説明

ペルチェ素子の制御装置

【課題】ペルチェ素子の駆動による温度調節対象の温度の目標値への変化を可能な限り速やかに行いつつ、そのペルチェ素子の駆動のための消費電力を小さく抑える。
【解決手段】自動車の運転中においては、車室7の冷房や暖房といった空調を行うためのペルチェ素子2の制御、すなわち、車室7への空気の吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて変化させるためのペルチェ素子2の制御として「高効率制御」が実行される。この高効率制御では、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力を空調にとっての必要能力まで変化させることで上記吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて変化させる際、ペルチェ素子2での消費電力に対する同素子2の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率で行われるよう、ペルチェ素子2の駆動電流が可変とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルチェ素子の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、温度調節対象に対するペルチェ素子での加熱や吸熱により、その温度調節対象の温度を目標値に向けて変化させることが提案されている。この特許文献1には、温度調節対象の温度を目標値に向けて変化させるべくペルチェ素子を駆動する際、そのペルチェ素子の定電力制御を実施することが開示されている。こうしたペルチェ素子の定電力制御を通じて、同素子の定電流制御や定電圧制御では使うことができなかった電力領域も有効活用してペルチェ素子を駆動し、それによって温度調節対象の温度を目標値まで変化させるために要する時間が短くなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−270987公報(段落[0083]〜[0086]、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1におけるペルチェ素子の定電力制御を実施すれば、そのペルチェ素子での加熱や吸熱による温度調節対象の温度の目標値への変化を短時間で行うことができるようにはなる。ただし、ペルチェ素子の加熱や吸熱により温度調節対象の温度を目標値に向けて変化させる際、同ペルチェ素子を駆動するための消費電力が多くなることは否めず、ペルチェ素子の消費電力を小さく抑える面での改善が望まれている。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ペルチェ素子の駆動による温度調節対象の温度の目標値への変化を可能な限り速やかに行いつつ、そのペルチェ素子の駆動のための消費電力を小さく抑えることのできるペルチェ素子の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、ペルチェ素子による加熱や吸熱を通じて温度調節対象の温度を目標値に向けて変化させる際、ペルチェ素子での消費電力に対する同素子の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率で行われるようペルチェ素子が駆動される。これにより、ペルチェ素子の駆動による温度調節対象の温度の目標値への変化を可能な限り速やかに行いつつ、そのペルチェ素子の駆動のための消費電力を小さく抑えることができる。
【0007】
請求項2記載の発明によれば、ペルチェ素子による加熱や吸熱を通じて温度調節対象の温度を目標値に向けて変化させることにより、その温度が目標値に到達して更には同目標値を越えるようになる。このように温度調節対象の温度が目標値を越えると、ペルチェ素子での消費電力に対する同素子の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となる状態を維持しつつ、ペルチェ素子の加熱量や吸熱量が低減される。これにより、温度調節対象の温度が目標値に達した後、その目標値から大きく離れてしまうことを防止できるようになる。従って、温度調節対象の温度が目標値に達した後、温度調節対象の温度が目標値から大きく離れないようにしつつ、ペルチェ素子での消費電力に対する同素子の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となった状態を維持して同ペルチェ素子の消費電力を小さく抑えることができる。
【0008】
なお、ペルチェ素子での消費電力に対する同素子の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となる状態を維持しつつ、ペルチェ素子の加熱量や吸熱量が低減させることは、例えば請求項3記載の発明や請求項4記載の発明のように実現することが可能である。
【0009】
ここで、請求項3記載の発明では、ペルチェ素子が複数のP型熱電変換素子と複数のN型熱電変換素子とを交互に直列接続することで形成されるものとなっている。そして、ペルチェ素子での消費電力に対する同素子の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となる状態を維持しつつ、ペルチェ素子の加熱量や吸熱量を低減させることが、ペルチェ素子を形成する複数のP型熱電変換素子及びN型熱電変換素子の駆動素子数を減らすことで実現される。
