説明

ペリレン誘導体およびそれを用いた光電変換素子

【課題】安価で高い光電変換効率を有する色素増感光電変換素子を得ることができる新規なペリレン誘導体、およびこれを用いた光電変換素子を提供すること。
【解決手段】式(1)で表されるペリレン誘導体。


(式中、R1は独立して、水素、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モルフォリル、フェニル、ナフチル、またはピリジルであり、R2は、置換されていてもよいフェニル、またはナフチルである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリレン誘導体およびそれを用いた光電変換素子に関する。詳しくは、該ペリレン誘導体を増感色素とした半導体微粒子を用いた光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇、およびその燃焼による地球温暖化ガスの発生等の環境的要因、ならびに原油価格の変動といった経済的要因が引き金となり、安価でクリーンな代替エネルギーに関する研究が活発化している。その中でも、太陽光の有効利用を促進する太陽電池の技術開発は、シリコン結晶系太陽電池を中心にこれまで数多くの研究が行われてきた。その結果、シリコン太陽電池は世界中に普及しつつあり、近い将来高純度シリコン結晶の供給が需要増加に対応できない状況が予測されている。このようなシリコン太陽電池は、光電変換効率に優れ、ほぼ無限に存在する二酸化ケイ素を原料とすることができるという利点がある。しかしながら、現実には二酸化ケイ素から高純度に精製されたシリコン結晶を製造しなくてはならず、その際に莫大な電力が必要とされる。しかも、太陽電池を製造する工程では、高温処理や真空装置を必要とするため、結果的に高コストになるという問題も抱えている。
【0003】
そこで、これらの大規模な設備やエネルギーを必要とせず、簡素な素子構造を持ち、低コストで製造可能な太陽電池の開発が進められ、1991年にグレッツェルらによって色素増感太陽電池が開発された(例えば非特許文献1参照)。この太陽電池は、表面積の大きい多孔質二酸化チタン薄膜の表面に、ルテニウム錯体色素を吸着させた光作用電極と、白金をスパッタした導電性ガラス対極の間に、レドックス系を含む電解質液を満たして封入した簡素な構成である。しかしながら、用いられるルテニウム錯体は、色素増感太陽電池としては高い光電変換効率を示すものの、シリコン太陽電池と比較すると光電変換効率は低く、また用いられるルテニウムは、高価で希少な金属であるため、コスト上昇の要因となっている。
【0004】
こうした中、ペリレン誘導体を用いた光電変換素子に関する研究が進められている(例えば特許文献1参照)。この研究では、色素増感された光電変換材料用半導体において、色素増感に用いられる色素の少なくとも一種に、ペリレンカルボキシイミドの誘導体が使用されている。
【0005】
しかしながら、これらペリレンカルボキシイミドの誘導体の光電変換率は低く、未だ充分な光電変換率を有する有機色素材料の開発には至っていない。
【非特許文献1】Nature,Vol 353,737(1991)
【特許文献1】特開2007−26930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、安価で高い光電変換効率を有する色素増感光電変換素子を得ることができる新規なペリレン誘導体、およびこれを用いた光電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、特定のペリレン誘導体を製造し、これを用いることで、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明のペリレン誘導体は、式(1)で表されることを特徴としている。
【0009】
【化1】

【0010】
式(1)中、R1は独立して、水素、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モルフォ
リル、フェニル、ナフチル、またはピリジルであり、互いに同一でも異なっていてもよい(ただし、すべてのR1が水素である場合を除く)。
【0011】
2は、フェニル、またはナフチルであり、R2の少なくとも一部がハロゲン、炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のハロゲン化アルキル、該アルキルまたは該ハロゲン化アルキルで置き換えられたシリル、該アルキルで置き換えられたアミノ基、または単環式もしくは多環式のアミノ基で置換されていてもよく、隣接するR2の置換基同士は
結合して炭素数6〜8の環を形成してもよい。
【0012】
前記式(1)中、少なくとも2つのR1が、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モ
ルフォリル、フェニル、ナフチル、またはピリジルであり、R2が、フェニル、またはナ
フチルであり、R2の少なくとも一部が炭素数1から4のアルキルで置換されているのが
好ましい。
【0013】
また、前記式(1)中、R2がフェニルであり、かつR2のオルト位が炭素数1から4のアルキルで置換されているのが好ましい。
本発明のペリレン誘導体は、式(2)で表されることを特徴としている。
【0014】
【化2】

【0015】
式(2)中、R1は独立して、水素、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モルフォ
リル、フェニル、ナフチル、またはピリジルであり、互いに同一でも異なっていてもよい(ただし、すべてのR1が水素である場合を除く)。
【0016】
3は、ハロゲン、炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のハロゲン化アル
