説明

ベータゼオライトとYゼオライトとを含む水素化分解触媒、およびジェット燃料または留出物を作るためのその使用方法

ベータゼオライトと、24.37〜24.44オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライトとを含む触媒を使用することによって、水素化分解方法において、中間留出物およびジェット燃料の収率の増加および触媒活性の増加が達成される。触媒は、ベータゼオライトに比べて比較的多量のYゼオライトを有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の背景
[0001]本発明は、触媒組成物と、炭化水素転化プロセスにおける、特に水素化分解におけるそれらの使用とに関する。更に詳しくは、本発明は、活性分解成分として、Y型ゼオライトおよびベータ型ゼオライトを含む触媒組成物に関する。詳しくは、本発明は、特に中間留出物およびジェット燃料を製造する水素化分解方法に関する。
【0002】
[0002]石油精製者は、原油から誘導された炭化水素供給原料を水素化分解することによって、所望の生成物、例えばタービン燃料、ディーゼル燃料、そして中間留出物として公知の他の炭化水素液、ならびに低沸点液、例えばナフサおよびガソリンをしばしば製造している。水素化分解は、水素処理によって供給原料から硫黄および窒素を除去するというような他の利点も有する。最もしばしば水素化分解に暴露される供給原料は、蒸留によって原油から回収される軽油および重質軽油である。
【0003】
[0003]水素化分解は、適当な反応器容器において、精製者によって要求される炭化水素生成物の分布を含むより低い総平均沸点生成物を生成するように、高温高圧と水素の存在とを含む適当な条件下で、軽油または他の炭化水素供給原料を適当な水素化分解触媒と接触させることによって、一般的に行われている。水素化分解反応器内の運転条件は生成物の収率にいくらかの影響を及ぼすが、生成物の収率の決定において最も重要なファクターは水素化分解触媒である。
【0004】
[0004]まず最初に、水素化分解触媒は、触媒の主な分解成分の性質に基づいて分類される。この分類では、水素化分解触媒は、例えばシリカ−アルミナのようなアモルファス分解成分をベースとする水素化分解触媒と、例えばベータまたはYゼオライトのようなゼオライト分解成分をベースとする水素化分解触媒とに分けられる。水素化分解触媒は、水素化分解触媒の目的主生成物に基づいて分類もされる。その2つの主生成物とはナフサと「留出物」であり、水素化分解精製では、「留出物」とは、ナフサの沸点を超える沸点範囲を有する蒸留可能な石油誘導留分を意味している。留出物は、典型的には、灯油およびディーゼル燃料として精製所で回収される生成物を含む。タービン燃料は、典型的には、一定の範囲で沸騰し、且つ、ジェット燃料として精製所で回収される生成物を含む。タービン燃料は、典型的には、ナフサの沸点範囲で沸騰する成分、ならびに留出物沸点範囲で沸騰する他の成分を含む。現在、留出物およびジェット燃料には高い需要がある。このために、精製者は、留出物部分(distillate fraction)またはジェット燃料留分を選択的に製造する水素化分解触媒に注目している。
【0005】
[0005]ジェット燃料または留出物を作るための水素化分解触媒の性能を評価する場合に使用される3つの主要な触媒特性は、活性、選択性、そして安定性である。活性は、同じ供給原料を使用して、所望の範囲で沸騰する、例えば留出物では371℃(700°F)未満またはジェット燃料では288℃(550°F)未満で沸騰する生成物が所定のパーセンテージ、通常は65%生成されるように、他の点では一定な水素化分解条件下で様々な触媒が使用されなければならない温度を比較することによって、測定できる。所定の触媒のために要求される温度が低くいほど、その種の触媒の活性は、より高い温度を要求する触媒の活性に比べて、より高活性である。水素化分解触媒の選択性は、前記活性試験中に測定することができ、また、所望の留出物またはジェット燃料生成物の範囲で、例えば留出物に関しては149℃(300°F)〜371℃(700°F)またはジェット燃料に関しては127℃(260°F)〜288℃(550°F)で沸騰する生成物の留分のパーセンテージとして測定される。安定性は、活性試験の条件下で所定の炭化水素供給原料を処理する際に、触媒が、その活性を長期にわたってどのくらいよく維持するかに関する目安である。安定性は、一般的に、65パーセントまたは他の所定の転化率を維持するために1日当たりに要求される温度変化に関して測定される。
【0006】
[0006]留出物またはジェット燃料を製造するための分解触媒は公知であって商業的環境で使用されているが、留出物またはジェット燃料を製造するために優れた総合的な活性、選択性および安定性を有する新しい水素化分解触媒に関する需要が常に存在している。
【0007】
発明の概要
[0007]30:1未満のシリカ対アルミナ(SiO対Al)総モル比および少なくとも28重量パーセント(以下、wt%)のSF吸着容量を有するベータゼオライトを含み、そして更に、24.37〜24.44オングストロームの単位格子サイズaを有するYゼオライトも含む、そしてその場合、乾燥重量を基準としたYゼオライト対ベータゼオライトの重量比が4:1〜7:1である水素化分解触媒は、ジェット燃料または留出物を製造するために水素化分解方法で使用するのに現在商業的に利用可能な他の水素化分解触媒に比べて、実質的に改良された活性および選択性を有することが見出された。その触媒は、金属水素化成分、例えばニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはそれらの任意の組み合わせも含む。
【0008】
[0008]前記のYゼオライトとベータゼオライトとを含む水素化分解触媒は当業では新規であると考えられる。
[0009]高温および圧力および水素の存在を含む典型的な水素化分解条件下では、前記触媒は、軽油および他の炭化水素供給原料を、より低い平均沸点およびより低い平均分子量の生成物へと転化させるのに非常に有効である。一つの実施態様では、生成物は、本明細書で規定されるように127℃(260°F)〜288℃(550°F)のジェット燃料範囲で沸騰する成分を比較的大きな割合で含む。別の実施形態では、生成物は、本明細書で規定されるように149℃(300°F)〜371℃(700°F)の留出物範囲で沸騰する成分を比較的大きな割合で含む。
【0009】
[0010]図1〜4は、相対触媒活性に対するジェット燃料および留出物の相対収率をいくつかの水素化分解触媒に関して示したグラフである。
情報開示
[0011]ベータおよびYゼオライトは、水素化分解用触媒を含むいくつかの異なる触媒の成分と組み合わせて提案されてきた。例えば、米国特許第5,275,720号には、6.0:1を超えるシリカ対アルミナ総モル比および24.40〜24.65オングストロームの単位格子サイズを有するベータゼオライトと脱アルミニウム化Yゼオライトとを含む触媒を使用する水素化分解方法が記載されている。脱アルミニウム化Yゼオライト対ベータゼオライトの重量比は0.25:1〜4:1であってもよい。好ましいYゼオライトとしてはLZ−210ゼオライトが挙げられる。
【0010】
[0012]米国特許第5,279,726号には、24.40オングストロームを超える単位格子サイズ、そして通常は、25℃(77°F)および0.10のp/p値において15重量%を超える水蒸気収着容量を有するベータゼオライトとYゼオライトとを含む触媒を使用する水素化分解方法が記載されている。改質Yゼオライトのシリカ対アルミナ総モル比は、一般的に、5.1:1〜6.0:1であるが、改質Yゼオライトは、6.0:1超、例えば6:1〜20:1のシリカ対アルミナモル比を有することができる。好ましいYゼオライトとしてはLZY−84またはY−84ゼオライトが挙げられる。Yゼオライト対ベータゼオライトの重量比は0.33:1〜3:1であってもよい。
【0011】
