ペプチドを有効成分とする血管関連疾患の治療剤組成物
本発明は、アンジオポイエチンの分泌により異常な血管新生に作用して血管疾患を治療する組成物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の新生及び保持において、血管壁を安定化して血液漏れを防ぎ、正常な血管の成長を助けることにより、浮腫及び虚血、並びにこれに関する血管疾患を治療する物質に関する。より詳細には、塩基性アミノ酸−Gly−Asp配列を含むペプチド及び/又は幹細胞を用いて正常な血管を生成及び維持することにより、血液漏れを防ぎ、血管関連疾患の治療剤として使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
血管疾患の1つである虚血は、血管の狭窄、収縮、血栓、塞栓などにより、組織への血液供給が中断されて細胞損傷が起きる部分的な血液不足の症状である。
【0003】
1961年、Majno氏やPalade氏は、血液漏れが、ヒスタミン、ブラジキニン、セロトニンによる炎症反応によって小静脈の血管内皮細胞の間に生じる小さな空間(ギャップ)が生じて発生すると報告した(Majno G., Palade G. E., J. Biophys. Biochem. Cytol.11:571-605 (1961); Majno G., Palade G. E., Schoefl G. I., J. Biophys. Biochem. Cytol. 11:607-625 (1961))。
【0004】
この血管内皮細胞間の空間は、炎症誘発物質のみならず、複数のサイトカイン(Claudio L. et al., Lab Invest. 70:850-861 (1994); Wu N. Z., Baldwin A. L. Am. J. Physiol. 262:H1238-1247 (1992))、プロテアーゼ(Volkl K. P., Dierichs R. Thromb. Res. 42:11-20 (1986))、低温火傷(Clough G. et al., J. Physiol. 395:99-114 (1988))にさらされて発生することが知られている。また、様々な種類の癌でもこのような現象が発見された(Hobbs S. K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:4607-4612 (1998); Roberts W. G. et al., Am. J. Pathol. 153:807-830 (1998); Nishio S. et al., Acta. Neuropathol. (Berl) 59:1-10 (1983))が、癌以外にも、人間からは、喘息(Laitinen A., Laitiene L. A. Allergy Proc. 15:323-328 (1994))、色素性じんましん(Ludatscer R. M. Microrasc. Res. 31:345-355 (1986))、リウマチ(Schumacher H.R. Jr. Ann. N. Y. Acad. Sci. 256:39-64 (1975))などからも発見された。
【0005】
血管の特性は非常に多様であるが、例えば、慢性炎症の場合は、血管拡張及び血管新生を含む血管の変形に関連づけられている。このとき、血管は、正常でない、異常な特徴を有する形に変形するが、マウスの慢性気道炎症モデルにおいて、血管の直径が増加し、フォンヴィレブランド因子(von Willebrand Factor)及びP−セレクチン(P−selectin)に対する免疫反応が増加することが発見された。このように、変形した血管は、正常マウスに比べて免疫誘発物質の反応に弱いことがわかった。
【0006】
このような理由から、血管の異常な成長や血液漏れを抑制又は減少させる物質が開発されている。ミスチクシンは、合成された合成物質であって、血管内皮細胞のギャップの形成を抑制せずに血液漏れを防ぐことが報告されている(Blauk P., et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 284:693-699 (1998))。また、ベータ2−アドレナリン受容体作動薬フォルモテロールは、血管内皮細胞のギャップの形成を抑制すると、血液漏れを減少させるという結果が知られている(Blauk P. and McDonald D. M., Am. J. Physiol., 266:L461-468 (1994))。
【0007】
このように、血管の形態的変化を起こす物質に関する研究が進められており、その1つであるアンジオポイエチンが注目されるようになった。アンジオポイエチン−1は、血管を安定させ(Thurston G. et al., Nat. Med. 6 (4): 460-3 (2000))、VEGFの血管新生を安定化する役割を果たし、結果的に、血液漏れを抑制する。この機序を用いて、慢性糖尿における抹消血管障害による網膜症などの疾患や、血管異形成による未熟児網膜症などの治療への適用に関する報告があった(Joussen A. M. et al., Am. J. Pathol. 160 (5): 1683-93 (2002))。しかし、組み換えアンジオポイエチン−1は、安定性や溶解度などの問題のため直接使用には限界があり、その代案として、アンジオポイエチン−1の活性を有する代替物質の開発が試みられている(Koh G. Y. et al., Exp. Mol. Med. 34 (1): 1-11 (2002))。最近、血小板は、血管形成時に形成された血管を安定化させるために活性化され、アンジオポイエチン−1を放出することが知られている(Huang et al., Blood 95:1993-1999 (2000))。また、血小板からアンジオポイエチン−1を放出するための血小板の活性化にはトロンビンが関与することが報告されている(Li et al., Throm. Haemost. 85:204-206(2001))。しかし、トロンビンのこのような機能は、血管を安定化するためにアンジオポイエチン−1のみを放出させるのではなく、血小板が凝固して発生する現象の一部でもある。そのため、トロンビンを用いてアンジオポイエチン−1の放出を調節することは困難であり、血液凝固による副作用が予想される。このほか、アンジオポイエチン−1の分泌を誘導する物質を探索しているが、それに関する報告はない。
【0008】
従来のRGD及びKGDモチーフを有するペプチドは、血管新生の形成を抑制することが知られている(Victor I. R. and Michael S.G. Prostate 39:108-118 (1999); Yohei M. et. al., J. of Biological Chemistry 276:3:31959-31968 (2001))。この効能は、RGD及びKGDモチーフを有するペプチドが血管内皮細胞のαvβ3インテグリンに結合して生じると報告されている(Pasqualini R. et al., Nat. Biotechnol. 15 (6): 542-6 (1997))。インテグリンは、一般的に、細胞−細胞、細胞−基質間の媒介体であって、血管内皮細胞の成長に欠かせないため(Brian P. Eliceiri, Circ. Res. 89:1104-1110 (2001))、インテグリンに結合してインテグリンの役割を抑制するディスインテグリンは、そのほとんどが、フィブリノーゲンの構造モチーフであるRGDモチーフ又はKGDモチーフを含む。このような理由から、多くのRGD及びKGDモチーフを含むペプチドがインテグリンに結合して血管内皮細胞の成長及び移動を妨げることにより、血管新生の形成を抑制するという研究が行われている。また、国際特許WO95/25543(1995)の場合、組織内の脈管形成は、インテグリンαvβ3を必要とし、これを抑制するRGD及びKGDモチーフを含むペプチドを用いて脈管形成を抑制することにより、結果的に、血管新生を抑制し死滅させ、血液供給の低下を図っている。米国特許5,766,591(1998)においても、インテグリンαvβ3の拮抗剤として、RGD及びKGDモチーフを含むペプチドを用いて血管新生の生成を抑制することにより、固形癌の増殖を抑制するとの内容が開示されている。
【0009】
最近では、心臓疾患に使用するため、インテグリン中のフィブリノーゲンをリガンドとするαIIbβ3に結合してこれを阻害する阻害剤を開発するための試みがあった(Topol et al., Lancet 353:227-231(1999); Lefkovits et al., N. Eng. J. Med. 23: 15530-1559 (1995); Coller BS J. Clin. Invest. 99: 1467-1471))。しかし、このような試みは、成功していないとの結果も報告されている(O'Neill et al., N. Eng. J. Med. 342: 1316-1324 (2000); Cannon et al., Circulation 102: 149-156 (2000))。その理由として、従来のRGD及びKGDモチーフを含むペプチドは、インテグリンに結合してインテグリンの活性を抑制する機能があるだけでなく、濃度に応じてインテグリンを活性化させ、結局、血小板の活性を誘導することがある(Karlheinz et al., Throm. Res. 103: S21-27 (2001); Karlheinz et al., Blood 92 (9): 3240-3249 (1998))。インテグリンには、リガンドによって誘導される結合部位(Ligand−Induced Binding Site,LIBS)が存在するが、RGD及びKGDペプチドの結合は、インテグリンの構造的変化を誘導してLIBSを露出させ、露出したLIBSにリガンドが結合して血小板の活性が生じるとした(Leisner et al., J. Biol. Chem. 274:12945-12949(1999))。これは、低濃度で生じる現象であり、高濃度では生じない現象であると報告された。この方法により、RGD及びKGDが血小板を活性化させ得る場合、活性時に分泌されるサイトカイン(例:エンジオポイエチン−1)によって血管形成が阻害されるというよりは、増加及び安定化に寄与することができる。
【0010】
本発明では、前述したように、血管新生を抑制し死滅して血液の供給を低下させるというより、正常な血管の形成に寄与し、形成された血管を安定化させて血液漏れを抑制して血液供給を円滑にするという非常に相違する結果が得られた。これは、RGD及びKGDモチーフを含むペプチドがインテグリンに直接作用して血管新生の生成を抑制するのではなく、RGD及びKGDモチーフを含むぺプチドによる2次反応として、異常な血管新生の生成を抑制しつつ、正常な血管を形成して安定化させるだけでなく、血液漏れを防ぎ、眼球内疾患である糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、年齢関連黄斑変性症など、眼球内疾病の治療に効果的な上に、傷、火傷及び褥瘡、慢性潰瘍の治療及び予防に効果的であることを確認した。
【0011】
また、脱毛症や白毛症の場合、血管と接触する毛包は、毛髪を形成する毛髄質、毛皮質、毛表皮を形成する役割を果たす。このとき、異常な血管の形成は、血液漏れなどにより血液供給が円滑でなければ、毛包の形成、つまり、毛髪が形成されないばかりか、毛幹を構成する毛根細胞内のメラニン小体の形成が正常になされず、髪色が白色に変化する白毛症を誘導することになる。このような症状も、本発明で提供される組成物により血管の形成を安定化することによって、血液漏れを抑制して血液の供給を円滑にすれば、治療及び予防に効果的であると予想される。このほか、肥満による心血管疾患、人工皮膚及び移植用血管治療剤、並びに虚血症などにも効果的であると予想される。
【0012】
他の方法では、血管が損傷する段階において、正常な血管を新たに生成してその後に発生する病状の進行を防ぐ方法がある。ここでは、幹細胞を用いた眼球血管疾患の治療が試みられている。骨髄には、新しい血管を形成し得る血管内皮前駆細胞(endothelial precursor cell、EPC)を含むことが知られており、網膜血管を新生させるため、骨髄造血幹細胞を注入して造血幹細胞が血管内皮前駆細胞として作用することが報告されている(Grant M. B. et al., Nature Med. 8:607-612 (2002))。このような血管内皮前駆細胞は、循環(circulating)EPC(cEPC)に変化し得、これらが血管新生に関与する。このほかにも、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)などが新しい血管を形成し保持することに関与するとの報告があった(Rafii S. et al., Nature Med. 9:7027-712 (2003))。治療目的のために、マウスの目の硝子体に骨髄由来造血幹細胞を投与することにより、造血幹細胞が網膜の血管生成の前駆体として作用し得ることが報告された(Otani A. et al., Nature Med. 9:1004-1010 (2002))。幹細胞は、造血幹細胞のほか、胚性幹細胞、間充織幹細胞など、多様な種類の幹細胞が報告されている。造血幹細胞は、自家移植の場合は問題がないものの、同種又は異種間の移植には免疫拒絶反応を引き起こすという欠点があるが、これを解決する方法は未だ報告されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、上記の問題を解決し、上記の必要性に応じてなされたものであって、その目的は、特定の配列を含むペプチドを用いて正常な血管を誘導する治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明は、Xaa−Gly−Asp配列を含むペプチドを有効成分とする、浮腫及び/又は血管関連疾患の治療用組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、前記ペプチドのXaaアミノ酸は、Arg又はLysであることが好ましく、前記ペプチド配列は、配列番号1又は配列番号2に記載のものが最も好ましい。
【0016】
また、本発明において、前記ペプチド配列は、配列番号4、及び配列番号6〜配列番号10に記載のものからなる群から選択される1つのペプチド配列を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の血管関連疾患は、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、年齢関連黄斑変性症、緑内障、糖尿病による足の壊疽、肺高血圧、虚血性心筋症、虚血性脳疾患、皮弁の再生、心不全、急性後肢虚血、傷や火傷の治癒及び褥瘡、慢性潰瘍、毛細血管の形成を用いた脱毛症又は白毛症、肥満による心血管疾患、人工皮膚及び移植用血管治療剤、並びに虚血症からなる群から選択される疾患であることを含むが、これらに限定されない。
【0018】
更に、RGD及びKGDモチーフを含むペプチドが、血液の浮腫及び虚血による傷や火傷の治癒及び褥瘡、慢性潰瘍の治療及び予防に効果的であることを確認できるだけでなく、毛細血管の形成を用いた脱毛症又は白毛症、肥満による心血管疾患の治療に効果的であると予想される。
【0019】
また、本発明の前記ペプチドは、アンジオポイエチン−1の分泌を誘導することを特徴とする。
【0020】
更に、アンジオポイエチン−1の変形であるCOMP−Ang1が、 一側尿管結紮(UUO)モデルにおいて、腎臓の血管内皮細胞を保護することにより、単球やマクロファージの浸透を防いで炎症反応を抑制し、TGF−β1の組織内の量を減少させることで、Smad2/3のリン酸化を抑制させ、Smad7を活性化させ、腎臓の繊維化を減少させることが報告された(Kim et al., J. Am. Soc. Nephrol. 17: 2474-2483 (2006))。これは、アンジオポイエチン−1が腎臓繊維化疾患において血管内皮細胞に特異的に作用することにより、腎臓疾患を治癒できる治療剤として使用可能であることを示している。本発明で示しているRGD又はKGDを含むポリペプチドも、生体内で間接的にアンジオポイエチン−1の放出を誘導することにより、腎臓疾患の治療に有用であると考えられる。
【0021】
本発明は、Xaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチド単独、若しくはVEGF(Benest et al., Microcirculation. 13:423-437(2006))又はbFGFと共に使用した場合、更に効果的であり得る。
