説明

ベータ−ラクタム化合物の調製方法

本発明は、核と、側鎖エステルの形態のD−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンからなる群から選択される側鎖と、側鎖エステルと核の共役を触媒する酵素とから半合成β−ラクタム化合物を合成する方法において、その側鎖エステルを固体中間体として単離しないことを特徴とする方法を述べる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、アシル化剤を用いた親アミノβ−ラクタムの酵素によるアシル化によって半合成β−ラクタム化合物を調製するための方法に関する。
【0002】
アミドまたはエステルなどの側鎖酸誘導体を用いた親アミノβ−ラクタム部分のアシル化による半合成β−ラクタム抗体の酵素による生成については、特許文献、例えば欧州特許出願公開第A−339751号明細書、欧州特許出願公開第A−473008号明細書、国際公開第92/01061号パンフレット、国際公開第93/12250号パンフレット、国際公開第96/02663号パンフレット、国際公開第96/05318号パンフレット、国際公開第96/23796号パンフレット、国際公開第97/04086号パンフレット、国際公開第98/56946号パンフレット、国際公開第99/20786号パンフレット、国際公開第2005/00367号パンフレット、国際公開第2006/069984号パンフレット、米国特許第3,816,253号明細書、独国特許文書(German patent documents)第2163792号および第2621618号中に広く記載されている。当該技術分野において使用される酵素は、ほとんどの場合、大腸菌(Escherichia coli)から得られるペニシリンアシラーゼであり、水に不溶の様々な種類の材料上に固定化される(例えば、国際公開第97/04086号パンフレット)。
【0003】
これら従来技術の方法の主な不利点は、その側鎖エステルを精製して、例えばエステル中の遊離側鎖の量を減らすために、側鎖エステルを固体の形態で単離しなければならないことである。特にD−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンなどの疎水性側鎖がより多い場合、後続の酵素共役反応における遊離側鎖の存在は、その酵素共役反応の収率に強いマイナスの効果を及ぼすことが分っている。これは、酵素共役反応の条件下での遊離側鎖の低可溶性が原因であり、酵素共役反応中の遊離側鎖の濃度に上限が生ずるという事実によるものと考えられる。沈殿物は酵素共役反応のプロセス可能性に悪影響を与えるので、この限界値は、遊離側鎖が結晶化または沈殿してはならないという必要条件によって決まる。さらに半合成β−ラクタム化合物の下流での加工の最終ステップにおいて、この汚染性遊離側鎖は、例えば半合成β−ラクタム化合物の最終の結晶化のステップの母液により除去されなければならない。より高レベルの遊離側鎖では遊離側鎖を除去するためにより多量の母液が必要とされ、それは順に半合成β−ラクタム化合物のより高い損失の原因になる。固体の形態の側鎖エステルの単離をもたらす単位操作は、半合成抗生物質の生産工程を複雑にし、またその原価に著しく影響を与える。
【0004】
したがって、エステル化反応の間に形成される側鎖エステルを、固体の形態で単離することなくその後の酵素共役反応において使用することができる生産工程に対する緊急性が存在する。
【0005】
国際公開第98/04732号パンフレットは、実施例1、3、および4において、7−PACA、7−ADCA、および6−APAからの、D−4−ヒドロキシ−フェニルグリシンの2−ヒドロキシエチルエステルを含む、それぞれセフプロジル、セファドロキシル、およびアモキシシリンを合成し、その合成後のエステルを、その中で固体の形態に単離する後続の酵素共役反応に直接に加えることを開示している。D−4−ヒドロキシ−フェニルグリシンは、酵素共役反応の条件下できわめてすぐれた可溶性を有し、したがってD−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンの場合に遭遇するような酵素共役反応の間の問題を生じない。これらの沈殿を避けるためには、それらの溶解度が低いことから、それらをきわめて低濃度でのみ存在させるとよい。
【0006】
本発明の目的は、アンピシリン、セファレキシン、セファクロール、およびセファラジンなどの、D−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンのβ−ラクタム誘導体の生産方法を提供することであり、この方法において側鎖エステルの合成は高収率を特徴とし、かつ得られる側鎖エステルは低濃度の遊離側鎖のみを含有し、またこの方法においてはその側鎖エステルを精製するための固体の形態の側鎖エステルの単離は省略される。
【0007】
本明細書中では「核」は、半合成β−ラクタムのβ−ラクタム部分として定義され、任意のペネムまたはセフェム、例えば6−アミノペニシラン酸(6−APA)、7−アミノデアセトキシ−セファロスポラン酸(7−ADCA)、7−アミノセファロスポラン酸(7−ACA)、または7−アミノ−3−クロロ−3−セフェム−4−カルボン酸(7−ACCA)であることができる。
【0008】
本明細書中では「側鎖」は、半合成β−ラクタム化合物中で、本明細書中で定義される核中の6−アミノ位または7−アミノ位に付着している部分、例えばアンピシリン、セファレキシン、セファクロール中のD−フェニルグリシン、またはセファラジン中のD−ジヒドロ−フェニルグリシンとして定義される。