【0010】
また、請求項4記載の発明では、ペルチェ素子が、複数のP型熱電変換素子と複数のN型熱電変換素子とを交互に直列接続した複数の素子列を備え、それら複数の素子列の接続態様を直列と並列との間で切り換え可能なものとなっている。そして、ペルチェ素子での消費電力に対する同素子の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となる状態を維持しつつ、ペルチェ素子の加熱量や吸熱量を低減させることが、ペルチェ素子における複数の素子列の接続態様を直列から並列に切り換えることで実現される。
【0011】
請求項5記載の発明によれば、車両が外部電源に接続された状態にあってペルチェ素子が同外部電源からの電力供給を受けて駆動されるときには、ペルチェ素子での消費電力低減よりも、温度調節対象の温度を速やかに目標値に向けて変化させることが重視される。このため、ペルチェ素子の加熱や吸熱により温度調節対象の温度を目標値に向けて変化させる際、そのペルチェ素子の加熱量や吸熱量が最大となるよう同ペルチェ素子が駆動される。一方、車両が外部電源に接続されていない状態にあってペルチェ素子が車両のバッテリからの電力供給を受けて駆動されるときには、温度調節対象の温度を速やかに目標値に向けて変化させることよりもペルチェ素子での消費電力低減が重視される。このため、ペルチェ素子の加熱や吸熱により温度調節対象の温度を目標値に向けて変化させる際、ペルチェ素子での消費電力に対する同素子の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となるよう同ペルチェ素子が駆動される。以上により、車両の走行開始前であって同車両が外部電源に接続されているときに車室内の空気の温度を目標値まで到達させておき、それによって車両が外部電源から離脱されて走行開始した後に車室内の空気の温度を目標値とするためのバッテリ電力を用いたペルチェ素子の駆動が行われることを抑制できる。従って、車両の走行開始後におけるペルチェ素子での消費電力を小さく抑えることができ、ひいては車両のバッテリ電力を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態におけるペルチェ素子の制御装置が適用される空調装置全体を示す略図。
【図2】(a)〜(c)は、能力重視制御を実行した場合のペルチェ素子における冷暖房の実能力、ペルチェ素子の駆動電流、及びペルチェ素子の駆動効率の推移を示すタイムチャート。
【図3】(a)〜(c)は、高効率制御を実行した場合のペルチェ素子における冷暖房の実能力、ペルチェ素子の駆動電流、及びペルチェ素子の駆動効率の推移を示すタイムチャート。
【図4】ペルチェ素子の加熱側と吸熱側との温度差に応じて可変設定されるペルチェ素子の駆動電流における上記温度差の変化に対する推移傾向を示すグラフ。
【図5】(a)〜(d)は、高効率制御の実行中に能力低減処理を行った場合のペルチェ素子における冷暖房の実能力、ペルチェ素子の駆動電流、ペルチェ素子の駆動素子数、及びペルチェ素子の駆動効率の推移を示すタイムチャート。
【図6】車室の冷房や暖房といった空調を行う際のペルチェ素子の駆動制御の詳細な実行手順を示すフローチャート。
【図7】(a)〜(d)は、上記実行手順でペルチェ素子を駆動制御したときのペルチェ素子における冷暖房の実能力、ペルチェ素子の駆動電流、ペルチェ素子の駆動素子数、及びペルチェ素子の駆動効率の推移を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を自動車の空調装置に設けられるペルチェ素子に適用した一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
図1に示す空調装置が搭載される自動車は、バッテリ17の充電を行うべく外部電源18に接続したり、同外部電源18から切り離したりすることが可能となっている。この自動車の空調装置は、車室7の冷房や暖房といった空調を行うためのペルチェ素子2を備えている。同ペルチェ素子2は、複数のP型熱電変換素子と複数のN型熱電変換素子とを交互に直列接続することで形成されており、極性の反転を通じて吸熱側と加熱側とが第1面2aと第2面2bとの間で変化するものである。そして、自動車が外部電源18から切り離されている場合には、ペルチェ素子2はバッテリ17からの電力供給を受けて駆動される。一方、自動車が外部電源18に接続されている場合には、ペルチェ素子2は外部電源18からの電力供給を受けて駆動される。なお、ペルチェ素子2は、複数のP型熱電変換素子及びN型熱電変換素子の駆動素子数を変更することが可能な構造となっている。
【0014】
空調装置は、ペルチェ素子2の第1面2aとの間で熱交換される冷却水を循環させるための第1循環回路3と、ペルチェ素子2の第2面2bとの間で熱交換される冷却水を循環させるための第2循環回路12とを備えている。第1循環回路3には、同回路3内の冷却水を循環させるポンプ5が設けられ、且つ、同冷却水を外気との間で熱交換させるラジエータ6が設けられている。また、第2循環回路12には、同回路12内の冷却水を循環させるポンプ13が設けられ、且つ、同冷却水を車室7に送られる空気との間で熱交換させる室内熱交換器14が設けられている。この室内熱交換器14は、車室7に空気を送るためのエアダクト9の内部に位置している。そして、エアダクト9内に設けられたブロワ10の駆動により、空気がエアダクト9を通って車室7に送られる。
【0015】
