説明

ペレットの微粉除去装置

【課題】固相重合して重合度を上げたペレットを用いて溶融紡糸した際に、繊維に発生する繊径斑や単糸切れ等の不良を改善することができるペレットの微粉除去装置を提供する。
【解決手段】微粉が付着したペレットを受け入れるケーシング1と、前記ペレットを輸送するためにケーシング内に気体による旋回流を発生させるペレット供給管2と、ペレットから分離した微粉を吸引除去する上部微紛吸引部3と、ペレットと微粉を分離して微粉のみを通過させるメッシュフィルター4と、該メッシュフィルター4を通過した微粉を吸引するための下部微粉吸引部5と、前記部粉が付着したペレットを衝突させると共に、その軸心が前記ケーシングの軸心と同軸上にあって、且つ前記ケーシングの内部に設けられた頭頂部が円錐状の内部仕切筒6と、前記ケーシングと前記内部仕切筒6の間に上昇流を発生させるための空気供給部7とを備えたペレットの微粉処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用あるいは工業資材用に供される熱可塑性合成繊維、特には細繊度のモノフィラメントの品質を向上させることができるペレットの微粉除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融紡糸によって熱可塑性合成繊維を製造する際の原料であるポリエステルなどの高分子重合体(以下、単に「ポリマー」という)は、連続重合に引き続いて直接溶融紡糸などの成形工程に供されて繊維化されることもあるが、ペレタイズ工程において、重合したポリマーを棒状あるいはフィルム状に押し出し、押し出したポリマーを所定の大きさにカットして一旦ペレット化されることが多い。
【0003】
このようにして一旦ペレット化されたポリマーは、通常ペレット状態のままで乾燥されることが多く、この乾燥工程では、例えば、ポリマーがポリエチレンテレフタレート(PET)の場合、含水率が50ppm以下になるまで乾燥させられる。特に、ポリエステルでは、溶融したポリマーが水分と接触すると加水分解が生じる。したがって、これを回避するには、加水分解を抑えるために、ペレタイズ工程で得られたペレットの含水率を低下させなければならない。
【0004】
このような理由から乾燥させて含水率を低減させたペレットは、次いで、加熱しながら重合度を更に上げることを目的として、固相重合処理が行われる。この固相重合は、ペレット状態のままで減圧下あるいは不活性ガスの雰囲気下で加熱して、ポリマーの重合度を更に上げて、ポリマーの固有粘度を上げると共に、高結晶化してポリマーの物性を上げる極めて有用な処理である。
【0005】
一般に、このような固相重合処理によって重合度を上げたペレットを用いて高物性を有する繊維を得るために、固相重合後のペレットを溶融押出機に供給して再溶融した後、溶融したポリマーを溶融紡糸装置へギヤポンプなどの連続計量手段を用いて連続的に定量供給して、紡糸口金パックから紡出して繊維化する。
【0006】
前述の固相重合処理に際して、ペレットを静止状態のまま処理すると、加熱されたペレット同士が互いに融着してしまうというような事態が起こるので、これを回避するために、特に固相重合中のペレットは、通常、低回転数で撹拌したり、容器ごと回転させたりして常に流動状態におかれている。
【0007】
このように、攪拌などによってペレットを流動化させると、ペレット同士が擦れ合い、ペレタイズ工程におけるカッティング時に生じたペレットのバリや角部が脱離して、粉状物や小片(以下、このような「粉状物や小片」を「微粉」という)が発生する。このとき生じた微粉はペレットに同伴して溶融押出機に供給されて再溶融された後、溶融紡糸装置へ送られて紡糸口金パックから紡出されて繊維化される。
【0008】
しかしながら、前述の微粉は、正常ペレットに対し、結晶化度や粘度が上昇しているため、押出機において溶融した際、微粉は溶融することができず、溶融ポリマー中に未溶融部分として存在する。このため、得られた繊維には局部的な繊径斑が発生して品質の低下を招いたり、製糸工程における単糸切れや断糸を惹起するような事態が生じる。特に細繊度のモノフィラメントの製糸工程においてこの問題が顕著となる。
そこで、このような繊度斑や製糸工程の悪化を低減するための方策として、紡糸口金パックあるいは紡出繊維の冷却装置を改良しようとする試みが多くなされている。
【0009】
