説明

ベントナイトスラリーの製造方法及び保水性セメント硬化体の製造方法

【課題】 本発明は、ベントナイトの膨潤による膨張圧がセメント硬化体に影響を与えることがなく、強度の低下が発生せず、保水時間が長く、日照による表面温度上昇を抑制することの出来るベントナイトスラリーの製造方法及びそれにより製造されたベントナイトスラリーを用いた保水性セメント硬化体の製造方法を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 予め水とナトリウム系ベントナイトを混練し、該ナトリウム系ベントナイトを膨潤させてスラリーを作成し、その作成されたスラリーはナトリウム系ベントナイトの膨潤率が該ナトリウム系ベントナイトの液性限界付近とされ、作成されたスラリーを所定時間静置させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントナイトスラリーの製造方法及びそれにより製造されたベントナイトスラリーを用いた保水性セメント硬化体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱容量の大きいコンクリートやアスファルト等の温度上昇によってヒートアイランド現象が都心部で起きている。熱容量が大きい部材は冷め難いことから熱帯夜になり易い傾向にある。このようなことから、保水性部材に注目が集まっており、保水性部材に含有される水分が蒸発する際の気化熱により周囲を冷却することが出来、ヒートアイランド現象の改善に寄与することが出来るものである。また、保水性部材の温度低減効果の持続時間の増加が望まれている。
【0003】
保水性部材の製造方法としては、特開2002−307425号公報(特許文献1)に記載された裏込めグラウト材の製造方法では、ベントナイト等の水膨潤性物質と水とを混合・攪拌した後に、所定時間静置して水膨潤性物質を十分に膨潤・分散させることが記載され、特開平07−101765号公報(特許文献2)に記載された水硬性材料では、ベントナイト等の膨潤物質を膨潤状態で分散させたことが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−307425号公報
【特許文献2】特開平07−101765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の特許文献1、2の技術では、ベントナイトの膨潤による膨張圧がセメント硬化体に影響を与えるため強度の低下が発生するという問題があった。
【0006】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、ベントナイトの膨潤による膨張圧がセメント硬化体に影響を与えることがなく、強度の低下が発生せず、保水時間が長く、日照による表面温度上昇を抑制することの出来るベントナイトスラリーの製造方法及びそれにより製造されたベントナイトスラリーを用いた保水性セメント硬化体の製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法の第1の構成は、予め水とベントナイトを混練し、該ベントナイトを膨潤させてスラリーを作成し、その作成されたスラリーは前記ベントナイトの膨潤率が該ベントナイトの液性限界付近とされ、前記作成されたスラリーを所定時間静置させたことを特徴とする。例えば作成されたスラリーを24時間程度静置させれば好ましい。
【0008】
ベントナイトはナトリウム系ベントナイトを採用することが好ましい。カルシウム系ベントナイトを用いると性能が著しく低下するものの、カルシウム系ベントナイトに保水性能を付加することも出来る。
【0009】
また、本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法の第2の構成は、前記第1の構成において、前記作成されたスラリーは前記ベントナイトの膨潤率が該ベントナイトの液性限界±100重量%の範囲としたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法の第3の構成は、前記第1の構成において、前記作成されたスラリーに予め多孔質材料や繊維質材料を混練することを特徴とする。多孔質材料としては珪藻土が好ましい。
【0011】
また、本発明に係る保水性セメント硬化体の製造方法の第1の構成は、前記第1〜第3のベントナイトスラリーの製造方法により製造されたベントナイトスラリーと、モルタルまたはコンクリートとを混練して硬化させたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る保水性セメント硬化体の製造方法の第2の構成は、前記第1の保水性セメント硬化体の製造方法において、前記ベントナイトスラリーの混入率は、5体積%以上、且つ30体積%以下としたことを特徴とする。より好ましいベントナイトスラリーの混入率は、10体積%以上、且つ20体積%以下である。
