説明

ペリンドプリルの前駆体の製造方法、及びペリンドプリルの前駆体、並びにペリンドプリルエルブミンの製造方法と精製方法

【課題】工業スケールで実施した場合においても、ペリンドプリルエルブミンの収率が落ち込まず、製造時間やコストを削減できるペリンドプリルの前駆体の製造方法の提供。
【解決手段】式(II)で表される化合物の窒素原子をt−ブトキシカルボニル基で保護して、更に有機酸にて中和し、非極性溶媒に抽出させ、該化合物を結晶として取出すことなく前記非極性溶媒中にて該化合物のカルボキシル基を特定のベンジルアルコール又はベンジルハライドにて保護する、ことを特徴とするペリンドプリルの前駆体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈性高血圧症等の治療に用いられるペリンドプリルエルブミンを誘導する前駆体の製造方法、及び該製造方法から得られる数種の前駆体、並びにこれら前駆体からペリンドプリルエルブミンを製造・精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペリンドプリルエルブミン(次式(VIII)で表されるペリンドプリルのt−ブチルアミン塩)は、医薬的に有用な物質であり、ある種の酵素、例えばカルボキシペプチダーゼ、エンケフアリナーゼ、またはキニナーゼIIに対して阻害活性を及ぼす。
特に、アンギオテンシンIデカペプチドからアンギオテンシンIIオクタペプチド(血管収縮物質)への転換を、ペリンドプリルエルブミンがその転換酵素(キニナーゼII)に作用することにより阻害する。
このように、ペリンドプリルエルブミンを治療に使用することで、高血圧性障害や心臓機能不全の原因となる転換酵素の活性を減少させたり、さらには抑制すること等ができる。
【0003】
【化4】

【0004】
従来、ペリンドプリルエルブミンの最高収量取得を可能にするために、その工業的製造における反応工程、溶媒、触媒および反応体(誘導体・前駆体)の選択について様々な研究がなされてきた。
例えば、本願出願人は、先に、ペリンドプリルエルブミンを誘導する独創的な前駆体とその製造方法を提案している(特開2006−111579参照)。これによれば、特公平5−43717号などに記載されるような従来公知方法と比べ、高価な貴金属化合物や強酸を使用することなくペリンドプリルエルブミンを容易かつ安価に製造することができる。
【0005】
しかし、上記本願出願人による前駆体の製造方法をそのまま工業スケールで実施すると、次のようなことが懸念される。
α)次式(II)で表される化合物の窒素原子をt−ブトキシカルボニル基で保護する反応で得られる生成物(次式(III))を、結晶化し取出すための抽出溶媒(酢酸エチル)の留去に半日程度かかる場合がある、
β)上記留去時に抽出溶媒である酢酸エチルが酢酸へと熱分解し、溶液が酸性状態となり生成物(III)のt−ブトキシカルボニル基の脱離が起こることがある、
γ)最終目的物であるペリンドプリルエルブミンの収率が期待値より低い傾向がある、
などの問題があった。
【0006】
【化5】


【0007】
一方、ペリンドプリルエルブミンの精製については、興味深い報告例として、ペリンドプリルエルブミンの粗結晶を水に溶解させ塩酸水にてpHを4.6に調整することで、フリー体(ペリンドプリル)を取出すという方法がある(非特許文献1参照)。ただし、この報告には純度に関する記述はない。
このように、ペリンドプリルエルブミンを純度の高い医薬品グレードにまで精製する方法を見出す事は、非常に重要な問題であった。
【特許文献1】特開2006−111579公報
【特許文献2】特公平5−43717号公報
【非特許文献1】XENOBIOTICA,vol.20,No.8,787-800(1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、工業スケールで実施した場合においても、最終目的物であるペリンドプリルエルブミンの収率が落ち込まず、かつ製造時間やコスト(設備費等)を削減できるペリンドプリルの前駆体の製造方法と、その製造方法で得られる数種の前駆体、並びにこれら前駆体からペリンドプリルエルブミンを製造する方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、不純物の混入が極力少ないペリンドプリルエルブミンの精製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明者は、ペリンドプリルの前駆体の製造方法について鋭意検討を重ねた結果、
前述の化合物(II)の窒素原子をt−ブトキシカルボニル基で保護する反応で得られる生成物(化合物(III))を、有機酸(弱酸)にて中和し、非極性溶媒に抽出させ、そのまま結晶として取出すことなく該非極性溶液として次工程にすすむことで、一工程(すなわち、抽出溶媒の留去工程)を完全に省略できるうえ、(最終目的物の)ペリンドプリルエルブミンの収率が大幅にアップすることを見出し、
加えて、この方法から得られる数種の前駆体と共に、該前駆体からペリンドプリルエルブミンを導く方法、ペリンドプリルエルブミンの粗結晶の精製方法についても見出し、
本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、次式(II)で表される化合物の窒素原子をt−ブトキシカルボニル基で保護して、次式(III)で表される化合物とし、
前記化合物(III)を有機酸にて中和し、非極性溶媒に抽出させ、
該化合物(III)を結晶として取出すことなく、前記非極性溶媒中にて該化合物(III)のカルボキシル基を次式(IV)の化合物で保護する、
ことを特徴とするペリンドプリルの前駆体の製造方法を要旨とする。
【0011】
【化6】



