説明

ベンチレータ

【課題】フィン部の操作性の良いベンチレータを提供する。
【解決手段】ベンチレータ1は、円筒形状を有し、内部に通風路5の一部を規定するケース部10と、先端部21に吹出口22を有し、吹出口22に繋がる通風路5の一部を規定し、ケース部10に一部が受け入れられた状態でケース部10内に装着され、ケース部10の先端に可動に取り付けられたフィン部20と、通風路5内であってケース部10の直径方向の中央に配置され、フィン部20と接続される第1軸31と、第1軸31と交差する方向に伸びかつケース部10に接続される第2軸32とを有し、フィン部20をケース部10に対して第1軸31および第2軸32まわりに回動可能に支持するジョイント部30とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンチレータに関し、特に、空気調和装置などの空気の吹出部に取り付けられ、吹き出される空気の流れの向きを調整可能なベンチレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和装置などの空気の吹出部には吹き出される空気の流れの向きを調整可能なベンチレータが取り付けられることがある。この場合、上下および左右方向に吹き出される空気の流れの向きを調整可能なベンチレータが用いられることがある。
【0003】
上下および左右方向に吹き出される空気の流れの向きを調整可能なベンチレータとして、たとえば、特開2004−243946号公報(特許文献1)に記載のレジスタ(ベンチレータ)が提案されている。この公報に記載されたレジスタ(ベンチレータ)では、円筒形のリテーナ内に円筒形の回動ルーバーが送風方向と平行な軸の回りで回動可能に装着されている。この回動ルーバーの円筒フレーム内に可動フィンが回動ルーバーの回動軸と直角な軸を支軸にして回動可能に支持されている。円筒フレームおよび可動フィンを回動させることによりレジスタ(ベンチレータ)から吹き出される空気の向きが上下および左右方向に調整され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−243946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報のレジスタ(ベンチレータ)では、円筒フレームの支持フレームの軸孔および溝に可動フィンの軸部が嵌め込まれている。また、回動ルーバーがリテーナ内の前部に前方から嵌め込まれており、円筒フレームの支持フレーム外周面の一部がリテーナの内周面の一部に接している。可動フィンを上下および左右方向に回動させる場合、支持フレームの軸孔および溝と可動フィンの軸部とが摺動し、支持フレームの外周面の一部とリテーナの内周面の一部とが摺動する。この際、支持フレームの外周面の一部とリテーナの内周面の一部とが摺動する面積が大きいので摺動する部分の摩擦抵抗が大きくなる。
【0006】
可動フィンを回動させるために可動フィンに外部から力が加えられた際、この摺動する部分の摩擦抵抗が大きいため、摩擦抵抗により可動フィンを回動させるために大きな力が必要となる。また、この摩擦抵抗が大きいため、可動フィンに外部から加えられた力のロス(損失)も大きくなる。このため、たとえば可動フィンの位置の微調整等に支障をきたすこととなり、可動フィンの操作性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、フィン部の操作性の良いベンチレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のベンチレータは、円筒形状を有し、内部に通風路の一部を規定するケース部と、先端部に吹出口を有し、吹出口に繋がる通風路の一部を規定し、ケース部に一部が受け入れられた状態でケース部内に装着され、ケース部の先端に可動に取り付けられたフィン部と、通風路内であってケース部の直径方向の中央に配置され、フィン部と接続される第1軸と、第1軸と交差する方向に伸びかつケース部に接続される第2軸とを有し、フィン部をケース部に対して第1軸および第2軸まわりに回動可能に支持するジョイント部とを備えている。
【0009】
