説明

ベンゾモルファン化合物

本発明は、式(I)のベンゾモルファン化合物



(式中、X、R、R、R、R、およびRは、本明細書に定義する通りである)に関する。これらの化合物は、便秘、好ましくはμオピオイドアゴニスト療法によって引き起こされた便秘を治療するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品化学の分野に属し、μオピオイドアンタゴニストとしてかつκオピオイドアゴニストとして二重活性を有する新規ベンゾモルファン化合物に関する。この化合物は、オピオイドによる治療患者における便秘の問題を削減または解消する助けとなり得る。
【背景技術】
【0002】
疼痛とは、患者が医学的アドバイスおよび治療を求める最もよく見られる症状である。急性疼痛は、通常自己限定的であるが、慢性疼痛は、3カ月以上持続し、患者の人格、ライフスタイル、機能的能力および生活の質全体が大幅に変化する恐れがある(K.M.Foley、Pain,in Cecil Textbook of Medicine、100〜107ページ、J.C.BennettおよびF.Plum編、第20版、1996年)。
【0003】
疼痛は、従来から非オピオイド鎮痛剤(アセチルサリチル酸、トリサリチル酸コリンマグネシウム、アセトアミノフェン、イブプロフェン、フェノプロフェン、ジフルニサル、またはナプロキセンなど)またはオピオイド鎮痛剤(モルヒネ、ヒドロモルホン、メサドン、レボルファノール、フェンタニル、オキシコドン、またはオキシモルホンなど)を投与することによって管理されてきた。
【0004】
オピオイド鎮痛剤を使用すると、副作用として便秘をしばしば引き起こす。オピオイド鎮痛剤の使用に伴う便秘は、μオピオイドアゴニストが腸に存在するμオピオイド受容体に及ぼす直接作用の結果として原発的かつ機構的に起こると推定される(Wood&Galligan、(2004年)、「Function of opioids in the enteric nervous system」、Neurogastroenterology&Motility、16巻(増補2):17〜28ページ)。腸のμオピオイド受容体を刺激すると、正常な胃腸(GI)運動が抑制され、便秘を引き起こす。腸のμオピオイド受容体に及ぼすμオピオイドアゴニスト性の影響は、下痢の治療におけるロペラミド(Imodium(商標))の作用により観察することができる。ロペラミドは、経口投与されるが血流へはほとんどあるいは全く吸収されない強力なμオピオイドアゴニストである。その結果、ロペラミドは、その作用を腸のμオピオイド受容体で局所発現し、これによって、胃腸運動が抑制され、下痢が治療される。
【0005】
最近では、オピオイド誘発性便秘を限定する働きをする可能性がある生体内分布特性が定められたμ受容体アゴニストとアンタゴニストの組合せの開発に関心がもたれている。例えば、経口バイオアベイラビリティがあるμオピオイド受容体アゴニスト(モルヒネ、コデイン、オキシコドン、またはヒドルモルホンなど)と経口バイオアベイラビリティがない強力なμオピオイド受容体アンタゴニスト(N−メチルナロキソンまたはN−メチルナルトレキソンなど)との共投与は、μオピオイド受容体アゴニスト療法に通常なら伴う便秘を予防または軽減する働きをすることができる。この理論的根拠は、アゴニスト成分が、末梢神経系および中枢神経系(CNS)の全体にわたって吸収および分布され、所望の痛覚消失がもたらされる一方、アンタゴニスト成分は、腸に残存し、通常なら起こる可能性があるアゴニスト誘発性便秘を予防または軽減するということである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、便秘、好ましくはμオピオイド受容体誘発性便秘を治療または予防するのに有用な新規ベンゾモルファン化合物に関する。さらに詳細には、本発明は、μ受容体アンタゴニストとして活性を有する下記の式Iの化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび溶媒和物(以降、「本発明の(複数の)化合物」と総称し、以降、個別には「本発明の(1つの)化合物」と称する)を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の(複数の)化合物は、μ受容体アンタゴニストとしてかつκ受容体アゴニストとして二重活性を有するものと予想される。本発明のある種の(複数の)化合物は、胃腸管に実質的に限定されるものと予想される。
【0007】
μアンタゴニスト活性を有し、胃腸管に実質的に限定される本発明の(複数の)化合物は、患者においてμアゴニストを用いた治療の結果として通常なら起こるはずの便秘を大幅に軽減または予防する。一実施形態において、便秘の軽減または予防は、μアゴニストの所望の鎮痛効果を低減することなくもたらされる。κアゴニスト活性も発現する本発明の(複数の)化合物は、μ受容体を介さない機序により胃腸運動をさらに刺激すべきである。
【0008】
本発明は、便秘、好ましくはμオピオイドアゴニスト療法によって引き起こされる便秘を治療または予防するのに有用な医薬組成物をさらに提供する。前記医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または添加剤と混合した有効量の本発明の(1つの)化合物を含む。一実施形態において、医薬組成物は、有効量の本発明の(1つの)化合物、鎮痛有効量のμアゴニスト、および1つまたは複数の薬学的に許容される担体または添加剤を含む。
【0009】
本発明は、便秘、好ましくはμオピオイドアゴニスト療法に伴う便秘の治療または予防を必要とする患者に有効量の本発明の(1つの)化合物を投与することによって、便秘、好ましくはμオピオイドアゴニスト療法に伴う便秘を治療または予防する方法をさらに提供する。一実施形態において、本発明の(1つの)化合物は、胃腸管に実質的に限定されるμアンタゴニストである。別の実施形態において、本発明の(1つの)化合物は、μアンタゴニストとκアゴニストとであり、胃腸管に実質的に限定される。別の実施形態において、本方法は、μアンタゴニストであり、胃腸管に実質的に限定される有効量の本発明の(1つの)化合物と、鎮痛有効量のμアゴニストとを患者に共投与するステップを含む。別の実施形態において、本方法は、μアンタゴニストとκアゴニストとであり、胃腸管に実質的に限定される有効量の本発明の(1つの)化合物と、鎮痛有効量のμアゴニストとを患者に共投与するステップを含む。
【0010】
本発明は、少なくとも1つのタイプのオピオイド受容体の活性を調節する方法であって、受容体を有効量の本発明の(1つの)化合物に曝露させる方法をさらに提供する。一実施形態において、オピオイド受容体は胃腸管に存在する。別の実施形態において、受容体はμ受容体である。別の実施形態において、受容体はκ受容体である。別の実施形態において、本発明の(1つの)化合物は、胃腸管においてμ受容体とκ受容体とを調節する。別の実施形態において、本発明の(1つの)化合物はμ受容体に拮抗する。別の実施形態において、本発明の(1つの)化合物はκ受容体を刺激する。別の実施形態において、本発明の(1つの)化合物は、μ受容体に拮抗し、かつκ受容体を刺激する。
【0011】
本発明の(1つの)化合物は、放射性標識し、オピオイド受容体に結合する放射性リガンドとして使用することができる。(例えば、H、11Cまたは14Cで放射性標識した)こうした放射性標識化合物を利用して、本発明は、候補化合物のオピオイド受容体に結合する能力をスクリーニングする方法をさらに提供する。一実施形態において、こうした方法は、a)一定濃度の放射性標識化合物を受容体に、放射性標識化合物を受容体に結合させて複合体の形成を可能にする条件下で導入するステップと、b)複合体を候補化合物で滴定するステップと、c)候補化合物の前記受容体への結合を判定するステップとを含む。
【0012】
別の態様において、本発明は、哺乳類において便秘、好ましくはμ受容体アゴニスト療法に伴う便秘を治療または予防するための医薬品の製造における本発明の(1つの)化合物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の(複数の)化合物は、下記に定義する式Iの第四級化ベンゾモルファン化合物であり、その薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび溶媒和物を包含し、オピオイド受容体モジュレーターとして有用である。本発明の(複数の)化合物は、μ(ミュー)オピオイド受容体に選択的に拮抗するものと予想される。さらに、本発明のある種の(複数の)化合物は、κ(カッパ)オピオイド受容体を活性化するものでもあると予想される。本発明の(複数の)化合物は、便秘、好ましくはμアゴニスト療法に伴う便秘を治療または予防するのに有用である。
【0014】
本発明は、式Iによる化合物、またはその溶媒和物もしくはプロドラッグ
【0015】
【化1】

[式中、
およびRはそれぞれ独立に、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、−(C〜C12)シクロアルキル、−(C〜C12)シクロアルケニル、−(CH−O−(CH−CH、(C〜C10)アルコキシ、C(ハロ)、CH(ハロ)、CH(ハロ)、C(O)R、−C(O)O−(C〜C10)アルキル、および−(CH−N(Rからなる群から選択され、これらはそれぞれ、1、2、または3個の独立に選択されたR基で場合によっては置換されており;
およびRはそれぞれ独立に、
(a)−H;または
(b)−(C〜C)アルキル、−(C〜C)アルケニル、および−(C〜C)アルキニルから選択され;
は、
(a)−H、−OH、ハロ、−C(ハロ)、−CH(ハロ)、および−CH(ハロ)
(b)−(C〜C)アルキル、−(C〜C)アルケニル、−(C〜C)アルキニル、−(CH−O−(CH−CH、−(C〜C)アルコキシから選択され、これらはそれぞれ、1、2、または3個の独立に選択されたR基で場合によっては置換されており;
は、−H、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、および−(C〜C10)アルコキシから選択され;
はそれぞれ独立に、−H、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、および−(C〜C10)アルキニルから選択され;
はそれぞれ独立に、−OH、ハロ、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、−(C〜C10)アルコキシ、−(C〜C12)シクロアルキル、−CHO、−C(O)OH、−C(ハロ)、−CH(ハロ)、CH(ハロ)、および−(CH−O−(CH−CHから選択され;
