説明

ベンゾピラン着色剤、製造方法、および使用方法

式(I)の化合物であって、式中、Xは、水素または式(II)の基であり、R1は、それぞれ出現する毎に、C1〜C20脂肪族基、C3〜C10脂環式基、またはC3〜C10芳香族基であり;R2、R3、R4およびR5は、それぞれ出現する毎に、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C20脂環式基、またはC6〜C20芳香族基であり;「n」、「q」、および「p」は、それぞれ独立して、0から3の値を有する整数であり、「m」は、0から4の値を有する整数である、化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してベンゾピラン化合物に関する。より具体的には、本開示は、高い熱安定性を有するベンゾピラン着色剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの異なる種類のポリマーを着色する上で、様々な着色剤が有用であることが知られている。加工中の安定性のために高いガラス転移温度(Tg)を有し、また様々な条件下で良好な耐候性を有する着色剤が、熱可塑性樹脂の着色において大きく求められている。しかし、これらの安定性を備え、かつ望ましい色および良好な明度を製品に与える着色剤を見出すのは困難である。
【0003】
したがって、良好な色度、良好な蛍光強度、および良好な耐候性を有するとともに、高温で加工されることが可能な新たな着色剤化合物が引き続き必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書では、式(I)の化合物であって、
【0005】
【化1】

【0006】
式中、Xは、水素または式(II)の基であり、
【0007】
【化2】

【0008】
R1は、それぞれ出現する毎に、C1〜C20脂肪族基、C3〜C10脂環式基、またはC3〜C10芳香族基であり;
R2、R3、R4およびR5は、それぞれ出現する毎に、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C20脂環式基、またはC6〜C20芳香族基であり;
「n」、「q」、および「p」は、それぞれ独立して、0から3の値を有する整数であり、「m」は、0から4の値を有する整数である、化合物が開示される。
【0009】
他の実施形態において、式(I)の化合物を生成する方法は、第1の触媒および第1の溶媒の存在下で、式(III)の化合物を、式(IV)の化合物と反応させて、
【0010】
【化3】