[0013]米国特許第5,350,501号には、(1)24.45オングストローム未満の単位格子サイズ、または(2)25℃(77°F)および0.10のp/p値において10.00重量%未満の水蒸気収着容量を有するベータゼオライトとYゼオライトとを含む担体を含む触媒を使用する水素化分解方法が記載されている。LZ−10は好ましいYゼオライトである。Yゼオライト対ベータゼオライトの重量比は0.33:1〜3:1であってもよい。
【0012】
発明の詳細な説明
[0014]本明細書で開示される方法および組成物を使用して、特に酸触媒によって、有機化合物を含む供給原料を生成物へと、例えば、水素化分解有機化合物を、特に炭化水素を、より低い平均沸点およびより低い平均分子量の生成物へと転化させることができる。触媒および/または触媒担体であることができる本発明の組成物は、ベータゼオライトとYゼオライトとを含む。また、本発明の組成物は、耐火性無機酸化物を含むこともできる。水素化分解用触媒として使用するとき、組成物は、ベータゼオライト、Yゼオライト、耐火性無機酸化物、および水素化成分を含む。
【0013】
[0015]本明細書で開示される水素化分解の方法および組成物では、比較的高いYゼオライト対ベータゼオライト重量比で特定のベータゼオライトと特定のYゼオライとを含む触媒を使用する。いくつかの実施態様では、ベータゼオライトは、比較的低いシリカ対アルミナモル比および比較的高いSF吸着容量を有する。Yゼオライトは、比較的低いシリカ対アルミナモル比および比較的高い単位格子サイズを有する。この種のベータゼオライトおよびこの種のYゼオライトがこのようにして水素化分解触媒中に組み込まれるとき、その結果として異なる性能が得られることを見出した。留出物またはジェット燃料の範囲で沸騰する生成物の収率が、Yゼオライトを含む触媒の収率に比べて高いだけでなく、水素化分解触媒の活性も高い。
【0014】
[0016]ベータゼオライトは、水素化分解触媒の成分として当業において公知である。ベータゼオライトは、米国特許第3,308,069号およびRe No.28,341に記載されている。本明細書で開示される方法および組成物で使用されるベータゼオライトは、一つの実施態様では30:1未満、もう一つの実施態様では25:1未満、もう一つの実施態様では9:1超〜30:1未満、更にもう一つの実施態様では9:1超〜25:1未満、別の実施態様では20:1超〜30:1未満、または、もう一つ別の実施態様では15:1超〜25:1未満のシリカ対アルミナモル比を有する。本明細書で使用する場合、特に明記しない限り、ゼオライトのシリカ対アルミナ(SiO対Al) モル比は、ゼオライト中に存在するアルミニウムおよび珪素(骨格および非骨格)の総量または全量を基準として決定されるモル比であり、そして時には、本明細書では、シリカ対アルミナ(SiO対Al)総モル比を意味している。
【0015】
[0017]ベータゼオライトは、通常は、テンプレート剤を含む反応混合物から合成される。ベータゼオライトを合成するためのテンプレート剤の使用は当業において公知である。例えば、米国特許第3,308,069号およびRe No.28,341は水酸化テトラエチルアンモニウムの使用を記載しており、また、米国特許第5,139,759号は、対応するテトラエチルアンモニウムハライドから誘導されるテトラエチルアンモニウムイオンの使用を記載している。ベータゼオライトを調製する別の標準法は、H.Robson(監修)およびK.P.Lillerud(XRD図)によるVerified Synthesis of Zeolitic Materials、改定二版、ISBN 0−444−50703−5、Elsevier,2001に記載されている。特定のテンプレート剤の選択は本明細書で開示される方法の成否には重要ではないと考えられる。一つの実施態様では、ベータゼオライトは、ベータゼオライトからテンプレート剤を除去するのに充分な時間、500〜700℃(932〜1292°F)の温度で空気中で焼成する。テンプレート剤を除去するための焼成は、ベータゼオライトを担体および/または水素化成分と組み合わせる前または組み合わせた後に、行うことができる。テンプレート剤は700℃(1292°F)を超える焼成温度で除去できると考えられるが、非常に高い焼成温度は、ベータゼオライトのSF吸着容量を有意に低下させる可能性がある。このために、テンプレート剤を除去するための750℃(1382°F)を超える焼成温度は、本明細書で開示される方法で使用するためのベータゼオライトを調製する際には、回避すべきである。ベータゼオライトのSF吸着容量が少なくとも28wt%であることは、本明細書で開示される方法にとっては重要である。
【0016】
[0018]ゼオライトを、例えばベータゼオライトをスチーミングするとゼオライトの実際の結晶構造が変化するが、現在の分析技術の能力では、ゼオライトの重要な構造細部に関するそれらの変化を正確にモニター且つ/または特徴づけることは不可能であった。
その代わりに、ゼオライトの様々な物理的特性、例えば表面積の測定値が、生じた変化および変化の程度の指標として使用される。例えば、スチーミング後における六弗化硫黄(SF)を吸着するゼオライトの能力低下は、ゼオライトの結晶化度の低下またはゼオライトの微細孔の大きさ若しくは接近性の低下によって引き起こされると考えられる。しかしながら、それは、望ましくないかもしれないゼオライトにおける変化の間接的な相関関係である。なぜならば、本明細書で開示される方法および組成物で使用される触媒のSF吸着容量は比較的高いからである。本明細書で開示される方法および組成物の実施態様では、ベータゼオライトのSF吸着容量は、スチームで処理されているか否かにかかわらず、少なくとも28wt%であるべきである。
【0017】
[0019]而して、本明細書で開示される方法および組成物は、SF吸着によって特徴づけることができる。これは、ゼオライトのような微小孔構造材料の特性評価のための認められている技術である。吸着剤を実質的に有していないように前処理されたサンプルによって吸着されたSFの量を測定するために重量差を用いるという点で、保水量のような他の吸着容量測定と同様である。SFの大きさおよび形状は、6オングストローム未満の直径を有する細孔中へのSFの進入を妨げるので、SFはこの試験で使用される。而して、SFは、利用可能な細孔口および細孔径収縮の1つの測定法として使用できる。更に、これは、ゼオライトに関するスチーミング効果の測定法である。この測定法を極端に単純化して説明すると、サンプルは、好ましくは最初に300℃(572°F)の真空中で1時間予備乾燥し、次いで、650℃(1202°F)の空気中において大気圧下で2時間加熱し、そして最後に計量する。次いで、サンプルを20℃(68°F)の温度に維持しながら、SFに1時間暴露する。SFの蒸気圧は、液体SFによって提供される400トル(53.3kPa(7.7psi))に維持する。再び、サンプルを計量して吸着されたSFの量を測定する。これらの工程を容易にするために、これらの工程中に秤の上でサンプルをつるす。
【0018】
[0020]スチーミングおよび加熱のような技術を含むあらゆる大量生産手順では、個々の粒子は、異なるレベルの処理に暴露される可能性がある。例えば、ベルトに沿って移動する堆積の底部にある粒子は、堆積の上部を隠蔽している粒子と同じ気圧または温度に暴露されないかもしれない。このファクターは、製造中、また、最終製品の分析および試験中にも考慮しなければならない。而して、触媒に関してなされるあらゆる試験測定は、個々の粒子または非代表サンプルに関して行われる測定によって誤った方向に導かれるのを回避するために、全ての量の最終製品の代表複合サンプルに関して行うことが推奨される。例えば、吸着容量測定は、代表複合サンプルに関してなされる。
【0019】
[0021]本明細書で開示される方法および組成物はスチーミング処理されなかったベータゼオライトを使用することができるが、本明細書で開示される方法および組成物は、スチーミングが、文献におけるベータゼオライトのスチーミングに比べて比較的穏やかであるという条件で、スチーミングに暴露されたベータゼオライトを使用することもできる。適当な条件下で、そして適当な時間、ベータゼオライトをスチーミングすると、本明細書で開示される方法および組成物で使用できる触媒を得ることができる。