【0009】
「遊離側鎖」は、側鎖、例えばD−フェニルグリシンまたはD−ジヒドロ−フェニルグリシンの誘導体化されていない形態である。
【0010】
「側鎖エステル」は、その遊離側鎖のカルボキシル基がアルコールとエステル結合している遊離側鎖のエステル形態、例えばD−フェニルグリシンメチルエステルまたはD−ジヒドロ−フェニルグリシンメチルエステルである。側鎖エステルは、遊離塩基の形態、または塩としての、例えばHCl塩としての形態であることができ、また側鎖エステルは、固体の形態であっても、また適切な溶媒中に溶解していてもよい。
【0011】
本明細書中では「比」は、
【数1】


(ただし量はモルの単位で表わされる)として定義される。
【0012】
一態様において本発明は、核と、側鎖エステルの形態のD−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンからなる群から選択される側鎖と、核と側鎖エステルの共役を触媒する酵素とから半合成β−ラクタム化合物を合成するための方法を提供し、この方法は側鎖エステルを固体中間体として単離しないことを特徴とする。この方法は、例えば、
a)D−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンからなる群から選択される遊離側鎖をアルコールで転化して対応する側鎖エステルを含む混合物を形成するステップであって、このステップにおける側鎖エステルの形成が、好ましくはさきに定義した「比」によって表わされる転化率を有する混合物をもたらし、その比が好ましくは≧85%、より好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%、より好ましくは≧96%、より好ましくは≧97%、より好ましくは≧98%、最も好ましくは≧99%であるステップと、
b)ステップa)において形成される側鎖エステルを固体中間体として単離しないという条件で、ステップa)で得られた混合物を、核、および半合成β−ラクタム化合物を形成するための酵素と混合することによってその半合成β−ラクタム化合物を形成するステップと
を含むことができる。
【0013】
本発明の方法において使用され、本明細書中でさきに定義した核は、6−アミノペニシラン酸(6−APA)、7−アミノ−デアセトキシ−セファロ−スポラン酸(7−ADCA)、7−アミノセファロスポラン酸(7−ACA)、および7−アミノ−3−クロロ−3−セフェム−4−カルボン酸(7−ACCA)からなる群から選択されて、それぞれ半合成ペニシリン類(6−APAの誘導体)および半合成セファロスポリン類(7−ADCA、7−ACA、および7−ACCAの誘導体)を与えることができる。本発明の好ましい実施形態は、アンピシリン、セファレキシン、セファラジン、セファクロールからなる群から選択される半合成β−ラクタム化合物の調製方法である。
【0014】
本発明の方法の転化のステップ(ステップ(a))では、D−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンからなる群から選択される遊離側鎖は、アルコールで転化されて、対応する側鎖エステルを含む混合物を形成する。本発明の方法に使用されるアルコールはメタノールおよびエタノールからなる群から選択することができ、それによってその側鎖のそれぞれメチルエステルおよびエチルエステルを形成する。最も好ましいアルコールはメタノールである。ステップ(a)は、幾つかの方法で行うことができる。
【0015】
転化のステップ(a)の一実施形態は、D−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンからなる群から選択される遊離側鎖と、形成される所望のエステルに基づいて選択されるアルコール、例えばメチルエステルを得るためのメタノールまたはエチルエステルを得るためのエタノールと、硫酸などの強酸とを含む混合物を、20から120℃の間、より好ましくは40から100℃の間の温度で還流下で加熱することを含む。アルコールとしてメタノールを使用する場合、温度は好ましくは60から80℃の間である。アルコールとしてエタノールを使用する場合、温度は好ましくは65から100℃の間である。適切な条件は、欧州特許出願公開第A−0544205号明細書中に開示されている比較例1および2中に見出すことができる。
【0016】
転化のステップ(a)の別の実施形態は以前の実施形態の改良点を含み、反応混合物に液体または気体としてアルコールを加える一方で、アルコールおよび反応由来の水を蒸留して取り除くことを含む(例えば、欧州特許出願公開第A−0544205号明細書に記載されている)。
【0017】
転化のステップ(a)の、側鎖のメチルエステルを含む混合物をもたらす高度に好ましい実施形態は、
1.D−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンからなる群から選択される遊離側鎖と、メタノールと、硫酸などの強酸とを含む反応混合物を、例えば0.5から5時間の、好ましくは1時間から3時間の、より好ましくは1.5から2.5時間の或る一定時間のあいだ、20から120℃の間、より好ましくは20から100℃の間、より好ましくは40から100℃の間、最も好ましくは60から80℃の間の温度で還流するステップ、続いて