空調装置は、自動車の車室7における冷房や暖房といった空調、すなわち車室7内の空気の温度調節を行うための電子制御装置21を備えている。同電子制御装置21には、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等が設けられている。
【0016】
電子制御装置21の入力ポートには、以下に示す各種のスイッチ及びセンサ等が接続されている。
・車室7の冷房や暖房といった空調による車室7内の温度設定を行うために自動車の乗員により操作される室温設定スイッチ23。
【0017】
・自動車の外部の空気の温度を検出する外気温センサ24。
・車室7の冷房や暖房といった空調のために同車室7に吹き出される空気の吹き出し口での温度(吹き出し温度)を検出する吹き出し温センサ25。
【0018】
・車室7内への日射量を検出する日射量センサ26。
・第1循環回路3におけるペルチェ素子2の第1面2a周りの冷却水の温度を検出する第1温度センサ27。
【0019】
・第1循環回路3におけるペルチェ素子2の第2面2b周りの冷却水の温度を検出する第2温度センサ28。
また、電子制御装置21の出力ポートには、ペルチェ素子2の駆動回路といった各種機器の駆動回路等が接続されている。
【0020】
そして、電子制御装置21は、上記各種のスイッチやセンサから入力した信号に基づき車室7の冷房要求や暖房要求といった空調要求を把握し、同空調要求に基づいて車室7の冷房や暖房(車室7内の空気の温度調節)を行うためのペルチェ素子2など各種機器の駆動回路に対し指令信号を出力する。こうして車室7内の空気の温度調節を行うための空調装置におけるペルチェ素子2など各種機器の駆動制御が電子制御装置21を通じて実施される。
【0021】
なお、車室7の冷房要求や暖房要求の有無、及びそれら要求の大きさは、吹き出し温センサ25の検出信号から求められる吹き出し温度と、その吹き出し温度の目標値である目標吹き出し温度とに基づいて把握することが可能である。上記目標吹き出し温度は、車両の乗員により定められる車室7内の設定温度、車室7内の実際の温度(吹き出し温度)、及び、車室7内への日射量などに基づいて求められる値である。
【0022】
次に、空調装置におけるペルチェ素子2の加熱や吸熱を利用した車室7の空調について説明する。
車室7の冷房時には、ペルチェ素子2の第2面2bから第1面2aへの熱の移動が行われるように、すなわちペルチェ素子2の第2面2bが吸熱側となるように同ペルチェ素子2が駆動される。この場合、第2循環回路12を循環する冷却水は、ペルチェ素子2の第2面2bにより冷却されて温度低下した後、室内熱交換器14を通過する際にエアダクト9を通って車室7に送られる空気との間で熱交換される。こうした熱交換を通じて車室7に送られる空気が冷却され、ひいては車室7の冷房が行われるようになる。言い換えれば、ペルチェ素子2における第2面2bでの吸熱を通じて車室7内の空気の温度が目標値に向けて低下される。なお、上述したようにペルチェ素子2の第2面2bでの吸熱を行っているときには、ペルチェ素子2の第1面2aからの放熱が行われ、それによって第1循環回路3を循環する冷却水が温度上昇する。このように第1循環回路3を循環する冷却水が温度上昇するとしても、その冷却水はラジエータ6を通過する際に外気との間で熱交換されるため、その熱交換を通じて上記冷却水の持つ熱が外気に放出される。従って、第1循環回路3を循環する冷却水の温度が過度に高くなることはない。
【0023】
車室7の暖房時には、ペルチェ素子2の第1面2aから第2面2bへの熱の移動が行われるように、すなわちペルチェ素子2の第2面2bが加熱側となるように同ペルチェ素子2が駆動される。この場合、第2循環回路12を循環する冷却水は、ペルチェ素子2の第2面2bにより加熱されて温度上昇した後、室内熱交換器14を通過する際にエアダクト9を通って車室7に送られる空気との間で熱交換される。こうした熱交換を通じて車室7に送られる空気が加熱され、ひいては車室7の暖房が行われるようになる。言い換えれば、ペルチェ素子2における第2面2bでの加熱を通じて車室7内の空気の温度が目標値に向けて上昇される。なお、上述したようにペルチェ素子2の第2面2bでの加熱を行っているときには、ペルチェ素子2の第1面2aからの吸熱が行われ、それによって第1循環回路3を循環する冷却水が温度低下する。このように第1循環回路3を循環する冷却水が温度低下するとしても、その冷却水はラジエータ6を通過する際に外気との間で熱交換されるため、その熱交換を通じて外気の熱が上記冷却水に取り込まれる。従って、第1循環回路3を循環する冷却水の温度が過度に低くなることはない。
【0024】
次に、車室7の冷房や暖房といった空調を行う際のペルチェ素子2の駆動制御について説明する。
空調装置のペルチェ素子2による冷暖房の能力は、そのペルチェ素子2の第2面2bからの加熱量や同第2面2bへの吸熱量に応じて可変とされる。すなわち、ペルチェ素子2の冷暖房の能力は、暖房時においてはペルチェ素子2の第2面2bからの加熱量が多くなるほど高くなり、冷房時においてはペルチェ素子2の第2面2bへの吸熱量が多くなるほど高くなる。そして、ペルチェ素子2の冷暖房の能力は、そのペルチェ素子2に対する印可電圧を制御して同素子2の駆動電流を可変とすることによって調整される。一方、ペルチェ素子2による車室7の冷暖房(空調)を行う際には、吹き出し温センサ25によって検出される吹き出し温度(車室7の空気の温度に対応)と、その吹き出し温度の目標値として求められた目標吹き出し温度とに基づき、ペルチェ素子2の冷暖房に関する必要能力が求められる。こうした必要能力が得られるようにペルチェ素子2の駆動電流を可変として同素子2における冷暖房の実能力を調整すれば、上記吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて変化させることができ、車室7の冷房や暖房といった空調を行うことができるようになる。