【0011】
式(V)の化合物を生成するステップと、
【0012】
【化4】

【0013】
第2の溶媒の存在下で、上記式(V)の化合物をマロノニトリルと反応させて、式(VI)の化合物を生成するステップと、
【0014】
【化5】

【0015】
第2の触媒および第3の溶媒の存在下で、上記式(VI)の化合物を、式(VII)または式(VIII)の化合物と反応させて、
【0016】
【化6】

【0017】
上述の式(I)の化合物を生成するステップと、を含み、式中、X、R1、R2、R3、R4、R5、「n」、「q」、「p」および「m」は、上述の定義と同じ意味を有する。
【0018】
一実施形態において、組成物は、ポリマーと、上述の式(I)の化合物とを含む。
【0019】
他の実施形態において、物品は、上述のポリマー組成物を含む。
【0020】
本開示は、本開示の様々な特徴に関する以下の詳細な説明、およびそれに含まれる例を参照することにより、より容易に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本明細書では、ベンゾピラン化合物、および該化合物を調製するための方法が開示される。該化合物は、着色ポリマーの調製、特に熱可塑性着色ポリマーの調製における着色剤として有用である。該化合物は高温で安定であり、良好な耐候性を有し、したがって様々な物品を形成するためにポリマー組成物に使用することができる。
【0022】
文脈上異なる定義が明示されていない限り、単数形は複数形の指示対象も含む。本明細書で開示されるすべての範囲は、挙げられた端点を含み、独立して組み合わせ可能である(例えば、「最大25重量(wt)パーセントで、5wtパーセントから20wtパーセントが望ましい」という範囲は、端点および「5wtパーセントから25wtパーセント」の範囲のすべての中間値を含む)。
【0023】
数量に関連して使用される「約」という修飾語句は、示された値を含み、文脈により決定される意味を有する(例えば、特定の数量の測定に関連した誤差の程度を含む)。
【0024】
化合物は、標準的命名法を用いて記載されている。例えば、示されたいかなる基によっても置換されていないいかなる位置も、示されるような結合、または水素原子により満たされた価を有するものと理解される。2つの文字または記号の間にはないダッシュ(「-」)は置換基の結合点を示すために使用される。例えば、-CHOは、カルボニル基の炭素を介して結合される。
【0025】
別段に指定されていない限り、「脂環式官能基」という用語は、少なくとも一価の価数を有し、環式ではあるが芳香族ではない原子配列を有する、環式の脂肪族官能基を指す。脂環式官能基は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素および酸素等のヘテロ原子を含んでもよく、あるいは、炭素および水素のみから構成されてもよい。「脂環式官能基」は、環式基を介して、または環式基上の他の基を介して連結されてもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C6H11CH2-)は、シクロヘキシル環(環式ではあるが芳香族ではない原子配列)とメチレン基(非環式成分)とを有する脂環式官能基である。「脂環式部分」は、さらに置換されていなくても置換されていてもよい。すなわち、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロゲン、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、カルボン酸基、アシル基(エステルやアミド等のカルボン酸誘導体等)、アミン基、およびニトロ基等の官能基を含む、1つまたは複数の非環式成分を備えていてもよい。例えば、4-メチルシクロペント-1-イル基は、メチル基を有するC6脂環式官能基であり、メチル基はアルキル基である官能基である。同様に、2-ニトロシクロブト-1-イル基は、ニトロ基を有するC4脂環式官能基であり、ニトロ基は官能基である。例示的な脂環式官能基には、シクロプロピル、シクロブチル、1,1,4,4-テトラメチルシクロブチル、ピペリジニル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル、シクロヘキシル、およびシクロペンチルが含まれる。
【0026】
本明細書で使用される「芳香族官能基」という用語は、少なくとも一価の価数を有し、少なくとも1つの芳香族基を有する原子配列を指す。この少なくとも一価の価数を有し、少なくとも1つの芳香族基を有する原子配列は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素および酸素等のヘテロ原子を含んでもよく、あるいは、炭素および水素のみから構成されてもよい。本明細書で使用される「芳香族官能基」という用語は、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン、およびビフェニル官能基を含むが、これらに限定されない。芳香族官能基はまた、非芳香族成分を含んでもよい。例えば、ベンジル基は、フェニル環(芳香族基)とメチレン基(非芳香族成分)とを有する芳香族官能基である。同様に、テトラヒドロナフチル官能基は、非芳香族成分-(CH2)4-に融合した芳香族基(C6H3)を有する芳香族官能基である。「芳香族官能基」は、さらに、アルキル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、ハロゲン、アルコール基、エーテル基、カルボン酸基、アシル基(エステルやアミド等のカルボン酸誘導体等)、アミン基、およびニトロ基等の広範な官能基で置換されていなくても置換されていてもよい。例えば、4-メチルフェニル官能基は、メチル基を有するC7芳香族官能基であり、メチル基はアルキル基である官能基である。同様に、2-ニトロフェニル基は、ニトロ基を有するC6芳香族官能基であり、ニトロ基は官能基である。例示的な芳香族官能基には、フェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、4-クロロメチルフェン-1-イル、3-トリクロロメチルフェン-1-イル(3-CCl3Ph-)、4-(3-ブロモプロプ-1-イル)フェン-1-イル(4-BrCH2CH2CH2Ph-)、4-アミノフェン-1-イル(4-H2NPh-)、4-ヒドロキシメチルフェン-1-イル(4-HOCH2Ph-)、4-メチルチオフェン-1-イル(4-CH3SPh-)、3-メトキシフェン-1-イル、2-ニトロメチルフェン-1-イル(2-NO2CH2Ph)、およびナフチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用される「脂肪族官能基」という用語は、少なくとも1つの炭素を有し、少なくとも一価の価数を有し、環式ではない直鎖または分岐鎖の原子配列を有する有機官能基を指す。脂肪族官能基を成す原子配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレン、および酸素等のヘテロ原子を含んでもよく、あるいは、炭素および水素のみから構成されてもよい。「脂肪族官能基」は、アルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン、アルコール基、エーテル基、カルボン酸基、アシル基(エステルやアミド等のカルボン酸誘導体等)、アミン基、およびニトロ基等の広範な官能基で置換されていなくても置換されていてもよい。例えば、4-メチルペント-1-イルは、メチル基を有するC6脂肪族官能基であり、メチル基はアルキル基である官能基である。同様に、4-ニトロブト-1-イル基は、ニトロ基を有するC4脂肪族官能基であり、ニトロ基は官能基である。例示的な脂肪族官能基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、トリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、クロロメチル、トリクロロメチル、ブロモエチル、2-ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(すなわち-CH2OH)、メルカプトメチル(-CH2SH)、メチルチオ(-SCH3)、メチルチオメチル(-CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(CH3OCO-)、ニトロメチル(-CH2NO2)およびチオカルボニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で使用されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含む。
【0029】
本明細書では、式(I)のジヒドロキシ芳香族化合物であって、
【0030】
【化7】

【0031】
式中、Xは、水素または式(II)の基であり、
【0032】
【化8】

【0033】
R1は、それぞれ出現する毎に、C1〜C20脂肪族基、C3〜C10脂環式基、またはC3〜C10芳香族基であり;R2、R3、R4およびR5は、それぞれ出現する毎に、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C20脂環式基、またはC6〜C20芳香族基であり;「n」、「q」、および「p」は、それぞれ独立して、0から3の値を有する整数であり、「m」は、0から4の値を有する整数である、化合物が開示される。
【0034】
特定の実施形態では、R1は、それぞれ出現する毎に、C1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基、またはC6〜C10芳香族基である。他の特定の実施形態では、各R1は、同じ非置換のC1〜C6脂肪族基である。
【0035】
他の特定の実施形態では、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ出現する毎に、ハロゲン、ニトロ基、またはシアノ基であり、「n」、「q」、「m」および「p」は、それぞれ独立して、0から2、具体的には0から1の値を有する整数である。
【0036】
さらに他の特定の実施形態では、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ出現する毎に、ハロゲン、ニトロ基、またはシアノ基であり、「n」および「q」は、それぞれ独立して、0から2、具体的には0から1の値を有する整数であり、「m」は、0から2、具体的には0から1の値を有する整数であり、「p」は、0から1、具体的には0の値を有する整数である。
【0037】
他の特定の実施形態において、各R1は、同じ非置換のC1〜C6脂肪族基であり、R2およびR3は、それぞれ出現する毎に、ハロゲン、ニトロ基、またはシアノ基であり;「n」および「q」は、それぞれ0または1であり、「m」および「p」は、それぞれゼロであり、Xは、水素または式(II)の基である。
【0038】
一実施形態において、ベンゾピラン化合物は、式(IX)の化合物を含み、
【0039】
【化9】