2.この混合物を、40から100℃の間、好ましくは60から90℃の間、より好ましくは70から80℃の間の温度で濃縮するステップ。このステップの間の圧力は、最初は大気圧であることができ、濃縮のステップの間に、好ましくは50ミリバール以下、より好ましくは40ミリバール以下、好ましくは30ミリバール以下、最も好ましくは20ミリバール以下まで減圧することができる。濃縮のステップは、その濃縮のステップの前に存在した水の30%超が除去される、好ましくは水の40%超が除去される、好ましくは水の50%超が除去される、好ましくは水の70%超が除去される、好ましくは水の80%超が除去される、最も好ましくは水の90%超が除去されるまで続けられる。
3.メタノール、好ましくは濃縮のステップの前の反応混合物の初期体積を得るための量、または反応混合物の初期体積未満の量、例えば、反応混合物の初期体積の≦90%、または≦80%、または≦70%、または≦60%、または≦50%、または≦40%、または≦30%、または≦20%の量を加えるステップ。この加えられるメタノールの量はまた、反応混合物の初期体積を超えてもよい。
4.任意選択でステップ1〜3を1回または複数回、好ましくは少なくとも1回、好ましくは2回、より好ましくは3回、より好ましくは4回、より好ましくは5回、より好ましくは6回、より好ましくは7回、より好ましくは8回、より好ましくは9回、より好ましくは10回繰り返すステップ。これらのステップを繰り返すことによって、本明細書中でさきに定義したメチルエステルの形成の「比」が著しく増加することが分かった。例えば、ステップ(a)〜(c)を1回だけしか行わなかった後では75〜85%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を1回繰り返した後には85〜95%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を2回繰り返した後には95〜97%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を3回繰り返した後には97〜98%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を4回繰り返した後には98〜99%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を5回繰り返した後には99〜99.5%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を6回以上繰り返した後には99.5%を超える「比」を得ることができる。
【0018】
転化のステップ(a)の、側鎖のエチルエステルを含む混合物をもたらす別の高度に好ましい実施形態は、
1.D−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンからなる群から選択される遊離側鎖と、エタノールと、硫酸などの強酸とを含む反応混合物を、例えば0.5から5時間の、好ましくは1時間から3時間の、より好ましくは1.5から2.5時間の或る一定時間のあいだ、20から120℃の間、より好ましくは20から100℃の間、より好ましくは40から100℃の間、最も好ましくは65から100℃の間の温度で還流するステップ、続いて
2.この混合物を、40から100℃の間、好ましくは60から90℃の間、より好ましくは70から80℃の間の温度で濃縮するステップ。このステップの間の圧力は、最初は大気圧であることができ、濃縮のステップの間に、好ましくは50ミリバール以下、より好ましくは40ミリバール以下、好ましくは30ミリバール以下、最も好ましくは20ミリバール以下まで減圧することができる。濃縮のステップは、その濃縮のステップの前に存在した水の30%超が除去される、好ましくは水の40%超が除去される、好ましくは水の50%超が除去される、好ましくは水の70%超が除去される、好ましくは水の80%超が除去される、最も好ましくは水の90%超が除去されるまで続けられる。
3.エタノール、好ましくは濃縮のステップの前の反応混合物の初期体積を得るための量、または反応混合物の初期体積未満の量、例えば反応混合物の初期体積の≦90%、または≦80%、または≦70%、または≦60%、または≦50%、または≦40%、または≦30%、または≦20%の量を加えるステップ。この加えられるエタノールの量はまた、反応混合物の初期体積を超えてもよい。
4.任意選択で、ステップ1〜3を1回または複数回、好ましくは少なくとも1回、好ましくは2回、より好ましくは3回、より好ましくは4回、より好ましくは5回、より好ましくは6回、より好ましくは7回、より好ましくは8回、より好ましくは9回、より好ましくは10回繰り返すステップ。これらのステップを繰り返すことによって、本明細書中でさきに定義したエチルエステルの形成の「比」が著しく増加することが分かった。例えば、ステップ(a)〜(c)を1回だけしか行わなかった後では75〜85%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を1回繰り返した後には85〜95%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を2回繰り返した後には95〜97%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を3回繰り返した後には97〜98%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を4回繰り返した後には98〜99%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を5回繰り返した後には99〜99.5%の間の「比」を得ることができ、ステップ(a)〜(c)を6回以上繰り返した後には99.5%を超える「比」を得ることができる。
