックスは、例えば、攪拌バッチプロセス、充填床クロマトグラフィーカラムプロセスまたは流動床プロセスにおいて、免疫グロブリンを含有する溶液と接触され得る。さらに、ガイドラインは、「Purification Tools for Monoclonal Antibodies」、Gagnon, P., Validated Biosystems, 1996に示されている。
【0101】
本発明による免疫グロブリンの単離を行うための他の必要な手段は、従来の方法論に従う。
【0102】
免疫グロブリンのいくつかの適用では、免疫グロブリンが極めて純粋であること、例えば、99%より高い純度を有することが非常に重要である。これは、特に、免疫グロブリンが治療剤として使用される場合はいつでもあてはまるが、他の適用でも必要である。診断の分野では、必要とされる純粋さの程度は、抗体が誘導されずに使用されるかどうか(この場合、高度の純粋さは必要とされないことがある、すなわち50%未満)、または抗体が酵素、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼなどのシグナル分子で標識されなければならないかどうか(この場合、抗体はしばしば、少なくとも80%以上純粋であることが必要とされる)などの多くの因子に依存し得る。他の適用では、純度に対する必要性は相応に異なり得る。しかしながら、免疫グロブリンの純度は、生成物の適正な使用を可能にするには、乾燥物質ベースで少なくとも10%であることが一般的な要求であるようである。しかしながら、本発明は、明白なように、これらの問題を解決するガイドラインを提供する。
【0103】
上記のことから既に明らかなように、本発明の目的は、高い結合効率を有する固相マトリックスを提供することである。また、本発明の固相マトリックスは高い安定性を有する。より具体的には、本発明の固相マトリックスは1M NaOHにおいて安定であり、これにより、マトリックスが再生されることが可能である。
【0104】
免疫グロブリンの単離の方法の場合のように、タンパク質を含む溶液の全塩含有量は、好ましくは、0.05〜2.0の範囲などの最大2.0のイオン強度、特に0.05〜1.4の範囲、特に0.05〜1.0の範囲に相当する、および/またはリオトロピック塩の濃度は、好ましくは、最大0.3Mなどの最大0.4M、特に最大0.2M、特に最大0.1Mである。特定の態様において、免疫グロブリンの単離にリオトロピック塩は使用されない。
【0105】
タンパク質および他の生体分子の単離方法は、多くのタンパク質、例えば、プロ酵素、トリプシン、キモトリプシン、サブチリシン、ペプシン、プラスミノーゲン、パパイン、レニン、トロンビン、およびエラスターゼ等のプロテアーゼ;リパーゼ、グルコシダーゼ;キシラナーゼ;レクチン;アルブミン;発酵培養液由来のタンパク質;ミルクおよびホエー由来のタンパク質;血液、血漿および血清由来のタンパク質;魚類廃棄物由来のタンパク質;器官および組織抽出物などの食肉処理場廃棄物由来のタンパク質、例えば、ウシの小腸由来のアルカリホスファターゼ;ならびにジャガイモ、トマト、ココナッツなどの野菜抽出物由来のタンパク質、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼに用いられ得る。
【0106】
本明細書で用いる場合、用語「アルキル」は、飽和直鎖炭化水素、飽和分枝鎖炭化水素、飽和環状炭化水素のことをいう。好ましくは、アルキルはC1〜C10アルキルである。さらに好ましくは、アルキルはC1〜C5アルキルである。用語「C1〜C10アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、デカリニル等の直鎖、分枝鎖または環状であり得る、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基のことをいう。用語「C1〜C5アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、シクロペンチル等の直鎖、分枝鎖または環状であり得る、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基のことをいう。本発明の化合物に包含されるアルキル基は、任意に、1個以上の置換基で置換され得る。
【0107】