例えば、特許文献1(特開2004−300616号公報)では、紡糸口金パック内に静的混練器を設置すると共に、静的混練器の下部に濾過層を設け、更に、紡出された繊維を冷却斑が生じないように均一に冷却するために、ポリマー吐出孔の配置や冷却風を吹き付ける条件などを適正化させる提案がなされている。しかしながら、この従来技術では、紡糸口金パックの構造と紡糸条件の適正化を図ることによって問題を解決しようとするものであって、これ以外の問題については全く配慮されていない。
【0010】
別の技術として、特許文献2(特開平5−104523号公報)では、押出機直上に微粉除去装置を設置し、押出機直前で微粉を除去することが提案されている。確かに、押出機直前で微粉を大部分除去できれば、溶融ポリマー中の未溶融部を排除でき、製糸工程での問題は解決するはずである。
【0011】
しかしながら、この従来技術における微粉除去装置の構成では、微粉除去は十分でなく、特に固相重合処理によって重合度を上げたペレットを用いた細繊度モノフィラメントの製糸工程においては、従来の製糸工程における課題は解決に至っていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−300616号公報
【特許文献2】特開平5−104523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこのような従来技術が有する問題を解消し、一旦ペレット化されたポリマーを固相重合して重合度を上げたポリマーを用いて繊維を溶融紡糸した際に、得られる繊維に発生する繊径斑がなくし、また、製糸工程における単糸切れや断糸などの工程調子の悪化を改善することができるペレットの微粉除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ここに、前記課題を解決するための請求項1に係る本発明として、
「 下記(1)〜(6)の要件を同時に具備するペレットの微粉除去装置。
(1) 微粉が付着したペレットを受け入れるケーシングと、
(2) 前記ペレットを輸送するために前記ペレットと共に気体を供給しかつ前記気体によって前記ケーシング内に旋回流を発生させるペレット供給管と、
(3) ペレットから分離した微粉をケーシング上部より吸引除去する上部微紛吸引部と、
(4) ペレットと微粉を分離して微粉のみを通過させるメッシュフィルターを備えると共に、前記メッシュフィルターを通過した微粉を吸引するために前記ケーシングの側面下方に配置された下部微粉吸引部と、
(5) 前記部粉が付着したペレットを衝突させると共に、その軸心が前記ケーシングの軸心と同軸上にあって、且つ前記ケーシングの内部に設け競れた頭頂部が円錐状の内部仕切筒と、
(6) 前記ケーシングと前記内部仕切筒の間に上昇流を発生させるための空気供給部」が提供される。
【0015】
その際、請求項2に係る本発明のように、「前記ペレット供給管より供給された気体によって発生させられた旋回流に沿うように、イオナイザーを介してペレットに帯電した静電気とは反対の電荷を帯びたイオン風を旋回流として供給するノズルを1個以上設置したことを特徴とする、請求項1記載のペレットの微粉除去装置」とすることが好ましい。
【0016】
また、請求項3に係る本発明のように、「前記内部仕切筒がペレットは通過させないが、微粉は通過させるメッシュ部材で作製されていることを特徴とする、請求項1または2記載のペレットの微粉除去装置」とすることが好ましい。
【0017】
そして、請求項4に係る本発明のように、「上昇流を供給するための空気供給部から、イオンを含む空気を供給することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のペレットの微粉処理装置」とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の微粉除去装置によって、ペレットから微粉を除去した後に、溶融押出機に供給して再溶融するため、紡糸口金パックへは微粉を十分に除去されたポリマーが供給される。したがって、繊径斑発生の大きな原因であるペレットに同伴する微粉を十分に低減できるので、固相重合処理によって重合度を更に上げて物性を改善したペレットを用いて溶融紡糸を行って繊維化しても、得られた繊維中には、微粉由来の繊径斑の発生や単糸切れあるいは断糸などの異常が生じないため、品質に優れ、かつ製糸工程調子が安定するという極めて顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るペレット微粉除去装置の概略内部構成図である。
