説明

ペルフルオロアルキル部分を含む撥水性及び撥油性付与エステルオリゴマー

少なくとも1個の長鎖フッ素含有繰り返し単位と少なくとも1個のフッ素含有末端基とを有する1つ以上の化合物又はオリゴマーを含むフルオロケミカルエステル組成物が記載される。本組成物は10コーティング(10 coatings)として有用である。本フルオロケミカル組成物は基材に撥油性及び撥水性を付与する。別の態様では、本発明は、基材及び物品に、撥油性及び撥水性特性を付与するためのプロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年6月8日に出願された米国仮出願第60/942,701号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、少なくとも1個のフッ素含有繰り返し可能単位と少なくとも1個のフッ素含有末端基とを有する1つ以上の化合物又はオリゴマーを含むフルオロケミカル組成物に関する。本発明はまた、基材と、コーティングとして適用してもよいフルオロケミカル組成物とを含む物品に関する。これらのフルオロケミカル組成物は、基材に撥油性及び撥水性を付与する。別の態様では、本発明は、基材及び物品に、撥油性及び撥水性特性を付与するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
特定のフルオロケミカル組成物を繊維及び繊維性基材、例えば布、紙及び革に使用して撥油性及び撥水性並びに汚れ及び染み耐性を付与することは、当該技術分野において周知である。例えば、バンクス(Banks)編「有機フッ素化学薬品及びそれらの工業的用途(Organofluorine Chemicals and Their Industrial Applications)」、エリスホーウッド社(Ellis Horwood Ltd.)、英国チチェスター(Chichester)、1979年、226〜234頁を参照されたい。このようなフルオロケミカル組成物には、例えば、フルオロケミカルグアニジン(米国特許第4,540,497号(チャン(Chang)ら))、カチオン性及び非カチオン性フルオロケミカル(米国特許第4,566,981号(ハウエルズ(Howells)))、フルオロケミカルカルボン酸及びエポキシド系カチオン性樹脂を含有する組成物(米国特許第4,426,466号(シュワルツ(Schwartz)))、フルオロ脂肪族カルボジイミド(米国特許第4,215,205号(ランデュチィ(Landucci)))、フルオロ脂肪族アルコール(米国特許第4,468,527号(パテル(Patel))、フッ素含有付加ポリマー、コポリマー及びマクロマー(米国特許第2,803,615号、同第3,068,187号、同第3,102,103号、同第3,341,497号、同第3,574,791号、同第3,916,053号、同第4,529,658号、同第5,216,097号、同第5,276,175号、同第5,725,789号、及び同第6,037,429号)、フッ素含有ホスフェートエステル(米国特許第3,094,547号、同第5,414,102号、及び5,424,474号)、フッ素含有ウレタン(米国特許第3,987,182号、同第3,987,227号、同第4,504,401号、及び同第4,958,039号)、フルオロケミカルアロファネート(米国特許第4,606,737号)、フルオロケミカルビウレット(米国特許第4,668,406号)、フルオロケミカルオキサゾリジノン(米国特許第5,025,052号)、並びに、フルオロケミカルピペラジン(米国特許第5,451,622号)が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用しやすさの改善及び所望の条件下での性能の改善を提供する撥水/撥油処理剤に対して、必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様では、本発明は、少なくとも1個のフッ素含有繰り返し可能単位と少なくとも1個のフッ素含有末端基を有する1つ以上のオリゴマーを含む化学組成物に関する。これらのオリゴマーは、
(a)1つ以上のポリオールと、
(b)17個以上の炭素原子を含有する1つ以上のポリアシル化合物(カルボン酸、エステル、ハロゲン化アシルなど)と、
(c)ポリオール(a)のヒドロキシル基と又はポリアシル化合物(b)のアシル基と反応性がある官能基を含む1つ以上の一官能性フッ素含有化合物と、の縮合反応生成物を含み、
少なくとも一部のこのポリオール化合物が更に、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロヘテロアルキル、及びペルフルオロヘテロアルキレンからなる群から選択される少なくとも1個のフッ素含有基を含む。いくつかの実施形態では、化合物又はオリゴマーは、上記の(a)と(b)と(c)と、(d)1つ以上の一官能性でフッ素非含有化合物と、の縮合反応生成物を含む。本発明のオリゴマーは驚くべきことに、既知のより短い鎖の物質と比較して優れた性能、特に動的な撥水/撥油性能を提供することが判明した。
【0006】
本明細書で使用する時、用語「オリゴマー」とは、少なくとも2個又はそれ以上で数個までの、すなわち、平均10個までだが好ましくは平均5個までの、繰り返し(重合済み)又は繰り返し可能単位を含む分子を意味する。各繰り返し単位は、平均1個超、好ましくは2個以上のヒドロキシル部分を有する少なくとも1つのポリオールと、平均1個超の、好ましくは2個以上のアシル部分を有する少なくとも1つのポリアシル化合物との反応から誘導されるか又は誘導可能であるエステル基を含み、少なくとも一部のポリオール化合物は更に、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロへテロアルキル、及びペルフルオロヘテロアルキレンからなる群から選択される少なくとも1個のフッ素含有部分を含む。このオリゴマーは1個以上のペルフルオロアルキル基、1個以上のペルフルオロヘテロアルキル基、又はこれらの混合物で終端される。
【0007】
本発明のフルオロケミカル組成物の特定の好ましい実施形態は、1〜12個の炭素、好ましくは6個以下の炭素、より好ましくは3〜5個の炭素を有する、末端及び側枝R基を含む組成物を含む。
【0008】
本発明の別の実施形態は、本発明のフルオロケミカルオリゴマーと溶媒とを含むコーティング組成物に関する。この実施形態では、フルオロケミカル組成物を溶媒に溶解又は分散させる。基材に適用する時、このコーティング組成物(溶液であってもよく、又はエマルションであってもよい)は、基材の外観を変えることなく、基材上に化学組成物の均一な分散を提供する。本発明は更に、1つ以上の表面から構成される基材に、撥水性及び撥油性、染み放出性及び染み耐性といった特性を付与する方法に関し、この方法は、
(a)基材の1つ以上の表面上に本発明のコーティング組成物を適用する工程であって、このコーティング組成物が
(i)少なくとも1つの溶媒と、
(ii)本発明のフルオロケミカル組成物と、を含む、適用する工程、及び、
(b)このコーティング組成物を硬化させる工程、を含む。
【0009】
本発明のフルオロケミカル組成物は、例えば局所適用により、コーティングとして多種多様な基材に適用して、基材に撥油性及び撥水性、染み放出性、並びに染み耐性といった特性を付与することができる。本発明のフルオロケミカル組成物でコーティングされた基材を試験した際に、予期せぬほど高い動的撥水/撥油性が観察された。
【0010】
塗膜として適用されると、本発明の化学組成物は均一なフィルムを提供することができる。塗膜として適用されても、本発明の化学組成物は、これらが適用される基材の外観を変えない。
【0011】
定義
特に指示しない限り、本明細書及び本特許請求の範囲で使用される下記用語は、以下に与えられる意味を有する。
【0012】
「アシルオキシ」とは、ラジカル−OC(O)Rを意味し、式中、Rは、アルキル、アルケニル、及びシクロアルキルであり、例えば、アセトキシ、3,3,3−トリフルオロアセトキシ、プロピオニルオキシ、及び同類のものである。
【0013】
「アルケニル」とは、不飽和脂肪族ラジカルを意味する。
【0014】
「アルコキシ」とは、ラジカル−ORを意味し、式中、Rはアルキル基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、及び同類のものである。
【0015】
「アルキル」とは、直鎖飽和一価炭化水素ラジカル又は分枝状飽和一価炭化水素ラジカルを意味し、例えば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、ペンチル、及び同類のものである。
【0016】
「アルキレン」とは、直鎖飽和二価炭化水素ラジカル又は分枝状飽和二価炭化水素ラジカルを意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレン、及び同類のものである。
【0017】
「アラルキレン」は、結合した芳香族基を有する上記で定義されているアルキレンラジカルを意味し、例えばベンジル、ピリジルメチル、1−ナフチルエチル、及び同類のものである。
【0018】
「硬化化学組成物」とは、化学組成物が乾燥していること、又は、溶媒が高温(例えば、50℃以上)下で乾燥状態まで最大およそ24時間にわたって化学組成物から蒸発したことを意味する。
【0019】
「繊維性基材」とは、織布、ニット、不織布、カーペット及び積層体(PTFE及び/又はPU)などの他の布のような合成又は無機繊維から構成される材料、並びに、綿、紙、及び皮革のような天然繊維から構成される材料を意味する。
【0020】
「フルオロカーボンモノアルコール」とは、1個のヒドロキシル基と、ペルフルオロアルキル又はペルフルオロへテロアルキル基とを有する化合物を意味し、例えば、CSON(CH)CHCHOH、CCHCHOH、CO(CO)CFCONHCOH、CO(CO)CF(CF)CONHCOH、c−C11CHOH、及び同類のものである。
【0021】
「硬質基材」とは、その形状を維持するいずれかの剛体材料を意味し、例えば、ガラス、セラミック、コンクリート、天然石、木材、金属、プラスチック、及び同類のものである。
【0022】
「ヘテロアシルオキシ」は、1個以上のヘテロ原子(すなわち、酸素、イオウ、及び/又は窒素)がR基に存在してもよいこと及び存在する炭素原子の総数が最大50であってもよいことを除き、上記でアシルオキシについて与えた意味を本質的に有し、例えば、CHCHOCHCHC(O)O−、COCHCHOCHCHC(O)O−、CHO(CHCHO)CHCHC(O)O−、及び同類のものである。
【0023】
「ヘテロアルコキシ」は、1個以上のヘテロ原子(すなわち、酸素、イオウ、及び/又は窒素)がアルキル鎖中に存在してもよいこと及び存在する炭素原子の総数が最大50であってもよいことを除き、上記でアルコキシについて与えた意味を本質的に有し、例えば、CHCHOCHCHO−、COCHCHOCHCHO−、CHO(CHCHO)H、及び同類のものである。
【0024】
「ヘテロアルキル」は、1個以上のヘテロ原子(すなわち、酸素、イオウ、及び/又は窒素)がアルキル鎖中に存在してもよいことを除き、上記でアルキルについて与えた意味を本質的に有し、これらのヘテロ原子は少なくとも1個の炭素により互いに隔てられ、例えば、CHCHOCHCH−、CHCHOCHCHOCH(CH)CH−、CCHCHSCHCH−、及び同類のものである。
【0025】
「ヘテロアルキレン」は、1個以上のヘテロ原子(すなわち、酸素、イオウ、及び/又は窒素)がアルキレン鎖中に存在してもよいことを除き、上記でアルキレンについて与えた意味を本質的に有し、これらのヘテロ原子は少なくとも1個の炭素により互いに隔てられ、例えば、−CHOCHO−、
−CHCHOCHCH−、−CHCHN(CH)CHCH−、−CHCHSCHCH−、及び同類のものである。
【0026】