用語「置換アルキル」は、カルボキシ;カルボキシエステル等の保護カルボキシ、例えば(C1〜C6)アルコキシカルボニル;アミノカルボニル;モノ-およびジ((C1〜C6)アルキル)-アミノカルボニル;アミノ-(C1〜C6)アルキル-アミノカルボニル;モノ-およびジ((C1〜C6)アルキル)アミノ-(C1〜C6)アルキル-アミノカルボニル;アミノ;モノ-およびジ((C1〜C6)アルキル)アミノ;(C1〜C6)アルキルカルボニルアミノ;ヒドロキシ;アシルオキシ等の保護ヒドロキシ、例えば、(C1〜C6)アルカノイルオキシ;スルホノ;(C1〜C6)アルキルスルホニルオキシ;ニトロ;フェニル;フェニル-(C1〜C6)アルキル;ハロゲン;ニトリロ;およびメルカプトから選択される1個以上、好ましくは1〜3個の基で置換され得る、アルキル基を意味することを意図する。
【0108】
本明細書で使用する場合、用語「アルキレン」は、2点の結合を有するアルキル基のことをいう。用語「(C1〜C10)アルキレン」は、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基のことをいう。アルキレン基の非限定的な例としては、メチレン(−CH2−)、エチレン(−CH2CH2−)、n-プロピレン(−CH2CH2CH2−)、イソプロピレン(−CH2CH(CH3)−)等が挙げられる。用語「(C1〜C5)アルキレン」は、1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基のことをいう。アルキレン基の非限定的な例としては、メチレン(−CH2−)、エチレン(−CH2CH2−)、n-プロピレン(−CH2CH2CH2−)、イソプロピレン(−CH2CH(CH3)−)等が挙げられる。アルキレン基は、任意に1個以上の置換基で置換され得る。
【0109】
本明細書で使用する場合、用語「アルケニル」は、少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を有する、不飽和直鎖炭化水素、不飽和分枝鎖炭化水素、または不飽和環状炭化水素を意味する。好ましくは、アルケニルは、C2〜C10アルケニルである。用語「C2〜C10アルケニル」は、2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基のことをいう。代表的な直鎖および分枝鎖(C2〜C10)アルケニルとしては、ビニル、アリル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブチレニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、1-へキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル、3-デセニル等が挙げられる。アルケニル基は、任意に1個以上の置換基で置換され得る。
【0110】
本明細書で使用する場合、用語「アルケニレン」は、2点の結合を有するアルケニル基のことをいう。アルケニレン基は、任意に、1個以上の置換基で置換され得る。
【0111】
本明細書で使用する場合、用語「アルキニル」は、少なくとも一つの炭素−炭素3重結合を有する不飽和直鎖炭化水素、不飽和分枝鎖炭化水素または不飽和環状炭化水素を意味する。好ましくは、アルキニルはC2〜C10アルキニルである。用語「C2〜C10アルキニル」は、2〜10個の炭素原子を有するアルキニル基のことをいう。例示的な、直鎖および分枝鎖アルキニルとしては、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-メチル-1-ブチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、5-ヘキシニル、1-ヘプチニル、2-ヘプチニル、6-ヘプチニル、1-オクチニル、2-オクチニル、7-オクチニル、1-ノニニル、2-ノニニル、8-ノニニル、1-デシニル、2-デシニル、9-デシニル等が挙げられる。アルキニル基は、任意に、一つ以上の置換基で置換され得る。
【0112】
本明細書で使用する場合、用語「アルキニレン」は、2点の結合を有するアルキニル基のことをいう。アルキニレン基は、任意に、一つ以上の置換基で置換され得る。
【0113】
本明細書で使用する場合、用語「ハロゲン」は、-Cl、-F、-Brまたは-Iのことをいう。
【実施例】
【0114】
実施例1 リガンド合成
(1) (1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-メタンチオール(4)