【0040】
式中、Xは、水素または式(II)の基である。特定の実施形態では、式(IX)中のXは水素である。
【0041】
式(I)のベンゾピラン化合物を作製する1つの方法は、以下の通りである。第1の触媒および第1の溶媒の存在下で、式(III)の化合物を、式(IV)の化合物と反応させ、
【0042】
【化10】

【0043】
式(V)の化合物を生成する。
【0044】
【化11】

【0045】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、「n」および「m」は、上に定義された通りである。
【0046】
好適な式(III)の化合物には、4-ジエチルアミノサリチルアルデヒド、5-ハロ-4-ジエチルアミノサリチルアルデヒド、5-シアノ-4-ジエチルアミノサリチルアルデヒド、および5-ニトロ-4-ジエチルアミノサリチルアルデヒドが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
好適な式(IV)の化合物には、2-ベンズイミダゾリルアセトニトリル、6-ニトロ-2-ベンズイミダゾリルアセトニトリル、6-シアノ-2-ベンズイミダゾリルアセトニトリル、および6-ハロ-2-ベンズイミダゾリルアセトニトリルが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
反応に使用される式(IV)の化合物の量は、使用される式(III)の化合物1モルあたり、約0.75から約4.0モルとなることができる。この範囲内で、その量は、1.0モル以上であってもよく、または、より具体的には、約1.5モル以上であってもよい。また、この範囲内で、その量は、約3.0モル以下であってもよく、または、より具体的には、約2.5モル以下であってもよい。
【0049】
好適な第1の触媒は、酸または塩基より成る群から選択することができる。例示的な塩基には、ピペリジン、エチルジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピロリドン、モルホリン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメチラート、およびカリウムメチラートが含まれるが、これらに限定されない。例示的な酸には、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、リン酸、テトラフルオロホウ酸、および塩酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
反応に使用される第1の触媒の量は、使用される式(III)の化合物1モルあたり、約0.01モルから約0.2モルとなることができる。この範囲内で、その量は、約0.02モル以上であってもよく、または、より具体的には、約0.03モル以上であってもよい。また、この範囲内で、その量は、約0.1モル以下であってもよく、または、より具体的には、約0.05モル以下であってもよい。
【0051】
式(V)の化合物を生成するための式(III)の化合物と式(IV)の化合物の反応に使用することができる、好適な第1の溶媒の具体的な例には、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、またはこれらの溶媒のうちの少なくとも1つを含む組合せが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、溶媒は、エタノール、メタノール、または、エタノールとメタノールの組合せである。ある実施形態では、式(III)の化合物と式(IV)の化合物の反応に使用される溶媒の量は、式(III)の化合物1モルあたり、約200リットルから約500リットルとなることができる。この範囲内で、その量は、約220リットル以上であってもよく、または、より具体的には、約240リットル以上であってもよい。また、この範囲内で、その量は、約360リットル以下であってもよく、または、より具体的には、約320リットル以下であってもよい。
【0052】
式(III)の化合物と式(IV)の化合物の反応が起こる温度は、約20℃から約40℃となることができる。この範囲内で、その温度は約25℃以上であってもよく、または、より具体的には、約28℃以上であってもよい。また、この範囲内で、その温度は約35℃以下であってもよく、または、より具体的には、約30℃以下であってもよい。式(III)の化合物と式(IV)の化合物の反応に要する時間は、約15時間から約30時間となることができる。この範囲内で、その時間は約20時間以上であってもよく、または、より具体的には、約22時間以上であってもよい。また、この範囲内で、その時間は約28時間以下であってもよく、または、より具体的には、約25時間以下であってもよい。
【0053】
次いで、第2の溶媒の存在下で、上記式(V)の化合物をマロノニトリル(NC-CH2-CN)と反応させ、式(VI)の化合物を生成する。
【0054】
【化12】

【0055】
式中、R1、R2、R3、「n」および「m」は、上に定義された意味を有する。反応に使用されるマロノニトリルの量は、式(V)の化合物1モルあたり、約0.3モルから1.0モルとなることができる。この範囲内で、その量は、約0.4モル以上であってもよく、または、より具体的には、約0.6モル以上であってもよい。また、この範囲内で、その量は、約0.9モル以下であってもよく、または、より具体的には、約0.8モル以下であってもよい。
【0056】
好適な第2の溶媒の特定の例には、2-メトキシエタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。マロノニトリルと式(V)の化合物の反応に使用される溶媒の量は、式(V)の化合物1モルあたり、約200ミリリットルから約400ミリリットルを含む。この範囲内で、その量は、式(V)の化合物1モルあたり、約220ミリリットル以上であってもよく、または、より具体的には、約240ミリリットル以上であってもよい。また、この範囲内で、その量は、式(V)の化合物1モルあたり、約300ミリリットル以下であってもよく、または、より具体的には、約280ミリリットル以下であってもよい。
【0057】
マロノニトリルと式(V)の化合物の反応の温度は、約100℃から約160℃となることができる。この範囲内で、その温度は、約110℃以上であってもよく、または、より具体的には、約120℃以上であってもよい。また、この範囲内で、その温度は、約150℃以下であってもよく、または、より具体的には、約140℃以下であってもよい。マロノニトリルと式(V)の化合物の反応の時間は、約5時間から約10時間となることができる。この範囲内で、その時間は、約6時間以上であってもよく、または、より具体的には、約7時間以上であってもよい。また、この範囲内で、その時間は、約9時間以下であってもよく、または、より具体的には、約8時間以下であってもよい。
【0058】
次いで、第2の触媒および第3の溶媒の存在下で、前記式(VI)の化合物を、式(VII)または式(VIII)の化合物と反応させ、
【0059】
【化13】