【0020】
[0022]水素化分解触媒で使用するためにゼオライトを水熱処理するのは、比較的短所の多い手法である。あらゆる所定のゼオライトに関して、スチーミングは、ゼオライトの酸性度を減少させる。スチーミングされたゼオライトを水素化分解触媒として使用すると、明らかに、全体的な留出物またはジェット燃料の収率は、増加するが、触媒の活性は低下する。収率と活性のこの見掛けの兼ね合いは、高い活性を達成するためには、ベータゼオライトをスチーミングしないことを意味しているが、その代わり生成物の収率は低下する。収率と活性のこの見掛けの兼ね合いは、考慮に入れなければならず、また、ベータゼオライトをスチーミングすることによって得られると思われる改善を制限する。スチーミングされたベータゼオライトを本明細書で開示される触媒で使用するとき、Yゼオライトのみを含む触媒を超える活性の改善は制限されると考えられるが、前記触媒を超える収率の改良はより進むと考えられる。
【0021】
[0023]ベータゼオライトをスチーミングしようとする場合、前記スチーミングは異なる方法でうまく行うことができ、商業的に実際に使用される方法は、しばしば、利用可能な装置のタイプおよび能力によって非常な影響を受け、恐らく決定的に影響される。スチーミングは、ベータゼオライトを固定された塊として保持しながら、または、ベータゼオライトを容器中に閉じ込めている状態で若しくは回転キルン中に閉じ込めながら揺動させている状態で行うことができる。重要なファクターは、時間、温度およびスチーム濃度の適当な条件下での、すべてのベータゼオライト粒子の均一な処理である。例えば、ベータゼオライトの表面および内部と接触するスチームの量に有意差が無いようにベータゼオライトを配置すべきである。ベータゼオライトは、低いスチーム濃度を提供する装置を通過している生スチーム(live steam)を有する雰囲気中でスチーミング処理することができる。これは、50mol%未満のプラス量のスチーム濃度であると説明できる。スチーム濃度は、1〜20mol%または5〜10mol%であることができ、小規模な実験室での運転ではより高い濃度に達する。スチーミングは、600℃(1112°F)以下の温度、大気圧下、そして5mol%以下のプラスのスチーム含量で、1若しくは2時間以下のプラス時間または1〜2時間行うことができる。スチーミングは、650℃(1202°F)以下の温度、大気圧下、そして10mol%以下のプラスのスチーム含量で2時間以下のプラス時間行うことができる。スチーム含量は、ベータゼオライトと接触する蒸気の重量を基準としている。650℃(1202°F)を超える温度でのスチーミングでは、本明細書で開示される方法において有用なベータゼオライトは得られないと考えられる。なぜならば、得られるベータゼオライトのSF吸着容量が低過ぎるからである。650℃(1202°F)未満の温度を使用することができ、そしてスチーミング温度は600℃(1112°F)〜650℃(1202°F)または600℃(1112°F)未満であることができる。スチーミングの時間と温度との間に通常は相互作用が存在することは従来技術で教示されており、温度が上昇すると必要な時間は短くなる。にもかかわらず、スチーミングを行う場合、良好な結果を得るためには、30分〜2時間または1時間〜1時間30分の時間が使用され得ると考えられる。商業規模でスチーミングを行う方法は、10mol%スチームの気圧を維持する速度で注入されるスチームを有する回転キルンによる方法であることができる。
【0022】
[0024]例示的な実験室規模のスチーミング手順は、クラムシェル炉において6.4cm(2−1/2インチ)の石英管中に保持されたゼオライトに関して行われる。炉の温度は、コントローラによってゆっくりと上げる。ゼオライトの温度が150℃(302°F)に達した後、フラスコ中に保持された脱イオン水から発生させたスチームを、石英管の底部に入れ、そして上方へと通す。所望のスチーム含量を達成するために、他のガスを石英管中に通すことができる。フラスコは、必要に応じて補充される。例示的な手順では、スチームを停止してからゼオライトが600℃(1112°F)に達するまでの時間は1時間である。設定したスチーミング時間の終わりには、コントローラを200℃(680°F)に再設定することによって炉の温度を低下させる。炉を400℃(752°F)まで冷却し(約2時間)、石英管へのスチームの流れを停止する。サンプルは、100℃(212°F)で取り出し、エアパージしながら110℃(230°F)で一晩保たれた実験室オーブン中に配置する。
【0023】
[0025]本明細書で開示される方法および組成物のベータゼオライトは、脱アルミニウムを達成するために酸性溶液で処理されない。この点に関して、実質的にすべての生(合成したままの)ベータゼオライトを酸に暴露して、合成時から残留しているアルカリ金属(例えばナトリウム)の濃度を低下させる。ベータゼオライト製造手順におけるこの工程は、本明細書で説明される、製造されるベータゼオライトの処理の一部分とはみなさない。一つの実施態様では、処理および触媒製造手順の間に、ベータゼオライトは、付帯的な製造活動(例えば解膠)中、形成中または金属含浸中にのみ酸に暴露する。別の実施態様では、ベータゼオライトは、細孔からアルミニウムの「破片」を除去するために、スチーミング手順後に酸洗浄しない。
【0024】
[0026]また、本明細書で開示される方法および組成物には、24.37〜24.44オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライトも含まれる。Yゼオライトは、一つの実施態様では5.0:1〜12.0:1、そして別の実施態様では5.0:1〜11.0:1のシリカ対アルミナ総モル比を有する。本明細書で使用する「Yゼオライト」という用語は、米国特許第3,130,007号に記載されている実質的なX線粉末回折図を有するすべての結晶性ゼオライト、または、米国特許第3,130,007号のX線粉末回折図に似ているが、当業者には認識されるように、カチオン交換、焼成(Yゼオライトを触媒活性で且つ安定な形態へと転化させるのに一般的に必要である)などに起因して幾分シフトされた格子間隔を有するX線粉末回折図を有する改質Yゼオライトを含むことを意図している。本明細書で開示される方法および組成物では、上記の2つの特性の一方または両方を有するYゼオライトが必要である。前記Yゼオライトは、米国特許第3,130,007号で教示されているYゼオライトと比較して改質されたYゼオライトである。本明細書で使用する単位格子サイズとは、X線粉末回折によって測定される単位格子サイズを意味している。
【0025】
[0027]本明細書で開示される方法および組成物で使用されるYゼオライトは、7.0オングストロームを超える有効孔径を有する大細孔ゼオライトである。Yゼオライトの細孔のうちのいくつかは比較的大きいので、Yゼオライトの内部構造へ分子が比較的自由に接近することが可能である。Yゼオライトの細孔は、その中へのベンゼン分子およびより大きな分子の通過を許し、且つ、そこからの反応生成物の通過を許す。
【0026】
[0028]本明細書で開示される方法および組成物で使用することができるYゼオライトの1つの群としては、超安定Yゼオライトと時に称されるゼオライトが挙げられる。Yゼオライトのこの群の組成および特性は、本質的には、4つの工程手順によって調製される。まず最初に、アルカリ金属形態(通常はナトリウム)で且つ典型的には24.65オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライトを、アンモニウムイオンとカチオン交換させる。アンモニウム交換工程は、典型的には、NaOとして計算された通常は8wt%超の値から、通常は10〜13wt%の値から、NaOとして計算された0.6〜5wt%の値へと出発ナトリウムYゼオライトのナトリウム含量を低下させる。イオン交換を行う方法は、当業において公知である。