50%v/v塩酸(20ml)中の1,2-フェニレンジアミン(1.88g、17mmol)に、2-メルカプト酢酸(1.3ml、1.7g、19mmol)を添加した。反応混合物を窒素下、60℃、次いで90℃で48時間加熱した。このとき、さらに2-メルカプト酢酸(400μl、530mg、6mmol)を添加した。HPLCで試料を分析した。反応混合物を冷却して、40%v/v NaOHでpH 5に中和した。得られた固形物を、水(50ml)で洗浄して真空下で乾燥させ、1.95g、93%収量、Rt=7.6分、ジスルフィド(Rt=8.0分) 4%と一緒に純度>95%の(1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-メタンチオールを得た。1H NMR( d6-DMSO, 400MHz) 14.3ppm (bs,0.5H), 7.46ppm (m,2H), 7.13 (m,2H), 4.17ppm(s 0.1H)。MS (エレクトロスプレー+) 164 mz(M+), 131 m/z (M-SH)。
【0115】
(2) 5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1,3-ジヒドロベンゾイミダゾール-2-チオン



2-プロパノール(15ml)および水(30ml)中の4-アミノ-3-ニトロベンゾニトリル(4.98g、36mol)に、臭化亜鉛(13.80g、61mmol)次いでアジ化ナトリウム(5.81g、89mmol)を添加した。反応混合物を80℃で10時間加熱した。次いで、反応物を冷却し、その後HPLCで分析した。水(15ml)を添加し、オレンジ色の混合物を50%(v/v) HClでpH 3.0に調整した。固形物を水(50ml)で洗浄し、オーブン中90℃で乾燥させ、Rt=8.8分、1H NMR (d6-DMSO, 400MHz) 8.47ppm (1H, d, 2Hz), 7.86ppm (1H,d of d, 9Hz, 2Hz),7.58 ppm (2.3H bs), 6.96 ppm (1H d,9Hz)の橙黄色の固形物2-ニトロ-4-(2H-テトラゾール-5-イル)-フェニルアミン(6.59g)を得た。MS (エレクトロスプレー+) 206m/z (M+), 228m/z (M+Na)。
【0116】
メタノール(450ml)および40%(v/v)塩酸(20ml)中の2-ニトロ-4-(2H-テトラゾール-5-イル)-フェニルアミン(6.80g)に、10%パラジウム炭素を添加した。反応容器を真空にして、バルーンを用いて水素を満たした。4時間後、反応をHPLCで分析した。水(100ml)を加えて反応混合物を濾過した。触媒を水中50%v/vメタノール(100ml)で洗浄した。減圧下(175mBar、その後50mBar)、40℃で溶媒を蒸発させ、Rt=4.9分の茶色固形物4-(2H-テトラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミン二塩酸塩(6.45g)を得た。1H NMR (d6-DMSO,400MHz,) 7.82ppm (1H d, 2Hz), 7.67ppm (1H,d of d, 8.5 Hz, 2 Hz), 7.03ppm (1H,d,8.4 Hz), MS: (エレクトロスプレー+) 176.8 m/z (M+),198.7 m/z (M+Na)。
【0117】
アセトニトリル(100ml)中の4-(2H-テトラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミン二塩酸塩(6.40g、25mmol)に、チオカルボニルジ-イミダゾール(4.86g、28mmol)を添加した。さらに100mlのアセトニトリルを添加した。次いで、反応物を5時間攪拌して、反応をHPLCで分析した。溶媒を減圧下で除去し、水(100ml)を添加した。反応混合物のpHをpH 2.0に調整し、固形物を濾過し、水(50ml)で洗浄した。該物質を乾燥させ、5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1,3-ジヒドロベンズイミダゾール-2-チオン(3.35g、61%収量)を得た。該物質を水(300ml)に懸濁して、40%(v/v) NaOHでpHを11.0に調整した。次いで、メタノール(15ml)、その後活性炭(0.38g)を添加して、混合物を1時間攪拌した。混合物を濾過して、減圧下で、体積の半分量まで溶媒を除去した。50%(v/v)塩酸でpHを2.0に調整して、灰白色の固形物を得た。該固形物を濾過して、水で洗浄した。hplcによると純度は>98%、Rt=7.8分であった。該物質を乾燥させて5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1,3-ジヒドロベンズイミダゾール-2-チオン(2.37g)を得た。1H NMR (d6-DMSO,400MHz) 12.88ppm (1H,s), 12.84ppm(1H,s), 7.82ppm(1H,dd,8.4Hz,1.6Hz), 7.78ppm(1H,m), 7.30ppm(1H,d,8Hz)。MS (高解像度EI): 218.036514 m/z C8H6N6Sは、+4ppm質量精度であると分かった。
【0118】
(3) 5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンズイミダゾール-2イル-アミン(1)



水(45ml)中の4-(2H-テトラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミン二塩酸塩(8.56g、34mmol)をpH 6.0に調整した。臭化シアン(3.91g、37mmol)を添加して、混合物を4時間攪拌した。反応混合物をHPLCで分析した。反応混合物のpHを、40%(v/v)水酸化ナトリウムでpH 4.0に調整した。混合物を4℃に冷却して、茶色の固形物を濾過して水で洗浄した。該物質を乾燥させて、純度88%、Rt=7.3分で茶色の固形物5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンズイミダゾール-2イル-アミン(4.10g)を得た。水(40ml)中の粗製の5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンズイミダゾール-2イルアミン(4.10g)の懸濁物について、50%(v/v)塩酸でpHを1.2に調整した。次いで、活性炭を添加して(0.2g)、混合物を18時間攪拌した。混合物を濾過して、濾過物のpHをpH 3.7に調整して黄褐色の固形物を得た。該物質を乾燥させて(3.01g)、HPLCによる純度を>97%にした。1H NMR (d6-DMSO,400MHz) 13.04ppm (0.3H,s), 12.99 ppm(0.3H,s), 8.85ppm(1H,s), 8.074ppm(1H,s), 7.96ppm (dd,8.4Hz,1.2Hz), 7.55ppm(d,8.4Hz)。MS: (エレクトロスプレー+) 201.8 m/z(M+),223.7 m/z (M+Na)。
【0119】
(4) [5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル]-メタンチオール塩酸塩(3)



50%(v/v)塩酸(105ml)中の4-(2H-テトラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミン二塩酸塩(9.40g、37.7mmol)に、2-メルカプト酢酸(2.4ml、3.18g、34.5mmol)を添加して、窒素下、110℃で48時間、反応混合物を加熱した。24時間後、さらにメルカプト酢酸(0.5ml、0.66g、7.20mmol)を添加した。反応混合物を冷却して試料をhplcで分析した。緑色がかった固形物を濾過して、水で洗浄した。減圧下(90mBar)、50℃で固形物を乾燥させて、Rt=7.4分、HPLCによる純度>97%の[5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル]-メタンチオール塩酸塩(5.27g、65%収量)を得た。1H NMR (d6-DMSO,400MHz) 8.49ppm(1H,m), 8.22ppm (1H, dd,8.8Hz,1.6Hz), 7.95ppm(1H,m, 9.2Hz), 4.67ppm(0.3H,s), 4.24ppm(2H,s)。MS: (エレクトロスプレー+) 233.0 m/z (M+H),463.0 m/z (2M-H)。
【0120】
(5) [5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2イル]-メチルアミン(2)