【0060】
式(I)の化合物を生成する。式中、R4、R5、「p」および「q」は、上述した通りである。
【0061】
反応に使用される式(VI)の化合物の量は、式(VII)の化合物1モルあたり、約0.80モルから約1.30モルとなることができる。この範囲内で、その量は、約0.90モル以上であってもよく、または、より具体的には、約1.10モル以上であってもよい。また、この範囲内で、その量は、約1.25モル以下であってもよく、または、より具体的には、約1.20モル以下であってもよい。
【0062】
反応に使用される式(VI)の化合物の量は、式(VIII)の化合物1モルあたり、約1.6モルから約2.6モルとなることができる。この範囲内で、その量は、約1.8モル以上であってもよく、または、より具体的には、約2.0モル以上であってもよい。また、この範囲内で、その量は、約2.4モル以下であってもよく、または、より具体的には、約2.2モル以下であってもよい。
【0063】
好適な第2の触媒には、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩、ならびに、トリエチルアミン、ピペリジン、エチルジイソプロピルアミン、ピリジン、ピロリドン、およびモルホリン等の有機アミン等の塩基が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
反応に使用される第2の触媒の量は、使用される式(VI)の化合物1モルあたり、約0.5モルから約1.5モルとなることができる。この範囲内で、その量は、約0.8モル以上であってもよく、または、より具体的には、1.0モル以上であってもよい。また、この範囲内で、その量は、約1.4モル以下であってもよく、または、より具体的には、約1.2モル以下であってもよい。
【0065】
使用することができる好適な第3の溶媒の特定の例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、グリコールエーテル、ジオキサン、およびテトラヒドロフランが含まれるが、これらに限定されない。式(VI)の化合物と式(VII)の化合物または式(VIII)の化合物の反応に使用される、第3の溶媒の量は、式(VI)の化合物1モルあたり、約500ミリリットルから約1000ミリリットルを含む。この範囲内で、その量は、式(VI)の化合物1モルあたり、約600ミリリットル以上であってもよく、または、より具体的には、約700ミリリットル以上であってもよい。また、この範囲内で、その量は、式(VI)の化合物1モルあたり、約900ミリリットル以下であってもよく、または、より具体的には、約800ミリリットル以下であってもよい。
【0066】
ある実施形態では、第2の触媒は、第3の溶媒として使用することができる。特に、ピリジン、ピペリジン、エチルジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ピロリドン、およびモルホリンは、第2の触媒としても、第3の溶媒としても使用可能である。反応において触媒が溶媒としても働く場合に使用される第2の触媒の量は、使用される式(VI)の化合物1モルあたり、10モルから約70モルとなることができる。この範囲内で、その量は、約20モル以上であってもよく、または、より具体的には、約30モル以上であってもよい。また、この範囲内で、その量は、約45モル以下であってもよく、または、より具体的には、約40モル以下であってもよい。
【0067】
式(VI)の化合物と式(VII)の化合物または式(VIII)の化合物の反応の温度は、約40℃から約120℃となることができる。この範囲内で、その温度は、約50℃以上であってもよく、または、より具体的には、約60℃以上であってもよい。また、この範囲内で、その温度は、約115℃以下であってもよく、または、より具体的には、約90℃以下であってもよい。式(VI)の化合物と式(VII)または式(VIII)の化合物の反応の時間は、約1時間から約10時間となることができる。この範囲内で、その時間は、約2時間以上であってもよく、または、より具体的には、約4時間以上であってもよい。また、この範囲内で、その時間は、約8時間以下であってもよく、または、より具体的には、約6時間以下であってもよい。
【0068】
式(VII)および式(VIII)の化合物は、それぞれ対応する式(IX)および式(X)の酸化合物をハロゲン化剤と反応させ、
【0069】
【化14】