「ヘテロアラルキレン」とは、鎖状に連結された酸素、イオウ、及び/又は窒素原子が存在できることを除き、上記で定義したアルキレンラジカルを意味し、例えば、フェニレンオキシメチル、フェニレンオキシエチル、ベンジレンオキシメチル、及び同類のものである。
【0027】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード、好ましくはフルオロ及びクロロを意味する。
【0028】
「ペルフルオロアルキル」は、アルキルラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が1〜約12であることを除き、上記で「アルキル」について与えた意味を本質的に有し、例えば、ペルフルオロプロピル、ペルフルオロブチル、ペルフルオロオクチル、及び同類のものである。
【0029】
「ペルフルオロアルキレン」は、アルキレンラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられていることを除き、上記で「アルキレン」について与えた意味を本質的に有し、例えば、ペルフルオロプロピレン、ペルフルオロブチレン、ペルフルオロオクチレン、及び同類のものである。
【0030】
「ペルフルオロヘテロアルキル」は、ヘテロアルキルラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が3〜約100であることを除き、上記で「ヘテロアルキル」について与えた意味を本質的に有し、例えば、CFCFOCFCF−、CFCFO(CFCFO)CFCF−、又は
O(CF(CF)CFO)CF(CF)CF−(式中、mは約10〜30である)、及び同類のものである。
【0031】
「ペルフルオロヘテロアルキレン」は、ヘテロアルキレンラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が3〜約100であることを除き、上記で「ヘテロアルキレン」について与えた意味を本質的に有し、例えば、−CFOCF−、
−CFO(CFO)(CFCFO)CF−、及び同類のものである。
【0032】
「ペルフルオロ化基」とは、炭素に結合した水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられている有機基を意味し、例えば、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロヘテロアルキル、及び同類のものである。
【0033】
「ポリアシル化合物」とは、2個以上のアシル基を含有する化合物、又はこれらの誘導体を意味し、多価有機基にカルボン酸、エステル、又はハロゲン化アシルが結合したもの、例えば、アジピン酸ジメチル、及び同類のものである。
【0034】
「ポリオール」とは、分子当たり平均少なくとも約2個の第一級又は第二級ヒドロキシル基を有する有機化合物又はポリマーを意味し、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、
1,6−ヘキサンジオール、及び同類のものである。この化合物又はポリマーはフッ素化されてもよく、すなわち、主鎖の中の、又は側枝に付加された、又はこれらの両方の、フッ素含有部分を含んでもよい。
【0035】
「多孔質」とは、液体を吸収することができることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明のフルオロケミカル組成物は、
(a)1つ以上のフッ素化ポリオールと、
(b)17個以上の炭素原子を含有する1つ以上のポリアシル化合物(カルボン酸、エステル、ハロゲン化アシルなど)と、
(c)ポリオール(a)のヒドロキシル基と又はポリアシル化合物(b)のアシル基と反応性がある官能基を含む1つ以上の一官能性フッ素含有化合物と、の縮合反応生成物を含む。
【0037】
フッ素化ポリオール化合物は更に、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロヘテロアルキル、及びペルフルオロヘテロアルキレンからなる群から選択される少なくとも1個のフッ素含有基を含む。このエステルオリゴマーは更に1つ以上の非フッ素化ポリオールを含んでもよい。所望により、本発明のフルオロケミカルオリゴマーの反応混合物は更に、(a)、(b)及び(c)に加えて、(d)1つ以上の一官能性でフッ素非含有化合物を含んで、得られる撥水/撥油性、融点などのような特性を調整する。
【0038】
このオリゴマーは、少なくとも2個の繰り返し可能又は繰り返し重合単位を含む。各繰り返し可能又は繰り返し単位は、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロヘテロアルキル、及びペルフルオロヘテロアルキレンからなる群から選択される1つ以上の側枝又は鎖中フッ素含有基、並びに、ポリオールとポリアシル化合物との間の反応から形成されるエステル基を含む。このオリゴマーは、1個以上のペルフルオロアルキル基、1個以上のペルフルオロヘテロアルキル基、又は所望により1個以上の、フッ素非含有化合物又はこれらの混合物によって終端される。
【0039】
得られるエステル分子混合物は好ましくは、2個以上の繰り返し単位などの様々な数の繰り返し又は繰り返し可能単位を有するエステル分子を含むことが理解されるであろう。様々な数の繰り返し単位を含むエステル分子のこの混合物により、フルオロケミカル組成物を調製する際に上記成分の単純なブレンドを行うことができる。
【0040】
本発明のフルオロケミカル組成物は、少なくとも一部のポリオール化合物が側枝又は鎖中フッ素含有基から構成されるという条件で、少なくとも1つのジアシル化合物(又はその誘導体、例えば、ジカルボン酸ハロゲン化物、ジカルボン酸無水物、若しくはジカルボン酸エステル)と、少なくとも1つのフッ素化ポリオールと、少なくとも1つのフッ素含有モノアルコール又はフッ素含有モノカルボン酸(又は誘導体)との反応から生じるエステル分子の混合物を含む。
【0041】
それゆえに、フルオロケミカル組成物は、一定数の特定の繰り返し又は繰り返し可能単位(1以上の数)を有する単一のエステルオリゴマーを含むことができるか、あるいは、このような化合物及び/又は様々な数の繰り返し単位のオリゴマーの混合物を含むことができる。
【0042】
エステル化合物及びオリゴマーは下式(I)により表すことができる。
【0043】
Q[OR[OC(O)RC(O)ORO][C(O)RC(O)]
(I)
式中、
oは、0〜1の数(0及び1を含む)であり、
nは、1〜10の数(1及び10を含む)であり、
mは、0〜1の数(0及び1を含む)であり、
は、1個〜12個、好ましくは6個以下、最も好ましくは3個〜5個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、又は、存在する全てのペルフルオロカーボン鎖が1個〜6個、好ましくは1個〜4個の炭素原子を有する、3個〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロヘテロアルキル基であり、
Qは二価連結基であり、
は、同一又は異なり、ポリアシル化合物の残基である多価有機基であり、これは15個〜20個の炭素原子、最も好ましくは16個の炭素原子からなる直鎖又は分枝状又は不飽和鎖アルキレン基であり、
は、ポリオールの残基である同一又は異なる二価有機基であり、その少なくとも一部は1個以上のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロヘテロアルキル基、ペルフルオロヘテロアルキレン基、若しくはこれらの混合物で置き換えられているか又はこれらを含有し、好ましくは6個以下の炭素原子がそれらに結合したフッ素原子を有し、並びに、
Tは、上記で定義したQRか、又は、ポリアシル化合物と若しくはポリオールと反応できる、フッ素非含有一価化合物か、のいずれかである。
【0044】
上記R基に関して、R基が6個以下の炭素原子を有することが好ましい。より短い鎖のR基は、米国特許第5,688,884号に記載されているように、生体内蓄積を生じる傾向を低減すると考えられている。
【0045】
好適な連結基Qは、共有結合に加えて以下の構造を含む。このリストの目的において、各kは独立して0〜約20の整数であり、R1’は、水素、フェニル、又は1個〜約4個の炭素原子のアルキルであり、R2’は1個〜約20個の炭素原子のアルキルである。各構造は、非方向性であり、すなわち、−(CHC(O)O−は、−O(O)C(CH−と同等である。
【0046】
【表1】

【0047】
単独の化合物に加えて、この一般式に対応するオリゴマーの混合物を表すことができること、並びに、o、m及びnが整数ではない数値により表すことができることが理解されよう。
【0048】
ポリオール分子の混合物を含む本発明のフルオロケミカル組成物の調製に使用するのに好適なポリオールには、1個超の平均ヒドロキシル官能基(好ましくは約2個〜約3個、ジオールとしての約2個が最も好ましい)を有する有機ポリオールが挙げられる。ヒドロキシル基は第一級又は第二級であることができ、第一級ヒドロキシル基はこれらのより大きな反応性のために好ましい。
【0049】
好適なポリオールには、少なくとも1個の脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、複素環式芳香族、又はポリマーの部分を含むものが挙げられる。好ましいポリオールは、末端基としてヒドロキシル基を含有する脂肪族又はポリマーのポリオールである。
【0050】
このポリオールは、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロヘテロアルキル、及びペルフルオロアルキレン部分からなる群から選択される少なくとも1個のフッ素含有基を含んでもよい。これらのペルフルオロ部分を含む全てのペルフルオロカーボン鎖は、好ましくは6個以下の炭素原子である。ペルフルオロアルキル部分が好ましく、6個以下の炭素原子を有するペルフルオロアルキル部分が好ましい。ペルフルオロヘテロアルキル部分は、3個〜50個の炭素原子を有してもよい。ペルフルオロヘテロアルキレン基は、3個〜50個の炭素原子を有してもよい。ペルフルオロヘテロアルキル及びアルキレン部分は好ましくは、6個を超える炭素原子のペルフルオロカーボン鎖を有さないペルフルオロポリエーテルである。
【0051】
フッ素化ポリオールと非フッ素化ポリオールとの混合物は、本発明の特定のフルオロケミカル組成物を調製するのに有利に利用することができる。例えば、非フッ素化ポリオールを含むことにより、フルオロケミカル組成物の溶融温度を変えることができ、所与の用途において通常使用される加工温度での調製をより有効にする。費用対効果の増加もまた、より高価なフッ素化ポリオールの一部をより高価ではない非フッ素化ポリオールと置き換えることにより、達成される。非フッ素化ポリオール及び使用量の選択は、例えば、溶融温度及び撥水/撥油性といった性能要件により決定される。非フッ素化ポリオールを使用する時、非フッ素化ポリオールとフッ素化ポリオールとの比の典型的に有用な範囲は、約1:1〜約1:100である。
【0052】
それゆえに、フルオロケミカルエステルオリゴマーは、1つ以上のフッ素化ポリオールと、所望により1つ以上の非フッ素化ポリオールと、1つ以上のポリアシル化合物と1つ以上の一官能性フッ素含有化合物と、所望によりポリアシル化合物又はポリオールと反応できるフッ素非含有一官能性化合物と、の縮合反応生成物を含んでもよい。
【0053】
少なくとも1個のフッ素含有基から構成される好適なフッ素化ポリオールの代表例には、RSON(CHCHOH)、例えば、
N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド、ROCSON(CHCHOH)、RSON(R’)CHCH(OH)CHOH、例えば、C13SON(C)CHCH(OH)CHOH、RCHCON(CHCHOH)、RCON(CHCHOH)