〔式(IV)中、Xは1〜3であり、Yはハロゲンまたはヒドロキシル基を表す。〕
【0012】
上式(II)で表される化合物の窒素原子をt−ブトキシカルボニル基で保護して、上式(III)で表される化合物とする反応は、前述の本願出願人による先提案(特開2006−111579)のペリンドプリルの前駆体の製造方法の第1ステップに相当する。
そして、この第1ステップで得られる化合物(III)のカルボキシル基を上式(IV)の化合物で保護する反応は、上記先提案の第2ステップに相当する。
なお、出発原料である上式(II)で表される化合物としては、最も活性なペリンドプリルエルブミンを得るために、不斉炭素がS立体配置をもつ異性体が選ばれる。
【0013】
化合物(II)の窒素原子をt−ブトキシカルボニル基で保護する際、化合物(II)のカルボキシル基がt−ブトキシカルボニル基で置換されることを防ぐために、アルカリが使用される。
このアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が使用できる。これらのアルカリのいずれも、陽性イオンがカルボキシル基と塩を形成し、カルボキシル基を保護することになる。
アルカリの使用量は、本発明においても、特に限定されないが、一般には、化合物(II)に対して、当モル〜5倍モルが好ましく、より好ましくは1.1倍モル量である。これらのアルカリは水溶液として使用される。
【0014】
また、t−ブトキシカルボニル基を提供する化合物としては、二炭酸ジ−t−ブチル等が使用できる。
【0015】
上記第1ステップにおける反応条件は、特に限定しないが、一般には、溶媒は上記のアルカリ水溶液を上記割合で混合した通常の有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)を使用し、攪拌下、0〜50℃、常圧、1〜5時間程度で行うことが好ましい。
【0016】
本発明では、第1ステップにおける反応終了後(すなわち、化合物(II)を化合物(III)とした後)、減圧下にて溶媒を留去し、化合物(III)を有機酸にて中和し、非極性溶媒で抽出し、結晶として取出し操作を行わず(すなわち、該非極性溶液として)次工程(すなわち、第2ステップ)にすすむことが重要である。
【0017】
化合物(III)を、塩酸などの無機酸ではなく、有機酸にて中和することで、化合物(III)のt−ブトキシカルボニル基の脱離をより効果的に防ぐことができる。
この有機酸としては、pH3〜6程度の弱酸であれば特に限定されず、例えば、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、オレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0018】
そして、この有機酸による中和後、化合物(III)のt−ブトキシカルボニル基の脱離の防止、および次工程(第2ステップ)で使用される触媒の活性の保護とを確実にするために、酢酸エチルなどの極性溶媒ではなく、非極性溶媒に抽出させる。
この非極性溶媒としては、熱分解などを起こし反応溶液を酸性にしてしまうものでなければ特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレンなど、次工程(第2ステップ)の反応をその溶媒中で行うことができるものが好適に使用される。
本発明では、非極性溶媒に抽出させた後、その有機相を原料のモル比に対して4〜6%量の炭酸水素ナトリウム水溶液などで洗浄し、上記有機酸を完全に除去することが好ましい。
【0019】
続いて、第2ステップ(化合物(III)のカルボキシル基を化合物(IV)で保護する反応)は、前記非極性溶媒中にて行われる。
式(IV)で表される化合物において、メトキシ基の置換数Xは1〜3のいずれかであり、
Xが1の際は、メトキシ基はベンジル基のオルト位またはパラ位に導入され、
Xが2の際は、メトキシ基はベンジル基のオルト位とパラ位に1つずつ、あるいはメタ位とパラ位に1つずつ導入され、
Xが3の際は、メトキシ基はベンジル基のオルト位、メタ位、パラ位に1つずつ、あるいはオルト位に2つパラ位に1つ、もしくはメタ位に2つパラ位に1つ導入されたものなどが挙げられる。
特に、脱離反応の置換基効果、入手のし易さ、価格などの面から、1)p−メトキシベンジル基、2)2,4−ジメトキシベンジル基、3)2,3,4−トリメトキシベンジル基を供する化合物が好ましい。
【0020】
1)p−メトキシベンジル基を供する化合物としては、p−メトキシベンジルクロライド、p−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルブロマイド等が挙げられる。
2)2,4−ジメトキシベンジル基を供する化合物としては、2,4−ジメトキシベンジルクロライド、2,4−ジメトキシベンジルアルコール、2,4−ジメトキシベンジルブロマイド等が挙げられる。
3)2,3,4−トリメトキシベンジル基を供する化合物としては、2,3,4−トリメトキシベンジルクロライド、2,3,4−トリメトキシベンジルアルコール、2,3,4−トリメトキシベンジルブロマイド等が挙げられる。
【0021】
この第2ステップにおける反応は、塩基性触媒を用いて行われる。
この塩基性触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノナン(DBN)、トリブチルアミン等が使用される。
塩基性触媒の使用量は、特に限定されないが、一般には、化合物(III)に対して、1/5〜1/100モルが好ましく、より好ましくは1/50モルである。
前述のように、本発明では、反応溶液中に酸が存在しないので、これら塩基性触媒の活性が不能になることがない。
【0022】
また、第2ステップにおいては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を脱水縮合剤として用いることもできる。
これを用いることによって、第2ステップをより高効率で進行させることができる。
脱水縮合剤の使用量は、特に限定されないが、一般には、化合物(III)に対して、1〜5モルが好ましく、より好ましくは1〜2モルである。
【0023】
第2ステップにおける反応条件は、前記非極性溶媒中で行われれば、特に限定されないが、一般には、常圧、還流下で、7〜20時間程度で行うことが好ましい。
脱水縮合剤を用いる場合には、第2ステップの開始直前、あるいは開始と同時に添加してもよいし、第2ステップの反応途上、具体的には反応開始後5〜30分程度経過した時点で添加してもよい。この場合の反応時間は、0℃〜還流下で2〜10時間程度で行うことができる。
第2ステップにおける反応終了後、次式(V)で表される油状の化合物≪化合物(III)のカルボキシル基を化合物(IV)で保護したもの》の取出しを行う。
【0024】
【化7】