【0070】
対応する酸ハロゲン化物を生成することにより調製することができ、式中R4、R5、「p」および「q」は、上述の定義と同じ意味を有する。典型的には、酸塩化物は、対応するカルボン酸を、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、塩化カルボニル、塩化チオニル、塩化オキサリルまたは塩化スルフリル等のハロゲン化剤と反応させることにより調製される。これらの反応は、溶媒として過剰のハロゲン化剤を使用するか、あるいは、二塩化エチレン、二塩化メチレン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、またはキシレンを含むがこれらに限定されない溶媒の存在下でハロゲン化剤を使用することにより生じ得る。反応は一般に、反応混合物の還流温度で行われる。反応が完了したら、過剰のハロゲン化剤を留去して対応する酸塩化物を得る。また、酸塩化物は、当業者に知られた方法で調製されてもよい。
【0071】
一実施形態では、組成物は、上述の式(I)の化合物と、式(I)の化合物とは異なる他の成分とを含む。前述したように、式(I)の化合物の最終用途の1つは、ポリマー、特に、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミド等の熱可塑性ポリマーの着色における使用である。したがって、特定の実施形態は、熱可塑性ポリマーと組み合わせた式(I)の化合物を含む。
【0072】
式(I)の化合物は、視覚的に、または後述する分析方法により検出されるのに十分な量でポリマーに添加される。一実施形態では、式(I)の化合物は、ポリマーの重量を基準として、約0.05重量パーセントから約20重量パーセントと等しい量でポリマー中に存在することができる。他の実施形態では、式(I)の化合物は、ポリマーの重量を基準として、約5.0重量パーセント以下の量でポリマー中に存在することができる。一実施形態では、式(I)の化合物は、ポリマーの重量を基準として、約0.2重量パーセントの量でポリマー中に存在することができる。一実施形態では、式(I)の化合物は、約1パーツパービリオン(ppb)と等しい量でポリマー中に存在することができる。例示的な実施形態では、その量は、約1パーツパーミリオン(ppm)から約0.2wtパーセントである。着色剤として使用される場合、化合物の濃度は、ポリマーの色を変化させ、人間の目で検出可能であるような必要な明度を提供するのに十分でなければならない。これは、検出するものが人間の目である場合、発光が視覚的に検出され得るのに十分であることを示唆している。
【0073】
着色ポリマーを作製するための方法は、ポリマーと、式(I)の化合物を含む組成物とを組み合わせて着色ポリマーを生成するステップを含む。式(I)の化合物の混合物を使用することができる。式(I)の化合物を含む組成物中の他の成分は、例えば、顔料、他の着色剤、後述する他の添加剤等であってもよい。本明細書で使用される「組み合わせる」および「組合せ」は、ブレンド、合金、混合物、反応生成物等を含む。1つの特定の実施形態では、式(I)の化合物の量は、ポリマーの重量の約1パーツパーミリオン(ppm)から約0.2wtパーセントである。
【0074】
ポリマーおよび式(I)の化合物に加え、本明細書で開示されるポリマー組成物は、この種の樹脂組成物に通常組み込まれる様々な添加剤を任意選択で含んでもよい。そのような添加剤には、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、紫外線(UV)安定剤、帯電防止剤(テトラアルキルアンモニウムベンゼンスルホン酸塩、テトラアルキルホスホニウムベンゼンスルホン酸塩等)、離型剤(ペンタエリスリトールテトラステアレート、グリセロールモノステアレート等)が含まれてもよい。上記物質のうち少なくとも1つを含む組合せが使用可能である。例えば、ポリマー組成物は、それぞれポリマーの総重量を基準として、約0.01重量パーセントから約0.1重量パーセントの量の熱安定剤;約0.01重量パーセントから約1重量パーセントの量の帯電防止剤;および約0.1重量パーセントから約1重量パーセントの量の離型剤を含むことができる。
【0075】
いくつかの可能な酸化防止剤には、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等の有機亜リン酸エステル;テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロケイヒ酸)]メタン、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロケイヒ酸オクタデシル、2,4-ジ-tert-ブチルフェニルホスファイト等のアルキル化モノフェノール、ポリフェノール、およびポリフェノールとジエンのアルキル化反応生成物;p-クレゾールとジクロロペンタジエンのブチル化反応生成物;アルキル化ヒドロキノン;ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル;アルキリデン-ビスフェノール;ベンジル化合物;β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸と一価または多価アルコールのエステル;β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロピオン酸と一価または多価アルコールのエステル;ジステアリルチオプロピオネート、ジラウリルチオプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート等のチオアルキルまたはチオアリール化合物のエステル;β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸のアミド等が含まれる。上記物質のうち少なくとも1つを含む組合せが使用可能である。
【0076】
使用されてもよい他の可能な添加剤には、光および熱安定剤等の安定剤(酸性リン系化合物等);ヒンダードフェノール;酸化亜鉛、硫化亜鉛粒子、またはそれらの組合せ;潤滑剤(鉱物油等)、可塑剤、着色剤;ならびに、特にこれらの添加剤のうち少なくとも1つを含む組合せが含まれる。
【0077】
着色ポリマーの加工に役立てるために、特にポリマーがポリカーボネートである場合、具体的には押出機または他の混合装置において、触媒が使用されてもよい。触媒は、典型的には、得られる材料の粘度の制御を助ける。可能な触媒には、水酸化テトラアルキルアンモニウム、水酸化テトラアルキルホスホニウム等の水酸化物、具体的には、水酸化ジエチルジメチルアンモニウムおよび水酸化テトラブチルホスホニウムが含まれる。触媒は、単独で、または、酸、例えばリン酸等の失活剤と組み合わせて使用することができる。さらに、配合中、ポリマー溶融物に水が注入され、残留揮発性化合物を除去するための通気口を通して水蒸気として除去されてもよい。
【0078】
本明細書で開示される着色ポリマーは、単軸または二軸押出機、ニーダ、ブレンダ等、様々な前駆物質を適切に混合することができる反応容器を使用して生成される。
【0079】
式(1)の化合物および他のあらゆる任意選択の添加剤をポリマーに組み込むための方法は、例えば、被覆、混和、ブレンド、または共重合を含む。式(I)の化合物は、ポリマー全体に均一に分散するように、またはポリマーの一部に分散するように、ポリマー中に組み込むことができる。例示的な一実施形態では、式(I)の化合物は、ポリマー全体に均一に分散される。式(I)の化合物は、ポリマー製造段階、ポリマーの配合ステップの間、ポリマーを物品へ加工する間、またはそれらの組合せにおいて、ポリマーに組み込むことができる。一実施形態では、式(I)の化合物は、ポリマーの配合段階中または物品形成中に、単独または他の任意選択の添加剤と共に、濃縮物(すなわちマスターバッチ)を使用して導入されてもよい。
【0080】