CFCF(OCFCFOCFCON(CH)CHCH(OH)CHOH、ROCHCH(OH)CHOH、例えば、COCHCH(OH)CHOH、RCHCHSCOCHCH(OH)CHOH、
CHCHSCCH(CHOH)、RCHCHSCHCH(OH)CHOH、
CHCHSCH(CHOH)CHCHOH、RCHCHCHSCHCH(OH)CHOH、例えば、C11(CHSCHCH(OH)CHOH、RCHCHCHOCHCH(OH)CHOH、例えば、C11(CHOCHCH(OH)CHOH、RCHCHCHOCOCHCH(OH)CHOH、
CHCH(CH)OCHCH(OH)CHOH、R(CHSCCH(CHOH)CHOH、
(CHSCHCH(CHOH)、R(CHSCOCHCH(OH)CHOH、
CHCH(C)SCHCH(OH)CHOH、RCHOCHCH(OH)CHOH、
CH2CH(OH)CHSCHCHOH、RCHCH(OH)CHSCHCHOH、
CHCH(OH)CHOCHCHOH、RCHCH(OH)CHOH、
R’’SCH(R’’’OH)CH(R’’’OH)SR’’R、(RCHCHSCHCHSCHC(CHOH)
((CFCFO(CF(CHSCHC(CHOH)、(RR’’SCHC(CHOH)、1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFOCO(CFOCOCFCHOH)、
1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロぺルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH)、ポリ−3−フォックス(POLY-3-FOX)(商標)(オムノバ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)、オハイオ州アクロン(Akron)から)などのフッ素化オキセタンの開環重合により製造されるフッ素化オキセタンポリオール、米国特許第4,508,916号(ニューウェル(Newell)ら)に記載されているような、少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する化合物によるフッ素化有機基置換エポキシドの開環付加重合により調製されるポリエーテルアルコール、及びペルフルオロポリエーテルジオール、例えば、フォンブリン(FOMBLIN)(商標)ZDOL(アウジモント(Ausimont)からのHOCHCFO(CFO)8〜12(CFCFO)8〜12CFCHOH)が挙げられ、式中、
は1個〜6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、又は、存在する全てのペルフルオロカーボン鎖が6個以下の炭素原子を有する3個〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロヘテロアルキル基、又はこれらの混合物であり、
R’は1個〜4個の炭素原子のアルキルであり、R’’は1個〜12個の炭素原子の分枝状若しくは直鎖アルキレン、2個〜12個の炭素原子のアルキレンチオ−アルキレン、2個〜12個の炭素原子のアルキレン−オキシアルキレン、又は2個〜12個の炭素原子のアルキレンイミノアルキレンであり、窒素原子は第三の置換基としてハロゲン若しくは1個〜6個の炭素原子のアルキルを含有し、
及び
R’’’は、1個〜12個の炭素原子の直鎖若しくは分枝鎖アルキレン又は式C2r(OC2sのアルキレン−ポリオキシアルキレンであり、式中、rは1〜12であり、sは2〜6であり、tは1〜40である。
【0054】
少なくとも1個のフッ素含有基から構成される好ましいポリオールには、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド、ポリ−3−フォックス(POLY-3-FOX)(商標)(オムノバ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)、オハイオ州アクロン(Akron)から)などのフッ素化オキセタンの開環重合により製造されるフッ素化オキセタンポリオール、米国特許第4,508,916号(ニューウェル(Newell)ら)に記載されているような、少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する化合物によるフッ素化有機基置換エポキシドの開環付加重合により調製されるポリエーテルアルコール、ペルフルオロポリエーテルジオール、例えば、フォンブリン(FOMBLIN)(商標)ZDOL(アウジモント(Ausimont)からのHOCHCFO(CFO)8〜12(CFCFO)8〜12CFCHOH)、
1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFOCO(CFOCOCFCHOH)、及び、
1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH)が挙げられる。
【0055】
少なくとも1個のフッ素含有基から構成されるより好ましいポリオールには、
N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド、
1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH)が挙げられる。
【0056】
好適な、非ポリマーで、非フッ素化ポリオールの代表例には、アルキレングリコール、ポリヒドロキシアルカン、及び他のポリヒドロキシ化合物が挙げられる。アルキレングリコールには、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、
1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−1,3−プロパンジオール、
2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ペンタンジオール、
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−、1,5−、及び1,6−ヘキサンジオール、
2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,8−オクタンジオール、ビシクロ−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、トリシクロ−デカンジオール、ノルボルナンジオール、及び1,18−ジヒドロキシオクタデカンが挙げられる。ポリヒドロキシアルカンには、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、
2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、及びソルビトールが挙げられる。他のポリヒドロキシ化合物には、例えば、ポリオールが挙げられ、これには例えば、ジ(エチレングリコール)、トリ(エチレングリコール)、テトラ(エチレングリコール)、テトラメチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジイソプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビシン、
1,11−(3,6−ジオキサウンデカン)ジオール、1,14−(3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン)ジオール、
1,8−(3,6−ジオキサ−2,5,8−トリメチルオクタン)ジオール、1,14−(5,10−ジオキサテトラデカン)ジオール、ヒマシ油、
2−ブチン−1,4−ジオール、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ベンズアミド、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルスルホン、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチオキシ)ベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼン、レゾルシノール、1,4−ジヒドロキシベンゼン、3,5−、2,6−、2,5−、及び2,4−ジヒドロキシ安息香酸、1,6−、2,6−、2,5−、及び
2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−及び4,4’−ビフェノール、1,8−ジヒドロキシビフェニル、
2,4−ジヒドロキシ−6−メチル−ピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、3,6−ジヒドロキシピリダジン、ビスフェノールA、4,4’−エチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(ビスフェノールC)、
1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルが挙げられ、並びに、他の脂肪族、ヘテロ脂肪族、飽和脂環式、芳香族、飽和ヘテロ脂環式、及び複素芳香族ポリオール、及び同類のもの、並びに、これらの混合物が挙げられる。
【0057】
有用なポリマーで非フッ素化ポリオールの代表例には、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、及びエチレンオキシド末端の、ポリプロピレングリコール並びにトリオールであって、このジオールについては約100〜約1000、又はトリオールについては約70〜約700の当量に相当する、約200〜約2000の分子量のもの、様々な分子量のポリテトラメチレングリコール、様々な分子量のポリジアルキルシロキサンジオール、ヒドロキシ末端ポリエステル及びヒドロキシ末端ポリラクトン(例えば、ポリカプロラクトンポリオール)、ヒドロキシ末端ポリアルカジエン(例えば、ヒドロキシル末端ポリブタジエン)、及び同類のものが挙げられる。所望される場合には、ポリマーポリオールの混合物を使用することができる。
【0058】
有用な市販のポリマーで非フッ素化ポリオールには、約200〜約2000の数平均分子量(M)範囲のカーボワックス(CARBOWAX)(商標)ポリ(エチレングリコール)材料(ユニオンカーバイド社(Union Carbide Corp.)から)、PPG−425(ライオンデル・ケミカルズ(Lyondell Chemicals)から)などのポリ(プロピレングリコール)材料、プルロニック(PLURONIC)(商標)L31(BASF社(BASF Corporation)から)などの、ポリ(エチレングリコール)とポリ(プロピレングリコール)とのブロックコポリマー、ビスフェノールAエトキシレート(Bisphenol A ethoxylate)、ビスフェノールAプロピルオキシレート(Bisphenol A propyloxylate)、ビスフェノールAプロピルオキシレート/エトキシレート(Bisphenol A propoxylate/ethoxylate)(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から)、ポリメグ(POLYMEG)(商標)650と1000(クエーカーオーツカンパニー(Quaker Oats Company)から)及びテラタン(TERATHANE)(商標)ポリオール(デュポン(DuPont)から)などのポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリbd(Poly bd)(商標)材料(エルフ・アトケム(Elf Atochem)から)などのヒドロキシル末端ポリブタジエン樹脂、第二級ヒドロキシル基を有するポリオキシアルキレンテトロールの「PeP」シリーズ(ワイアンドッテ・ケミカルズ社(Wyandotte Chemicals Corporation)から)、例えば、「PeP」450、550、及び650、トーン(TONE)(商標)0201、0210、0301、及び0310(ユニオンカーバイド(Union Carbide)から)などの約200〜約2000の範囲のMを有するポリカプロラクトンポリオール、パラプレックス(PARAPLEX)(商標)U−148(ローム&ハース(Rohm and Haas)から)、脂肪族ポリエステルジオール、ムルトロン(MULTRON)(商標)ポリ(エチレンアジパート)ポリオール(モベイケミカル社(Mobay Chemical Co.)から)などのポリエステルポリオール、M=900を有するヘキサンジオールカーボネートであるデュラカーボ(DURACARB)(商標)120(PPGインダストリーズ社(PPG Industries Inc.))などのポリカーボネートジオール、並びに同類のもの、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
