説明

ペイロード発射ロック機構

【課題】低衝撃でペイロードを開放するペイロード発射ロック装置を提供する。
【解決手段】ペイロード発射ロック機構100は、ベース102と、プレロードクランプ104と、ファスナ106と、形状記憶合金(SMA)アクチュエータと、を含む。プレロードクランプは、ペイロードを解放可能に拘束するように構成される。ファスナは、軸に沿ってプレロードクランプを通って延びてベースに入り、プレロードクランプにペイロードを拘束するのに十分な力を供給する。SMAアクチュエータは、電流を受け取るように構成され、電流の受け取りに応じて、ファスナが破断することなく伸長する原因となる力を供給する。プレロードクランプは、ファスナの伸長に応じて、回転または枢動することでペイロードを解放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、NASAにより与えられたNNG09HR00Cの下で政府の支援によりなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
[0002]本発明は、広く宇宙船のペイロードの解放可能なロックに関し、より具体的には、ピボットペイロード発射ロックに関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]多くの宇宙船は、1つ以上のペイロードを含み、これらは宇宙船が軌道に乗った後に解放される。宇宙船の発射の間、相対的に大きな振動および推力の負荷がペイロードに与えられることがある。したがって、ペイロードは、典型的には、発射ロック装置を用いて宇宙船上に取り付けられ、発射ロック装置は、これらの振動および推力の負荷に対してペイロードを拘束するように構成され、また、宇宙船が軌道に乗ったときにペイロードを解放するように構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0004]一般に用いられる発射ロック装置は、火花技術または形状記憶合金(SMA)を用いてボルトを破壊することにより、ペイロードを解放するように構成される。一般に安全で、信頼性があり、ロバスト性のあるこれらの発射ロック装置は、ある種の欠点がある。たとえば、ボルトの破壊は、高周波加速(たとえば衝撃)からペイロードに相対的に高い負荷を伝達する。これは潜在的にペイロードの損傷を生じさせ得る。
【0004】
[0005]低衝撃発射ロック装置は、様々な技術を用いて使用され、いくつかは、ボルトの破壊の代わりにボルトを伸縮させるのに用いられるSMA材料を含み、それにより、ギャップを開放してペイロードを解放する。このギャップは、停止部がぶつかる前にペイロードの運動範囲に等しくなる。当該技術分野のそのような装置のアプローチの現在の状態は、ダイナミックレンジを制限し、それゆえ、ペイロードは、具体的な実施形態の詳細により、制限された運動範囲を可能にする。
【0005】
[0006]それゆえ、発射の間にペイロードを十分に拘束し、相対的に高い負荷からペイロードへの伝達なく(すなわち低衝撃)ペイロードを実質的に解放し、利用可能なペイロードの運動範囲を増加させるペイロード発射ロック装置への需要がある。本発明は少なくともこの需要に対応する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0007]一実施形態において、また、1つの例として、ペイロード発射ロック機構は、ベース、プレロードクランプ、ファスナ、および形状記憶合金(SMA)アクチュエータを含む。プレロードクランプは、ベースに対して回転可能に取り付けられ、解放可能にペイロードを拘束するように構成される。ファスナは、軸に沿って、プレロードクランプを通ってベース内に延び、プレロードクランプにペイロードを拘束するのに十分な力を提供する。SMAアクチュエータは、ベースとファスナとの間に配置され係合する。SMAアクチュエータは、電流を受け入れるように構成され、電流の受け取りに応じて、破断無くファスナを引き伸ばす力を提供する。プレロードクランプは、ファスナの引き延ばしに応じて、軸を中心に回転しペイロードを解放する。
【0007】
[0008]他の例示的な実施形態において、ペイロード発射ロック機構は、ベース、プレロードクランプ、ファスナ、および形状記憶合金(SMA)アクチュエータを含む。プレロードクランプは、ベースに枢動式に取り付けられ、ペイロードを解放可能に拘束するように構成される。ファスナは、第1軸に沿って、プレロードクランプを通ってベース内に延び、ペイロードを拘束するのに十分な力をプレロードクランプに供給する。SMAアクチュエータは電流を受け取るように構成され、また、電流の受け取りに応じて、破断なくファスナを引き伸ばす原因となる力を提供するように構成される。プレロードクランプは、ファスナの引き伸ばしに応じて、第1軸に垂直な第2軸を中心に枢動し、ペイロードを解放する。
