説明

ベーンポンプ

【課題】ポンプ本体の大きさを変えずに、且つロータの回転数を上げることなく吐出口から吐出される流体の流量を増大可能とすることにより、ベーンの寿命を延ばすことが可能なベーンポンプを提供する。
【解決手段】シリンダ室2及びシリンダ室2に周方向に間隔をおいて開口する流入口3及び吐出口4を備えるポンプ本体1aと、シリンダ室2内に回転自在に配設され且つ両端まで延びる配設溝6が周方向に間隔をおいて形成されたロータ5と、各配設溝6内に出没自在に嵌合保持され且つシリンダ室2の内面に摺接係合する複数のベーン7を備えている。しかも、前記ロータ5の前記複数のベーン7間の部分に周面に開放する容積変化凹部8が形成され、前記容積変化凹部8内に前記シリンダ2室の内面に対して進退移動してシリンダ室2の内面との間隔を変化させる容積変化部材9が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリンダ室内に配設したロータの回転に伴い、このロータに保持させたベーンが周面から出没しながら、このベーンの先端がシリンダ室の内面に対して摺接移動するベーンポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のベーンポンプには、ポンプ本体のシリンダ室と、前記シリンダ室内に偏心させて回転自在に配設され且つ両端まで延びる配設溝内が周方向に間隔をおいて形成されたロータと、前記各配設溝内に出没自在に嵌合保持され且つ前記シリンダ室の内面に摺接係合する複数のベーンを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このベーンポンプでは、ロータの回転に伴い、ベーン間とシリンダ室の内面との間に形成される空間の容積を増大させながら流体をポンプ本体の流入口から前記空間内に取り込んだ後に、前記空間の容積を減少させながらポンプ本体の吐出口から吐出させるようになっている。
【特許文献1】特公昭62−50672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような従来のベーンポンプでは、全体の大きさを大きくしないで吐出口から吐出される流体の流量を増加させようとした場合、ロータの回転数を増加させる必要があった。
【0005】
しかしながら、この場合には、ベーン摩耗が大きくなり、ベーンの寿命が短くなると言う問題があった。
【0006】
そこで、この発明は、小型で容量の大きいベーンポンプを提供することを目的とするものである。
【0007】
また、この発明は、ポンプ本体の大きさを変えずに、且つロータの回転数を上げることなく吐出口から吐出される流体の流量を増大可能とすることにより、ベーンの寿命を延ばすことが可能なベーンポンプを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、請求項1の発明は、シリンダ室及び前記シリンダ室に周方向に間隔をおいて開口する流入口及び吐出口を備えるポンプ本体と、前記シリンダ室内に回転自在に配設され且つ両端まで延びる配設溝が周方向に間隔をおいて形成されたロータと、前記各配設溝内に出没自在に嵌合保持され且つ前記シリンダ室の内面に摺接係合する複数のベーンを備えるベーンポンプにおいて、
前記ロータの前記複数のベーン間の部分に周面に開放する容積変化凹部が形成され、前記容積変化凹部内に前記シリンダ室の内面に対して進退移動して前記シリンダ室の内面との間隔を変化させる容積変化部材が設けられ、前記ベーンとこのベーンの回転方向の後方において隣接する容積変化部材が連動手段で連動させられていると共に、前記連動手段は前記ベーンが前記配設溝内から突出する方向に移動するときに前記容積変化部材が前記容積変化凹部内に移動し且つ前記ベーンが前記配設溝内に没入する方向に移動するときに前記容積変化部材が前記容積変化凹部の開口端部側に移動するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この構成によれば、前記ベーンが前記配設溝内から突出する方向に移動するときに前記容積変化部材が前記容積変化凹部内に移動し且つ前記ベーンが前記配設溝内に没入する方向に移動するときに前記容積変化部材が前記容積変化凹部の開口端部側に移動するようになっているので、小型で容量の大きいベーンポンプを提供することができる。