本発明のベンチレータによれば、フィン部をケース部に対して回動可能に支持するジョイント部が通風路内であってケース部の直径方向の中央に配置されているため、フィン部およびケース部とジョイント部とが摺動する面積を小さくすることができる。そのため、フィン部およびケース部とジョイント部との摺動する部分の摩擦抵抗を小さくすることができる。摩擦抵抗が小さいためフィン部を回動させるために必要な力を小さくすることができる。また、この摩擦抵抗が小さいためフィン部を回動させるためにフィン部に外部から加えられた力のロス(損失)も小さくなる。このため、たとえばフィン部の位置の微調整等が容易である。よって、フィン部の操作性を良くすることができる。
【0010】
上記のベンチレータにおいて好ましくは、ジョイント部は、第1軸および第2軸の少なくとも一方が雄形である。ジョイント部の第1軸および第2軸の両方が雌形の場合、第1軸および第2軸のうち後で取り付ける方では、ジョイント部がケース部とフィン部とに囲まれているので、雌形に挿入するために雄形の間隔を広げることは困難である。したがって、雄形の間隔を広げて雌形に雄形を挿入することは困難である。それに対して、第1軸および第2軸の少なくとも一方が雄形の場合、第1軸および第2軸のうち後で取り付ける方を雄形にして、雄形を雌形に押し込むことで雌形の間隔を広げて雌形に雄形を挿入することは容易である。よって、第1軸および第2軸の少なくとも一方を雄形にすることで、ジョイント部とケース部またはフィン部とを容易に取り付けることができる。
【0011】
上記のベンチレータにおいて好ましくは、重力方向に回動可能なケース部またはフィン部のいずれかの摩擦係数より、ジョイント部のケース部またはフィン部との摺動部分の摩擦係数が高い。ジョイント部の摺動部分の摩擦係数が高いため、重力方向に回動可能なケース部またはフィン部とジョイント部との摩擦力により、フィン部が回動した状態の位置を保持することができる。ケース部、フィン部およびジョイント部の3つの部品でフィン部が回動した状態の位置を保持することができるので、部品点数を少なくすることができる。
【0012】
上記のベンチレータにおいて好ましくは、吹出口は先端部から見て格子状に形成されている。吹出口が先端部から見て格子状に形成されているため、格子状の吹出口から吹き出される空気の指向性を向上することができる。そのため、吹出口から吹き出される空気の向きをより正確にコントロールすることができる。
【0013】
上記のベンチレータにおいて好ましくは、フィン部の外周の一部とケース部の先端とを連続して覆い、先端部側に向かって開口面積が小さくなるよう形成されたカバー部材を備えている。カバー部がフィン部の外周の一部とケース部の先端とを連続して覆っているため、フィン部とケース部との間から空気が漏れることを抑制することができる。カバー部が先端部側に向かって開口面積が小さくなるよう形成されているため、先端部に設けられた吹出口に空気を効率的に供給することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、フィン部の操作性の良いベンチレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態におけるベンチレータの概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるベンチレータの概略正面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う概略断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるベンチレータの概略分解斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態におけるケース部の概略正面図である。
【図6】本発明の一実施の形態におけるフィン部の概略正面図である。
【図7】本発明の一実施の形態におけるジョイント部の概略正面図である。
【図8】本発明の一実施の形態におけるフィン部の一部がケース部に受け入れられた状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について図に基づいて説明する。
最初に本発明の一実施の形態のベンチレータの構成について説明する。
【0017】
図1および図2を参照して、ベンチレータ1は、ケース部10と、フィン部20と、ジョイント部30と、カバー部40とを主に有している。ベンチレータ1はフィン部20の先端部21の吹出口22から吹き出される空気の流れの向きを上下方向(図中矢印Y方向)および左右方向(図中矢印X方向)に調整可能に構成されている。なお、上下および左右方向は相対的に規定されるものであり、直交する2方向の何れかが上下方向に該当し、他方が左右方向に該当する。なお、カバー部40は先端部21の吹出口22に効率的に空気を供給するための部材であるので用いられなくてもよい。