キル、該アルキルまたは該ハロゲン化アルキルで置き換えられたシリル、該アルキルで置き換えられたアミノ基、あるいは単環式または多環式のアミノ基である。
【0017】
前記式(2)中、R1は独立して、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モルフォリ
ル、フェニル、ナフチル、またはピリジルであり、少なくとも1つのR3が、炭素数1か
ら4のアルキルであるのが好ましい。
【0018】
本発明の光電変換素子は、上記ペリレン誘導体を増感色素として用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明のペリレン誘導体は、高い色素増感性を有するとともに、安価に製造することができる。このペリレン誘導体を増感色素として用いれば、光電変換効率に優れ、かつ安価な色素増感光電変換素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明のペリレン誘導体(以下、ペリレン色素ともいう)について、具体的に説明する。
本発明のペリレン誘導体は、式(1)で表されることを特徴としている。
【0021】
【化3】

【0022】
式(1)中、R1は独立して、水素、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モルフォ
リル、フェニル、ナフチル、またはピリジルであり、それぞれのR1は同一であっても異
なっていてもよいが、すべてのR1が水素である場合は除かれる。なかでも、N−ピロリ
ジル、N−ピペリジル、N−モルフォリル、フェニル、ナフチル、またはピリジルが好ましく、N−ピロリジル、N−ピペリジル、またはN−モルフォリルがより好ましい。さらに少なくとも1つのR1が、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モルフォリル、フェ
ニル、ナフチル、またはピリジルであるのが望ましい。
【0023】
2は、フェニル、またはナフチルであり、フェニルであるのが好ましい。R2の少なくとも一部はハロゲン、炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のハロゲン化アルキル、該アルキルまたは該ハロゲン化アルキルで置き換えられたシリル、該アルキルで置き換えられたアミノ基、または単環式もしくは多環式のアミノ基で置換されていてもよく、隣接するR2の置換基同士が結合して炭素数6〜8の環を形成してもよい。なかでもメチル、エチル、プロピルまたはブチルであるのが好ましい。これらR2の置換基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0024】
これら式(1)で表されるペリレン誘導体のなかでも、R2がフェニルであり、かつR2
のオルト位が炭素数1から4のアルキルで置換されているのが望ましい。
また、本発明のペリレン誘導体は、式(2)で表されることを特徴としている。
式(2)で表されるペリレン誘導体は、式(1)で表されるペリレン誘導体の一態様であり、式(1)で表されるペリレン誘導体の中でも、好ましい特性を有する。
【0025】
【化4】

【0026】
式(2)中、R1は独立して、水素、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モルフォ
リル、フェニル、ナフチル、またはピリジルであり、互いに同一でも異なっていてもよいが、すべてのR1が水素である場合は除かれる。なかでも、N−ピロリジル、N−ピペリ
ジル、N−モルフォリル、フェニル、ナフチル、またはピリジルが好ましく、N−ピロリジル、N−ピペリジル、またはN−モルフォリルがより好ましい。さらに少なくとも1つのR1が、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モルフォリル、フェニル、ナフチル、
またはピリジルであるのが望ましい。
【0027】
3は、ハロゲン、炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のハロゲン化アル
キル、該アルキルまたは該ハロゲン化アルキルで置き換えられたシリル、該アルキルで置き換えられたアミノ基、あるいは単環式または多環式のアミノ基である。また、少なくとも1つのR3が、炭素数1から4のアルキルであるのが好ましい。
【0028】
上記式(1)または式(2)で表される本発明のペリレン誘導体としては、具体的には、例えば、以下のようなペリレン誘導体が挙げられる。
【0029】
【化5】

【0030】
色素増感太陽電池用に用いられる色素を設計するためには、色素の酸化電位の測定、吸収スペクトルの測定、発光スペクトルの測定から、励起状態のエネルギー状態を見積もることが有効である。この値と使用する半導体電極との関係がさらに重要であり、色素により捕まえられたエネルギーを電気として外部に取り出す場合に重要となる。
【0031】
例えば、N,N’−ジシクロヘキシル−1,7−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドをペリレン色素として用いた場合、励起状態の酸化電位は−0.006Vと見積もることができ(Tetrahedron Letter (1999)、40、7047)、電極である二酸化チタンの伝導帯の−0.50Vへの電子移動が極めて起こりにくいことがわかる。
【0032】
これに対して、前記ペリレン色素の1つ臭素をN−ピペリジンに置換したN,N’−ジシクロヘキシル−1−(N−ピロリジン)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドをペリレン色素として用いた場合、または前記ペリレン色素の2つの臭素をN−ピペリジンに置換したN,N’−ジシクロヘキシル−1,7−ビス(N−ピロリジン)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドをペリレン色素として用いた場合、各々の励起状態の酸化電位は−0.56V、−0.78Vとなり、二酸化チタン電極への電子移動が起こりやすくなることがわかる。このことから、R1へ1つ以上の(N−ピロリジル)に代表される置換基を導入することにより、光電流が流れることが示される。