【0022】
また、本発明は、前記ペプチドに、幹細胞を更に含むことを特徴とする、血管関連疾患の治療用組成物を提供する。
【0023】
本発明において、前記幹細胞は、少なくとも血管内皮細胞に分化し得る能力を有する幹細胞、例えば、胚性幹細胞、間充織幹細胞、造血幹細胞であることが好ましい。
【0024】
更に、本発明の幹細胞を含む組成物で治療可能な血管関連疾患は、肺高血圧、虚血性心筋症、皮弁の再生、心不全、急性後肢虚血、又は眼球疾患であることを特徴とするが、これらに限定されない。
【0025】
本発明に記載の虚血による疾患の治療効果を有するペプチドは、Xaa−Gly−Asp配列を含むペプチド又は機能的にこれと同じ効果を有する切片、変異体などを含み、幹細胞を用いた治療の場合、Xaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドと共に使用することが好ましい。
【0026】
本発明のタンパク質及び幹細胞により治療又は予防可能な血管新生疾患は、肺高血圧(pulmonary hypertension;Ann Thorac Surg 2004 feb 77 (2) 449-56)、虚血性心筋症(ischemic myocardium with VEGF; Biochem Biophys Res Commun. 2003 Oct 24;310 (3):1002-9)、皮弁の再生(skin flap survival;Microsurgery. 2003;23 (4):374-80)、心不全(heart failure; Cold Spring Harb Symp Quant Biol 2002;67:417-27)、急性後肢虚血(acute hindlimb ischemia (with VEGF); Life Sci 2003 jun 20;73 (5):563-79)などのように、アンジオポイエチン−1の分泌を誘発して血管新生の安定化を治療機序とする疾患が好ましく、眼球疾患が更に好ましい。
【0027】
本発明において適用可能な眼球疾患は、特に、未熟児網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障などである。
【0028】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、例えば、受容可能な希釈剤、添加剤、又は担体を含む。
【0029】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、体内組織又は体外組織、又は器官への運搬又は投与に適した薬学的に受容可能な組成物に、前記ペプチドを含む。
【0030】
前記薬学的組成物は、例えば、本発明のペプチド及び/又はタンパク質が、酸性及び/又は塩基性末端及び/又は側鎖を含むことができるため、遊離酸又は塩基の形態、又は薬学的に受容可能な塩形態の薬学的組成物として含み得る。薬学的に受容可能な塩は、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸及びそれらの誘導体などの無機酸;並びに、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アントラニル酸、桂皮酸、ナフタリンスルホン酸、スルファニル酸及びそれらの誘導体などの有機酸を含む本発明のペプチド及び/又はタンパク質と塩を形成し得る適当な酸を含み得る。対象タンパク質と塩を形成し得る適当な塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム及びそれらの誘導体などの無機塩基;並びに、モノ−、ジ−及びトリ−アルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン及びそれらの誘導体)及び選択的に置換されたエタノールアミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン及びそれらの誘導体)などの有機塩基を含み得る。
【0031】
前記薬学的組成物は、非経口、経腸、局所又は吸入を含むが、これらに限定されない、あらゆる投与経路に適した様々な形態であり得る。非経口投与は、注射投与(すなわち、静脈内、筋肉内及び下記に記載したものと類似のもの)を含むが、これらに限定されない、消化管を通さないあらゆる投与経路を意味する。経腸投与は、錠剤、カプセル、経口溶液、懸濁液、スプレー及びその類似体を含むが、これらに限定されない、経口投与のあらゆる形態を意味する。このため、経腸投与は、直腸及び膣内投与の経路を意味する。局所投与は、クリーム、軟膏、ゲル、そして、経皮パッチを含むが、これらに限定されない、皮膚を通したあらゆる投与経路を意味する(また、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds. Gennaro, et al., Mack Printing Company, Easton, Pennsylvania, 1990参照)。
【0032】
本発明の非経口的薬学組成物は、例えば、静脈(静脈内に)、動脈(動脈内に)、筋肉(筋肉内に)、皮膚(皮下又はデポ組成物内に)下、心嚢、管状動脈に、注射により、又は組織又は器官への運搬用溶液として用いられ投与可能である。
【0033】
注射可能な組成物は、静脈内、動脈内、管状血管内、心膜、血管周辺、筋肉内、皮下及び関節を含むが、これらに限定されない、注射投与の経路に適した薬学的組成物であり得る。注射可能な薬学的組成物は、心臓、心嚢又は管状動脈への直接投与に適した薬学的組成物であり得る。
【0034】
経口投与のため、前記薬学製剤は、例えば、結合剤(例えば、プリゼラチン化したトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、乳糖、微結晶セルロース又はカルシウム水素リン酸塩);潤滑剤(例えば、マグネシウムステアリン酸塩、滑石又はシリカ);分解剤(例えば、ジャガイモ澱粉又はグリコール酸澱粉ナトリウム(sodium starch glycolate));又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような薬学的に受容可能な添加剤及び通常の方法によって製造された錠剤又はカプセルの形で摂取可能である。前記錠剤は、当業界における周知の方法によってコーティングされ得る(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds. Gennaro et al., Mack Printing Company, Easton, Pennsylvania, 1990参照)。
【0035】
経口投与用の薬学組成物溶液は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形で摂取され得るか、若しくはこれらを使用する前に水又は他の適当な担体及び構成のための乾燥産物であり得る。そのような薬学組成物溶液は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化した食用脂肪);エマルジョン化剤(例えば、レシチン又はアカシア);不溶性担体(例えば、アーモンド油、オイルエステル、エチルアルコール又は分画化した植物油);並びに、保存剤(例えば、メチル又はプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)のような薬学的に受容可能な添加剤及び通常の方法によって製造可能である。
【0036】
前記薬学組成物は更に、必要に応じて、緩衝塩、香料、色素及び甘味料を含むことができる。
【0037】
経腸用の薬学組成物は、例えば、錠剤、トローチ剤、又はドロップ(lozenge)の形で経口投与に適合可能である。直腸及び膣内投与経路のため、本発明のペプチド及び/又はタンパク質は、溶液(浣腸乳脂)、座薬又は軟膏として製造可能である。経腸薬学組成物は、高カロリー輸液(TPN)混合物又は摂取チューブによる運搬用のような摂取混合物の混合液に適合可能である(Dudrick et al., 1998, Surg. Technol. Int. VII: 174-184; Mohandas et al., 2003, Natl. Med.J. India 16 (1): 29-33; Bueno et al., 2003, Gastrointest. Endosc. 57 (4): 536-40; Shike et al., 1996, Gastrointest. Endosc. 44 (5): 536-40参照)。
【0038】
吸入による投与のため、本発明のペプチド及び/又はタンパク質は、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適当なガスのような適した推進剤で加圧された容器から、通常、エアロゾールスプレーの存在又はネブライザの形で運搬可能である。加圧されたエアロゾールの場合、前記容量単位は、計量された量を運搬するバルブを提供して決定され得る。乳糖又は澱粉のような適当な粉末ベースと前記化合物の粉末混合物を含む吸入剤又は吹入器に用いるため、カプセル、及び、例えば、ゼラチンカートリッジを製剤化することができる。
【0039】
本発明の点眼剤は、水溶性点眼液、不溶性点眼液又は点眼エマルジョンであり得る。本発明の点眼剤は、本発明のペプチドを、水溶性溶媒で滅菌された精製水又は生理食塩水、不溶性溶媒により、綿実油、大豆油などの植物油に溶解したり懸濁させて製造する。この場合、必要に応じて、等張化剤、pH調節剤、増粘剤、懸濁剤、エマルジョン化剤、保存剤、及びこれらと類似の薬学的に受容可能な添加剤が添加され得る。詳細には、前記等張化剤は、塩化ナトリウム、ホウ酸、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、D−マンニトール、ブドウ糖などを含む。pH調節剤の特定例としては、ホウ酸、無水硫酸ナトリウム、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂などを含む。増粘剤の特定例としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどを含む。懸濁剤の特定例としては、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン水素化ひまし油などを含む。エマルジョン化剤の特定例としては、ヨークレシチン、ポリソルベート80などを含むが、これらに限定されない。保存剤の特定例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼソニウム、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、パラオキシ安息香酸エステルなどを含むが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の組成物は、血管関連疾患の治療が必要な対象に投与される。そのような組成物の毒性及び治療学的有効性は、細胞培養又はLD50(一群の50%致死量)の測定及びED50(一群の50%が治療学的に有効な量)の測定といった、実験動物において標準薬学的手順によって決定可能である。毒性効果と治療学的効果との投与量の割合は治療係数であり、それは、LD50/ED50の割合で表示され得る。大きな治療係数を有する組成物が好ましい。
【0041】
一実施例において、細胞培養分析及び動物研究から得られたデータは、人間に適用するための投与量の範囲を設計するのに利用可能である。本発明の組成物の投与量は、好ましくは、毒性がないか、若しくはほとんどないED50を含む循環濃度の範囲内である。投与量は、この範囲内で適用された剤形及び利用された投与経路によって多様である。本発明の方法で使用された組成物において、治療学的に有効な投与量は、初期に細胞培養分析から測定され得る。投与量は、細胞培養で決定されたように、IC50(すなわち、50%阻害濃度)を含む血漿濃度範囲を得るため、動物モデルから設計される。このような情報は、人間にとって有用な投与量をより正確に決定するために使用され得る。血漿内レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィによっても決定可能である。
【0042】
他の実施例において、本発明のペプチド及び/又はタンパク質を含む組成物の有効量は、ヒト患者に対して体重1kgあたり約0.1μg〜約10mgの範囲で投与され、好ましくは、約1μg〜約1000μgの範囲で投与され得る。投与されるペプチド及び/又はタンパク質の量は、0.1,0.2,0.5,1,2,5,10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,200,250,300,400,500又は1000μgである。
【0043】
更に他の実施例において、本発明の組成物の有効量は、血管注射の場合、体重1kgあたり1μg〜10mgの範囲であり、眼球注射の場合、ヒトの眼球あたり1ng〜1mgの範囲であり、点眼剤の場合、点眼液1mlあたり1ng〜10mgの範囲であることを確認した。このような服用量は、好ましくは、皮内又は皮下投与される。このような投与量は、1回又は毎日、隔日、毎週、隔週又は毎月のように繰り返し投与され得る。
【0044】
以下、本発明を説明する。
【0045】
本発明では、Xaa−Gly−Asp配列を含むペプチドが、虚血による血管疾患に有効であることを初めて確認し、この過程で、アンジオポイエチン−1の分泌が起こり得ることを初めて確認した。異常な血管新生の形成に関する疾患の治療の可能性を、2つの細胞株に対するアンジオポイエチン−1の分泌及び角膜血管新生のマウスモデルなどで確認し、幹細胞とXaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドとを同時に用いて、異常な血管新生に関する治療の可能性について、酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルからその効果を確認した。
【0046】
また、創傷治癒のマウスモデルにおいて、Xaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドを処理した結果、創傷治癒に効果的であることを確認しており、これは、傷、火傷の治癒、褥瘡及び慢性潰瘍だけでなく、正常な毛細血管の形成を利用した脱毛症又は白毛症、肥満による心血管の治療及び予防に使用可能であることを示している。
【0047】
合成製剤したXaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドを、2つの細胞株に各濃度で処理した結果、Xaa−Gly−Aspを含むポリペプチドは、アンジオポイエチン−1の分泌を誘導するという新たな現象を発見した。このような作用は、角膜血管新生の動物モデルにおいて、正常血管の形成を助け、血管の構造を安定化させることにより、異常な血管構造の特徴を有する病的な血管新生の血管の血液漏れの現象を減少させることが確認できた。また、血管新生の重要な因子である血小板におけるヒト正常細胞株の血小板由来成長因子(PDGF)の分泌を抑制することを確認できた。更に、幹細胞を含む単核細胞群(Mononuclear cells,MNCs)とXaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドとを同時に投与する実験を行った結果、酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、異常な血管の生成からみられる血液漏れ及び血管構造の変異を抑制し、正常な血管を生成し、血管の構造を安定化させることを確認した。したがって、本発明は、眼球疾患のうち、血管の正常発生抑制過程によって発生する疾患である未熟児網膜症、正常血管構造の破壊などによって発生する異常な血管新生に関する疾患である糖尿病性網膜症及び年齢関連黄斑変性症などに用いられることが好ましい。
[実施例]
以下、非限定的な実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0048】
実施例1:無血管組織である眼球角膜組織において、VEGFによって誘導された血管新生の容量に応じたRGD配列を含むポリペプチドの処理効果
