説明

ペダル装置

【課題】操作者に違和感を与えることなく、ペダルの踏込み量を正確に認識させることができるペダル装置を提供することを課題とする。
【解決手段】シャフト17B(第一揺動軸)の軸回りに揺動するペダル11の踏込み量を、操作者に認識させるペダル装置10であって、ペダル11の踏込み量に対応して、ペダル踏面12をシャフト17Bの軸方向に変位させる変位機構を備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダルの踏込み量を操作者に認識させるペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等のアクセルペダルとしては、ペダルの踏込み量を操作者に認識させるために、ペダルの踏込み量に対応して、ペダル踏面の反力を増大させているペダル装置がある。
また、ペダルの踏込み量に対応して、ペダル踏面にクリック感を与えることにより、操作者がペダルの踏込み量をより正確に認識することができるペダル装置もある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−176001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ペダルの踏込み量に対応させて、ペダル踏面の反力を増大させる構成では、ペダルの踏込み量に対応させてペダル踏面に反力を与えるアクチュエータ等の機構を設ける必要があるため、構造上複雑になり、スペースの確保、製造コストの面で不利になる。また、ペダル踏面に作用する反力の大きさの違いでは、正確な踏込み量を認識することができない。
一方、ペダルの踏込み量に対応させて、ペダル踏面にクリック感を与える構成では、ペダル操作中にクリック点でペダル踏面の反力が瞬間的に変化するため、ペダルを微調整している場合には、操作者に違和感を与えてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、操作者に違和感を与えることなく、ペダルの踏込み量を正確に認識させることができるペダル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、第一揺動軸の軸回りに揺動するペダルの踏込み量を、操作者に認識させるペダル装置であって、ペダルの踏込み量に対応して、ペダル踏面を第一揺動軸の軸方向に変位させる変位機構を備えていることを特徴としている。
【0007】
この構成によれば、ペダルの踏込み量に対応して、ペダル踏面が第一揺動軸の軸方向に変位するため、例えば、第一揺動軸の軸方向を車両の車幅方向に配置した場合には、ペダルの踏込み量に対応して、ペダル踏面が車幅方向に変位することになる。これにより、ペダル操作中にペダル踏面の反力が瞬間的に変化しないため、操作者に違和感を与えることなく、ペダルの踏込み量を正確に認識させることができる。
【0008】
前記したペダル装置において、変位機構は、第一揺動軸に直交する第二揺動軸と、ペダルのペダル踏面から延出され、第一揺動軸の軸回りに揺動するとともに、第二揺動軸の軸回りに揺動自在な状態で、第二揺動軸に軸支されているペダルアームと、ペダルが第一揺動軸の軸回りに揺動したときに、ペダルアームの先端部を第一揺動軸の軸方向に案内するガイド溝を有するガイド部材と、から構成することができる。
【0009】
この構成によれば、簡略な構成でペダル踏面を第一揺動軸の軸方向に変位させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のペダル装置によれば、操作者に違和感を与えることなく、ペダルの踏込み量を正確に認識させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態のペダル装置を示した模式的な側断面図である。図2は、本実施形態のペダル装置示した図で、図1のA方向から見た模式的な断面図である。図3は、本実施形態のペダル装置を示した分解斜視図である。図4は、本実施形態のペダル装置のガイド溝を示した図で、(a)はガイド溝を蛇行させた場合の展開図、(b)はガイド溝を所定の領域で偏らせた場合の展開図である。
【0012】