は、スルフェート(硫酸塩);シトレート(クエン酸塩);アセテート(酢酸塩);ジクロロアセテート;トリフルオロアセテート;オキサレート(シュウ酸塩);クロライド(塩素)、ブロマイド(臭素)、ヨーダイド(ヨウ素)などのハライド(ハロゲン化合物);ニトレート(硝酸塩);ビスルフェート(重硫酸塩);ホスフェート(リン酸塩);アシッドホスフェート(過リン酸塩);イソニコチネート(イソニコチン酸塩);ラクテート(乳酸塩);サリチレート(サリチル酸塩);アシッドシトレート;タルトレート(酒石酸塩);オレエート(オレイン酸塩);タンネート(タンニン酸塩);パントテネート(パントテン酸塩);ビタルトレート(酸性酒石酸塩);アスコルベート(アスコルビン酸塩);スクシネート(コハク酸塩);マレエート(マレイン酸塩);ゲンチシネート(gentisinate);フマレート(フマル酸塩);グルコネート(グルコン酸塩);グルコロネート(glucoronate);サッカレート(サッカラート);ホルメート(ギ酸塩);マンデレート(マンデル酸塩);ホルメート(ギ酸塩);アルギネート(arginate);カルボキシレート(カルボン酸塩);ベンゾエート(安息香酸塩);グルタメート(グルタミン酸塩);メタンスルホネート(メタンスルホン酸塩);エタンスルホネート;ベンゼンスルホネート;p−トルエンスルホネート;パモエート(パモ酸塩)(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))などの有機または無機アニオンであり;
nはそれぞれ独立に、0、1、2、3、4、5、または6の整数から選択される]
を包含する;
【0016】
別の実施形態において、本発明は、式Iaで表わされる化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、およびプロドラッグ:
【0017】
【化2】

[式中、
およびRはそれぞれ独立に、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、−(C〜C12)シクロアルキル、−(C〜C12)シクロアルケニル、−(CH−O−(CH−CH、−(C〜C10)アルコキシ、−C(ハロ)、−CH(ハロ)、−CH(ハロ)、−C(O)R、−C(O)O−(C〜C10)アルキル、および−(CH−N(Rからなる群から選択され、これらはそれぞれ、1から3個のR基で場合によっては置換されており;
およびRはそれぞれ独立に、H、−(C〜C)アルキル、−(C〜C)アルケニル、および−(C〜C)アルキニルから選択され;
は、H、OH、ハロ、−(C〜C)アルキル、−(C〜C)アルケニル、−(C〜C)アルキニル、−(CH−O−(CH−CH、−(C〜C)アルコキシ、−C(ハロ)、−CH(ハロ)、および−CH(ハロ)から選択され;
は、H、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、および−(C〜C10)アルコキシから選択され;
はそれぞれ独立に、H、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、および−(C〜C10)アルキニルから選択され;
はそれぞれ独立に、OH、ハロ、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、C1〜10アルコキシ、−(C〜C12)シクロアルキル、−C(=O)、−C(O)OH、−C(ハロ)、−CH(ハロ)、−CH(ハロ)、および−(CH−O−(CH−CHから選択され;
nはそれぞれ、0から6から独立に選択された整数である]
を提供する。
【0018】
一実施形態において、RおよびRの少なくとも一方は、少なくとも1個のR基で置換されている(C〜C10)アルキルである。好ましい実施形態において、Rは−(C〜C12)シクロアルキルとして選択される。より好ましい実施形態では、Rは、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルから選択される。
【0019】
別の実施形態において、RおよびRの少なくとも一方は、−(C〜C10)アルケニルである。さらに特定の実施形態において、RおよびRの少なくとも一方は、−(C〜C)アルケニルである。別の実施形態において、RおよびRの少なくとも一方は、−CH−シクロプロピル、−CHCH−シクロプロピル、およびCHCHCH−シクロプロピルである。好ましい実施形態において、RまたはRの少なくとも一方は、CH−シクロプロピルである。
【0020】
別の実施形態において、RおよびRはそれぞれ独立に、−(C〜C)アルキルから選択される。さらに特定の実施形態において、RおよびRはそれぞれ独立に、メチル、エチル、およびプロピルから選択される。
【0021】
別の実施形態において、Rは−OHである。
【0022】
別の実施形態において、Rは−(CH−O−(CH−CHである。さらに特定の実施形態において、Rは、−(CH)−O−CHおよび−(CH)−O−(CH)−CHから選択される。
【0023】
、R、およびRがそれぞれ−CHであり、かつRが−OHである一実施形態において、Rは−CH−CH=C(CHでない。
【0024】
、R、およびRがそれぞれ−CHであり、かつRが−OHである別の実施形態において、Rは−CH−CH=C(CHでない。
【0025】
が−CHまたは−CDから選択され、RおよびRがそれぞれ−CHとして選択され、かつRが−OHである別の実施形態において、Rは−CHまたは−CDでなく;
【0026】
が−CHまたは−Cとして選択され、RおよびRがそれぞれ−CHとして選択され、かつRが−OHである別の実施形態において、Rは−CHまたは−Cでなく;さらに
【0027】
、R、R、およびRがそれぞれ−CHとして選択される別の実施形態において、Rは−ハロでない。
【0028】
別の実施形態において、nはそれぞれ独立に、1、2、および3から選択される。
【0029】
本発明の特定の化合物としては、
3−シクロプロピルメチル−9−ヒドロキシ−3,6,11−トリメチル−1,2,3,4,5,6−ヘキサヒドロ−2,6−メタノ−ベンゾ[d]アゾシニウム;および
3−アリル−9−ヒドロキシ−3,6、11−トリメチル−1,2,3,4,5,6−ヘキサヒドロ−2,6−メタノ−ベンゾ[d]アゾシニウム;
ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、およびプロドラッグが挙げられる。
【0030】
本明細書では、「(C〜C10)アルキル」という用語は、1から10個の炭素原子を有する直鎖状および分枝状の非環式飽和炭化水素を示す。代表的な直鎖状−(C〜C10)アルキル基としては、メチル、−エチル、−n−プロピル、−n−ブチル、−n−ペンチル、−n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、およびn−デシルが挙げられる。代表的な分枝状−(C〜C10)アルキル基としては、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、3−エチルブチル、1,1−ジメトチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、および3,3−ジメチルブチルが挙げられる。
【0031】
本明細書では、「(C〜C)アルキル」という用語は、1から5個の炭素原子を有する直鎖状および分枝状の非環式飽和炭化水素を示す。代表的な直鎖状−(C〜C)アルキル基としては、メチル、−エチル、−n−プロピル、−n−ブチル、および−n−ペンチルが挙げられる。代表的な分枝鎖状−(C〜C)アルキル基としては、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、および1,2−ジメチルプロピルが挙げられる。
【0032】
本明細書では、「(C〜C10)アルケニル」という用語は、2から10個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む直鎖状および分枝状の非環式炭化水素を示す。代表的な直鎖状および分枝状の−(C〜C10)アルケニル基としては、−ビニル、アリル、−1−ブテニル、−2−ブテニル、−イソブチレニル、−1−ペンテニル、−2−ペンテニル、−3−メチル−1−ブテニル、−2−メチル−2−ブテニル、−2,3−ジメチル−2−ブテニル、−1−ヘキセニル、−2−ヘキセニル、および3−ヘキセニルが挙げられる。
【0033】
本明細書では、「(C〜C)アルケニル」という用語は、2から5個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む直鎖状および分枝状の非環式炭化水素を示す。代表的な直鎖状および分枝状の−(C〜C)アルキエニル基としては、−ビニル、アリル、−1−ブテニル、−2−ブテニル、−イソブチレニル、−1−ペンテニル、−2−ペンテニル、−3−メチル−1−ブテニル、および−2−メチル−2−ブテニルが挙げられる。
【0034】
本明細書では、「(C〜C10)アルキニル」という用語は、2から10個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含む直鎖状および分枝状の非環式炭化水素を示す。代表的な直鎖状および分枝状のC〜C10アルキニル基としては、−アセチレニル、−プロピニル、−1−ブチニル、−2−ブチニル、−1−ペンチニル、−2−ペンチニル、−3−メチル−1−ブチニル、−4−ペンチニル、−1−ヘキシニル、−2−ヘキシニル、および−5−ヘキシニルが挙げられる。
【0035】
本明細書では、「−(C〜C)アルキニル」という用語は、2から5個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含む直鎖状および分枝状の非環式炭化水素を示す。代表的な直鎖状および分枝状の−(C〜C)アルキニル基としては、−アセチレニル、−プロピニル、−1−ブチニル、−2−ブチニル、−1−ペンチニル、−2−ペンチニル、−3−メチル−1−ブチニル、および−4−ペンチニルが挙げられる。
【0036】
本明細書では、「(C〜C12)シクロアルキル」という用語は、3から12個の炭素原子を有し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、およびシクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシルから選択された環式飽和炭化水素を示す。
【0037】