RGD配列を含むポリペプチドの眼球内血管新生の生成にどのような影響を与えるのかを調べるため、マウスの角膜にマイクロポケットを設け、VEGF300ngを含むペレットを挿入して血管新生を誘導させるモデルを作成した(図1)。このとき、ポリペプチドの効能を確認するため、ポリペプチド1.3pmol(0.75ng/kg)、130pmol(75ng/kg)を腹腔注射した。それから5日後、血管新生が生成されているか否かを観察するため、マウスの目を解剖顕微鏡で観察した。その結果、VEGFを含まないペレットを挿入したマウスの場合(図2及び図3のA)、血管が観察されず、VEGFペレットを挿入した陽性対照群では、血管の生成を観察することができた(図2及び図3のB)。しかし、RGD配列を含むポリペプチドの腹腔注射時に、それぞれ1.3pmol(図2及び図3のC)、130pmolで微細血管の生成及び血管網の構成が観察されることにより、成長の抑制ではない、血管の増殖を誘導することを確認した(図2及び図3のD)。血管の生成を定量化するため、各群の血管の長さを測定したとき、陽性対照群の場合、血管の全長が0.43±0.02mmであり、cycRGDの場合、1.3pmol処理群は、0.65±0.01mm、130pmol処理群の場合は、0.69±0.03mmであって、有意な増加を確認することができた(図4)。
【0049】
一方、実験に用いられたマウスにおいて、RGD配列を含むポリペプチドによる角膜混濁のような副作用は全く見受けられなかった。
【実施例2】
【0050】
実施例2:酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、RGD配列を有するポリペプチド(配列番号1、2)の効果
酸素分圧の差による人為的な網膜内血管新生の生成は、人間の未熟児網膜症や糖尿病性網膜症のような様相を示している。出生初期に高酸素環境(75%)にさらしたマウスを、再び正常酸素分圧(20%)に復帰させると、異常な血管新生を自発的に生成する原理を用いて実験を行った(Higgins RD. et al., Curr. Eye Res. 18:20-27 (1999); Bhart N. et al., Pediatric Res. 46:184-188 (1999); Gebarowska D. et al., Am. J. Pathol. 160:307-313 (2002))。このため、酸素分圧を調節可能な装置にて、生後7日後、75%の酸素分圧を維持する高圧酸素環境で5日間放置した後、正常酸素分圧である20%の酸素圧で5日間更に放置する。このとき、5日間、1日に1回、RGD配列を含むペプチド(配列番号1又は配列番号2)を、マウスに腹腔内投与して網膜内血管新生を観察した。血管を観察するため、生理食塩水1mlに2×106分子量のFITC−デキストラン50mgを溶解した溶液を、左心室から注入した。注入後、直ちにマウスの眼球を摘出した。摘出した眼球は、生理食塩水で洗浄した後、4%のパラホルムアルデヒドで4時間〜24時間固定した後、眼球からレンズを除去し、網膜をスライドガラス上に平らに広げた後、グリセリン−ゼラチンでシールし、蛍光顕微鏡を用いて観察した。
【0051】
正常酸素分圧で生育したマウスの場合、網膜全般にわたって均一な血管の分布を確認することができた(図5のB)が、高圧酸素処理後、生理食塩水のみで処置したマウスの場合、血管新生の形はそのほとんどが異常であり、虚血が発生したことを観察した(図5のA)。また、高圧酸素処理したマウスは、正常なマウスに比べて、発生段階の正常網膜の血管組織が正常に発生しておらず、対照群として用いられたRAD配列を含むポリペプチドの処理時にも、網膜血管が正常に形成されていないことを観察した(図6のA)。しかし、RGD配列を有するポリペプチド1μg/kg/day(図6のB、C)では、異常な血管新生の形態的特徴は観察されず、正常発生する血管が正常に形成されていることが観察された。これは、RGD配列を含むポリペプチドが正常血管の成長を助ける役割を果たすことから、非常に興味深い結果であって、酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、RGD配列を含むポリペプチドは、低酸素領域を縮小し、結局、血管新生の生成原因を除去することにより、病的な血管形成阻害効果を示し、未熟児網膜症のような眼球疾患の治療剤として使用可能であることを示している。また、RGD配列を有するポリペプチドの処理が血管の構造を安定化させて血液漏れが生じないことを、FITC−デキストランという蛍光物質の漏洩検査によって観察した。FITC写真において、蛍光漏れによって浸出して見える部分は、つまり、血管に穴があいて血液が漏れることを意味する。結局、蛍光が浸出する現象が本発明のペプチドによって減少したことは、その分、血管の損傷を防止したと解釈される。
【0052】
網膜血管には、脳血管の血液脳関門(Blood−Brain−Barrier、BBB)のような血液網膜関門(Blood−Retina−Barrier:BRB)があるため、大きな分子は血管を通りにくい。FITC−デキストランのような比較的高分子が網膜から浸出したということは、網膜血管の微細構造に大きな損傷があったことを意味し、RGDを含むポリペプチドによるエンジオポイエチンの分泌がその損傷を防止したことを、実験によって証明した。したがって、糖尿病性網膜症及び年齢関連黄斑変性症のような疾患の初期(初期には血管新生が発生しない)に血管の血液漏れなどの異常により疾患が発生した場合も、RGD配列を有するポリペプチドが血管構造を保持させることにより、これら疾患の初期治療剤として使用可能である。
【実施例3】
【0053】
実施例3:酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、RGD配列を有するポリペプチド(配列番号6、7)の効果
実施例3は、実施例2で述べているように、酸素分圧の差による人為的な網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルを用いて、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号6、7)の効果を確認した。実施例2のように、正常酸素分圧で生育したマウスの場合、網膜全般にわたって均一な血管の分布を確認することができ(図5のB)、高圧酸素処理後、生理食塩水のみで処置したマウスの場合、血管新生の形はそのほとんどが異常であり、虚血が発生したことを観察した(図5のA)。RGD配列を有するポリペプチド1μg/kg/day(図7のA、B)では、異常な血管新生の形態的特徴は観察されず、正常発生する血管が正常に形成されていることが観察された。これは、実施例2のように、RGD配列を含むポリペプチドが正常血管の成長を助ける役割を果たすことを意味する。RGD配列を含むポリペプチド(配列番号6,7)は、糖尿病性網膜症及び年齢関連黄斑変性症のような疾患の初期(初期には血管新生が発生しない)に血管の血液漏れなどの異常により疾患が発生した場合、血管構造を保持させることにより、これら疾患の初期治療剤として使用可能である。
【実施例4】
【0054】
実施例4:酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、RGD配列を有するポリペプチド(配列番号8)の効果
実施例4は、実施例2で述べているように、酸素分圧の差による人為的な網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルを用いて、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号8)の効果を確認した。RGD配列を有するポリペプチドを1μg/kg/dayで処理した結果、異常な血管新生の形態的特徴は観察されず、正常発生する血管が正常に形成されていることが観察された(図8)。これは、実施例2のように、RGD配列を含むポリペプチドが正常血管の成長を助ける役割を果たすことを意味する。RGD配列を含むポリペプチドは、糖尿病性網膜症及び年齢関連黄斑変性症のような疾患の初期(初期には血管新生が発生しない)に血管の血液漏れなどの異常により疾患が発生した場合、血管構造を保持させることにより、これら疾患の初期治療剤として使用可能である。
【実施例5】
【0055】
実施例5:酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、エキスタチン(配列番号9)及びキストリン(配列番号10)の効果
実施例5は、実施例2で述べているように、酸素分圧の差による人為的な網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルを用いて、RGD配列を含むポリペプチドであるエキスタチン及びキストリンの効果を確認した。実施例2のように、正常酸素分圧で生育したマウスの場合、網膜全般にわたって均一な血管の分布を確認することができ(図5のB)、高圧酸素処理後、生理食塩水のみで処置したマウスの場合、血管新生の形はそのほとんどが異常であり、虚血が発生したことを観察した(図5のA)。エキスタチン及びキストリン1μg/kg/day(図9)では、異常な血管新生の形態的特徴は観察されず、正常発生する血管が正常に形成されていることが観察された。これは、実施例6のように、RGD配列を含むポリペプチドが正常血管の成長を助ける役割を果たすことを意味する。
【実施例6】
【0056】
実施例6:酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルの組織写真において、RGD配列を有するポリペプチド(配列番号6、8)の効果
実施例6は、実施例2で述べているように、酸素分圧の差による人為的な網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルを用いて、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号6、8)の効果を組織染色して確認した。実施例2のように、C57BL/6マウスを、酸素分圧を調節可能な装置にて、生後7日後、75%の酸素分圧を維持する高圧酸素環境で5日間放置した後、正常酸素分圧である20%の酸素圧で5日間更に放置する。このとき、5日間、1日に1回、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号6、8)をマウスに腹腔内投与して網膜を摘出した後、6μmのパラフィン切断(paraffin cross section)を行いH&E組織染色し、顕微鏡で観察した。正常マウスの場合、網膜層の内側の神経節細胞層が肥厚せずに正常な厚さを維持していることを示し(図10のA)、陰性対照群として、酸素分圧の差により網膜層の内側の神経節細胞層が異常に肥厚していることを観察した(図10のB)。RGD配列を含むポリペプチド(配列番号6、8)を処理した場合は、正常マウスと同様に、陰性対照群と比較して、網膜層の内側の神経節細胞層が肥厚せずに正常な厚さを維持していることを示している(図10のC、D)。これは、実施例3、4のように、RGD配列を含むポリペプチドが正常血管の成長を助ける役割を果たすことを意味するだけでなく、網膜層の内側の神経節細胞層が肥厚せずに正常な厚さを形成して網膜が正常に維持されることを意味する。この結果も、RGD配列を有するポリペプチド(配列番号6、8)は、糖尿病性網膜症及び年齢関連黄斑変性症のような疾患の初期(初期には血管新生が発生しない)に血管の血液漏れなどの異常により疾患が発生した場合、血管構造を保持させることにより、これら疾患の初期治療剤として使用可能であるという更なる証拠を示している。
【実施例7】
【0057】
実施例7:酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、RGD配列を有するポリペプチド及び単核細胞群の効果
単核細胞群の準備
単核細胞群を分離するため、C57BL/6マウスの両側の大腿骨と脛骨とを分離して、50ユニットのヘパリンを含むDMEM培地に浸漬した。分離された大腿骨及び脛骨から骨髄細胞を得るため、分離された骨の骨頭及び骨端部位を切断して骨髄腔を露出させた後、22G注射針を用いて、露出した骨髄腔内に10mlのDMEM培地を流入させて骨髄細胞を分離した。分離された骨髄細胞から脂肪及び筋肉組織を分離するため、骨髄細胞懸濁液を70μmのナイロンメッシュセルストレーナー(nylon mesh cell strainer)を用いてろ過した。骨髄細胞懸濁液の1.5倍の量でFicoll−Paque Plus(1.077mg/mlの濃度)を添加し、常温、3,000rpmで20分間遠心分離を行い、Ficoll−Paqueと培地との界面に存在する単核細胞群を分離した。分離された単核細胞群をDMEM培地で2回洗浄した後、2%のウシ胎仔血清(fetal bovine serum)と1mMのHEPESとを添加したDMEM培地1mlに懸濁した。分離された単核細胞群は、1.1〜3.2×106セル/マウスであり、細胞を観察するため、ヘキスト33342を用いて染色して観察した(図11のA)。
網膜内血管新生の生成を誘導する実験
実施例7は、実施例2で述べているように、酸素分圧の差による人為的な網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルを用いて、単核細胞群及び/又はRGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)を、下記表のように用いて、生後20日目(PN20)及び27日目(PN27)の効果を確認した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1のように、単核細胞群を処理した結果、生後20日目と27日目の両方で単独処理したもの(図12及び図13のB)に比べて、RGD配列を有するポリペプチドと同時に投与したとき(図12及び図13のC)、異常な血管新生の形態的特徴は観察されず、正常発生する血管が正常に形成されていることが観察された。この結果は、幹細胞を用いたとき、RGD配列を含むポリペプチドを同時に用いた場合、糖尿病性網膜症及び年齢関連黄斑変性症のような疾患の初期(初期には血管新生が発生しない)に血管の血液漏れなどの異常により疾患が発生した場合、血管構造を保持させることにより、これら疾患の初期治療剤として使用可能であることを示す。
【実施例8】
【0060】
実施例8:マウスを用いたRGD配列を含むポリペプチドの創傷治癒効果
RGD配列を含むポリペプチドの創傷治癒効果を調べるため、マウスの体部から約0.5〜1.0cm離れた地点の尾の背面に10×3mm大の全層創傷(full thickness wound)を作成した(図14)。傷の作成時において、出血は、圧迫法によって止血し、スプレーコーティングにより創傷面を感染から保護した。一方、ポリペプチドの効能を確認するため、4週間、毎日1回、ポリペプチドを1μg/kgの濃度で、2つの経路により投与した。一つの経路は、傷に直接点滴する方法であり、もう一つの経路は、腹腔注射する方法である。結果判定のため、マウスの尾に設けられた傷の大きさを毎週測定し、2週に1回、尾組織を採取してパラフィンブロックを作成した後、HE染色を行い、組織学的変化を観察した。その結果、3週後からは、投与経路にかかわらず、ポリペプチドを投与したマウスの傷の大きさが、対照群の傷の大きさより有意に減少したことを、写真から確認し(図14)、これを数値化してグラフで図式化した(図15)。また、HE染色による組織学的変化の観察においても、投与2週後から傷(scar)の下方組織において小さな毛細血管が少数見受けられた対照群とは異なり、ポリペプチドを投与したマウスの組織においては太い血管が多数見受けられた(図16)。これは、傷や火傷の治癒、褥瘡及び慢性潰瘍のような疾患の治療及び予防に使用できるだけでなく、毛包を正常に形成するための血管形成を安定化させることにより、脱毛症又は白毛症の治療、肥満による動脈硬化、心筋梗塞のような疾患の治療及び予防にも効果があると予想される。
【実施例9】
【0061】
実施例9:RGD配列を含むポリペプチドによる線維肉腫(fibrosarcoma)細胞株におけるアンジオポイエチン−1の分泌
線維肉腫細胞の培養
線維肉腫細胞(ヒト)を、10%のFBSを含むMEMで、5%のCO2、37℃の培養器にて培養した。シャーレで90%以上成長した細胞を用いた。
アンジオポイエチン−1の分泌の測定
6ウェルプレートに、細胞が2×105となるように培養された線維肉腫細胞に、RGD配列を含むポリペプチドを0〜100μg/mlで処理した。処理後12時間、アンジオポイエチン−1の分泌を誘導した。このとき、生成されたアンジオポイエチン−1の量をウェスタンブロット(western blotting)法にて測定した(図17)。
【実施例10】
【0062】
実施例10:RGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)によるマウス血清におけるアンジオポイエチン−1の分泌