【0013】
また、本発明に係る保水性セメント硬化体の製造方法の第3の構成は、前記第1の保水性セメント硬化体の製造方法において、前記モルタルまたはコンクリートに予め繊維質材料を混練したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法の第1の構成によれば、予め水とベントナイトを混練し、該ベントナイトを膨潤させてスラリーを作成することで、セメントより生じるカルシウムイオンの影響を受けずにベントナイトが膨潤することが出来、水とベントナイトを混練した後、24時間程度静置することでベントナイトを均一に膨潤させることが出来る。
【0015】
また、ベントナイトの膨潤率を、該ベントナイトの液性限界付近とすることで、ベントナイトの膨潤による膨張圧をセメント硬化体に与えることがなく、スラリーとモルタルまたはコンクリート間での水の移動を最小限に抑え、セメント硬化体の強度発現への影響を抑制することが出来る。
【0016】
また、本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法の第2の構成によれば、作成されたスラリーは前記ベントナイトの膨潤率が該ベントナイトの液性限界±100重量%の範囲とすることで、ベントナイトの膨潤による膨張圧を効果的に調整し、スラリーとモルタルまたはコンクリート間での水の移動を効果的に抑えることが出来る。
【0017】
また、本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法の第3の構成によれば、作成されたスラリーに予め多孔質材料や繊維質材料を混練することで、多孔質材料や繊維質材料の空隙をセメント硬化体により閉塞することがなく、その空隙にベントナイトスラリーを包含させて保水効果をより向上することが出来る。多孔質材料としては珪藻土が好ましい。
【0018】
また、本発明に係る保水性セメント硬化体の製造方法の第1の構成によれば、予め別々に混練したベントナイトスラリーとモルタルまたはコンクリートとを混練することにより保水性セメント硬化体を製造出来る。
【0019】
また、本発明に係る保水性セメント硬化体の製造方法の第2の構成によれば、ベントナイトスラリーの混入率を、5体積%以上、且つ30体積%以下とすることで乾燥収縮ひび割れを効果的に抑制することが出来、ベントナイトスラリーの混入率を、10体積%以上、且つ20体積%以下とすれば乾燥収縮ひび割れをより効果的に抑制することが出来る。
【0020】
また、本発明に係る保水性セメント硬化体の製造方法の第3の構成によれば、水、セメント、砂、砂利等により作成されるモルタルまたはコンクリートに予め繊維質材料を混練することで、スラリーの乾燥に伴う乾燥収縮ひび割れを抑制することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図により本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法及びそれにより製造されたベントナイトスラリーを用いた保水性セメント硬化体の製造方法の一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法により製造されたベントナイトスラリーを用いて製造された保水性セメント硬化体の温度低減効果を説明する図、図2は本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法により製造されたベントナイトスラリーを用いて製造された保水性セメント硬化体の30分毎に発生した蒸発量変化を説明する図、図3は本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法により製造されたベントナイトスラリーを用いて製造された保水性セメント硬化体の重量変化を説明する図である。
【0022】
本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法としては、先ず、予め水とナトリウム系ベントナイトとを混練し、該ナトリウム系ベントナイトを膨潤させてスラリーを作成する。
【0023】
ここで、ベントナイトとは海底・湖底に堆積した火山灰や溶岩が変質することで出来上がった粘土鉱物の一種であり、その成分構成としてはモンモリロナイトという鉱物を主成分とし、他に石英や雲母、長石、ゼオライト等の鉱物を含んでいる。
【0024】
ベントナイトは膨潤性、増粘性、粘結性、吸水性、吸着性、懸濁安定性、陽イオン交換性、チクソトロピー性(かき混ぜることによって固体(半固体)から液体に変化する性質)に優れ、熱的安定性に優れている。分子構造的には約400℃まで安定で常温での性能劣化はない。ナトリウム系ベントナイトは特に膨潤性・増粘性・懸濁安定性に優れている。