【0025】
ところで、上記必要能力が得られるようペルチェ素子2における冷暖房の実能力を調整するに当たり、例えば上記吹き出し温度を速やかに目標吹き出し温度に向けて変化させることを重視してペルチェ素子2の制御を行うことが考えられる。このペルチェ素子2の制御(以下、「能力重視制御」という)では、同素子2における冷暖房の実能力を上記必要能力まで最速で変化させて同必要能力と一致した状態に維持される。従って、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力を上記必要能力まで最速で変化させ、それによって上記吹き出し温度を速やかに目標吹き出し温度に向けて変化させる際には、ペルチェ素子2の第2面2bにおける加熱量もしくは吸熱量が最大とされる。
【0026】
上記能力重視制御を実行した場合、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力、ペルチェ素子2の駆動電流、及びペルチェ素子2の駆動効率がそれぞれ、例えば図2(a)〜(c)に示されるように推移する。なお、上記ペルチェ素子2の駆動効率は、そのペルチェ素子2での消費電力に対する同素子2の吸熱側から加熱側への熱の移動の効率を意味している。こうしたペルチェ素子2の駆動効率が高いほど、少ない消費電力でペルチェ素子2の吸熱側から加熱側への熱の移動が多く行われる。能力重視制御においては、上記吹き出し温度を速やかに目標吹き出し温度に向けて変化させることを重視し、そうした速やかな変化を実現すべくペルチェ素子2の駆動効率の悪化を考えずに同素子2の第2面2bの加熱量や吸熱量が大きくなるようにされる。すなわち、同ペルチェ素子2の第2面2bの加熱量や吸熱量が大きくなるように、そのペルチェ素子2の駆動電流が定められる。
【0027】
能力重視制御において、図2(a)に示すようにペルチェ素子2における冷暖房の実能力(実線)が上記必要能力(破線)と一致するよう、ペルチェ素子2の駆動電流を図2(b)に示すように推移させたとすると、ペルチェ素子2の駆動効率が例えば図2(c)に示すように推移する。この図から分かるように、能力重視制御では、必ずしもペルチェ素子2の駆動効率が常に良い状態に維持されるとは限らず、状況によってはペルチェ素子2の駆動効率が悪化するおそれがある。これは、ペルチェ素子2の加熱側と吸熱側との温度差ΔTが大きくなって第2面2bでの加熱量や吸熱量の増大を効果的に行えない状況であっても、上記吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて速やかに変化させるための上記加熱量や上記吸熱量の増大を実現しようとして、ペルチェ素子2の駆動電流が多くされるためである。
【0028】
こうした問題に対処するため、本実施形態では、車室7の冷房や暖房といった空調を行うためのペルチェ素子2の制御、すなわち上記吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて変化させるためのペルチェ素子2の制御として「高効率制御」が実行される。
【0029】
この高効率制御は、上記吹き出し温度を速やかに目標吹き出し温度に向けて変化させるべくペルチェ素子2における冷暖房の実能力を上記必要能力まで最速で変化させることよりも、ペルチェ素子2を駆動する際の同素子2の消費電力を低減することを重視した制御となっている。従って、高効率制御では、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力を上記必要能力まで変化させることで上記吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて変化させる際、ペルチェ素子2での消費電力に対する同素子2の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率で行われるよう、ペルチェ素子2の駆動電流が可変とされる。このようにペルチェ素子2の駆動電流を可変とすることで、同ペルチェ素子2が駆動されるようになる。そして、上記高効率制御の実行により、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力を上記必要能力まで変化させること、言い換えれば上記吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて変化させることを可能な限り速やかに実行しつつ、その際のペルチェ素子2の駆動のための消費電力を小さく抑えることができる。
【0030】
