説明

ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法、及びベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂

【課題】反応中でゲル化することなく、所望の高分子量化されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得ることができる製造方法を提供すること。
【解決手段】二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物を、環状エステル又はラクトン溶媒を含む溶媒中で反応させる工程を含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂、その成形体及び硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
分子構造中にベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、耐熱性や難燃性に加え、寸法安定性、電気絶縁性、及び低吸水性等の、他の熱硬化性樹脂には見られない優れた特性を有するため、積層板や半導体封止材等のエレクトロニクス材料、摩擦材や砥石等の結合材として注目されている。
【0003】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、オキサジン環がベンゼン環に隣接した構造を有する熱硬化性樹脂であり、フェノール化合物、アミン化合物、アルデヒド化合物を反応させることにより製造される。
【0004】
Scheme1に例示するベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、フェノール化合物としてフェノールを用い、アミン化合物としてアニリンを用い、アルデヒド化合物としてホルムアルデヒド用いて製造されるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂である。Scheme1では、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂(左記)は加熱されることにより開環重合を起こし、ポリベンゾオキサジン(右記)となる。
Scheme1:
【0005】
【化1】

【0006】
近年、優れた特性を持つベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を効率よく合成する方法についてさまざまな検討がなされている。例えば、特許文献1には、フェノール類、パラホルムアルデヒド、及びモノアミン類をアルコール系溶剤中で反応させてフェノール系樹脂を得る製造方法が開示されている。特許文献2及び特許文献3には、フェノール類、パラホルムアルデヒド、及びアミン類を全量一括に、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の非プロトン性溶剤(ジオキサンを除く)中で反応させて、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を製造する方法が開示されている。特許文献4及び非特許文献1では、二官能フェノール化合物、アルデヒド化合物、及びジアミン化合物を、ジオキサン又はクロロホルム中で反応させることにより、ベンゾオキサジン環を有する硬化性樹脂を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−273135号公報
【特許文献2】特開2002−338648号公報
【特許文献3】特開2005−213301号公報
【特許文献4】特開2003−064180号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Polymer Preprints,Japan Vol.57,No.1,p1480(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜4及び非特許文献1等に開示されているような方法では、反応中でゲル化すること等があるため、所望の高分子量化されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を合成することが難しいという問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、反応中でゲル化することなく、所望の高分子量化されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得ることができる製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究を行った結果、環状エステル又はラクトン溶媒を含む溶媒中で反応を行うことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物を、環状エステル又はラクトン溶媒を含む溶媒中で反応させる工程を含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
〔2〕
前記二官能フェノール化合物と、前記ジアミン化合物と、前記環状エステル又は前記ラクトン溶媒を含む溶媒と、を混合して混合溶液を調製する工程と、
前記混合溶液に前記アルデヒド化合物をさらに添加し、反応させる工程と、
を含む、〔1〕に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
〔3〕
前記環状エステル又は前記ラクトン溶媒が、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、3−メチルオクタノ−4−ラクトン、及び4−ヒドロキシ−3−ペンテン酸γ−ラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
〔4〕
前記環状エステル又は前記ラクトン溶媒が、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
〔5〕
前記溶媒が、アルコールをさらに含む、〔1〕〜〔4〕の何れか一項に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
〔6〕
前記アルコールが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メトキシエタノール、及び2−エトキシエタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔5〕に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
〔7〕
前記溶媒において前記アルコールの割合が、0〜50体積%である、〔5〕又は〔6〕に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
〔8〕
前記溶媒が、芳香族系非極性溶媒をさらに含む、〔1〕〜〔7〕の何れか一項に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
〔9〕
前記芳香族系非極性溶媒が、ベンゼン、トルエン、キシレン、プソイドキュメン、及びメシチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔8〕に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
〔10〕
前記溶媒において前記芳香族系非極性溶媒の割合が、0〜50体積%である、〔8〕又は〔9〕に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
〔11〕
前記溶媒において前記環状エステル又は前記ラクトン溶媒の割合が、50〜100体積%である、〔1〕〜〔10〕の何れか一項に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
〔12〕
前記二官能フェノールが、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、1,4−ベンゼンジオール(ヒドロキノン)、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ジアミン化合物が、p−フェニレンジアミン(PDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、及び4,4’−ジアミノビフェニルからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記アルデヒド化合物が、少なくともホルムアルデヒドである、〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
〔13〕
二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物を、環状エステル又はラクトン溶媒を含む溶媒中で反応させて製造される、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂。
〔14〕
〔13〕に記載の熱硬化性樹脂を含む成形体。
〔15〕
〔13〕に記載の熱硬化性樹脂を含む硬化体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反応中でゲル化することなく、高分子量化された、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得ることができる製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図2】実施例2で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図3】実施例3で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図4】実施例4で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図5】実施例5で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図6】実施例6で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図7】実施例7で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図8】実施例8で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図9】実施例9で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図10】実施例10で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図11】実施例11で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図12】実施例12で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図13】実施例13で製造されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0016】
本実施の形態のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法は、二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物を、環状エステル又はラクトン溶媒を含む溶媒中で反応させる工程を含む。
【0017】
二官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、下記式(I)で表されるフェノール性水酸基を2つ有する化合物等が挙げられる。
式(I):

HO−R1−OH

(R1は、ヘテロ元素を含んでいてもよい芳香族の有機基を表す。)
【0018】
二官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、下記式(1)、(2)、及び(3)で表される化合物等が挙げられる。
【0019】
【化2】

【0020】
式(1)中、Xは、直接結合手(原子及び原子団が存在しない)、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。Yは、それぞれ独立して、直接結合手、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。脂肪族の有機基又は芳香族の有機基は、それぞれ置換基を有していてもよい。
置換基としては、特に限定されず、例えば、炭素数1〜20の直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族炭化水素基、又は置換、若しくは無置換フェニル基等が挙げられる。
式(1)のYは、それぞれ独立して、直接結合手又は上記有機基から選択された有機基であれば特に限定されず、同一であってもよく、異なっていてもよい。
n及びmは、それぞれ独立して、0〜10の整数を表す。
【0021】
式(1)中、Xは、左右のYの結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、Xの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよく、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
Yは、左右のフェノール性水酸基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、Yの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよく、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
【0022】
二官能フェノール化合物が前記式(1)で表される化合物であり、式(1)中のXが上記有機基のいずれかである場合、Xは下記群Aからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
群A:
【0023】
【化3】