RGD配列を含むポリペプチドによるマウス血清内におけるアンジオポイエチン−1の分泌を測定するため、出生初期に高酸素環境(75%)にさらしたマウスを、再び正常酸素分圧(20%)に復帰させると、異常な血管新生を自発的に生成する原理を用いて実験を行った(Higgins RD. et al., Curr. Eye Res. 18:20-27 (1999); Bhart N. et al., Pediatric Res. 46:184-188 (1999); Gebarowska D. et al., Am. J. Pathol. 160:307-313 (2002))。このため、マウスを、酸素分圧を調節可能な装置にて、生後7日後、75%の酸素分圧を維持する高圧酸素環境で5日間放置した後、正常酸素分圧である20%の酸素圧で更に放置する。このとき、RGD配列を含むポリペプチド1μg/kgを腹腔投与してアンジオポイエチン−1の分泌を誘導した。その後、時間別に血清を分離してアンジオポイエチン−1の量をウェスタンブロット法にて測定した(図18)。
【実施例11】
【0063】
実施例11:KGD配列を含むポリペプチド(配列番号4)による線維肉腫細胞株におけるアンジオポイエチン−1の分泌
線維肉腫細胞の培養
線維肉腫細胞(ヒト)を、10%のFBSを含むMEMで、5%のCO2、37℃の培養器にて培養した。シャーレで90%以上成長した細胞を用いた。
アンジオポイエチン−1の分泌の測定
6ウェルプレートに、細胞が2×105となるように培養された線維肉腫細胞に、KGD配列を含むポリペプチドを0〜100μg/mlで処理した。処理後12時間、アンジオポイエチン−1の分泌を誘導した。このとき、生成されたアンジオポイエチン−1の量をウェスタンブロット法にて測定した(図19)。
【実施例12】
【0064】
実施例12:血小板におけるRGD配列を含むポリペプチドの血小板由来成長因子の発現抑制効果
血小板の準備
健康な供血者から、抗凝固剤として、3.8%のクエン酸ナトリウムを含む真空採血管で全血を採血した後、1,200rpmで遠心分離を行い、血小板濃縮プラズマ(Plasma Rich Plasma;PRP)を分離した。血小板は、1mMのプロスタグランジンE1の存在下、1,200rpmで遠心分離を行い、ペレットとして得た。血小板ペレットは、変形したTyrode’s−HEPESバッファ(140mMの塩化ナトリウム、2.9mMの塩化カリウム、1mMの塩化マグネシウム、5mMのグルコース、10mMのHEPES、pH7.4)に再懸濁した。
コラーゲンによる血小板の活性
1回水洗した血小板浮遊液(2×108/ml)を、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)があるかないかの状態で、10分間、室温にて前処理した後、コラーゲン(2μg/ml)を処理して活性化させた。室温にて2時間血小板を活性化させた後、1,500rpmで、5分間、4℃にて遠心分離を行った。上澄液を採取した後、血小板由来成長因子(PDGF)の分泌をEIA法にて定量した。その結果、ポリペプチドの処理により有意に減少していることを確認した(図20)。
【0065】
最近、血小板からアンジオポイエチン−1が分泌されているとの報告があり、これは、血小板の活性が血管新生に重要な役割を果たしているという数多くの証拠の1つである。このようなRGDを含むポリペプチドによるPDGFの分泌抑制は、血小板の凝集を防止して血管新生を防ぐ本来のディスインテグリンの機能に関連づけて説明することができ、併せて、低濃度での処理時に、血小板の凝集による血小板間の相互作用を抑制することにより、正常な血管新生のためのアンジオポイエチン−1の分泌を誘導するものと判断される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、従来、外科的手術のみに頼っていた血管新生関連眼科疾患の治療方法のほか、治療薬物による新たな治療法を提示している。外科的手術には、多くの費用と、全ての患者に適用できないという限界があったが、本発明は、血管新生関連眼科疾患の治療における画期的な方法であって、失明の予防が可能となる。本発明における特定のアミノ酸配列を含むポリペプチドによるアンジオポイエチン−1の分泌は、既存の正常血管及び新たに形成される発生段階の正常な血管新生の形成に何ら影響を与えない。むしろ発生段階において正常血管の生成を助けることにより、未熟児網膜症のような発生段階にある患者にとって非常に有用であるという長所がある。また、造血幹細胞以外の幹細胞が、Xaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドと共に、正常な血管新生の形成に寄与することがわかった。仮に全ての血管新生を抑制すると、未熟児網膜症には適用できない。したがって、Xaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチド及び/又は幹細胞は、未熟児網膜症の治療剤としての利用価値は非常に高い。更に、糖尿病性網膜症の場合、初期には血管の構造を保護することにより、根本的な治療を可能にする。また、年齢関連黄斑変性症においても、Xaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドが血管構造の正常化を助けることにより、異常な血管の成長を抑制すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、血管生成因子によるマウスの角膜血管新生の生成を誘発させる動物モデルにおいて、マウスの角膜にポケットを設け、VEGFペレットを注入する過程を示す写真である。
【図2】図2は、VEGFによってマウスの角膜血管新生の生成を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRGD配列を有するポリペプチドによって正常血管の生成を向上させ、異常血管は抑制することを、解剖顕微鏡で観察した写真である。
【図3】図3は、VEGFによってマウスの角膜血管新生の生成を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRGD配列を有するポリペプチドによって正常血管の生成を向上させ、異常血管は抑制することを、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図4】図4は、VEGFによってマウスの角膜血管新生の生成を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRGD配列を有するポリペプチドによる血管の生成を数値化したグラフである。
【図5】図5は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、高酸素圧にさらされて正常な血管が新生されないマウスの網膜(A)と、正常酸素分圧で生育したマウス(B)の網膜とを比較した写真である。
【図6】図6は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRAD配列(配列番号3)を有するポリペプチドでは、血管の生成が正常に行われていない反面(A)、RGD配列を有するポリペプチド(ポリペプチド1、2)によって正常な血管が生成され、血管の血液漏れが減少していること(B、C)を、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図7】図7は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRGD配列を有するポリペプチド(配列番号6、7−A、B)によって正常な血管が生成され、血管の血液漏れが減少していることを、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図8】図8は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRGD配列を有するポリペプチド(配列番号8)によって正常な血管が生成され、血管の血液漏れが減少していることを、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図9】図9は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したエキスタチン(echistatin)、キストリン(kistrin)によって正常な血管が生成され、血管の血液漏れが減少していることを、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図10】図10は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRGD配列を有するポリペプチド(配列番号6、8)によって内側の神経節(ganglion)細胞層が、陰性対照群(B)と比較して、正常マウス(A)のように肥厚せずに正常な厚さを維持していること(C、D)を、H&E染色組織を用いて観察した写真である。
【図11】図11は、マウスの骨髄から単核細胞全体を分離した後、ヘキスト(Hoechst)−33342(A)及びFITC(B)で蛍光染色した後、顕微鏡で観察した写真である。
【図12】図12は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)の単独投与(A)、単核細胞の単独投与(B)、及びRGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)と単核細胞とを同時に腹腔注射した後、生後20日目の網膜を分離して観察したもの(C)であり、単核細胞を単独投与したものに比べて、RGD配列を含むポリペプチドを同時に投与したとき、正常な血管が生成され、血管の血液漏れが減少していることを、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図13】図13は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)の単独投与(A)、単核細胞の単独投与(B)、及びRGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)と単核細胞とを同時に腹腔注射した後、生後27日目の網膜を分離して観察したもの(C)であり、単核細胞を単独投与したものに比べて、RGD配列を含むポリペプチドを同時に投与したとき、正常な血管が生成され、血管の血液漏れが減少していることを、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図14】図14は、創傷のマウスモデルにおいて、RGD配列を含むポリペプチドを処理した結果、対照群に比べて、傷の大きさが有意に減少していることを示す写真である。
【図15】図15は、創傷のマウスモデルにおいて、RGD配列を含むポリペプチドを処理した結果、対照群に比べて、傷の大きさが有意に減少していることを図式化したグラフである。
【図16】図16は、創傷のマウスモデルにおいて、RGD配列を含むポリペプチドを処理した結果、対照群に比べて、傷組織の下に、正常マウスのように小さな毛細血管が太い血管で形成されていることを示すH&E染色組織写真である。
【図17】図17は、RGD配列を有するポリペプチドを処理した肉腫細胞株においてアンジオポイエチン−1の分泌を示す写真である。
【図18】図18は、RGD配列を有するポリペプチドを処理したマウス血清においてアンジオポイエチン−1の分泌を示す写真である。
【図19】図19は、KGD配列を有するポリペプチドを処理した肉腫細胞株においてアンジオポイエチン−1の分泌を示す写真である。
【図20】図20は、血小板からRGD配列を有するポリペプチド(配列番号5)による血小板由来成長因子の生成抑制を測定したグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の新生及び保持において、血管壁を安定化して血液漏れを防ぎ、正常な血管の成長を助けることにより、浮腫及び虚血、並びにこれに関する血管疾患を治療する物質に関する。より詳細には、塩基性アミノ酸−Gly−Asp配列を含むペプチド及び/又は幹細胞を用いて正常な血管を生成及び維持することにより、血液漏れを防ぎ、血管関連疾患の治療剤として使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
血管疾患の1つである虚血は、血管の狭窄、収縮、血栓、塞栓などにより、組織への血液供給が中断されて細胞損傷が起きる部分的な血液不足の症状である。
【0003】
1961年、Majno氏やPalade氏は、血液漏れが、ヒスタミン、ブラジキニン、セロトニンによる炎症反応によって小静脈の血管内皮細胞の間に生じる小さな空間(ギャップ)が生じて発生すると報告した(Majno G., Palade G. E., J. Biophys. Biochem. Cytol.11:571-605 (1961); Majno G., Palade G. E., Schoefl G. I., J. Biophys. Biochem. Cytol. 11:607-625 (1961))。
【0004】
この血管内皮細胞間の空間は、炎症誘発物質のみならず、複数のサイトカイン(Claudio L. et al., Lab Invest. 70:850-861 (1994); Wu N. Z., Baldwin A. L. Am. J. Physiol. 262:H1238-1247 (1992))、プロテアーゼ(Volkl K. P., Dierichs R. Thromb. Res. 42:11-20 (1986))、低温火傷(Clough G. et al., J. Physiol. 395:99-114 (1988))にさらされて発生することが知られている。また、様々な種類の癌でもこのような現象が発見された(Hobbs S. K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:4607-4612 (1998); Roberts W. G. et al., Am. J. Pathol. 153:807-830 (1998); Nishio S. et al., Acta. Neuropathol. (Berl) 59:1-10 (1983))が、癌以外にも、人間からは、喘息(Laitinen A., Laitiene L. A. Allergy Proc. 15:323-328 (1994))、色素性じんましん(Ludatscer R. M. Microrasc. Res. 31:345-355 (1986))、リウマチ(Schumacher H.R. Jr. Ann. N. Y. Acad. Sci. 256:39-64 (1975))などからも発見された。
【0005】
血管の特性は非常に多様であるが、例えば、慢性炎症の場合は、血管拡張及び血管新生を含む血管の変形に関連づけられている。このとき、血管は、正常でない、異常な特徴を有する形に変形するが、マウスの慢性気道炎症モデルにおいて、血管の直径が増加し、フォンヴィレブランド因子(von Willebrand Factor)及びP−セレクチン(P−selectin)に対する免疫反応が増加することが発見された。このように、変形した血管は、正常マウスに比べて免疫誘発物質の反応に弱いことがわかった。
【0006】
このような理由から、血管の異常な成長や血液漏れを抑制又は減少させる物質が開発されている。ミスチクシンは、合成された合成物質であって、血管内皮細胞のギャップの形成を抑制せずに血液漏れを防ぐことが報告されている(Blauk P., et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 284:693-699 (1998))。また、ベータ2−アドレナリン受容体作動薬フォルモテロールは、血管内皮細胞のギャップの形成を抑制すると、血液漏れを減少させるという結果が知られている(Blauk P. and McDonald D. M., Am. J. Physiol., 266:L461-468 (1994))。
【0007】