また、ポンプ本体の大きさを変えずに、且つロータの回転数を上げることなく吐出口から吐出される流体の流量を増大可能とすることにより、ベーンの寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1において、ベーンポンプ1は、ポンプ本体(シリンダ)1a及びこのポンプ本体1aの両端に取り付けられたカバー1b,1bを有する。このポンプ本体(シリンダ)1a内には、図2,図3に示したようにポンプ本体1aの両端に開放するシリンダ室2が形成されている。このシリンダ室2の両端はカバー1b,1bにより閉成されている。
【0012】
ポンプ本体1aは、図3に示したようにシリンダ室2及びこのシリンダ室2に開口する流入口3及び吐出口4を有する。この流入口3はシリンダ室2への流入開口3aを有し、吐出口4はシリンダ室2からの吐出開口4aを有する。この流入開口3a及び吐出開口4aは周方向に円弧状に形成されている。
【0013】
この流入開口3aはエア(流体)の流れに対し上流端3a1と下流端3a2を有し、吐出開口4aはエア(流体)の流れに対 し上流端4a1と下流端4a2を有する。この流入口3及び吐出口4は、シリンダ室2の周方向に間隔をおいて設けられていると共に、開口端が同じ方向に向けられている。
【0014】
このシリンダ室2内にはロータ5が回転自在に配設されている。このロータ5は、図2,図4に示したように軸線方向の中央で2分割されたロータ部材5A,5Bを備えている。このロータ部材5A,5Bは、図4に示したようにロータ軸5Cに固定され、図2の対向端面が互いに契合するように付き合わせられている。
【0015】
また、このロータ5は、外径がシリンダ室2の内径より少し小さく形成されていると共に、流入口3及び吐出口4間側に偏心させられていて、流入口3及び吐出口4間の略中間においてシリンダ室2の内面に略接するようになっている。
【0016】
このロータ5には、ロータ部材5A,5Bに跨って両端まで延びる配設溝(ベーン配設溝)6が周方向に間隔をおいて複数形成されている。この配設溝6は、ロータ5の回転中心を所定半径とする円に接する方向に延びている。
【0017】
各配設溝6にはベーン7がシリンダ室2の内面に対して出没自在に嵌合保持されている。このベーン7は、ロータ5の回転に伴う遠心力によりシリンダ室2の内面に対して摺接移動するようになっている。
【0018】
このロータ5は図3中時計回り方向に回転させられるようになっている。しかも、ベーン7は、ロータ5の時計回り方向の回転に伴い、吐出口4から流入口3側に所定量(所定角度)移動する際に配設溝6内に没入させられた後、更に流入口3に向かうに従って配設溝6から徐々に進出して後方に形成される空間の容積を徐々に増大させる。この空間の容積の増大は流入口3を通過した後も所定移動量(所定角度)継続する。
【0019】
また、ベーン7は、流入口3を通過した後に吐出口4側に所定移動量(所定角度)移動した後、吐出口4に向かうに従って配設溝6内に徐々に没入して、前側の空間の容積を徐々に減少させる。そして、ベーン7が吐出開口4aの上流端4a1を超えると、空間内の流体が後方のベーン7により吐出口4から吐出させられるようになっている。
【0020】
また、複数のベーン7,7間の部分には周面に開放する容積変化凹部8が形成されている。この容積変化凹部8は、配設溝6に対して略直交する方向に且つ半径方向に向けて開口していると共に、ロータ5の両端部近傍まで延設されている。しかも、この容積変化凹部8内には、シリンダ室2の内面に対して直線的に進退動することにより、ロータ5の周面に対して進退動(スライド)して、シリンダ室2の内面との間隔を変化させる容積変化部材9が嵌合配設されている。
【0021】
更に、ベーン7は図4に示したようにコイルスプリング10により配設溝6から突出する方向(シリンダ室2の内面側に移動する方向)にバネ付勢されている。しかも、ロータ部材5A,5Bの対向端面間には図4に示したようにワイヤ用溝5D1,5D2が形成され、配設溝6の底面と容積変化凹部8に連通するワイヤ挿通孔5Dがワイヤ用溝5D1,5D2から形成されている。また、ベーン7と容積変化部材9は連動手段としてのワイヤ11により連結させられている。