好ましい非フッ素化いポリオールには、1,2−エタンジオール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、
1,3−及び1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−、1,5−、及び1,6−ヘキサンジオール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ジ(エチレングリコール)、トリ(エチレングリコール)、テトラ(エチレングリコール)、ジ(プロピレングリコール)、ジ(イソプロピレングリコール)、トリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)ジオール(約200〜約1500の数平均分子量)、ポリ(ジ(エチレングリコール)フタレート)ジオール(例えば、約350又は約575の数平均分子量を有する)、ポリ(プロピレングリコール)ジオール(約200〜約500の数平均分子量)、プルロニック(PLURONIC)(商標)L31(BASF社(BASF Corporation)から)などの、ポリ(エチレングリコール)とポリ(プロピレングリコール)とのブロックコポリマー、ポリカプロラクトンジオール(約200〜約600の数平均分子量)、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,6−、2,5−、2,6−、及び2,7−ジヒドロキシナフタレン、
4,4’−ビフェノール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、並びに同類のもの、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
より好ましい非フッ素化ポリオールには、1,2−エタンジオール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−及び1,6−ヘキサンジオール、ジ(エチレングリコール)、
トリ(エチレングリコール)、ポリ(ジ(エチレングリコール)フタレート)ジオール(例えば、約350又は約575の数平均分子量を有する)、ポリ(エチレングリコール)ジオール(例えば、約200、300、400の数平均分子量を有する)、ポリプロピレングリコール(例えば、約425の数平均分子量を有する)、二量体ジオール、ポリカプロラクトンジオール(例えば、約530の数平均分子量を有する)、3,5−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0061】
フルオロケミカル組成物の調製での使用に好適なポリアシル化合物及びこれらの誘導体(例えば、ジカルボン酸ハロゲン化物、ジカルボン酸無水物、及びジカルボン酸エステル)は、少なくとも1個の脂肪族、ヘテロ脂肪族(すなわち、窒素、酸素、又はイオウなどの、鎖中ヘテロ原子を含有する)、飽和脂環式、飽和ヘテロ脂環式、又は、ポリマー部分を含む。好ましくは、ポリアシル化合物は、天然状態で脂肪族である。
【0062】
種々の理由のために、アシル誘導体が場合によっては酸よりも好ましい。例えば、アシルハロゲン化物は相対的に高反応速度と、完了まで到達する傾向を有する反応との両方を提供する。得られるHClは揮発性であり、真空下で又は水洗浄によるなどの他の除去手段により取り除くことができる。
【0063】
多塩基酸が使用される場合には、p−トルエンスルホン酸又はトリフルオロメタンスルホン酸などの触媒を使用することができ、並びに、使用条件下で得られたフルオロケミカル組成物の分解を最小限にするために、反応が完了した後に除去可能又は非活性化可能(例えば、トリエチルアミン、CaO、などのような塩基との反応について)であるように選択することができる。
【0064】
好適なジカルボン酸及びジカルボン酸誘導体の代表例には、以下の酸及びこれらに対応するエステル、ハロゲン化物、並びに無水物、オクタデカン二酸(すなわち、Rは16である)、イコサン二酸(すなわち、Rは18である)及びドコサン二酸(すなわち、Rは20である)が挙げられ、最も好ましくは16個の炭素原子である。
【0065】
本発明のフルオロケミカル組成物を局所的な処置として使用する場合には、脂肪族ジカルボン酸(及びこれらの誘導体)が好ましい。
【0066】
エステル分子の混合物を含む本発明のフルオロケミカル組成物を調製するのに有用なフルオロケミカル一官能性化合物には、少なくとも1個のR基を含むものが挙げられる。R基は、直鎖、分枝鎖、又は環状フッ素化アルキレン基又はそれらのいずれかの組み合わせを含有できる。R基は、炭素−ヘテロ原子−炭素鎖(すなわち、ヘテロアルキレン基)を形成するために、所望により炭素−炭素鎖に1個以上のヘテロ原子(すなわち、酸素、硫黄、及び/又は窒素)を含有できる。完全にフッ素化された基が一般には好ましいが、2個の炭素原子毎に1個以下のいずれかの原子が存在するならば、置換基として水素又は塩素原子も存在することができる。いずれかのR基は、少なくとも約40重量%のフッ素、より好ましくは少なくとも約50重量%のフッ素を含有するのが更に好ましい。この基の末端部分は通常全てがフッ素化されており、好ましくは少なくとも3個のフッ素原子を含有し、例えば、CFO−、CFCF−、CFCFCF−、(CFN−、(CFCF−、SFCF−が挙げられる。ペルフルオロ化脂肪族基(すなわち、式C2n+1−のもの)(式中、nは1〜6(1及び6を含む)である)が好ましい。更に、フルオロケミカル一官能性化合物は室温よりも上の融点を有することが好ましい。室温で固体の又は結晶性のフルオロケミカル一官能性化合物から誘導されるオリゴマーは、より低い融点の化合物よりも高い接触角性能を呈することが分かっている。
【0067】
有用なフッ素含有一官能性化合物にはまた、下式IIの化合物が挙げられる:
Q’ (II)
式中、
は、1個〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、又は、存在する全てのペルフルオロカーボン鎖が6個以下の炭素原子を有する3個〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロヘテロアルキル基であり、
Q’は、(ポリアシル化合物の)末端アシル基又は(ポリオールの)ヒドロキシル基に対して反応性がある官能基を含む部分である。
【0068】
化合物RQ’がポリオール又はアシル化合物と反応して末端部分RQ−を供給することは式Iを参照することで理解されよう。
【0069】
Q’は、以下のフッ素含有モノアルコール、
【0070】
【表2】

【0071】
及び同類のもの、及びこれらの混合物を含んでもよく、式中、Rは、1個〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、又は存在する全てのペルフルオロカーボン鎖が6個以下の炭素原子を有する3個〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロヘテロアルキル基である。所望される場合には、このようなアルコールを使用せずに、同様のチオールを利用することができる。
【0072】
好ましいフッ素含有モノアルコールには、
2−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミド)エタノール、
2−(N−エチルペルフルオロブタンスルホンアミド)エタノール、
2−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミド)プロパノール、
N−メチル−N−(4−ヒドロキシブチル)ペルフルオロヘキサンスルホンアミド、1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロオクタノール、1,1−ジヒドロペルフルオロオクタノール、C13CF(CF)COCH(CH)OH、
n−C13CF(CF)CON(H)CHCHOH、COCOCFCHOCHCHOH、
CON(H)CHCHOH、1,1,2,2,3,3−ヘキサヒドロペルフルオロデカノール、
O(CF(CF)CFO)1〜36CF(CF)CHOH、CFO(CFCFO)1〜36CFCHOH、
−SONMeCOH、及び同類のもの、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
他の有用なフッ素含有化合物には、米国特許出願公開第2007/004895号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の段落[00010]に成分として記載されているものなどの官能性オリゴマーのフルオロアクリレート、及び、米国特許第7,214,736号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の式(I)及び(III)に記載されているものなどのフッ素化ポリエーテルが挙げられ、式中、Tは、アシル基又はヒドロキシル基と反応することができる反応性基である。
【0074】
フルオロケミカル一官能性化合物、RQ’は、フッ素含有モノカルボン酸の誘導体(エステル又は酸ハロゲン化物など)を含んでもよく、このフッ素含有カルボン酸には、(1)式R(CH(X)(CHC(O)OH(式中、Rは上記で定義された通りであり、n及びmは独立して0〜14(好ましくは0〜8、より好ましくは0〜4)の整数であり、Xは二価の酸素又はイオウであり、pは0又は1の整数である)を有するもの、並びに(2)式RQR’C(O)OH(式中、Rは上記で定義された通りであり、R’は1個〜約12個の炭素原子(好ましくは1個〜8個の炭素原子、より好ましくは1個〜約4個の炭素原子)を有する、二価のアルキル(直鎖又は分枝状)又はシクロアルキルラジカル、及び二価連結基Qは、−SON(R’’)−又は
−CON(R’’)−であり、式中、R’’は、1個〜約12個の炭素原子(好ましくは1個〜8個の炭素原子、より好ましくは1個〜約4個の炭素原子)を有する、一価のアルキル(直鎖又は分枝状)、シクロアルキル、又はアリールラジカルである)を有するものが挙げられる。
【0075】
フッ素含有モノカルボン酸の有用な誘導体の代表例には、ペルフルオロ酪酸(CC(O)OH)、ペルフルオロイソ酪酸((CFCFC(O)OH)、ヒドロペルフルオロ酪酸(CHC(O)OH)、ペルフルオロペンタン酸(CC(O)OH)、ヒドロペルフルオロペンタン酸(CHC(O)OH)、ペルフルオロヘキサン酸(C11C(O)OH)、ヒドロペルフルオロヘキサン酸(C10HC(O)OH)、ペルフルオロシクロヘキサニルカルボン酸(C11C(O)OH)、ペルフルオロヘプタン酸(C13C(O)OH)、ペルフルオロ(3−エトキシプロピオン酸)、