【図2】本発明に係るペレット微粉除去装置のイオナイザーのノズル設置位置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係るペレット微粉除去装置の一実施形態例を模式的に示した概略構成図(概略正断面図)である。この図1において、各参照符号について先ず説明すると、1は円筒状のケーシング、2はペレット供給管、3は上部微粉吸引管、4はメッシュフィルター、5は下部微粉吸引管、6は内部仕切筒、7は下部気体供給管、8はペレット排出配管をそれぞれ示す。なお、内部仕切筒6は、図1に例示したように、円筒状ケーシング1の中心軸と同軸上に軸心を持ち、その頭頂部は円錐状に形成されており、この円錐状頭頂部と、これに続く円筒外壁部は破線で示したようにメッシュ部材で構成されている。また、その内部気体は、メッシュ部材を介してペレットに付着した微粉を除去できるように、図示省略した吸引手段により吸引することが好ましい。
【0021】
以上のように構成される本発明のペレットの微粉除去装置の実施形態例において、先ず、固相重合処理が終了して微粉を含むペレットが、ペレット供給管2より圧縮気体と共に気体輸送されて微粉除去装置内に供給される。このとき、ペレット供給管2は、ペレットがケーシング1内を旋回しながら落下するように、ケーシング1の接線方向にペレットを含む気体が排出されるように配置されている。なお、供給されるペレットは、その量が連続的に計量されて、一定の割合で供給されることが望ましい。
【0022】
このようにして、微粉除去装置内に旋回流と共に供給されたペレットは、ケーシング1の内部壁面および内部仕切筒6の円錐状頭頂部及び外壁部に衝突して、これにより、ペレットの分布状態がより均一かつバラバラに分散させられと共に、ペレットに付着した微粉を衝突の衝撃力によって分離する。なお、このように分散させられたペレットは旋回流にのって下方に落下していくが、メッシュフィルター4と内部仕切筒6の間の空間では、上部微粉吸引管3からの吸引および下部気体供給管7からの気体供給により、上昇気流が発生し、この上昇気流によってペレットから離脱した微粉の中でも軽量のものは上部に吹き上がる。
【0023】
このようにして吹き上がった微粉を除去するためには、少なくとも上部微粉吸引管5をケーシング1上部中央に設置することが肝要であって、上部微粉吸引管5の入口には、ペレットを通過させないが微粉は通過させるメッシュフィルターを設置する。なお、前記上昇気流の流速は、ペレットの粒径、重量などの条件を勘案して設計される設計値であって、最終的には実験により最適値が決定される。
【0024】
また、下部気体供給管7から供給する気体は、微粉が付着したペレットに帯電した電荷と反対の電荷を有するイオンを含む気体としても良い。このようにすることによって、微粉が静電気の作用によってペレットに強く付着してペレットから容易に分離しないが、イオン風が運ぶ電荷によってペレットに帯電した静電気が中和されるので、微粉はペレットから容易に分離することができる。このようにして、イオンを含んだ上昇する気体によってペレットと微粉とが良好に分離される。
【0025】
ここで、本発明に係るペレット微粉除去装置は、前述のようにイオナイザー(図示せず)を介して装置内部に供給されたイオンを帯びた線海流によって、ペレットに付着した微粉を除去することを大きな特徴とするのであって、この点について図2を参照しながら更に詳細に説明する。図2は、本発明に係るペレットの微粉除去装置の上部を断面で示した一実施形態例であって、上部の模式平断面図である。この図2において、9はイオナイザー(図示せず)を介しイオンを含む気体を供給するノズル(図2では3個のノズルが記載されている。)であって、白抜きの矢印方向から供給された固相重合が完了して、微粉が付着したペレットが気体と共に、ケーシング1内に図示した矢印方向へ流れる旋回流を形成させるための手段である。
【0026】
このとき、静電気の作用によって微粉がペレットに強く付着していれば微粉はペレットから容易に分離しない。しかしながら、ペレットに帯電した静電気は、イオン風が運ぶ電荷によって中和されるので、微粉はペレットから容易に分離する。供給された直後のペレットに付着している微粉の量は多く、この段階で適度なイオン風を供給し、ペレットから微粉を分離させることにより、微粉除去効率を大幅に向上させることができる。
【0027】