このように、血管の形態的変化を起こす物質に関する研究が進められており、その1つであるアンジオポイエチンが注目されるようになった。アンジオポイエチン−1は、血管を安定させ(Thurston G. et al., Nat. Med. 6 (4): 460-3 (2000))、VEGFの血管新生を安定化する役割を果たし、結果的に、血液漏れを抑制する。この機序を用いて、慢性糖尿における抹消血管障害による網膜症などの疾患や、血管異形成による未熟児網膜症などの治療への適用に関する報告があった(Joussen A. M. et al., Am. J. Pathol. 160 (5): 1683-93 (2002))。しかし、組み換えアンジオポイエチン−1は、安定性や溶解度などの問題のため直接使用には限界があり、その代案として、アンジオポイエチン−1の活性を有する代替物質の開発が試みられている(Koh G. Y. et al., Exp. Mol. Med. 34 (1): 1-11 (2002))。最近、血小板は、血管形成時に形成された血管を安定化させるために活性化され、アンジオポイエチン−1を放出することが知られている(Huang et al., Blood 95:1993-1999 (2000))。また、血小板からアンジオポイエチン−1を放出するための血小板の活性化にはトロンビンが関与することが報告されている(Li et al., Throm. Haemost. 85:204-206(2001))。しかし、トロンビンのこのような機能は、血管を安定化するためにアンジオポイエチン−1のみを放出させるのではなく、血小板が凝固して発生する現象の一部でもある。そのため、トロンビンを用いてアンジオポイエチン−1の放出を調節することは困難であり、血液凝固による副作用が予想される。このほか、アンジオポイエチン−1の分泌を誘導する物質を探索しているが、それに関する報告はない。
【0008】
従来のRGD及びKGDモチーフを有するペプチドは、血管新生の形成を抑制することが知られている(Victor I. R. and Michael S.G. Prostate 39:108-118 (1999); Yohei M. et. al., J. of Biological Chemistry 276:3:31959-31968 (2001))。この効能は、RGD及びKGDモチーフを有するペプチドが血管内皮細胞のαvβ3インテグリンに結合して生じると報告されている(Pasqualini R. et al., Nat. Biotechnol. 15 (6): 542-6 (1997))。インテグリンは、一般的に、細胞−細胞、細胞−基質間の媒介体であって、血管内皮細胞の成長に欠かせないため(Brian P. Eliceiri, Circ. Res. 89:1104-1110 (2001))、インテグリンに結合してインテグリンの役割を抑制するディスインテグリンは、そのほとんどが、フィブリノーゲンの構造モチーフであるRGDモチーフ又はKGDモチーフを含む。このような理由から、多くのRGD及びKGDモチーフを含むペプチドがインテグリンに結合して血管内皮細胞の成長及び移動を妨げることにより、血管新生の形成を抑制するという研究が行われている。また、国際特許WO95/25543(1995)の場合、組織内の脈管形成は、インテグリンαvβ3を必要とし、これを抑制するRGD及びKGDモチーフを含むペプチドを用いて脈管形成を抑制することにより、結果的に、血管新生を抑制し死滅させ、血液供給の低下を図っている。米国特許5,766,591(1998)においても、インテグリンαvβ3の拮抗剤として、RGD及びKGDモチーフを含むペプチドを用いて血管新生の生成を抑制することにより、固形癌の増殖を抑制するとの内容が開示されている。
【0009】
最近では、心臓疾患に使用するため、インテグリン中のフィブリノーゲンをリガンドとするαIIbβ3に結合してこれを阻害する阻害剤を開発するための試みがあった(Topol et al., Lancet 353:227-231(1999); Lefkovits et al., N. Eng. J. Med. 23: 15530-1559 (1995); Coller BS J. Clin. Invest. 99: 1467-1471))。しかし、このような試みは、成功していないとの結果も報告されている(O'Neill et al., N. Eng. J. Med. 342: 1316-1324 (2000); Cannon et al., Circulation 102: 149-156 (2000))。その理由として、従来のRGD及びKGDモチーフを含むペプチドは、インテグリンに結合してインテグリンの活性を抑制する機能があるだけでなく、濃度に応じてインテグリンを活性化させ、結局、血小板の活性を誘導することがある(Karlheinz et al., Throm. Res. 103: S21-27 (2001); Karlheinz et al., Blood 92 (9): 3240-3249 (1998))。インテグリンには、リガンドによって誘導される結合部位(Ligand−Induced Binding Site,LIBS)が存在するが、RGD及びKGDペプチドの結合は、インテグリンの構造的変化を誘導してLIBSを露出させ、露出したLIBSにリガンドが結合して血小板の活性が生じるとした(Leisner et al., J. Biol. Chem. 274:12945-12949(1999))。これは、低濃度で生じる現象であり、高濃度では生じない現象であると報告された。この方法により、RGD及びKGDが血小板を活性化させ得る場合、活性時に分泌されるサイトカイン(例:エンジオポイエチン−1)によって血管形成が阻害されるというよりは、増加及び安定化に寄与することができる。
【0010】
本発明では、前述したように、血管新生を抑制し死滅して血液の供給を低下させるというより、正常な血管の形成に寄与し、形成された血管を安定化させて血液漏れを抑制して血液供給を円滑にするという非常に相違する結果が得られた。これは、RGD及びKGDモチーフを含むペプチドがインテグリンに直接作用して血管新生の生成を抑制するのではなく、RGD及びKGDモチーフを含むぺプチドによる2次反応として、異常な血管新生の生成を抑制しつつ、正常な血管を形成して安定化させるだけでなく、血液漏れを防ぎ、眼球内疾患である糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、年齢関連黄斑変性症など、眼球内疾病の治療に効果的な上に、傷、火傷及び褥瘡、慢性潰瘍の治療及び予防に効果的であることを確認した。
【0011】
また、脱毛症や白毛症の場合、血管と接触する毛包は、毛髪を形成する毛髄質、毛皮質、毛表皮を形成する役割を果たす。このとき、異常な血管の形成は、血液漏れなどにより血液供給が円滑でなければ、毛包の形成、つまり、毛髪が形成されないばかりか、毛幹を構成する毛根細胞内のメラニン小体の形成が正常になされず、髪色が白色に変化する白毛症を誘導することになる。このような症状も、本発明で提供される組成物により血管の形成を安定化することによって、血液漏れを抑制して血液の供給を円滑にすれば、治療及び予防に効果的であると予想される。このほか、肥満による心血管疾患、人工皮膚及び移植用血管治療剤、並びに虚血症などにも効果的であると予想される。
【0012】
他の方法では、血管が損傷する段階において、正常な血管を新たに生成してその後に発生する病状の進行を防ぐ方法がある。ここでは、幹細胞を用いた眼球血管疾患の治療が試みられている。骨髄には、新しい血管を形成し得る血管内皮前駆細胞(endothelial precursor cell、EPC)を含むことが知られており、網膜血管を新生させるため、骨髄造血幹細胞を注入して造血幹細胞が血管内皮前駆細胞として作用することが報告されている(Grant M. B. et al., Nature Med. 8:607-612 (2002))。このような血管内皮前駆細胞は、循環(circulating)EPC(cEPC)に変化し得、これらが血管新生に関与する。このほかにも、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)などが新しい血管を形成し保持することに関与するとの報告があった(Rafii S. et al., Nature Med. 9:7027-712 (2003))。治療目的のために、マウスの目の硝子体に骨髄由来造血幹細胞を投与することにより、造血幹細胞が網膜の血管生成の前駆体として作用し得ることが報告された(Otani A. et al., Nature Med. 9:1004-1010 (2002))。幹細胞は、造血幹細胞のほか、胚性幹細胞、間充織幹細胞など、多様な種類の幹細胞が報告されている。造血幹細胞は、自家移植の場合は問題がないものの、同種又は異種間の移植には免疫拒絶反応を引き起こすという欠点があるが、これを解決する方法は未だ報告されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、上記の問題を解決し、上記の必要性に応じてなされたものであって、その目的は、特定の配列を含むペプチドを用いて正常な血管を誘導する治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明は、Xaa−Gly−Asp配列を含むペプチドを有効成分とする、浮腫及び/又は血管関連疾患の治療用組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、前記ペプチドのXaaアミノ酸は、Arg又はLysであることが好ましく、前記ペプチド配列は、配列番号1又は配列番号2に記載のものが最も好ましい。
【0016】
また、本発明において、前記ペプチド配列は、配列番号4、及び配列番号6〜配列番号10に記載のものからなる群から選択される1つのペプチド配列を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の血管関連疾患は、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、年齢関連黄斑変性症、緑内障、糖尿病による足の壊疽、肺高血圧、虚血性心筋症、虚血性脳疾患、皮弁の再生、心不全、急性後肢虚血、傷や火傷の治癒及び褥瘡、慢性潰瘍、毛細血管の形成を用いた脱毛症又は白毛症、肥満による心血管疾患、人工皮膚及び移植用血管治療剤、並びに虚血症からなる群から選択される疾患であることを含むが、これらに限定されない。
【0018】
更に、RGD及びKGDモチーフを含むペプチドが、血液の浮腫及び虚血による傷や火傷の治癒及び褥瘡、慢性潰瘍の治療及び予防に効果的であることを確認できるだけでなく、毛細血管の形成を用いた脱毛症又は白毛症、肥満による心血管疾患の治療に効果的であると予想される。
【0019】
また、本発明の前記ペプチドは、アンジオポイエチン−1の分泌を誘導することを特徴とする。
【0020】
更に、アンジオポイエチン−1の変形であるCOMP−Ang1が、 一側尿管結紮(UUO)モデルにおいて、腎臓の血管内皮細胞を保護することにより、単球やマクロファージの浸透を防いで炎症反応を抑制し、TGF−β1の組織内の量を減少させることで、Smad2/3のリン酸化を抑制させ、Smad7を活性化させ、腎臓の繊維化を減少させることが報告された(Kim et al., J. Am. Soc. Nephrol. 17: 2474-2483 (2006))。これは、アンジオポイエチン−1が腎臓繊維化疾患において血管内皮細胞に特異的に作用することにより、腎臓疾患を治癒できる治療剤として使用可能であることを示している。本発明で示しているRGD又はKGDを含むポリペプチドも、生体内で間接的にアンジオポイエチン−1の放出を誘導することにより、腎臓疾患の治療に有用であると考えられる。
【0021】
本発明は、Xaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチド単独、若しくはVEGF(Benest et al., Microcirculation. 13:423-437(2006))又はbFGFと共に使用した場合、更に効果的であり得る。
【0022】
また、本発明は、前記ペプチドに、幹細胞を更に含むことを特徴とする、血管関連疾患の治療用組成物を提供する。
【0023】
本発明において、前記幹細胞は、少なくとも血管内皮細胞に分化し得る能力を有する幹細胞、例えば、胚性幹細胞、間充織幹細胞、造血幹細胞であることが好ましい。
【0024】
更に、本発明の幹細胞を含む組成物で治療可能な血管関連疾患は、肺高血圧、虚血性心筋症、皮弁の再生、心不全、急性後肢虚血、又は眼球疾患であることを特徴とするが、これらに限定されない。
【0025】
本発明に記載の虚血による疾患の治療効果を有するペプチドは、Xaa−Gly−Asp配列を含むペプチド又は機能的にこれと同じ効果を有する切片、変異体などを含み、幹細胞を用いた治療の場合、Xaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドと共に使用することが好ましい。
【0026】
本発明のタンパク質及び幹細胞により治療又は予防可能な血管新生疾患は、肺高血圧(pulmonary hypertension;Ann Thorac Surg 2004 feb 77 (2) 449-56)、虚血性心筋症(ischemic myocardium with VEGF; Biochem Biophys Res Commun. 2003 Oct 24;310 (3):1002-9)、皮弁の再生(skin flap survival;Microsurgery. 2003;23 (4):374-80)、心不全(heart failure; Cold Spring Harb Symp Quant Biol 2002;67:417-27)、急性後肢虚血(acute hindlimb ischemia (with VEGF); Life Sci 2003 jun 20;73 (5):563-79)などのように、アンジオポイエチン−1の分泌を誘発して血管新生の安定化を治療機序とする疾患が好ましく、眼球疾患が更に好ましい。
【0027】
本発明において適用可能な眼球疾患は、特に、未熟児網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障などである。
【0028】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、例えば、受容可能な希釈剤、添加剤、又は担体を含む。
【0029】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、体内組織又は体外組織、又は器官への運搬又は投与に適した薬学的に受容可能な組成物に、前記ペプチドを含む。
【0030】
前記薬学的組成物は、例えば、本発明のペプチド及び/又はタンパク質が、酸性及び/又は塩基性末端及び/又は側鎖を含むことができるため、遊離酸又は塩基の形態、又は薬学的に受容可能な塩形態の薬学的組成物として含み得る。薬学的に受容可能な塩は、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸及びそれらの誘導体などの無機酸;並びに、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アントラニル酸、桂皮酸、ナフタリンスルホン酸、スルファニル酸及びそれらの誘導体などの有機酸を含む本発明のペプチド及び/又はタンパク質と塩を形成し得る適当な酸を含み得る。対象タンパク質と塩を形成し得る適当な塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム及びそれらの誘導体などの無機塩基;並びに、モノ−、ジ−及びトリ−アルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン及びそれらの誘導体)及び選択的に置換されたエタノールアミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン及びそれらの誘導体)などの有機塩基を含み得る。
【0031】
前記薬学的組成物は、非経口、経腸、局所又は吸入を含むが、これらに限定されない、あらゆる投与経路に適した様々な形態であり得る。非経口投与は、注射投与(すなわち、静脈内、筋肉内及び下記に記載したものと類似のもの)を含むが、これらに限定されない、消化管を通さないあらゆる投与経路を意味する。経腸投与は、錠剤、カプセル、経口溶液、懸濁液、スプレー及びその類似体を含むが、これらに限定されない、経口投与のあらゆる形態を意味する。このため、経腸投与は、直腸及び膣内投与の経路を意味する。局所投与は、クリーム、軟膏、ゲル、そして、経皮パッチを含むが、これらに限定されない、皮膚を通したあらゆる投与経路を意味する(また、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds. Gennaro, et al., Mack Printing Company, Easton, Pennsylvania, 1990参照)。