ペルフルオロ(3−プロポキシプロピオン酸)、ペルフルオロ(3−ブトキシプロピオン酸)、ペルフルオロ(3−ペントキシプロピオン酸)、R[OCF(CF)CF1〜6OCF(CF)C(O)OH(式中、Rは、1個〜12個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である)、4−(4−ペルフルオロイソプロポキシペルフルオロブチル)酪酸、
4−(ビス(ペルフルオロイソプロピル)フルオロメトキシ)ペルフルオロ酪酸、
12−(2−ペルフルオロイソプロポキシペルフルオロエチル)ドデカン酸、
6−(2−ペルフルオロシクロブトキシペルフルオロエチル)ヘキサン酸、
4−(ビス(ペルフルオロイソプロピル)フルオロメトキシ)ペルフルオロ酪酸、
4−(2−ビス(ペルフルオロイソプロピル)フルオロメトキシペルフルオロエチル)酪酸、
2−(N−(エチル)ペルフルオロブタンスルホンアミド)酢酸、及び
2−(N−(メチル)ペルフルオロブタンスルホンアミド)酢酸、及び同類のもの、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0076】
好ましいフッ素含有モノカルボン酸には、
2−(N−(エチル)ペルフルオロブタンスルホンアミド)酢酸、2−(N−(メチル)ペルフルオロブタンスルホンアミド)酢酸、及び同類のもの、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0077】
上記リストに関して、末端ヒドロキシル又はカルボキシル基は、式Iの連結基Qを形成するために(ポリアシル化合物の)末端アシル基と又は(ポリオールの)ヒドロキシル基と反応性がある他の官能基と置換されてもよいことが理解されよう。
【0078】
所望される場合には、モノアルコール又はモノカルボン酸などの非フッ素化一官能性化合物が、フッ素含有モノアルコール又はモノカルボン酸に加えて、総モノアルコール又はモノカルボン酸分量の一部として(例えば、総量の約50モル%までの量で)利用することができる。
【0079】
最も好ましいエステルオリゴマーは、1つ以上のフッ素化ポリオールと、(ポリオールと比較して)過剰量の1つ以上のジアシル化合物と、及び末端アシル基と反応するのに十分なフッ素化モノアルコールとの縮合反応生成物を含む。このような最も好ましいオリゴマーは、式IIIに対応する。
【0080】
Q[C(O)RC(O)ORO][C(O)RC(O)]QR (III)
式中、
nは1〜10の数(1及び10を含む)であり、
mは1であり、
は、1個〜12個、好ましくは6個以下の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、又は存在する全てのペルフルオロカーボン鎖が1個〜6個、好ましくは1個〜4個の炭素原子を有する3個〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロヘテロアルキル基であり、
Qは前述したような二価連結基であり、
同一又は異なってもよいRは15個〜20個の炭素原子の直鎖アルキレンであり、
は、ポリオールの残基である多価有機基であり、これは1個〜14個の炭素原子、好ましくは1個〜8個の炭素原子、より好ましくは1個〜4個の炭素原子、最も好ましくは2個の炭素原子の、直鎖若しくは分枝鎖アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はヘテロアルキレン基であり、少なくとも一部のR基は、1個のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロヘテロアルキル基、ペルフルオロヘテロアルキレン基、又はこれらの混合物で置換されているか又はこれらを含有する。
【0081】
フルオロケミカル組成物は更に、1個以上の重合可能基と、ヒドロキシル基と又はアシル基と反応性がある少なくとも1個の反応性基と、を含む重合可能な化合物の反応生成物を含む。重合可能基は、前述したように、反応性官能基によってフルオロケミカルエステルオリゴマーに組み込んでもよい。有用な重合可能基の例には、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、及びグリシジルが挙げられるが、これらに限定されない。重合可能基を有する代表的な有用化合物には、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ペンタエリスリトール(pentaerythriol)トリアクリレート、アリルアルコール、グリシドール、C(CH)C=NOH、CH=CHO(CHOH及びグリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0082】
エステル分子の混合物を含む本発明のフルオロケミカル組成物は、ポリオールと、一官能性化合物と、ポリアシル化合物と、所望により(d)1つ以上の重合可能化合物と、を単純にブレンドすることにより、製造することができる。当業者であれば理解するように、ブレンドの順番又は工程の順序付けは非限定的であり、所望のフルオロケミカル組成物を製造するために改善することができる。合成では、例えば、ポリアシル化合物と、ポリオールと、フッ素含有一官能性化合物(RQ’)と、所望により(d)1つ以上の重合可能な化合物と、溶媒とを、乾燥した反応容器にすぐに連続して又は予め作製した混合物として充填する。均質な混合物又は溶液が得られたら、触媒を典型的には添加し、反応混合物を加熱する。温度は通常、溶媒の沸点及び副生成物の沸点により決定される。水又はアルコールなどの副生成物は通常、共沸蒸留により除去される。
【0083】
フッ素含有一官能性化合物(RQ’)を使用して上式Iのフッ素含有エステルオリゴマーを調製する時、一官能性化合物及び/又はポリオールとポリアシル化合物とのモル比を変更して、モル重量を制御し、得られるポリエステルの特性を所望されるように調整することができる。
【0084】
反応条件(例えば、反応温度及び/又は使用されるポリアシル化合物)によって、ポリアシル化合物/ポリオール/一官能性化合物の混合物約0.5重量%までの触媒濃度を使用してもよいが、典型的には約0.00005重量%〜約0.5重量%が必要とされ、約0.02重量%〜約0.1重量%が好ましい。好適な触媒には、当該技術分野において既知であるもののような酸及び塩基エステル化触媒が挙げられる。有用な触媒には、パラ−トルエンスルホン酸及びCFSOHが挙げられる。酸触媒が使用される場合には、酸触媒は好ましくは、オリゴマーから除去されるか又はオリゴマー化後に中和される。触媒の存在は、接触角性能に悪影響を及ぼす場合があることが判明している。
【0085】
ポリオールの混合物及び/又は一官能性化合物の混合物を、単一のポリオール及び/又は単一の一官能性化合物の代わりに使用することができる。例えば、重合可能基を有するポリオールとR基を有するポリオールとを含むポリオール混合物を使用することができる。同様に、重合可能基を有する一官能性化合物とフッ素含有一官能性化合物とを含む一官能性化合物混合物を使用することができる。
【0086】
本発明のフルオロケミカル組成物は、当業者に既知の、エステル化及びエステル交換反応の手順並びに装置を使用することにより、調製することができる。例えば、フルオロケミカル組成物は、(a)フッ素含有一官能性化合物をポリオールとジアシル化合物(若しくは誘導体)とに同時に反応させること、(b)まずポリオールをポリアシル化合物(若しくは誘導体)と反応させ、次に得られた混合物をフッ素含有一官能性化合物に反応させること、あるいは(c)まずフッ素含有一官能性化合物をジアシル化合物(若しくは誘導体)と反応させるか又はフッ素含有一官能性化合物をポリオールと反応させるかのいずれかを行い、次に得られた混合物を残りの反応物質と反応させることにより、調製することができる。
【0087】
反応は、溶液中で又は溶融状態で(一般的に使用される溶媒及び/又は装置を使用する)、通常、大気圧下で及び溶液中又は溶融物中の反応物質を維持するのに十分な温度で、行うことができる。例えば、約90℃〜約240℃(好ましくは約100℃〜約210℃、より好ましくは約110℃〜約170℃)の範囲の溶融温度を通常利用することができる。存在する場合には、溶媒又は副生成物のHClの除去を、例えば、約67kPa(500torr)以下に相当する真空を使用して、減圧下で行うことができる。蒸留によるエステル化副生成物の除去は、トルエン、又は、ノベック(NOVEC)(商標)HFE−7100(商標)若しくはHFE−7200(商標)(3M社(3M Company)からの)のようなフッ素化エーテルなどの適切な溶媒の選択により影響されることがある。
【0088】
水が副生成物である場合には、ヘプタン若しくはトルエンなどの水不混和性炭化水素溶媒、フッ素化エーテル、又はペルフルオロカーボンが好ましい。副生成物が低級アルコールである場合には、ペルフルオロカーボンが好ましい。
【0089】
エステルオリゴマーの混合物を含む本発明のフルオロケミカル組成物は、バッチ法に加えて、工程別合成法に従って、製造することができる。合成では、ポリアシル化合物及びポリオールを乾燥条件下で、好ましくは溶媒中に、一緒に溶解し、次に、得られた溶液を前述のように加熱して、触媒の存在下で0.5時間〜2時間、好ましくは1時間にわたって混合する。
【0090】
次に、得られたエステルオリゴマーを上記の1つ以上の一官能性化合物と、更に反応させてもよい。一官能性化合物を上記反応混合物に添加してもよく、この一官能性化合物は、残りの若しくは相当部分の残りの、ヒドロキシル又はアシル基と反応する。上記の温度、乾燥条件、及び混合は0.5時間〜2時間、好ましくは1時間にわたって、続けられる。これにより、末端フッ素含有基を、ヒドロキシル又はアシル官能性エステルオリゴマー及び化合物に結合してもよい。これらのオリゴマー及び化合物は所望により、得られた混合物中に残っているヒドロキシル若しくはアシル基のいずれかを上記1つ以上の反応性重合可能基含有化合物と反応させることにより、上記重合可能基で更に官能化することができる。それゆえに、重合可能な化合物は、先行する添加の場合と同一の条件を用いて反応混合物に添加される。
【0091】
重合可能基含有化合物を添加して、上記工程のいずれかにおいて上記条件下で、ヒドロキシル基と又はアシル基と反応させることができる。例えば、上述のように、重合可能基含有化合物は、混合物として、ポリオールに添加することができる。あるいは、重合可能基含有化合物は、(a)ポリアシル化合物とのポリオールの反応後に、(b)モノアルコールとの混合物として、及び、(c)ポリアシル化合物との、ポリオール及び一官能性化合物の反応後に、添加することができる。重合可能基含有化合物がモノアルコールである時、好ましくはフッ素含有モノアルコールとの混合物として添加される。重合可能基含有化合物がジオールである時、好ましくはポリコールとの混合物として添加される。
【0092】
本発明の化学組成物が1個以上のカルボン酸基を有するエステルオリゴマーを含有する時、この組成物の水中での溶解度又は分散性は、カルボン酸基の塩を生成することにより、更に増大する。第三級アミン、第四級アンモニウム水酸化物、及び無機塩基などの、塩基性塩生成化合物には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、及び水酸化バリウムからなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されず、好適な分量で(すなわち、約6を超えるpHを維持するための分量で)使用することができる。これらの塩基性塩生成化合物は、エステルオリゴマー上の組み込まれた側枝及び/又は末端カルボン酸基塩を形成するために、好ましくは水相に添加するが、所望によりエステルオリゴマーの調製時に添加することができる。有用なアミン塩生成化合物の例には、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい塩生成化合物には、アンモニア、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びトリイソプロピルアミンからなる群から選択されるものが挙げられるが、それは、これらから調製される化学組成物がコーティング時及び硬化時に過剰に親水性ではないからである。カルボン酸基と組み合わせた水酸化カリウムなどの塩生成化合物の反応により形成される特定の塩はアシル基との所望されない反応を生じる恐れがあるため、ジオール、アルコール、及びシラン化合物の全てがポリアシル化合物のアシル基と反応した後に、水相に塩生成化合物を添加することが好ましい。