〔式(V)中、Xは1〜3である。〕
【0025】
このように、本発明では、化合物(II)の窒素原子をt−ブトキシカルボニル基で保護する反応で得られる生成物(化合物(III))を、有機酸(弱酸)にて中和し、非極性溶媒に抽出させ、そのまま結晶として取出すことなく該非極性溶媒中にて次の反応工程を行う(言い換えれば、該非極性溶液として次工程にすすむ)ので、
一工程(すなわち、抽出溶媒の留去工程)を完全に省略できるうえ、化合物(III)のt−ブトキシカルボニル基が脱離する可能性を低くすることができ、この結果、製造時間や設備費などの削減が達成され、最終目的物であるペリンドプリルエルブミンの収率を期待値どおりとすることができる。
【0026】
続いて、本発明では、先提案(特開2006−111579)のペリンドプリルの前駆体の製造方法の第3ステップに記載したように、上式(V)で表される化合物のt−ブトキシカルボニル基を脱離して、次式(VI)で表される化合物を得る。
この第3ステップでは、油状化合物(V)を通常の有機溶媒に溶解させ、化合物(V)のt−ブトキシカルボニル基を酸で脱離させる。
上記有機溶媒としては、極性溶媒でも非極性溶媒でもよいが、この第3ステップの生成物(VI)は不安定なため、処理後すぐ次に進めるように次工程(第4ステップ)で使用する溶媒を用いる事が好ましい。
【0027】
【化8】

〔式(VI)中、Xは1〜3である。〕
【0028】
この第3ステップの反応条件については、溶媒は通常の有機溶媒を使用し、攪拌下、0〜70℃、常圧、0.5〜2時間程度で行うことが好ましい。
反応終了後、冷却、中和、有機相の濃縮をする。この濃縮後、上記脱離反応により得られる化合物(VI)を結晶または油状物質として取出してもよいが、結晶(油状物質)として取出すことなく前記溶媒を若干(1/10程度)留去した後に該溶媒の溶液として次工程(第4ステップ)にすすむことが好ましい。
【0029】
続いて、先提案(特開2006−111579)のペリンドプリルの前駆体の製造方法の第4ステップに記載したように、化合物(VI)と次式(VII)で表されるアラニン誘導体とを縮合させて、ペリンドプリルの前駆体を得る。
化合物(VII)は、L−ノルバリンから常法により合成することができる。
化合物(VI)に対し化合物(VII)を、好ましくは当モル〜5倍モル、より好ましくは当モル量で反応させ、この縮合反応においても、第2ステップで用いられるものと同様の塩基性触媒や脱水縮合剤を用いてもよい。
【0030】
【化9】

【0031】
この第4ステップの反応条件については、溶媒は通常の有機溶媒を使用し、攪拌下、0〜50℃、常圧、1〜24時間程度で行うことが好ましい。
塩基性触媒を用いる場合には、上記の有機溶媒に所要量を混合して用いればよく、また脱水縮合剤を用いる場合には、第4ステップの開始直前、あるいは開始と同時に添加してもよいし、第4ステップの反応途上、具体的には反応開始後5〜30分程度経過した時点で添加してもよい。
第4ステップにおける反応終了後、副生物(結晶)を濾別し、濾液(有機相)の濃縮をする。この濃縮後、上記縮合反応により得られるペリンドプリルの前駆体の取出しを行ってもよいが、ペリンドプリルの前駆体を結晶として取出すことなく、第3ステップで用いた溶媒を完全に留去した後、非極性溶媒の溶液として次工程(ペリンドプリルエルブミンの製造工程)にすすむことが好ましい。
【0032】
本発明におけるペリンドプリルの前駆体は、以上のような製造方法で得られ、次式(I-a)、(I-b)、(I-c)、(I-d)、(I-e)、(I-f)、(I-g)で表される。
【0033】
【化10】