例えば、ポリマーのためのポリマー前駆物質は、式(I)の化合物と予め混合され(例えば、ペレット、粉末、および/または液体の形態で)、同時にホッパを介して押出機に供給されてもよく、あるいは、式(I)の化合物は、任意選択で、供給口の中、または射出成形機もしくは他の成形における交互射出ポートを通して添加されてもよい。例示的な一実施形態では、式(1)の化合物は、ポリマーとの混和性をもたないキャリア内にある場合を除き、均質に分散することができる。
【0081】
他の実施形態において、式(I)の化合物は、混和、ブレンド、配合または共重合により、ポリマーに組み込まれる。例示的な一実施形態では、式(I)の化合物とポリマーのドライブレンドを形成し、得られた混合物を配合することにより、式(I)の化合物がポリマーに組み込まれる。
【0082】
他の実施形態では、配合中に式(I)の化合物を溶融物に添加することにより、式(I)の化合物がポリマーに組み込まれる。そのような添加は、例えばサイドフィーダを介して行うことができる。あるいは、式(I)の化合物は、ポリマー(または他のポリマー)を少量とし、任意選択で他の添加剤とともに濃縮物の形態で調合され、ポリマーの加工前または加工中にポリマーに添加されてもよい。特定の実施形態では、二軸押出機を使用してポリマーをいずれかの添加剤と配合し、濃縮物の形態での式(I)の化合物を、任意選択で他の添加剤とともに、サイドフィーダを介して溶融物に添加することにより、ポリマー組成物が加工される。
【0083】
ポリマー前駆物質を使用する場合、押出機は、ポリマー前駆物質を分解させることなく溶融させるのに十分高い温度に維持される。例えばポリカーボネートの場合、一実施形態では、約220℃から約360℃の温度を用いることができる。他の実施形態では、約260℃から約320℃の温度を用いることができる。同様に、押出機中の滞留時間は、典型的には、分解を最小限に抑えるよう制御される。最長約2分またはそれ以上の滞留時間を用いることができ、一実施形態では最長約1.5分が用いられ、他の例示的な実施形態では最長約1分が用いられる。所望の形態(典型的には、ペレット、シート、ウェブ等)への押出の前に、溶融ろ過および/またはスクリーンパックの使用等により、得られた混合物を任意選択でろ過し、望ましくない不純物または分解生成物を除去することができる。
【0084】
着色ポリマー組成物は、その材料の物理的および化学的性質が求められるいかなる用途にも使用することができる。ある実施形態では、着色ポリマーは、包装材料(特に薬品包装)、自動車部品、電気通信機器の付属品(携帯電話のカバー等)、コンピュータおよび家庭用電化製品、建設材料、医療装置、アイウェア製品、パスポートやIDカード等の重要書類、クレジットカード、フィルムおよびシート(表示用アプリケーションに使用されるものを含む)等を含む用途に使用することができる。着色剤はまた、紫外線照射を受けると特定の波長で蛍光を発するために、許可されていない製造者、販売者、および/またはデータ記憶媒体のユーザには一般に知られず、かつ/または利用できないデータ記憶媒体基板のタグ付けや認証のための組成物を作製するために使用されてもよい。
【0085】
本明細書において例示目的のみで提供され、限定を意図しないある特定の実施例を参照することにより、上述の技術をさらに理解することができる。
【0086】
(実施例)
本明細書において記載されるすべての出発材料および生成物のプロトンNMRスペクトルは、重水素で置換されたクロロホルムまたはCd6-ジメチルスルホキシドを溶媒として用い、300メガヘルツBruker NMRスペクトロメータを使用して測定された。液体クロマトグラフおよびQuattro Ultima Pt質量分析計を備えた液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)システムにより、さらに化合物の特性決定を行った。吸光度は、Lambda 900 UV-Visible分光計を用いて測定した。
【0087】
ベンゾピラン着色剤の熱安定性は、ティーエイインスツルメント(TA Instruments)社製TGA 2950を使用し、空気中、傾斜時間10℃/minで測定した。
【0088】
(実施例1)
本実施例は、9,10,10-トリオキソ-9,10-ジヒドロ-10,16-チオキサンテン-3-カルボン酸(6-シアノ-9-ジエチルアミノ-7-オキサ-4b,13-ジアザ-インデノ[2,1-a]アントラセン-5-イリデン)-アミド(式(I))の調製方法を提供する。
【0089】
7-N,N-ジエチルアミノ-3-ベンズイミダゾリル-2-イミノクマリン(式(V))の調製。
2-シアノメチルベンズイミダゾール(16.64グラム(g))、4-ジエチルアミノ-サリチルアルデヒド(17.74g)およびピペリジン(3.6ミリリットル(ml))を、メタノール(280ml)中で24時間(hrs)、室温で撹拌した。約24hrs後、黄白色の固体が析出した。沈殿した固体をろ過し、メタノール(100ml)で洗浄して乾燥させた。27.5gの収量で生成物を得た。この生成物を、それ以上精製を行わずに次のステップに使用した。
【0090】
9-ジエチルアミノ-5-イミノ-5H-7-オキサ-4b,13-ジアザインデノ[2,1-a]アントラセン-6-カルボニトリル(式(VI))の調製。
7-N,N-ジエチルアミノ-3-ベンズイミダゾリル-2-イミノクマリン(25g)、マロノニトリル(5.5g)およびエチルセロソルブ250mlを、オイルバスを備えた500mlの丸底フラスコに入れ、温度を180℃に維持しながら、フラスコの内容物を約6hrs還流した。次いで反応混合物を5℃に冷却した。析出した固体をろ過した。固体をまず50mlのエタノールで洗浄し、次いで50mlのヘキサンで洗浄した。
【0091】
9-オキソ-9H-チオキサンテン-10,10-ジオキシド-3-カルボン酸クロライド(式(VII))の調製。
9-オキソ-9H-チオキサンテン-10,10-ジオキシド-3-カルボン酸(5g)を、塩化チオニル(30ml)中で12hrs還流した。塩化チオニルを留去した。残った固体が必要とされる酸クロライドであり、それを直接次の反応に使用する。
【0092】
9,10,10-トリオキソ-9,10-ジヒドロ-10,16-チオキサンテン-3-カルボン酸(6-シアノ-9-ジエチルアミノ-7-オキサ-4b,13-ジアザ-インデノ[2,1-a]アントラセン-5-イリデン)-アミド(式(I))の調製。
9-ジエチルアミノ-5-イミノ-5H-7-オキサ-4b,13-ジアザインデノ[2,1-a] -アントラセン-6-カルボニトリル(1.52g)を、三口丸底フラスコに入れた。ピリジン(20ml)をフラスコに入れ、混合物を約90℃に加熱した。この温度で、9-オキソ-9H-チオキサンテン-10,10-ジオキシド-3-カルボン酸クロライド(2.5g)を、反応混合物に添加した。反応混合物を約3hrsこの温度に維持した。次いで反応混合物を氷上に注いだ。析出した固体をろ過し、水とヘキサンで洗浄した。酢酸エチルとヘキサンの混合液(体積比で70:30)中で還流することにより、生成物を精製した。2.5gの収量で生成物を得た。生成物のプロトンNMRは、δ1.4(t, 2X-N-CH2-CH3)、3.8(q, 2X-N-CH2-CH3)および7.0〜9.0(芳香族プロトン)でそれぞれピークを示した。LCMSでは、M+325、311、268、212、127、70でピークが見られた。生成物は、溶媒としてのジクロロメタン中で578nmに最大の吸収を示し、Tgは315℃であった。
【0093】
(実施例2)
本実施例は、着色ビスフェノールAホモポリカーボネートの一般的な調製手順を提供する。
【0094】
押出:1キログラムのビスフェノールAホモポリカーボネート試料および実施例1のベンゾピラン化合物(試料全体の0.02重量パーセント)を、ポリエチレン製の袋に入れて約3分から4分激しく振盪した。次いで、得られた材料を、表1に指定された条件で、真空下で配合し、着色ポリマーペレットを生成した。
【0095】
【表1】

