説明

ペグを具えた傷の吸引器具

傷の中に設置して傷から好ましくない流体及び組織片を吸引することによって治療及び傷の回復を促進するための器具が提供されている。本器具は、体液によって人体の中で軟化可能な多繊維の材料でできたペグの吸引ヘッドを有している。体に付けるための膜及びカフを有しており、吸引チューブがペグの吸引ヘッド及び吸引ポンプと連通しており、ペグの吸引ヘッドで吸引する。剛性のあるペグを挿入することができる一方で、ペグは、傷又は膿の中に挿入した後にペグが接触する体液といった流体の中で軟化するよう構成されている。このような軟化により、物質を吸引するとペグが形状を変えて傷又は膿瘍腔を確実に縮めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、傷の治療技術における器具に関する。特に、本発明は、吸引ヘッドを動作させるための多繊維のペグを有して傷から余分な流体を除去する新たな傷の治療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
漿液腫といった創腔は、時として外科手術の際に組織の塊を除去した後に、又は体への他の侵襲的な外傷によって人間の肉体に形成される。このような内部空洞は、一般に、外科手術を完了して皮膚を閉塞した後に成長する。これらの空洞、及び感染によって生じる傷のようなもの及び膿瘍腔を治療するシステム及び方法の必要性が有る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、傷の中に配置して傷から好ましくない流体及び組織片を吸引することによって、治療及び傷の回復を促進するための器具を取り扱う。本器具は、好適には、体液によって人体の中で軟化できる多繊維の材料でできたペグから成る吸引ヘッドを具えている。
【0004】
本器具は、患者の体、一般には創傷部の上に配置するよう構成された頭部ユニットを有している。頭部ユニットは多くの形式を取るものと想定されるが、第1の実施例では、体に付けるための膜及びカフと、吸引ポンプと連通して動作可能な(又は吸引ポンプと連通可能な)吸引チューブと、吸引チューブと連通して動作可能なペグと、を具えている。吸引チューブを結合部を介して頭部ユニットの残りの部分に取り外し可能に付けてもよい。吸引ラインは、吸引チューブ、ペグ、及び頭部ユニットの残りの部分を通して連続しており、この吸引ラインがこれらの部品のための動作可能な連通を提供する。
【0005】
ペグは、表皮、傷跡、かさぶた、及び傷又は膿を閉塞又はカバーできる他の組織を通して挿入可能な剛性のある材料でできている。剛性のあるペグを挿入することができる一方、傷又は膿の中に挿入した後にペグが接触する体液といった流体の中で軟化するようペグを構成する。このような軟化によりペグが形状を変えることができ、物質が吸引されると傷又は膿瘍腔を確実に縮める。このような確実な動作により、軟化しないで傷/膿瘍腔を囲む良好な組織に適合していないペグによる望ましくない貫通を制限するのに役立つ。
【0006】
吸引チューブ、又はチューブは、好適にはチューブが体の外で結合される吸引装置の動力の下で、傷から流体を除去するための導管として機能する。ペグは、このような吸引器具の先端部として機能する。治療処置の際に、吸引チューブは導管として機能して、吸引チューブを通して傷から余分な流体を除去する。好適には、吸引チューブが体の外の真空ポンプ(図示せず)といった吸引装置に結合されており、空洞から余分な流体を除去し易くする。
【0007】
本発明及び方法を人間だけではなく動物に使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、創腔の中に送出された本発明の第1の実施例の側面図である。
【図2】図2は、創腔の中に送出された本発明の第2の実施例の平面図である。
【図3】図3は、創腔の中に送出された本発明の第2の実施例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好適な実施例についての以下の詳細な説明において、実施例の一部を形成し、本発明を実施する特定の好適な実施例を説明するために示す添付図面を参照する。これらの実施例は、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に記載されており、本発明の精神又は範囲から逸脱すること無しに、他の実施例を使用してもよく、理にかなった機械的、構造的、及び化学的な変更を行ってもよいことに留意されたい。当業者が本発明を実施するのに不要な説明を避けるために、本明細書は当業者が既知の特定の情報を省略する。このため、以下の詳細な説明は限定的な意味として取るべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって規定される。
【0010】
図を参照すると、図1は、傷の膿瘍腔の中に挿入された本発明の実施例を示している。膜及びカフ(cuff)が頭部ユニットの一部を構成しており、体の表面に配置され、ペグ(peg)又は吸引先端部を具えて皮膚層を通って膿瘍腔の中に挿入される。ペグは中空であり、1又はそれ以上の開口部又は細孔を有している。開口部又は細孔は、頭部ユニットを通して吸引ラインと連通している。ペグを通して加えられる吸引により、ペグの細孔又は開口部の中に吸引ラインを通して膿瘍腔の体液及び組織片を引き出し、膿瘍腔を排出する。
【0011】
ペグが剛性を有していることによりペグを始めに挿入し易くなっている。ペグのこのような剛性は、ペグの製造に使用する材料の自然的特質であり、又はペグに適用される硬化剤の使用によって剛性が導入される。硬化剤は、のり(starch)、複合炭水化物、又はゼラチンが想定されるが、空気中で必要な剛性を呈し流体中で軟化する性質を有する他の物質もまた使用してもよい。想定される代替例は、硬化剤とともに柔軟性のあるペグを使用することであり、硬化剤自身が軟化するのではなく、硬化剤は柔軟性のあるペグを膿瘍の中に入れたままにしておくと流体の存在下で単に分解するものである。
【0012】
図2は、吸引チューブに取り付け得るフランジ及び結合部を具えた本発明を示している。ストラップ又は絆創膏といった様々な方法でカフ及び膜を皮膚に付けることが可能であり、又はそれらを単に皮膚の上に載せてもよくペグが所定の位置にユニットを保持し得る。
【0013】
図3は、結合部から取り外した吸引チューブを具えた本発明を示している。ペグは、十分な剛性を与える多繊維の材料でできていると想定され、ペグが膿瘍腔を覆う組織及び組織片を貫通し得る。また、ペグは、傷の中の流体及び組織片を吸引して吸引ラインの中に吸引し得るのに必要な開口部を提供する。ペグは、その長手軸に沿って中空であると想定され、吸引ラインと連通し得る。ペグが作られる多くの材料が有るが、使用するのに想定されるそれらのいくつかは、シリコーン、テフロン(登録商標)、プラスチック及び繊維又はメッシュと同じようなものである。