【0027】
[0029]第二に、第一工程からのYゼオライトを、水蒸気の存在下で焼成する。例えば、3つの実施態様において、Yゼオライトは、少なくとも1.4kPa(絶対)(以下kPa(a))(0.2psi(絶対)(以下psi(a)))、少なくとも6.9kPa(a)(1.0psi(a))、または少なくとも69kPa(a)(10psi(a))の水蒸気の存在下で焼成する。2つの他の実施態様では、Yゼオライトは、スチームから実質的に成るまたはスチームから成る雰囲気下で焼成する。Yゼオライトを、24.40〜24.64オングストロームの単位格子サイズが生成するように焼成する。
【0028】
[0030]第三に、第二工程からのYゼオライトを、もう一度アンモニウム交換させる。第二アンモニウム交換によって、NaOとして計算したナトリウム含量は、0.5wt%未満まで、通常は0.3wt%未満まで更に低下する。
【0029】
[0031]第四に、24.37〜24.44オングストロームまたは好ましくは24.40〜24.44オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライトが生成されるように、第三工程からのYゼオライトを更に処理する。第四工程から得られるゼオライトYは、一つの実施態様では5.0:1〜12.0:1、そして別の実施態様では5.0:1〜11.0:1のシリカ対アルミナ総モル比を有する。第四工程の処理は、特に、所望の単位格子サイズおよびシリカ対アルミナ総モル比が得られるように、一般的で超安定なYゼオライトにおいてゼオライトを脱アルミニウム化するための公知の技術のうちのいずれかを含むことができる。第四の処理工程によって、シリカ対アルミナ総モル比を変化させてまたは変化させずに、単位格子サイズおよび/または骨格シリカ対アルミナモル比を変えることができる。一般的に、ゼオライト脱アルミニウムは、化学的方法によって、例えば、酸、例えばHCl、揮発性ハロゲン化物、例えばSiCl、または、キレート化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)による処理によって、達成される。別の一般的な技術は、純粋なスチーム中での、または、空気/スチーム混合物中でのゼオライトの水熱処理であり、好ましくは、例えば、所望の単位格子サイズおよびシリカ対アルミナ総モル比が得られるように充分な水蒸気の存在下(例えば、スチームから実質的に成る、最も好ましくはスチームから成る雰囲気中)での焼成である。
【0030】
[0032]本明細書で開示される方法および組成物で使用されるYゼオライトに関する上で検討した調製手順は、第四の処理工程が追加されている点で米国特許第3,929,672号で教示されているYゼオライトに関する手順とは異なっている。米国特許第3,929,672号は、超安定Yゼオライトを脱アルミニウムする方法を開示している。米国特許第3,929,672号は、ナトリウムYゼオライトをアンモニウムイオンで部分的に交換し、次いで、制御された温度およびスチーム分圧の下でスチーム焼成を行い、次いで、更に別のアンモニア交換を行い、そして乾燥雰囲気中において任意の焼成工程を行うという調製手順を教示している。交換およびスチーム焼成工程は、所望の程度の脱アルミニウムおよび単位格子サイズの低下を達成するために繰り返すことができる。米国特許第3,929,672号のゼオライトは、米国イリノイ州デスプレインズにあるUOP LLCから市販されているY−84またはLZY−84という名称のゼオライトであることは公知である。Y−84またはLZY−84ゼオライトは、まさに言及した最初の3つの工程によって製造することができるが、任意に、乾燥雰囲気中での更なる焼成工程、例えば482℃(900°F)以上における水およびスチームが存在していない空気中での焼成を含むことができる。
【0031】
[0033]本明細書で開示される方法および組成物で使用されるYゼオライトに関する上で検討した調製手順は、第四の処理工程における違いによって米国特許第5,350,501号で教示されているYゼオライトに関する手順とも異なる。米国特許第5,350,501号は、水蒸気に関する比較的低い収着容量と一緒に、24.40オングストローム未満、最も好ましくは24.35オングストローム以下の単位格子サイズが得られるように、充分な水蒸気の存在下で(スチームから実質的に成る、または、スチームから成る雰囲気中において)、第三処理工程から得られたゼオライトを焼成することを含む第四工程を開示している。米国特許第5,350,501号における第四工程手順によって製造されるYゼオライトは、米国特許第5,350,501号で規定されている超疎水性YゼオライトのUHP−Yゼオライトである。米国特許第5,350,501号で最も好ましいUHP−Yゼオライトは、LZ−10ゼオライトである。
【0032】
[0034]本明細書で開示される方法および組成物で使用できるYゼオライトの別の群は、5未満のシリカ対アルミナ総モル比を有するYゼオライトを脱アルミニウムすることによって調製することができ、米国特許第4,503,023号;米国特許第4,597,956号および米国特許第4,735,928号で開示されている。米国特許第4,503,023号は、珪素置換の無いアルミニウム抽出を防止する、制御された割合、温度およびpH条件を使用して、Yゼオライトをフルオロシリケート塩の水溶液と接触させることを含む、Yゼオライトを脱アルミニウムするための別の手順を開示している。米国特許第4,503,023号は、フルオロシリケート塩が、アルミニウム抽出剤として、また、抽出されたアルミニウムの代わりにYゼオライト構造中に挿入される外来珪素源としても使用されることが開示されている。その塩は、一般式: (A)2/bSiF
(式中、Aは、価数「b」を有するH以外の他の金属カチオンまたは非金属カチオンである)を有する。「A」によって表されるカチオンは、アルキルアンモニウム、NH、Mg++、Li、Na、K、Ba++、Cd++、Cu++、H、Ca++、Cs、Fe++、Co++、Pb++、Mn++、Rb、Ag、Sr++、Ti、およびZn++である。
【0033】
[0035]この群の好ましいメンバーは、米国イリノイ州デスプレインズにあるUOP LLCから市販されているゼオライト性アルミノシリケートモレキュラーシーブであるLZ−210として公知である。LZ−210ゼオライトおよびこの群の他のゼオライトは、Yゼオライト出発原料から簡便に調製される。LZ−210ゼオライトは、一つの実施態様では5.0:1〜12.0:1、別の実施態様では5.0:1〜11.0:1のシリカ対アルミナ総モル比を有する。単位格子サイズは、24.37〜24.44オングストローム、好ましくは24.40〜24.44オングストロームである。本明細書で開示される方法および組成物で使用されるゼオライトのLZ−210クラスは、以下の式: (0.85−1.1)M2/nO:Al:xSiO
(式中、「M」は原子価「n」を有するカチオンであり、そして「x」は5.0〜12.0の値を有する)において酸化物のモル比に関して表示してある組成を有する。
【0034】