【0018】
ケース部10の後端からフィン部20の先端部21には連続的に通風路5が設けられている。ケース部10の内部は、通風路5の一部を形成している。フィン部20は、先端部21に吹出口22を有している。フィン部20は、吹出口22に繋がる通風路5の一部を規定している。
【0019】
ケース部10の先端とフィン部20の外周の一部とが連続してカバー部40で覆われている。より具体的には、ケース部10の先端がカバー部40のベース部材41で覆われている。フィン部20の外周の一部がカバー部40のカバー部材44で覆われている。カバー部40は、フィン部20の先端部21側に向かって開口45の面積(開口面積)が小さくなるよう形成されている。より具体的には、カバー部40のカバー部材44がフィン部20の先端部21側に向かって開口45の面積が小さくなるようフィン部20の外形の一部に沿って設けられている。
【0020】
図2および図3を参照して、ケース部10とフィン部20とはジョイント部30により上下および左右方向に回動可能に接続されている。つまり、フィン部20は、ジョイント部30を介してケース部10に対して上下および左右方向に回動可能に設けられている。フィン部20は、ジョイント部30によりケース部10に一部が受け入れられた状態でケース部10内に装着され、ケース部10の先端に可動に取り付けられている。
【0021】
ジョイント部30は、通風路5内であってケース部10の直径方向の中央に配置されている。ジョイント部30は、フィン部20と接続される第1軸31と、ケース部10に接続される第2軸32とを有している。第2軸32は、第1軸31と交差する方向に伸びている。ジョイント部30は、フィン部20をケース部10に対して第1軸31および第2軸32まわりに回動可能に支持するよう構成されている。ジョイント部30は、たとえば軟式樹脂、ゴムまたはポリエステル系エラストマーからなっていてもよい。
【0022】
ジョイント部30のケース部10またはフィン部20との摺動部分の摩擦係数は、重力方向に回動可能なケース部10またはフィン部20のいずれかの摩擦係数より高くなるよう設定されている。
【0023】
ケース部10で内側の領域においてケース部10の後端から先端に向かって延びる支持部材13が設けられている。支持部材13は、板状の中間部材16を挟むように配置された2つの板状形状を有している。支持部材13の先端部分には取付孔14が設けられている。中間部材16に挟まれるようにジョイント部30が配置されている。取付孔14に第2軸32が回動可能に取り付けられている。取付孔14がケース部10に対して左右方向(図1中矢印X方向)に配置されているため、ジョイント部30はケース部10に対して上下方向(図1中矢印Y方向)に回動可能に取り付けられている。
【0024】
フィン部20は、上下方向(図1中矢印Y方向)に配置された上下壁部材23と左右方向(図1中矢印X方向)に配置された左右壁部材24とを有している。フィン部20では、上下壁部材23に対して先端部21と反対側に軸部材25が設けられている。軸部材25は上下方向(図1中矢印Y方向)に空間を挟んで互いに対向するように配置されている。軸部材25から互いに対向する方向に延びるように挿入部材26が設けられている。挿入部材26は円柱形状を有している。挿入部材26に第1軸31が回動可能に取り付けられている。挿入部材26が第1軸31の挿入穴31aに挿入部材26の円周方向に回動可能に挿入されている。第1軸31が第2軸32に交差する方向に伸びているため、フィン部20はジョイント部30を介してケース部10に対して左右方向(図1中矢印X方向)に回動可能に取り付けられている。
【0025】
ケース部10にカバー部40が取り付けられている。ケース部10の挿入枠部材17にカバー部40の突起部材42が挿入されている。カバー部40のカバー部材44がフィン部20の外形の一部に沿うように設けられている。カバー部材の先端に開口45が設けられている。開口45からフィン部20の先端部21が突出している。フィン部20は、フィン部20が回動した際にカバー部40と接触しないように配置されている。
【0026】