【0096】
成形:押出ペレットから成形チップを生成する一般手順を以下に説明する。
【0097】
押出ステップで説明したように調製された押出ペレットを、120℃に維持したオーブン中で約4時間乾燥させた。次いで、乾燥したペレットを、以下の表2に示す条件下での成形に供した。
【0098】
【表2】

【0099】
耐候性試験:着色剤としてベンゾピラン化合物を組み込んだ成形チップに対し、Atlas Ci4000ウェザロメータを使用し、ASTM D4459試験法(室内用途)に従って、耐候性試験を行った。自然光に最も近いため、D65イルミネータを使用した。約300時間露光した後、試料の色を、積分球を備えたMacbeth Color Eye 7000A機を使用して、透過モードで分析した。結果を表3に示す。試料の測定は、露光時間ゼロ(対照試料;ウェザロメータに設置する前)、100、200、および300時間の露光で行った。表3に示す様々なパラメータは、以下の通りである。L:明るさ;a*:赤味-緑味、b*:黄味-青味、およびC*:色度;H*:色調;DL*:ウェザロメータ中での露光前後の明るさの差;Da*、Db*、およびDC*はそれぞれa*、b*、およびC*の値の、ウェザロメータ中での露光前後の差を表す;DH*:ウェザロメータ中での露光前後の色調の差;ならびに、DE*はウェザロメータ中での露光前後から得られた値の間の全色の差を表す。DE*は、等式(1)に示されるように、Da*、Db*、およびΔL*の値から求められる。
【0100】
DE*=[(DL*)2+(Da*)2+(Db*)2]1/2 (1)
【0101】
負のDLは、対照試料と比較してより暗い試料であることを示し、正のDLは、比較的明るい試料であることを示す。負のDa*は、参照試料よりも赤味が少ない試料であることを示し、正のDa*は、比較的赤味が多い試料であることを示す。負のDb*は、参照試料よりも黄味が少ない試料であることを示し、正のDb*は、比較的黄味が多い試料であることを示す。DC*は、等式(2)により、Da*およびDb*と関連する。
【0102】
DC*=[(Da*)2+(Db*)2]1 (2)
【0103】
【表3】