50%(v/v)塩酸(50ml)中の4-(2H-テトラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミン二塩酸塩(6.40g、25.7mmol)に、グリシン(2.60g、34mmol)を添加して、混合物を120時間、130℃に加熱した。この間の途中に、さらにグリシン(2.01g、26.7mmol)を添加した。この後、hplcで反応を分析した。40%v/v NaOHで反応混合物のpHを4.0に調整した。反応混合物を4℃に冷却して、暗色生成物を濾過して、水(100ml)で洗浄した。粗生成物を乾燥させて(5.62g)、純度93%、Rt=7.0分とした。この粗生成物を水(50ml)に懸濁して、50%v/v塩酸でpHを1.4に調整した。次いで、活性炭を添加して(0.59g)、混合物を20〜25℃で18時間攪拌した。炭素を濾過して、水で洗浄した。40%(v/v) NaOHでpHを4.0に調整して、減圧下で乾燥させて[5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2イル]-メチルアミン(4.22g)を生じる、明るいオレンジ色の固形物を得た。HPLCによる純度>98%。1H NMR (d6-DMSO, 400MHz) 8.31ppm (1H,s), 7.96ppm (1H,d,6.4Hz), 7.70ppm(1H,d, 6.4Hz), 4.38 (2H,s)。MS: (エレクトロスプレー+) 216.2m/z (M+H), 239.2m/z (M+Na)。MS (高解像度EI): 215.092339 m/z C9H9N7は、-1.8ppm質量精度であると分かった。
【0121】
実施例2 リガンドの固相主鎖への固定
一般的な手法
NMP(2ml)中のリガンド(4.1mmol)に水(7ml)、その後、臭素活性化アリル化架橋アガロース(bromine activated allylated cross linked agarose)(10ml、150μmol/mlのアリル基)を添加した。次いで、10M水酸化ナトリウム(1ml)を添加して、混合物を20〜25℃で18時間回転させた。チオール官能基を含有するリガンドに少量のNaBH4を添加した。ゲルを10cvのNMP、水、0.5M HCl、水、0.5M NaOHおよびその後、20cvの水で洗浄した。濾過したリガンドを、HPLCで分析した。ゲルを0.5M HClを含有する50%エタノールに懸濁して、その後10cvのエタノール、水、0.5M NaOHおよび20cvの水で洗浄した。酸滴定および元素分析でゲルを分析した。
【0122】
5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンズイミダゾール-2-イル-アミン(1)
NMP(2ml)および水(7ml)中の5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンズイミダゾール-2イル-アミン(838mg、4.1mmol)に、10mlの臭素活性化アリル化(150μmol/mlのアリル基)架橋6%アガロース、その後、10M水酸化ナトリウム(1ml)を添加した。混合物を20〜25℃で18時間回転させた。10cvのNMP、水、0.5M HCl、水、0.5M NaOHおよびその後20cvの水でゲルを洗浄した。濾過したリガンドをhplcで分析した。ゲルを、0.5M HClを含有する50%エタノールに懸濁して、次いで10cvのエタノール、水、0.5M NaOHおよび20cvの水で洗浄した。
【0123】
窒素について滴定で77μmol/mlの値が得られ、元素分析で61μmol/mlの値が得られた。
【0124】
5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1,3-ジヒドロベンゾイミダゾール-2-チオン
676mg、4.1mmolの5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1,3-ジヒドロベンゾイミダゾール-2-チオンおよびNaBH4(3mg)を用いて、上述の手順と同様。窒素について滴定で133μmol/mlの値が得られ、元素分析で177μmol/mlの値が得られた。
【0125】
[5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル]-メタンチオール塩素酸(3)
1.142g、4.2mmolの[5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル]-メタンチオール塩酸塩およびNaBH4(3mg)を用いて、上述の手順と同様。窒素について滴定で78μmol/mlの値が得られ、元素分析で61μmol/mlの値が得られた。
【0126】
[5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2イル]-メチルアミン(2)
545mg、4.6mmolの[5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2イル]-メチルアミンを用いて、上述の手順と同様。窒素について滴定で76μmol/mlの値が得られ、元素分析で49μmol/mlの値が得られた。
【0127】
リガンドとして、2-アミノベンズイミダゾールまたは1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2,6-ジアミン(5)を有する固形マトリックスを、上述の手順に従って調製した。
【0128】
実施例3 免疫グロブリン結合容量および純度測定
静的hIgG容量測定
1本の参照カラムを含む試験される各マトリックス試料について、二本の使い捨てカラムに、2mLのリガンド−アガロース試料(カラムフリット(column frit)の46mm上方)を詰めた。pH 7.4で、PBSバッファー中、重力下で、アガロースを静置させた。カラムを適切に標識した。
【0129】
試験される各カラムについて、350mgのヒトIgGを、pH 7.4で7mL PBSバッファーに溶解した。ヒトIgG溶液を0.22μmフィルターで濾過した。
【0130】
1:50希釈の濾過IgG溶液を連続希釈で調製し、IgGの濃度は以下:
ヒトIgGの濃度(mg/mL)= OD280nmx 50/1.38