【0034】
上式(I-a)、(I-b)、(I-c)、(I-d)、(I-e)、(I-f)、(I-g)で表される本発明の前駆体では、ベンジル基に電子供与性のメトキシ基が導入されているので、酸条件下におけるカルボキシル基の保護基が不安定となり、酸により容易に脱離することができる。
本発明におけるペリンドプリルの前駆体(I-a)、(I-b)、(I-c)、(I-d)、(I-e)、(I-f)、(I-g)はいずれも、不斉炭素がS立体配置をもつ異性体である。
【0035】
また、本発明では、上記のようにして得られる、ペリンドプリルの前駆体を結晶として取出すことなく、非極性溶媒中にて酸による加水分解を行い、続いてt−ブチルアミンと反応させることにより、次式(VIII)で表されるペリンドプリルエルブミンを製造する。
【0036】
【化11】

【0037】
この非極性溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルムなど、ペリンドプリルエルブミンがラクタム体に分解することを防げるものが好適である。
【0038】
本発明のペリンドプリルの前駆体からペリンドプリルエルブミンを製造するには、該前駆体をジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)により酸化する方法を用いることもできる。
但し、本発明では、収率(反応後の生成物の取り出し効率)や、操作の容易さ、あるいはコスト面から、上記の前駆体を、酸により加水分解する方法を採択する。
【0039】
この加水分解時に使用される酸としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられるが、ペリンドプリルエルブミンの収率や、異性体や不純物の量等を考慮すると、メタンスルホン酸が最も好適である。
メタンスルホン酸の使用量は、特に限定されないが、前駆体に対して、当モル〜20倍モルが好ましく、より好ましくは10倍モルである。
【0040】
加水分解の条件も特に限定されないが、常圧、0〜50℃、1〜6時間程度とすることが好ましい。
加水分解終了後、冷却、中和、t−ブチルアミンの添加、有機相の濃縮、ペリンドプリルエルブミンの粗結晶を得る。
この結晶化の方法は、特に限定されず、定法により行えばよい。すなわち、適当な有機溶媒に溶解し、t−ブチルアミンを添加し、攪拌後、静置する等で行われる。
【0041】
本発明のペリンドプリルエルブミンの精製方法は、ペリンドプリルエルブミンの粗結晶を溶解させた溶液のpHを4.8〜7.2に調整した後、抽出・再アミン塩化を行うことを特徴とする。
pHがこれより低いと、不純物の混入を低減するのに不十分であり、高すぎると、t−ブチルアミンをはずす(フリー体にする)ことが困難となり精製とならないうえ、精製収率(回収率)が低下していく傾向がある。
pHを調製する方法としては、特に限定されず、例えば、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸などの無機酸を、それほど濃度の高くない水溶液にて適宜添加すればよい。
【0042】
ペリンドプリルエルブミンの粗結晶については、常法により合成してもよく、一般に市販されているものをそのまま用いてもよいし、前述した本発明のペリンドプリルエルブミンの製造方法や先提案(特開2006−111579)に記載のペリンドプリルエルブミンの製造方法によって得られるものであってもよい。
抽出溶媒としては、通常の有機溶媒を使用すればよく、再アミン塩化の条件も特に限定されないが、t−ブチルアミン添加後、常圧下、40〜60℃、1〜3時間程度攪拌することが好ましい。
攪拌後、冷却、結晶の濾別、減圧乾燥を行い、ペリンドプリルエルブミンの精結晶を得る。
【0043】
このように、本発明では、ペリンドプリルエルブミンの粗結晶を独創的な方法で精製することによって、不純物の混入が極力少ないペリンドプリルエルブミンの精結晶を得ることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、数種のペリンドプリルエルブミンの前駆体を、抽出溶媒の留去工程を省略するという製造時間やコストの低減化をもたらす独創的な製造方法によって、工業スケールで実施した場合においても、最終目的物であるペリンドプリルエルブミンを高収率にて得ることができる。
また、本発明のペリンドプリルエルブミンの精製方法は、混入している数種の不純物を、それぞれ確実に0.1%以下にできる。
【実施例】
【0045】
実施例1
本発明に係るペリンドプリルエルブミンの前駆体のうち、(2S,3aS,7aS)−1−{2−[1−(エトキシカルボニル)−(S)−ブチルアミノ]−(S)−オキソプロピル}オクタヒドロインドールカルボン酸−p−メトキシベンジルエステル≪式(I-b)≫を以下のようにして合成した。
【0046】
【化12】