【0104】
上記の結果は、実施例1に従い調製された着色剤を実施例2に従うポリカーボネートに組み込むことができることを示している。そのようにして得られた着色ポリカーボネートは、表3に示されるように、良好な明度を提供するとともに良好な耐候性を示す。
【0105】
実施例1において上述のように調製された9,10,10-トリオキソ-9,10-ジヒドロ-10,16-チオキサンテン-3-カルボン酸(6-シアノ-9-ジエチルアミノ-7-オキサ-4b,13-ジアザ-インデノ[2,1-a]アントラセン-5-イリデン)-アミド(式(I))は、二軸押出機を使用してポリカーボネート粉末を配合することにより、ポリカーボネートに組み込まれ、ペレットをL&T Demag 60成形機を使用した成形に供した後、厚さ2.54mmの成形物が得られた。成形された飾り板は、365nm(長波長)UV照射を受けると、強い赤色蛍光を示し(赤色領域から590〜610nmでの発光)、外縁に明るい赤色のグロー効果が見られた。これは、ベンゾピラン着色剤が蛍光タグとしても使用可能であることを示している。
【0106】
例示目的で典型的な実施形態を記載したが、上記の説明は、本発明の範囲を制限するとみなされるべきではない。したがって、本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、当業者により様々な修正、適合、および代替がなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物であって、
【化1】

式中、
Xは、水素または式(II)の基であり、
【化2】

R1は、それぞれ出現する毎に、C1〜C20脂肪族基、C3〜C10脂環式基、またはC3〜C10芳香族基であり;
R2、R3、R4およびR5は、それぞれ出現する毎に、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C20脂環式基、またはC6〜C20芳香族基であり;
「n」、「q」、および「p」は、それぞれ独立して、0から3の値を有する整数であり、「m」は、0から4の値を有する整数である、化合物。
【請求項2】
R1は、それぞれ出現する毎に、C1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基、またはC6〜C10芳香族基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
各R1は同じであり、非置換のC1〜C6脂肪族基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R2、R3、R4およびR5は、それぞれ出現する毎に、ハロゲン、ニトロ基、またはシアノ基であり;Xは式(II)の基であり;「n」、「q」、「m」および「p」は、それぞれ独立して、0から2の値を有する整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R2、R3、R4およびR5は、それぞれ出現する毎に、ハロゲン、ニトロ基、またはシアノ基であり;Xは水素であり;「n」、「q」、「m」および「p」は、それぞれ独立して、0から2の値を有する整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R2およびR3は、それぞれ出現する毎に、ハロゲン、ニトロ基、またはシアノ基であり;「n」、「p」、および「q」は、それぞれ0または1であり;「m」は0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
各R1は同じであり、C1〜C8脂肪族基であり、Xは水素であり、n、m、q、およびpはそれぞれ0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
各R1は同じであり、C1〜C8脂肪族基であり、Xは式(II)の基であり、n、m、q、およびpはそれぞれ0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
各R1はエチルであり、n、m、q、およびpはそれぞれ0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
第1の触媒および第1の溶媒の存在下で、式(III)の化合物を式(IV)の化合物と反応させて、
【化3】

式(V)の化合物を生成するステップと、
【化4】

第2の溶媒の存在下で、前記式(V)の化合物をマロノニトリルと反応させて、式(VI)の化合物を生成するステップと、
【化5】

第2の触媒および第3の溶媒の存在下で、前記式(VI)の化合物を、式(VII)または式(VIII)の化合物と反応させて、
【化6】

式(I)の化合物を生成するステップとを含む方法であって、
【化7】

式中、
Xは、水素または式(II)の基であり、
【化8】

R1は、それぞれ出現する毎に、C1〜C20脂肪族基、C3〜C10脂環式基、またはC3〜C10芳香族基であり;
R2、R3、R4およびR5は、それぞれ出現する毎に、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C20脂環式基、またはC6〜C20芳香族基であり;
「n」、「p」、および「q」は、それぞれ独立して、0から3の値を有する整数であり、「m」は、0から4の値を有する整数である、方法。
【請求項11】
R1はエチルであり、m、n、o、およびpはそれぞれ0であり;前記第1の触媒はピペリジンであり、前記第1の溶媒はメタノールであり、前記第2の溶媒はエチルセロソルブであり、前記第3の溶媒はピリジンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記式(III)の化合物は、4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンズアルデヒドである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記式(IV)の化合物は、2-(シアノメチル)ベンズイミダゾールである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記式(VII)の化合物は、9-オキソ-9H-チオキサンテン-10,10-ジオキシド-3-カルボン酸クロライドである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記式(I)の化合物は、9,10,10-トリオキソ-9,10-ジヒドロ-10,16-チオキサンテン-3-カルボン酸(6-シアノ-9-ジエチルアミノ-7-オキサ-4b,13-ジアザ-インデノ[2,1-a]アントラセン-5-イリデン)-アミドである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物と熱可塑性樹脂とを含む組成物。
【請求項17】
前記式(I)の化合物は、前記熱可塑性樹脂の重量を基準として約0.05から約20重量パーセントの量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1の化合物を含む物品。
【請求項19】
データ記憶媒体基板の形態での、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記データ記憶媒体基板はポリカーボネートを含む、請求項18に記載の物品。

【公表番号】特表2009−517392(P2009−517392A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542462(P2008−542462)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/045337
【国際公開番号】WO2007/064563
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】