本明細書では、「(C〜C12)シクロアルケニル」という用語は、3から12個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む環式炭化水素を示す。(C〜C12)シクロアルケニルとしては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、およびシクロノネニル、シクロデセニル、シクロウンデセニル、およびシクロドデセニルが挙げられる。
【0038】
本明細書では、「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを示す。
【0039】
「−(C〜C10)アルコキシ」は、1個または複数のエーテル基および1から10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の非環式炭化水素を意味する。代表的な直鎖状および分枝状の(C〜C10)アルコキシとしては、−メトキシ、−エトキシ、プロポキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、メトキシメチル、2−メトキシエチル、−5−メトキシペンチル、3−エトキシブチルなどが挙げられる。
【0040】
「−(C〜C)アルコキシ」は、1個または複数のエーテル基および1から5個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の非環式炭化水素を意味する。代表的な直鎖状および分枝状の(C〜C)アルコキシとしては、−メトキシ、−エトキシ、プロポキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、メトキシメチル、2−メトキシエチル、−5−メトキシペンチル、3−エトキシブチルなどが挙げられる。
【0041】
「−CH(ハロ)」は、メチル基の水素のうちの1個がハロゲンで置換されているメチル基を意味する。代表的な−CH(ハロ)基としては、−CHF、−CHCl、−CHBr、および−CHIが挙げられる。
【0042】
「−CH(ハロ)」は、メチル基の水素のうちの2個がハロゲンで置換されているメチル基を意味する。代表的な−CH(ハロ)基としては、−CHF、−CHCl、−CHBr、−CHBrCl、−CHClI、および−CHIが挙げられる。
【0043】
「−C(ハロ)」は、メチル基の水素がそれぞれ、ハロゲンで置換されているメチル基を意味する。代表的な−C(ハロ)基としては、−CF、−CCl、−CBr、および−CIが挙げられる。
【0044】
「−ハロゲン」または「ハロ」は、−F、−Cl、−Br、または−Iを意味する。
【0045】
本明細書では、「場合によっては置換されている」という用語は、置換されていない基または置換されている基を示す。
【0046】
本発明の(複数の)化合物は、式Iの化合物のプロドラッグの形をとることができる。プロドラッグは、式Iの活性化合物をインビボで放出する共有結合している担体分子である。プロドラッグは限定されるものではないが、例えば典型的には体内で酵素の作用により活性化合物へと代謝され得る式Iの化合物のエステルが挙げられる。こうしたプロドラッグは、式Iの化合物を無水コハク酸などの無水物と反応させることによって調製することができる。
【0047】
本発明は、式Iの同位体標識(すなわち、放射性標識)化合物をさらに提供する。本開示化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、および塩素の同位体、具体的にはそれぞれH、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Cl、好ましくはH、11C、および14Cが挙げられる。本開示に鑑みて、当技術分野で周知の方法で、式Iの同位体標識化合物を調製することができる。例えば、式Iのトリチウム化合物は、トリチウムを用いた接触脱ハロゲン化によりトリチウムを式Iの特定の化合物に導入することによって調製することができる。この方法は、塩基の存在下にPd/Cなどの適切な触媒の存在下で、式Iの化合物の好適なハロゲン置換前駆体とトリチウムガスを反応させるステップを含むことができる。トリチウム化合物を調製する他の好適な方法は、Filer、Isotopes in the Physical and Biomedical Sciences、第1巻、Labeled Compounds(Part A)、第6章(1987年)に概説されている。14C−標識化合物は、14C炭素を有する出発材料を使用することによって調製することができる。
【0048】
本発明の(複数の)同位体標識化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、および溶媒和物を放射性リガンドとして使用して、オピオイド受容体への化合物の結合を試験することができる。例えば、式Iの放射性標識化合物を使用して、受容体への試験または候補化合物の特異的結合を特徴付けることができる。こうした放射性標識化合物を利用する結合アッセイは、化学構造活性相関評価のための動物試験代替法となり得る。非限定的な実施形態において、本発明は、候補化合物のオピオイド受容体に結合する能力をスクリーニングする方法であって、a)一定濃度の放射性標識化合物を受容体に、放射性標識化合物を受容体に結合させて複合体の形成を可能にする条件下で導入するステップと、b)複合体を候補化合物で滴定するステップと、c)候補化合物の前記受容体への結合を判定するステップとを含む方法を提供する。
【0049】
本明細書に開示する本発明の(複数の)化合物は、1個または複数の不斉中心を含む可能性があり、したがってエナンチオマー、ジアステレオマー、および他の立体異性体を生じ得る。本発明は、こうした生じ得るすべての異性体、そのラセミ体および分割体、ならびにそれらの混合物、ならびにそれらの使用も包含する。本開示に鑑みて、当業者に周知の方法に従って、個々のエナンチオマーを分離してもよい。本明細書に記載される化合物は、オレフィン性二重結合または他の幾何学的非対称中心を含み、別段の指定のない限り、幾何異性体EとZを両方包含する。すべての互変異性体も同様に、本発明に包含されるよう意図されている。
【0050】
本明細書では、「立体異性体」という用語は、空間における原子の配位だけが異なる個々の分子のすべての異性体に対する総称的用語である。これは、エナンチオマー、および1個を超えるキラル中心を含む化合物の互いに鏡像でない異性体(ジアステレオマー)を包含する。
【0051】
「キラル中心」という用語は、異なる4個の基が結合している炭素原子を示す。
【0052】
「エナンチオマー」および「エナンチオマーの(enantiomeric)」という用語は、その鏡像に重ねることができず、したがってエナンチオマーが偏光面を一方向に回転させ、その鏡像化合物が偏光面を反対方向に回転させるように光学活性である分子を示す。
【0053】
「ラセミ体の(racemic)」という用語は、等量部のエナンチオマーの混合物を示すので、この混合物は光学不活性である。
【0054】
「分割」という用語は、ある分子の2つのエナンチオマーの一方の分離または濃縮または除去を示す。
【0055】
「a」および「an」という用語は、1つまたは複数を示す。
【0056】
式Iによる(複数の化合物)に好適なアニオン(X)としては、スルフェート;シトレート;アセテート;ジクロロアセテート;トリフルオロアセテート;オキサレート;クロライド、ブロマイド、ヨーダイドなどのハライド;ニトレート;ビスルフェート;ホスフェート;アシッドホスフェート;イソニコチネート;ラクテート;サリチレート;アシッドシトレート;タルトレート;オレエート;タンネート;パントテネート;ビタルトレート;アスコルベート;スクシネート;マレエート;ゲンチシネート;フマレート;グルコネート;グルコロネート;サッカレート;ホルメート;マンデレート;ホルメート;アルギネート;カルボキシレート;ベンゾエート;グルタメート;メタンスルホネート;エタンスルホネート;ベンゼンスルホネート;p−トルエンスルホネート;パモエート(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))などの無機および有機アニオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アニオンの電荷が、中性化合物を得るためのカチオンによって必要とされる電荷より大きい場合、アニオンは準化学量論量で存在(例えば、0.5 SO2−だけでカチオンを中和)して、中性化合物を生じ、または残りの電荷はH、K、Na、Liなど別の正に帯電した種で中和される(例えば、HSO2−でカチオンを中和する)。
【0057】
本発明の(複数の)化合物は、開示する式Iの化合物の塩をすべて包含する。本発明は、好ましくは本開示化合物の薬学的に許容される非毒性塩をすべて包含する。薬学的に許容される塩の例としては、無機および有機の酸付加塩および塩基性塩が挙げられる。薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩などの金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属;トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機アミン塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸塩;クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、酢酸塩、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、ギ酸塩などの有機酸塩;メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩;およびアルギニン酸塩、グルタミン酸塩などのアミノ酸塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
酸付加塩は、本発明の特定の化合物の溶液を塩酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、リン酸、シュウ酸、ジクロロ酢酸などの薬学的に許容される非毒性酸の溶液と混合させることによって生成することができる。塩基性塩は、本発明の特定の化合物の溶液と水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、コリンヒドロキシド、炭酸ナトリウムなどの薬学的に許容される非毒性塩基を混合させることによって生成することができる。
【0059】