【0047】
第1ステップ:
化合物(III):N−t−ブトキシカルボニル−(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドールの合成;
水酸化ナトリウム1.32g(0.033モル)を水66mL(以下、ミリリットルをmLと記す)に溶解し、ここへ、テトラヒドロフラン60mLと、化合物(II):(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドール5.08g(0.03モル)とを加えた。
この反応溶液に、ジ−t−ブチルジカーボネート7.20g(0.033モル)を加え、10〜30℃で2.5時間攪拌下に反応させた。
次いで、減圧にてテトラヒドロフランを留去し、クエン酸6.34g(0.033モル)を添加後、トルエン65mLで抽出した。
得られた有機相を水30mLで洗浄し、さらに1%の炭酸水素ナトリウム水溶液13mLで洗浄後、無水の硫酸ナトリウムで脱水し、N−t−ブトキシカルボニル−(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドール(化合物(III))のトルエン溶液を得た。
ちなみに、結晶として取出し操作を行った換算収量は85%であった。
【0048】
第2ステップ:
化合物(V):N−t−ブトキシカルボニル−(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドール−p−メトキシベンジルエステルの合成;
第1ステップで得た化合物(III):N−t−ブトキシカルボニル−(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドールのトルエン溶液に、p−メトキシベンジルアルコール3.52g(0.026モル)と塩基性触媒である4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.06g(0.0005モル)とを加え攪拌した。
ここへ、脱水縮合剤であるジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)5.26g(0.026モル)を添加し、10〜30℃で5時間反応させた。
次いで、反応液を濾過し、この濾液を水30mLで洗浄後濃縮し、油状のN−t−ブトキシカルボニル−(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドール−p−メトキシベンジルエステル(化合物(V))9.93g(収率100%)を得た。
【0049】
第3ステップ:
化合物(VI):(2S,3aS,7aS)−カルボキシオクタヒドロインドール−p−メトキシベンジルエステルの合成;
第2ステップで得た化合物(V):N−t−ブトキシカルボニル−(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドール−p−メトキシベンジルエステル9.93g(0.026モル)を、酢酸エチル140mLに溶解させた。
この溶液に、メタンスルホン酸9.80g(0.102モル)を加え、10〜25℃で1時間攪拌下に反応させた。
反応後、反応液を10℃以下に冷却し、20%NaOH水溶液で中和後、得られた有機相を水31mLで洗浄した。
この有機相を約10mL分濃縮し、(2S,3aS,7aS)−カルボキシオクタヒドロインドール−p−メトキシベンジルエステル(化合物(VI))の酢酸エチル溶液を得た。
ちなみに、油状物質として取出し操作を行った換算収量は100%であった。
【0050】
第4ステップ:
ペリンドプリルエルブミンの前駆体(I-b):(2S,3aS,7aS)−1−{2−[1−(エトキシカルボニル)−(S)−ブチルアミノ]−(S)−オキソプロピル}オクタヒドロインドールカルボン酸−p−メトキシベンジルエステルの合成;
第3ステップで得た化合物(VI):(2S,3aS,7aS)−カルボキシオクタヒドロインドール−p−メトキシベンジルエステルの酢酸エチル溶液に、化合物(VII):N−[1−(S)−(エトキシカルボニル)ブチル]−L−アラニン5.54g(0.026モル)と、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)3.44g(0.026モル)と、塩基性触媒であるトリエチルアミン(TEA)5.16g(0.051モル)とを加え攪拌した。
次いで、この懸濁液に、脱水縮合剤であるジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)5.26g(0.026モル)を加え、15〜30℃で8時間反応させた。
反応後、DCCの副成物である結晶を濾別し、濾液を水で3回(44mL×3)洗浄した。
得られた有機相を濃縮し、トルエン140mLで置換した。
そして、(2S,3aS,7aS)−1−{2−[1−(エトキシカルボニル)−(S)−ブチルアミノ]−(S)−オキソプロピル}オクタヒドロインドールカルボン酸−p−メトキシベンジルエステル(化合物(I-b))のトルエン溶液を得た。
ちなみに、油状物質として取出し操作を行った換算収量は100%であった。
得られた油状物質(化合物(I-b))のNMR分析、IR分析、元素分析を行った。結果を下に示す。
【0051】
〔NMR分析〕
R−1200形高速掃引相関核磁気共鳴装置(日立社製)を使用し、CDCl3にて測定を行った。この結果は、図1の通りであった。
〔IR分析〕
赤外分光分析装置(米国PERKIN ELMER社製商品名“PARAGON1000”)を使用し、KBr法にて測定を行った。この結果は、図2の通りであった。
〔元素分析〕
FISONS社製商品名“EA1108型”を使用して行った。この結果は表1の通りであった。
【0052】
実施例2
本発明に係るペリンドプリルエルブミンの前駆体のうち、(2S,3aS,7aS)−1−{2−[1−(エトキシカルボニル)−(S)−ブチルアミノ]−(S)−オキソプロピル}オクタヒドロインドールカルボン酸−2,3,4−トリメトキシベンジルエステル≪式(I-e)≫を以下のようにして合成した。
【0053】
【化13】