上記高効率制御を実行した場合、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力、ペルチェ素子2の駆動電流、及びペルチェ素子2の駆動効率がそれぞれ、例えば図3(a)〜(c)に示されるように推移する。高効率制御では、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力を上記必要能力まで変化させることで上記吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて変化させる際、ペルチェ素子2の駆動電流が上述したように可変とされることで例えば図3(b)に示すように推移する。詳しくは、ペルチェ素子2の駆動電流は、同素子2の加熱側と吸熱側との温度差ΔTに基づき、ペルチェ素子2の駆動効率が最高となる値、すなわちペルチェ素子2での消費電力に対する同素子2の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率で行われる値に可変設定される。
【0031】
このように可変設定されるペルチェ素子2の駆動電流は、同素子2の加熱側と吸熱側との温度差ΔTの変化に対し図4に示すように推移する。同図から分かるように、ペルチェ素子2の駆動電流は、上記温度差ΔTが小さいときほど少なくされる一方、同温度差ΔTが大きくなるほど多くされるようになる。上記温度差ΔTに基づきペルチェ素子2の駆動電流を図4に示すように可変設定することで、図3の例ではペルチェ素子2の駆動電流が例えば図3(b)に示すように推移する。なお、このようにペルチェ素子2の駆動電流が推移すると、ペルチェ素子2の駆動効率は、最高効率を維持した状態で、例えば図3(c)に示すように推移する。更に、この場合にペルチェ素子2における冷暖房の必要能力が例えば図3(a)の破線で示されるように推移したとすると、同ペルチェ素子2における冷暖房の実能力は例えば図3(a)の実線で示すように推移する。
【0032】
図3(a)から分かるように、高効率制御の実行時においては、同制御を通じてペルチェ素子2における冷暖房の実能力(実線)が上記必要能力(破線)に到達し、それによって吹き出し温度が目標吹き出し温度に到達した後、上記実能力がタイミングT1以降に示すように必要能力を越えて変化を続けてしまうおそれがある。このようにペルチェ素子2における冷暖房の実能力が上記必要能力を越えて変化を続けてしまう場合、吹き出し温度も目標吹き出し温度に到達した後に同温度を越えて変化を続けてしまう。その結果、上記吹き出し温度が目標吹き出し温度から大きく離れるとともに、ペルチェ素子2の駆動による車室7の冷房や暖房といった空調が無駄に行われるようになる。
【0033】
こうしたことを防止するため、本実施形態では、高効率制御の実行時にペルチェ素子2における冷暖房の実能力が上記必要能力を越えて変化した後(T1以降)、言い換えれば上記吹き出し温度が目標吹き出し温度を越えて変化した後、ペルチェ素子2の駆動態様を変更する処理として「能力低減処理」が実行される。この能力低減処理では、ペルチェ素子2での消費電力に対する同素子2の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となる状態を維持しつつ、ペルチェ素子2の加熱量や吸熱量が低減されるように同ペルチェ素子2が駆動される。
【0034】
上記能力低減処理を実行した場合、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力、ペルチェ素子2の駆動電流、ペルチェ素子2の駆動素子数、及びペルチェ素子2の駆動効率がそれぞれ、例えば図5(a)〜(d)に示されるように推移する。この能力低減処理におけるペルチェ素子2での上述した加熱量や吸熱量の低減は、図5(a)のタイミングT以降の如くペルチェ素子2における冷暖房の実能力(実線)が上記必要能力(破線)に向けて近づくよう、ペルチェ素子2における複数のP型熱電変換素子及びN型熱電変換素子の駆動素子数を図5(c)に示すように減らすことで実現される。これにより、高効率制御の実行時、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力(実線)が上記必要能力(破線)に到達し、それによって吹き出し温度が目標吹き出し温度に到達した後、吹き出し温度が目標吹き出し温度を越えて変化を続けてしまい、同温度から大きく離れてしまうことを防止できるようになる。
【0035】
ちなみに、能力低減処理の実行中(T1以降)、ペルチェ素子2の駆動効率は、最高効率に維持された状態となっており、例えば図5(d)に示すように推移する。このときには、能力低減処理でのペルチェ素子2の加熱量や吸熱量の低減を同素子2の駆動素子数の低減によって実現しつつ、その状態でもペルチェ素子2の駆動効率が最高効率となる同素子2の駆動電流が得られるように、例えば図5(b)のタイミングT1以降で示す駆動電流が得られるようにペルチェ素子2の印可電圧が低減される。その結果、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力(実線)が上記必要能力(破線)に到達した後、吹き出し温度が目標吹き出し温度を越えて変化を続けてどう温度から大きく離れないようにしつつ、ペルチェ素子2の駆動効率を最高効率に維持した状態で同素子2の印可電圧を低減することができる。これにより、タイミングT1以降において、ペルチェ素子2を駆動する際の同素子2での消費電力を小さく抑えることが可能になる。更に、ペルチェ素子2の駆動に基づく車室7の冷房や暖房といった空調が過剰に(無駄に)行われることもなくなる。
【0036】
次に、車室7の冷房や暖房といった空調を行う際のペルチェ素子2の駆動制御の詳細な実行手順について、ペルチェ素子制御ルーチンを示す図6のフローチャートを参照して説明する。このペルチェ素子制御ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0037】