【0025】
また、ベントナイトは完全無機鉱物なので、それ自体が腐敗することはなく、土壌環境基準や日本薬局方などの基準に合致しており、人体にも環境にも優しい材料であることが知られている。
【0026】
作成されたスラリーはナトリウム系ベントナイトの膨潤率が該ナトリウム系ベントナイトの液性限界付近とされ、特に作成されたスラリーはナトリウム系ベントナイトの膨潤率が該ナトリウム系ベントナイトの液性限界±100重量%の範囲とすれば好ましい。
【0027】
ここで、液性限界とは、土がどろどろの液状態になる限界の含水比をいい、土木分野のJISに、「土の液性限界試験」と言うものがある。(JISA1205)これは、その土を軽く衝動させたとき、流れ始める状態の水分比を言うものである。この試験方法がベントナイトの特性試験に利用されている。即ち、一定の条件のもとで、そのベントナイトがどの程度の水を含んだときに、流動化するかを試験するものである。ナトリウム系のベントナイトは、450重量%〜650重量%、すなわち、ベントナイト自重の4.5倍〜6.5倍の水で流動化するものが多いが、カルシウム系ベントナイトは、殆どが200重量%以下、即ち、ベントナイト自重の2倍以下で流動化する。
【0028】
例えば、水を混練した場合のナトリウム系のベントナイトの液性限界は450重量%〜650重量%であることから、作成されたスラリーはナトリウム系ベントナイトの膨潤率が350重量%〜750重量%である。
【0029】
ベントナイトスラリーの水ベントナイト重量%が、液性限界−100重量%よりも小さい場合には、硬化後に雨水等により供給される水により更に膨潤し、モルタルまたはコンクリートに膨張圧を加え、最悪の場合にはひび割れを生じさせる原因となる。
【0030】
また、ベントナイトスラリーの水ベントナイト重量%が、液性限界+100重量%よりも大きい場合には、モルタルまたはコンクリートと混練する際に、ベントナイトスラリーより遊離した水により、モルタルまたはコンクリートの水セメント重量%を増加させ、強度および耐久性を低下させてしまう。
【0031】
次に、作成されたスラリーを所定時間静置させる。特に24時間程度静置させれば好ましい。そして、作成されたスラリーに予め多孔質材料や繊維質材料を混練することが好ましい。
【0032】
上記のベントナイトスラリーの製造方法により製造されたベントナイトスラリーと、まだ硬化していないモルタルまたはコンクリートとを混練して硬化させて保水性セメント硬化体を製造することが出来る。硬化はセメントの水和反応による。
【0033】
保水性セメント硬化体の製造方法において、ベントナイトスラリーの混入率は、5体積%以上、且つ30体積%以下とすることが出来、より好ましいベントナイトスラリーの混入率は、10体積%以上、且つ20体積%以下である。
【0034】
ベントナイトスラリーの混入率が5体積%よりも小さい場合には、気化熱発生による表面温度低減効果が確認出来ず、30体積%よりも大きい場合には、乾燥によるベントナイトスラリーの体積変化が、乾燥収縮ひび割れの原因となる。
【0035】
また、表面温度の低減効果を十分に得るためには、ベントナイトスラリーの混入率を10体積%以上とすることが好ましく、乾燥収縮ひび割れを十分抑制するためには20体積%以下とすることが好ましい。
【0036】
また、保水性セメント硬化体の製造方法において、モルタルまたはコンクリートに予め繊維質材料を混練すれば好ましい。
【0037】
図1〜図3に示す保水性セメント硬化体の温度低減効果実験は、以下の表1に示す配合表にしたがって、縦100mm、横100mm、高さ50mmの保水性セメント硬化体を製造したものである。比較例1はベントナイトスラリーの混入量を0体積%(即ちベントナイトスラリーを混入しないもの)とし、実施例1はベントナイトスラリーの混入量を17体積%とし、実施例2はベントナイトスラリーと、多孔質材料である珪藻土との合計の混入量を17体積%とし、更に比較例1、実施例1、2にそれぞれ水216g、セメント540g、砂1619g、繊維質材料としてポリプロピレン3gを混練したものである。このとき、実施例1、2のベントナイトスラリー量はそれぞれ225g、294gである。実施例1、2のナトリウム系ベントナイトの膨潤率は600重量%とし、実施例2の多孔質材料である珪藻土は20重量%としている。
【0038】
【表1】

【0039】
先ず、予め水とナトリウム系ベントナイトをホバートミキサーで混練し、該ナトリウム系ベントナイトを膨潤させてスラリーを作成する。尚、実施例2では更に多孔質材料である珪藻土を混練してスラリーを作成する。作成したナトリウム系ベントナイトスラリーを24時間静置させたのち、該ナトリウム系ベントナイトスラリーと、セメントと、砂を混練して保水性セメント硬化体を作成し、7日間気中養生により硬化させた後、1日間吸水させ、その後30分間表面に残っている水を乾燥して保水性セメント硬化体に保水させる。