【0093】
特定の用途のために所望される場合、フルオロケミカル組成物の調製に、上記反応物質に加えて、少量の1つ以上のポリマー鎖延長剤又は非ポリマー鎖延長剤(例えば、ジアミン)を使用することができる。
【0094】
本発明のコーティング組成物は、水性懸濁液、水性エマルション、若しくは水溶液、又は、有機溶媒(若しくは有機溶媒/水)溶液、有機懸濁液、若しくは有機エマルションを含み、これらは本発明のフルオロケミカル組成物を含む。コーティング材として適用する時フルオロケミカルコーティング組成物は、多種多様な任意の基材に、撥油性及び撥水性、並びに/又は、染み放出性及び染み耐性を付与する。
【0095】
本発明のフルオロケミカル組成物は、種々の溶媒に溶解、懸濁又は分散して、本発明の化学組成物を基材上にコーティングする際に使用するのに好適なコーティング組成物を形成することができる。水性懸濁液、エマルション、又は溶液が通常好ましく、(成分の総重量を基準にして)約0.1重量%〜約50重量%の不揮発性固体分を含有することができる。組成物が適用されるべき基材によって、水は、環境問題を生じず、安全で非毒性として許容可能であるので、好ましい溶媒である。
【0096】
本発明の別の実施形態は、1つ以上の表面を有する基材から構成される物品であり、この基材の1つ以上の表面上には本発明のコーティング組成物から得られる硬化した塗膜がある。コーティング組成物の適用及び硬化後、この物品は、高い水動的接触角及びヘキサデカン動的接触角、撥油性及び撥水性、並びに/又は、染み放出性及び染み耐性を示す。
【0097】
本発明のコーティング組成物は、繊維性基材、皮革基材、及び硬質基材が挙げられるが、これらに限定されない多種多様な基材に適用することができる。繊維性基材の例示的な例には、織布生地、ニット生地、及び不織布生地(例えば、例として綿、亜麻布、ウール、絹、ポリエステル、ナイロン、及びこのような繊維のブレンドが挙げられる天然、合成、及び/又は天然/合成のブレンド)、積層体(例えば、ゴア(GORE)(商標)膜に使用されるような延伸ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)に結合されるナイロン又はポリエステル生地)、布、カーペット、及び紙が挙げられる。硬質基材の例示的な例には、ガラス、セラミック、メーソンリー、コンクリート、天然石、人工石、金属、木材、プラスチック、及び塗装表面が挙げられるが、これらに限定されない。基材は平坦な又は湾曲した表面を有することができ、そのうえ本来は粒子状であっても繊維性であってもよい。好ましい基材は繊維性であり、又は、液体を吸収することができ、それゆえに多孔質である。このような基材は特に染み及び汚れの影響を受けやすいが、また本発明のフルオロケミカル組成物から非常に利益を受けやすくもあり、これはこのコーティング組成物が繊維性又は多孔質の基材表面の中に浸透して、基材の内側表面に広がることができるからである。
【0098】
このコーティング組成物でコーティングすることができる基材の代表例には、眼科眼鏡に使用されるレンズ、サングラス、光学機器、照明装置、腕時計水晶、及び同類のもの、プラスチック窓透明板(plastic window glazing)、表示板(signs)、壁紙及びビニル床材などの修飾面、フォルミカ(FORMICA)(商標)ブランドのシート材又は積層床材(例えば、パーゴ(PERGO)(商標)ブランド床材)などの複合又は積層基材、セラミックタイル及び据付器具(シンク、シャワー、トイレ)、天然及び人工石、装飾用石材及び敷石、セメントと石材の、歩道及び自動車路、グラウトを構成する粒子又は適用されたグラウトの仕上げ面、木製家具表面(デスクトップ、テーブルトップ)、キャビネット表面、木製の床材、デッキ材、及びフェンス材、皮革、紙、繊維ガラス生地及び他の繊維含有生地、布、カーペット材、ドレープ生地、室内装飾材料、衣服、及び同類のものが挙げられる。
【0099】
このコーティング組成物から調製される塗膜は金属表面を汚れ耐性にすることができ、装飾金属片及びミラー上のもののような金属表面の光学特性をより長く保存することができる。このコーティング組成物は木製表面に飲食物の汚れに対してより大きな耐性を持たせることができる一方で、光沢外観を維持する助けとなる。加えて、このコーティング組成物は、飛行機の翼、ボートの船殻、釣り糸、医療用表面、及びサイディング材として適用することができ、食物剥離、溶融物剥離、粘着物剥離の用途、及び同類のものに使用することができる。装飾用石材には、例えば、大理石、花崗岩、石灰岩、スレート、及び同類のものが挙げられる。
【0100】
本発明のコーティング組成物でコーティングすることができる好ましい基材は、不織布、ニット、及び織布生地、積層体、カーペット、ドレープ生地、室内装飾材料、衣服、及び本質的にあらゆる布などの繊維性基材である。撥水/撥油性、及び/又は染み耐性を1つ以上の表面を有する基材に付与するために、(a)本発明のコーティング組成物を基材の1つ以上の表面上に適用し、(b)このコーティング組成物を周囲温度で又は好ましくは高温で硬化(すなわち、乾燥)させておく。高温の使用は、本発明のフルオロケミカル組成物でコーティングされた繊維性基材を硬化させるのに特に有利であるが、それはこれにより最良の撥水/撥油性が達成されるからである。約50℃〜約175℃の高温が好ましく、約100℃〜約170℃が典型的にはより好ましい。
【0101】
コーティング組成物は、例えば、噴霧、パディング、浸漬、ロールコーティング、ブラッシング、又は染着などの標準的な方法(所望により、任意の残っている水又は溶媒を除去するために処理済基材を乾燥する工程が続く)により、処理可能な基材に適用することができる。処理可能な基材は、型成形又は吹込成形された物品の形態の、シート、繊維(そのような形態又は凝集形態、例えば、織糸、トゥ(toe)、ウェブ、粗紡)、織布又は不織布生地、フィルムなどであることができる。適切なサイズの平らな基材をコーティングする時、ナイフコーティング又は棒コーティングを使用して基材の均一な塗膜を確保してもよい。所望される場合には、フルオロケミカル組成物は、例えば、スピン仕上剤又は繊維潤滑剤といった従来の繊維処理剤と共に一緒に適用することができる。このような局所的処理プロセスは、追加の溶媒を用いない純粋なフルオロケミカル組成物の使用を含むことができ、これはフルオロケミカル組成物の有機溶媒溶液の使用に関する環境的観点から好ましい。
【0102】
コーティング組成物は、特定の適用のための所望される撥水/撥油性を達成するために好適な分量で適用することができる。この分量は経験的に決定することができ、処理可能な基材の特性を危険に曝すことなく撥水/撥油性を達成するために、必要又は所望に応じて調整することができる。
【0103】
コーティング組成物は任意の所望される厚さで基材に適用することができる。数マイクロメートル程度の厚さの塗膜は、非常に低い表面エネルギー、染み耐性、及び染み放出性を提供することができる。しかしながら、より厚い塗膜(例えば、約20マイクロメートルまで又はそれ以上)もまた使用することができる。より厚い塗膜は、比較的高濃度の本発明の化学組成物を含有するコーティング組成物の単一のより厚い層を基材に適用することによって、得ることができる。より厚い塗膜はまた、比較的低濃度の本発明のフルオロケミカル組成物を含有するコーティング組成物の連続層を基材に適用することによっても、得ることができる。後者は、コーティング組成物の層を基材に適用して乾燥させてから、次に連続する層を適用することによって、行うことができる。次に、塗膜の連続層は乾燥した層に適用することができる。この手順は、所望される塗膜厚さが達成されるまで反復することができる。
【0104】
溶融加工によりポリマー溶融ブレンドを形成するために、フルオロケミカル組成物は、例えば、ペレット状若しくは粉末状のポリマーと共に完全に混合して、次に、例えば、型成形、溶融吹込、溶融紡糸、又は溶融押出成形などの既知の方法により、溶融加工することができる。フルオロケミカル組成物は、ポリマーと直接混合することができ、又は、ポリマーの中におけるフルオロケミカル組成物の「マスターバッチ」(濃縮物)の形態でポリマーと混合することができる。所望される場合には、フルオロケミカル組成物の有機溶液は、粉末状又はペレット状のポリマーと共に混合することができ、その後、乾燥(溶媒を除去するために)及び続いて溶融加工が行われる。あるいは、フルオロケミカル組成物は、溶融したポリマー流に射出して、ブレンドを形成することができ、その直後に、例えば、繊維若しくはフィルムへの押出成形又は物品への型成形が行われる。
【0105】
溶融加工後に、焼きなまし工程を実行して撥水/撥油特性を向上させることができる。このような焼きなまし工程に加えて又はその代わりに、(例えば、フィルム又は繊維の形態の)溶融加工された混合物を2つの加熱されたロールの間でエンボス加工することができ、これらのロールの一方又は両方は模様付きであることができる。焼きなまし工程は典型的には、ポリマーの溶融温度より下で(例えば、ポリアミドの場合、約30秒間〜約5分間にわたって約150℃〜約220℃で)行われる。
【0106】
フルオロケミカル組成物は、特定の用途に所望される撥水/撥油性を達成するのに十分な分量で熱可塑性又は熱硬化性ポリマーに(あるいは、代替的に、他の処理可能な基材材料に)添加することができる。この分量は経験的に決定することができ、ポリマー(又は他の処理可能な基材)の特性を危険に曝すことなく撥水/撥油性を達成するために、必要又は所望に応じて調整することができる。通常、フルオロケミカル組成物は、ポリマー(又は他の処理可能な基材)の重量に基づいて、約0.1重量%〜約10重量%(好ましくは約0.5重量%〜約4重量%、より好ましくは約0.75重量%〜約2.5重量%)の範囲の分量で添加することができる。
【0107】
成形された物品は、本発明の撥水/撥油性組成物から製造することができ、このような構造物はある程度の撥水/撥油性が必要とされる任意の用途において有用性が認められる。例えば、本発明の組成物は、フィルム及び型成形若しくは吹込成形された物品、並びに、織布、ニット、及び不織布生地を製造するのに使用することができる繊維(例えば、マイクロ繊維及びシースコア繊維などの溶融吹込若しくは溶融紡糸された繊維)を調製するのに使用することができる。このようなフィルム、型成形若しくは吹込成形された物品、繊維、及び生地は、種々の環境条件下で撥水/撥油性(及び汚れ耐性)を呈し、種々の用途に使用することができる。
【0108】
例えば、本発明の組成物を含む型成形された物品は標準的な方法によって(例えば、高温射出成形によって)調製することができ、例えば、自動車のヘッドランプカバー、レンズ(眼鏡レンズなど)、電子装置(例えば、コンピュータ)のケース又は回路板、ディスプレイ装置用スクリーン、窓(例えば、飛行機の窓)、及び同類のものとして特に有用である。本発明の組成物を含むフィルムは、当該技術分野において一般的に採用される任意のフィルム製造法により製造することができる。このようなフィルムは無孔質又は多孔質であることができ(後者には機械的に穿孔されたフィルムが挙げられる)、穿孔の存在及び程度は、所望される性能特性により選択される。このフィルムは、例えば、写真フィルム、オーバーヘッドプロジェクターで使用するための透明フィルム、テープ裏材、塗膜用基材、及び同類のものとして使用することができる。