【0022】
これによりベーン7が、配設溝6内から突出する方向に移動するときに、容積変化部材9が容積変化凹部8内に移動し且つベーン7が配設溝6内に没入する方向に移動するときに容積変化部材9が容積変化凹部8の開口端部側(ロータ5の周面側)に進出移動するようになっている。
【0023】
次に、このような構成のベーンポンプの作用を説明する。
【0024】
ロータ5を図3中時計回り方向に回転させると、ベーン7はロータ5と一体に図3中時計回り方向に回転移動する。この回転に伴いベーン7は、吐出口4から流入口3側に所定量(所定角度まで)移動する際に、コイルスプリング10のバネ力に抗して配設溝6内に没入させられる。
【0025】
この後、ベーン7は、更に流入口3に向かって移動し、ベーン7に作用する遠心力及びコイルスプリング10のバネ力により配設溝6から徐々に進出して、移動方向に対して後方に形成される空間の容積を徐々に増大させる。この際、ベーン7の進出移動力がワイヤ11を介して容積変化部材9に伝達され、容積変化部材9が容積変化凹部8内に徐々に没入させられる。この結果、ベーン7のみの場合よりもベーン7の後方の空間の容積がさらに増大させられる。
【0026】
従って、ベーン7が流入開口3aの上流端3a1を通過すると、このベーン7の後方の空間に流入口3からエア(流体)の流入が開始される。この後、ベーン7の後方の空間の容積は、流入開口3a下流端3a2を通過した後も所定移動量(所定角度まで)継続して増大し、ベーン7の後方の空間へのエアの流入が継続される。
【0027】
一方、ベーン7は、流入口3を通過した後に吐出口4側に所定移動量(所定角度まで)移動した後、シリンダ室2の内面の作用により吐出口4に向かうに従って遠心力及びコイルスプリング10のバネ力に抗して配設溝6内に徐々に没入させられる。この際、ベーン7の配設溝6への没入移動力がワイヤ11を介して容積変化部材9に作用して、この容積変化部材9がコイルスプリング10のバネ力に抗して容積変化凹部8の開口端側に移動させられる。
【0028】
このようにして、ベーン7が流入口3を通過した後に吐出口4側に所定移動量(所定角度まで)移動した後、ベーン7が吐出開口4aに向かうに従ってベーン7の後方の空間の容積が徐々に減少させられる。そして、ベーン7が吐出開口4aを通過する前に後側のベーン7も同様に動作して、前側のベーン7が吐出開口4aを通過すると、前側のベーン7の後方の空間内のエアが後側のベーン7により吐出口4から外方に押し出されることになる。
【0029】
従って、エアの吐出量は、ベーン7のみによりエアを吸い込んで吐出する場合よりも増大させることができる。
(変形例1)
以上説明した実施例では、容積変化部材9を半径方向にスライドする容積変化凹部8内に嵌合して、容積変化部材9とシリンダ室2の内面との間の容積を増減させるようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0030】
例えば、図5に示したように、容積変化凹部8の開口端部を容積変化部材である弾性部材製のダイアフラム(弾性部材)12により閉成し、ダイアフラム12の幅方向中央に容積変化凹部8の長手方向両端部近傍まで延びる支持板13を固着すると共に、この支持板13にワイヤ−11を連結した構成としても良い。この場合、ダイアフラム12の周縁部は容積変化凹部8の開口端部に気密に固定される。
【0031】
このような構成では、ロータ5を図5中時計回り方向に回転させると、ベーン7はロータ5と一体に図3中時計回り方向に回転移動する。この回転に伴いベーン7は、吐出口4から流入口3側に所定量(所定角度まで)移動する際に、図4のコイルスプリング10のバネ力に抗して配設溝6内に没入させられる。
【0032】
この後、ベーン7は、更に流入口3に向かって移動し、ベーン7に作用する遠心力及びコイルスプリング10のバネ力により配設溝6から徐々に進出して後方に形成される空間の容積を徐々に増大させる。
【0033】
この際、ベーン7は上述したように図4のコイルスプリング10で半径方向に進出移動する方向にバネ付勢されているので、ベーン7が図5の(a)で示したように流入口3側に移動して、ベーン7が配設溝6から外方に徐々に進出移動するときには、ベーン7がワイヤ11を介して支持板13をダイアフラム12の弾性力に抗して容積変化凹部8の底部側に徐々に引っ張って、ダイアフラム12が容積変化凹部8の底部側に徐々に膨出するように引っ張り変形させる。