【0019】
ステップ(a)のすべての実施形態において、好ましくは3から25の間、より好ましくは5から25の間、最も好ましくは6から10の間のアルコール対遊離側鎖のモル比が用いられる。また、ステップ(a)のすべての実施形態において、好ましくは0.9から10の間、より好ましくは1から5の間、最も好ましくは2から3の間の強酸(単位は当量、例えば塩酸の1モルは1当量であり、硫酸の1モルは2当量である)対遊離側鎖のモル比が用いられる。当業者は、選択される側鎖およびアルコールに応じて必要以上の実験なしに反応条件を最適化することが可能なはずである。
【0020】
ステップ(b)において半合成β−ラクタム化合物の形成に先立って、ステップ(a)で得られた混合物を精製して、本明細書中でさきに定義した高い「比」を有する混合物を得ることができる。本発明の方法のステップ(b)で使用されることになる混合物の比は、好ましくは≧85%、より好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%、より好ましくは≧96%、より好ましくは≧97%、より好ましくは≧98%、最も好ましくは≧99%である。
【0021】
精製のステップの一実施形態は、側鎖エステルからの遊離側鎖の沈殿および除去を伴う。これは、ステップ(a)で得られた混合物のpHをNaOH、アンモニア、KOHなどの適切な塩基を加えることによって2から6.5の間、好ましくは2.5から5の間、最も好ましくは3から4の間の値に調整することによって達成することができる。別の実施形態ではステップ(a)で得られた反応混合物を、適切な量の水に、またはアルコールに、または水とアルコールの混合物に加え、続いてpHをNaOH、アンモニア、KOHなどの適切な塩基を加えることによって2から6.5の間、好ましくは2.5から5の間、最も好ましくは3から4の間の値に調整することができる。pHを所望の値に調整した後に、適切な塩基を加えることによってpHをその所望の値に保つことができる。これらの条件下で遊離側鎖を含む沈殿物を形成することができる。適切な時間の後、既知の手法を用いて沈殿物を濾過して取り除くことができる。その濾液は側鎖エステルを含む。本発明の方法のステップ(b)に直接に使用するために濾液のpHを、1から6の間、好ましくは1から4の間、最も好ましくは1.5から3の間のpHにした後に、既知の手法を用いて蒸発によりアルコールを除去する。
【0022】
精製のステップの別の実施形態は、側鎖エステル誘導体および少量の遊離側鎖を含有する有機相と、遊離側鎖を含有する水相と、場合によっては塩とを含む二相または多相系の形成を伴う。これは、ステップ(a)で得られた混合物のpHをNaOH、アンモニア、KOHなどの適切な塩基を加えることにより7.5から10の間、好ましくは8.5から9.5の間、最も好ましくは8.8から9.2の間の値に調整することによって達成することができる。別の実施形態ではステップ(a)で得られた反応混合物を、適切な量の水、またはアルコール、または水とアルコールの混合物に加え、続いてpHをNaOH、アンモニア、KOHなどの適切な塩基を加えることにより7.5から10の間、好ましくは8.5から9.5の間、最も好ましくは8.8から9.2の間の値に調整することができる。pHを所望の値に調整した後に、適切な塩基を加えることによってpHをその所望の値に保つことができる。任意選択で水は、塩(例えばNaCl)の水溶液の形態であることもできる。遊離側鎖もまた、沈殿物を形成することができる。多相系中の様々な相は、既知の手法を用いて分離することができる。任意選択で有機相は、水または塩水溶液で洗浄することができる。収率の減損を避けるために、洗液の水相を適切なプロセスの流れに再利用することができる。このプロセスの流れは、ステップ(a)後または上記pH調整後に得られる反応混合物であることができる。
【0023】
精製のステップの高度に好ましい実施形態は、さきの2つの実施形態を組み合わせる、すなわち先ずステップ(a)で得られた混合物のpHを2から6.5の間、好ましくは2.5から5の間、最も好ましくは3から4の間の値に調整し、形成される沈殿物を濾過して除き、次いで得られた濾液のpHを7.5から10の間、好ましくは8.5から9.5の間、最も好ましくは8.8から9.2の間の値に調整し、得られた多相系中の様々な相を既知の手法を用いて分離する。
【0024】
意外にも、多相系がpH7.5から10の間、好ましくは8.5から9.5の間、最も好ましくは8.8から9.2の間で形成されるさきの2つの実施形態は、遊離塩基の形態の好ましくはD−フェニルグリシン−メチルエステル、D−フェニルグリシン−エチルエステル、D−ジヒドロ−フェニルグリシン−メチルエステル、およびD−ジヒドロ−フェニルグリシン−エチルエステルからなる群から選択されるエステルであって、下記の特性、すなわち
・好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、好ましくは96%以上、好ましくは97%以上、好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上のe.e.(鏡像異性体過剰率)と、
・エステルのモル数に対する塩のモル数として表わされる、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、より好ましくは2モル%以下、最も好ましくは1モル%以下の塩含有量と、