【0033】
本発明のペリレン誘導体、例えば式(1)で表されるペリレン誘導体は、以下の方法(
[工程1]〜[工程4])により合成することができる。
[工程1]:まず、3,4:9,10−テトラカルボン酸二無水物を硫酸中、ヨウ素と反応させ、次いで臭素と反応させた後、1,7−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸二無水物を得る。
【0034】
【化6】

【0035】
[工程2]:次に、得られた1,7−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸二無水物とR2−NH2とを反応させ、N,N’−(R22−1,7−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドを得る。
【0036】
【化7】

【0037】
[工程3]:上記で得られたN,N’−(R22−1,7−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドと、例えばピロリジンとを反応させることにより、ペリレン環にR1を導入し、N,N’−(R22−1,7−(R12ペリレン−3,4
:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドを得る。
【0038】
【化8】

【0039】
[工程4]:そして、得られたN,N’−(R22−1,7−(R12ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドをアルコール中でアルカリと反応させ、N−置換−1,7−(R12ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸−3,4−無水物−9,10−イミド(本発明のペリレン誘導体)を得ることができる。
【0040】
【化9】

【0041】
その他の本発明のペリレン誘導体も同様の方法により、合成することができる。
次に本発明の光電変換素子、および該素子の応用分野である光電気化学電池について説明する。
【0042】
本発明の光電変換素子は、色素増感作用を有する光電変換素子、いわゆる色素増感光電変換素子であり、導電性支持体、および導電性支持体上に塗設される色素が吸着した半導体微粒子の層(感光層)からなる電極である。感光層は目的に応じて設計され、単層であっても多層であってもよい。感光層中における各層の色素は1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。感光層に入射した光は、まず色素を励起する。励起された色素はエネルギーの高い電子を有しており、この電子が色素から半導体微粒子の伝導帯に移動し、さらに拡散によって導電性支持体に到達する。この時、色素分子は酸化体となっているが、この酸化体に外部回路で仕事をした電極上の電子が戻るという機構を有するのが光電気化学電池であり、色素増感光電変換素子はこの電池の負極として機能する。
【0043】
上記導電性支持体としては、通常、金属のように支持体そのものに導電性がある支持体、または表面に導電剤層を有するガラスもしくはプラスチックからなる支持体が用いられる。
【0044】
表面に導電剤層を有する支持体の場合、該導電剤層を形成する好ましい導電剤としては、例えば、金属(例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、またはインジウム等)、炭素、または導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。導電剤層の厚さは、0.05〜10μmであるのが好ましい。
【0045】
導電性支持体の表面抵抗は、低いほどよい。好ましい表面抵抗値は50Ω/cm2 以下
であり、さらに好ましくは10Ω/cm2 以下である。下限値に特に制限はないが、通常
0.1Ω/cm2 程度である。
【0046】
このような導電性支持体は、実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。透明導電性支持体としては、ガラスもしくはプラスチックに導電性の金属酸化物を塗設したものが望ましく、金属酸化物の塗布量は支持体1m2当たり0.1〜100gであるのが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
【0047】
感光層に用いられる半導体微粒子は、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、またはセレン化物等)またはペロブスカイトの微粒子である。金属のカルコゲニドとして好ましいものには、例えば、チタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタル等の酸化物、硫化カドミウム等の硫酸化物、またはセレン化カドミウム等のセレン化物等が挙げられる。ペロブスカイトとしては、例えば、チタン酸ストロンチウム、またはチタン酸カルシウム等が好ましく挙げられる。これらのうち、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、または酸化タングステンが特に好ましい。
【0048】
これらの半導体微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を粒径として採用し、これらを平均して求めた値を平均粒径とした場合、1次粒子としては0.001〜1μm、分散物の平均粒径を0.01〜100μmであることが好ましい。