[0036]一般的に、LZ−210ゼオライトは、フルオロシリケート塩の水溶液、好ましくはアンモニウムヘキサフルオロシリケートの溶液を使用してY型ゼオライトを脱アルミニウムすることによって調製することができる。脱アルミニウムは、Yゼオライトを、通常は、必須ではないがアンモニウム交換Yゼオライトを、酢酸アンモニウム水溶液のような水性反応媒体中に置き、そして、ゆっくりとフルオロケイ酸アンモニウム水溶液を加えることによって、達成できる。反応を進行させると、シリカ対アルミナ総モル比が増加したゼオライトが製造される。増加の大きさは、ゼオライトと接触するフルオロシリケート溶液の量と、反応時間とに少なくともある程度左右される。通常は、10〜24時間の反応時間は、平衡が達成されるのに充分である。従来の濾過技術によって水性反応媒体から分離することができる得られた固体生成物は、LZ−210ゼオライトの形態である。場合によっては、この生成物は、当業において公知の方法によって、スチーム焼成することができる。例えば、生成物は、より大きな結晶安定性を付与するために、482℃(900°F)〜816℃(1500°F)の温度で、1/4〜3時間、少なくとも分圧1.4kPa(a)(0.2psi(a))の水蒸気と接触させることができる。場合によっては、スチーム焼成の生成物を、当業において公知の方法によって、アンモニウム交換させることができる。例えば、生成物は、水でスラリーにしてもよく、その後で、そのスラリーにアンモニウム塩を加える。得られた混合物は、典型的には、数時間加熱し、濾過し、そして水で洗浄する。LZ−210ゼオライトをスチーミングおよびアンモニウム交換する方法は、米国特許第4,503,023号、米国特許第4,735,928号および米国特許第5,275,720号に記載されている。
【0035】
[0037]上で検討した調製手順によって調製され、本明細書で開示される方法および組成物で使用されるYゼオライトは、ゼオライトYの実質的なX線粉末回折図と、24.37〜24.44オングストローム、好ましくは24.40〜24.43オングストロームの単位格子サイズまたは寸法aとを有する。これらのYゼオライトは、一つの実施態様では5.0:1〜12.0:1、別の実施態様では5.0:1〜11.0:1のシリカ対アルミナ総モル比を有する。これらのYゼオライトは、少なくとも500m/g、せいぜい700m/g、そして典型的には500〜650m/gの表面積(BET)を有することができる。本明細書で使用する表面積とは、標準試験法であるUOP874−88,Pore Size Distribution of Porous Substances by Nitrogen Adsorption Using a Quantachrome Analyzerによって測定される20ポイント表面積を意味しており、前記の方法は、100 Barr Harbor Drive,P.O.Box C700,West Conshohocken,Pennsylvania,U.S.AにあるASTM Internationalから市販されている。
【0036】
[0038]Yゼオライトの安定性および/または酸性度を上げる別の方法は、Yゼオライトを、多価金属カチオン、例えば希土類元素含有カチオン、マグネシウムカチオン若しくはカルシウムカチオン、またはアンモニウムイオンと多価金属カチオンとの組み合わせと交換させ、それによって、第一または第二のアンモニウム交換工程の後に、上記した値と同じ値までナトリウム含量を低下させる方法である。イオン交換を行う方法は当業において公知である。
【0037】
[0039]本明細書で開示される方法で使用される触媒は、主として、既存の市販の水素化分解ユニットにおいて置換触媒として使用することが意図されている。而して、その大きさおよび形状は、従来の市販の触媒のそれと好ましくは同様である。本発明の触媒は、好ましくは、0.8〜3.2mm(1/32〜1/8インチ)の直径を有する円筒形押出物の形態で製造される。しかしながら、触媒は、任意の他の所望の形態、例えば球体またはペレットとして作ることができる。押出物は、シリンダー以外の他の形態、例えば、明確に利点を有するか、または、低減された拡散距離若しくは圧力降下を有する公知の三葉形状または他の形状の形態であってもよい。
【0038】
[0040]市販の水素化分解触媒は、多くの非ゼオライト性材料を含む。これは、いくつかの理由、例えば粒子強度、コスト、多孔性、および性能のためである。而して、他の触媒成分は、たとえ活性な分解成分ではなくても、触媒全体に明確に寄与する。これらの他の成分は、本明細書では、担体と称する。シリカ−アルミナのような担体のいくつかの従来の成分は、通常は、触媒の分解能力に多少寄与する。本明細書で開示される方法および組成物の実施態様では、触媒は、ベータゼオライト、Yゼオライト、および担体の乾燥総重量を基準として、7wt%未満のプラス量、好ましくは5wt%未満のプラス量のベータゼオライトを含む。本明細書で使用する乾燥重量とは、500℃(932°F)において乾燥空気中で6時間加熱した後の重量であると考えられる。触媒は、ベータゼオライト、Yゼオライト、および担体の乾燥総重量を基準として、30wt%未満のプラス量、好ましくは25wt%未満のプラス量、より好ましくは15wt%〜25wt%のプラス量のYゼオライトを含む。ベータゼオライト、Yゼオライトおよび担体の乾燥総重量を基準として、本明細書で開示される方法で使用される触媒のYゼオライトおよびベータゼオライトの含量は、35wt%未満のプラス量、好ましくは25wt%未満のプラス量、より更に好ましくは20wt%未満のプラス量であり、残りの少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも75wt%、より更に好ましくは少なくとも90wt%、そして最も好ましくは100wt%は担体である。
【0039】
[0041]ゼオライト性材料以外の触媒粒子の残りは、従来の水素化分解材料によって、例えばアルミナおよび/またはシリカ−アルミナによって主として占められる。シリカアルミナの存在は、触媒の所望の性能特性を達成するのに役立つ。一つの実施態様では、触媒は、ゼオライトおよび担体の乾燥総重量を基準として、少なくとも25wt%のアルミナおよび少なくとも25wt%のシリカ−アルミナを含む。別の実施態様では、ゼオライトおよび担体の乾燥総重量を基準として、触媒のシリカ−アルミナ含量は40wt%超であり、そして触媒のアルミナ含量は35wt%超である。しかしながら、アルミナは、結合剤としてのみ機能し、活性分解成分ではない。触媒担体は、担体の乾燥重量を基準として、50wt%超のシリカ−アルミナまたは50wt%超のアルミナを含むことができる。シリカ−アルミナおよびアルミナのほぼ等量を実施態様では使用する。シリカ−アルミナおよびアルミナに加えて担体として使用することができる他の無機耐熱材としては、例えばシリカ、ジルコニア、チタニア、ボリアおよびジルコニア−アルミナが挙げられる。
これらの上記担持材は、単独でまたは任意の組み合わせで使用することができる。
【0040】
[0042]ベータゼオライト、Yゼオライト、および他の担持材以外に、本発明の触媒は、金属水素化成分を含む。水素化成分は、好ましくは、触媒粒子において均一に分配される1種以上の卑金属として提供される。水素化成分は、周期表の第6族、第9族および第10族からの1種以上の元素成分である。白金およびパラジウムのような貴金属を施用することができたが、最良の結果は2種の卑金属の組み合わせによって得られた。詳しくは、ニッケルまたはコバルトを、タングステンまたはモリブデンそれぞれと組み合わせる。金属水素化成分の好ましい組成は、ニッケルとモリブデンの組み合わせ、または、ニッケルとタングステンの組み合わせである。ニッケルまたはコバルトの量は、好ましくは、完成触媒の2〜8wt%である。タングステンまたはモリブデンの量は、完成触媒の8〜22wt%である。卑金属水素化成分の総量は、完成触媒の10〜30wt%である。
【0041】
[0043]本発明方法の触媒は、業界標準技術を使用して調製できる。この触媒の調製法は、一般化すると、ベータゼオライトおよびYゼオライトを、他の無機酸化物成分および液体、例えば水または緩酸と混合して、押出可能な生地を形成し、次いで、多孔ダイプレートを通して押出すと要約することができる。押出物は、集めて、好ましくは、高温で焼成して押出物を硬化させる。次いで、押出された粒子を大きさで篩い分けし、そして、水素化成分を、浸漬含浸または公知の初期湿潤法によって、加える。触媒が水素化成分中に2種の金属を含む場合は、金属は、順々にまたは同時に加えることができる。触媒粒子は、金属添加工程と金属添加工程との間に焼成することができ、また、金属添加後に再び焼成することができる。
【0042】