のように計算した。
【0131】
該IgG溶液は35〜45mg/mLの濃度を有する。
【0132】
各カラムを4 x 5mLのPBSバッファーで洗浄した。5mLのIgG溶液を各カラムに流し、フロースルー(FT)をガラスユニバーサル(glass universal)中に収集した。各カラムを4 x 5mLのPBSバッファーで洗浄して結合していないIgGを全て除去し、フロースルーを含むユニバーサル中に洗浄物を収集した。
【0133】
結合したIgGを、10mLの0.1Mグリシン/HClバッファーpH 2で溶出し、溶出物をガラスユニバーサル中に収集した。
【0134】
二つのユニバーサルを、約5分間混合した。
【0135】
分光光度計および1.5mL石英キュベットを用いて、各ユニバーサル中のIgGのOD280nmを測定した。フロースルーおよび洗浄物を測定する際には、ブランクとしてPBSを用い、溶出物を測定する際には、ブランクとして0.1Mグリシン/HClバッファーを用いた。
【0136】
カラム中のリガンド−アガロースの容積は、ベッドの高さ(mm)を測定することで決定した。フロースルー、洗浄物および溶出物中のIgGの合計を、流したIgGの総量で割ることで、回収の割合を計算した。溶出物中のIgGの量をカラムの容積で割ることでIgG容量(mg/mL)を計算した。溶出したIgGの量をマトリックス中のリガンドの量(mg)で割り、リガンド利用値(mg/ml)を計算した。
【0137】
ポリクローナル動的容量測定
標準的な動的容量法(20%BT、10%BT + 10%非結合)および標準的バッファーを用いて、2mlの各試料をオムニフィットカラムに詰めて、hIgGを20%ブレークスルーまで負荷した。次いで、タンパク質を溶出してカラムを清浄し、溶出物のOD280を測定して負荷したhIgGの容積を記した。測定条件を以下に記載する:
流速 2.5分持続時間 (0.8ml/分)
平衡化バッファー PBS pH 7.4
負荷 1mg/ml IgG PBS pH 7.4
洗浄 PBS pH 7.4
溶出 0.1MグリシンpH 2
清浄 0.5M NaOH
【0138】
20%BTに達するために必要なIgGの量を以下の手順で決定した。
【0139】
プラトーレベルに達するまで、IgGの溶液を、目的の固相マトリックスを含む試験カラムにバイパス方式で通した。mAUに関してIgGの量を測定する。フロースルー中のIgGの20%量と等量のIgGを、固相マトリックスが詰められた別のカラムに負荷し、その後洗浄し、カラムからIgGを溶出した。
【0140】
フィードストック容量アッセイ
標準的なフィードストック法および標準的なバッファーを用いて、2mlの各試料をオムニフィットカラム(0.66cm)に詰め、(分離プロテインAカラムにより測定して)20%ブレークスルーに達するまで、抗nipフィードストックを負荷した。次いで、タンパク質を溶出してカラムを清浄した。アッセイ条件を以下に記載する:
流速 2.5分持続時間 (0.8ml/分)
平衡化バッファー PBS pH 7.4
負荷 抗nip (wave 74&75) pH 7.4
洗浄 PBS pH 7.4
溶出 0.1Mクエン酸ナトリウムpH3
清浄 0.5M NaOH
【0141】
20%BTに達するために必要な抗nipフィードストックの量は、以下の手順で決定された。
【0142】
フロースルーがプラトーに達するまで、抗nipフィードストックを目的の固相マトリックスを含む試験カラムに負荷した。フロースルーをアリコート中に収集し、(プロテインAアフィニティーカラムを用いて)IgG含有量を分析した。(プロテインAアフィニティーカラムで測定した)開始フィードストック中のIgGのmAuが、試験カラムからのフロースルー中のIgGのmAuと等しい場合に、100%BTが決定された。20%BTに相当する量の抗nipフィードストックを、目的の固相マトリックスを詰めた別のカラムに流し、その後洗浄してカラムからIgGを溶出した。
【0143】
CHO培地5を用いた不純物結合試験
CHO培地5を用いて、本発明のマトリックスの着色結合および不純物結合を試験した。ブレークスルー(BT)および洗浄物、溶出物、(1%臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(hexa)、pH 1.5による)清浄物ならびに最終0.5M NaOH洗浄物を収集して、OD280nmの値を記録した。
【0144】
測定
1. 1mlの各マトリックス試料を小さな重力式(gravity fed)カラム中で測定し、15ml PBS、pH 7.4を用いて平衡化した。
2. 10mlのCHO培地5を負荷して滴下させ、BTをユニバーサル中に収集し、次いで10mlのPBSを負荷し、このフロースルー(FT)を同じ容器に収集した。
3. 10mlの溶出バッファー0.1MグリシンpH 2を負荷して、FTを収集した。
4. マトリックスを清浄するために、10mlのhexa、pH 1.5を負荷して収集した。
5. 次いで、全ての結合した不純物が洗浄除去されるのを確実にするために10mlの0.5M NaOHを負荷して収集したが、これにより質量バランスが算出され得る。
6. 次いで、全試料についてOD280nmを読み、直接比較を可能にする。OD280nm値を、得られた総OD280nmのパーセンテージに変換した。
【0145】
データの解釈
1. それぞれの段階、即ちBT+W、溶出、清浄およびNaOH洗浄で各試料についてOD280nmを読んだ。
2. 次いで、この値に任意の希釈係数をかけた。
3. 次いで、希釈係数で調整後のOD値に、画分中のmlの数値、即ちBT+Wについて20ml、他の工程について10mlをかけた。
4. 次いで、各画分のmlの数値をかけたそれぞれの画分についてのOD値の合計として、総ODを計算した。
5. 次いで、総ODを用いて各段階における不純物の%を計算した。
【0146】
実施例4 本発明のマトリックスの結合性能
静的容量
リガンド1、2、3、4または5(試料1、2、3、4または5)を有するマトリックスについての静的容量を上述の手順に従って測定した。リガンドLとして2-アミノベンズイミダゾールを有する固相マトリックスについての静的容量も、対照として測定した。
【0147】
表1〜5に静的容量のデータをまとめる。
【0148】
【表1】