【0049】
半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法としては、半導体微粒子の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法、半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し、空気中の水分によって加水分解させて半導体微粒子膜を得る方法などが挙げられる。半導体微粒子の分散液を作成する方法としては、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、または半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させ、そのまま使用する方法等が挙げられる。分散媒としては、水または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、または酢酸エチル等)が挙げられる。分散の際、必要に応じてポリマー、界面活性剤、酸、もしくはキレート剤などを分散助剤として用いてもよい。
【0050】
半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるよう、表面積の大きいものが望ましい。例えば半導体微粒子を支持体上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限値には特に制限はないが、通常5000倍程度である。
【0051】
一般に、半導体微粒子の層の厚みが大きいほど単位面積当たりに担持できる色素の量が増えるため、光の吸収効率が高くなるが、発生した電子の拡散距離が増すために電荷再結合によるロスも増大する傾向にある。半導体微粒子層(すなわち感光層)の好適な厚みは、素子の用途によって異なるが、通常0.1〜100μm程度である。該半導体微粒子層に採用する光電気化学電池として用いる場合は、1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましい。
【0052】
半導体微粒子は支持体に塗布した後、粒子同士を密着させるために100〜800℃の温度で10分〜10時間程度焼成してもよい。なお、半導体微粒子の支持体1m2当たり
の塗布量は、好ましくは0.5〜500gであり、5〜100gであるのがより好ましい。
【0053】
本発明のペリレン誘導体(ペリレン色素)を用いれば、該誘導体の吸着作用により半導体微粒子の色素増感性が向上するが、一般に、半導体微粒子に色素を吸着させるには、色素溶液の中に充分に乾燥させた半導体微粒子を長時間浸漬する方法が採用される。この際、色素溶液を必要に応じて50〜100℃程度に加熱してもよい。色素の吸着は、半導体微粒子の塗布前に行っても塗布後に行ってもよい。また、半導体微粒子と色素とを同時に塗布して吸着させてもよい。未吸着の色素は洗浄によって除去される。塗布膜の焼成を行う場合、焼成後に色素の吸着を行うのが好ましい。焼成後、塗布膜表面に水が吸着する前にすばやく色素を吸着させるのが好ましく、水を除去した雰囲気中で色素を吸着させるのが特に好ましい。
【0054】
ペリレン色素は1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。混合する場合、本発明の式(1)、または(2)で表されるペリレン色素同士を混合してもよいし、米国特許4927721号、同4684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号の各明細書、および特開平7−249790号公報に記載の錯体色素と本発明のペリレン色素とを混合して用いてもよい。用途が光電気化学電池である場合、光電変換の波長域ができるだけ広くなるよう、混合する色素を選択する必要がある。
【0055】
これら色素の使用量は、色素全量として、支持体1m当たり0.01〜100mモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50mモル、特に好ましくは0.5〜10mモルの量である。この場合、本発明のペリレン色素の使用量の割合は、色素全量100モル%中5モル%以上とすることが好ましい。また、これら色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒子1g に対して0.001〜1mモルが好ましく、より好ましくは0.1〜1mモルの量である。このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が充分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し、増感効果を低減させる原因となり得る。
【0056】
また、会合などの色素間の相互作用を低減する目的で、無色の疎水性化合物を共吸着させてもよい。この疎水性化合物としては、例えば、カルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばコール酸)等が挙げられる。
【0057】
色素を吸着した後、アミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。該アミン類としては、ピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が好ましく挙げられる。これらアミン類は、液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。なお、本発明では、導電性支持体と感光層との界面近傍において、導電剤と半導体微粒子とが相互に拡散して混合していてもよい。
【0058】