【0054】
第1ステップ:
化合物(III):N−t−ブトキシカルボニル−(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドールの合成;
水酸化ナトリウム1.03g(0.026モル)を水66mLに溶解し、ここへ、テトラヒドロフラン47mLと、化合物(II):(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドール3.98g(0.024モル)とを加えた。
この反応溶液に、ジ−t−ブチルジカーボネート5.64g(0.026モル)を加え、10〜30℃で2.5時間攪拌下に反応させた。
次いで、減圧にてテトラヒドロフランを留去し、クエン酸4.97g(0.026モル)を添加後、トルエン51mLで抽出した。
得られた有機相を水23.5mLで洗浄し、さらに1%の炭酸水素ナトリウム水溶液10mLで洗浄後、無水の硫酸ナトリウムで脱水し、N−t−ブトキシカルボニル−(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドール(化合物(III))のトルエン溶液を得た。
ちなみに、結晶として取出し操作を行った換算収量は85%であった。
【0055】
第2ステップ:
化合物(V):N−t−ブトキシカルボニル−(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドール−2,3,4−トリメトキシベンジルエステルの合成;
第1ステップで得た化合物(III):N−t−ブトキシカルボニル−(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドールのトルエン溶液に、2,3,4−トリメトキシベンジルアルコール3.96g(0.02モル)と塩基性触媒である4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.05g(0.0004モル)とを加え攪拌した。
ここへ、脱水縮合剤であるジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)4.13g(0.02モル)を添加し、10〜30℃で5時間反応させた。
次いで、反応液を濾過し、この濾液を水30mLで洗浄後濃縮し、油状のN−t−ブトキシカルボニル−(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドール−2,3,4−トリメトキシベンジルエステル(化合物(V))8.99g(収率100%)を得た。
得られた油状物質(V)のNMR分析、IR分析、元素分析を行った。結果を下に示す。
【0056】
〔NMR分析〕
実施例1と同様にして行い、この結果は、図3の通りであった。
〔IR分析〕
実施例1と同様にして行い、この結果は、図4の通りであった。
〔元素分析〕
実施例1と同様にして行い、この結果は、表1の通りであった。
【0057】
第3ステップ:
化合物(VI):(2S,3aS,7aS)−カルボキシオクタヒドロインドール−2,3,4−トリメトキシベンジルエステルの合成;
第2ステップで得た化合物(V):N−t−ブトキシカルボニル−(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドール−2,3,4−トリメトキシベンジルエステル8.99g(0.02モル)を、酢酸エチル110mLに溶解させた。
この溶液に、メタンスルホン酸7.69g(0.08モル)を加え、10〜25℃で1時間攪拌下に反応させた。
反応後、反応液を10℃以下に冷却し、20%NaOH水溶液で中和後、得られた有機相を水24mLで洗浄した。
この有機相を約8mL分濃縮し、(2S,3aS,7aS)−カルボキシオクタヒドロインドール−2,3,4−トリメトキシベンジルエステル(化合物(VI))の酢酸エチル溶液を得た。
ちなみに、油状物質として取出し操作を行った換算収量は96.6%であった。
なお、この得られた油状物質(VI)は不安定であったため、元素分析のみを実施例1と同様にして行った。結果は表1に示す。
【0058】
第4ステップ:
ペリンドプリルエルブミンの前駆体(I-e):(2S,3aS,7aS)−1−{2−[1−(エトキシカルボニル)−(S)−ブチルアミノ]−(S)−オキソプロピル}オクタヒドロインドールカルボン酸−2,3,4−トリメトキシベンジルエステルの合成;
第3ステップで得た化合物(VI):(2S,3aS,7aS)−カルボキシオクタヒドロインドール−2,3,4−トリメトキシベンジルエステルの酢酸エチル溶液に、化合物(VII):N−[1−(S)−(エトキシカルボニル)ブチル]−L−アラニン4.20g(0.019モル)と、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)2.61g(0.019モル)と、塩基性触媒であるトリエチルアミン(TEA)3.91g(0.039モル)とを加え攪拌した。
次いで、この懸濁液に、脱水縮合剤であるジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)3.99g(0.019モル)を加え、15〜30℃で8時間以上反応させた。
反応後、DCCの副成物である結晶を濾別し、濾液を水で3回(33mL×3)洗浄した。
得られた有機相を濃縮し、トルエン105mLで置換した。
そして、(2S,3aS,7aS)−1−{2−[1−(エトキシカルボニル)−(S)−ブチルアミノ]−(S)−オキソプロピル}オクタヒドロインドールカルボン酸−2,3,4−トリメトキシベンジルエステル(化合物(I-e))のトルエン溶液を得た。
ちなみに、油状物質として取出し操作を行った換算収量は95.0%であった。
得られた油状物質(化合物(I-e))のNMR分析、IR分析、元素分析を行った。結果を下に示す。
【0059】
〔NMR分析〕
実施例1と同様にして行い、この結果は、図5の通りであった。
〔IR分析〕
実施例1と同様にして行い、この結果は、図6の通りであった。
〔元素分析〕
実施例1と同様にして行い、この結果は、表1の通りであった。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例3,4
上記実施例1または2で得られたペリンドプリルの前駆体(化合物(I-b)または化合物(I-e))から、ペリンドプリルエルブミン:(2S,3aS,7aS)−1−{2−[1−(エトキシカルボニル)−(S)−ブチルアミノ]−(S)−オキソプロピル}オクタヒドロインドールカルボン酸t−ブチルアミン塩(化合物(VIII))の粗結晶を、以下のようにして合成した。
【0062】
実施例3
実施例1で得たペリンドプリルの前駆体(化合物(I-b)):(2S,3aS,7aS)−1−{2−〔1−(エトキシカルボニル)−(S)−ブチルアミノ〕−(S)−オキソプロピル}オクタヒドロインドールカルボン酸−p−メトキシベンジルエステルのトルエン溶液に、メタンスルホン酸24.51g(0.255モル)を加え、10〜30℃で1.5時間攪拌下に反応させた。
反応後、反応溶液を10℃以下に冷却し、20%NaOH水溶液で中和し、得られた有機相を分液した。
水相を酢酸エチルで3回(13mL×3)抽出して、先程の有機相と混合し、そこへt−ブチルアミン0.93g(0.013モル)を加えてから濃縮した。
濃縮後、酢酸エチルを水で3回(10mL×3)抽出し、水相に塩酸水溶液を加えることでpH5.2に調整し、酢酸エチルで3回(13mL×3)抽出した。
有機相を約1/3ほど濃縮し、そこへt−ブチルアミン0.93g(0.013モル)を加え50〜60℃で1時間加熱攪拌後、5℃以下まで冷却した。
析出した結晶を濾別し、30℃で10時間以上減圧乾燥後、ペリンドプリルエルブミン(化合物(VIII)):(2S,3aS,7aS)−1−{2−〔1−(エトキシカルボニル)−(S)−ブチルアミノ〕−(S)−オキソプロピル}オクタヒドロインドールカルボン酸t−ブチルアミン塩の粗結晶5.41g(収率48%)を得た。
【0063】
実施例4
実施例2で得たペリンドプリルの前駆体(化合物(I-e)):(2S,3aS,7aS)−1−{2−〔1−(エトキシカルボニル)−(S)−ブチルアミノ〕−(S)−オキソプロピル}オクタヒドロインドールカルボン酸−2,3,4−トリメトキシベンジルエステルのトルエン溶液に、メタンスルホン酸17.64g(0.184モル)を加え、10〜30℃で1.5時間攪拌下に反応させた。
反応後、反応溶液を10℃以下に冷却し、20%NaOH水溶液で中和し、得られた有機相を分液した。
水相を酢酸エチルで3回(10mL×3)抽出して、先程の有機相と混合し、そこへt−ブチルアミン0.68g(0.094モル)を加えてから濃縮した。
濃縮後、酢酸エチルを水で3回(8mL×3)抽出し、水相に塩酸水溶液を加えることでpH5.2に調整し、酢酸エチルで3回(10mL×3)抽出した。
有機相を約1/3ほど濃縮し、そこへt−ブチルアミン0.68g(0.094モル)を加え50〜60℃で1時間加熱攪拌後、5℃以下まで冷却した。
析出した結晶を濾別し、30℃で10時間以上減圧乾燥後、ペリンドプリルエルブミン(化合物(VIII)):(2S,3aS,7aS)−1−{2−〔1−(エトキシカルボニル)−(S)−ブチルアミノ〕−(S)−オキソプロピル}オクタヒドロインドールカルボン酸t−ブチルアミン塩の粗結晶3.16g(収率39%)を得た。
【0064】
実施例3,4にて得られた結晶の旋光度測定、融点測定、元素分析をそれぞれ行った。
〔旋光度測定〕
旋光度測定装置(日本分光社製 商品名“P−1020”)を使用して行った。この結果を、表2に示す。
〔融点測定〕
融点測定装置(独国BUCHI社製 商品名“B545”)を使用して行った。この結果を、表2に示す。
〔元素分析〕
実施例1と同様にして行い、この結果を、表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
上記の分析結果により、実施例3および実施例4で得られた粗結晶は、ペリンドプリルエルブミンであることが同定された。
【0067】
実施例5、比較例1
上記実施例1および3に記載した方法を工業スケールにて実施し、ペリンドプリルエルブミン(化合物(VIII))の粗結晶を合成し、実施例5とした。
先提案(特開2006−111579)の実施例1〜2に記載した方法を工業スケールにて実施し、ペリンドプリルエルブミン(化合物(VIII))の粗結晶を合成し、比較例1とした。
【0068】
粗結晶を得るまでの所要時間と、各粗結晶の重量(収率)を測定し、結果を表3に示す。
なお、いずれも、出発原料として化合物(II):(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシオクタヒドロインドールを20kg(118モル)使用した。
【0069】
【表3】