【0024】
群A中、*は前記式(1)における芳香環への結合位置を表す。
【0025】
二官能フェノール化合物としては、Xが下記群A’からなる群から選択される少なくとも一つである、式(1)で表される化合物であることがより好ましい。
群A’:
【0026】
【化4】

【0027】
群A’中、*は前記式(1)における芳香環への結合位置を表す。
【0028】
二官能フェノール化合物が前記式(1)で表される化合物であり、Yが上記有機基である場合、Yは下記群Bからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
群B:
【0029】
【化5】

【0030】
群B中、*は前記式(1)における芳香環への結合位置を表す。
【0031】
二官能フェノール化合物としては、Yが下記群B’からなる群から選択される少なくとも一つである、式(1)で表される化合物であることがより好ましい。
群B’:
【0032】
【化6】

【0033】
群B’中、*は前記式(1)における芳香環への結合位置を表す。
【0034】
式(1)において、n及びmは、それぞれ独立して、0〜10の整数であることが好ましく、0〜5の整数であることがより好ましい。
【0035】
式(1)において、n及びmが0である場合には、下記式(4)で表される化合物を意味する。
【0036】
【化7】

【0037】
式(4)中、Xは、直接結合手、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。脂肪族の有機基又は芳香族の有機基は、それぞれ置換基を有していてもよい。
【0038】
式(4)中、Xは、左右のフェノール性水酸基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、Xの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよく、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
【0039】
二官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(ビスフェノールM)、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(ビスフェノールP)、4,4’−メチレンジフェノール(ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)、4,4’−ビフェノール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ベンゼンジオール(ヒドロキノン)、1,3−ベンゼンジオール(レゾルシノール)、1,2−ベンゼンジオール(カテコール)等が挙げられる。これらの中でも、フィルム等の硬化体の耐熱性を改善できる観点から、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、1,4−ベンゼンジオール(ヒドロキノン)、1,5−ジヒドロキシナフタレン、及び2,6−ジヒドロキシナフタレンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。二官能フェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
ジアミン化合物としては、特に限定されず、例えば、下記式(II)で表されるアミノ基を2つ有する化合物等が挙げられる。
式(II):

2N−R2−NH2

(R2は、ヘテロ元素を含んでいてもよい直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族又は芳香族の有機基を表す。)
ジアミン化合物としては、脂環式ジアミン化合物、直鎖脂肪族ジアミン化合物、及び芳香族ジアミン化合物等が挙げられる。
【0041】
脂環式ジアミン化合物としては、特に限定されず、例えば、下記式(5)又は(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0042】
【化8】

【0043】
式(5)及び(6)で表される化合物においては、シス異性体、トランス異性体、又はシス異性体とトランス異性体の任意の混合物であってもよい。
【0044】
直鎖脂肪族ジアミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記群Cからなる群から選択される化合物等が挙げられる。
群C:
【0045】
【化9】

【0046】
芳香族ジアミン化合物としては、特に限定されず、例えば、下記式(7)、(8)、及び(9)で表される化合物等が挙げられる。
【0047】
【化10】

【0048】
式(7)中、X’は、直接結合手、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。Y’は、それぞれ独立して、直接結合手、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。脂肪族の有機基又は芳香族の有機基は、それぞれ置換基を有していてもよい。
置換基としては、特に限定されず、炭素数1〜20の直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族炭化水素基、又は置換若しくは無置換フェニル基等が挙げられる。
式(7)中、Y’は、それぞれ独立して、直接結合手又は上記有機基から選択される官能基であればよく、その種類は特に限定されない。
n’及びm’は、それぞれ独立して、0〜10の整数を表す。
【0049】
式(7)中、X’は、左右のY’の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、X’の結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよく、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
Y’は、左右のアミノ基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、Y’の結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよく、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
【0050】
ジアミン化合物が前記式(7)で表される化合物であり、X’が上記有機基である場合、X’は下記群Dからなる群から選択される少なくとも一つの有機基であってもよい。
群D:
【0051】
【化11】

【0052】
群D中、*は前記式(7)における芳香環への結合位置を表す。
【0053】
ジアミン化合物が前記式(7)で表される化合物であり、Y’が上記有機基である場合、Y’は下記群Eからなる群から選択される少なくとも一つの有機基であってもよい。
群E:
【0054】
【化12】

【0055】
群E中、*は前記式(7)における芳香環への結合位置を表す。
【0056】
式(1)において、n及びmは、それぞれ独立して、0〜10の整数であることが好ましく、0〜5の整数であることがより好ましい。
【0057】
式(7)において、n及びmが0である場合には、下記式(10)で表される化合物を意味する。
【0058】
【化13】