図1及び図2に示すペダル装置10は、例えば、自動車等の車両に搭載されるアクセルペダルである。
ペダル装置10では、ペダル11がシャフト17B(特許請求の範囲における「第一揺動軸」)の軸回りに揺動し、このペダル11の踏込み量に対応して、車両のアクセル開度が調整されるように構成されている。
【0013】
また、ペダル装置10では、シャフト17Bの軸回りに揺動するペダル11の踏込み量を、操作者に認識させるように構成されており、ペダル11の踏込み量に対応して、ペダル踏面12をシャフト17Bの軸方向に変位させる変位機構を備えている。
【0014】
変位機構は、シャフト17Bに直交するピン20(特許請求の範囲における「第二揺動軸」)と、ペダル踏面12から延出され、シャフト17Bの軸回りに揺動するとともに、ピン20の軸回りに揺動自在な状態で、ピン20に軸支されているペダルアーム13と、ペダル11がシャフト17Bの軸回りに揺動したときに、ペダルアーム13の先端部をシャフト17Bの軸方向に案内するガイド溝18Cを有するケーシング18(特許請求の範囲における「ガイド部材」)と、から構成されている。
【0015】
シャフト17Bは、軸方向が車幅方向に向けて配置されており、その両端部は、車両の車体に固定されるケーシング18の内面に回動自在に軸支されている。
また、シャフト17Bの軸方向の中間部には、シャフト部材17が設けられている。このシャフト部材17は、上下面が開口した方形筒状の枠部17Aを備えており、枠部17Aの相対する二面から外側に向けて、それぞれシャフト17Bが延出されている。
また、シャフト部材17において、シャフト17Bが設けられている二面と直交する二面には、それぞれ孔17D,17Eが設けられている(図3参照)。
【0016】
ペダルアーム13は、図2に示すように、ペダル踏面12からケーシング18の内部に延出された円柱状の軸部材であり、軸方向の中間部には軸受部14(図3参照)が設けられ、その先端側には係合部16が設けられている。
このペダルアーム13の先端側は、ケーシング18に設けられた開口部18Aを通過してケーシング18の内部空間に挿入されている。
【0017】
また、ペダルアーム13は、図3に示すように、シャフト部材17の枠部17Aの内部を上下方向に貫通しており、軸受部14が枠部17Aの内部に配置されている。
また、軸受部14の中央部には、軸受孔14Aが車両前後方向に貫通しており、この軸受孔14Aとシャフト部材17の孔17D,17Eとは同一軸線上に配置されている(図2参照)。
また、符号21A,21Bは、軸受部14の前後側面と枠部17Aの内周面との間にそれぞれ介挿されるブッシングである。
【0018】
ピン20は、シャフト17Bに直交して、軸方向が車両の前後方向に向けて配置されており、基端には拡径されたヘッド部20Aが形成され、先端にはリング状の溝20Bが全周に亘って形成されている。
図1に示すように、ピン20の先端側を、孔17Dから枠部17Aの内部に挿入して、ピン20のヘッド部20Aを枠部17Aの外面に当接させたときには、ピン20の先端側が、ブッシング21A、軸受部14、及びブッシング21Bを通過して、孔17Eから枠部17Aの外側へ突出する。
そして、ピン20の先端に設けられた溝20BにEリング22等の止め輪が装着されることにより、ピン20はシャフト部材17(シャフト17B)に軸支されるとともに、ペダルアーム13は、ピン20の軸回りに揺動自在な状態で、ピン20に軸支されている。
【0019】
以上の構成により、ペダルアーム13は、車幅方向のシャフト17B(第一揺動軸)の軸周りと、これに直交する車両前後方向のピン20(第二揺動軸)の軸回りに揺動自在となっている。
すなわち、ペダル踏面12は、図1に示すように、ケーシング18に対して、車両前後方向(矢印B方向)に揺動自在であるとともに、図2に示すように、車幅方向(矢印C方向)に揺動して変位するように構成されている。
【0020】
ペダル11は、図示しない付勢手段(例えば、シャフト17Bの周りに設けられるリターンスプリング)により、ペダル踏面12がシャフト17Bの軸周りに常に上向きに付勢されている。