[0044]別の実施態様では、多孔質無機の耐熱性酸化物をベータゼオライト、Yゼオライト、および金属(1種または複数種)を含む化合物(1種または複数種)と組み合わせ、次いで、その組み合わせた材料を同時混練し、次いで、その同時混練した材料を押出し、そして最後に、その押出材料を焼成することは、簡便であるかもしれないし、または好ましいかもしれない。好ましい実施態様では、同時混練は、モリブデン源としてのヘプタモリブデン酸アンモニウムおよびニッケル源としての硝酸ニッケルを使用して行い、その場合、両方の化合物は、一般的に、水溶液の形態で、混合材料中に導入する。他の金属は、溶解された水性形態で、または、塩として、同様に導入することができる。同様に、非金属元素、例えば燐は、燐酸のような可溶成分を、使用時に水溶液中に混和させることによって導入することができる。
【0043】
[0045]更に他の調製法は、米国特許第5,279,726号および米国特許第5,350,501号に記載されている。
[0046]上で検討した手順によって調製された触媒は、酸化物の形態で水素化金属を含む。酸化物の形態は、一般的に、水素化分解用に硫化物形態へと転化される。これは、水素化分解反応器中に触媒を充填する前の外部での予備硫化、水素化分解反応器中に触媒を充填した後および高温での使用前の予備硫化、およびその場での硫化を含む硫化するための公知の技術のうちのいずれかによって、すなわち、酸化物形態で触媒を使用して、高温高圧および水素の存在を含む水素化分解条件下で、硫黄化合物を含む炭化水素供給原料を水素化分解することによって、達成できる。
【0044】
[0047]本明細書で開示される水素化分解方法は、水素化分解方法で現在商業的に使用されている条件の一般的な範囲内で運転される。多くの場合の運転条件は、特定の精製所または処理ユニットである。すなわち、運転条件は、大きな出費無しには通常は変更することができない既存の水素化分解ユニットの構造と限界、供給原料の組成、および所望の生成物に主として影響される。触媒床の入口温度は232℃(450°F)〜454℃(850°F)であるべきであり、そして入口圧力は5171kPa(g)(750psi(g))〜24132kPa(g)(3500psi(g))、典型的には6895kPa(g)(1000psi(g))〜24132kPa(g)(3500psi(g))であるべきである。供給流は、0℃(32°F)、101.3kPa(a)(14.7psi(a))で測定した場合に、供給原料の単位体積当たりの体積水素循環速度168〜1684ltr/ltr[15.6℃(60°F)および101.3kPa(a)(14.7psi(a))で測定した場合に1000〜10000標準ft/バレル(SCFB)]を提供するのに充分な水素と混合して、触媒の固定床を含む1つ以上の反応器中に通す。水素は、主として、酸性ガスを除去するための精製設備を通過することができるリサイクルガス流から誘導されるが、これは必須ではない。供給原料と混合される水素富化ガス、および、一つの実施態様では、いずれのリサイクル炭化水素も、少なくとも90モルパーセントの水素を含む。留出物またはジェット燃料を製造するための水素化分解のためには、LHSVでの供給量は、通常は0.3〜3.0hr−1の広い範囲である。本明細書で使用するLHSVとは、時間当たりの液体の体積流量を触媒体積で割ったものと規定される液空間速度を意味しており、そしてその場合、液体体積および触媒体積は同じ体積単位である。
【0045】
[0048]本明細書で開示される方法への典型的な供給原料は、多くの異なる炭化水素と、原油から分別蒸留によって回収される共沸化合物(coboiling compound)との混合物である。供給原料は、留出物を製造するとき149℃(300°F) 〜371℃(700°F)の範囲の上限を超える温度で沸騰するか、または、ジェット燃料を製造するとき127℃(260°F)〜288℃(550°F)の上限を超える温度で沸騰する成分を通常は有する。しばしば、供給原料は、340℃(644°F)超から、一つの実施態様では482℃(900°F)未満まで、別の実施態様では540℃(1004°F)未満まで、そして第三の実施態様では565℃(1049°F)未満までの沸点範囲を有する。前記石油誘導供給原料は、大気圧軽油、コーカーガスオイル、直留軽油、脱れき軽油、減圧軽油およびFCCサイクル油のような精製所で製造されるストリームのブレンドであってもよい。典型的な軽油は、166℃(330°F)〜566℃(1050°F)で沸騰する成分を含む。あるいは、本明細書で開示される方法への供給原料は、重質減圧軽油のような単一留分であることができる。典型的な重質軽油留分は、371℃(700°F)〜566℃(1050°F)で沸騰する実質的な割合の炭化水素を、通常は少なくとも80重量%有する。頁岩油または石炭から回収されるような合成炭化水素混合物を、本発明方法で処理することもできる。本発明の方法へと通す前に、供給原料を、水素処理または溶媒抽出による処理に暴露して、硫黄、窒素、または、アスファルテンのような他の汚染物質の総量を除去することができる。
【0046】
[0049]本発明の方法は、供給原料の大部分を、より揮発性の炭化水素、例えば留出物またはジェット燃料沸点範囲の炭化水素へと転化させることが予期される。典型的な転化率は、供給組成物に大きく左右され、50〜100体積パーセント(以下、vol%)で変化する。転化率は、本明細書で開示される方法の実施態様では60〜90vol%であり、別の実施態様では70〜90vol%であり、もう一つ別の実施態様では80〜90vol%であり、そして更にもう一つ別の実施態様では65〜75vol%である。本発明方法の流出物(effluent)は、実際には、メタンから、あらゆる所望の生成物の沸点範囲を超えた温度で沸騰する実質的に未変化の供給炭化水素にわたる広範で様々な炭化水素を含む。本発明方法の流出物は、典型的には、触媒を含む反応器から出て、そして通常は、相分離または蒸留を含む当業者には公知の方法によって分離されて、あらゆる所望の終点を有する生成物を生成する。あらゆる所望の生成物の終点を超える温度で沸騰する炭化水素は、たとえそれらの沸点がプロセス中にある程度低下したとしても、未転化生成物と呼ぶ。大部分の未転化炭化水素は、反応ゾーンへと再循環され、小さなパーセンテージ、例えば5wt%は、ドラッグ流(drag stream)として取り出される。留出物を製造するための一つの実施態様では、流出物の少なくとも30wt%、好ましくは少なくとも50wt%は、371℃(700°F)未満で沸騰する。ジェット燃料を製造するための実施態様では、流出物の少なくとも30wt%、好ましくは少なくとも50wt%は、288℃(550°F)未満で沸騰する。
【0047】
[0050]前段の水素処理の有無にかかわらず、本明細書で開示される方法および組成物は、当業の一段階および二段階プロセスフローで使用することができる。これらの用語は、J.Scherzer and AJ.GruiaによるHydrocracking Science and Technology,ISBN 0−8247−9760−4,Marcel Dekker Inc.,New York,1996で規定され且つ説明されている。二段法では、本発明の触媒は、第一または第二段階で使用すことができる。本発明の触媒は、分離反応器において水素処理触媒の後に持ってくることができるか、または、水素処理触媒若しくは異なる水素化分解触媒と同じ反応器中に充填することができる。上流の水素処理触媒は、供給原料前処理工程として使用することができるか、または、再循環される未転化材料を水素処理するために使用することができる。水素処理触媒は、多核芳香族化合物(PNA)化合物を水素処理して次の水素化分解触媒床(単数または複数)におけるそれらの転化を促進するという特定の目的のために使用することができる。本発明の触媒は、第二の異なる触媒と、例えばYゼオライトをベースとする触媒、または、主としてアモルファス分解成分を有する触媒と組み合わせて使用することもできる。
【0048】
