説明

ベンズイミダゾール系化合物

ベンズイミダゾール系化合物を提供する。下記化学式1で表示される新たなベンズイミダゾール系化合物である。


前記式で、Xは、F、Cl、BrまたはIのハロゲン元素であり、Yは、ニトロ基(−NO)またはトリフルオロメチル基(−CF)の電子引力が強い基である。これにより、本発明は、ビスヒドロキシ化合物と重合をなして高分子製造が可能であり、製造された高分子は、多様な機能性高分子薄膜の製造に使われうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな構造のベンズイミダゾール系化合物に係り、さらに詳細には、ビスヒドロキシ化合物と重合をなして機能性高分子薄膜用の高分子を製造できるベンズイミダゾール系化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンズイミダゾール(Polybenzimidazole:PBI)は、優秀な機械的・物理的特性によって広く使われており、特に、耐熱性が強くて防火壁または放火服の製造に使われている。
【0003】
PBIと関連して、特許文献1及び非特許文献1には、二つのベンズイミダゾールが直接結合しつつ、2番位置にハロゲン非置換のフェニル基の結合する構造が開示されている。
【0004】
前記ハロゲンまたはヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキル基などの置換関連の技術としては、特許文献2に開示された技術を確認でき、特許文献3及び4には、ベンズイミダゾールに結合されているフェニル基がヒドロキシ基に置換されている構成を表している。
【0005】
また、特許文献5に開示されているリン酸がドーピングされたPBI薄膜は、100℃以上の高温でも高い陽イオン伝導度を示し、このような特性によって、高温燃料電池用の電解質として利用することについての多くの研究が最近進められつつある。
【0006】
しかし、重合されたPBIは、溶媒に対する溶解度が顕著に低くて、反応媒体からの分離が非常に難しいので、高分子薄膜の製造が容易でないという短所がある(非特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】ロシア(ソ連)特許879985号明細書
【特許文献2】米国特許第5,824,698号明細書
【特許文献3】米国特許第5,317,078号明細書
【特許文献4】米国特許第5,412,059号明細書
【特許文献5】米国特許第5,525,436号明細書
【非特許文献1】J.Org.Chem.1977,42(22);pp3485〜91
【非特許文献2】H.−J.Kim et al.,Macromol.Rapid Commun.,25,894(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、従来開発されたベンズイミダゾール系化合物と異なる構造を有する新たなベンズイミダゾール化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために、本発明は、下記化学式1で表示されるベンズイミダゾール系化合物を提供する。
【化1】

前記式で、Xは、F、Cl、BrまたはIのハロゲン元素であり、Yは、ニトロ基(−NO)またはトリフルオロメチル基(−CF)などの電子引力が強い作用基である。
【0010】
前記化学式1のXは、FまたはClであることが望ましく、Yは、トリフルオロメチル基またはニトロ基であることが望ましい。
【0011】
また、本発明は、前記化学式1のベンズイミダゾール系化合物を単量体として合成されたベンズイミダゾール高分子を提供する。
そして、前記合成されたベンズイミダゾール高分子を含む機能性高分子薄膜を提供する。
【0012】
前記機能性高分子薄膜は、リン酸または硫酸でドーピングされたことが望ましく、燃料電池の電解質膜として使われうる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるベンズイミダゾール系化合物は、新たな化合物であって、ビスヒドロキシ化合物と重合をなして多様な機能性高分子薄膜として使われうる高分子を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、下記の実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は、必ずしも実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
3,3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド脱水物3.756g(10.430モル)と4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンゾ酸4.30g(20.854モル)とを50mlのPPMA(Phosphorous pentoxide/Methansulfonic Acid)に溶かし、130℃で5時間反応を進めた後、前記熱い反応溶液を1Mの水酸化ナトリウム溶液に注いだ。沈殿物をフィルタした後、熱い蒸溜水で濾過物を数回洗浄した。濾過物を100℃の温度の真空オーブンで12時間以上乾燥した後、エタノールから再結晶して純粋なベンズイミダゾール5.05gを得た。本実施例の反応式は、下記に表した。分離したベンズイミダゾールは、H−NMRでその化学的構造を確認した。
【0016】
H−NMR(DMSO−d6):8.18−8.07(m,2H)、7.45(d,1H)、7.35−7.23(m,2H)、7.19−7.12(m,1H)
【0017】
【化2】

【0018】
前記本発明は、記載された具体例を中心に詳細に説明されたが、本発明の範囲及び技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であるということは、当業者ならば、明白に分かり、このような変形及び修正は、特許請求の範囲に属している。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、多様な機能性高分子薄膜の製造に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示されるベンズイミダゾール系化合物。
【化1】

前記式で、
Xは、F、Cl、BrまたはIであり、
Yは、ニトロ基(−NO)またはトリフルオロメチル基(−CF)である。
【請求項2】
前記Xは、Fであることを特徴とする請求項1に記載のベンズイミダゾール系化合物。
【請求項3】
前記Xは、Clであることを特徴とする請求項1に記載のベンズイミダゾール系化合物。
【請求項4】
前記Yは、トリフルオロメチル基であることを特徴とする請求項1に記載のベンズイミダゾール系化合物。
【請求項5】
前記Yは、ニトロ基であることを特徴とする請求項1に記載のベンズイミダゾール系化合物。
【請求項6】
請求項1に記載のベンズイミダゾール系化合物を単量体として合成されたベンズイミダゾール高分子。
【請求項7】
請求項6に記載のベンズイミダゾール高分子を含む機能性高分子薄膜。
【請求項8】
前記機能性高分子薄膜は、リン酸または硫酸でドーピングされたことを特徴とする請求項7に記載の機能性高分子薄膜。
【請求項9】
前記機能性高分子薄膜は、燃料電池の電解質膜として使われることを特徴とする請求項7に記載の機能性高分子薄膜。

【公表番号】特表2007−509041(P2007−509041A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532109(P2006−532109)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/KR2005/002599
【国際公開番号】WO2006/016772
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】