【0059】
式(10)中、X’は、直接結合手、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。脂肪族の有機基又は芳香族の有機基は、それぞれ置換基を有していてもよい。
【0060】
式(10)中、X’は、左右のアミノ基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、X’の結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよく、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
【0061】
ジアミン化合物としては、特に限定されず、例えば、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3(4),8(9),−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の脂環式ジアミン化合物;1,2−ジアミノエタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,18−ジアミノオクタデカン等の直鎖脂肪族ジアミン化合物;p−フェニレンジアミン(PDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン(ビスアニリンM)、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン(ビスアニリンP)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、及び1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル等の芳香族ジアミン化合物等が挙げられる。これらの中でも、フィルム等の硬化体の耐熱性を改善させるという観点から、p−フェニレンジアミン(PDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、及び4,4’−ジアミノビフェニルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。ジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
ジアミン化合物の使用量は、特に限定されないが、二官能フェノール化合物1molに対して、0.5mol〜1.5molであることが好ましい。ジアミン化合物の使用量が1.5mol以下であることにより、反応溶液のゲル化を抑制することができ、ジアミン化合物の使用量が0.5mol以上であることにより、二官能フェノール化合物を残存することなく十分に反応させて、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を十分に高分子量化させることができる。
【0063】
アルデヒド化合物としては、特に限定されず、例えば、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ホルムアルデヒド等が挙げられる。これらの中でも、高分子量化させるという観点から、少なくともホルムアルデヒドであることが好ましい。ホルムアルデヒドとしては、その重合体であるパラホルムアルデヒドや、水溶液の形であるホルマリン等の形態で使用することが可能である。また、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒドとアルコール類を反応させることで得られる、ヘミアセタールとして使用することも可能である。その際のアルコールとしては特に限定されないが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等が挙げられる。これらの中でも、留去のしやすさという観点からメタノールが好ましい。アルコールは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
アルデヒド化合物の使用量は、特に限定されないが、ジアミン化合物1molに対して、4mol〜7molであることが好ましい。アルデヒド化合物の使用量が7mol以下であることにより、人体及び環境に与える負荷が多大となるアルデヒド化合物の残存量を減少させることができ、アルデヒド化合物の使用量が4mol以上であることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を高分子量化させることができる。
【0065】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法において、二官能フェノール化合物と共に単官能フェノール化合物を添加して反応させてもよい。単官能フェノール化合物を併用した場合、反応性末端がベンゾオキサジン環で封止された重合体が生成する。その結果、合成反応中の分子量の制御が可能であり、溶液のゲル化を防ぐことができる。また、反応性末端の封止は、得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の保存安定性も向上させ、不溶化を防止することができる。
【0066】
単官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、ドデシルフェノール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−エトキシフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール等が挙げられる。これらの中でも、汎用性及びコストの観点からフェノールが好ましい。単官能フェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
単官能フェノール化合物の使用量は、特に限定されないが、二官能フェノール化合物1molに対して0.5mol以下が好ましい。単官能フェノール化合物の使用量が二官能フェノール化合物1molに対して0.5mol以下であることにより、合成反応中にベンゾオキサジン環構造を有する熱硬化性樹脂を高分子量化させることができ、また、単官能フェノール化合物を十分に反応させることにより、残存量を減少させることができる。
【0068】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法において、二官能フェノール化合物と、ジアミン化合物と、アルデヒド化合物との反応には、環状エステル又はラクトン溶媒を含む溶媒を用いる。その結果、反応中でゲル化することを抑制でき、十分に高分子量化された、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得ることができる。
【0069】
環状エステル又はラクトン溶媒としては、特に限定されないが、例えば、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、3−メチルオクタノ−4−ラクトン、及び4−ヒドロキシ−3−ペンテン酸γ−ラクトン等が挙げられる。これらの中でも、汎用性が高いγ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−ブチロラクトン等が好ましい。環状エステル又はラクトン溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
本実施の形態において、前記溶媒における前記環状エステル又は前記ラクトン溶媒の割合は、特に限定されないが、50〜100体積%であることが好ましい。本実施の形態においては、アルコール、芳香族系非極性溶媒等の他の溶媒を併用することもできる。併用する溶媒の種類は、反応条件等を考慮して適宜選択することができる。
【0071】
溶媒としては、環状エステル又はラクトン溶媒に加え、アルコールをさらに含むことが好ましい。アルコールとしては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メトキシエタノール、及び2−エトキシエタノール等が挙げられる。これらの中でも、沸点等の観点から、イソブタノール及び2−メトキシエタノールが好ましい。アルコールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
環状エステル又はラクトン溶媒と、アルコールとの混合溶媒としては、特に限定されないが、沸点等の観点から、γ−ブチロラクトンとイソブタノールの混合溶媒、γ−ブチロラクトンと2−メトキシエタノールの混合溶媒がより好ましい。
【0073】
環状エステル又はラクトン溶媒だけでなく、アルコールをさらに含む混合溶媒を用いることで、アルコールの溶媒和作用によりベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応が急激に進行し、反応溶液のゲル化及び合成物であるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の不溶化を抑えることができる。
【0074】
環状エステル又はラクトン溶媒とアルコールとの混合溶媒中におけるアルコールの割合は、過剰な合成反応を抑制することができるという観点で(合成反応を効率的に進行させるという観点で)、50体積%以下であることが好ましく、さらに、原料の溶解性を低下させないという観点で、30体積%以下であることがより好ましい。アルコールの割合が50体積%以下であることにより、原料を効果的に溶解させることができ、また、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応を短時間で行うことができるため、合成効率を上昇させることができる。
【0075】
溶媒としては、環状エステル又はラクトン溶媒に加えて、芳香族系非極性溶媒をさらに含むことが好ましい。これにより、生産性をさらに向上させることができる。
【0076】
芳香族系非極性溶媒としては、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、プソイドキュメン、及びメシチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である溶媒等が挙げられる。これらの中でも、汎用性が高く安価である観点から、トルエン、キシレンがより好ましい。芳香族系非極性溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
環状エステル又はラクトン溶媒と、芳香族系非極性溶媒との混合溶媒としては、特に限定されないが、沸点等の観点から、γ−ブチロラクトンとトルエンの混合溶媒、及びγ−ブチロラクトンとキシレンの混合溶媒が好ましい。
【0078】
環状エステル又はラクトン溶媒と、芳香族系非極性溶媒との混合溶媒中における芳香族系非極性溶媒の割合は、特に限定されないが、原料の溶解性を低下させないという観点で、混合溶媒全体に対して50体積%以下であることが好ましく、30体積%以下であることがより好ましい。芳香族系非極性溶媒の割合を上記範囲とすることにより、原料を効果的に溶解させることができ、合成効率をさらに上昇させることができる。
【0079】
溶媒としては、環状エステル又はラクトン溶媒と、芳香族系非極性溶媒と、アルコールとを含む混合溶媒であってもよい。かかる溶媒を用いることで、過剰な合成反応を抑制することができ,かつ溶媒への溶解性をさらに向上できる。芳香族系非極性溶媒とアルコールの割合は、混合溶媒の全体に対して合計で50体積%以下であることが好ましい。芳香族系非極性溶媒とアルコールの割合を上記割合とすることで、上記した効果がより顕著になる。