・好ましくは≧85%、より好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%、より好ましくは≧96%、より好ましくは≧97%、より好ましくは≧98%、最も好ましくは≧99%の、本明細書中でさきに定義した「比」と
を有するエステルを得られることが分かった。
【0025】
本発明の方法のステップ(b)では、ステップa)で形成され、任意選択で精製される側鎖エステルを固体中間体として単離しないという条件で、半合成β−ラクタム化合物は、ステップ(a)で得られ、任意選択で本明細書中で上述したように精製した混合物を、核および適切な酵素、好ましくは固定化酵素と混合して、対応する半合成β−ラクタム化合物を形成することによって形成される。ステップ(b)は、当業界で知られている、本明細書中でさきに引用した方法のいずれかに従って行うことができる。例えばアンピシリンの合成は、欧州特許出願公開第A−339751号明細書または国際公開第98/56946号パンフレットに記載のように行うことができる。同様にセファレキシンの合成は、国際公開第96/23796号パンフレットに記載のように行うことができる。セファラジンの合成は、国際公開第2005/003367号パンフレットに記載のように行うことができ、またセファクロールの合成は、国際公開第2006/069984号パンフレットに記載のように行うことができる。
【0026】
酵素による共役の後、半合成ベータ−ラクタム抗生物質は、既知の方法を用いて回収することができる。例えば酵素リアクターは、上向き撹拌(upwards stirring)を用いた底部ふるい(bottom sieve)を通して放出することができる。次いでこの得られた半合成ベータ−ラクタム抗生物質懸濁液を、ガラスフィルターを通して濾過することができる。
【0027】
酵素共役反応後に存在する少量の遊離側鎖のせいで、最終の半合成ベータ−ラクタム抗生物質の結晶化は、高収率をもたらす高濃度のベータ−ラクタム抗生物質で行うことができる。
【0028】
第二の態様において本発明は、遊離塩基の形態の、好ましくはD−フェニルグリシン−メチルエステル、D−フェニルグリシン−エチルエステル、D−ジヒドロ−フェニルグリシン−メチルエステル、およびD−ジヒドロ−フェニルグリシン−エチルエステルからなる群から選択されるエステルであって、下記の特性、すなわち
・好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、好ましくは96%以上、好ましくは97%以上、好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上のe.e.(鏡像異性体過剰率)と、
・エステルのモル数に対する塩のモル数として表わされる、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、より好ましくは2モル%以下、最も好ましくは1モル%以下の塩含有量と、
・好ましくは≧85%、より好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%、より好ましくは≧96%、より好ましくは≧97%、より好ましくは≧98%、最も好ましくは≧99%の本明細書中でさきに定義した「比」と
を有するエステルを提供する。
【0029】
列挙したe.e.の任意の値を、列挙した塩含有量の任意の値と合せ有する、また「比」の任意の値と合せ有する遊離塩基の形態のエステルが提供されることは当業者には明らかであろう。
【0030】
第三の態様において本発明は、上記で規定した特性を有する本発明の遊離塩基の形態のエステルの生成方法を提供する。この方法は、水性環境中で側鎖エステルの塩を塩基と混合し、それによって二相系を生成すること、およびその水性相から遊離塩基の形態の側鎖エステルを分離することを含むことができる。
【0031】
側鎖エステルの塩は、HCl塩などの任意の適切な塩であることができる。塩は、固体の形態でも、また液体の形態、すなわち水または別の適切な溶媒に溶かした、場合によっては塩などの他の成分を含有する溶液でもよい。側鎖エステルの塩と混合される塩基は、任意の塩基、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアンモニアなどの強塩基であることができる。
【0032】
形成される二相系において、遊離塩基の形態の側鎖エステルを含む有機相は、好ましくは遊離側鎖を全く含有しないか、または非常に低レベルの遊離側鎖しか含有しない、すなわち本明細書中でさきに定義した「比」が好ましくは≧85%、より好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%、より好ましくは≧96%、より好ましくは≧97%、より好ましくは≧98%、最も好ましくは≧99%であり、一方、遊離側鎖、および場合によっては塩を含有する水性相は、好ましくは側鎖エステルを全く含有せず、または非常に低レベルの側鎖エステルのみを含有する。
【0033】
二相系は、多相系がpH7.5から10の間、好ましくは8.5から9.5の間、最も好ましくは8.8から9.2の間で形成される精製のステップの下で本明細書中で上述したように形成することができる。
【0034】