同ルーチンにおいては、自動車の外部電源18への接続中であるか否か(S101)、言い換えればペルチェ素子2への電力供給を外部電源18によって行うことが可能な状況であるか否かが判断される。ここで肯定判定であれば、自動車の運転開始前に車室7の冷房や暖房といった空調を予め行っておくためのプレ空調が行われる。具体的には、こうしたプレ空調において、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力(吹き出し温度に対応)
を上記必要能力(目標吹き出し温度に対応)に向けて変化させるためのペルチェ素子2の駆動制御として「能力重視制御」が実行される(S102)。
【0038】
一方、S101で自動車の外部電源18への接続中でない旨判断された場合、すなわちペルチェ素子2への電力供給をバッテリ17によって行わなければならない状況である場合には、自動車の運転中における車室7の通常の空調が行われるようになる。この空調では、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力(吹き出し温度に対応)を上記必要能力(目標吹き出し温度に対応)に向けて変化させるためのペルチェ素子2の駆動制御として「高効率制御」が実行される(S103)。
【0039】
この高効率制御の実行中において、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力が上記必要能力に達した後に同必要能力を越えて変化した状態にあるか否か(S104)、言い換えれば吹き出し温度が目標吹き出し温度に達した後に同温度を越えて変化した状態にあるか否かが判断される。ここで肯定判定であれば、高効率制御が実行された状況のもと、ペルチェ素子2での消費電力に対する同素子2の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となる状態を維持しつつ、ペルチェ素子2の加熱量や吸熱量が低減されるように同ペルチェ素子2を駆動する「能力低減処理」が実行される(S105)。一方、S104の処理で否定判定がなされた場合、こうした「能力低減処理」が実行されることはない。
【0040】
図7(a)〜(d)はそれぞれ、図6を参照して説明した手順でペルチェ素子2を駆動制御したときのペルチェ素子2における冷暖房の実能力、ペルチェ素子2の駆動電流、ペルチェ素子2の駆動素子数、及びペルチェ素子2の駆動効率の推移を示している。図7(a)〜(d)において、タイミングT2までは自動車が外部電源18に接続されており、上述したプレ空調を行うためのペルチェ素子2の能力重視制御が実行されているときの上記各パラメータの推移を示している。そして、図7(a)〜(d)におけるタイミング2以降は、自動車が外部電源18から切り離されて運転されており、車室7の通常の空調を行うためのペルチェ素子2の高効率制御が実行されているとき、より詳しくは同高効率制御の実行中にペルチェ素子2の能力低減処理が実行されていときの上記各パラメータの推移を示している。
【0041】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)自動車の運転中においては、車室7の冷房や暖房といった空調を行うためのペルチェ素子2の制御、すなわち上記吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて変化させるためのペルチェ素子2の制御として「高効率制御」が実行される。この高効率制御では、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力を上記必要能力まで変化させることで上記吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて変化させる際、ペルチェ素子2での消費電力に対する同素子2の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率で行われるよう、ペルチェ素子2の駆動電流が可変とされる。こうした高効率制御の実行により、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力を上記必要能力まで変化させること、言い換えれば上記吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて変化させることを可能な限り速やかに実行しつつ、その際のペルチェ素子2の駆動のための消費電力を小さく抑えることができる。
【0042】
(2)上記高効率制御の実行時にペルチェ素子2における冷暖房の実能力が上記必要能力を越えて変化した後、言い換えれば上記吹き出し温度が目標吹き出し温度を越えて変化した後、ペルチェ素子2の駆動態様を変更する処理として「能力低減処理」が実行される。この能力低減処理では、ペルチェ素子2での消費電力に対する同素子2の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となる状態を維持しつつ、ペルチェ素子2の加熱量や吸熱量が低減されるように同ペルチェ素子2が駆動される。ペルチェ素子2での上述した加熱量や吸熱量の低減は、具体的には、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力が上記必要能力に向けて近づくよう、同ペルチェ素子2における複数のP型熱電変換素子及びN型熱電変換素子の駆動素子数を減らすことで実現される。