【0080】
二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物の反応に使用する溶媒の量は、特に限定されないが、二官能フェノール化合物のモル濃度が0.1mol/L〜5.0mol/Lとなる量であることが好ましい。二官能フェノール化合物のモル濃度が0.1mol/L以上であることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応速度をさらに促進させることができ、合成効率の上昇を図ることができる。二官能フェノール化合物のモル濃度が5.0mol/L以下であることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応時に、反応溶液のゲル化をより効果的に抑制することができるとともに、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の不溶化を防止することができる。
【0081】
二官能フェノール化合物、ジアミン化合物及びアルデヒド化合物等の原料を添加混合する順序は、特に限定されず、例えば、溶媒に、二官能フェノール化合物、ジアミン化合物及びアルデヒド化合物を順次に添加混合してもよいし、各原料を一度に添加混合してもよいが、二官能フェノール化合物と、ジアミン化合物を、環状エステル又はラクトン溶媒を含む溶媒に先に混合することが好ましい。
【0082】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法としては、二官能フェノール化合物と、ジアミン化合物と、環状エステル又はラクトン溶媒を含む溶媒と、を混合して混合溶液を調製する工程と、前記混合溶液にアルデヒド化合物をさらに添加し、反応させる工程と、を含む製造方法であることが好ましい。これにより、反応溶液のゲル化をより効果的に抑制することができる。
【0083】
原料の混合溶解を効率的に行うために、溶媒を加温することが好ましく、また、適宜、撹拌機、撹拌子等を使用して溶媒の撹拌下、二官能フェノール化合物等を添加混合してもよい。反応中は、必要に応じて、窒素ガス等の不活性ガスをパージしてもよい。加温処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、油浴等の温度調節器を用いて、所定の温度まで一気に上昇させた後に、その温度で一定に保つ方法等が挙げられる。
【0084】
加温処理の際の温度設定は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応の効率化が図られる温度であれば、特に限定されない。反応溶液の温度は、通常、10℃〜150℃となるように調節することが好ましく、30〜130℃がより好ましい。反応溶液の温度が上記下限値以上であることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応をさらに促進することができ、合成効率を上昇させることができる。反応溶液の温度が上記上限値以下であることにより、反応溶液のゲル化をさらに効果的に抑制することができ、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の不溶化を防止することができる。反応溶液の加温処理を行っている間は、溶媒を還流させてもよい。
【0085】
原料を溶媒中に溶解させる観点から、アルデヒド化合物を添加する前に、二官能フェノール化合物と、ジアミン化合物と、環状エステル又はラクトン溶媒を含む溶媒と、の混合溶液を予め加温処理することが好ましい。
【0086】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法においては、生成する水を留去する工程をさらに含んでいてもよい。反応により生成する水を留去することで、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成反応時間を短縮させることが可能となり、反応の効率化を図ることができる。生成する水の留去の方法やタイミングは、特に限定されるものではなく、例えば、反応溶液中の溶媒と共沸させることにより行うことができる。より具体的には、コック付きの等圧滴下ロート、ジムロート冷却器、ディーン・スターク装置等を用いることで生成する水の留去を行うことができる。また、反応工程中に反応容器内を減圧にすることで、生成する水を系外へ除去してもよい。
【0087】
加温処理の継続時間は、特に限定されないが、例えば、加温開始後1時間〜10時間程度であることが好ましく、2〜9時間程度がより好ましい。加温開始後1時間〜10時間加温を継続させた後、反応溶液を、油浴等の温度調節器の接触から開放して放冷してもよいし、あるいは冷媒等を用いて冷却してもよい。
【0088】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法では、合成反応後に、反応を終了した混合溶液を塩基性水溶液で洗浄する工程を、さらに含んでいてもよい。洗浄工程をさらに行うことにより、反応溶液から未反応の二官能フェノール化合物や単官能フェノール化合物を効果的に取り除くことができる。洗浄工程の塩基性水溶液による洗浄に次いで、蒸留水等で数回洗浄することにより、ナトリウムイオン等の塩基性水溶液由来のイオンを取り除くこともできる。
【0089】
上記洗浄に用いる塩基性水溶液としては、塩基性化合物を水に溶解させた水溶液ならば特に限定されない。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの中でも汎用性の観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0090】
合成したベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹を反応溶液から回収する方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、貧溶媒による再沈法、濃縮固化法(溶媒減圧留去)、スプレードライ法等が挙げられる。必要に応じて、反応後に反応溶液のろ過を行ってもよい。
【0091】
本発明の製造方法により得られるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、十分に高分子量化されている。そのため、その後の開環反応により得られるフィルム等の最終製品の耐熱性や可とう性等の物性を向上させることができる。また、本発明の製造方法によれば、反応溶液のゲル化を抑制できるので、ベンゾフェノン骨格やビフェニル骨格(例えば、式(4)参照)等の剛直な骨格を有する熱硬化性樹脂であっても製造することができる。
【0092】
本発明のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは2000〜300000であり、より好ましくは4000〜200000である。
【0093】
ここで、「高分子量化された」とは、プレポリマータイプの熱硬化前のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が、重量平均分子量を2000〜300000程度に制御されていることを意味する。重量平均分子量が2000以上であることは、その後の開環反応により得られる最終製品の耐熱性、可撓性を上昇させることができ、さらに、合成されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の回収作業性を上昇させることができるため好適である。
【0094】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、合成反応中に、反応溶液の一部を抜き出し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定を行うことで測定できる。重量平均分子量(Mw)は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0095】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、ハロゲンを構造中に有さない構造とすることができ、また、いわゆる不純物としてハロゲンを含まない溶媒を用いて製造することもできため、ゲル化しておらず、ハロゲンを含有しない、熱硬化性樹脂を得ることもできる。
【0096】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂には、必要に応じて、硬化促進剤、難燃剤、無機充填材、離型剤、接着性付与剤、界面活性剤、着色剤、カップリング剤、レベリング剤、その他の熱硬化性樹脂等を添加して、熱硬化性樹脂組成物とすることができる。ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物は、前記溶媒を含んでいてもよい。ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物は、ベンゾオキサジン環等を開環反応させることより、積層板や半導体封止材等のエレクトロニクス材料、摩擦材や砥石等の結合材として好適に用いることができる。
【0097】
本発明では、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を含む成形体とすることができる。また、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を含む硬化体とすることができる。
かかる成形体や硬化体は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂または熱硬化性樹脂組成物を、従来公知の方法により成形又は硬化して得られる。かかる成形体や硬化体は、電子部品・電子機器及びその材料として用いることができる。特に、優れた低熱線膨張率(低CTE)が要求される多層基板、積層板、封止剤、接着剤等の用途に好適である。電子機器としては、例えば、携帯電話、表示機器、車載機器、コンピュータ、通信機器等が挙げられる。電子部品としては、航空機部材、自動車部材、建築部材等の用途にも使用でき、導電材料、特に金属フィラーの耐熱性結着剤として利用して直流又は交流の電流を流すことができる回路を形成する用途に用いてもよい。電子機器としては、例えば、携帯電話、表示機器、車載機器、コンピュータ、通信機器等の材料として用いることができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例及び比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例に用いられる評価方法及び測定方法は以下のとおりである。
【0099】
[重量平均分子量(Mw)の測定]
高速液体クロマトグラフシステム、メーカー:SHIMADZU
システムコントローラー:SCL−10A VP
送液ユニット:LC−10AD
VPデガッサー:DGU−12A
示差屈折計(RI)検出器:RID−10A
オートインジェクター:SIL−10AD VP
カラムオーブン:CTO−10AS VP
カラム:SHODEX KD803(排除限界分子量70000)×2(直列)
カラム温度:50℃
流量:1mL/分
溶離液:DMF(和光純薬工業社製、安定剤不含、HPLC用)、LiBr 10mmol/L含有
サンプル:0.1質量%
検出器:RI