【0070】
実施例6〜12、比較例2〜3
上記実施例3で得られたペリンドプリルエルブミン(化合物(VIII))の粗結晶から精結晶を、以下のようにして精製した。
【0071】
実施例3で得た化合物(VIII)の粗結晶5.4g(0.012モル)を、水13.5mLに溶解させた。
これに塩酸水溶液を添加することでpHを表4に示す値にそれぞれ調整した。
そして、酢酸エチルで3回(30mL×3)抽出し、有機相を水5.4mLで洗浄した。
有機相を約1/3濃縮した後、t−ブチルアミン0.85g(0.012モル)を添加し、50〜60℃で2時間攪拌した。
その後、10℃以下まで冷却し、結晶を濾別した。この結晶を30℃で10時間以上減圧乾燥し、精結晶を得た。
【0072】
得られた各精結晶について、下記の評価方法により(A)不純物の混入程度と(B)精製収率(回収率)とを測定した。結果を表4に示す。
【0073】
(評価方法)
(A)HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いた類縁物質試験による不純物の混入程度
各試料(精結晶)0.015gを水10mLに溶解したものを、それぞれカラムに10μLずつ注入し、比較例2(pH4.6)の際の不純物混入量を基準≪1≫とした面積百分率によって、不純物の混入程度を算出した。
・移動相:リン酸ニナトリウム十二水和物17.9g及び1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム1.46gを、水1000mLに溶かし、さらにリン酸を加えてpH2.5に調整した。この調整した溶液600mLに、アセトニトリル400mLを加えたものを移動相とした。
・カラム:内径4.6mm、長さ25cmのステンレス管に5μmのオクタデシル化シリカゲルを充填したものを用いた。
・カラム温度:40℃付近の一定温度とした。
・測定波長:215nm。
・流量:試料の保持時間が約6分になるように調整した。
【0074】
(B)精製収率(回収率)
得られた精結晶の量を、使用した粗結晶の量で割って百分率を算出した。
【0075】
【表4】