【0109】
本発明の組成物を含む繊維は、例えば、医療用生地、医療用及び工業用服、布を製造するのに使用するための生地、ラグ若しくはカーペットなどの家の内装、抄紙用具、及び化学プロセスフィルター若しくは呼吸用マスクなどの濾材を製造するのに使用することができる織布、ニット、又は不織布生地を製造するのに使用することができる。不織布ウェブ又は生地は、溶融吹込又はスパンボンドウェブのいずれかの製造で使用される工程により調製することができる。例えば、ヴェンテ(Wente)により「超微細熱可塑性繊維(Superfine Thermoplastic Fibers)」(インダストリアル&エンジニアリングケミストリー(Indus. Eng’g Chem.)48巻、1342頁、1956年)で、又はヴェンテ(Wente)らにより「超微細有機繊維の製造(Manufacture of Superfine Organic Fibers)」(海軍研究所報告書(Naval Research Laboratories Report)第4364号、1954年)で記述されているものに類似するプロセスを使用することができる。不織布生地から製造される多層構造物は、例えば、医療用生地のような幅広い産業的及び商業的有用性を有する。このような多層構造物の構成層の構成は、所望される最終用途の特性により変更することができ、構造物は、本明細書に参照により組み込まれている米国特許第5,145,727号(ポッツ(Potts)ら)及び同第5,149,576号(ポッツら)に記載されているもののような多くの有用な組み合わせで、2層以上の溶融吹込及びスパンボンドされたウェブを含むことができる。多層構造物では、フルオロケミカル組成物は1層以上で単独で使用することができ、又は、1層以上で他の添加剤と共に組み合わせて使用することができる。あるいは、フルオロケミカル組成物及び他の添加剤は、1層以上で互いに独立分離させることができる。例えば、スパンボンド/溶融吹込/スパンボンド(「SMS」)の3層構造物では、構造物全体に静電防止及び撥水/撥油性の両方を付与するために、他の添加剤(例えば、静電防止剤)を一方又は両方のスパンボンド層で使用することができ、フルオロケミカル組成物を溶融吹込層で使用することができる。
【0110】
撥水/撥油性を付与するフルオロケミカルポリマー組成物にはまた、塗膜への添加剤としての有用性を認めることができる。このような塗膜は、撥水及び撥油性並びに引掻耐性(並びに汚れ耐性)であることができ、写真産業において、又は、工学若しくは磁性記録媒体用保護塗膜として、使用することができる。
【0111】
所望される場合には、本発明の撥水及び撥油性組成物は更に1つ以上の添加剤を含有することができ、これらには当該技術分野において一般的に使用されるもの、例えば、染料、顔料、抗酸化剤、紫外線安定剤、防燃剤、界面活性剤、可塑剤、粘着付与剤、充填剤、及びこれらの混合物が挙げられる。特に、性能増進剤(例えば、ポリブチレンなどのポリマー)は、例えば、溶融添加剤ポリオレフィンの適用において、撥水/撥油性を付与するために利用することができる。
【実施例】
【0112】
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。実施例では、重量%及び重量部が示され、これらは特に指示がない限り、組成物全体の重量に基づく。
【0113】
材料
ODDA−オクタデカン二酸、HO(O)C(CH16C(O)OH、コグニス社(Cognis Corporation)(オハイオ州シンシナティ(Cincinnati))から。
【0114】
TDDA−テトラデカン二酸、HO(O)C(CH12C(O)OH、キャセイ・インダストリアル・バイオテック社(Cathay Industrial Biotech Ltd)(オハイオ州パウエル(Powell))から。
【0115】
FBSEE−CSON(COH)、等モル量のCSONHをC17SONHに代用すること、並びに、CSONHが、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド(「PBSF」)を等モル量のNHと反応させることにより調製することができることを除いて、米国特許第3,787,351号(オルソン(Olson))の実施例8に記載されているように調製することができる。
【0116】
MeFBSE−CSON(CH)CHCHOH、当量357を有し、米国特許第2,803,656号(アールブレヒト(Ahlbrecht)ら)の実施例1に記載されているような手順を使用して、PBSFをメチルアミン及びエチレンクロロヒドリンと反応させることにより2段階で製造することができる。
【0117】
C6テロマー−クラリアント社(Clariant Corporation)からのフロウェット(FLOWET)(商標)EA 600。
【0118】
C4テロマー−TCIアメリカ(TCI America)(オレゴン州ポートランド(Portland))からの1H,1H,2H,2H−ノナフルオロ−1−ヘキサノール。
【0119】
SA−ステアリルアルコール(オクタデカノール)。
【0120】
エトクァッド(ETHOQUAD)(商標)C12−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド(HO中75%)、アクゾ−ノーベル(Akzo-Nobel)から。
【0121】
アーモキュア(ARMOCURE)(商標)VGH−70、アクゾ−ノーベル(Akzo-Nobel)から。
【0122】
タージトール(TERGITOL)(商標)15−S−30−C12〜16アルキルポリオキシエチレン(30 EO)界面活性剤、ローム&ハース(Rohm & Haas)から。
【0123】
タージトール(TERGITOL)(商標)TMN−6−トリメチルノナンポリオキシエチレン(6 EO)界面活性剤、ローム&ハース(Rohm & Haas)から。
【0124】
MIBK−メチルイソブチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン。
【0125】
試験方法
噴霧評点(噴霧)
処理済基材の噴霧評点は、処理済基材上に衝突する水に対する動的な撥水性を示す値である。撥水性は、繊維化学染色協会(AATCC)の2001年技術マニュアル(the 2001 Technical Manual of the American Association of Textile Chemists and Colorists(AATCC))に公開されている試験方法22−1996により測定し、試験された基材の「噴霧評点」で表現した。噴霧評点は、15cmの高さから基材上に250mLの水を噴霧することにより得た。濡れ模様は0〜100のスケールを使用して視覚的に等級付けしたが、ここで0は完全な濡れを意味し、100は濡れが全く存在しないことを意味する。
【0126】
撥油性(OR)
基材の撥油性は、繊維化学染色協会(American Association of Textile Chemists and Colorists)(AATCC)標準試験法No.118〜1983によって測定した。その試験は、異なる表面張力の油による浸透への処理済基材の抵抗に基づいていた。NUJOL(登録商標)鉱物油(試験油のうちで最低の浸透性)に対してのみ耐性の処理済基材には1の評点を与え、これに対して、ヘプタン(試験液のうちで最高の浸透性)に対して耐性の処理済基材には8の評点を与えた。他の中間の値は、下表に示しているような、他の純粋油又は油の混合物を使用して決定した。
【0127】
【表3】

【0128】
ブンデスマン(Bundesmann)試験
動的撥水性性能を評価するために、処理済基材に対する雨滴の浸透性を、ブンデスマン試験法(DIN 53888)を使用して測定した。この試験では、処理済基材を模擬降雨に曝すが、その間、基材の裏側は擦られている。上部の露出された表面の外観を1分、5分及び10分後に目視検査し、1(表面が完全に濡れている)〜5(表面上に水が残っていない)の間の評点を与えた。概して、ブンデスマン試験は、試料について最初の噴霧評点が95以上であった場合にのみ行われた。
【0129】
洗浄手順
以下に記載する手順を使用して、下記実施例において5L(5回洗濯)として表す処理済基材試料を調製した。
【0130】
処理済基材のほぼ正方形の400cm〜約900cmのシートの230g試料をバラスト試料(ほぼ正方形の縁取りされた8100cmのシートの形状である226.8g(8オンス)の生地1.9g)と共に洗濯機の中に置いた。市販の洗剤(サプトンブランド洗剤(SAPTON Brand Detergent)、ヘンケル(Henkel)(ドイツ)から、46g)を添加し、洗濯機に温水(40℃±3℃)を高水位まで充填した。基材及びバラスト負荷を、12分の通常洗浄サイクルを使用して5回洗浄し、続けて5回のすすぎサイクル及び遠心分離にかけた。試料は反復サイクルの間は乾燥させなかったが、最終サイクル後に乾燥させた。
【0131】
(実施例1)
攪拌棒、加熱器、及びディーンシュタークトラップを備えた丸底反応フラスコに、ODDA(30g、0.095モル)、FBSEE(27.5g、0.071モル)、MeFBSE(17.01g、0.048モル)、トルエン(100g)及びメタンスルホン酸(1g)を添加した。得られた混合物を115℃で15時間にわたって還流させておいた。所望される量の水(3g)を採取する時に、温度を80℃に下げた。次に、KCO(2〜3g)を添加し、混合物を更に30分間にわたって撹拌した。FTIR分析は、ヒドロキシルピークが全く存在しないことを示した。次に混合物を熱濾過し、溶媒を回転蒸発により除去した。
【0132】
(実施例2〜5、7)
他のポリエステル組成物を調製し、表1及び2に示されているような成分及び比率を有することを除いては、実施例1に類似した手順を使用して試験した。
【0133】
(実施例6)
攪拌棒、加熱器、及びディーンシュタークトラップを備えた丸底反応フラスコに、ODDA(10.47g、0.033モル)、FBSEE(9.625g、0.025モル)、MeFBSE(2.975g、0.008モル)、C4MHスペーサーオリゴマーアルコール(20.37g、0.008モル)(米国特許第2007/0004895(A1)号(2007年1月4日公開)に記載されているように調製される、SPOL 2と同一の物質)、トルエン(150g)及びメタンスルホン酸(1g)を添加した。得られた混合物を115℃で15時間にわたって還流させておいた。所望される量の水(3g)を採取する時に、温度を80℃に下げた。次に、KCO(2〜3g)を添加し、混合物を更に30分間にわたって撹拌した。FTIR分析は、ヒドロキシルピークが全く存在しないことを示した。次に混合物を熱濾過し、溶媒を回転蒸発により除去した。
【0134】
比較例C1
ODDAがTTDAに代わることを除いて実施例1と同一のモル比を使用して、C14−ポリエステルを製造した。
【0135】
エマルシジョン調製及び適用
下記のC18ポリエステルエマルション(実施例1〜7):得られたポリマー固体(20g)にMIBK(50g)を添加し、混合物を65℃に加熱した。別個のビーカーの中で、エトクァッド(ETHOQUAD)C12(0.53g)、タージトール(TERGITOL)15−S−30(0.6g)及びTMN−6(1.2g)を水(100g)に添加した。この混合物を撹拌して、65℃に加熱した。MIBK中のポリマーをこの撹拌溶液にゆっくりと添加した。次に、混合物を4分間にわたって超音波処理し、溶媒を回転蒸発により除去した。エマルションをポリエステル及びナイロン試験生地上に0.6%SOF(繊維上の固形分)パッド適用を介して適用し、続けて160℃で1.5分間硬化させた。
【0136】