上記測定条件により、Mwが、それぞれ、20000、14000、10000、8000、6000、4000、3000、2000、1500、1000、900、600、400、300、200の標準ポリエチレングリコール(純正化学社製)により検量線を作成した。そして、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により得られたポリエチレングリコール換算値に基づいてサンプルの重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0100】
[1H−NMRの測定]
以下の測定装置及び溶媒を用い、サンプル濃度2質量%で1H−NMRを測定した。
測定装置:JEOL社製、ECX400(400MHz)
溶媒:重DMSO(シグマアルドリッチ社製、0.05体積% TMS(テトラメチルシラン)含有
【0101】
〔熱線膨張率の測定〕
SIIナノテクノロジー社製「TMA/SS6100」を用い、引っ張りモードで、窒素雰囲気下で、荷重5mN、昇温速度5℃/分で測定し、25℃から150℃の熱線膨張率の平均値(ppm/℃)を求めた。
得られたフィルムを幅4mm、長さ20mmにカットして測定サンプルとし、これをチャック間の距離が10mmとなるようにセットして、測定した。
【0102】
(実施例1)
室温において、300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン 200mL(和光純薬工業社製)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(以下、DHBPともいう。)17.25g(0.08mol、和光純薬工業社製)、p−フェニレンジアミン(以下、PDAともいう。)8.66g(0.08mol、大新化成工業社製、製品名「パラミン」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が115℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に粉状物質がなくなるのを目視で確認した後、パラホルムアルデヒド(以下、PFAともいう。)12.58g(0.38mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、反応溶液の温度を115℃で2時間反応させた。
このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。析出した沈殿固体を減圧乾燥し、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂Aを得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は約4000であった。
得られた熱硬化性樹脂の1H−NMRスペクトルを図1に示す。
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.44ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.61ppm
【0103】
(実施例2)
室温において、300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン 200mL(和光純薬工業社製)、DHBP 25.88g(0.12mol、和光純薬工業社製)、PDA 12.99g(0.12mol、大新化成工業社製、製品名「パラミン」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が115℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に粉状物質がなくなるのを目視で確認した後、PFA 18.87g(0.58mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、反応溶液の温度を115℃で3時間反応させた。
このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。析出した沈殿固体を減圧乾燥し、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は約5000であった。
得られた熱硬化性樹脂の1H−NMRスペクトルを図2に示す。
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.45ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.61ppm
【0104】
(実施例3)
室温において、300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン 200mL(和光純薬工業社製)、DHBP 25.88g(0.12mol、和光純薬工業社製)、PDA 12.99g(0.12mol、大新化成工業社製、製品名「パラミン」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が115℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に、目視で粉状物質がなくなるのを確認した後、PFA 18.87g(0.58mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、反応溶液の温度を115℃で5時間反応させた。
このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。析出した沈殿固体を減圧乾燥し、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により得られた重量平均分子量(Mw)は約6000であった。
得られた熱硬化性樹脂の1H−NMRスペクトルを図3に示す。
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.44ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.61ppm
【0105】
(実施例4)
室温において、300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン 160mL(和光純薬工業社製)、イソブタノール 40mL(三菱化学社製)、DHBP 17.25g(0.08mol、和光純薬工業社製)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(以下、MDAという。) 15.93g(0.08mol、保土谷化学工業社製、製品名「DAM」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が105℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に粉状物質がなくなるのを目視で確認した後、PFA 12.58g(0.38mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、反応溶液の温度を105℃で3時間反応させた。
このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。析出した沈殿固体を減圧乾燥し、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂Bを得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は約10000であった。
得られた熱硬化性樹脂の1H−NMRスペクトルを図4に示す。
DHBP_MDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.47ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.65ppm
MDA由来のメチレンプロトンピーク:3.68ppm
【0106】
(実施例5)
室温において、300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン 160mL(和光純薬工業社製)、イソブタノール40mL(三菱化学社製)、DHBP 25.88g(0.12mol、和光純薬工業社製)、MDA23.89g(0.12mol、保土谷化学工業社製、製品名「DAM」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が105℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に粉状物質がなくなるのを目視で確認した後、PFA 18.87g(0.58mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、反応溶液の温度を105℃で3時間反応させた。
このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。析出した沈殿固体を減圧乾燥し、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は約13000であった。
得られた熱硬化性樹脂の1H−NMRスペクトルを図5に示す。
DHBP_MDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.47ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.65ppm
MDA由来のメチレンプロトンピーク:3.67ppm
【0107】
(実施例6)
室温において、300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン 160mL(和光純薬工業社製)、イソブタノール 40mL(三菱化学社製)、DHBP 25.88g(0.12mol、和光純薬工業社製)、MDA15.93g(0.08mol、保土谷化学工業社製、製品名「DAM」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が105℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に粉状物質がなくなるのを目視で確認した後、PFA12.58g(0.38mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、反応溶液の温度を105℃で3時間反応させた。
このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。析出した沈殿固体を減圧乾燥し、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により得られた重量平均分子量(Mw)は約4000であった。
得られた該熱硬化性樹脂の1H−NMRスペクトルを図6に示す。
DHBP_MDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.47ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.65ppm
MDA由来のメチレンプロトンピーク:3.67ppm
【0108】
(実施例7)