[0051]本明細書で開示される方法のいくつかの実施態様では、触媒は、供給原料と一緒に、または、触媒中を通過する供給原料が生供給原料であるか若しくは生供給原料に近い構造中で使用される。原油の硫黄含量、すなわち、このプロセスへの供給原料の硫黄含量は、その供給源に大きく依存して変化する。本明細書で使用する生供給原料とは、水素処理されなかった供給原料、または、1000wt−ppmを超える硫黄レベルとなる有機硫黄化合物を依然として含む供給原料、または、100wt−ppm(0.01wt%)を超える窒素レベルとなる有機窒素化合物を依然として含む供給原料を指すことを意図している。
【0049】
[0052]本明細書で開示される方法の他の実施態様では、触媒は、水素処理された供給原料と一緒に使用する。炭化水素処理の当業者は、本明細書で開示される方法に充填される水素処理された供給原料を製造するために、生供給原料を水素処理することを知っており、また実行することができる。供給原料の硫黄レベルは500〜1000wt−ppmであってもよいが、水素処理された供給原料の硫黄レベルは、本明細書で開示される方法の一つの実施態様では500wt−ppm未満であり、別の実施態様では5〜500wt−ppmである。水素処理された供給原料の窒素レベルは、一つの実施態様では100wt−ppm未満であり、別の実施態様では1〜100wt−ppm未満である。
【0050】
[0053]本明細書では、周期表の元素の族に関してはすべて、CRC Handbook of Chemistry and Physics(ISBN 0−8493−0480−6,CRC Press,Boca Raton,Florida,U.S.A.,80th Edition,1999−2000)という名称の刊行物の前表紙裏側にある元素周期表に関するIUPACの「新しい表記法」を参照している。本明細書では、沸点に関してはすべて、ASTM Internationalから市販されているASTM D2887,Standard Test Method for Boiling Range Distribution of Petroleum Fractions by Gas Chromatographyによって測定された沸点である。
【0051】
[0054]以下の実施例は、例示のためであり、クレームで規定される方法および組成物を限定するものではない。
実施例I
ゼオライト1
[0055]改質Yゼオライトを以下の方法で調製した。出発原料は、UOP LLCから市販されている安定化されたアンモニウムYゼオライト(Y−84)であった。出発原料は、0.2wt%の出発ナトリウム含量(NaOとして計算した)、5.0:1〜5.2:1のシリカ対アルミナ(SiO対Al)総モル比、そして24.56オングストロームの単位格子サイズを有していた。100%スチームの存在下、482℃(900°F)〜549℃(1020°F)の床温度で1時間Y−84ゼオライトを焼成して、単位格子サイズを低下させた。得られた改質Yゼオライトをゼオライト1とした。ゼオライト1は、5.0:1〜5.2:1のシリカ対アルミナ(SiO対Al)総モル比および24.44オングストロームの単位格子サイズを有していた。
【0052】
ゼオライト2
[0056]100%スチームの存在下、677℃(1250°F)〜857℃(1575°F)の床温度で1時間Y−84ゼオライトを焼成して単位格子サイズを低下させた以外はゼオライト1について説明した方法で改質Yゼオライトを調製した。得られた改質Yゼオライトをゼオライト2とした。ゼオライト2は、5.0:1〜5.2:1のシリカ対アルミナ(SiO対Al)総モル比、そして24.36オングストロームの単位格子サイズを有していた。
【0053】
LZ−210ゼオライト
[0057]市販されているスチーミングされ且つアンモニウム交換されたLZ−210の2つのサンプルをUOP LLCから入手した。1つのサンプルは10.0:1〜14.0:1のシリカ対アルミナ(SiO対Al)総モル比および24.39オングストロームの単位格子サイズを有し、他のサンプルは8.0:1〜10.0:1のシリカ対アルミナ(SiO対Al)総モル比および24.42オングストロームの単位格子サイズを有していた。6.0:1対7.0:1のシリカ対アルミナ(SiO対Al)総モル比を有するLZ−210の第三のサンプルを、6.0:1〜7.0:1のシリカ対アルミナ(SiO対Al)総モル比および24.49オングストロームの単位格子サイズまでスチーミングし且つアンモニウム交換させた。
【0054】
実施例II
[0058]粉砕機において、ゼオライト1、ゼオライト2、スチーミングおよびアンモニウム交換させたLZ−210、23.8:1のシリカ対アルミナ(SiO対Al)総モル比および29wt%のSF吸着容量を有するベータゼオライト、アモルファスシリカ−アルミナ、そしてHNOで解膠されたCatapal(商標)C ベーマイトアルミナ(Catapal C アルミナはSasol North America,Inc.から市販されている)をそれぞれ任意に混合することによって、10種類の触媒(A〜HおよびJ〜K)を調製した。乾燥重量を基準とした各最終触媒におけるこれらの成分の量は表1に記載してある。得られた混合物を押出して長さ3.2mm(1/8in)〜12.7mm(1/2in)で直径1.6mm(1/16in)の円筒形粒子にした。湿性押出物を、104℃(220°F)で最低4時間乾燥させ、次いで、550℃(1022°F)を超える温度で最低90分間焼成した。次いで、最終触媒において4wt%のニッケル(NiOとして計算した)を提供するのに充分な硝酸ニッケルと、最終触媒において14wt%のタングステン(WOとして計算した)を提供するのに充分なメタタングステン酸アンモニウムを、焼成した押出物に初期湿潤まで加えた。次いで、その押出物を、易流動性となるまで乾燥させ、そして、500℃(932°F)で最低90分間焼成することによって酸化させた。
【0055】
実施例III
[0059]上記10種類の触媒のそれぞれを、10vol%のHSと残りがHとから成るガス流を前記触媒の床の中に通し、はじめは149℃(300°F)の温度で、そしてゆっくりと413℃(775°F)まで上げ、そしてその温度で6時間保つことによって、予備硫化させた。
【0056】
[0060]模擬第一段階試験で、10種類の触媒を、水素化分解活性および選択性(すなわち生成物収率)に関して比較した。詳しくは、15.6℃(60°F)で比重0.877(API比重30.05°)、初留点107℃(224°F)、5wt%沸点195℃ (382°F)、終点550℃(1021°F)、そして50wt%沸点424℃(795°F)、13wt%沸点288℃(550°F)未満および26wt%沸点371℃ (700°F)未満を有する水素処理された軽質アラビア減圧軽油(VGO)供給原料を水素化分解することに関して10種類の触媒をそれぞれ試験した。
【0057】
[0061]0℃(32°F)、101.3kPa(a)(14.7psi(a))で測定した場合に供給原料の単位体積当たりの体積水素循環速度1684標準ltr/ltr[15.6℃(60°F)および101.3kPa(a)(14.7psi(a))で測定した場合10000SCFB]、LHSV 1.5hr−1および全圧13786kPa(g)(2000psi(g))で、実験室規模の反応器中に供給原料を通すことによって、模擬第一段階運転に関して各触媒を試験した。充分なジ−tert−ブチルジスルフィドを供給原料に加えて2.1wt%の硫黄を提供し、それにより、商業的な第一段階水素化分解反応器に存在する硫化水素含有雰囲気をシミュレートした。更に、充分なシクロヘキシルアミンを供給原料に加えて780wt−ppmの窒素を提供し、それにより、商業的な第一段階水素化分解反応器に存在するアンモニア含有雰囲気をシミュレートした。
【0058】