本発明の(複数の)化合物は、開示する式Iの化合物の溶媒和物も包含する。本明細書では「溶媒和物」という用語は、例えば溶媒分子と式Iの化合物との比がそれぞれ2:1、1:1、もしくは1:2である二溶媒和物、一溶媒和物、もしくは半溶媒和物など式Iの化合物と溶媒分子との組合せ、物理的会合、および/または溶媒和である。この物理的会合は、水素結合を含めて、イオン結合および共有結合の程度が異なるものである。場合によっては、溶媒和物は、1個または複数の溶媒分子が結晶質固体の結晶格子に組み込まれているときなど単離することができる。したがって、「溶媒和物」は、溶相溶媒和物と単離可能溶媒和物とを包含する。式Iの化合物は、水、メタノール、エタノールなど薬学的に許容される溶媒と溶媒和した形として存在してもよく、本発明は式Iの化合物の溶媒和した形と溶媒和していない形とを包含することが意図されている。溶媒和物の1つのタイプは水和物である。「水和物」は、溶媒分子が水である、溶媒和物の特定の下位グループに関する。溶媒和物は、典型的には薬理学的同等物として機能することができる。溶媒和物の調製は当技術分野で周知である。例えば、フルコナゾールの酢酸エチルとの溶媒和物および水との溶媒和物の調製が論じられているM.Cairaら、J.Pharmaceut.Sci.、93巻(3号):601〜611ページ、(2004年)を参照のこと。溶媒和物、半溶媒和物、水和物などの同様の調製は、E.C.van Tonderら、AAPS Pharm.Sci.Tech.、5巻(1号):Article 12、(2004年)およびA.L.Binghamら、Chem.Commun.、603〜604ページ(2001年)によって論じられている。溶媒和物を調製する方法は限定されるものではないが、典型的には式Iの化合物を所望の溶媒(有機物、水、またはそれらの混合物)に約20℃を超え約25℃までの温度で溶解し、次いでこの溶液を、結晶が生成されるのに十分な程度の速度で冷却し、この結晶を周知の方法、例えば濾過により単離するステップを伴うものである。赤外分光法などの分析技法を使用して、溶媒和物の結晶中に溶媒が存在していることを確認することができる。
【0060】
本発明は、便秘、好ましくはμ受容体アゴニスト誘発性便秘を治療または予防する医薬品の製造における本発明の(1つの)化合物の使用も提供する。一実施形態において、本発明の(1つの)化合物は、μ受容体アンタゴニストとしての活性を有する。別の実施形態において、本発明の(1つの)化合物は、μ受容体アンタゴニストとしてκ受容体アゴニストとして二重活性を有する。別の実施形態において、本発明の(1つの)化合物は胃腸管に実質的に限定される。
【0061】
化合物の合成
本開示に鑑みて、通常の有機合成法を使用してまたは下記のスキームに記載されている例示的な方法で、式Iの化合物を生成することができる。
【0062】
【化3】

【0063】
一般構造Aの化合物は市販されており、または当業者に周知の方法に従って合成することができる(例えば、EddyおよびMay、Synthetic Analgesics,Part B:Pergamon Press:Oxford,London、1966年;RiceおよびJacobson、(1976年)、J.Med Chem.19巻:430ページ;LednicerおよびMitscher、John Wiley&Sons:New York,1977年、286〜312ページ;PalmerおよびStrauss(1977年)、J Chem Rev.、77巻:1ページ;Lednicer、Central Analgesics、John Wiley&Sons:New York、1982年、137〜213ページ;Brineら、(1990年)、J.Heterocycl.Chem.、27巻:2139ページ;Lednicer、Strategies for Organic Drug Synthesis and Design、John Wiley&Sons:New York、1998年、161〜184ページを参照のこと)。一般構造Bの化合物を得るために、対応する一般構造Aの化合物(約0.5〜1mmol)を0.5〜3mlの乾燥不活性溶媒(アセトニトリル、トルエン、またはキシレンなど)に懸濁し、窒素下で撹拌する。約0.5〜1mmolのR−X(式中、XはCl、Br、またはIなどのハロゲンである)を、シリンジで滴下する。混合物を約1から24時間撹拌する。(LC/MSおよびTLCで監視して)反応が完了すると、溶媒を除去する。溶離液としてヘキサン中EtOAcと続いてDCM中15%MeOHのグラジエントによって、固定媒体として塩基性アルミナのカラムを使用するフラッシュクロマトグラフィーにより、不純物を除去する。上記と同じ2つの溶媒系を用いて順相シリカカラムを使用するクロマトグラフィーにより、精製をさらに行う。精製した材料である化合物Bを真空下で濃縮する。化合物Cを得るために、化合物Bを0.5〜3mlの乾燥不活性溶媒に懸濁し、過剰のR−X(約10〜15当量)を一度に添加する。この溶液を周囲温度で1〜3時間撹拌し、反応後に、LC/MSおよびTLCにかける。揮発性材料を真空下で除去すると、純粋な化合物Cが残る。
【0064】
化合物の試験
μオピオイド受容体結合アッセイ手順:μオピオイド受容体の放射性リガンド用量−置換結合アッセイでは、0.2nM[H]−ジプレノルフィン(NEN、Boston、Mass.)を、最終体積500μlの結合緩衝液(10mM MgCl、1mM EDTA、5%DMSO、50mM HEPES、pH 7.4)中、5〜20mgの膜タンパク質/ウェルで使用した。非標識ナロキソン濃度を増加することなくまたは増加させて、反応を実施した。反応はすべて、96ディープウェルポリプロピレンプレートにおいて室温で1〜2時間実施した。96ウェル組織ハーベスター(Brandel、Gaithersburg、Md.)を使用して、0.5%ポリエチレムイミンに予浸した96ウェルUnifilter GF/Cフィルター付きプレート(Packard、Meriden、Conn.)で急速濾過することによって結合反応を終結し、続いて500μlの氷冷結合緩衝液で3回濾過洗浄した。フィルター付きプレートを、続いて50℃で2〜3時間乾燥した。BetaScintシンチレーションカクテル(Wallac、Turku、Finland)を添加し(50μl/ウェル)、Packard Top−Countを使用して、プレートを1分/ウェルでカウントした。GraphPad PRISM v.3.0(San Diego、Calif.)の1サイト競合曲線フィッティング関数、またはインハウスの1サイト競合曲線フィッティング関数を使用して、データを解析した。
【0065】
μオピオイド受容体結合データ:一般に、Ki値が低いほど、本発明の(複数の)化合物は、疼痛または下痢を治療する上で有効になる。典型的には、本発明の(複数の)化合物のKi(nM)は、μオピオイド受容体に結合するために約300以下である。一実施形態において、本発明の(複数の)化合物のKi(nM)は約100以下である。別の実施形態において、本発明の(複数の)化合物のKi(nM)は約10以下である。さらに別の実施形態において、本発明の(複数の)化合物のKi(nM)は約1以下である。さらに別の実施形態において、本発明の(複数の)化合物のKi(nM)は約0.1以下である。
【0066】
μオピオイド受容体機能アッセイ手順:新たに解凍したμ受容体膜を使用して、[35S]GTPγS機能アッセイを実施した。アッセイ反応物は、氷で冷やされた結合緩衝液(100mM NaCl、10mM MgCl、20mM HEPES、pH 7.4)に、以下の試薬(最終濃度を示す):膜タンパク質(0.026mg/mL)、サポニン(10mg/mL)、GDP(3mM)、および[35S]GTPγS(0.20nM;NEN)を順次添加することによって調製した。調製された膜溶液(190μl/ウェル)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製されたアゴニストDAMGOの20倍濃縮原液10μlが入っている96シャローウェルポリプロピレンプレートに移した。プレートを、約25℃で30分間振盪しながらインキュベートした。96ウェル組織ハーベスター(Brandel、Gaithersburg、Md.)を使用して、96ウェルUnifilter GF/Bフィルター付きプレート(Packard、Meriden、Conn.)で急速濾過することによって反応を終結し、続いて200μlの氷冷洗浄緩衝液(10mM NaHPO、10mM NaHPO、pH 7.4)で3回濾過洗浄した。フィルター付きプレートを、続いて50℃で2〜3時間乾燥した。BetaScintシンチレーションカクテル(Wallac、Turku、Finland)を添加し(50μl/ウェル)、Packard Top−Countを使用して、プレートを1分/ウェルでカウントした。GraphPad PRISM v.3.0のS字状用量反応曲線フィッティング関数、またはインハウスの非線形S字状用量反応曲線フィッティング関数を使用して、データを解析した。
【0067】
μオピオイド受容体機能データ:μGTP EC50とは、μオピオイド受容体において化合物の最大反応の50%をもたらす化合物の濃度である。本発明の(複数の)化合物のμGTP EC50(nM)は、μオピオイド受容体機能を刺激するために典型的には約5000以下である。いくつかの実施形態において、本発明の(複数の)化合物のμGTP EC50(nM)は、約2000以下;または約1000以下;または約100以下;または約10以下;または約1以下;または約0.1以下である。
【0068】
μGTP Emax(%)とは、標準μアゴニストである[D−Ala、N−メチル−Phe Gly−ol]−エンケファリン(a/k/a DAMGO)で誘発される効果に対して化合物で誘発される最大効果である。一般に、μGTP Emax(%)値は、疼痛または下痢を治療または予防するための化合物の有効性を示す。典型的には、μオピオイドアンタゴニストとして、本発明の(複数の)化合物のμGTP Emax(%)は約50%未満である。いくつかの実施形態において、本発明の(複数の)化合物のμGTP Emax(%)は、約40%未満;または約30%未満;または約20%未満;または約10%未満である。
【0069】
κオピオイド受容体結合アッセイ手順:細胞を氷冷低張緩衝液(2.5mM MgCl、50mM HEPES、pH 7.4)(10mL/10cm皿)に溶解し、続いて組織粉砕機/テフロン(登録商標)製乳棒を用いて均質化することによって、ヒトκオピオイド受容体(κ)を発現する組換えHEK−293細胞(インハウスでクローン化)の膜を調製した。30,000xg、4℃で15分間遠心することによって、膜を回収し、ペレットを低張緩衝液に最終濃度1〜3mg/mLで再懸濁した。BioRadタンパク質アッセイ試薬を使用して、ウシ血清アルブミンを標準物質として、タンパク質濃度を決定した。κ受容体膜の一定分量を−80℃で貯蔵した。
【0070】