多相系中の様々な相は、既知の手法を用いて分離することができる。適切な方法は、それら様々な相間の密度差を利用するものである。その規模に応じて分離は、バッチ方式または、より好ましくは連続方式のいずれかで、正規重力を用いてまたは好ましくは遠心力を用いて得ることができる。好ましい連続遠心分離法は、PGMについて図1および実施例5に詳細に記載する。この方法は、遊離塩基の形態の好ましくはD−フェニルグリシン−メチルエステル、D−フェニルグリシン−エチルエステル、D−ジヒドロ−フェニルグリシン−メチルエステル、およびD−ジヒドロ−フェニルグリシン−エチルエステルからなる群から選択される任意のエステルに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】好ましい連続遠心分離法の加工ラインを示す。
【0036】
[図1]
Aは、実施例4の記述のように得ることができるPGM溶液を入れる容器である。
Bは、水(溶液1kg当たり724g)に溶かしたNaOH(溶液1kg当たり65g)およびNaCl(溶液1kg当たり211g)の溶液を入れた容器であり、容器の内容物は3から5℃に保たれる。
Cは、撹拌機、バッフル、温度計、pHメーター、PGM溶液の注入口、NaOH/NaCl溶液の注入口、および反応混合物の流出口を備えた10Lガラス容器であり、容器は冷却槽中に置かれる。
Dは、反応混合物の温度を遠心器中に導入する前に30℃まで加熱するための熱交換器(内容積1L)である。
Eは、NaSOの25%(w/w)溶液を入れた容器であり、容器の内容物は30℃まで加温された。
Fは、2個のRobatel BXP130抽出遠心器(液体/液体抽出装置、ボウルの直径125mm、ボウルの容積1.4L、軽相堰の直径61mm、重相堰の直径66mm)であり、遠心器の注入口および流出口は下記のように連結された。すなわち
・10L容器からの反応混合物は遠心器1の軽相注入口中に導入された。
・NaSOの25%(w/w)溶液は遠心器2の重相注入口中に導入された。
・遠心器1の重相流出口は受け容器(G)に連結された。実験後、この内容物は廃棄された。
・遠心器1の軽相流出口は遠心器2の軽相注入口に連結された。
・遠心器2の重相流出口は遠心器1の重相注入口に連結された。
・遠心器2の軽相流出口は、蠕動ポンプにより、このプロセスの流れを3〜5℃まで冷却するための熱交換器を通って汲み上げられた。
Gは、遠心器1から水性相を回収するための受け容器である。
Hは、プロセスの流れを3〜5℃まで冷却するための熱交換器である。
Iは、PGM遊離塩基を回収するために3〜5℃の冷えた状態に保たれた容器である。
【0037】
図1に示されないが、蠕動ポンプは、
・PGM溶液を10L容器に汲み上げるための蠕動ポンプ。
・NaOH/NaCl溶液を10L容器に汲み上げるための蠕動ポンプ。このポンプの流れはpHメーターによって制御された。
・熱交換器を通る反応混合物を遠心器に汲み上げるための蠕動ポンプ。
・NaSOの25%(w/w)溶液を遠心器に汲み上げるための蠕動ポンプ
である。
【0038】
[実施例]
[実施例1]
[a)フェニルグリシン−メチルエステル(PGM)溶液の合成]
D−フェニルグリシン90gをメタノール170mL中に懸濁させ、濃硫酸73.2gを加えた。この混合物を還流状態で約73℃に2時間保ち、真空ポンプを用いて減圧下で濃縮した。圧力は大気圧から20ミリバールに降下し、同時に反応混合物の温度は40から80℃まで上昇した。
【0039】
メタノール170mLを加え、その混合物を再び還流状態で2時間保ち、減圧下で濃縮した。さらに、メタノール170mLを加え、その混合物を還流状態で2時間保ち、減圧下で濃縮した。最後にメタノール125mLを加えた。本明細書中でさきに定義した「比」は、この段階で95%であった。
【0040】
この溶液を、メタノール20mLを予め装入した第二リアクター中へ20℃で1時間のうちに投入した。pHをアンモニアで3.5に保った。固形物が形成され、それを濾過により取り除いた。得られた母液を水25mLで希釈し、減圧下で濃縮した(p=20mmHg、T=40〜45℃)。最後にD−フェニルグリシン−メチルエステル(PGM)溶液207.5gが得られた。得られた溶液の「比」は99%であった。
【0041】
[b)セファレキシンの酵素による合成]
175μmのふるい底を有するリアクターに、15gの固定化大腸菌(Escherichia coli)PenGアシラーゼ変異体Phe−B24−Alaを満たした。続いて25℃において21.4gの7−ADCAおよび95gの水を加え、25%アンモニアでpHを7.0に調整した。
【0042】
ステップa)(上記)で得られたPGM溶液38gを、一定速度で120分のうちにリアクター中へ投入した。pHをアンモニアでpHを7.0に保った。温度は25℃に保たれた。30分後、固体セファレキシン(シード)0.25gを加えた。45分でセファレキシンの結晶化が始まった。120分から150分までpHを25%硫酸により7.0に保った。続いてpHを25%硫酸により5.7まで下げた。
【0043】
[c)セファレキシンの回収]
リアクターは、上向き撹拌を用いた底部ふるいを通して放出された。得られたセファレキシン懸濁液はガラスフィルターを通して濾過した。得られた母液をリアクター中に戻した。この一連のステップを5回繰り返した。その後、酵素を水2×10mLで洗浄した。この方法でセファレキシンの≧98%が固形生体触媒から分離された。
【0044】
セファレキシンウェットケーキ、母液、および洗浄水を一緒にし、温度を2℃に保った。この一緒にしたウェットケーキと母液のpHを濃硫酸で1.5まで下げ、得られた溶液を0.45μmフィルターを通して濾過した。
【0045】