これにより、高効率制御の実行時、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力が上記必要能力に到達し、それによって吹き出し温度が目標吹き出し温度に到達した後、吹き出し温度が目標吹き出し温度を越えて変化を続けてしまい、同温度から大きく離れてしまうことを防止できる。また、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力が上記必要能力に到達した後、吹き出し温度が目標吹き出し温度を越えて変化を続けて同温度から大きく離れないようにしつつ、ペルチェ素子2の駆動効率を最高効率に維持した状態で同素子2の印可電圧を低減することができる。従って、ペルチェ素子2を駆動する際の同素子2での消費電力を小さく抑えることが可能になる。更に、ペルチェ素子2の駆動に基づく車室7の冷房や暖房といった空調が過剰に(無駄に)行われることもなくなる。
【0043】
(3)自動車が外部電源18に接続された状態にあってペルチェ素子2が同外部電源18からの電力供給を受けて駆動されるときには、ペルチェ素子2での消費電力低減よりも、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力を上記必要能力まで最速で変化させ、それによって吹き出し温度を速やかに目標吹き出し温度に向けて変化させることが重視される。このため、自動車の外部電源18への接続中には、ペルチェ素子2の制御として「能力重視制御」が実行される。これにより、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力を上記必要能力まで変化させて吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて変化させる際、そのペルチェ素子2の加熱量や吸熱量が最大となるよう同ペルチェ素子2が駆動される。一方、自動車が外部電源18に接続されていない状態にあってペルチェ素子2が自動車のバッテリ17からの電力供給を受けて駆動されるときには、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力を上記必要能力まで最速で変化させて吹き出し温度を速やかに目標吹き出し温度に向けて変化させることよりも、ペルチェ素子2での消費電力低減が重視される。このため、自動車が外部電源18から切り離された状態にあっては、ペルチェ素子2の制御として「高効率制御」が実行される。更に、この高効率制御の実行中に上述した「能力低減処理」も実行されるようになる。これにより、ペルチェ素子2における冷暖房の実能力を上記必要能力まで変化させて吹き出し温度を目標吹き出し温度に向けて変化させる際には、ペルチェ素子2での消費電力に対する同素子2の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となるよう同ペルチェ素子2が駆動される。以上により、自動車の走行開始前であって同自動車が外部電源18に接続されているときに吹き出し温度を目標吹き出し温度に到達させておき、それによって自動車が外部電源18から離脱されて走行開始した後に吹き出し温度を目標吹き出し温度とするためのバッテリ17の電力を用いたペルチェ素子2の駆動が行われることを抑制できる。従って、自動車の走行開始後におけるペルチェ素子2での消費電力を小さく抑えることができ、ひいては自動車のバッテリ17に蓄えられた電力を節約することができる。
【0044】
(4)自動車が外部電源18から切り離された状態にあって、バッテリ17の電力を用いたペルチェ素子2の駆動を行う際、そのペルチェ素子2での電力消費を小さく抑えることができるため、自動車に搭載される上記バッテリ17を小型化することができる。
【0045】
(5)自動車をバッテリ17からの電力供給を受けて駆動されるモータにより走行する電気自動車とした場合、上述したようにペルチェ素子2での消費電力を小さく抑えることでバッテリ17に蓄えられた電力を節約することができるため、上記モータで走行する電気自動車での一度の充電による走行可能距離を伸ばすことができる。
【0046】
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・自動車の外部電源18への接続中に行われるプレ空調に関しては、必ずしもペルチェ素子2を「能力重視制御」で駆動して行う必要はない。例えば、ペルチェ素子2を「高効率制御」で駆動制御することで上記プレ空調を行うようにしてもよい。
【0047】
・自動車が外部電源18から切り離されて運転開始した後、最初にペルチェ素子2における冷暖房の実能力が上記必要能力に達して吹き出し温度が目標吹き出し温度に達するまで、ペルチェ素子2の駆動制御として「能力重視制御」を実行する。そして、上述したようにペルチェ素子2における冷暖房の実能力が上記必要能力に達した後、すなわち吹き出し温度が目標吹き出し温度に達した後、ペルチェ素子2の駆動制御として「高効率制御」を実行するようにしてもよい。また、こうした高効率制御の実行中には「能力低減処理」を実行することが好ましい。
【0048】
・能力低減処理において、ペルチェ素子2の加熱量や吸熱量を低減させる際、それを次のようにして実現してもよい。すなわち、ペルチェ素子2として、複数のP型熱電変換素子と複数のN型熱電変換素子とを交互に直列接続した複数の素子列を備え、それら複数の素子列の接続態様を直列と並列との間で切り換え可能なものを用いる。そして、上記能力低減処理に際しては、ペルチェ素子2における複数の素子列の接続態様を直列から並列に切り換えることで、ペルチェ素子2での消費電力に対する同素子2の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となる状態を維持しつつ同素子2の加熱量や吸熱量を低減させることを実現する。