【0149】
【表2】

【0150】
【表3】

【0151】
【表4】

【0152】
【表5】

【0153】
表1〜5に示すように、対照試料と比較して、試料1〜5は匹敵するか、または優れた静的結合容量を有する。具体的には、試料1および5は、対照試料と比較して、かなり高いリガンド利用値を有する。
【0154】
フィードストック容量
試料1〜5についてのフィードストック容量を、抗nipフィードストックを用いて測定し、データを表6にまとめる。リガンドとして2-アミノベンズイミダゾールを有する固相マトリックスについてのフィードストック容量も、対照として測定した。溶出したIgGの純度はPrAカラムを用いることで決定した。純度パーセントは、OD280nmを測定することで決定した溶出した全量IgGで、PrAカラムに結合したIgGの量を割って計算した。
【0155】
【表6】

【0156】
表6に示すように、試料1および5は対照と比較して同等の抗nip容量を有する。しかしながら、試料1から溶出したIgG純度は、対照試料から溶出したものよりも高い。試料2および3は、対照のものと比較して同等の前端分析値および対照のものよりも低い溶出値を有し、試料2および3は対照試料よりも強くIgGに結合することが示される。しかしながら、試料2および3から溶出されるIgGの純度は、対照試料よりも有意に高い。試料4は、対照試料と比較して、わずかに低い抗nip結合容量を有する。
【0157】
また、試料1〜5の不純物結合は、溶出溶液(pH 3で、0.1Mクエン酸ナトリウムにより溶出した溶液)の色およびストリップ溶液(0.5M NaOH洗浄で収集した溶液)の色を可視化することで対照試料のものと比較した。対照試料についての溶出溶液およびストリップ溶液は、曇った色および黄色であった。試料1についての溶出溶液およびストリップ溶液は、透明およびかすかな黄色であった。試料2についての溶出溶液は、透明でかすかな黄色であった。試料3についての溶出溶液は、無色透明であった。試料4についての溶出溶液は、無色でかすかに曇った色であった。試料5についての溶出溶液は、無色透明であった。従って、試料1〜5は、対照のものよりも色の薄い結合を有する。
【0158】
ポリクローナル動的結合容量
試料1〜5についてのポリクローナル動的結合容量を測定して対照試料(リガンドLとして2-アミノベンズイミダゾールを有する固相マトリックス)と比較した。20%BTおよび2.5分持続時間で、室温での結合容量データを表7に示す。
【0159】
【表7】

【0160】
試料1および4は対照試料と比較して、同等か、またはわずかに低いポリクローナル動的結合容量を有する。
【0161】
CHO 5培地による不純物結合
試料1、2および4の不純物結合をCHO 5培地を用いて測定した。対照試料およびXLアリル化アガロースビーズ(固定化されたリガンドを有さないが固定化手順中に投入されたアガロースビーズ)の不純物結合も測定した。結合データを表8〜10にまとめる。
【0162】
【表8】