【0034】
これにより、ダイアフラム12は、容積変化凹部8の底部側に徐々に膨出するように変形させて、容積変化部材9とシリンダ室2の内面との間の容積を徐々に増大させる。
【0035】
そして、流入口3の部分において、ベーン7が上述した図4のコイルスプリング10で図5の(b)で示したように配設溝6から外方に大きく進出させられたときには、ベーン7がワイヤ11を介して支持板13をダイアフラム12の弾性力に抗して容積変化凹部8の底部側に更に大きく引っ張って、ダイアフラム12が容積変化凹部8の底部側に更に大きく膨出するように変形させて、容積変化部材9とシリンダ室2の内面との間の容積が増大される。この結果、ベーン7のみの場合よりもベーン7の後方の空間の容積がさらに増大させられる。
【0036】
従って、ベーン7が流入開口3aの上流端3a1を通過すると、このベーン7の後方の空間に流入口3からエア(流体)の流入が開始される。この後、ベーン7の後方の空間の容積は、流入開口3a下流端3a2を通過した後も所定移動量(所定角度まで)継続して増大させられ、ベーン7の後方の空間へのエアの流入が継続される。
【0037】
一方、ベーン7は、流入口3を通過した後に吐出口4側に所定移動量(所定角度まで)移動した後、シリンダ室2の内面の作用により吐出口4に向かうに従って遠心力及びコイルスプリング10のバネ力に抗して配設溝6内に徐々に没入させられる。この際、ベーン7の配設溝6への没入移動力がワイヤ11を介して容積変化部材9に作用して、この容積変化部材9がコイルスプリング10のバネ力に抗して容積変化凹部8の開口端側に移動させられる。
【0038】
そして、ベーン7が吐出口4に向かうに従って、ベーン7が図5の(c)で示したようにシリンダ室2の内面の作用により配設溝6内に没入させられるときには、ベーン7の容積変化凹部8内への移動力がワイヤ11を介して支持板13に伝達されて、ベーン7が支持板13を容積変化凹部8の開口端側に押圧する。
【0039】
これにより、ダイアフラム12は、容積変化凹部8の開口端側に自己の弾性力及びベーン7による押圧力で平坦になる方向に復帰させられ、容積変化部材9とシリンダ室2の内面との間の容積を徐々に減少させる。
【0040】
また、ベーン7の大半が図5の(d)で示したようにシリンダ室2の内面の作用により配設溝6内に没入させられるときには、ベーン7の容積変化凹部8内への移動力がワイヤ11を介して支持板13に伝達されて、ベーン7が支持板13を容積変化凹部8の開口端側に押圧する。これにより、ダイアフラム12は、容積変化凹部8の開口端側に自己の弾性力及びベーン7による押圧力で略平坦に復帰させられ、容積変化部材9とシリンダ室2の内面との間の容積が減少させられる。
【0041】
このようにして、ベーン7が流入口3を通過した後に吐出口4側に所定移動量(所定角度まで)移動した後、ベーン7が吐出開口4aに向かうに従ってベーン7の後方の空間の容積が徐々に減少させられる。そして、ベーン7が吐出開口4aを通過する前に後側のベーン7も同様に動作して、前側のベーン7が吐出開口4aを通過すると、前側のベーン7の後方の空間内のエアが後側のベーン7により吐出口4から外方に押し出されることになる。
【0042】
従って、エアの吐出量は、ベーン7のみによりエアを吸い込んで吐出する場合よりも増大させることができる。
【0043】
また、ダイアフラム12は、摺動することなく単に往復変形するのみで容積変化を行うことができるで、ベーンポンプの容量増大を簡単な構成で実現できる。しかも、ダイアフラム12は、摺動することがないので、容積変化凹部8への取付部のシール性を簡単に実現できる。
(変形例2)
図1〜図4に示した実施例では、容積変化凹部8と配設溝6を直交させた構成としたが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図6に示したように容積変化凹部8と配設溝6を平行に設けても良い。
【0044】