結晶化リアクターを、水20gおよびセファレキシン(シード)1.0gで満たした。上記酸性セファレキシン溶液を、結晶化リアクター中へ30℃で80分間のうちに投入した。このpHをアンモニアで5.0に保った。続いてこの懸濁液を20℃でさらに30分間撹拌した。懸濁液を、ガラスフィルターを通して濾過し、そのウェットケーキを水2×15mLおよびアセトン2×15mLで洗浄した。乾燥後、一水素化セファレキシン32.6gが得られた(純度>99.8%)。
【0046】
[実施例2]
[a)D−ジヒドロフェニルグリシン−メチルエステル(DHPGM)溶液の合成]
D−ジヒドロ−フェニルグリシン(DHPG)90gをメタノール200mL中に懸濁させ、濃硫酸73.2gを加えた。この混合物を還流状態で約73℃に2時間保ち、真空ポンプを用いて減圧下で濃縮した。圧力は大気圧から20ミリバールに降下し、同時に反応混合物の温度は40から80℃に上昇した。
【0047】
メタノール170mLを加え、その混合物を再び還流状態で2時間保ち、減圧下で濃縮した。さらに、メタノール170mLを加え、その混合物を還流状態で2時間保ち、減圧下で濃縮した。最後にメタノール125mLを加えた。本明細書中でさきに定義した「比」は、この段階で94.8%であった。
【0048】
この溶液を、メタノール20mLを予め装入した第二リアクター中へ20℃で1時間のうちに投入した。pHをアンモニアで3.5に保った。固形物が形成され、それを濾過により取り除いた。得られた母液を水25mLで希釈し、木炭(活性炭)3gで脱色し、減圧下で濃縮した(p=20mmHg、T=40〜45℃)。最後にDHPGM溶液217.6gが得られた。得られた溶液の「比」は99.2%であった。
【0049】
[b)セファラジンの酵素による合成]
このステップは、国際公開第2005/003367号パンフレットに記載のように行った。
【0050】
[実施例3]
[a)D−フェニルグリシン−メチルエステル(PGM)溶液の合成]
D−フェニルグリシン90gをメタノール170mL中に懸濁させ、濃硫酸73.2gを加えた。この混合物を還流状態で約73℃に2時間保ち、真空ポンプを用いて減圧下で濃縮した。圧力は大気圧から20ミリバールに降下し、同時に反応混合物の温度は40から80℃に上昇した。
【0051】
メタノール170mLを加え、その混合物を再び還流状態で2時間保ち、減圧下で濃縮した。さらに、メタノール170mLを加え、その混合物を還流状態で2時間保ち、減圧下で濃縮した。最後にメタノール125mLを加えた。この混合物をエステル化混合物と呼ぶ。
【0052】
このエステル化混合物の大部分(約95%)を、水40mLを予め装入した第二リアクター中へ25〜30℃で1時間のうちに投入した。pHを8M NaOHで3.5に保った(消費量34g)。固形物が形成され、それを濾過により取り除いた。得られた母液をエステル化混合物(約5%)と混合して、濾液のpHをpH=2に下げた。この混合物を減圧下で濃縮した(p=20mmHg、T=40〜45℃)。最後に粘性混合物190gが得られた。
【0053】
[b)5M NaClに溶かした2M NaOHの調製]
80gのNaOHを149mLの水に溶解した。この溶液を5M NaClの添加によって1000mLに希釈した。体積を1000mLに調整するには約840mLの5M NaClが必要とされる。
【0054】
[c)遊離塩基としてのPGMの合成]
a)で得られた粘性混合物を、40℃において120mLの5M NaClと混合した。この混合物を、5M NaClに溶かした2M NaOHの添加によってpHをpH=9に保ちながら、50mLの5M NaClに20分の間に加えた。混合物の温度は20℃に保った。混合物を分離漏斗に移し、混合物を20分間放置して沈降させた。続いて層を分離した。上層を、室温で120mLの5M NaClと混合した。混合物を分離漏斗に移し、混合物を20分間放置して沈降させた。層が分離した。上層を5000rpmで遠心分離した。少ない方の最下層が形成され、これを油状生成物から取り除いた。95gのPGM遊離塩基が得られた。含有量は85%、e.e.=97%、ステップ(a)におけるPG投入量を基準にした収率は82%。PGM中のPG遊離塩基の含有量は0.2%(すなわち99.8%の「比」)。
【0055】
[d)アンピシリンの合成]
このステップは、6−APAおよびPGA、すなわちメチルエステルの代わりにPGのアミド誘導体からのアンピシリンの合成についての国際公開第98/56946号パンフレット中の記載のように行った。
【0056】
[実施例4]
[D−フェニルグリシン−メチルエステル(PGM)溶液の合成]
D−フェニルグリシン135gをメタノール252mL中に懸濁させ、濃硫酸(98%)107gを加えた。この混合物を、還流状態で約73℃に2時間保ち、真空ポンプを用いて減圧下で濃縮した。圧力は大気圧から20ミリバールに降下し、同時に反応混合物の温度は40から80℃に上昇した。メタノール126mL(100g)を加え、その混合物を還流状態で約81℃に1時間保ち、上述のように濃縮した。
【0057】
この手順をさらに4回繰り返した(メタノールの添加、還流、および濃縮)。最後にメタノール126mLを加え、その溶液をさらに1時間還流させ、周囲温度まで冷却した。
【0058】
アンモニア15mLを、35分間のうちにpH2.3〜2.4まで一定速度で投入した。水75mLを加えた。メタノールを減圧下において50℃未満の温度で蒸留して除いた。最終PGM溶液のpHは2.0であり、また「比」は99.0%であった。
【0059】
[実施例5]
[向流抽出遠心分離器の使用によるPGM遊離塩基の生成]
図1に示した加工ラインを下記のように作動させた。すなわち