【0008】
[0009]他の例示的な実施形態において、ペイロード発射ロック機構は、ベース、プレロード、ファスナ、スプリング、および形状記憶合金(SMA)アクチュエータを含む。プレロードクランプは、回転式にベースに取り付けられ、解放可能にペイロードを拘束するように構成される。プレロードクランプは、追加的に、ロック位置と非ロック位置との間で回転可能である。ファスナは、軸に沿って、プレロードクランプを通りベース内に延びる。ファスナは、プレロードクランプにペイロードを拘束するのに十分な力を提供する。スプリングは、ベースとプレロードクランプとの間に連結され、また、プレロードクランプに捩れ力を供給するように構成され、これは、プレロードクランプを非ロック位置に付勢する。形状記憶合金(SMA)アクチュエータは、ベースとプレロードクランプとの間に配置される。SMAアクチュエータは、電流を受け取るように構成され、また、電流の受け取りに応じて、破断なくファスナを引き伸ばす原因となる力を供給するように構成される。プレロードクランプは、ファスナの引き伸ばしに応じて、軸を中心に回転しペイロードを解放する。
【0009】
[0010]さらに、枢動式ペイロード発射ロックの他の望ましい特徴および特質は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲を添付図面および上述の背景とともに参照することにより明らかになるであろう。
【0010】
[0011]本発明は、以下において添付図面とともに説明され、図面において同様の符号は同様の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ペイロード発射ロック機構の第1の例示的な実施形態の斜視図である。
【図2】図1の例示的なペイロード発射ロック機構の断面図である。
【図3】図1の例示的なペイロード発射ロック機構の斜視図であり、ロック位置にある状態の図である。
【図4】図1の例示的なペイロード発射ロック機構の斜視図であり、解放位置にある状態の図である。
【図5】ペイロード発射ロック機構の第2の例示的な実施形態の斜視図である。
【図6】図5の例示的なペイロード発射ロック機構の断面図である。
【図7】例示的なペイロード発射ロック機構の斜視図であり、ロック位置にある状態の図である。
【図8】例示的なペイロード発射ロック機構の斜視図であり、解放位置にある状態の図である。
【図9】ペイロード発射ロック機構の第3の例示的な実施形態の斜視図である。
【図10】図9の例示的なペイロード発射ロック機構の断面図である。
【図11】図9の例示的なペイロード発射ロック機構の図であり、ロック位置にある状態の図である。
【図12】図9の例示的なペイロード発射ロック機構の図であり、解放位置にある状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0021]以下の詳細な説明は、本来的に単なる例示であり、本発明または本発明の用途や使用を限定することを意図するものではない。ここで使用される用語「例示」とは、「例、実例、図例としての役割である」ということを意味する。したがって、ここで開示される「例示」としての任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されない。ここで開示されるあらゆる実施形態は、例示的な実施形態であり、当業者が本発明を実施または使用することが可能になるように提供される。本発明は、請求項により画定される。さらに、上述の技術分野、背景技術、発明の概要、または以下の詳細な説明において明示的または暗示的に示されるいかなる理論に関連付けられることを意図するものではない。
【0013】
[0022]図1、2を参照すると、ペイロード発射ロック機構100の一実施形態が示されており、ベース102、プレロードクランプ104、ファスナ106、形状記憶合金(SMA)アクチュエータ108を含む。ベース102は、宇宙船のような車両の一体的部分を有し、または、これは別個の構造として実施化でき車両に連結される。
【0014】
[0023]プレロードクランプ104は、ベース102に対して回転可能に取り付けられ、ペイロード112を解放可能に拘束するように構成される。プレロードクランプ104は、図示の実施形態ではトウクランプとして構成され、これは、図1−3に示されるロック位置と図4に示される非ロック位置との間で回転可能である。プレロードクランプ104は、ハードウェア開口部114を含み、また、ファスナ106および好適な取り付けハードウェアを介して回転可能に取り付けられる。取り付けハードウェアは様々なものとすることができるが、図示の実施形態においては、球形ベアリング116、第1ロードワッシャ118、および第2ワッシャ122を含む。