また、図1〜図4に示した実施例では、ベーン7をコイルスプリング10で配設溝6から外方に突出する方向にバネ付勢した構成としたが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図6に示したように容積変化部材9をコイルスプリング10で容積変化凹部8内に没入する方向に引っ張るようにした構成としても良い。
【0045】
尚、作用及び効果は図1〜図4に示した実施例と略同じなので、その説明は省略する。
(変形例3)
以上説明した実施例では、配設溝6と同方向に開口する容積変化凹部8を形成して、この容積変化凹部8内にシリンダ室2の内面に対して直線的に進退動する容積変化部材9を嵌合配設した構成としたが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図7に示したように構成してもよい。
【0046】
この図7では、容積変化凹部8の開口端部内には断面円弧状の容積変化部材としての円弧状の回動板14が嵌合配設されている。そして、この回動板14の回転方向の後端部がロータ5の回転軸線と平行な支持軸15でロータ5に回動可能に取り付けられている。しかも、回動板14は、コイルスプリング10で自由端が容積変化凹部8内に没入する方向に回動付勢されていると共に、連動手段であるワイヤ11によりベーン7に連動させられている。尚、他の構成は上述した実施例と同じである。
【0047】
次に、このような構成のベーンポンプの作用を説明する。
【0048】
ロータ5を図7中時計回り方向に回転させると、ベーン7はロータ5と一体に図7中時計回り方向に回転移動する。この回転に伴いベーン7は、吐出口4から流入口3側に所定量(所定角度まで)移動する際に、コイルスプリング10のバネ力に抗して配設溝6内に没入させられる。
【0049】
この後、ベーン7は、更に流入口3に向かって移動し、ベーン7に作用する遠心力及びコイルスプリング10のバネ力により配設溝6から徐々に進出して後方に形成される空間の容積を徐々に増大させる。この際、ベーン7の進出移動力がワイヤ11を介して回動板14に伝達され、回動板14は支持軸15を中心に自由端部が容積変化凹部8内に徐々に没入させられる。これにより、ベーン7のみの場合よりもベーン7の後方の空間の容積がさらに増大させられる。
【0050】
そして、ベーン7が流入開口3aの上流端3a1を通過すると、このベーン7の後方の空間に流入口3からエア(流体)の流入が開始される。この後、ベーン7及び回動板(容積変化部材)14による空間の容積は流入開口3a下流端3a2を通過した後も所定移動量(所定角度まで)継続して、空間へのエアの流入が継続される。
【0051】
一方、ベーン7は、流入口3を通過した後に吐出口4側に所定移動量(所定角度まで)移動した後、シリンダ室2の内面の作用により吐出口4に向かうに従って遠心力及びコイルスプリング16のバネ力に抗して配設溝6内に徐々に没入させられる。この際、ベーン7の配設溝6への没入移動力がワイヤ11を介して回動板14に作用して、この回動板14は自由端部がコイルスプリング10のバネ力に抗して容積変化凹部8の開口端側に移動させられる。
【0052】
このようにして、ベーン7が流入口3を通過した後に吐出口4側に所定移動量(所定角度まで)移動した後、ベーン7が吐出開口4aに向かうに従ってベーン7の後方の空間の容積が徐々に減少させられる。そして、ベーン7が吐出開口4aを通過する前に後側のベーン7も同様に動作して、前側のベーン7が吐出開口4aを通過すると、前側のベーン7の後方の空間内のエアが後側のベーン7により吐出口4から外方に押し出されることになる。
【0053】
以上説明したように、この発明の実施の形態のベーンポンプは、シリンダ室2及び前記シリンダ室2に周方向に間隔をおいて開口する流入口3及び吐出口4を備えるポンプ本体1aと、前記シリンダ室2内に回転自在に配設され且つ両端まで延びる配設溝6が周方向に間隔をおいて形成されたロータ5と、前記各配設溝6内に出没自在に嵌合保持され且つ前記シリンダ室2の内面に摺接係合する複数のベーン7を備えている。しかも、前記ロータ5の前記複数のベーン7間の部分に周面に開放する容積変化凹部(8)が形成され、前記容積変化凹部(8)内に前記シリンダ2室の内面に対して進退移動して前記シリンダ室2の内面との間隔を変化させる容積変化部材(容積変化部材9,ダイアフラム12,回動板14)が設けられていると共に、前記ベーン7とこのベーンの回転方向の後方において隣接する容積変化部材(容積変化部材9,ダイアフラム12,回動板14)が連動手段(ワイヤ11)で連動させられていると共に、前記連動手段(ワイヤ)は前記ベーン7が前記配設溝6内から突出する方向に移動するときに前記容積変化部材(容積変化部材9,ダイアフラム12,回動板14)が前記容積変化凹部(8)内に移動し且つ前記ベーン7が前記配設溝6内に没入する方向に移動するときに前記容積変化部材(容積変化部材9,ダイアフラム12,回動板14)が前記容積変化凹部(8)の開口端部側に移動するようになっている。