このようにして作製された色素増感光電変換素子は、各種のセンサーや光再生型の電気化学電池、いわゆる光電気化学電池に応用することができる。光電気化学電池に応用する場合、図1に示すように電荷移動層と対向電極が必要である。図1に示される光電気化学電池1は導電性支持体2上に感光層3を有し、さらに感光層3上に電荷移動層4と対向電極5が設けられたものである。
【0059】
以下、電荷移動層と対向電極について詳しく説明する。
電荷移動層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層である。代表的な例としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸した、いわゆるゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩などが挙げられる。
【0060】
酸化還元対としては、例えばヨウ素とヨウ化物(例えばヨウ化リチウム、ヨウ化テトラ
ブチルアンモニウム、またはヨウ化テトラプロピルアンモニウム等)の組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、またはベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体の組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン、またはナフトハイドロキノン等)とその酸化体の組み合わせ、2価と3価の鉄錯体(例えば赤血塩と黄血塩)との組み合わせ等が挙げられる。これらのうちヨウ素とヨウ化物の組み合わせが好ましい。これらを溶かす有機溶媒としては、非プロトン性の極性溶媒(例えばアセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、または3−メチルオキサゾリジノン等)が好ましい。
【0061】
ゲル電解質のマトリクスに使用されるポリマーとしては、例えばポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリド等が挙げられる。溶融塩としては、例えばヨウ化リチウムと他の少なくとも1種類のリチウム塩(例えば酢酸リチウム、または過塩素酸リチウム等)が挙げられ、これらにポリエチレンオキシド等のポリマーを混合することにより、室温での流動性を高めてもよい。この場合のポリマーの添加量は、通常1〜50重量%である。
【0062】
酸化還元対は電子のキャリアとなるので、適度な濃度でなければならない。液体またはゲル電解質として用いる場合、溶液中の好ましい濃度としては、総量で0.01モル/L以上、より好ましくは0.1モル/L以上、特に好ましくは0.3モル/L以上である。この場合の上限値には特に制限はないが、通常5モル/L程度である。
【0063】
対向電極は、光電気化学電池の正極として機能する。対向電極は、通常、上記導電性支持体と同義であるが、強度が充分に保たれるような構成であれば、支持体は必ずしも必要ではない。ただし、密閉性の観点からは支持体を有する方が望ましい。
【0064】
感光層に光が到達するためには、前述の導電性支持体と対向電極の少なくとも一方が実質的に透明でなければならない。本発明のペリレン色素を用いた光電気化学電池においては、導電性支持体が透明であり、かつ太陽光を支持体側から入射させるのが好ましい。この場合、対向電極は光を反射する性質を有することがより好ましい。光電気化学電池の対向電極としては、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラス、またはプラスチックが好ましく、白金を蒸着したガラスが特に好ましい。光電気化学電池ではこれら構成物の蒸散を防止するために、電池の側面をポリマーまたは接着剤等で密封することが好ましい。
【0065】
このようにして得られる光電気化学電池の特性は、AM1.5Gで100mW/cm2
のとき、開放電圧0.01〜3V、短絡電流密度0.001〜20mA/cm2、形状因
子0.1〜0.99、変換効率0.001〜25%である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[測定方法および評価方法]
1H−NMR、13C−NMR
1H−NMRおよび13C−NMRは、JEOL社製AL300(300MHz、1H)およびECX−400P(1Hにおいて400MHz、13Cにおいて99.6MHz)にて
測定を行った。溶媒はCDCl3、および重水素化酢酸を用いた。ケミカルシフトはδ(
ppm)で表し、溶媒としてCDCl3を用いた際は、テトラメチルシランを基準物質(
0ppm)とし、重水素化酢酸を用いた際は、重水素化酢酸に含まれるCHD2COOD
の2.03ppmを基準ピークとした。
【0067】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー
シリカゲルとしてSiliCycle社製のUltraPure Silicagel(230−400メ
ッシュ)を用いて測定を行った。
【0068】
アルミナカラムクロマトグラフィー
アルミナとして和光社製活性アルミナ(300メッシュ)を用いて測定を行った。
逆層カラムクロマトグラフィー
逆層移動層としてNacalai社製Cosmosil76C18−OPNを用いて測定を行った。
【0069】
薄層クロマトグラフィー(TLC)
メルク社製silica gel60F254、aluminum oxide60F254、RP-18F254sを用いて測定を行った。
【0070】
IR
日本分光社製FT/IR-470Plusを用い、KBrペレット法に基づき測定を行った。
HRMS(高分解能質量分析計)
JEOL社製JMS-HX110Aを用いて測定を行った。
【0071】
各種スペクトル測定(吸収スペクトル、蛍光スペクトル)