室温において、300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン 120mL(和光純薬工業社製)、トルエン 80mL(和光純薬工業社製)、DHBP21.57g(0.10mol、和光純薬工業社製)、PDA 10.83g(0.10mol、大新化成工業社製、製品名「パラミン」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が105℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に、目視で粉状物質がなくなるのを確認した後、PFA 15.62g(0.48mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、反応溶液の温度を105℃で5時間反応させた。このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。
析出した沈殿固体を減圧乾燥し、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は約3000であった。
この化合物の1H−NMRスペクトルを図7に示す。
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.45ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.61ppm
【0109】
(実施例8)
室温において、500mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン 240mL(和光純薬工業社製)、イソブタノール 60mL(三菱化学社製)、4,4’−ビフェノール27.90g(0.15mol、本州化学工業社製)、PDA 16.23g(0.15mol、大新化成工業社製、製品名「パラミン」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が100℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に粉状物質がなくなるのを目視で確認した後、PFA23.42g(0.72mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、反応溶液の温度を100℃で6時間反応させた。
このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。析出した沈殿固体を減圧乾燥し、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は約4000であった。
得られた熱硬化性樹脂の1H−NMRスペクトルを図8に示す。
4,4’−ビフェノール_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.34ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.57ppm
【0110】
(実施例9)
室温において、500mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン 240mL(和光純薬工業社製)、イソブタノール 60mL(三菱化学社製)、4,4’−ビフェノール 27.90g(0.15mol、本州化学工業社製)、MDA 29.87g(0.15mol、保土谷化学工業社製、製品名「DAM」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が100℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に、目視で粉状物質がなくなるのを確認した後、PFA 23.42g(0.72mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、反応溶液の温度を100℃で3.5時間反応させた。
このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。析出した沈殿固体を減圧乾燥し、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は約2000であった。
得られた熱硬化性樹脂の1H−NMRスペクトルを図9に示す。
4,4’−ビフェノール_MDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.38ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.61ppm
MDA由来のメチレンプロトンピーク:3.68ppm
【0111】
(実施例10)
室温において、三方コック、コック付きの等圧滴下ロートがセットされた300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン 130mL(和光純薬工業社製)、DHBP 77.66g(0.36mol、和光純薬工業社製)、PDA 40.41g(0.37mol、大新化成工業社製、製品名「パラミン」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量100mL/分)。
反応溶液温度23℃の前記フラスコ内に、メチルヘミホルマール溶液102.75g(ホルムアルデヒド分46.4%、メタノール分45.0%、広栄化学工業社製、製品名「コーエイホルミット M」)を滴下した。滴下終了後、前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液温度60℃で5時間反応させた時点で、前記フラスコ内に、γ−ブチロラクトン 20mL(和光純薬社製)にフェノール2.53g(0.027mol、和光純薬工業社製)を溶解させた溶液を添加した。その後、前記フラスコ内を減圧し0.09MPaとして、反応溶液温度60℃で8時間反応させた。このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、生成物であるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が溶解している溶液を得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は約17000であった。
得られた熱硬化性樹脂の1H−NMRスペクトルを図10に示す。
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.46ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.64ppm
フェノール_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.53ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.75ppm
【0112】
(実施例11)
室温において、三方コック、コック付きの等圧滴下ロートがセットされた300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン130mL(和光純薬工業社製)、DHBP77.66g(0.36mol、和光純薬工業社製)、PDA 40.41g(0.37mol、大新化成工業社製、製品名「パラミン」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量100mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液温度が45℃となった前記フラスコ内に、メチルヘミホルマール溶液 102.75g(ホルムアルデヒド分46.4%、メタノール分45.0%、広栄化学工業社製、製品名「コーエイホルミット M」)を滴下した。滴下終了後、前記フラスコ内を減圧し0.09MPaとして、反応溶液温度75℃で1時間反応させた。その時点で、前記フラスコ内に、γ−ブチロラクトン 20mL(和光純薬工業社製)にフェノール 2.53g(0.027mol、和光純薬工業社製)を溶解させた溶液を添加した。その後、前記フラスコ内を減圧し0.09MPaとして、反応溶液温度80℃で1時間反応させた。このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、生成物であるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が溶解している溶液を得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は約11000であった。
得られた熱硬化性樹脂の1H−NMRスペクトルを図11に示す。
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.46ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.64ppm
フェノール_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.53ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.75ppm
【0113】
(実施例12)
室温において、三方コック、コック付きの等圧滴下ロートがセットされた300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン 130mL(和光純薬工業社製)、DHBP 77.66g(0.36mol、和光純薬工業社製)、PDA 40.41g(0.37mol、大新化成工業社製、製品名「パラミン」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量100mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液温度が45℃となった前記フラスコ内に、メチルヘミホルマール溶液 102.75g(ホルムアルデヒド分46.4%、メタノール分45.0%、広栄化学工業社製、製品名「コーエイホルミット M」)を滴下した。滴下終了後、前記フラスコ内を減圧し0.09MPaとして、反応溶液温度75℃で1時間反応させた。その時点で、前記フラスコ内に、γ−ブチロラクトン 20mL(和光純薬工業社製)に2−ナフトール 3.88g(0.027mol、和光純薬工業社製)を溶解させた溶液を添加した。その後、前記フラスコ内を減圧し0.09MPaとして、反応溶液温度80℃で1.5時間反応させた。このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、生成物であるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が溶解している溶液を得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は約12000であった。
得られた熱可塑性樹脂の1H−NMRスペクトルを図12に示す。
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.46ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.64ppm
2−ナフトール_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.52ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.88ppm
【0114】
(実施例13)