図4および図5を参照して、ケース部10は、外形において、円筒形状を有している。ケース部10の後端には枠部材11が設けられている。枠部材11は開口12を有している。支持部材13から見て枠部材11は格子状に形成されている。支持部材13はケース部10の円筒形状の直径方向の中央に配置されている。支持部材13の先端には、ジョイント部30の第2軸32を取付孔14に挿入しやすくするためのテーパ部分15が設けられている。テーパ部分15は取付孔14から先端に向かって厚みが小さくなるように形成されている。
【0027】
ケース部10の外縁の一部においてカバー部40の突起部材42を挿入するための挿入枠部材17が設けられている。挿入枠部材17は2つ設けられており、支持部材13に対して互いに対向するように配置されている。
【0028】
ケース部10の外周にはカバー部40の係止溝43を係止するための爪部材18が設けられている。爪部材18は、ケース部10の先端に向かって厚みが小さくなるテーパ形状を有している。また、爪部材18は、テーパ形状よりケース部10の後端側に平坦形状を有している。爪部材18は、係止溝43にテーパ形状側から挿入されて平坦部で係止されるように構成されている。爪部材18は4つ設けられており、支持部材13に対して対向するように配置された2つの爪部材18からなる組が2つ設けられている。これらの2つの組みは支持部材13に対して互いに交差する方向に配置されている。
【0029】
ケース部10の先端側には開口19が設けられている。ケース部10は、この開口19にフィン部20の一部を受け入れ可能に構成されている。
【0030】
図4および図6を参照して、フィン部20は先端部21に向かって突出するように凸形状を有している。複数の上下壁部材23と左右壁部材24とが先端部21から見て格子状に配置されている。吹出口22は先端部21から見て格子状に形成されている。
【0031】
フィン部20は、ジョイント部30を保持するための軸部材25および挿入部材26を有している。軸部材25から突き出すように設けられた挿入部材26の先端には、挿入部材26を第1軸31の挿入穴31aに挿入しやすくするためのテーパ部分27が設けられている。テーパ部分27は挿入部材26の先端に向かって直径が小さくなるように形成されている。フィン部20は、フィン部20の後端側の一部がケース部10の開口19からケース部10内に受け入れられるように構成されている。
【0032】
図4および図7を参照して、ジョイント部30の第1軸31と第2軸32とは交差する方向に設けられている。第1軸は上下方向(図1中矢印Y方向)に沿うように設けられている。第2軸は左右方向(図1中矢印X方向)に沿うように設けられている。ジョイント部30は、第1軸31および第2軸32の少なくとも一方が雄形である。図7に示すジョイント部30では第2軸32が雄形に形成されている。また第1軸31が雌形に形成されている。雄形とは、受け入れられる物に挿入可能に凸状に形成されていることをいう。また雌形とは、挿入物を受け入れ可能に凹状に形成されていることをいう。雌形の第1軸31の長さL1は、雄形の第2軸32の長さL2より長くなるように形成されている。
【0033】
第1軸31は円筒形状を有している。挿入穴31aはフィン部20の挿入部材26の外周面が摺動可能な直径を有している。挿入穴31aは挿入部材26が挿入可能な深さを有している。なお挿入穴31aは第1軸31を貫通するように形成されていてもよい。第1軸31の先端の一部には、フィン部20の挿入部材26を挿入穴31aに挿入しやすくするためのテーパ部分31bが設けられている。テーパ部分31bは第1軸31の上端の外周縁の一部を斜めに切欠くように形成されている。
【0034】
第2軸32は円筒形状を有している。第2軸32はケース部10の取付孔14の内周面が摺動可能な直径を有している。第2軸32の先端には、第2軸32をケース部10の取付孔14に挿入しやすくするためのテーパ部分32aが設けられている。テーパ部分32aは第2軸32の先端に向かって直径が小さくなるように形成されている。
【0035】
続いて、ベンチレータ1の組み立て方法の一例について説明する。