放射性リガンド用量−置換アッセイでは、最終体積200μlの結合緩衝液(5%DMSO、50mMトリズマ塩基、pH 7.4)中10〜20μgの膜タンパク質(HEK293細胞において発現された組換えκオピオイド受容体;インハウス調製)と共に0.4〜0.8nM [H]−U69,593(NEN;40Ci/mmole)が使用された。10μMの非標識ナロキソンまたはU69,593の存在下で、非特異的結合を決定した。反応はすべて、96ウェルポリプロピレンプレートにおいて約25℃の温度で1時間行われた。0.5%ポリエチレンイミン(Sigma)に予浸した96ウェルUnifilter GF/Cフィルター付きプレート(Packard)で急速濾過することによって、結合反応を決定した。96ウェル組織ハーベスター(Packard)を使用して、回収を行い、続いて200μlの氷冷結合緩衝液で5回濾過洗浄した。フィルター付きプレートを、続いて50℃で1〜2時間乾燥した。50μl/ウェルシンチレーションカクテル(MicroScint20、Packard)を添加し、Packard Top−Countを用いて、プレートを1分/ウェルでカウントした。
【0071】
κオピオイド受容体結合データ:典型的には、本発明の(複数の)化合物のKi(nM)は、κ受容体に対して約10,000以下である。いくつかの実施形態において、本発明の(複数の)化合物のKi(nM)は、約5000以下;または約1000以下;または約500以下;または約450以下;または約350以下;または約200以下;または約100以下;または約50以下;または約10以下である。
【0072】
κオピオイド受容体機能アッセイ手順:機能[35S]GTPγS結合アッセイを、以下の通り実施した。κオピオイド受容体膜溶液は、氷で冷やされた結合緩衝液(100mM NaCl、10mM MgCl、20mM HEPES、pH 7.4)に、最終濃度で0.026μg/μl κ膜タンパク質(インハウス)、10μg/mLサポニン、3μM GDP、および0.20nM [35S]GTPγSを順次添加することによって調製した。調製された膜溶液(190μl/ウェル)を、DMSO中で調製されたアゴニストの20倍濃縮原液10μlが入っている96シャローウェルポリプロピレンプレートに移した。プレートを、約25℃の温度で30分間振盪しながらインキュベートした。96ウェル組織ハーベスター(Packard)を使用して、96ウェルUnifilter GF/Bフィルター付きプレート(Packard)で急速濾過することによって反応を終結し、続いて200μlの氷冷結合緩衝液(10mM NaHPO、10mM NaHPO、pH 7.4)で3回濾過洗浄した。フィルター付きプレートを、続いて50℃で2〜3時間乾燥した。50μl/ウェルシンチレーションカクテル(MicroScint20、Packard)を添加し、Packard Top−Countを用いて、プレートを1分/ウェルでカウントした。
【0073】
κオピオイド受容体機能データ:κGTP EC50とは、κ受容体において化合物の最大反応の50%をもたらす化合物の濃度である。本発明の(複数の)化合物のκGTP EC50(nM)は、典型的にはκオピオイド受容体機能を刺激するために約10,000以下である。いくつかの実施形態において、本発明の(複数の)化合物のκGTP EC50(nM)は、約5000以下;または約2000以下;または約1500以下;または約1000以下;または約600以下;または約100以下;または約50以下;または約25以下;または約10以下である。
【0074】
κGTP Emax(%)とは、U69,593で誘発される効果に対して化合物で誘発される最大効果である。典型的には、本発明の(複数の)化合物のκGTP Emax(%)は約50%を超える。いくつかの実施形態において、本発明の(複数の)化合物のκGTP Emax(%)は、約75%を超え;または約90%を超え;または約100%を超える。
【0075】
δオピオイド受容体結合アッセイ手順:δオピオイド受容体結合アッセイ手順は、以下の通り実施することができる。放射性リガンド用量−置換アッセイでは、最終体積500μlの結合緩衝液(5mM MgCl、5%DMSO、50mMトリズマ塩基、pH 7.4)中10〜20μgの膜タンパク質(CHO−K1細胞において発現された組換えδオピオイド受容体;Perkin Elmer)と共に0.2nM [H]−ナルトリンドール(NEN;33.0Ci/mmole)が使用される。25μmMの非標識ナロキソンの存在下で、非特異的結合を決定する。反応はすべて、96ディープウェルポリプロピレンプレートにおいて約25℃の温度で1時間行われる。0.5%ポリエチレンイミン(Sigma)に予浸した96ウェルUnifilter GF/Cフィルター付きプレート(Packard)で急速濾過することによって、結合反応を決定する。96ウェル組織ハーベスター(Packard)を使用して、回収を行い、続いて500μlの氷冷結合緩衝液で5回濾過洗浄する。フィルター付きプレートを、続いて50℃で1〜2時間乾燥する。50μl/ウェルシンチレーションカクテル(MicroScint20、Packard)を添加し、Packard Top−Countを用いて、プレートを1分/ウェルでカウントする。
【0076】
δオピオイド受容体結合データ:本発明の(複数の)化合物のδ受容体に対するKi(nM)は、約10以上;または約100以上;または約250以上;または約350以上;または約500以上;または約1000以上;または約2500以上;または約3000以上;または約4000以上;またはさらには約10,000以上である。
【0077】
δオピオイド受容体機能アッセイ手順:機能[35S]GTPγS結合アッセイを、以下の通り実施することができる。δオピオイド受容体膜溶液は、氷で冷やされた結合緩衝液(100mM NaCl、10mM MgCl、20mM HEPES、pH 7.4)に、最終濃度で0.026μg/μl δ膜タンパク質(Perkin Elmer)、10μg/mLサポニン、3μM GDP、および0.20nM [35S]GTPγSを順次添加することによって調製する。調製された膜溶液(190μl/ウェル)を、DMSO中で調製されたアゴニストの20倍濃縮原液10μlが入っている96シャローウェルポリプロピレンプレートに移す。プレートを、約25℃の温度で30分間振盪しながらインキュベートする。96ウェル組織ハーベスター(Packard)を使用して、96ウェルUnifilter GF/Bフィルター付きプレート(Packard)で急速濾過することによって反応を終結し、続いて200μlの氷冷結合緩衝液(10mM NaHPO、10mM NaHPO、pH 7.4)で3回濾過洗浄する。フィルター付きプレートを、続いて50℃で1〜2時間乾燥する。50μl/ウェルシンチレーションカクテル(MicroScint20、Packard)を添加し、Packard Top−Countを用いて、プレートを1分/ウェルでカウントする。
【0078】
δオピオイド受容体機能データ:δGTP EC50とは、δ受容体において化合物の最大反応の50%をもたらす化合物の濃度である。本発明の(複数の)化合物のδGTP EC50(nM)は、典型的にはδオピオイド受容体機能を刺激するために約10,000以上である。いくつかの実施形態において、本発明の(複数の)化合物のδGTP EC50(nM)は、約1000以上;または約100以上;または約90以上;または約50以上;または約25以上;または約10以上である。
【0079】
δGTP Emax(%)とは、met−エンケファリンで誘発される効果に対して化合物で誘発される最大効果である。典型的には、本発明の(複数の)化合物のδGTP Emax(%)は約1%未満である。いくつかの実施形態において、本発明の(複数の)化合物のδGTP Emax(%)は、約5%未満;または約10%未満;または約20%未満;または約50%未満;または約75%未満;または約90%未満;または約100%未満;または約110%未満である。
【0080】
特定の実施形態において、本発明の(複数の)化合物は、μKi(nM)が1000未満であり、μGTP EC50(nM)が1000未満であり、μGTP Emax(%)が50未満であり、κKi(nM)が1000未満であり、κGTP EC50(nM)が1000未満であり、かつκGTP Emax(%)が50を超える。
【0081】
他の実施形態において、本発明のいくつかの(複数の)化合物は、μKi(nM)が500未満であり、μGTP EC50(nM)が500未満であり、μGTP Emax(%)が20未満であり、κKi(nM)が1000未満であり、κGTP EC50(nM)が500未満であり、かつκGTP Emax(%)が80%を超える。
【0082】
他の実施形態において、本発明のいくつかの(複数の)化合物は、μKi(nM)が100未満であり、μGTP EC50(nM)が100未満であり、μGTP Emax(%)が10%未満であり、κKi(nM)が100未満であり、κGTP EC50(nM)が100未満であり、かつκGTP Emax(%)が95%を超える。
【0083】
経口吸収を評価するアッセイ
当技術分野で周知である、薬物動態パラメータを評価する標準技法を使用して、経口吸収を測定することができる。例えば、ラットなどの実験動物に、本発明の(1つの)化合物を知られている濃度で経口投与する。経口投与した後、様々な時点で、血液検体を採取し、例えばUV検出によるHPLC分析を使用して、血漿中の化合物の量を測定する。
【0084】
胃運動評価のためのインビボアッセイ
ラット胃運動アッセイ(Green、(1959年)、Br.J Pharmacol.、14巻:26〜34ページ)を使用して、胃腸通過モデルにおける本発明の(1つの)化合物の便秘軽減作用を評価することができる。胃腸通過アッセイでは、ラットを18〜22時間絶食させる。試験化合物を、0.5%メチルセルロース中10mL/kgの量で経口投与することができる。化合物投与の1時間後、ラットに、0.5%メチルセルロース中7.5%チャーコールミール懸濁液を0.5mL/体重100gの量で経口投与する。チャーコールミール投与の0.5時間後、ラットをCO濃度上昇下で屠殺し、幽門から回盲弁まで小腸を摘出する。次いで、小腸全長およびチャーコールミールが移動した全距離を、センチメートルの単位で測定する。通過率(%)を、以下の通り算出する:
通過率(%)=[(全移動距離)/(小腸全長)]×100。
【0085】
統計解析
通過率(%)データについて、ANOVAでデータ解析と、続いてFisherのPLSD法を用いたポストホック解析を行うことができる。有意水準をP<0.05に設定する。
【0086】
医薬組成物