【0040】
試験方法は、「保水性舗装ブロック品質規格検討委員会」が作成した「保水性舗装用コンクリート品質規格」に準拠して、断熱材となる厚さ50mmの発泡スチロール製型枠内に上述した如く製造した保水性セメント硬化体を打設し、該保水性セメント硬化体に対して照明器具を用いた室内熱照射実験を行い、該保水性セメント硬化体の表裏面に接触型温度計を接触して該保水性セメント硬化体の表裏面の温度変化を測定すると共に、はかりにより該保水性セメント硬化体の重量変化を測定したものである。尚、保水性セメント硬化体の表面側の接触型温度計はアルミテープで固定した。
【0041】
照明器具としては、白熱電球でビーム角度30度の散光型ビームランプ(BRF 110V 150W)を使用した。また、保水性セメント硬化体の裏面側に埋設される接触型温度計の埋設部にはワセリンを厚塗りする。照明器具と、保水性セメント硬化体の表面との間の離間間隔は100mmに設定している。
【0042】
そして、照明器具により45時間熱照射し、熱照射終了後は保水性セメント硬化体の温度が室温と同温になる程度まで16時間半程度、温度測定と重量測定を続けた。
【0043】
図1は本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法により製造されたベントナイトスラリーを用いて製造された保水性セメント硬化体の温度低減効果を説明する図であり、縦軸が温度(℃)、横軸が時間である。
【0044】
図1に示すように、ベントナイトスラリーの混入量を17体積%とした実施例1では、比較例1が62.9℃の最大温度となった同時間で55.7℃を維持しており、全体的に低い温度で推移することが分かる。これは保水した水が蒸発して気化熱、潜熱が発生し、表面温度を低下させていることが分かる。ベントナイトスラリーと、多孔質材料である珪藻土との合計の混入量を17体積%とした実施例2についても比較例1と比較して低い温度で推移することが示される。尚、比較例1は一旦水に浸したもので実験を行った。
【0045】
図2は本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法により製造されたベントナイトスラリーを用いて製造された保水性セメント硬化体の30分毎に発生した蒸発量変化を説明する図であり、縦軸が30分毎の蒸発量(g)、横軸が時間である。ベントナイトスラリーと、多孔質材料である珪藻土との合計の混入量を17体積%とした実施例2では多孔質材料により水の出入り口が多いため早い段階で水が蒸発して重量変化が著しい。ベントナイトスラリーの混入量を17体積%とした実施例1では長時間にわたって安定して水が蒸発した重量変化が見られる。また、照明器具による熱照射を終了した後も水の蒸発が持続し、重量変化が見られる。
【0046】
図3は本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法により製造されたベントナイトスラリーを用いて製造された保水性セメント硬化体の重量変化率を説明する図であり、縦軸が重量変化量(g)、横軸が時間である。図3に示す重量変化率から、ベントナイトスラリーを混入しない比較例1では、熱照射の終了時点で32.7g減少した。また、ベントナイトスラリーの混入量を17体積%とした実施例1では、熱照射の終了時点で37.8g減少した。また、ベントナイトスラリーと、多孔質材料である珪藻土との合計の混入量を17体積%とした実施例2では、熱照射の終了時点で42.5g減少した。
【0047】
また、比較例1と、実施例1、2とのそれぞれの温度差は、ベントナイトスラリーと、多孔質材料である珪藻土との合計の混入量を17体積%とした実施例2では5.1℃であるのに対して、ベントナイトスラリーの混入量を17体積%とした実施例1では9.8℃となった。この結果から、ベントナイトスラリーの混入量を17体積%とした実施例1による温度低減効果が最も大きいことが分かる。ベントナイトスラリーを混入した実施例1、2では、照明器具による熱照射を終了した後も保水性セメント硬化体の重量は減少し続けており、熱源が無くても保水性セメント硬化体と気温との温度差で潜熱を発生していることが分かる。即ち、熱源のない夜間においても、気温との温度差により潜熱を発生し、表面温度を下げ、熱帯夜抑制に効果があるものと考えられる。
【0048】
上記構成によれば、予め水とナトリウム系ベントナイトを混練し、該ナトリウム系ベントナイトを膨潤させてスラリーを作成することで、セメントより生じるカルシウムイオンの影響を受けずにナトリウム系ベントナイトが膨潤することが出来、水とナトリウム系ベントナイトを混練した後、24時間程度静置することでナトリウム系ベントナイトを均一に膨潤させることが出来る。
【0049】