得られたペリレン化合物の吸収スペクトルは、パーキンエルマー社製Lambda900UV/VIS/NIRspectrometerにて測定した。セル厚が1cmおよび1mmの石英セルを使用し、測定濃度を10-4〜10-6Mとした。また、蛍光スペクトルはSPEX社製FluoroMax-3 spectrometerにて測定した。セル厚が1cmの石英セルを用い、測定濃度を10-6Mとした。溶媒は測定前にアルゴンガスを30分間バブリングし、脱ガスを行った。溶媒は和光社製Spectralグレードを精製せずに用いた。
【0072】
酸化電位の測定
微分パルスボルタンメトリーの測定は、ALS660 electrochemical analyzerを用
いて測定した。溶媒として脱気した塩化メチレンを用い、電解質として0.1MのTBAPF6を加えたものを用いた。測定したポテンシャルは、参照電極としてAg/AgNO3を用いて測定した。また、フェロセンの塩化メチレン中でのEp値を0.37Vとし、これを基準値として酸化電位を求めた。
【0073】
光電変換効率の測定
色素吸着させたTiO2電極を作用電極とし、対抗電極としてPtコートした導電性ガ
ラスを用いて光起電力を測定した。電極間のスペーサーとしてDupont社製Surlyn polymerを用い、電解質はヨウ化リチウム(0.1M)、ヨウ素(0.05
M)、ヨウ化2,3−ジメチル−1−プロピルイミダゾリウム(0.6M)および4−tert−ブチルピリジン(0.5M)の混合物をアセトニトリルに溶解したものを用いた。IPCEの測定、光電流電圧の測定は、ポテンシオスタット(分光計器社製、ModelHCSS−25)を用いて測定した。光源は擬似太陽光(AM1.5、100mW/cm2:分光計器社製ModelCEP−2000)を用いた。これらの値より、光電変換効率を求めた。
【0074】
[原料の合成]
N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドは、J.Org.Chem.(2005),70,4323に記載の方法で合成した。
【0075】
4−アミノ安息香酸tert−ブチルは、Synth.Commun.(1984),
14,921に記載の方法で合成した。
[実施例1]:本発明のペリレン誘導体の合成
(1)N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ビス(N−ピロリジル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドの合成
N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド(1.00g,1.16mmol)、ピロリジン(30mL)に溶解し、オイルバスを用いて50℃で14時間加熱した。減圧下で過剰のピロリジンを取り除いた後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/酢酸エチル30/1vol/vol)およびアルミナカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム1/2vol/vol)を用いて分離精製を行うことにより、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ビス(N−ピロリジル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド (408mg,0.480mmol,収量41%)を緑色固体として得た。
【0076】
得られた化合物の構造をH−NMRにて確認した;
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.58 (s, 2H), 8.52 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.89 (d, J= 8.1 Hz, 2H), 7.48 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 7.4 Hz, 4H), 3.92-3.72 (m, 4H), 3.00-2.75 (m, 4H), 2.80 (sept, J = 6.9 Hz, 4H), 2.20-1.90 (m, 8H), 1.19 (d, J = 6.9 Hz, 24H)。
【0077】
(2)N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ビス(N−ピロリジル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸−3,4−無水物−9,10−イミドの合成
N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ビス(N−ピロリジル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド(163 mg,0.192 mmol)および水酸化カリウム(718mg,12.8mmol)をtert−ブチルアルコール(33mL)に溶解し、1時間加熱還流を行った。その後、反応生成物を酢酸(41mL)と1N塩酸(22mL)との混合物に注ぎ、室温で5時間攪拌した。さらにこの反応液を塩化メチレン(100mL)と水(50mL)との混合溶液に注ぎ入れた。水層と有機層を分離後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を濃縮後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (CH2Cl2, then CH2Cl2/AcOEt = 100/1, then 50/1vol/vol, Rf (CH2Cl2)= 0.30)にて分離精製した。得られた生成物を塩化メチレン/メタノールより再結晶を行い、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ビス(N−ピロリジル)−3,4:9,10−テトラカルボン酸−3,4−無水物−9,10−イミド(60.8mg,0.0881mmol,収率46%)を緑色固体として得た。