本発明の(1つの)化合物は、他のいかなる成分も存在することなく未加工の化学物質の形で哺乳類に投与することができるが、好ましくは有効量の化合物を好適な薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物の一部分として投与される。こうした担体は、投与経路に基づいて薬学的に許容される添加剤および補助剤から選択することができる。
【0087】
本明細書では、「有効量」の本発明の(1つの)化合物は、(a)便秘、特にμオピオイドアゴニスト誘発性便秘を治療または予防し、(b)細胞におけるμオピオイド受容体機能を検出可能な程度に抑制し、または(c)細胞におけるκオピオイド受容体機能を検出可能な程度に活性化するのに有効な量を示す。
【0088】
本発明の範囲内の医薬組成物には、本発明の(1つの)化合物が薬学的に許容される担体と組み合わされている組成物がすべて含まれる。好ましい実施形態において、化合物は、組成物中にその所期の治療目的を実現するのに有効な量で存在する。個々のニーズは異なる可能性があるが、各化合物の有効量の最適範囲を決定することは当技術分野の技術の範囲内である。典型的には、哺乳類、例えばヒトに、哺乳類の体重1kg当たり1日約0.0025から約1500mgの量の本発明の(1つの)化合物、または等量のその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物を経口投与して、便秘、特にμオピオイド受容体誘発性便秘を治療または予防する。哺乳類に経口投与される有用な用量としては、哺乳類の体重1kg当たり約0.025から約50mgの本発明の化合物、または等量のその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物である。経口単位用量は、約0.01から約50mg、好ましくは約0.1から約10mgの化合物を含むことができる。単位用量は、1日1回または複数回、例えば1個または複数の錠剤またはカプセル剤として投与することができ、それぞれの錠剤またはカプセル剤には、約0.01mgから約50mgの化合物、または等量のその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物が入っている。
【0089】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物の薬効を経験することができるものであればいずれの動物にでも投与することができる。こうした動物の中で、哺乳類、例えばヒトおよびコンパニオン動物が主要であるが、本発明はそのように限定されるものではない。
【0090】
本発明の医薬組成物は、その所期の目的を実現するものであればいずれの手段でも投与することができる。例えば、経口または直腸経由で投与することができる。投与量および投与経路は、特定の対象の状況に応じて、かつレシピエントの年齢、性別、健康、および体重、治療すべき病態または障害、併用療法がある場合はそのタイプ、治療頻度、所望の効果の性質および程度などの要因を考慮して異なる。
【0091】
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、経口投与することができ、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、または経口液体製剤に製剤化される。一実施形態において、経口製剤は、本発明の(1つの)化合物を含む押出多顆粒剤を含む。
【0092】
別の実施形態において、本発明の医薬組成物を直腸投与できるように、すなわち坐剤として製剤化する。
【0093】
本発明の医薬組成物は、約0.01から99重量パーセント、好ましくは約0.25から75重量パーセントの(1つまたは複数の)活性化合物を含有することができる。
【0094】
本発明の医薬組成物は、好ましくは本開示に鑑み、それ自体周知である方式、例えば通常の混合、造粒、糖衣錠作製、溶解、押出、または凍結乾燥プロセスによって製造される。したがって、活性化合物と固体添加剤を混合し、得られた混合物を場合によっては中砕し、所望の場合または必要な場合に好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアを得ることによって、経口使用の医薬組成物を得ることができる。あるいは、医薬組成物を押出多顆粒剤として調製することができる。
【0095】
好適な添加剤としては、糖類(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール)、セルロース調製物、リン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム)などの充填剤、ならびにデンプン糊(例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、または馬鈴薯デンプンを使用したデンプン糊)、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドンなどの結合剤が挙げられる。望むなら、上記のデンプン、さらにカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩など1つまたは複数の崩壊剤を添加することができる。
【0096】
補助剤を含むことができ、これらは典型的には例えばシリカ、タルク、ステアリン酸またはその塩(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム)、ポリエチレングリコールなどの流動調節剤および滑沢剤である。糖衣錠コアには、胃液に対して耐性をもつ好適なコーティングを施すことができる。このために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタンを場合によっては含有することができる濃縮糖液、ラッカー溶液、ならびに好適な有機溶媒または溶媒混合物を使用することができる。胃液に耐性をもつコーティングを生成するために、アセチルセルロースフタラートまたはヒドロキシプロピメチルセルロースフタラートなど好適なセルロース調製物溶液を使用することができる。錠剤または糖衣錠コーティングに、例えば識別のため、または活性化合物用量の組合せを特徴付けるために染料または顔料を添加してもよい。
【0097】
経口的に使用することができる他の医薬品調製物の例としては、ゼラチンで作製されたプッシュフィットカプセル剤、またはゼラチンおよびグリセロールもしくはソルビトールなどの可塑剤で作製された密封軟カプセル剤が挙げられる。プッシュフィットカプセル剤は、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに場合によっては安定化剤と混合することができる顆粒の形の化合物、または押出多顆粒の形の化合物を含有することができる。軟カプセル剤では、活性化合物が、好ましくは脂肪油または流動パラフィンなどの好適な液体に溶解または懸濁されている。さらに、安定化剤を添加してもよい。
【0098】
直腸内投与に利用可能な医薬品調製物としては、例えば典型的には1つまたは複数の活性化合物と坐剤基材との組合せからなる坐剤が挙げられる。好適な坐剤基材としては、とりわけ天然および合成のトリグリセリド、ならびにパラフィン炭化水素が挙げられる。活性化合物と例えば液状トリグリセリド、ポリエチレングリコール、またはパラフィン炭化水素などの基材材料との組合せからなる直腸用ゼラチンカプセル剤を使用することも可能である。
【0099】
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明の(複数の)化合物を放出制御製剤に組み込むことによって調製される。放出制御製剤は、本発明の(1つの)化合物の定常状態血漿中レベルを維持しなければならない状況を含めて種々の目的に有用である。これらの定常状態血漿中レベルを得ることができる一方式は、適切な放出プロファイルをもたらすように選択された適切な技術、例えば放出制御製剤を使用することによる方式である。適切な放出プロファイルは、例えば単一または多顆粒送達システムを使用して実現することができる。単一送達システムの例としては、ワックスマトリックス錠、親水性マトリックス錠、および放出制御コーティングを施した錠剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。多顆粒システムの例としては、溶融押出多顆粒剤(MEM)などのマトリックスシステム、またはコーティングビーズなど放出制御コーティングを基材にしたシステムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明の(1つの)化合物の治療的定常状態血漿中レベルを、経口投与後の約12時間から約24時間の期間提供する。別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明の(1つの)化合物の治療的定常状態血漿中レベルを、経口投与後の約6時間から約12時間の期間提供する。
【0101】
本発明の方法、すなわち便秘を治療または予防する方法は、第2の治療剤を本発明の(1つの)化合物(したがって第1の治療剤であるものとする)と組み合わせて患者に投与するステップをさらに含むことができる。一実施形態において、第2の治療剤は有効量で投与される。
【0102】
第2の治療剤の有効量は、一般に第2の治療剤のアイデンティティーに応じて当業者に周知である。しかし、第2の治療剤の最適な有効量範囲を決定することは、当業者の知識の範囲内である。
【0103】
本発明の(1つの)化合物(すなわち、第1の治療剤)および第2の治療剤は、同じ病態を治療するように相加的または相乗的に働くことができる。あるいは、第1の治療剤および第2の治療剤を使用して、異なる病態を治療することができるが、相加作用または相乗作用を示さないことがある。一実施形態において、本発明の(1つの)化合物は、第2の治療剤と同時に、例えば有効量の本発明の(1つの)化合物および第2の治療剤を含む単一組成物として患者に投与される。したがって、本発明は、有効量の本発明の(1つの)化合物、有効量の第2の治療剤、および薬学的に許容される担体の組合せを含む医薬組成物をさらに提供する。あるいは、本発明の(1つの)化合物および第2の治療剤を別々の組成物として同時に投与することができる。別の実施形態において、本発明の(1つの)化合物は第2の治療剤の投与の前または後に投与される。この実施形態において、本発明の(1つの)化合物は、好ましくは第2の治療剤がその治療効果を示す間に投与され、または第2の治療剤は、本発明の(1つの)化合物がその治療効果を示す間に投与される。
【0104】