・遠心器を始動し、2400rpmで作動させた。
・NaSOの25%(w/w)溶液を、流量7.5kg/時で遠心器1中に導入した。遠心器1の重相流出口からの流れが起こった後に、この反応混合物(下記参照)を遠心器1中に導入した。
・1000mLの5.3M NaClを10L容器に加えた。
・この10L容器の内容物を8〜10℃まで冷却した。
・PGM溶液を、流量15kg/時で10L容器に導入した。
・この10L容器中のpHを、NaOH/NaCl溶液の添加によりpH=9.7に保った。
・この10L容器中の体積を、その容器からの反応混合物の流れを調整することによって5Lに保った。
・この10L容器中の温度を8〜10℃に保った。
・この10L容器の反応混合物を、熱交換器を経て汲み上げ、それによって30℃まで加温した。続いて反応混合物を遠心器1中に導入した。
・遠心器2からの軽相を、熱交換器を通して3〜5℃まで冷却して容器中に3〜5℃で保管した。
・軽相の生成後、軽相を4時間未満のうちにアンピシリンへの転化に使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核と、側鎖エステルの形態のD−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンからなる群から選択される側鎖と、前記側鎖エステルと前記核の共役を触媒する酵素とから半合成β−ラクタム化合物を合成するための方法であって、前記側鎖エステルを固体中間体として単離しないことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記側鎖の前記エステルを形成するステップを含み、前記側鎖エステルを固体中間体として単離しないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a.D−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンからなる群から選択される遊離側鎖をアルコールで転化して、対応する側鎖エステルを含む混合物を形成するステップと、
b.ステップa)中で形成される前記側鎖エステルを固体中間体として単離しないという条件で、ステップa)で得られる前記混合物を、核および前記半合成β−ラクタム化合物を形成するための酵素と混合することによって前記半合成β−ラクタム化合物を形成するステップと
を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)で得られる前記混合物が、ステップb)において前記半合成β−ラクタム化合物を形成する前に精製される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記核が、6−アミノペニシラン酸(6−APA)、7−アミノ−デアセトキシ−セファロスポラン酸(7−ADCA)、7−アミノセファロスポラン酸(7−ACA)、および7−アミノ−3−クロロ−3−セフェム−4−カルボン酸(7−ACCA)からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記半合成β−ラクタム化合物が、アンピシリン、セファレキシン、セファラジン、およびセファクロールからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルコールがメタノールまたはエタノール、好ましくはメタノールである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酵素がペニシリンGアシラーゼ、好ましくは固定化形態のものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ペニシリンGアシラーゼが、大腸菌(Escherichia coli)由来のものである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
D−フェニルグリシンおよびD−ジヒドロ−フェニルグリシンからなる群から選択される側鎖のエステルを含む製剤であって、前記側鎖エステルが遊離塩基の形態であり、かつ90%以上のe.e.を有し、そして前記製剤が前記側鎖エステルに対して好ましくは20モル%以下の塩含有量と、好ましくは≧85%の「比」とを有する、製剤。
【請求項11】
D−フェニルグリシン−メチルエステル、D−フェニルグリシン−エチルエステル、D−ジヒドロ−フェニルグリシン−メチルエステル、およびD−ジヒドロ−フェニルグリシン−エチルエステルからなる群から選択されるエステルを含む、請求項8に記載の製剤。
【請求項12】
・水性環境中で前記側鎖エステルの塩を塩基と混合し、それによって二相系を生成するステップと、
・遊離塩基の形態の前記側鎖エステルを水性相から、好ましくは遠心分離によって、最も好ましくは連続遠心分離によって分離するステップと
を含む、請求項10または11に記載の前記エステルの生成方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−520752(P2010−520752A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552220(P2009−552220)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052809
【国際公開番号】WO2008/110527
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】