室温において、三方コック、コック付きの等圧滴下ロートがセットされた300mLのフラスコ内に、γ−ブチロラクトン 130mL(和光純薬工業社製)、DHBP 77.66g(0.36mol、和光純薬工業社製)、PDA 32.37g(0.30mol、大新化成工業社製、製品名「パラミン」)、MDA 14.88g(0.075mol、保土谷化学工業社製、製品名「DAM」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量100mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液温度が45℃となった前記フラスコ内に、メチルヘミホルマール溶液 102.89g(ホルムアルデヒド分46.4%、メタノール分45.0%、広栄化学工業社製、製品名「コーエイホルミット M」)を滴下した。滴下終了後、前記フラスコ内を減圧し0.09MPaとして、反応溶液温度75℃で1時間反応させた。その時点で、前記フラスコ内に、γ−ブチロラクトン 20mL(和光純薬工業社製)にフェノール 2.63g(0.028mol、和光純薬工業社製)を溶解させた溶液を添加した。その後、前記フラスコ内を減圧し0.09MPaとして、反応溶液温度80℃で1時間反応させた。このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、生成物であるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が溶解している溶液を得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は約9000であった。
得られた熱可塑性樹脂の1H−NMRスペクトルを図13に示す。
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.46ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.64ppm
DHBP_MDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.50ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.69ppm
MDA由来のメチレンプロトンピーク:3.67ppm
フェノール_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.51ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.69ppm
【0115】
(比較例1)
室温において、300mLのフラスコ内に、N,N’−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcともいう。)200mL(和光純薬工業社製)、DHBP 17.25g(0.08mol、和光純薬工業社製)、PDA 8.66g(0.08mol、大新化成工業社製、製品名「パラミン」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液温度の温度が120℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に、目視で粉状物質がなくなるのを確認した後、PFA 12.58g(0.38mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加した。PFA添加後、反応溶液がゲル化したため、反応を中断した。
【0116】
(比較例2)
室温において、300mLのフラスコ内に、シクロペンタノン 200mL(和光純薬工業社製)、DHBP 17.25g(0.08mol、和光純薬工業社製)、PDA 8.66g(0.08mol、大新化成工業社製、製品名「パラミン」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液温度の温度が100℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に粉状物質がなくなるのを目視で確認した後、PFA 12.58g(0.38mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加した。PFA添加後、反応溶液がゲル化したため、反応を中断した。
【0117】
(比較例3)
室温において、500mLのフラスコ内に、ジオキサン 250mL(和光純薬工業社製)、DHBP 21.56g(0.10mol、和光純薬工業社製)、MDA 19.91g(0.10mol、保土谷化学工業社製、製品名「DAM」)を、前記フラスコ内に室温下で添加混合した。この時点から系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が80℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に粉状物質がなくなるのを目視で確認した後、PFA 19.86g(0.60mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加した。PFA添加後、反応溶液がゲル化したため、反応を中断した。
【0118】
(比較例4)
室温において、500mLのフラスコ内に、トルエン 250mL(和光純薬工業社製)、DHBP 21.56g(0.10mol、和光純薬工業社製)、MDA 19.91g(0.10mol、保土谷化学工業社製、製品名「DAM」)を、前記フラスコ内に室温下で添加混合した。この時点から系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が90℃になってから、1時間攪拌したが、DHBPとMDAが溶解しなかった。
【0119】
(比較例5)
室温において、500mLのフラスコ内に、クロロホルム 250mL(和光純薬工業製)、DHBP 21.56g(0.10mol、和光純薬工業社製)、MDA 19.91g(0.10mol、保土谷化学工業社製、製品名「DAM」)を、前記フラスコ内に室温下で添加混合した。この時点から系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が40℃になってから、1時間攪拌したが、DHBPとMDAが溶解しなかった。
【0120】
(比較例6)
室温において、500mLのフラスコ内に、メチルエチルケトン 250mL(和光純薬工業社製)、DHBP 21.56g(0.10mol、和光純薬工業社製)、MDA 19.91g(0.10mol、保土谷化学工業社製、製品名「DAM」)を、前記フラスコ内に室温下で添加混合した。この時点から系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が60℃になってから、1時間攪拌した。反応溶液中に粉状物質がなくなるのを目視で確認した後、PFA 19.86g(0.60mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加した。PFA添加後、反応溶液がゲル化したため、反応を中断した。
【0121】
(比較例7)
室温において、500mLのフラスコ内に、酢酸エチル 250mL(和光純薬工業社製)、DHBP 21.56g(0.10mol、和光純薬工業社製)、MDA 19.91g(0.10mol、保土谷化学工業社製、製品名「DAM」)を、前記フラスコ内に室温下で添加混合した。この時点から系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が60℃になってから、1時間攪拌したが、DHBPとMDAが溶解しなかった。
【0122】
(比較例8)
室温において、300mLのフラスコ内に、トルエン 200mL(和光純薬工業社製)、4,4’−ビフェノール 14.88g(0.08mol、本州化学工業社製)、MDA 15.93g(0.08mol、保土谷化学工業社製、製品名「DAM」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が100℃になってから、1時間攪拌したが、4,4’−ビフェノールとMDAが溶解しなかった。
【0123】
〔製造例1〕
室温において、コック付きの等圧滴下ロート及びジムロート冷却器がセットされた500mLのフラスコ内に、トルエン190mL及びイソブタノール10mLを、室温条件下で添加混合した。
その後、ビスフェノールA(以下、BisAという。)41.6g(0.120mol、日本ジーイープラスチックス社製)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、BAPPという。)51.3g(0.125mol、和歌山精化工業社製、製品名「BAPP」)、フェノール0.9g(0.0096mol)を前記フラスコ内に室温下で添加混合した。この時点から系内へ窒素ガスパージを開始した(流量15mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が65℃になってから粉状物質がなくなるのを目視で確認した後、PFA19.7g(0.6mol、三菱ガス化学社製、純度91.60%)を、前記フラスコ内に添加し、還流させて2時間反応させた。
その後、反応中に生成した水を、トルエン、イソブタノールと共沸させることで系外に留去しながら反応させた。留去開始後、6時間還流を行った。
このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、ろ過した後、1Lのメタノール中に注ぎ入れ、生成物を沈殿析出させた。析出した沈殿固体を減圧乾燥することで、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂Cを得た。
得られたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は約16000であった。
【0124】
〔実施例14〕
ガラス容器中で、ジメチルホルムアミド5gに、実施例1で作製した熱硬化性樹脂Aを7g溶解させ、紫色の粘調液を得た。
この粘調液を、ポリイミド(以下、PIという。)フィルム上にアプリケータを用いて塗工し、80℃で10分、100℃で10分、150℃で10分、180℃で30分、200℃で30分、220℃で30分、240℃で30分、260℃で1時間それぞれ保持し、オーブン中で熱硬化させて、フィルム状の硬化物(フィルムA)が得られた。この硬化物は赤色透明であり、厚さは45μmであった。
【0125】
〔実施例15〕
ガラス容器中で、ジメチルホルムアミド5gに、実施例4で作製した熱硬化性樹脂Bを6g溶解させ、黄色の粘調液を得た。
この粘調液を、PIフィルム上にアプリケータを用いて塗工し、80℃で10分、100℃で10分、150℃で10分、180℃で30分、200℃で30分、220℃で30分、240℃で30分、260℃で1時間それぞれ保持し、オーブン中で熱硬化させて、フィルム状の硬化物(フィルムB)が得られた。この硬化物は黄色透明であり、厚さは45μmであった。
【0126】
(製造例2)
ガラス容器中で、ジメチルホルムアミド5gに、製造例1で作製した熱硬化性樹脂Cを5g溶解させ、黄色の粘調液を得た。
この粘調液を、PIフィルム上にアプリケータを用いて塗工し、80℃で10分、100℃で10分、150℃で10分、180℃で30分、200℃で30分、220℃で30分、240℃で1時間それぞれ保持し、オーブン中で熱硬化させて、フィルム状の硬化物(フィルムC)が得られた。この硬化物は黄色透明であり、厚さは51μmであった。
【0127】
実施例1〜13の製造条件及び結果を表1に、比較例1〜8の製造条件及び結果を表2に、フィルムA〜Cの熱線膨張率の平均値を表3に示す。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