【0163】
【表9】

【0164】
【表10】

【0165】
表8〜10に示すように、試料1、2および4は、対照試料と比較して有意に不純物と結合しない。
【0166】
本明細書中で言及した全ての参照は、その全体での参照により援用される。
【0167】
本発明は、その実施例態様に関して、詳細に示され、記載されるが、付随の特許請求の範囲に包含される発明の範囲から逸脱することなく、本発明の形態および詳細において種々の変更がなされ得ることを当業者は理解しよう。
【0168】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1] a)一般式M-SP-L
(式中、Mはマトリックス主鎖を示し、SPはスペーサーを示し、Lは構造式(I):


ここで、
R1は-Z-N(R3)2、-Z-SR3、または-Z-OR3である;
R2は-H、-ハロゲン、-OR4、-NH2、-アルキル、-NO2、-SO3H、-N(R3)C(O)N(R3)2

である;
R3は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R4は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R5は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
Zは単結合、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルケニレンまたは置換もしくは非置換アルキニレンである;
nは0〜4の整数である;
Lは2-メルカプト-5-ニトロ-ベンズイミダゾール、2-アミノ-ベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、および2-アミノメチル-ベンズイミダゾールでないことを条件とする;
で表わされるリガンドまたはその互変異性体を示す)
の固相マトリックスと1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液を接触させる工程;
b)該溶液から結合した免疫グロブリンを有する該固相マトリックスを分離する工程;
c)任意に該固相マトリックスを洗浄する工程;ならびに
d)該固相マトリックスから1つ以上の免疫グロブリンを遊離させるために該固相マトリックスを溶離剤と接触させ、それにより免疫グロブリンを単離する工程
を含む1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液から免疫グロブリンを単離する方法。
[2] Lが構造式(II):


で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す、前記[1]記載の方法。
[3] Lが以下の構造式:



で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す、前記[1]記載の方法。
[4] R5が-Hである、前記[3]記載の方法。
[5] Zが単結合であり、nが1である、前記[1]記載の方法。
[6] R3が-Hである、前記[5]記載の方法。
[7] Lが以下の構造式:




で表されるリガンドを示す、前記[1]記載の方法。
[8] 1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液のpHが6.0〜10.0の範囲である、前記[1]記載の方法。
[9] マトリックス主鎖がアガロースである、前記[1]記載の方法。
[10] スペーサーSPが以下の式:
─(O-CH2CH(OH)-CH2)m
(式中、mは1〜10の整数である)
で表される、前記[1]記載の方法。
[11] マトリックス主鎖がアガロースである;
スペーサーSPが以下の式:
─(O-CH2CH(OH)-CH2)m
(式中、mは1〜3の整数である)
で表される;および
リガンドLが以下の構造式:



で表される、前記[1]記載の方法。
[12] 1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液が2.0〜10.0の範囲のpHを有する、前記[1]記載の方法。
[13] 1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液が最大2.0のイオン強度に相当する全塩含有量および最大0.4Mの濃度のリオトロピック塩を有する、前記[12]記載の方法。
[14] 1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液がリオトロピック塩を有さない、前記[13]記載の方法。
[15] 一般式:M-SP-L
(式中、Mはマトリックス主鎖を示し、SPはスペーサーを示し、Lは構造式(I):



ここで、
R1は-Z-N(R3)2、-Z-SR3、または-Z-OR3である;
R2は-H、-ハロゲン、-OR4、-NH2、-アルキル、-NO2、-SO3H、-N(R3)C(O)N(R3)2


である;
R3は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R4は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R5は各存在について、独立して-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
Zは単結合、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルケニレンまたは置換もしくは非置換アルキニレンである;
nは0〜4の整数である;
Lは2-メルカプト-5-ニトロ-ベンズイミダゾール、2-アミノ-ベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、および2-アミノメチル-ベンズイミダゾールでないことを条件とする、
で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す)
で表わされる、固相マトリックス。
[16] Lが構造式(II):



で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す、前記[15]記載の固相マトリックス。
[17] Lが以下の構造式:


で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す、前記[16]記載の固相マトリックス。
[18] R5が-Hである、前記[17]記載の固相マトリックス。
[19] Zが単結合であり、nが1である、前記[15]記載の固相マトリックス。
[20] R3が-Hである、前記[19]記載の固相マトリックス。
[21] Lが以下の構造式:




で表されるリガンドを示す、前記[15]記載の固相マトリックス。
[22] マトリックス主鎖がアガロースである、前記[15]記載の固相マトリックス。
[23] スペーサーSPが以下の式:
─(O-CH2CH(OH)-CH2)m
(式中、mは1〜10の整数である)
で表される、前記[15]記載の固相マトリックス。
[24] マトリックス主鎖がアガロースである:
スペーサーSPが以下の式:
─(O-CH2CH(OH)-CH2)m
(式中、mは1〜3の整数である)
で表される;および
リガンドLが以下の構造式:



で表される、前記[15]記載の固相マトリックス。
[25] 以下の構造式:


で表される化合物。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一般式M-SP-L
(式中、Mはマトリックス骨格を示し、SPはスペーサーを示し、Lは構造式(I):


ここで、
R1は、-Z-N(R3)2、-Z-SR3、または-Z-OR3である;
R2は、-H、-ハロゲン、-OR4、-NH2、-アルキル、-NO2、-SO3H、-N(R3)C(O)N(R3)2


である;
R3は、各存在について、独立して、-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R4は、各存在について、独立して、-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R5は、各存在について、独立して、-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
Zは、単結合、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルケニレンまたは置換もしくは非置換アルキニレンである;
nは0〜4の整数である;
但し、Lは、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-ニトロ-ベンゾイミダゾール、2-アミノ-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-ベンゾイミダゾールスルホン酸、および2-アミノメチル-ベンゾイミダゾールではない;
で表わされるリガンドまたはその互変異性体を示す)
の固相マトリックスと1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液を接触させる工程;
b)該溶液から、結合した免疫グロブリンを有する該固相マトリックスを分離する工程;
c)任意に該固相マトリックスを洗浄する工程;ならびに
d)該固相マトリックスから1つ以上の免疫グロブリンを遊離させるために該固相マトリックスを溶出剤と接触させ、それにより免疫グロブリンを単離する工程
を含む1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液から免疫グロブリンを単離する方法。
【請求項2】
Lが、構造式(II):


で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Lが、以下の構造式:


で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
R5が-Hである、請求項1〜3いずれかに記載の方法。
【請求項5】
Zが単結合であり、nが1である、請求項1〜4いずれかに記載の方法。
【請求項6】
R3が-Hである、請求項1〜5いずれかに記載の方法。
【請求項7】
Lが、以下の構造式:



で表されるリガンドあるいはその互変異性体を示す、請求項1〜6いずれかに記載の方法。
【請求項8】
1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液のpHが、2.0〜10.0の範囲である、請求項1〜7いずれかに記載の方法。
【請求項9】
マトリックス骨格がアガロースである、請求項1〜8いずれかに記載の方法。
【請求項10】
スペーサーSPが、以下の式:
-(O-CH2CH(OH)-CH2)m-
(式中、mは1〜10の整数である)
で表される、請求項1〜9いずれかに記載の方法。
【請求項11】
1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液が、最大でも2.0のイオン強度に相当する全塩含有量および最大でも0.4Mの濃度のリオトロピック塩を有する、請求項1〜10いずれかに記載の方法。
【請求項12】
1つ以上の免疫グロブリンを含む溶液が、リオトロピック塩を有さない、請求項1〜11いずれかに記載の方法。
【請求項13】
一般式:M-SP-L
(式中、Mはマトリックス骨格を示し、SPはスペーサーを示し、Lは構造式(I):


ここで、
R1は、-Z-N(R3)2、-Z-SR3、または-Z-OR3である;
R2は、-H、-ハロゲン、-OR4、-NH2、-アルキル、-NO2、-SO3H、-N(R3)C(O)N(R3)2


である;
R3は、各存在について、独立して、-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R4は、各存在について、独立して、-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
R5は、各存在について、独立して、-Hまたは置換もしくは非置換アルキルである;
Zは、単結合、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルケニレンまたは置換もしくは非置換アルキニレンである;
nは0〜4の整数である;
但し、Lは、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-ニトロ-ベンゾイミダゾール、2-アミノ-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-ベンゾイミダゾールスルホン酸、および2-アミノメチル-ベンゾイミダゾールではない、
で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す)
で表わされる、固相マトリックス。
【請求項14】
Lが、構造式(II):


で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す、請求項13記載の固相マトリックス。
【請求項15】
Lが、以下の構造式:


で表されるリガンドまたはその互変異性体を示す、請求項13または14記載の固相マトリックス。
【請求項16】
R5が-Hである、請求項13〜15いずれかに記載の固相マトリックス。
【請求項17】
Zが単結合であり、nが1である、請求項13〜16いずれかに記載の固相マトリックス。
【請求項18】
R3が-Hである、請求項13〜17いずれかに記載の固相マトリックス。
【請求項19】
Lが、以下の構造式:



で表されるリガンドあるいはその互変異性体を示す、請求項13〜18いずれかに記載の固相マトリックス。
【請求項20】
マトリックス骨格がアガロースである、請求項13〜19いずれかに記載の固相マトリックス。
【請求項21】
スペーサーSPが、以下の式:
-(O-CH2CH(OH)-CH2)m-
(式中、mは1〜10の整数である)
で表される、請求項13〜20いずれかに記載の固相マトリックス。
【請求項22】
以下の構造式:


で表される化合物あるいはその互変異性体。


【公開番号】特開2011−201885(P2011−201885A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93394(P2011−93394)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【分割の表示】特願2008−3135(P2008−3135)の分割
【原出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(508010204)ミリポア(ユー.ケイ.)リミテッド (2)
【Fターム(参考)】