また、ナトリウム系ベントナイトの膨潤率を、該ナトリウム系ベントナイトの液性限界付近とすることで、ナトリウム系ベントナイトの膨潤による膨張圧をセメント硬化体に与えることがなく、スラリーとモルタルまたはコンクリート間での水の移動を最小限に抑え、セメント硬化体の強度発現への影響を抑制することが出来る。
【0050】
また、作成されたスラリーはナトリウム系ベントナイトの膨潤率が該ナトリウム系ベントナイトの液性限界±100重量%の範囲とすることで、ナトリウム系ベントナイトの膨潤による膨張圧を効果的に調整し、スラリーとモルタルまたはコンクリート間での水の移動を効果的に抑えることが出来る。
【0051】
また、作成されたスラリーに予め多孔質材料や繊維質材料を混練することで、多孔質材料や繊維質材料の空隙をセメント硬化体により閉塞することがなく、その空隙にベントナイトスラリーを包含させて保水効果をより向上することが出来る。
【0052】
また、予め別々に混練したベントナイトスラリーとモルタルまたはコンクリートとを混練することにより保水性セメント硬化体を製造出来る。
【0053】
また、ベントナイトスラリーの混入率を、5体積%以上、且つ30体積%以下とすることで乾燥収縮ひび割れを効果的に抑制することが出来、ベントナイトスラリーの混入率を、10体積%以上、且つ20体積%以下とすれば乾燥収縮ひび割れをより効果的に抑制することが出来る。
【0054】
また、水、セメント、砂、砂利等により作成されるモルタルまたはコンクリートに予め繊維質材料を混練することで、スラリーの乾燥に伴う乾燥収縮ひび割れを抑制することが出来る。
【0055】
上記の如く製造された保水性セメント硬化体を道路舗装部材や建物や構造体の外壁部材等に適用することで、雨水を利用して保水性セメント硬化体内に含水させることが出来、該保水性セメント硬化体内に含有される水分が蒸発する際の気化熱により周囲を冷却することが出来、含水と蒸発を繰り返してヒートアイランド現象の改善に寄与することが出来るものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の活用例として、ベントナイトスラリーの製造方法及びそれにより製造されたベントナイトスラリーを用いた保水性セメント硬化体の製造方法に適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法により製造されたベントナイトスラリーを用いて製造された保水性セメント硬化体の温度低減効果を説明する図である。
【図2】本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法により製造されたベントナイトスラリーを用いて製造された保水性セメント硬化体の30分毎に発生した蒸発量変化を説明する図である。
【図3】本発明に係るベントナイトスラリーの製造方法により製造されたベントナイトスラリーを用いて製造された保水性セメント硬化体の重量変化を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め水とベントナイトを混練し、該ベントナイトを膨潤させてスラリーを作成し、その作成されたスラリーは前記ベントナイトの膨潤率が該ベントナイトの液性限界付近とされ、
前記作成されたスラリーを所定時間静置させたことを特徴とするベントナイトスラリーの製造方法。
【請求項2】
前記作成されたスラリーは前記ベントナイトの膨潤率が該ベントナイトの液性限界±100重量%の範囲としたことを特徴とする請求項1に記載のベントナイトスラリーの製造方法。
【請求項3】
前記作成されたスラリーに予め多孔質材料や繊維質材料を混練することを特徴とする請求項1に記載のベントナイトスラリーの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法により製造されたベントナイトスラリーと、モルタルまたはコンクリートとを混練して硬化させたことを特徴とする保水性セメント硬化体の製造方法。
【請求項5】
前記ベントナイトスラリーの混入率は、5体積%以上、且つ30体積%以下としたことを特徴とする請求項4に記載の保水性セメント硬化体の製造方法。
【請求項6】
前記モルタルまたはコンクリートに予め繊維質材料を混練したことを特徴とする請求項4に記載の保水性セメント硬化体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−23274(P2009−23274A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190312(P2007−190312)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(591013894)東京セメント工業株式会社 (5)
【出願人】(595069941)株式会社ボルクレイ・ジャパン (2)
【Fターム(参考)】