なお、イオンを含む気体は、イオナイザー(図示せず)を介したノズル9から供給され、ノズル9の配置位置は、ペレットがその供給管2から供給されることによる旋回気流に沿う位置に配置されることが望ましい。また、その設置個数は、供給される処理すべきペレット量により、適宜最適な個数を設置する。更に、ノズルの形状は、イオンを含む気体がより広範囲に広がる形状とすることが好適である。
【0028】
次に、以上に説明したように、微粉が分離された、一方のペレットは、重力によってペレット排出配管8へ落下し、ここから微粉が除去されたペレットとして排出される。また、他方のペレットから分離された微粉は、ペレットと比較して重量が遥かに軽いため、一部は上昇気流に乗せられて、気体と共に上部に運ばれ、上部微粉吸引管3より吸引排出され、残りの微粉はペレットに比べ落下速度が遅く、その多くはメッシュフィルター4を介して下部微粉吸引管7に吸引され排出される。
【0029】
このとき、メッシュフィルター4の目開きについては、ペレットを通過させないが、分離除去した微粉は容易に通過できるように選定することが必要である。なお、メッシュフィルター4の具体的な実施態様としては、本発明の要旨を満足する限り特に限定する理由はなく、例えば、多数の開口を有するパンチングプレート、所定の目開きを有する金網などを例示することができる。なお、その目開きは通過するペレットの大きさと除去すべき微粉の粒径に応じて適宜最適な値に決定されるべき設計事項である。
【0030】
このようにして、除去すべき微粉のうち、より軽量、即ち、より微小な微粉は上部微紛吸引管3から排出され、残りの微粉は下部微粉吸引管7により排出される。更に微粉除去能力を向上させるために、特に内部仕切筒6の上部円錐部分は微粉が付着したペレットが衝突する箇所であり、この部分をパンチングプレートなどのメッシュフィルター材としてもよい。
そして、最終的に微粉が除去されたペレットは、本発明の微粉除去装置を出て、ペレットを再溶融するために溶融押出機へ送られ、溶融紡糸装置などの成形装置へ送られる。
【符号の説明】
【0031】
1:ケーシング
2:ペレット供給管
3:上部微粉吸引管
4:メッシュフィルター
5:下部微粉吸引管
6:内部仕切筒
7:下部気体供給管
8:ペレット排出配管
9:ノズル
10:旋回流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(6)の要件を同時に具備するペレットの微粉除去装置。
(1) 微粉が付着したペレットを受け入れるケーシングと、
(2) 前記ペレットを輸送するために前記ペレットと共に気体を供給しかつ前記気体によって前記ケーシング内に旋回流を発生させるペレット供給管と、
(3) ペレットから分離した微粉をケーシング上部より吸引除去する上部微紛吸引部と、
(4) ペレットと微粉を分離して微粉のみを通過させるメッシュフィルターを備えると共に、前記メッシュフィルターを通過した微粉を吸引するために前記ケーシングの側面下方に配置された下部微粉吸引部と、
(5) 前記部粉が付着したペレットを衝突させると共に、その軸心が前記ケーシングの軸心と同軸上にあって、且つ前記ケーシングの内部に設け競れた頭頂部が円錐状の内部仕切筒と、
(6) 前記ケーシングと前記内部仕切筒の間に上昇流を発生させるための空気供給部。
【請求項2】
前記ペレット供給管より供給された気体によって発生させられた旋回流に沿うように、イオナイザーを介してペレットに帯電した静電気とは反対の電荷を帯びたイオン風を旋回流として供給するノズルを1個以上設置したことを特徴とする、請求項1記載のペレットの微粉除去装置。
【請求項3】
前記内部仕切筒がペレットは通過させないが、微粉は通過させるメッシュ部材で作製されていることを特徴とする、請求項1または2記載のペレットの微粉除去装置。
【請求項4】
上昇流を供給するための空気供給部から、イオンを含む空気を供給することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のペレットの微粉処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−25551(P2011−25551A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174292(P2009−174292)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】