下記のC18ポリエステル乳化(実施例8):使用された界面活性剤がアーモキュア(ARMOCURE)(商標)VGH−70(0.85g)、TMN−6(0.9g)及び共溶媒ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(7.5g)であることを除いて同一の手順を使用してエマルションを調製した。
【0137】
下記のC14ポリエステル乳化(比較例C1):共溶媒ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(7.5g)が水相に添加されていることを除いて、同一の手順を使用してエマルジョンを調製した。
【0138】
性能結果
21.1℃(70°F)及び60%RHでの24時間の調整後に、初期性能結果を得た。上記のような40℃での初期処理済生地の5回洗濯後に耐久性能を測定した。性能結果を表1(ナイロン生地)及び表2(ポリエステル生地)に提供する。
【0139】
【表4】

【0140】
【表5】

【0141】
100%綿生地上へのエマルジョンのパッド適用により、以下の性能比較を行った。生地の固形分(SOF)は0.9%であるように目標設定した。結果からC18−ポリエステル(実施例8)が比較のC14−ポリエステル(比較例C1)よりも高い動的撥水性を示すことが明らかである。
【0142】
【表6】

【0143】
(実施例9及び10)
実施例9及び10は、積層体基材上での本発明の使用を例示する。示された積層体に本発明のC18実施形態の2.5%SIB負荷を適用した。
【0144】
オリゴマー組成物を下記のように製造した。攪拌棒、加熱器、及びディーンシュタークトラップを備えた丸底反応フラスコに、ODDA(30g、0.095モル)、FBSEE(27.5g、0.071モル)、MeFBSE(17.01g、0.048モル)、ヘプタン(100g)及びメタンスルホン酸(1g)を添加した。得られた混合物を100℃で5時間にわたって還流させておいた。所望される量の水(3g)を採取する時に、温度を80℃に下げた。次に、トリエチルアミン(1.10g)を添加し、混合物を更に30分間にわたって撹拌した。次にヘプタンを蒸留により除去した。3つ首500mL丸底フラスコ内で、残っているポリエステル固形分の試料(40グラム)を80グラムのメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解する。混合物を65℃に加熱した。別個に、200グラムの脱イオン水に、1.71グラムのVGH−70(70%固形分)、2.1gのタージトール(TERGITOL)(商標)TMN−6(90%固形分)及び15gのジプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加した。水混合物を65℃に加熱し、次にポリエステル混合物を急速に撹拌しながらゆっくりと添加した。15分間にわたる混合後、フラスコの内容物を2回にわたって17.2MPa(2500psig)の圧力下でホモジナイザーに通過させた。得られたエマルションから35℃での真空蒸留によりMIBKを失わせた。得られたエマルションは18.5%固形分であった。
【0145】
実施例9では、基材は、W.L.ゴア&アソシエーツ社(W. L. Gore and Associates, Inc.)(メリーランド州エルクトン(Elkton))から入手される、モノリシックウレタンコーティングで部分的に浸透されている35g/mの延伸PTFE(80%の有孔率)膜に結合した86g/mの織布ナイロン生地の2層積層体であった。
【0146】
実施例10では、基材は、W.L.ゴア&アソシエーツ社(W. L. Gore and Associates, Inc.)(メリーランド州エルクトン(Elkton))から入手される、モノリシックウレタンコーティングで部分的に浸透されている35g/mの延伸PTFE(80%の有孔率)膜に結合した78g/mの織布ポリエステル生地の2層積層体である。
【0147】
以下の性能を得た。
【0148】
【表7】

【0149】
本発明の様々な改良及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のオリゴマーを含むフルオロケミカルエステル組成物であって、各オリゴマーが(i)少なくとも1個の長鎖フッ素含有繰り返し可能単位と、(ii)少なくとも1個のフッ素含有末端基とを含み、前記化合物又はオリゴマーが、
(a)1つ以上のフッ素化ポリオールと、
(b)17個以上の炭素原子を含有する1つ以上のポリアシル化合物と、
(c)前記ポリオール(a)のヒドロキシル基と、又は前記ポリアシル化合物(b)のアシル基と反応性がある官能基を含む1つ以上の1官能性フッ素含有化合物と、の縮合反応生成物を含む、フルオロケミカルエステル組成物。
【請求項2】
1個以上の重合可能基と、少なくとも1個の求電子性又は求核性部分とを含む1つ以上の重合可能な化合物の反応生成物を更に含み、前記重合可能基が独立に、前記繰り返し単位からの側枝又は末端部分である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項3】
前記重合可能基が、アクリレート、メタクリレート、ビニルアリル、及びグリシジル基からなる群から選択される、請求項2に記載の重合可能オリゴマー。
【請求項4】
式(I)を有し、
Q[OR[OC(O)RC(O)ORO][C(O)RC(O)]
(I)
式中、
oは0〜1の数(0及び1を含む)であり、
nは1〜10の数(1及び10を含む)であり、
mは0〜1の数であり(0及び1を含む)、
は、1個〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、又は、存在する全てのペルフルオロカーボン鎖が1個〜6個を有する3個〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロヘテロアルキル基であり、
Qは二価連結基であり、
は、ポリアシル化合物の残基である同一又は異なる多価有機基であり、これは15個〜20個の炭素原子からなる直鎖又は分枝状又は不飽和鎖アルキレン基であり、
は、ポリオールの残基である同一又は異なる二価有機基であり、その少なくとも一部は1個以上のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロヘテロアルキル基、ペルフルオロヘテロアルキレン基、若しくはこれらの混合物で置き換えられているか又はこれらを含有し、並びに、
Tは、RQか、又は、ポリアシル化合物と若しくはポリオールと反応できる、非フッ素含有一価化合物か、である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項5】
Qが下記構造から選択され、式中、各kが独立に0〜20の整数であり、R1’が水素、フェニル、又は1個〜4個の炭素原子のアルキルであり、R2’が1個〜20個の炭素原子のアルキルである、請求項4に記載のオリゴマー。
【表1】

【請求項6】
式(III)を有し、
Q[C(O)RC(O)ORO][C(O)RC(O)]QR(III)
式中、
nは1〜10の数(1及び10を含む)であり、
mは1であり、
は、1個〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、又は、存在する全てのペルフルオロカーボン鎖が1個〜6個を有する3個〜50個の炭素原子を有するペルフルオロヘテロアルキル基であり、
Qは二価連結基であり、
は15個〜22個の炭素原子の直鎖アルキレンであり、
は、ポリオールの残基である多価有機基であり、これは1個〜14個の炭素原子の、直鎖若しくは分枝鎖アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はヘテロアルキレン基、又は6個〜12個の炭素原子のアリーレン基であり、少なくとも一部のR基は、1個のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロヘテロアルキル基、ペルフルオロヘテロアルキレン基、又はこれらの混合物を含有する、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項7】
前記オリゴマーが1つ以上のフッ素化ポリオールと、1つ以上の非フッ素化ポリオールと、1つ以上のポリアシル化合物と、1つ以上の一官能性フッ素含有化合物との縮合反応生成物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記オリゴマーが1つ以上のフッ素化ポリオールと、(前記ポリオールと対して)過剰量の1つ以上の直鎖アルキレンジアシル化合物と、末端アシル基と反応するのに十分なフッ素化モノアルコールとの縮合反応生成物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリオールのフッ素含有基が6個以下の炭素原子のペルフルオロアルキル基である、請求項1に記載のフルオロケミカル組成物。
【請求項10】
前記ポリオールのフッ素含有基が3個〜5個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である、請求項1に記載のフルオロケミカル組成物。
【請求項11】
前記ポリオールのフッ素含有基がペルフルオロブチルのペルフルオロアルキル基である、請求項1に記載のフルオロケミカル組成物。
【請求項12】
前記一官能性フッ素含有化合物が下式(II)の化合物であり、
Q’
(II)
式中、
は、1個〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、及び、存在する全てのペルフルオロカーボン鎖が6個以下の炭素原子を有する3個〜50個の炭素原子を有するペルフルオロヘテロアルキル基からなる群から選択され、
Q’は前記ポリアシル基の末端アシル基と又は前記ポリオールの末端ヒドロキシ基と反応性のある官能基である、請求項1に記載のフルオロケミカル組成物。
【請求項13】
Q’がヒドロキシル、第二級アミノ、オキサゾリニル、オキサゾロニル、アセチル、アセトニル、カルボキシル、イソシアナト、エポキシ、アジリジニル、チオ、エステル及びハロゲン化アシル基から選択される、請求項12に記載の一官能性フッ素含有化合物。
【請求項14】
前記フルオロケミカルオリゴマーが更に、1つ以上の非フッ素化ポリオールの反応生成物を含む、請求項1に記載のフルオロケミカル組成物。
【請求項15】
(a)溶媒と
(b)請求項1に記載のフルオロケミカル組成物とを含む混合物を含む、コーティング組成物。
【請求項16】
前記混合物が水溶液、分散液又は懸濁液を含む、請求項15に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
1つ以上の表面上に請求項1に記載のフルオロケミカル組成物の塗膜を有する基材を含む物品。
【請求項18】
前記フルオロケミカル組成物が、更に1個以上の重合可能基を含む、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記基材が硬質基材及び繊維性基材からなる群から選択される、請求項17に記載の物品。
【請求項20】
前記基材が積層体である、請求項17に記載の物品。
【請求項21】
前記基材の1つ以上の表面上に請求項17に記載のコーティング組成物を塗布する工程、及び周囲温度又は高温で前記コーティング組成物を硬化する工程を含む、基材に撥水/撥油性を付与する方法。

【公表番号】特表2010−529263(P2010−529263A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511376(P2010−511376)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/066170
【国際公開番号】WO2008/154414
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】