図4および図6を参照して、フィン部20のテーパ部分27とジョイント部30のテーパ部分31bとを摺らせて挿入部材26が挿入穴31aに挿入される。これによりフィン部20とジョイント部30とが回動可能に取り付けられる。フィン部20が取り付けられた状態のジョイント部30の第2軸32のテーパ部分32aとケース部10のテーパ部分15とを摺らせて第2軸32が取付孔14に挿入される。これによりフィン部20が取り付けられた状態のジョイント部30とケース部10とが回動可能に取り付けられる。このようにして、図8に示すように、ケース部10にフィン部20が上下方向(図8中矢印Y方向)および左右方向(図8中矢印X方向)に回動可能に取り付けられる。
【0036】
さらに、図4および図8を参照して、カバー部40がフィン部20側からケース部10に取り付けられる。カバー部40の突起部材42がケース部10の挿入枠部材17に挿入され、係止溝43が爪部材18に係止されることでカバー部40がケース部10に装着される。このようにして、図1に示すように、ベンチレータ1が組み立てられる。
【0037】
次に本発明の一実施の形態のベンチレータの動作について説明する。
図1を参照して、ケース部10の後端に、たとえば図示しない送風管が接続され、この送風管に接続された図示しない空気調和機などから送風管を通じてベンチレータ1に空気が供給される。この状態で、フィン部20を上下方向(図中矢印Y方向)および左右方向(図中矢印X方向)に回動させることにより、先端部21の吹出口22から吹き出される空気の流れの向きが上下および左右方向に調整される。
【0038】
図1および図3を参照して、吹き出される空気の流れの向きを上下方向に調整するため、フィン部20に上下方向に回動するように外部から力が加えられると、フィン部20はジョイント部30と一体的に第2軸32を中心に回動する。この際、第2軸32と取付孔14とが摺動しつつ第2軸32が回転する。これにより、フィン部20は、ケース部10に対して上下方向に回動する。つまり、図3に示すように、フィン部20に対して外部から力が加えられる前の実線で示す位置から外部から力が加えられた後の破線で示す位置にフィン部20が回動する。
【0039】
図3および図8を参照して、吹き出される空気の流れの向きを上下および左右方向に調整するため、フィン部20に上下および左右方向に回動するように外部から力が加えられると、フィン部20はジョイント部30と一体的に第1軸31が回転し、第2軸32も回転する。この際、挿入部材26と挿入穴31aとが摺動しつつ第1軸31が回転する。また、第2軸32と取付孔14とが摺動しつつ第2軸32が回転する。これにより、フィン部20は、ケース部10に対して上下および左右方向に回動する。この結果、フィン部20はケース部10に対して斜め方向に回動する。つまり、図8中部分Aで示すように、フィン部20に対して外部から力が加えられる前の実線で示す位置から外部から力が加えられた後の破線で示す位置に部分Aが回動する。
【0040】
次に本発明の一実施の形態のベンチレータの作用効果について説明する。
本発明の一実施の形態のベンチレータ1によれば、フィン部20をケース部10に対して回動可能に支持するジョイント部30が通風路5内であってケース部10の直径方向の中央に配置されているため、フィン部20およびケース部10とジョイント部30とが摺動する面積を小さくすることができる。そのため、フィン部20およびケース部10とジョイント部30との摺動する部分における摩擦抵抗を小さくすることができる。摩擦抵抗が小さいためフィン部20を回動させるために必要な力を小さくすることができる。また、この摩擦抵抗が小さいためフィン部20を回動させるためにフィン部20に外部から加えられた力のロス(損失)も小さくなる。このため、たとえばフィン部20の位置の微調整等が容易である。よって、フィン部20の操作性を良くすることができる。
【0041】
また、従来では、可動フィンを上下および左右方向に回動させる場合、支持フレームの軸孔および溝と可動フィンの軸部とが摺動し、支持フレームの外周面の一部とリテーナの内周面の一部とが摺動する。そのため、可動フィンを上下および左右方向との両方向に回動させる際、上下方向と左右方向とで摺動する部分が大きく離れているためスムーズに上下および左右方向に連動して回動させることが困難である。
【0042】
それに対して、本発明の一実施の形態のベンチレータ1にでは、フィン部20をケース部10に対して第1軸31および第2軸32まわりに回動可能に支持するジョイント部30がケース部10の直径方向の中央に配置されているため、第1軸31と第2軸32とが近くに配置されている。第1軸31と第2軸32とが近くに配置されているため、フィン部20を上下および左右方向に回動させるように外部から加えられた力が第1軸31と第2軸32の両方に連動して加わる。このため、第1軸31および第2軸32が連動して回転するため、フィン部20は上下および左右方向にスムーズに連動して回動することができる。