【0032】
本発明の非経口的薬学組成物は、例えば、静脈(静脈内に)、動脈(動脈内に)、筋肉(筋肉内に)、皮膚(皮下又はデポ組成物内に)下、心嚢、管状動脈に、注射により、又は組織又は器官への運搬用溶液として用いられ投与可能である。
【0033】
注射可能な組成物は、静脈内、動脈内、管状血管内、心膜、血管周辺、筋肉内、皮下及び関節を含むが、これらに限定されない、注射投与の経路に適した薬学的組成物であり得る。注射可能な薬学的組成物は、心臓、心嚢又は管状動脈への直接投与に適した薬学的組成物であり得る。
【0034】
経口投与のため、前記薬学製剤は、例えば、結合剤(例えば、プリゼラチン化したトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、乳糖、微結晶セルロース又はカルシウム水素リン酸塩);潤滑剤(例えば、マグネシウムステアリン酸塩、滑石又はシリカ);分解剤(例えば、ジャガイモ澱粉又はグリコール酸澱粉ナトリウム(sodium starch glycolate));又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような薬学的に受容可能な添加剤及び通常の方法によって製造された錠剤又はカプセルの形で摂取可能である。前記錠剤は、当業界における周知の方法によってコーティングされ得る(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds. Gennaro et al., Mack Printing Company, Easton, Pennsylvania, 1990参照)。
【0035】
経口投与用の薬学組成物溶液は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形で摂取され得るか、若しくはこれらを使用する前に水又は他の適当な担体及び構成のための乾燥産物であり得る。そのような薬学組成物溶液は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化した食用脂肪);エマルジョン化剤(例えば、レシチン又はアカシア);不溶性担体(例えば、アーモンド油、オイルエステル、エチルアルコール又は分画化した植物油);並びに、保存剤(例えば、メチル又はプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)のような薬学的に受容可能な添加剤及び通常の方法によって製造可能である。
【0036】
前記薬学組成物は更に、必要に応じて、緩衝塩、香料、色素及び甘味料を含むことができる。
【0037】
経腸用の薬学組成物は、例えば、錠剤、トローチ剤、又はドロップ(lozenge)の形で経口投与に適合可能である。直腸及び膣内投与経路のため、本発明のペプチド及び/又はタンパク質は、溶液(浣腸乳脂)、座薬又は軟膏として製造可能である。経腸薬学組成物は、高カロリー輸液(TPN)混合物又は摂取チューブによる運搬用のような摂取混合物の混合液に適合可能である(Dudrick et al., 1998, Surg. Technol. Int. VII: 174-184; Mohandas et al., 2003, Natl. Med.J. India 16 (1): 29-33; Bueno et al., 2003, Gastrointest. Endosc. 57 (4): 536-40; Shike et al., 1996, Gastrointest. Endosc. 44 (5): 536-40参照)。
【0038】
吸入による投与のため、本発明のペプチド及び/又はタンパク質は、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適当なガスのような適した推進剤で加圧された容器から、通常、エアロゾールスプレーの存在又はネブライザの形で運搬可能である。加圧されたエアロゾールの場合、前記容量単位は、計量された量を運搬するバルブを提供して決定され得る。乳糖又は澱粉のような適当な粉末ベースと前記化合物の粉末混合物を含む吸入剤又は吹入器に用いるため、カプセル、及び、例えば、ゼラチンカートリッジを製剤化することができる。
【0039】
本発明の点眼剤は、水溶性点眼液、不溶性点眼液又は点眼エマルジョンであり得る。本発明の点眼剤は、本発明のペプチドを、水溶性溶媒で滅菌された精製水又は生理食塩水、不溶性溶媒により、綿実油、大豆油などの植物油に溶解したり懸濁させて製造する。この場合、必要に応じて、等張化剤、pH調節剤、増粘剤、懸濁剤、エマルジョン化剤、保存剤、及びこれらと類似の薬学的に受容可能な添加剤が添加され得る。詳細には、前記等張化剤は、塩化ナトリウム、ホウ酸、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、D−マンニトール、ブドウ糖などを含む。pH調節剤の特定例としては、ホウ酸、無水硫酸ナトリウム、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂などを含む。増粘剤の特定例としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどを含む。懸濁剤の特定例としては、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン水素化ひまし油などを含む。エマルジョン化剤の特定例としては、ヨークレシチン、ポリソルベート80などを含むが、これらに限定されない。保存剤の特定例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼソニウム、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、パラオキシ安息香酸エステルなどを含むが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の組成物は、血管関連疾患の治療が必要な対象に投与される。そのような組成物の毒性及び治療学的有効性は、細胞培養又はLD50(一群の50%致死量)の測定及びED50(一群の50%が治療学的に有効な量)の測定といった、実験動物において標準薬学的手順によって決定可能である。毒性効果と治療学的効果との投与量の割合は治療係数であり、それは、LD50/ED50の割合で表示され得る。大きな治療係数を有する組成物が好ましい。
【0041】
一実施例において、細胞培養分析及び動物研究から得られたデータは、人間に適用するための投与量の範囲を設計するのに利用可能である。本発明の組成物の投与量は、好ましくは、毒性がないか、若しくはほとんどないED50を含む循環濃度の範囲内である。投与量は、この範囲内で適用された剤形及び利用された投与経路によって多様である。本発明の方法で使用された組成物において、治療学的に有効な投与量は、初期に細胞培養分析から測定され得る。投与量は、細胞培養で決定されたように、IC50(すなわち、50%阻害濃度)を含む血漿濃度範囲を得るため、動物モデルから設計される。このような情報は、人間にとって有用な投与量をより正確に決定するために使用され得る。血漿内レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィによっても決定可能である。
【0042】
他の実施例において、本発明のペプチド及び/又はタンパク質を含む組成物の有効量は、ヒト患者に対して体重1kgあたり約0.1μg〜約10mgの範囲で投与され、好ましくは、約1μg〜約1000μgの範囲で投与され得る。投与されるペプチド及び/又はタンパク質の量は、0.1,0.2,0.5,1,2,5,10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,200,250,300,400,500又は1000μgである。
【0043】
更に他の実施例において、本発明の組成物の有効量は、血管注射の場合、体重1kgあたり1μg〜10mgの範囲であり、眼球注射の場合、ヒトの眼球あたり1ng〜1mgの範囲であり、点眼剤の場合、点眼液1mlあたり1ng〜10mgの範囲であることを確認した。このような服用量は、好ましくは、皮内又は皮下投与される。このような投与量は、1回又は毎日、隔日、毎週、隔週又は毎月のように繰り返し投与され得る。
【0044】
以下、本発明を説明する。
【0045】
本発明では、Xaa−Gly−Asp配列を含むペプチドが、虚血による血管疾患に有効であることを初めて確認し、この過程で、アンジオポイエチン−1の分泌が起こり得ることを初めて確認した。異常な血管新生の形成に関する疾患の治療の可能性を、2つの細胞株に対するアンジオポイエチン−1の分泌及び角膜血管新生のマウスモデルなどで確認し、幹細胞とXaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドとを同時に用いて、異常な血管新生に関する治療の可能性について、酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルからその効果を確認した。
【0046】
また、創傷治癒のマウスモデルにおいて、Xaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドを処理した結果、創傷治癒に効果的であることを確認しており、これは、傷、火傷の治癒、褥瘡及び慢性潰瘍だけでなく、正常な毛細血管の形成を利用した脱毛症又は白毛症、肥満による心血管の治療及び予防に使用可能であることを示している。
【0047】
合成製剤したXaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドを、2つの細胞株に各濃度で処理した結果、Xaa−Gly−Aspを含むポリペプチドは、アンジオポイエチン−1の分泌を誘導するという新たな現象を発見した。このような作用は、角膜血管新生の動物モデルにおいて、正常血管の形成を助け、血管の構造を安定化させることにより、異常な血管構造の特徴を有する病的な血管新生の血管の血液漏れの現象を減少させることが確認できた。また、血管新生の重要な因子である血小板におけるヒト正常細胞株の血小板由来成長因子(PDGF)の分泌を抑制することを確認できた。更に、幹細胞を含む単核細胞群(Mononuclear cells,MNCs)とXaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドとを同時に投与する実験を行った結果、酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、異常な血管の生成からみられる血液漏れ及び血管構造の変異を抑制し、正常な血管を生成し、血管の構造を安定化させることを確認した。したがって、本発明は、眼球疾患のうち、血管の正常発生抑制過程によって発生する疾患である未熟児網膜症、正常血管構造の破壊などによって発生する異常な血管新生に関する疾患である糖尿病性網膜症及び年齢関連黄斑変性症などに用いられることが好ましい。
[実施例]
以下、非限定的な実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0048】
実施例1:無血管組織である眼球角膜組織において、VEGFによって誘導された血管新生の容量に応じたRGD配列を含むポリペプチドの処理効果
RGD配列を含むポリペプチドの眼球内血管新生の生成にどのような影響を与えるのかを調べるため、マウスの角膜にマイクロポケットを設け、VEGF300ngを含むペレットを挿入して血管新生を誘導させるモデルを作成した(図1)。このとき、ポリペプチドの効能を確認するため、ポリペプチド1.3pmol(0.75ng/kg)、130pmol(75ng/kg)を腹腔注射した。それから5日後、血管新生が生成されているか否かを観察するため、マウスの目を解剖顕微鏡で観察した。その結果、VEGFを含まないペレットを挿入したマウスの場合(図2及び図3のA)、血管が観察されず、VEGFペレットを挿入した陽性対照群では、血管の生成を観察することができた(図2及び図3のB)。しかし、RGD配列を含むポリペプチドの腹腔注射時に、それぞれ1.3pmol(図2及び図3のC)、130pmolで微細血管の生成及び血管網の構成が観察されることにより、成長の抑制ではない、血管の増殖を誘導することを確認した(図2及び図3のD)。血管の生成を定量化するため、各群の血管の長さを測定したとき、陽性対照群の場合、血管の全長が0.43±0.02mmであり、cycRGDの場合、1.3pmol処理群は、0.65±0.01mm、130pmol処理群の場合は、0.69±0.03mmであって、有意な増加を確認することができた(図4)。
【0049】
一方、実験に用いられたマウスにおいて、RGD配列を含むポリペプチドによる角膜混濁のような副作用は全く見受けられなかった。
【実施例2】
【0050】
実施例2:酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、RGD配列を有するポリペプチド(配列番号1、2)の効果
酸素分圧の差による人為的な網膜内血管新生の生成は、人間の未熟児網膜症や糖尿病性網膜症のような様相を示している。出生初期に高酸素環境(75%)にさらしたマウスを、再び正常酸素分圧(20%)に復帰させると、異常な血管新生を自発的に生成する原理を用いて実験を行った(Higgins RD. et al., Curr. Eye Res. 18:20-27 (1999); Bhart N. et al., Pediatric Res. 46:184-188 (1999); Gebarowska D. et al., Am. J. Pathol. 160:307-313 (2002))。このため、酸素分圧を調節可能な装置にて、生後7日後、75%の酸素分圧を維持する高圧酸素環境で5日間放置した後、正常酸素分圧である20%の酸素圧で5日間更に放置する。このとき、5日間、1日に1回、RGD配列を含むペプチド(配列番号1又は配列番号2)を、マウスに腹腔内投与して網膜内血管新生を観察した。血管を観察するため、生理食塩水1mlに2×106分子量のFITC−デキストラン50mgを溶解した溶液を、左心室から注入した。注入後、直ちにマウスの眼球を摘出した。摘出した眼球は、生理食塩水で洗浄した後、4%のパラホルムアルデヒドで4時間〜24時間固定した後、眼球からレンズを除去し、網膜をスライドガラス上に平らに広げた後、グリセリン−ゼラチンでシールし、蛍光顕微鏡を用いて観察した。
【0051】
正常酸素分圧で生育したマウスの場合、網膜全般にわたって均一な血管の分布を確認することができた(図5のB)が、高圧酸素処理後、生理食塩水のみで処置したマウスの場合、血管新生の形はそのほとんどが異常であり、虚血が発生したことを観察した(図5のA)。また、高圧酸素処理したマウスは、正常なマウスに比べて、発生段階の正常網膜の血管組織が正常に発生しておらず、対照群として用いられたRAD配列を含むポリペプチドの処理時にも、網膜血管が正常に形成されていないことを観察した(図6のA)。しかし、RGD配列を有するポリペプチド1μg/kg/day(図6のB、C)では、異常な血管新生の形態的特徴は観察されず、正常発生する血管が正常に形成されていることが観察された。これは、RGD配列を含むポリペプチドが正常血管の成長を助ける役割を果たすことから、非常に興味深い結果であって、酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、RGD配列を含むポリペプチドは、低酸素領域を縮小し、結局、血管新生の生成原因を除去することにより、病的な血管形成阻害効果を示し、未熟児網膜症のような眼球疾患の治療剤として使用可能であることを示している。また、RGD配列を有するポリペプチドの処理が血管の構造を安定化させて血液漏れが生じないことを、FITC−デキストランという蛍光物質の漏洩検査によって観察した。FITC写真において、蛍光漏れによって浸出して見える部分は、つまり、血管に穴があいて血液が漏れることを意味する。結局、蛍光が浸出する現象が本発明のペプチドによって減少したことは、その分、血管の損傷を防止したと解釈される。
【0052】
網膜血管には、脳血管の血液脳関門(Blood−Brain−Barrier、BBB)のような血液網膜関門(Blood−Retina−Barrier:BRB)があるため、大きな分子は血管を通りにくい。FITC−デキストランのような比較的高分子が網膜から浸出したということは、網膜血管の微細構造に大きな損傷があったことを意味し、RGDを含むポリペプチドによるエンジオポイエチンの分泌がその損傷を防止したことを、実験によって証明した。したがって、糖尿病性網膜症及び年齢関連黄斑変性症のような疾患の初期(初期には血管新生が発生しない)に血管の血液漏れなどの異常により疾患が発生した場合も、RGD配列を有するポリペプチドが血管構造を保持させることにより、これら疾患の初期治療剤として使用可能である。