【0014】
当業者は、本発明に係る上記のペグ及び硬化剤の代わりに又は上記のペグに加えて、材質を使用してもよいことを認識するであろう。
【0015】
特定の実施例を参照して本発明を説明したが、本明細書は限定する意味で解釈されることを意図するものではない。本発明の代替的な実施例とともに開示した実施例の様々な変更が、本発明の記載を参照して、当業者にとって明らかとなろう。このため、添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内に収まるこのような変更をカバーするものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創腔から流体及び組織片を吸引するための傷の吸引器具であって、
当該器具が、前記創腔を覆う組織を貫通するのに十分な剛性を有し流体の存在下で軟化し易い繊維材料から成る吸引先端部と、
前記創腔の中の前記吸引先端部を囲むカフ(cuff)と、
線維状の前記吸引先端部と流通する吸引ラインと、
ことを特徴とする器具。
【請求項2】
前記吸引先端部が長手軸を有するペグ(peg)状を有しており、前記長手軸に沿って通路が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
さらに、前記吸引先端部が、前記通路と流通する複数の開口部を具えていることを特徴とする請求項2に記載の器具。
【請求項4】
さらに、前記吸引先端部の長手軸に沿って配置された通路と、
ポンプと、を具えており、
前記吸引ラインが、前記ポンプに結合された第1の端部及び前記通路に結合された第2の端部を有していることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項5】
さらに、前記吸引先端部が、前記通路と流通する複数の開口部を具えていることを特徴とする請求項4に記載の器具。
【請求項6】
さらに、前記吸引先端部の長手軸に沿って配置された通路と、
真空ポンプと、を具えており、
前記吸引ラインが、前記真空ポンプに結合された第1の端部及び前記通路に結合された第2の端部を有していることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項7】
さらに、カフ(cuff)をカバーするフランジと、
前記フランジに取り付けられた結合部と、
ポンプと、
前記真空ポンプに結合された第1の端部及び前記結合部に結合された第2の端部を有する吸引ラインと、
を具えることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記繊維材料が、流体の存在下で軟化するよう構成された硬化剤の存在により十分な剛性を有していることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記繊維材料が、流体の存在下で分解するよう構成された硬化剤の存在により十分な剛性を有していることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項10】
前記繊維材料が、のり(starch)の存在により十分な剛性を有していることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項11】
前記繊維材料が、複合炭水化物の存在により十分な剛性を有していることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記繊維材料が、ゼラチンの存在により十分な剛性を有していることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項13】
前記繊維材料が、シリコーン繊維から成ることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項14】
前記繊維材料が、テフロン(登録商標)繊維から成ることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項15】
前記繊維材料が、プラスチック繊維から成ることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項16】
さらに、流体の存在下で軟化するよう構成され前記繊維材料に適用される硬化剤と、
前記吸引先端部の長手軸に沿って配置された通路と、
ポンプと、を具えており、
前記吸引ラインが、前記ポンプに結合された第1の端部及び前記通路に結合された第2の端部を有していることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項17】
さらに、流体の存在の下で軟化するよう構成され前記繊維材料に適用される硬化剤と、
前記吸引先端部の長手軸に沿って設けられた通路と、
ポンプと、を具えており、
前記吸引ラインが、前記ポンプに結合された第1の端部及び前記通路に結合された第2の端部を有しており、
前記繊維材料が、シリコーン繊維、テフロン(登録商標)繊維、及びプラスチック繊維から成る群から選択される繊維を具えることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項18】
創腔から流体及び組織片を吸引するためのシステムであって、
当該システムが、繊維材料を具える吸引先端部と、
前記創腔を覆う組織を十分に貫通するよう前記繊維材料を硬化させるための手段と、
流体の存在下で前記繊維材料を軟化させるための手段と、
前記創腔の中に前記吸引先端部を固定させるための手段と、
を具えていることを特徴とする吸引するためのシステム。
【請求項19】
さらに、前記吸引先端部を通して前記創腔から流体を排出するための手段と、
前記流体を排出するための手段に前記吸引先端部を結合するための手段と、
を具えていることを特徴とする請求項18に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−545335(P2009−545335A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513284(P2009−513284)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/012881
【国際公開番号】WO2007/143060
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】