【0078】
得られた化合物の構造をIR、1H−NMR、13C−NMR、HRMSにて確認した;
IR (KBr); 2963cm-1, 2929, 2868, 1764, 1730, 1700, 1664, 1592, 1579, 1559, 1543, 1507, 1456, 1419, 1345, 1311, 1244, 1228, 1201, 1145, 1128, 1101, 1009, 940, 867, 840, 804, 768, 739, 717, 692, 668, 649, 602, 578, 552, 531, 520, 509, 473, 440, 430, 413;
1H NMR (300 MHz, CDCl3) 8.57ppm (s, 1H), 8.50 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.49 (s, 1H), 8.45 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 3.90-3.72 (m, 4H), 3.00-2.80 (m, 4H), 2.77 (sept, J = 6.9 Hz, 2H), 2.20-1.95 (m, 8H), 1.18 (d, J= 6.9 Hz, 12H);
13C NMR (99.6 MHz, CDCl3) δ 164.09ppm, 164.03, 161.40, 160.84, 147.17, 146.42, 145.65, 136.02, 134.15, 131.03, 130.74, 130.41, 129.48, 128.80, 127.03, 124.76, 124.43, 124.01, 123.82, 122.79, 122.56, 122.51, 121.36, 119.83, 119.50, 117.46, 117.32, 114.52, 52.63, 52.48, 29.14, 25.89, 24.06, 24.01;
HRMS (FAB, positive mode) 測定値 689.2904、 C44H39N3O5の計算値 689.2890。
【0079】
得られたN−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ビス(N−ピロリジル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸−3,4−無水物−9,10−イミド(以下、この化合物を「iPr−PMI」ともいう)の吸収スペクトルは、上記方法により測定した。iPr−PMIの塩化メチレン中での吸収スペクトルを図2に示す。
【0080】
[実施例2]:光電変換素子の作製
TiO2ペーストの作製、該ペーストの透明電極ガラスへの塗布、焼成、および色素の
吸着による光電変換素子の作製を以下のとおりに行った。
【0081】
TiO2ペーストは、脱イオン化水に日本エアロジル社製P25とTritonX−1
00とを分散させて用いた。このペーストを透明導電ガラス(旭硝子社製SnO2F、導
電性9.4Ω・cm2)上にドクターブレード法により製膜した。得られた薄膜は723
Kにて1時間焼成した。その後、前記同様の製膜、焼成を繰り返し、異なった厚さのTiO2膜を作製した。得られた薄膜の厚さは、ACCRETECH社製SURFCOM13
0Aにて測定した。この方法により作製したTiO2膜の厚さは、各々5.5μm、13
μm、22μmの3種類であった。
【0082】
焼成済みTiO2膜付ガラス基板を、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,
7−ビス(N−ピロリジル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸−3,4−無水物−9,10−イミド(iPr−PMI)のメタノール溶液(濃度0.15mM)に室温にて15時間浸漬させた。次いでアセトニトリルでリンスを行い、色素を吸着させたTiO2膜付ガラス基板を作製した。
【0083】
[光電変換素子の評価]
<吸収スペクトル>
実施例2で得られたN−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ビス(N−ピロリジル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸−3,4−無水物−9,10−イミド(iPr−PMI)を吸着させたTiO2膜付ガラス基板の吸収スペクトルの
測定を実施例1と同様に行った。その吸収スペクトルを図3に示す。
【0084】
<酸化電位>
上記方法により得られたN−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ビス(N−ピロリジル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸−3,4−無水物−9,10−イミド(iPr−PMI)を吸着させたTiO2膜付ガラス基板を用いて、微分
パルスボルタンメトリーを測定した。この結果より、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ビス(N−ピロリジル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸−3,4−無水物−9,10−イミド(iPr−PMI)の酸化電位を測定した。その結果、酸化電位は0.90Vであった。
【0085】
<光電変換効率>
(i)上記方法により得られたN−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ビス(N−ピロリジル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸−3,4−無水物−9,10−イミド(iPr−PMI)を吸着させたTiO2膜付ガラス基板を用いて