【0054】
この構成によれば、前記ベーン7が前記配設溝6内から突出する方向に移動するときに前記容積変化部材(容積変化部材9,ダイアフラム12,回動板14)が前記容積変化凹部(8)内に移動し且つ前記ベーン7が前記配設溝6内に没入する方向に移動するときに前記容積変化部材(容積変化部材9,ダイアフラム12,回動板14)が前記容積変化凹部(8)の開口端部側に移動するようになっているので、小型で容量の大きいベーンポンプを提供することができる。しかも、ポンプ本体1aの大きさを変えずに、且つロータ5の回転数を上げることなく吐出口4から吐出される流体の流量を増大可能とすることができ、ベーン7の寿命を延ばすことができる。
【0055】
また、この発明の実施の形態のベーンポンプの前記容積変化部材(ダイアフラム12)は弾性部材から形成されている。
【0056】
この構成によれば、簡単な構成で小型で容量の大きいベーンポンプを提供することができる。しかも、容積変化部材が弾性部材から形成されているので、摩耗がなくシール性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明に係るベーンポンプの斜視図である。
【図2】図1のベーンポンプの分解斜視図である。
【図3】図1のA´−A´線に沿うベーンポンプの断面図である。
【図4】図3のA2−A2線に沿う断面図である。
【図5】この発明にかかるベーンポンプの変形例を示す断面図である。
【図6】この発明にかかるベーンポンプの他の変形例を示す断面図である。
【図7】この発明にかかるベーンポンプの更に他の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…ベーンポンプ
1a…ポンプ本体
2…シリンダ室
3…流入口
4…吐出口
5…ロータ
6…配設溝
7…ベーン
8…容積変化凹部
9…容積変化部材
11…ワイヤ(連動手段)
12…ダイアフラム(容積変化部材、弾性部材)
14…回動板(容積変化部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ室及び前記シリンダ室に周方向に間隔をおいて開口する流入口及び吐出口を備えるポンプ本体と、前記シリンダ室内に回転自在に配設され且つ両端まで延びる配設溝が周方向に間隔をおいて形成されたロータと、前記各配設溝内に出没自在に嵌合保持され且つ前記シリンダ室の内面に摺接係合する複数のベーンを備えるベーンポンプにおいて、
前記ロータの前記複数のベーン間の部分に周面に開放する容積変化凹部が形成され、前記容積変化凹部内に前記シリンダ室の内面に対して進退移動して前記シリンダ室の内面との間隔を変化させる容積変化部材が設けられ、前記ベーンとこのベーンの回転方向の後方において隣接する容積変化部材が連動手段で連動させられていると共に、前記連動手段は前記ベーンが前記配設溝内から突出する方向に移動するときに前記容積変化部材が前記容積変化凹部内に移動し且つ前記ベーンが前記配設溝内に没入する方向に移動するときに前記容積変化部材が前記容積変化凹部の開口端部側に移動するようになっていることを特徴とするベーンポンプ。
【請求項2】
前記容積変化部材は弾性部材から形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−46232(P2006−46232A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230355(P2004−230355)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】