本発明の主要な利点は、μアゴニスト鎮痛療法によって通常なら引き起こされる便秘を治療または予防することであるので、第2の治療剤は、好ましくはμオピオイドアゴニストである。有用なμオピオイドアゴニストの例としては、アルフェンタニル、アリルプロジン、αプロジン、ベンジルモルフィン、コデイン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、エチルモルフィン、エトルフィン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、イソメサドン、ケトベミドン、レボルファノール、ロフェンタニル、メペリジン、メサドン、モルヒネ、ニコモルフィン、ノルメサドン、ノルモルフィン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、それらの薬学的に許容される塩、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
いくつかの実施形態において、オピオイドアゴニストは、コデイン、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、モルヒネ、トラマドール、オキシモルホン、それらの薬学的に許容される塩、およびそれらの混合物から選択される。
【0106】
あるいは、第2の治療剤は、例えば非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、抗片頭痛剤、制吐剤、Cox−II阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、β−アドレナリン遮断剤、抗痙攣剤、抗うつ剤、抗癌剤、嗜癖障害の治療剤、パーキンソン病およびパーキンソニズムの治療剤、不安の治療剤、てんかん治療剤、発作の治療剤、脳卒中の治療剤、そう痒状態の治療剤、精神病の治療剤、ALSの治療剤、認知障害の治療剤、ジスキネジーの治療剤、またはそれらの混合物などの非オピオイド鎮痛剤とすることができる。
【0107】
有用なNSAIDの例としては、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フルブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピロプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラモプロフェン、ムロプロフェン、トリオキサプロフェン、スプロフェン、アミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、ブクロキス酸、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラク、チオピナク、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザク、クリダナク、オキスピナク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ジフルリサル、フルフェニサール、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム、およびその薬学的に許容される塩、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0108】
他の好適な非オピオイド鎮痛剤の例としては、以下の化学クラスの鎮痛薬、下熱薬、非ステロイド性抗炎症薬:アスピリン、サリチル酸ナトリウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サルサラート、ジフルニサル、サリチルサリチル酸、スルファサラジン、およびオルサラジンを含めてサリチル酸誘導体;アセトアミノフェンおよびフェナセチンを含めてp−アミノフェンノール誘導体;インドメタシン、スリンダク、およびエトドラクを含めてインドールおよびインデン酢酸;トルメチン、ジクロフェナク、およびケトロラックを含めてヘテロアリール酢酸;メフェナム酸およびメクロフェナム酸を含めてアントラニル酸(フェナマート);オキシカム(ピロキシカム、テノキシカム)およびピラゾリジンジオン(フェニルブタゾン、オキシフェンタルタゾン)を含めてエノール酸;ならびにナブメトンを含めてアルカノンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
NSAIDのさらに詳細な説明については、Paul A.Insel、Analgesic Antipyretic and Antiinflammatory Agents and Drugs Employed in the Treatment of Gout,in Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、617〜57ページ(Perry B.MolinhoffおよびRaymond W.Ruddon編、第9版、1996年)およびGlen R.Hanson、Analgesic,Antipyretic and Anti Inflammatory Drugs in Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第2巻、1196〜1221ページ(A.R.Gennaro編、第19版、1995年)を参照のこと。これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。好適なCox−II阻害剤および5−リポキシゲナーゼ阻害剤、ならびにそれらの組合せについては、米国特許第6,136,839号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。有用なCox II阻害剤の例としては、ロフェコキシブおよびセレコキシブが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(実施例)
【0110】
以下の実施例は、本発明の化合物、組成物、および方法を例示するものであって、限定するものではない。臨床療法において通常に遭遇する多様な条件およびパラメータの好適な修正および適合は、本開示に鑑みて当業者に自明であり、本発明の趣旨および範囲内である。
【実施例1】
【0111】
3−シクロプロピルメチル−9−ヒドロキシ−3,6,11−トリメチル−1,2,3,4,5,6−ヘキサヒドロ−2,6−メタノ−ベンゾ[d]アゾシニウム(1)
【0112】
【化4】

【0113】
次のプロトコルに従って、化合物(1)を調製した。
【0114】
【化5】

【0115】
スクリュートップ式セプタム付きの50mlのバイアル中で、1.5mlの乾燥アセトニトリルに、窒素下150mgの(−)−ノルメタゾシン(0.691mmol、mw=217、Sigma)を懸濁し、磁気撹拌棒で撹拌した。0.622mmolのブロモメチルシクロプロパン(mw=135、密度=1.392)をシリンジで滴下した。混合物を20時間撹拌した。(LC/MSおよびTLCで監視して)反応が完了すると、溶媒を除去した。溶離液としてヘキサン中EtOAcと続いてDCM中15%MeOHのグラジエントによって、固定媒体として塩基性アルミナのカラムを使用するフラッシュクロマトグラフィーにより、不純物を除去した。精製した材料を真空下で濃縮した。生成物を1.5mlの乾燥アセトニトリルに懸濁し、過剰のヨウ化メチル(0.5ml)を1回で添加した。この溶液を周囲温度で3時間撹拌し、反応後に、LC/MSおよびTLCにかけた。揮発性材料を真空下で除去した。得られた表題化合物は純粋であり、純度100%の黄色固体生成物104mgが回収された。
【0116】
化合物(1)のアイデンティティーをLC/MSおよびHNMRで検証した。
MS: 286
1HNMR (CD3OD): δ (ppm) 7.06-7.02 (bd, 1H, J=8.33), 6.78-6.76 (bd, 1H, J-2.41), 6.71-6.67 (m, 1H), 3.85-3.71 (m, 2H), 3.40-3.34 (m, 3H), 3.27-3.16 (m, 3H), 3.08-2.84 (m, 2H), 2.55-2.23 (m, 2H), 1.55-1.45 (m, 4H), 1.25-1.18 (m, 1H),1.02-0.97 (m, 3H), 0.90-0.79 (m, 2H), 0.62-0.44 (m, 2H).
【実施例2】
【0117】
3−アリル−9−ヒドロキシ−3,6,11−トリメチル−1,2,3,4,5,6−ヘキサヒドロ−2,6−メタノ−ベンゾ[d]アゾシニウム(2)
【0118】
【化6】

【0119】
次のプロトコルに従って、化合物(2)を調製した。
【0120】
【化7】

【0121】
スクリュートップ式セプタム付きの50mlのバイアル中で、1.5mlの乾燥アセトニトリルに、窒素下150mgの(−)−ノルメタゾシン(0.691mmol、mw=217、Sigma)を懸濁し、磁気撹拌棒で撹拌した。0.622mmolのブロモアリル(mw=121、密度=1.398)をシリンジで滴下した。混合物を20時間撹拌した。(LC/MSおよびTLCで監視して)反応が完了すると、溶媒を除去した。溶離液としてヘキサン中EtOAcと続いてDCM中15%MeOHのグラジエントによって、固定媒体として塩基性アルミナのカラムを使用するフラッシュクロマトグラフィーにより、不純物を除去した。次いで、上記と同じ2つの溶媒系を用いて順相シリカカラムを使用するクロマトグラフィーにより、精製を継続した。精製した材料を真空下で濃縮した。異なる2つの媒体の目的は、二置換副生成物および残存する出発材料の残渣を清浄することである。生成物を乾燥アセトニトリルに懸濁し、過剰のヨウ化メチル(0.5ml)を1回で添加した。この溶液を周囲温度で3時間撹拌し、反応後に、LC/MSおよびTLCにかけた。揮発性材料を真空下で除去した。得られた表題化合物は純粋であり、純度100%の黄色固体生成物84mgが回収された。化合物(2)のアイデンティティーをLC/MSおよびHNMRで検証した。
MS: 272
1HNMR (CD3OD): δ (ppm) 7.08-7.04 (bd, 1H, J=8.11), 6.79-6.76 (bd, 1H, J-2.41), 6.72-6.68 (m, 1H), 6.20-6.07 (m, 1H), 5.83-5.72 (m, 2H), 4.32-4.24 (1, 1H, J=13.81, J=7.24), 4.00-3.92 (m, 1H), 3.62-3.58 (m, 1H), 3.42-3.34 (m, 1H), 3.28-3.15 (m, 5H), 3.02-2.93 (m, 1H), 2.52-2.44 (m, 1H), 2.33-2.22 (m, 1H), 1.58-1.44 (m, 4H), 0.99-0.95 (m, 3H).