【0043】
また、ジョイント部30がケース部10の直径方向の中央に配置されているため、ベンチレータ1が外部から熱を加えられた場合でもジョイント部30は熱の影響を受けにくい。そのため、ジョイント部30は寸法変化による不具合を受けにくい。これにより、ジョイント部30の寸法変化による不具合によって発生するフィン部20の回動の不具合を抑制することができる。
【0044】
また、ジョイント部30がケース部10の直径方向の中央に配置されているため、ケース部10とフィン部20とがケース部10の直径方向の中央で接続される。したがって、ケース部10の外側にフィン部20と接続するため軸などが形成されない。そのため、ケース部10が大きくなることが抑制されるので、ベンチレータ1を小型化することができる。
【0045】
上記のベンチレータ1において好ましくは、ジョイント部30は、第1軸31および第2軸32の少なくとも一方が雄形である。ジョイント部30の第1軸31および第2軸32の両方が雌形の場合、第1軸31および第2軸32のうち後で取り付ける方では、ジョイント部30がケース部10とフィン部20とに囲まれているので、雌形に挿入するために雄形の間隔を広げることは困難である。したがって、雄形の間隔を広げて雌形に雄形を挿入することは困難である。それに対して、第1軸31および第2軸32の少なくとも一方が雄形の場合、第1軸31および第2軸32のうち後で取り付ける方を雄形にして、雄形を雌形に押し込むことで雌形の間隔を広げて雌形に雄形を挿入することは容易である。よって、第1軸31および第2軸32の少なくとも一方を雄形にすることで、ジョイント部とケース部またはフィン部とを容易に取り付けることができる。
【0046】
上記のベンチレータ1において好ましくは、重力方向に回動可能なケース部10またはフィン部20のいずれかの摩擦係数より、ジョイント部30のケース部10またはフィン部20との摺動部分の摩擦係数が高い。ジョイント部30の摺動部分の摩擦係数が高いため、重力方向に回動可能なケース部10またはフィン部20とジョイント部30との摩擦力により、フィン部20が回動した状態の位置を保持することができる。ケース部10、フィン部20およびジョイント部30の3つの部品でフィン部20が回動した状態の位置を保持することができるので、部品点数を少なくすることができる。
【0047】
この点について先行技術と比較してさらに説明する。従来のベンチレータでは、円筒フレームおよび可動フィンは、合成樹脂で一体成形されており同じ合成樹脂で構成されている。円筒フレームおよび可動フィンを構成する合成樹脂は、体積が大きいので生産性を考慮してコストの高い材料は使用され難い。一方、摩擦係数が高い合成樹脂の材料はコストが高い。すなわち、円筒フレームおよび可動フィンを構成する合成樹脂に摩擦係数の高い材料は使用され難いため、一般的に円筒フレームと可動フィンとの摩擦力は小さくなる。このため、円筒フレームと可動フィンとの摩擦力によって可動フィンが回動した状態の位置を保持することは困難である。
【0048】
つまり、可動フィンを回動させた場合、可動フィンの自重による回転モーメントにより可動フィンを回動させた位置から軸部を中心に回転してしまう。そのため、上記公報のベンチレータでは、可動フィンの何れかの軸部にゴム状弾性体製のブッシュが嵌め込まれている。このブッシュにより可動フィンの回動に適度な操作荷重が付与されている。すなわち、このブッシュにより可動フィンの自重では可動フィンが回動しないようにベンチレータは構成されている。しかしながら、ブッシュが必要となるので、部品点数が多くなる。
【0049】
それに対して本発明の一実施の形態のベンチレータ1では、上述のように、ケース部10、フィン部20およびジョイント部30の3つの部品でフィン部20が回動した状態の位置を保持することができるので、部品点数を少なくすることができる。
【0050】
なお、ジョイント部30がケース部10の直径方向の中央に配置されているため、ジョイント部30の体積を小さくすることができる。ジョイント部30の体積を小さくすることができるため、ジョイント部30にコストが高い材料を使用してもベンチレータ1全体に対してコストを高くする影響は少ない。よって、コストが高くても摩擦係数が高い合成樹脂の材料を使用することができる。