[0062]留出物を製造する水素化分解試験のために、100時間にわたって、371℃(700°F)未満で沸騰する材料への転化率を正味65wt%に維持するように必要に応じて温度条件を調整した。正味の転化率は、371℃(700°F)未満で沸点する流出物の供給原料に対するパーセントから、371℃(700°F)未満で沸騰する供給原料のパーセントを引いたものである。100時間が経過したら、65wt%の正味の転化率を維持するのに要する温度を記録し、市販の参照に基づいて、各触媒の活性および選択率を計算した。次いで、ジェット燃料を製造する水素化分解試験のために、100時間にわたって、288℃(550°F)未満で沸騰する材料への転化率を正味65wt%に維持するように必要に応じて温度条件を調整した。正味の転化率は、288℃(550°F)未満で沸騰する流出物の供給原料に対するパーセントから、288℃(550°F)未満で沸騰する供給原料のパーセントを引いたものである。100時間が経過したら、65wt%の正味の転化率を維持するのに要する温度を記録し、市販の参照に基づいて、各触媒の活性および選択率を計算した。それらのデータは表にまとめてある。各触媒に関する活性および収率のデータは、触媒の活性または収率に関する実測値から、参照から得られた活性または収率に関する実測値を引いた差として記録してある。活性に関する値のマイナスが大きいほど、触媒の活性は大きい。
【0059】
【表1】

【0060】
[0063]図1は、参照と比較した活性アドバンテージに対してプロットされた、且つ、VGOからジェット燃料留分への正味で65%の転化率を達成するのに要する反応器温度の観点から表示された、参照と比較した触媒A〜Eの127℃(260°F)〜288℃(550°F)留分ジェット燃料収率アドバンテージのチャートである。図3は、参照と比較した活性アドバンテージに対してプロットされた、且つ、VGOから留出物留分への正味で65%の転化率を達成するのに要する反応器温度の観点から表示された、参照と比較した触媒A〜Eの149℃(300°F)〜371℃(700°F)留分留出物収率アドバンテージのチャートである。触媒A〜Cは、参照に比べてより良好な活性とより大きな収率の両方を示し、一方、触媒D〜Eは参照に比べてより良好な活性は示すが、収率は低い。
【0061】
[0064]図2は、図1と同じ仕方でプロットされ且つ表示された、参照と比較した触媒F〜HおよびJ〜Kのジェット燃料収率アドバンテージのチャートである。図4は、図3と同じ仕方でプロットされ且つ表示された、参照と比較した触媒F〜HおよびJ〜Kの留出物収率アドバンテージのチャートである。触媒Fは、参照に比べてより良好な活性およびより大きな収率の両方を示し、一方、触媒Gは、参照に比べて、より大きな収率を示すが、活性は低い、また、触媒H、JおよびKは、参照に比べて、より良好な活性を示すが、収率は低い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】触媒A〜Eに関して、相対触媒活性に対して相対ジェット燃料収率をプロットしたグラフである。
【図2】触媒F〜Kに関して、相対触媒活性に対して相対ジェット燃料収率をプロットしたグラフである。
【図3】触媒A〜Eに関して、相対触媒活性に対して相対留出物収率をプロットしたグラフである。
【図4】触媒F〜Kに関して、相対触媒活性に対して相対留出物収率をプロットしたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素の存在下、232℃〜454℃の温度および5171kPa(g)〜24132kPa(g)の圧力において、供給原料を、水素化成分と、ベータゼオライトと、そして24.37〜24.44オングストローム、好ましくは24.40〜24.43オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライト、好ましくはLZ−210ゼオライトとを含み且つ乾燥重量を基準としてYゼオライト対ベータゼオライトの重量比が4:1〜7:1、好ましくは5:1〜6:1である触媒と接触させることを含む、炭化水素供給原料を水素化分解する方法。
【請求項2】
該触媒が、担体を含み、且つ、ベータゼオライトと、Yゼオライトと、および担体とを組み合わせた乾燥総重量を基準として、15〜25wt%のYゼオライトと、そして好ましくは35wt%未満のベータゼオライトとを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
該触媒が、担体を含み、且つ、ベータゼオライトと、Yゼオライトと、および担体とを組み合わせた乾燥総重量を基準として、7wt%未満のプラス量のベータゼオライトを含む請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
該Yゼオライトが、30:1未満、好ましくは5.0:1〜12.0:1のシリカ対アルミナ総モル比を有する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該Yゼオライトを:
a)ナトリウムYゼオライトを部分的にアンモニウム交換させる工程;
b)工程(a)から得られた該ゼオライトを水蒸気の存在下で焼成する工程;
c)工程(b)から得られた該ゼオライトをアンモニウム交換させるか、または、工程(b)から得られた該ゼオライトを、水溶液形態のフルオロシリケート塩と接触させる工程;そして、
d)工程(c)から得られた該ゼオライトを水蒸気の存在下で焼成する工程
を含む方法によって調製する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該ベータゼオライトが、少なくとも25wt%のSF吸着容量を有する請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該水素化成分が、IUPAC第6族成分、IUPAC第9族成分およびIUPAC第10族成分から成る群より選択され、そして好ましくはモリブデン、タングステン、ニッケル、コバルトおよびそれらの酸化物および硫化物から成る群より選択される請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該炭化水素供給原料を接触させる工程において、流出物の少なくとも30wt%が288℃未満で沸騰し、そして好ましくは該流出物の少なくとも50wt%未満が288℃未満で沸騰するような、該炭化水素供給原料に比べて低い平均沸点の流出物が生成される請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該炭化水素供給原料を接触させる工程において、流出物の少なくとも30wt%が371℃未満で沸騰し、そして好ましくは該流出物の少なくとも50wt%未満が371℃未満で沸騰するような、該炭化水素供給原料に比べて低い平均沸点の流出物が生成される請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
水素化成分と、ベータゼオライトと、および24.37〜24.44オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライトとを含む触媒を含む組成物であって、該触媒が、乾燥重量を基準として4:1〜7:1のYゼオライト対ベータゼオライト重量比を有し、そして該YゼオライトがLZ−210ゼオライトを好ましく含む前記組成物。
【請求項11】
該Yゼオライトが5.0:1〜12.0:1のシリカ対アルミナ総モル比を有し、そして該水素化成分が、モリブデン、タングステン、ニッケル、コバルトおよびそれらの酸化物および硫化物から成る群より選択される請求項10記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−515029(P2009−515029A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540075(P2008−540075)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/042775
【国際公開番号】WO2007/126419
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】