【実施例3】
【0053】
実施例3:酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、RGD配列を有するポリペプチド(配列番号6、7)の効果
実施例3は、実施例2で述べているように、酸素分圧の差による人為的な網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルを用いて、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号6、7)の効果を確認した。実施例2のように、正常酸素分圧で生育したマウスの場合、網膜全般にわたって均一な血管の分布を確認することができ(図5のB)、高圧酸素処理後、生理食塩水のみで処置したマウスの場合、血管新生の形はそのほとんどが異常であり、虚血が発生したことを観察した(図5のA)。RGD配列を有するポリペプチド1μg/kg/day(図7のA、B)では、異常な血管新生の形態的特徴は観察されず、正常発生する血管が正常に形成されていることが観察された。これは、実施例2のように、RGD配列を含むポリペプチドが正常血管の成長を助ける役割を果たすことを意味する。RGD配列を含むポリペプチド(配列番号6,7)は、糖尿病性網膜症及び年齢関連黄斑変性症のような疾患の初期(初期には血管新生が発生しない)に血管の血液漏れなどの異常により疾患が発生した場合、血管構造を保持させることにより、これら疾患の初期治療剤として使用可能である。
【実施例4】
【0054】
実施例4:酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、RGD配列を有するポリペプチド(配列番号8)の効果
実施例4は、実施例2で述べているように、酸素分圧の差による人為的な網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルを用いて、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号8)の効果を確認した。RGD配列を有するポリペプチドを1μg/kg/dayで処理した結果、異常な血管新生の形態的特徴は観察されず、正常発生する血管が正常に形成されていることが観察された(図8)。これは、実施例2のように、RGD配列を含むポリペプチドが正常血管の成長を助ける役割を果たすことを意味する。RGD配列を含むポリペプチドは、糖尿病性網膜症及び年齢関連黄斑変性症のような疾患の初期(初期には血管新生が発生しない)に血管の血液漏れなどの異常により疾患が発生した場合、血管構造を保持させることにより、これら疾患の初期治療剤として使用可能である。
【実施例5】
【0055】
実施例5:酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、エキスタチン(配列番号9)及びキストリン(配列番号10)の効果
実施例5は、実施例2で述べているように、酸素分圧の差による人為的な網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルを用いて、RGD配列を含むポリペプチドであるエキスタチン及びキストリンの効果を確認した。実施例2のように、正常酸素分圧で生育したマウスの場合、網膜全般にわたって均一な血管の分布を確認することができ(図5のB)、高圧酸素処理後、生理食塩水のみで処置したマウスの場合、血管新生の形はそのほとんどが異常であり、虚血が発生したことを観察した(図5のA)。エキスタチン及びキストリン1μg/kg/day(図9)では、異常な血管新生の形態的特徴は観察されず、正常発生する血管が正常に形成されていることが観察された。これは、実施例6のように、RGD配列を含むポリペプチドが正常血管の成長を助ける役割を果たすことを意味する。
【実施例6】
【0056】
実施例6:酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルの組織写真において、RGD配列を有するポリペプチド(配列番号6、8)の効果
実施例6は、実施例2で述べているように、酸素分圧の差による人為的な網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルを用いて、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号6、8)の効果を組織染色して確認した。実施例2のように、C57BL/6マウスを、酸素分圧を調節可能な装置にて、生後7日後、75%の酸素分圧を維持する高圧酸素環境で5日間放置した後、正常酸素分圧である20%の酸素圧で5日間更に放置する。このとき、5日間、1日に1回、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号6、8)をマウスに腹腔内投与して網膜を摘出した後、6μmのパラフィン切断(paraffin cross section)を行いH&E組織染色し、顕微鏡で観察した。正常マウスの場合、網膜層の内側の神経節細胞層が肥厚せずに正常な厚さを維持していることを示し(図10のA)、陰性対照群として、酸素分圧の差により網膜層の内側の神経節細胞層が異常に肥厚していることを観察した(図10のB)。RGD配列を含むポリペプチド(配列番号6、8)を処理した場合は、正常マウスと同様に、陰性対照群と比較して、網膜層の内側の神経節細胞層が肥厚せずに正常な厚さを維持していることを示している(図10のC、D)。これは、実施例3、4のように、RGD配列を含むポリペプチドが正常血管の成長を助ける役割を果たすことを意味するだけでなく、網膜層の内側の神経節細胞層が肥厚せずに正常な厚さを形成して網膜が正常に維持されることを意味する。この結果も、RGD配列を有するポリペプチド(配列番号6、8)は、糖尿病性網膜症及び年齢関連黄斑変性症のような疾患の初期(初期には血管新生が発生しない)に血管の血液漏れなどの異常により疾患が発生した場合、血管構造を保持させることにより、これら疾患の初期治療剤として使用可能であるという更なる証拠を示している。
【実施例7】
【0057】
実施例7:酸素分圧の変化を用いた網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルにおいて、RGD配列を有するポリペプチド及び単核細胞群の効果
単核細胞群の準備
単核細胞群を分離するため、C57BL/6マウスの両側の大腿骨と脛骨とを分離して、50ユニットのヘパリンを含むDMEM培地に浸漬した。分離された大腿骨及び脛骨から骨髄細胞を得るため、分離された骨の骨頭及び骨端部位を切断して骨髄腔を露出させた後、22G注射針を用いて、露出した骨髄腔内に10mlのDMEM培地を流入させて骨髄細胞を分離した。分離された骨髄細胞から脂肪及び筋肉組織を分離するため、骨髄細胞懸濁液を70μmのナイロンメッシュセルストレーナー(nylon mesh cell strainer)を用いてろ過した。骨髄細胞懸濁液の1.5倍の量でFicoll−Paque Plus(1.077mg/mlの濃度)を添加し、常温、3,000rpmで20分間遠心分離を行い、Ficoll−Paqueと培地との界面に存在する単核細胞群を分離した。分離された単核細胞群をDMEM培地で2回洗浄した後、2%のウシ胎仔血清(fetal bovine serum)と1mMのHEPESとを添加したDMEM培地1mlに懸濁した。分離された単核細胞群は、1.1〜3.2×106セル/マウスであり、細胞を観察するため、ヘキスト33342を用いて染色して観察した(図11のA)。
網膜内血管新生の生成を誘導する実験
実施例7は、実施例2で述べているように、酸素分圧の差による人為的な網膜内血管新生の生成を誘導するマウスモデルを用いて、単核細胞群及び/又はRGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)を、下記表のように用いて、生後20日目(PN20)及び27日目(PN27)の効果を確認した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1のように、単核細胞群を処理した結果、生後20日目と27日目の両方で単独処理したもの(図12及び図13のB)に比べて、RGD配列を有するポリペプチドと同時に投与したとき(図12及び図13のC)、異常な血管新生の形態的特徴は観察されず、正常発生する血管が正常に形成されていることが観察された。この結果は、幹細胞を用いたとき、RGD配列を含むポリペプチドを同時に用いた場合、糖尿病性網膜症及び年齢関連黄斑変性症のような疾患の初期(初期には血管新生が発生しない)に血管の血液漏れなどの異常により疾患が発生した場合、血管構造を保持させることにより、これら疾患の初期治療剤として使用可能であることを示す。
【実施例8】
【0060】
実施例8:マウスを用いたRGD配列を含むポリペプチドの創傷治癒効果
RGD配列を含むポリペプチドの創傷治癒効果を調べるため、マウスの体部から約0.5〜1.0cm離れた地点の尾の背面に10×3mm大の全層創傷(full thickness wound)を作成した(図14)。傷の作成時において、出血は、圧迫法によって止血し、スプレーコーティングにより創傷面を感染から保護した。一方、ポリペプチドの効能を確認するため、4週間、毎日1回、ポリペプチドを1μg/kgの濃度で、2つの経路により投与した。一つの経路は、傷に直接点滴する方法であり、もう一つの経路は、腹腔注射する方法である。結果判定のため、マウスの尾に設けられた傷の大きさを毎週測定し、2週に1回、尾組織を採取してパラフィンブロックを作成した後、HE染色を行い、組織学的変化を観察した。その結果、3週後からは、投与経路にかかわらず、ポリペプチドを投与したマウスの傷の大きさが、対照群の傷の大きさより有意に減少したことを、写真から確認し(図14)、これを数値化してグラフで図式化した(図15)。また、HE染色による組織学的変化の観察においても、投与2週後から傷(scar)の下方組織において小さな毛細血管が少数見受けられた対照群とは異なり、ポリペプチドを投与したマウスの組織においては太い血管が多数見受けられた(図16)。これは、傷や火傷の治癒、褥瘡及び慢性潰瘍のような疾患の治療及び予防に使用できるだけでなく、毛包を正常に形成するための血管形成を安定化させることにより、脱毛症又は白毛症の治療、肥満による動脈硬化、心筋梗塞のような疾患の治療及び予防にも効果があると予想される。
【実施例9】
【0061】
実施例9:RGD配列を含むポリペプチドによる線維肉腫(fibrosarcoma)細胞株におけるアンジオポイエチン−1の分泌
線維肉腫細胞の培養
線維肉腫細胞(ヒト)を、10%のFBSを含むMEMで、5%のCO2、37℃の培養器にて培養した。シャーレで90%以上成長した細胞を用いた。
アンジオポイエチン−1の分泌の測定
6ウェルプレートに、細胞が2×105となるように培養された線維肉腫細胞に、RGD配列を含むポリペプチドを0〜100μg/mlで処理した。処理後12時間、アンジオポイエチン−1の分泌を誘導した。このとき、生成されたアンジオポイエチン−1の量をウェスタンブロット(western blotting)法にて測定した(図17)。
【実施例10】
【0062】
実施例10:RGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)によるマウス血清におけるアンジオポイエチン−1の分泌
RGD配列を含むポリペプチドによるマウス血清内におけるアンジオポイエチン−1の分泌を測定するため、出生初期に高酸素環境(75%)にさらしたマウスを、再び正常酸素分圧(20%)に復帰させると、異常な血管新生を自発的に生成する原理を用いて実験を行った(Higgins RD. et al., Curr. Eye Res. 18:20-27 (1999); Bhart N. et al., Pediatric Res. 46:184-188 (1999); Gebarowska D. et al., Am. J. Pathol. 160:307-313 (2002))。このため、マウスを、酸素分圧を調節可能な装置にて、生後7日後、75%の酸素分圧を維持する高圧酸素環境で5日間放置した後、正常酸素分圧である20%の酸素圧で更に放置する。このとき、RGD配列を含むポリペプチド1μg/kgを腹腔投与してアンジオポイエチン−1の分泌を誘導した。その後、時間別に血清を分離してアンジオポイエチン−1の量をウェスタンブロット法にて測定した(図18)。
【実施例11】
【0063】
実施例11:KGD配列を含むポリペプチド(配列番号4)による線維肉腫細胞株におけるアンジオポイエチン−1の分泌
線維肉腫細胞の培養
線維肉腫細胞(ヒト)を、10%のFBSを含むMEMで、5%のCO2、37℃の培養器にて培養した。シャーレで90%以上成長した細胞を用いた。
アンジオポイエチン−1の分泌の測定
6ウェルプレートに、細胞が2×105となるように培養された線維肉腫細胞に、KGD配列を含むポリペプチドを0〜100μg/mlで処理した。処理後12時間、アンジオポイエチン−1の分泌を誘導した。このとき、生成されたアンジオポイエチン−1の量をウェスタンブロット法にて測定した(図19)。
【実施例12】
【0064】
実施例12:血小板におけるRGD配列を含むポリペプチドの血小板由来成長因子の発現抑制効果
血小板の準備
健康な供血者から、抗凝固剤として、3.8%のクエン酸ナトリウムを含む真空採血管で全血を採血した後、1,200rpmで遠心分離を行い、血小板濃縮プラズマ(Plasma Rich Plasma;PRP)を分離した。血小板は、1mMのプロスタグランジンE1の存在下、1,200rpmで遠心分離を行い、ペレットとして得た。血小板ペレットは、変形したTyrode’s−HEPESバッファ(140mMの塩化ナトリウム、2.9mMの塩化カリウム、1mMの塩化マグネシウム、5mMのグルコース、10mMのHEPES、pH7.4)に再懸濁した。
コラーゲンによる血小板の活性
1回水洗した血小板浮遊液(2×108/ml)を、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)があるかないかの状態で、10分間、室温にて前処理した後、コラーゲン(2μg/ml)を処理して活性化させた。室温にて2時間血小板を活性化させた後、1,500rpmで、5分間、4℃にて遠心分離を行った。上澄液を採取した後、血小板由来成長因子(PDGF)の分泌をEIA法にて定量した。その結果、ポリペプチドの処理により有意に減少していることを確認した(図20)。
【0065】
最近、血小板からアンジオポイエチン−1が分泌されているとの報告があり、これは、血小板の活性が血管新生に重要な役割を果たしているという数多くの証拠の1つである。このようなRGDを含むポリペプチドによるPDGFの分泌抑制は、血小板の凝集を防止して血管新生を防ぐ本来のディスインテグリンの機能に関連づけて説明することができ、併せて、低濃度での処理時に、血小板の凝集による血小板間の相互作用を抑制することにより、正常な血管新生のためのアンジオポイエチン−1の分泌を誘導するものと判断される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、従来、外科的手術のみに頼っていた血管新生関連眼科疾患の治療方法のほか、治療薬物による新たな治療法を提示している。外科的手術には、多くの費用と、全ての患者に適用できないという限界があったが、本発明は、血管新生関連眼科疾患の治療における画期的な方法であって、失明の予防が可能となる。本発明における特定のアミノ酸配列を含むポリペプチドによるアンジオポイエチン−1の分泌は、既存の正常血管及び新たに形成される発生段階の正常な血管新生の形成に何ら影響を与えない。むしろ発生段階において正常血管の生成を助けることにより、未熟児網膜症のような発生段階にある患者にとって非常に有用であるという長所がある。また、造血幹細胞以外の幹細胞が、Xaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドと共に、正常な血管新生の形成に寄与することがわかった。仮に全ての血管新生を抑制すると、未熟児網膜症には適用できない。したがって、Xaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチド及び/又は幹細胞は、未熟児網膜症の治療剤としての利用価値は非常に高い。更に、糖尿病性網膜症の場合、初期には血管の構造を保護することにより、根本的な治療を可能にする。また、年齢関連黄斑変性症においても、Xaa−Gly−Asp配列を含むポリペプチドが血管構造の正常化を助けることにより、異常な血管の成長を抑制すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、血管生成因子によるマウスの角膜血管新生の生成を誘発させる動物モデルにおいて、マウスの角膜にポケットを設け、VEGFペレットを注入する過程を示す写真である。