【実施例3】
【0122】
以下の表に、本発明の(複数の)例示化合物のμ、δ、およびκオピオイド受容体における結合の有効性および活性反応についての結果を記載する。
【0123】
表1では、本発明のいくつかの(複数の)化合物のμ、δ、およびκオピオイド受容体への結合の有効性を上述のように決定した。
【0124】
表2では、本発明のいくつかの(複数の)化合物のμ、δ、およびκオピオイド受容体への活性反応を、機能アッセイで上述したように決定した。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
これまで本発明を詳細に記載してきたが、同じことを、本発明の範囲またはそのいずれの実施形態にも影響を及ぼすことなく、条件、製剤、および他のパラメータの幅広く同等な範囲内で実施できることは、当業者に理解される。
【0128】
本発明の他の実施形態は、本明細書および本明細書に開示する本発明の実施を考えて、当業者には明らかとなる。本明細書および実施例は例示にすぎないと考えられ、本発明の真の範囲および趣旨は以下の特許請求の範囲によって示されるように意図されている。
【0129】
本明細書に引用する特許および刊行物はすべて、参照によりそれらの全体が完全に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、またはその溶媒和物もしくはプロドラッグ:
【化8】

[式中、
およびRはそれぞれ独立に、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、−(C〜C12)シクロアルキル、−(C〜C12)シクロアルケニル、−(CH−O−(CH−CH、(C〜C10)アルコキシ、C(ハロ)、CH(ハロ)、CH(ハロ)、C(O)R、−C(O)O−(C〜C10)アルキル、および−(CH−N(Rからなる群から選択され、これらはそれぞれ、1、2、または3個の独立に選択されたR基で場合によっては置換されており;
およびRはそれぞれ独立に、
(c)−H;または
(d)−(C〜C)アルキル、−(C〜C)アルケニル、および−(C〜C)アルキニルから選択され;
は、
(c)−H、−OH、ハロ、−C(ハロ)、−CH(ハロ)、および−CH(ハロ)
(d)−(C〜C)アルキル、−(C〜C)アルケニル、−(C〜C)アルキニル、−(CH−O−(CH−CH、−(C〜C)アルコキシから選択され、これらはそれぞれ、1、2、または3個の独立に選択されたR基で場合によっては置換されており;
は、−H、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、および−(C〜C10)アルコキシから選択され;
はそれぞれ独立に、−H、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、および−(C〜C10)アルキニルから選択され;
はそれぞれ独立に、−OH、ハロ、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、−(C〜C10)アルコキシ、−(C〜C12)シクロアルキル、−CHO、−C(O)OH、−C(ハロ)、−CH(ハロ)、CH(ハロ)、および−(CH−O−(CH−CHから選択され;
は、スルフェート;シトレート;アセテート;ジクロロアセテート;トリフルオロアセテート;オキサレート;クロライド、ブロマイド、ヨーダイドなどのハライド;ニトレート;ビスルフェート;ホスフェート;アシッドホスフェート;イソニコチネート;ラクテート;サリチレート;アシッドシトレート;タルトレート;オレエート;タンネート;パントテネート;ビタルトレート;アスコルベート;スクシネート;マレエート;ゲンチシネート;フマレート;グルコネート;グルコロネート;サッカレート;ホルメート;マンデレート;ホルメート;アルギネート;カルボキシレート;ベンゾエート;グルタメート;メタンスルホネート;エタンスルホネート;ベンゼンスルホネート;p−トルエンスルホネート;パモエート(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))などの有機または無機アニオンであり;
nはそれぞれ独立に、0、1、2、3、4、5、または6の整数から選択される;
ただし、R、R、およびRがそれぞれ−CHであり、Rが−OHである場合、Rは−CH−CH=C(CHでないことを条件とし;
、R、およびRがそれぞれ−CHであり、Rが−OHである場合、Rは−CH−CH=C(CHでないことを条件とし;
が−CHまたは−CDから選択され、RおよびRがそれぞれ−CHとして選択され、Rが−OHである場合、Rは−CHまたは−CDでないことを条件とし;
が−CHまたは−Cとして選択され、RおよびRがそれぞれ−CHとして選択され、Rが−OHである場合、Rは−CHまたは−Cでないことを条件とし;
、R、R、およびRがそれぞれ−CHとして選択される場合、Rは−ハロでないことを条件とする]。
【請求項2】
前記化合物が式Iの化合物の薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびRの少なくとも一方が、1個のR基で置換されている−(C〜C10)アルキルであり、R基が、好ましくは−(C〜C12)シクロアルキルである、請求項1から2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
が、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルから選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
およびRの少なくとも一方が、−CH−シクロプロピル、−CHCH−シクロプロピル、またはCHCHCH−シクロプロピルから選択され、好ましくは−CH−シクロプロピルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
およびRの少なくとも一方が−(C〜C10)アルケニルである、請求項1または2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
およびRの少なくとも一方が−CHCH=CHである、請求項1、2、または6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
が−CHであり、Rが−CH−シクロプロピルまたは−CH−CH=CHである、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
およびRがそれぞれ独立に、−(C〜C)アルキルから選択され、好ましくは−CHである、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
が−OHである、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
が−(CH−O−(CH−CHである、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
nがそれぞれ独立に、1、2、および3から選択される、請求項1、2、または11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
有効量の請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物、および薬学的に許容される担体または添加剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
細胞におけるオピオイド受容体機能を調節する方法であって、オピオイド受容体を発現することができる細胞を有効量の請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物と接触させるステップを含む方法。
【請求項15】
前記化合物がμオピオイド受容体機能を調節する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、μオピオイド受容体においてアンタゴニストとして働く、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物がκオピオイド受容体機能を調節する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物が、κオピオイド受容体においてアゴニストとして働く、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物が、μオピオイド受容体においてアンタゴニストとしてかつκオピオイド受容体においてアゴニストとして二重活性を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
患者における便秘を治療する方法であって、それを必要とするこうした患者に有効量の式Iの化合物、またはその溶媒和物もしくはプロドラッグ:
【化9】

[式中、RおよびRはそれぞれ独立に、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、−(C〜C12)シクロアルキル、−(C〜C12)シクロアルケニル、−(CH−O−(CH−CH、(C〜C10)アルコキシ、C(ハロ)、CH(ハロ)、CH(ハロ)、C(O)R、−C(O)O−(C〜C10)アルキル、および−(CH−N(Rからなる群から選択され、これらはそれぞれ、1、2、または3個の独立に選択されたR基で場合によっては置換されており;
およびRはそれぞれ独立に、
(a)−H;または
(b)−(C〜C)アルキル、−(C〜C)アルケニル、および−(C〜C)アルキニルから選択され;
は、
(a)−H、−OH、ハロ、−C(ハロ)、−CH(ハロ)、および−CH(ハロ)
(b)−(C〜C)アルキル、−(C〜C)アルケニル、−(C〜C)アルキニル、−(CH−O−(CH−CH、−(C〜C)アルコキシから選択され、これらはそれぞれ、1、2、または3個の独立に選択されたR基で場合によっては置換されており;
は、−H、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、および−(C〜C10)アルコキシから選択され;
はそれぞれ独立に、−H、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、および−(C〜C10)アルキニルから選択され;
はそれぞれ独立に、−OH、ハロ、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、−(C〜C10)アルコキシ、−(C〜C12)シクロアルキル、−CHO、−C(O)OH、−C(ハロ)、−CH(ハロ)、CH(ハロ)、および−(CH−O−(CH−CHから選択され;
は、スルフェート;シトレート;アセテート;ジクロロアセテート;トリフルオロアセテート;オキサレート;クロライド、ブロマイド、ヨーダイドなどのハライド;ニトレート;ビスルフェート;ホスフェート;アシッドホスフェート;イソニコチネート;ラクテート;サリチレート;アシッドシトレート;タルトレート;オレエート;タンネート;パントテネート;ビタルトレート;アスコルベート;スクシネート;マレエート;ゲンチシネート;フマレート;グルコネート;グルコロネート;サッカレート;ホルメート;マンデレート;ホルメート;アルギネート;カルボキシレート;ベンゾエート;グルタメート;メタンスルホネート;エタンスルホネート;ベンゼンスルホネート;p−トルエンスルホネート;パモエート(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))などの有機または無機アニオンであり;
nはそれぞれ独立に、0、1、2、3、4、5、または6の整数から選択される]
を投与するステップを含む方法。
【請求項21】
前記便秘がμオピオイドアゴニスト療法によって引き起こされる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が式Iの化合物の薬学的に許容される塩である、請求項20および21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から12のいずれか一項に記載の有効量の化合物が入っている容器を含むキット。
【請求項24】
組成物を調製する方法であって、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物またはその化合物の製剤的誘導体、および薬学的に許容される担体または添加剤を混合するステップを含む方法。
【請求項25】
式Iの化合物、またはその溶媒和物もしくはプロドラッグ
【化10】

[式中、
およびRはそれぞれ独立に、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、−(C〜C12)シクロアルキル、−(C〜C12)シクロアルケニル、−(CH−O−(CH−CH、(C〜C10)アルコキシ、C(ハロ)、CH(ハロ)、CH(ハロ)、C(O)R、−C(O)O−(C〜C10)アルキル、および−(CH−N(Rからなる群から選択され、これらはそれぞれ、1、2、または3個の独立に選択されたR基で場合によっては置換されており;
およびRはそれぞれ独立に、
(a)−H;または
(b)−(C〜C)アルキル、−(C〜C)アルケニル、および−(C〜C)アルキニルから選択され;
は、
(a)−H、−OH、ハロ、−C(ハロ)、−CH(ハロ)、および−CH(ハロ)
(b)−(C〜C)アルキル、−(C〜C)アルケニル、−(C〜C)アルキニル、−(CH−O−(CH−CH、−(C〜C)アルコキシから選択され、これらはそれぞれ、1、2、または3個の独立に選択されたR基で場合によっては置換されており;
は、−H、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、および−(C〜C10)アルコキシから選択され;
はそれぞれ独立に、−H、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、および−(C〜C10)アルキニルから選択され;
はそれぞれ独立に、−OH、ハロ、−(C〜C10)アルキル、−(C〜C10)アルケニル、−(C〜C10)アルキニル、−(C〜C10)アルコキシ、−(C〜C12)シクロアルキル、−CHO、−C(O)OH、−C(ハロ)、−CH(ハロ)、CH(ハロ)、および−(CH−O−(CH−CHから選択され;
は、スルフェート;シトレート;アセテート;ジクロロアセテート;トリフルオロアセテート;オキサレート;クロライド、ブロマイド、ヨーダイドなどのハライド;ニトレート;ビスルフェート;ホスフェート;アシッドホスフェート;イソニコチネート;ラクテート;サリチレート;アシッドシトレート;タルトレート;オレエート;タンネート;パントテネート;ビタルトレート;アスコルベート;スクシネート;マレエート;ゲンチシネート;フマレート;グルコネート;グルコロネート;サッカレート;ホルメート;マンデレート;ホルメート;アルギネート;カルボキシレート;ベンゾエート;グルタメート;メタンスルホネート;エタンスルホネート;ベンゼンスルホネート;p−トルエンスルホネート;パモエート(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))などの有機または無機アニオンであり;
nはそれぞれ独立に、0、1、2、3、4、5、または6の整数から選択される]
の便秘を治療または予防するのに有用な医薬品の製造における使用。
【請求項26】
前記便秘がμオピオイドアゴニスト療法によって引き起こされる、請求項22に記載の使用。
【請求項27】
前記化合物が式Iの化合物の薬学的に許容される塩である、請求項25および26のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2011−505348(P2011−505348A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535470(P2010−535470)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003311
【国際公開番号】WO2009/068989
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(508150854)パーデュー、ファーマ、リミテッド、パートナーシップ (18)
【Fターム(参考)】