、光電変換効率を求めた際のIPCE電流−電圧曲線を図4中の実線で示す。このときのTiO2膜の厚さは2.62μmであった。
【0086】
また、iPr−PMIを用いた光電変換素子の変換効率は2.63%であった。このと
きの電流−電圧曲線を図5中の実線で示す。
(ii)TiO2膜の厚さを13μmとした以外は(i)と同様の方法により、光電変換
効率を求めた。その結果、光電変換効率は2.43%であった。
【0087】
(iii)TiO2膜の厚さを5.5μmにした以外は(i)と同様の方法により、光電変換効率を求めた。その結果、光電変換効率は1.91%であった。
[比較例1]
ペリレン色素をN,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,7−ビス(N−ピロリジル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸−ビスイミドとした以外は実施例2と同様の方法により、光電変換素子を作製し、変換効率を求めた。その結果、光電変換効率は0.005%であった。このときの電流−電圧曲線を図5中の破線で示す。このことから、本発明の化合物の方が広い範囲の光の波長を吸収し、光電流を生じさせるため、光の利用効率が高いことが示される。
【0088】
[比較例2]
ペリレン色素をルテニウム錯体(N719)にした以外は実施例2と同様の方法により、光電変換素子を作製し、IPCEを測定した。このときのIPCE電流−電圧曲線を図4中の破線で示す。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】光電気化学電池を示す図である。
【図2】実施例1で得られたiPr−PMIの吸収スペクトル(塩化メチレン中)である。縦軸の吸光度εの単位は104-1cm-1であり、横軸の波長λの単位はnmである。
【図3】実施例2で得られたiPr−PMIを吸着させたTiO膜付ガラス基板の吸収スペクトルである。縦軸の吸光度の単位は任意であり、横軸の波長の単位はλnmである。
【図4】実施例2で測定したIPCE電流−電圧曲線(実線)、および比較例2で測定したIPCE電流−電圧曲線を示すグラフである。
【図5】実施例2で測定した電流−電圧曲線(実線)、および比較例1で測定した電流−電圧曲線(破線)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0090】
1 光電気化学電池
2 導電性支持体
3 感光層
4 電荷移動層
5 対向電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるペリレン誘導体;
【化1】

(式(1)中、R1は独立して、水素、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モルフ
ォリル、フェニル、ナフチル、またはピリジルであり、互いに同一でも異なっていてもよい(ただし、すべてのR1が水素である場合を除く);
2は、フェニル、またはナフチルであり、R2の少なくとも一部がハロゲン、炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のハロゲン化アルキル、該アルキルまたは該ハロゲン化アルキルで置き換えられたシリル、該アルキルで置き換えられたアミノ基、または単環式もしくは多環式のアミノ基で置換されていてもよく、隣接するR2の置換基同士は
結合して炭素数6〜8の環を形成してもよい。)。
【請求項2】
前記式(1)中、少なくとも2つのR1が、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モ
ルフォリル、フェニル、ナフチル、またはピリジルであり、
2が、フェニル、またはナフチルであり、R2の少なくとも一部が炭素数1から4のアルキルで置換されている請求項1に記載のペリレン誘導体。
【請求項3】
前記式(1)中、R2がフェニルであり、かつR2のオルト位が炭素数1から4のアルキルで置換されている請求項1または請求項2に記載のペリレン誘導体。
【請求項4】
式(2)で表されるペリレン誘導体;
【化2】

(式(2)中、R1は独立して、水素、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モルフ
ォリル、フェニル、ナフチル、またはピリジルであり、互いに同一でも異なっていてもよい(ただし、すべてのR1が水素である場合を除く);
3は、ハロゲン、炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のハロゲン化アル
キル、該アルキルまたは該ハロゲン化アルキルで置き換えられたシリル、該アルキルで置き換えられたアミノ基、あるいは単環式または多環式のアミノ基である。)。
【請求項5】
前記式(2)中、R1は独立して、N−ピロリジル、N−ピペリジル、N−モルフォリ
ル、フェニル、ナフチル、またはピリジルであり、
少なくとも1つのR3が、炭素数1から4のアルキルである請求項4に記載のペリレン
誘導体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のペリレン誘導体を増感色素として用いることを特徴とする光電変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−222795(P2008−222795A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60934(P2007−60934)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】