そして、ペダル踏面12が操作者の足によって下向きに踏込まれると、ペダル11は付勢力に抗してシャフト17Bの軸回りに回動し、ペダル踏面12が押し下げられる。
また、ペダル踏面12を踏込んでいる操作者の足が戻されると、付勢手段の付勢力によって、ペダル11はシャフト17Bの軸回りに上向きに回動し、ペダル踏面12が初期位置に復帰する。
なお、シャフト部材17の枠部17A及びケーシング18の開口部18Aは、ペダル踏面12の操作によるペダルアーム13の動きを阻害しない大きさ及び形状となっている。
【0021】
また、シャフト17Bの一端(図2の右側)は、ケーシング18の内部に設けられたポジションセンサ19に連結されており、シャフト17Bの回転角をポジションセンサ19が検知することにより、ペダル11の踏込み量が検出され、このペダル11の踏込み量に基づいて、図示しない制御装置がエンジンの回転数を制御するように構成されている。
【0022】
ペダルアーム13の先端部は縮径されて係合部16が形成されており、この係合部16は、ケーシング18の内部空間の頂面18Bに達している。
頂面18Bは、図1に示すように、シャフト17Bを中心とした円弧面(又はシャフト17Bの軸線とピン20の軸線との交点を中心とする球面)となっており、この頂面18Bの周方向に沿って、ガイド溝18Cが延設されている。
そして、ペダルアーム13の係合部16は、ガイド溝18Cの内部に挿入され、ガイド溝18Cの内部を延長方向にスライド可能となっている。
【0023】
ガイド溝18Cは、図4(a)に示すように、所定の間隔で車幅方向に蛇行している。したがって、図1及び図2に示すペダル踏面12が踏込まれ、ペダルアーム13がシャフト17Bの軸周りに下向きに回動すると、ペダルアーム13の係合部16はガイド溝18Cに案内されながら車両後方に移動する。このとき、係合部16は、ガイド溝18Cの軌道に沿って車幅方向も移動するため、ペダルアーム13の先端部がシャフト17Bの軸方向(車幅方向)に案内されることになる。
このように、ペダルアーム13は、シャフト17Bの軸周りに揺動しながら(図1の矢印B方向)、軸受部14を回動中心として、ピン20の軸回りに揺動されるため(図2の矢印C方向)、ペダル踏面12は、ペダル11の踏込み量に対応して、シャフト17Bの軸方向(車幅方向)に変位することになる。
【0024】
なお、ペダルアーム13がシャフト17Bの軸回り及びピン20の軸回りに揺動したときに、係合部16がガイド溝18Cに挿入されている深さを一定に保つためには、頂面18Bを球面に形成することが好ましいが、ガイド溝18Cが車幅方向に蛇行している幅は、ガイド溝18Cの延長方向の長さに比べて小さいため、頂面18Bが円弧面であっても、係合部16がガイド溝18Cに挿入されている深さは殆ど変化することがない。
【0025】
本実施形態のガイド溝18Cは、図4(a)に示すように、一定の間隔で車幅方向に蛇行しており、ペダル踏面12の傾斜角度の変動に伴って、ペダル踏面12の変位量及び変位方向が変化するため、操作者はペダル11の踏込み量を認識することができる。
【0026】
また、ガイド溝18Cの軌道パターンは、本実施形態に限定されるものではなく、目的に合わせ様々なパターンを採用することができる。例えば、図4(b)に示すガイド溝18C´のように、その軌道を所定の領域において車幅方向の一方に偏らせてもよい。
この構成では、例えば、ガイド溝18C´を偏らせる領域を、車両の燃費効率が良いアクセル開度に対応させて設定することにより、操作者に対して燃費効率の変動を認識させることができ、操作者は燃費効率が良好な状態を保つようにアクセル操作を行うことができる。
【0027】
なお、ガイド溝18C,18C´では、図2に示すペダルアーム13がピン20の軸回りに揺動して、係合部16が車幅方向に傾いても、係合部16がガイド溝18C,18C´の内部を延長方向に向けて円滑に移動するように、湾曲部位の半径が設定されている。
【0028】
以上のように、本実施形態のペダル装置10によれば、ペダル11の踏込み量に対応して、ペダル踏面12を車幅方向に変位させることができるため、ペダル11の踏込み量を操作者に対して正確に認識させることができる。
【0029】