【0015】
[0024]ファスナ106は、軸124に沿って、ハードウェア開口部114、球形ベアリング116、第1ロードワッシャ118、第2ワッシャ122を通って延び、ベース102に入る。ファスナ106は、第1端部区域126、第2端部区域128、およびネック形成下区域132を含む。第1端部区域126はネジ部を備え、このネジ部は、ベース102におけるネジ付き開口部134内に形成されたネジ部に係合する。ネック形成下区域132は、第1端部区域126と第2端部区域128との中間に配置され、また、第1および第2の端部区域126、128の直径よりも小さな直径を備える。ファスナ106は、ネジ付き開口部134内にねじ込まれ、第2端部区域128内に形成される調整ヘッド136を介して、プレロードクランプ104にペイロード112を拘束し、プレロードクランプをロック位置に保持するのに十分な力を供給するために調整される。
【0016】
[0025]SMAアクチュエータ108は、ベース102とプレロードクランプ104との間に配置される。SMAアクチュエータ108は、たとえは非図示の複数の電気リードを介して電流を受け取るように構成される。SMAアクチュエータ108は、電流の受け取りに応じて、膨張してファスナ106に力を供給する。ファスナに供給される力は、ファスナ、より具体的にはファスナ106のネック形成区域(necked-down section)132が破断せずに伸びるようにするのに十分な力である。ファスナ106が伸びる量は様々であり、また、たとえばSMAアクチュエータ、ファスナ106の材料組成、およびネック形成区域132の寸法などに依存し得る。それにも関わらず、ファスナの伸びる量は、プレロードクランプ104を変位させるのに十分である。
【0017】
[0026]図1、2にさらに示すように、ペイロード発射機構100は、好ましくはバネ138を含む。バネ138は、ベース102とプレロードクランプ104との間に連結され、また、軸124と同軸になるように配置される。バネ138は、プレロードクランプ104が非ロック位置からロック位置に回転されるときに、プレロードクランプ104にねじれ力を供給するように構成される。SMAアクチュエータ108がファスナ106を延ばす力を供給してプレロードクランプ104を変位させるとき、バネ138からのねじれ力は、プレロードクランプ104を軸124を中心に回転させてペイロード112を解放する。
【0018】
[0027]図1−4に示され、また上述されたペイロード発射機構100の構成は、1つの具体的な実施形態の単なる例示であり、多数の代替構成を用いて実施化することができる。そのような1つの代替構成が図5−8に示されている。図5−8に示される代替的なペイロード発射機構500は、図1−4に示される実施形態に類似するように構成される。図5−8に示される同様の符号は、図1−4に示される実施形態の同様の部分を示す。これらの実施形態の主な違いは、図5−8に示されるプレロードクランプ104は、トウクランプとして構成されず、ペイロード112の少なくとも一部が軸124と同軸であることである。図5−8に示されるペイロード発射機構500は、図1−4に示されるものと実質的に同様に動作し、この実施形態のさらなる説明は提供しない。
【0019】
[0028]他の代替実施形態が図9−12に示される。容易に分かるように、図9−12に示されるペイロード発射機構900は、図1−4に示される実施形態に類似しており、ベース102、プレロードクランプ104、ファスナ106、SMAアクチュエータ108を含んでいる。この代替実施形態は、他の実施形態として、同一(または実質的に同一)の取り付けハードウェア116、118、122を含む。しかし、この実施形態は同一のバネ138を含んでいないことに注意されたい。さらに、以下で説明されるように、プレロードクランプ104は、軸124を中心とする回転によりペイロード112を解放するのではない。
【0020】
[0029]図10に最も明瞭に示されているように、この実施形態のペイロード発射機構900は、実際にバネ1002を含んでいる。バネ1002はベース102とプレロードクランプ104との間に連結され、プレロードクランプ104に力を供給するが、この力は、軸124を中心とするねじれ力ではない。むしろ、図11、12に最も明瞭に示されているように、この力は、ファスナ106の伸びに際して、プレロードクランプ104を第2軸902を中心に枢動させるような力であり、第2軸902は軸124に垂直である。したがって、ロック位置から非ロック位置への回転ではなく、プレロードクランプは、ロック位置(図9−11)から非ロック位置(図12)へ枢動する。