【0049】
・能力低減処理については必ずしも実行する必要はない。
・車室7の暖房を行うべくペルチェ素子2の第2面2bを加熱側とする際、同素子2の吸熱側である第1面2aにペルチェ素子2を駆動するための駆動回路の廃熱を付与するようにしてもよい。この場合、ペルチェ素子2の加熱側と吸熱側との温度差ΔTを大きくすることができ、それによってペルチェ素子2の駆動効率を向上させることができる。
【0050】
・ペルチェ素子2を第1面2a及び第2面2bが重力の作用する方向(鉛直方向)に平行となるように配置し、そのペルチェ素子2の上に同素子2を駆動するための駆動回路モジュールを載せた状態にしてもよい。この場合、ペルチェ素子2における第1面2aと第2面2bとの間に働く面圧を上記駆動回路モジュールに作用する重力によって高めることができる。
【0051】
・ペルチェ素子2の駆動による温度調節対象として、自動車における車室7の空気(正確には車室7に送られる空気)を例示したが、それ以外のものを温度調節対象とすることも可能である。
【符号の説明】
【0052】
2…ペルチェ素子、2a…第1面、2b…第2面、3…第1循環回路、5…ポンプ、6…ラジエータ、7…車室、9…エアダクト、10…ブロワ、12…第2循環回路、13…ポンプ、14…室内熱交換器、17…バッテリ、18…外部電源、21…電子制御装置(制御手段)、23…室温設定スイッチ、24…外気温センサ、25…吹き出し温センサ、26…日射量センサ、27…第1温度センサ、28…第2温度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調節対象の温度が目標値に向けて変化するよう同温度調節対象に対する加熱や吸熱を行うペルチェ素子を制御する制御装置であって、
前記ペルチェ素子による加熱や吸熱を通じて前記温度調節対象の温度を目標値に向けて変化させる際、前記ペルチェ素子での消費電力に対する同素子の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率で行われるよう前記ペルチェ素子を駆動する制御手段を備える
ことを特徴とするペルチェ素子の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ペルチェ素子による加熱や吸熱を通じて前記温度調節対象の温度が目標値を越えた後、前記ペルチェ素子での消費電力に対する同素子の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となる状態を維持しつつ、前記ペルチェ素子の加熱量や吸熱量が低減されるように同ペルチェ素子を駆動する
請求項1記載のペルチェ素子の制御装置。
【請求項3】
前記ペルチェ素子は、複数のP型熱電変換素子と複数のN型熱電変換素子とを交互に直列接続することで形成されるものであり、
前記制御手段は、前記ペルチェ素子での消費電力に対する同素子の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となる状態を維持しつつ、前記ペルチェ素子の加熱量や吸熱量を低減させる際、それを前記ペルチェ素子における前記複数のP型熱電変換素子及びN型熱電変換素子の駆動素子数を減らすことで実現する
請求項2記載のペルチェ素子の制御装置。
【請求項4】
前記ペルチェ素子は、複数のP型熱電変換素子と複数のN型熱電変換素子とを交互に直列接続した複数の素子列を備え、それら複数の素子列の接続態様を直列と並列との間で切り換え可能なものであり、
前記制御手段は、前記ペルチェ素子での消費電力に対する同素子の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となる状態を維持しつつ、前記ペルチェ素子の加熱量や吸熱量を低減させる際、それを前記ペルチェ素子における複数の素子列の接続態様を直列から並列に切り換えることで実現する
請求項2記載のペルチェ素子の制御装置。
【請求項5】
前記ペルチェ素子は、車両における車室内の空気の温度を調節するために用いられ、前記車両が外部電源に接続されているときには同外部電源からの電力供給を受けて駆動される一方、前記車両が外部電源に接続されていないときには同車両のバッテリからの電力供給を受けて駆動されるものであり、
前記制御手段は、前記車両が外部電源に接続されているときには前記ペルチェ素子での加熱量や吸熱量が最大となるよう同ペルチェ素子を駆動する一方、前記車両が外部電源に接続されていないときには前記ペルチェ素子での加熱や吸熱により前記車室内の空気の温度を目標値に向けて変化させる際に前記ペルチェ素子での消費電力に対する同素子の吸熱側から加熱側への熱の移動が最高効率となるよう同ペルチェ素子を駆動する
請求項1記載のペルチェ素子の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196988(P2012−196988A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61090(P2011−61090)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】