【図2】図2は、VEGFによってマウスの角膜血管新生の生成を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRGD配列を有するポリペプチドによって正常血管の生成を向上させ、異常血管は抑制することを、解剖顕微鏡で観察した写真である。
【図3】図3は、VEGFによってマウスの角膜血管新生の生成を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRGD配列を有するポリペプチドによって正常血管の生成を向上させ、異常血管は抑制することを、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図4】図4は、VEGFによってマウスの角膜血管新生の生成を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRGD配列を有するポリペプチドによる血管の生成を数値化したグラフである。
【図5】図5は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、高酸素圧にさらされて正常な血管が新生されないマウスの網膜(A)と、正常酸素分圧で生育したマウス(B)の網膜とを比較した写真である。
【図6】図6は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRAD配列(配列番号3)を有するポリペプチドでは、血管の生成が正常に行われていない反面(A)、RGD配列を有するポリペプチド(ポリペプチド1、2)によって正常な血管が生成され、血管の血液漏れが減少していること(B、C)を、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図7】図7は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRGD配列を有するポリペプチド(配列番号6、7−A、B)によって正常な血管が生成され、血管の血液漏れが減少していることを、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図8】図8は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRGD配列を有するポリペプチド(配列番号8)によって正常な血管が生成され、血管の血液漏れが減少していることを、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図9】図9は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したエキスタチン(echistatin)、キストリン(kistrin)によって正常な血管が生成され、血管の血液漏れが減少していることを、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図10】図10は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、腹腔注射したRGD配列を有するポリペプチド(配列番号6、8)によって内側の神経節(ganglion)細胞層が、陰性対照群(B)と比較して、正常マウス(A)のように肥厚せずに正常な厚さを維持していること(C、D)を、H&E染色組織を用いて観察した写真である。
【図11】図11は、マウスの骨髄から単核細胞全体を分離した後、ヘキスト(Hoechst)−33342(A)及びFITC(B)で蛍光染色した後、顕微鏡で観察した写真である。
【図12】図12は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)の単独投与(A)、単核細胞の単独投与(B)、及びRGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)と単核細胞とを同時に腹腔注射した後、生後20日目の網膜を分離して観察したもの(C)であり、単核細胞を単独投与したものに比べて、RGD配列を含むポリペプチドを同時に投与したとき、正常な血管が生成され、血管の血液漏れが減少していることを、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図13】図13は、高圧酸素処理(75%)後、正常酸素分圧に低下させて網膜血管新生を誘発させる動物モデルにおいて、RGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)の単独投与(A)、単核細胞の単独投与(B)、及びRGD配列を含むポリペプチド(配列番号5)と単核細胞とを同時に腹腔注射した後、生後27日目の網膜を分離して観察したもの(C)であり、単核細胞を単独投与したものに比べて、RGD配列を含むポリペプチドを同時に投与したとき、正常な血管が生成され、血管の血液漏れが減少していることを、蛍光物質のFITC−デキストランを用いて観察した写真である。
【図14】図14は、創傷のマウスモデルにおいて、RGD配列を含むポリペプチドを処理した結果、対照群に比べて、傷の大きさが有意に減少していることを示す写真である。
【図15】図15は、創傷のマウスモデルにおいて、RGD配列を含むポリペプチドを処理した結果、対照群に比べて、傷の大きさが有意に減少していることを図式化したグラフである。
【図16】図16は、創傷のマウスモデルにおいて、RGD配列を含むポリペプチドを処理した結果、対照群に比べて、傷組織の下に、正常マウスのように小さな毛細血管が太い血管で形成されていることを示すH&E染色組織写真である。
【図17】図17は、RGD配列を有するポリペプチドを処理した肉腫細胞株においてアンジオポイエチン−1の分泌を示す写真である。
【図18】図18は、RGD配列を有するポリペプチドを処理したマウス血清においてアンジオポイエチン−1の分泌を示す写真である。
【図19】図19は、KGD配列を有するポリペプチドを処理した肉腫細胞株においてアンジオポイエチン−1の分泌を示す写真である。
【図20】図20は、血小板からRGD配列を有するポリペプチド(配列番号5)による血小板由来成長因子の生成抑制を測定したグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Xaa−Gly−Asp配列を含むペプチドを有効成分とすることを特徴とする、血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項2】
前記ペプチドのXaaアミノ酸が、Arg又はLysであることを特徴とする、請求項1に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項3】
前記ペプチドが、配列番号1又は配列番号2に記載の配列を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項4】
前記ペプチドが、配列番号4に記載のペプチド配列を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項5】
前記ペプチドが、配列番号6〜配列番号10に記載のものからなる群から選択される1つのペプチド配列を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項6】
前記血管関連疾患が、血管壁の血液漏れ又は血管損傷又は異常な血管新生による浮腫及び/又は虚血症を特徴とする、請求項1又は2に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項7】
前記虚血性血管関連疾患が、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、年齢関連黄斑変性症及び緑内障からなる群から選択される眼科疾患の1つであることを特徴とする、請求項6に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項8】
前記虚血性血管関連疾患が、糖尿病による足の壊疽、肺高血圧、虚血性心筋症、心不全、急性後肢虚血、人工皮膚及び移植用血管治療剤、並びに虚血症からなる群から選択される疾患であることを特徴とする、請求項6に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項9】
前記血管関連疾患が、傷、火傷、褥瘡、慢性潰瘍及び正常な毛細血管の形成による脱毛症又は白毛症、並びに肥満による心血管疾患からなる群から選択される疾患であることを特徴とする、請求項6に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項10】
前記ペプチドが、アンジオポイエチン−1の分泌を誘導することを特徴とする、請求項1又は2に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項11】
前記組成物が、幹細胞を更に含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項12】
前記幹細胞が、少なくとも血管内皮細胞に分化し得る能力を有する幹細胞であることを特徴とする、請求項11に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項13】
前記血管関連疾患が、血管壁の血液漏れ又は血管損傷又は異常な血管新生による浮腫及び/又は虚血症であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項14】
前記虚血性血管関連疾患が、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、年齢関連黄斑変性症及び緑内障からなる群から選択される眼科疾患の1つであることを特徴とする、請求項11又は12に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項15】
前記虚血性血管関連疾患が、糖尿病による足の壊疽、肺高血圧、虚血性心筋症、心不全、急性後肢虚血、人工皮膚及び移植用血管治療剤、並びに虚血症からなる群から選択される疾患であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項16】
前記血管関連疾患が、傷、火傷、褥瘡、慢性潰瘍及び正常な毛細血管の形成による脱毛症又は白毛症、並びに肥満による心血管疾患からなる群から選択される疾患であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項1】
Xaa−Gly−Asp配列を含むペプチドを有効成分とすることを特徴とする、血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項2】
前記ペプチドのXaaアミノ酸が、Arg又はLysであることを特徴とする、請求項1に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項3】
前記ペプチドが、配列番号1又は配列番号2に記載の配列を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項4】
前記ペプチドが、配列番号4に記載のペプチド配列を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項5】
前記ペプチドが、配列番号6〜配列番号10に記載のものからなる群から選択される1つのペプチド配列を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項6】
前記血管関連疾患が、血管壁の血液漏れ又は血管損傷又は異常な血管新生による浮腫及び/又は虚血症を特徴とする、請求項1又は2に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項7】
前記虚血性血管関連疾患が、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、年齢関連黄斑変性症及び緑内障からなる群から選択される眼科疾患の1つであることを特徴とする、請求項6に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項8】
前記虚血性血管関連疾患が、糖尿病による足の壊疽、肺高血圧、虚血性心筋症、心不全、急性後肢虚血、人工皮膚及び移植用血管治療剤、並びに虚血症からなる群から選択される疾患であることを特徴とする、請求項6に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項9】
前記血管関連疾患が、傷、火傷、褥瘡、慢性潰瘍及び正常な毛細血管の形成による脱毛症又は白毛症、並びに肥満による心血管疾患からなる群から選択される疾患であることを特徴とする、請求項6に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項10】
前記ペプチドが、アンジオポイエチン−1の分泌を誘導することを特徴とする、請求項1又は2に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項11】
前記組成物が、幹細胞を更に含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項12】
前記幹細胞が、少なくとも血管内皮細胞に分化し得る能力を有する幹細胞であることを特徴とする、請求項11に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項13】
前記血管関連疾患が、血管壁の血液漏れ又は血管損傷又は異常な血管新生による浮腫及び/又は虚血症であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項14】
前記虚血性血管関連疾患が、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、年齢関連黄斑変性症及び緑内障からなる群から選択される眼科疾患の1つであることを特徴とする、請求項11又は12に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項15】
前記虚血性血管関連疾患が、糖尿病による足の壊疽、肺高血圧、虚血性心筋症、心不全、急性後肢虚血、人工皮膚及び移植用血管治療剤、並びに虚血症からなる群から選択される疾患であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【請求項16】
前記血管関連疾患が、傷、火傷、褥瘡、慢性潰瘍及び正常な毛細血管の形成による脱毛症又は白毛症、並びに肥満による心血管疾患からなる群から選択される疾患であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の血管関連疾患の治療用組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2009−523787(P2009−523787A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551191(P2008−551191)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000330
【国際公開番号】WO2007/083949
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(505020271)アイジーン インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000330
【国際公開番号】WO2007/083949
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(505020271)アイジーン インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
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