また、ペダル踏面12の反力に瞬間的な変化を与えることなく、ペダル11の踏込み量を操作者に認識させることができるため、ペダル11の踏込み量を微調整しているときに、操作者に違和感を与えることがなく、操作感を向上させることができる。
【0030】
さらに、ガイド溝18C,18C´の軌道に応じて、ペダル踏面12が連続的に車幅方向に変位するため、ペダル11の踏込み操作中に、所定の位置で一時的にペダル踏面12にクリック感が与えられる従来の構成に対して、ペダル11の踏込み操作中に、どの位置においても連続的に、ペダル11の踏込み量を把握することができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
例えば、本実施形態のペダル装置10では、図2に示すように、シャフト17B(第一揺動軸)と、ピン20(第二揺動軸)とが互いの軸線上で交わるように構成されているが、シャフト17Bの軸線に対して、ピン20の軸線を上下にずらした状態で、シャフト17Bとピン20とを直交させることもできる。
【0032】
また、本実施形態のペダル装置10では、ペダルアーム13に設けられた係合部16をケーシング18(ガイド部材)に設けられたガイド溝18Cの内部に挿入させているが、ペダルアーム13の先端部に、ガイド溝18Cを有するガイド部材を設け、ケーシング18側に係合部16を設けることもできる。
【0033】
また、本実施形態のペダル装置10の変位機構では、ペダル11の踏込み量に対応させて、ピン20の軸周りにペダルアーム13を揺動させることにより、ペダル踏面12をシャフト17Bの軸方向に変位させているが、ペダル11の踏込み量に対応して、ペダルアーム13自体やシャフト17B自体をシャフト17Bの軸方向に変位させてもよい。
【0034】
また、本実施形態のペダル装置10では、図3に示すように、ペダルアーム13を直線状に形成することにより、狭いスペースにペダルアーム13を配設することができるように構成されているが、軸受部14を境にして、ペダルアーム13の先端側をペダル踏面12側に対して屈曲させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態のペダル装置を示した模式的な側断面図である。
【図2】本実施形態のペダル装置示した図で、図1のA方向から見た模式的な断面図である。
【図3】本実施形態のペダル装置を示した分解斜視図である。
【図4】本実施形態のペダル装置のガイド溝を示した図で、(a)はガイド溝を蛇行させた場合の展開図、(b)はガイド溝を所定の領域で偏らせた場合の展開図である。
【符号の説明】
【0036】
10 ペダル装置
11 ペダル
12 ペダル踏面
13 ペダルアーム
14 軸受部
14A 軸受孔
16 係合部
17 シャフト部材
17A 枠部
17B シャフト(第一揺動軸)
18 ケーシング(ガイド部材)
18B 頂面
18C ガイド溝
18C´ ガイド溝
19 ポジションセンサ
20 ピン(第二揺動軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一揺動軸の軸回りに揺動するペダルの踏込み量を、操作者に認識させるペダル装置であって、
前記ペダルの踏込み量に対応して、ペダル踏面を前記第一揺動軸の軸方向に変位させる変位機構を備えていることを特徴とするペダル装置。
【請求項2】
前記変位機構は、
前記第一揺動軸に直交する第二揺動軸と、
前記ペダルの前記ペダル踏面から延出され、前記第一揺動軸の軸回りに揺動するとともに、前記第二揺動軸の軸回りに揺動自在な状態で、前記第二揺動軸に軸支されているペダルアームと、
前記ペダルが前記第一揺動軸の軸回りに揺動したときに、前記ペダルアームの先端部を前記第一揺動軸の軸方向に案内するガイド溝を有するガイド部材と、から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−171047(P2008−171047A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−934(P2007−934)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】