【0021】
[0030]本明細書で開示されるペイロード発射ロック機構100、500、900は、発射の時にペイロード112を十分に拘束し、プレロードクランプ104の回転または枢動により、相対的に大きな負荷をペイロード112に伝達することなくペイロード112を実質的に解放することを可能にし、また、回転または枢動機構を備えない公知の機構よりも大きなペイロードの運動範囲を備える。
【0022】
[0031]少なくとも1つの例示的な実施形態が上述の本発明の詳細な説明において示されたが、多数の変形例が存在することに注意されたい。また、例示的な実施形態は、単なる例示であり、本発明の範囲、用途または構成をいかなる意味でも限定することを意図するものではない。むしろ、上述の詳細な説明は、当業者に本発明の例示的な実施形態を実施するための便宜的なロードマップを提供するものである。添付の特許請求の範囲において規定される本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態において説明された要素の機能および構成を様々に変更することができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペイロード発射ロック機構であって、
ベースと、
前記ベースに回転式に取り付けられ、ペイロードを解放可能に拘束するように構成されるプレロードクランプと、
軸に沿って、前記プレロードクランプを通って延びて前記ベースに入るファスナと、を有し、前記ファスナは、前記プレロードクランプに前記ペイロードを拘束するのに十分な力を供給し、
前記ペイロード発射ロック機構はさらに、前記ベースと前記プレロードクランプとの間に配置される形状記憶合金(SMA)アクチュエータを有し、前記SMAアクチュエータは、電流を受け取るように構成され、且つ、電流の受け取りに応じて、前記ファスナが破断することなく伸長する原因となる力を供給するように構成され、
前記プレロードは、前記ファスナの伸長に応じて、前記軸を中心に回転してペイロードを解放する、ペイロード発射ロック機構。
【請求項2】
ペイロード発射ロック機構であって、
ベースと、
枢動式に前記ベースに取り付けられ、ペイロードを解放可能に拘束するように構成されるプレロードクランプと、
第1軸に沿って、前記プレロードクランプを通り前記ベースに入るファスナと、を有し、前記ファスナは、前記プレロードクランプにペイロードを拘束するのに十分な力を供給し、
前記ペイロード発射ロック機構はさらに、前記ベースと前記プレロードクランプとの間に配置される形状記憶合金(SMA)アクチュエータを有し、前記SMAアクチュエータは、電流を受け取るように構成され、且つ、電流の受け取りに応じて、前記ファスナが破断することなく伸長する原因となる力を供給するように構成され、
前記プレロードクランプは、前記ファスナの伸長に応じて、第2軸を中心に枢動してペイロードを解放し、前記第2軸は前記第1軸に垂直である、ペイロード発射ロック機構。
【請求項3】
ペイロード発射ロック機構であって、
ベースと、
前記ベースに回転式に取り付けられ、ペイロードを解放可能に拘束するプレロードクランプと、を有し、前記プレロードクランプは、ロック位置と非ロック位置との間で回転可能であり、
ペイロード発射ロック機構はさらに、軸に沿って、前記プレロードクランプを通り前記ベースに入るファスナを有し、前記ファスナは、前記プレロードクランプにペイロードを拘束するのに十分な力を供給し、
ペイロード発射ロック機構はさらに、前記ベースと前記プレロードクランプとの間に連結され、前記プレロードクランプに、前記プレロードクランプを非ロック位置に向かって付勢するねじれ力を供給するように構成されるバネと、
前記ベースと前記プレロードクランプとの間に配置される形状記憶合金(SMA)アクチュエータと、を有し、前記SMAアクチュエータは、電流を受け取るように構成され、且つ、電流の受け取りに応じて、前記ファスナが破断することなく伸長する原因となる力を供給するように構成され、
前記プレロードクランプは、前記ファスナの伸長に応じて、前記軸を中心に回転してペイロードを解放する、ペイロード発射ロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−101781(P2012−101781A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−186239(P2011−186239)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】