【0051】
上記のベンチレータ1において好ましくは、吹出口22は先端部21から見て格子状に形成されている。吹出口22が先端部21から見て格子状に形成されているため、格子状の吹出口22から吹き出される空気の指向性を向上することができる。そのため、吹出口22から吹き出される空気の向きをより正確にコントロールすることができる。
【0052】
上記のベンチレータ1において好ましくは、フィン部20の外周の一部とケース部10の先端とを連続して覆い、先端部21側に向かって開口面積が小さくなるよう形成されたカバー部40を備えている。カバー部40がフィン部20の外周の一部とケース部10の先端とを連続して覆っているため、フィン部20とケース部10との間から空気が漏れることを抑制することができる。カバー部40が先端部21側に向かって開口面積が小さくなるよう形成されているため、先端部21に設けられた吹出口22により空気を供給することができる。
【0053】
上述のベンチレータは、典型的には空気調和装置の吹出部に適用可能である。特に、車両に搭載された空気調和装置の吹出部に有用である。しかし、これ以外の任意の装置の気体の吹出部に適用可能である。
【0054】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、空気調和装置などの気体の吹出部に取り付けられ、吹き出される気体の流れの向きを調整可能なベンチレータに特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0056】
1 ベンチレータ、5 通風路、10 ケース部、11 枠部材、12 開口、13 支持部材、14 取付孔、15 テーパ部分、16 中間部材、17 挿入枠部材、18 爪部材、19 開口、20 フィン部、21 先端部、22 吹出口、23 上下壁部材、24 左右壁部材、25 軸部材、26 挿入部材、27 テーパ部分、30 ジョイント部、31 第1軸、31a 挿入穴、31b テーパ部分、32 第2軸、32a テーパ部分、40 カバー部、41 ベース部材、42 突起部材、43 係止溝、44 カバー部材、45 開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状を有し、内部に通風路の一部を規定するケース部と、
先端部に吹出口を有し、前記吹出口に繋がる前記通風路の一部を規定し、前記ケース部に一部が受け入れられた状態で前記ケース部内に装着され、前記ケース部の先端に可動に取り付けられたフィン部と、
前記通風路内であって前記ケース部の直径方向の中央に配置され、前記フィン部と接続される第1軸と、前記第1軸と交差する方向に伸びかつ前記ケース部に接続される第2軸とを有し、前記フィン部を前記ケース部に対して前記第1軸および前記第2軸まわりに回動可能に支持するジョイント部とを備えた、ベンチレータ。
【請求項2】
前記ジョイント部は、前記第1軸および前記第2軸の少なくとも一方が雄形である、請求項1に記載のベンチレータ。
【請求項3】
重力方向に回動可能な前記ケース部または前記フィン部のいずれかの摩擦係数より、前記ジョイント部の前記ケース部または前記フィン部との摺動部分の摩擦係数が高い、請求項1または2に記載のベンチレータ。
【請求項4】
前記吹出口は前記先端部から見て格子状に形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載のベンチレータ。
【請求項5】
前記フィン部の外周の一部と前記ケース部の先端とを連続して覆い、前記先端部側に向かって開口面積が小さくなるよう形成されたカバー部を備えた、請求項1〜4のいずれかに記載のベンチレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−56449(P2012−56449A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201717(P2010−201717)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000161312)宮川化成工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】