【0131】
表1に示すように、各実施例の製造方法では、反応中でゲル化することなく、十分に高分子量化されたベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得られることが確認された。一方、表2に示すように、各比較例の製造方法では、反応中でゲル化したり、原料が溶媒に不溶したりするため、所望の熱硬化性樹脂を得られないことが確認された。更に、表3に示すように、実施例14及び実施例15のフィルムは、熱線膨張率の低減化が図られており、寸法安定性に優れていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の製造方法により得られるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、積層板や半導体封止材等のエレクトロニクス材料、摩擦材や砥石等の結合材の分野をはじめとする幅広い分野において産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物を、環状エステル又はラクトン溶媒を含む溶媒中で反応させる工程を含む、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記二官能フェノール化合物と、前記ジアミン化合物と、前記環状エステル又は前記ラクトン溶媒を含む溶媒と、を混合して混合溶液を調製する工程と、
前記混合溶液に前記アルデヒド化合物をさらに添加し、反応させる工程と、
を含む、請求項1に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記環状エステル又は前記ラクトン溶媒が、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、3−メチルオクタノ−4−ラクトン、及び4−ヒドロキシ−3−ペンテン酸γ−ラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記環状エステル又は前記ラクトン溶媒が、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3の何れか一項に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒が、アルコールをさらに含む、請求項1〜4の何れか一項に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メトキシエタノール、及び2−エトキシエタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒において前記アルコールの割合が、0〜50体積%である、請求項5又は6に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒が、芳香族系非極性溶媒をさらに含む、請求項1〜7の何れか一項に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記芳香族系非極性溶媒が、ベンゼン、トルエン、キシレン、プソイドキュメン、及びメシチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記溶媒において前記芳香族系非極性溶媒の割合が、0〜50体積%である、請求項8又は9に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記溶媒において前記環状エステル又は前記ラクトン溶媒の割合が、50〜100体積%である、請求項1〜10の何れか一項に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記二官能フェノールが、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、1,4−ベンゼンジオール(ヒドロキノン)、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ジアミン化合物が、p−フェニレンジアミン(PDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、及び4,4’−ジアミノビフェニルからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記アルデヒド化合物が、少なくともホルムアルデヒドである請求項1〜11のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の製造方法。
【請求項13】
二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物を、環状エステル又はラクトン溶媒を含む溶媒中で反応させて製造される、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂。
【請求項14】
請求項13に記載の熱硬化性樹脂を含む成形体。
【請求項15】
請求項13に記載の熱硬化性樹脂を含む硬化体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−57961(P2011−57961A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40912(P2010−40912)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】