【0076】
表4に示される通り、実施例で得られた精結晶はいずれも、比較例2で得られた精結晶よりも不純物の混入が少なくなることと、また、pHが高すぎると比較例3のように精製収率に問題が生じることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、工業スケールで実施した場合においても非常に有用な、ペリンドプリルの前駆体の製造方法、この製造方法で得られる数種の前駆体、これら前駆体からペリンドプリルエルブミンを製造する方法、並びに不純物の混入が極力少ないペリンドプリルエルブミンの精製方法を提供することができる。
このペリンドプリルエルブミンは、転換酵素阻害薬などの医薬品として高血圧性障害や心臓機能不全等の治療に好適に使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施例1の第4ステップで得た化合物(I-b)のNMR分析結果を示す図である。
【図2】実施例1の第4ステップで得た化合物(I-b)のIR分析結果を示す図である。
【図3】実施例2の第2ステップで得た化合物(V)のNMR分析結果を示す図である。
【図4】実施例2の第2ステップで得た化合物(V)のIR分析結果を示す図である。
【図5】実施例2の第4ステップで得た化合物(I-e)のNMR分析結果を示す図である。
【図6】実施例2の第4ステップで得た化合物(I-e)のIR分析結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(II)で表される化合物の窒素原子をt−ブトキシカルボニル基で保護して、次式(III)で表される化合物とし、
前記化合物(III)を有機酸にて中和し、非極性溶媒に抽出させ、
該化合物(III)を結晶として取出すことなく、前記非極性溶媒中にて該化合物(III)のカルボキシル基を次式(IV)の化合物で保護する、
ことを特徴とするペリンドプリルの前駆体の製造方法。
【化1】



〔式(IV)中、Xは1〜3であり、Yはハロゲンまたはヒドロキシル基を表す。〕
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法で得られる次式(I-a)、(I-b)、(I-c)、(I-d)、(I-e)、(I-f)、(I-g)で表されるペリンドプリルの前駆体。
【化2】







【請求項3】
請求項2に記載のペリンドプリルの前駆体を結晶として取出すことなく、非極性溶媒中にて酸による加水分解を行い、続いてt−ブチルアミンと反応させることを特徴とする次式(VIII)で表されるペリンドプリルエルブミンの製造方法。
【化3】

【請求項4】
ペリンドプリルエルブミンの粗結晶を溶解させた溶液のpHを4.8〜7.2に調整した後、抽出・再アミン塩化を行うことを特徴とするペリンドプリルエルブミンの精製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−115127(P2008−115127A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301202(P2006−301202)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000135760)株式会社パーマケム・アジア (17)
【Fターム(参考)】