説明

ペレット製造装置のカッタ刃およびペレット製造装置

【課題】押出ノズルの表面に接するカッタ刃の接触面、あるいはカッタ刃が接する押出ノズルの表面の摩耗が少ない、ペレット製造装置のカッタ刃を提供する。
【解決手段】ストランド状に押し出される溶融樹脂を切断する刃部(20a)を押出ノズル(5)の表面に近接して回転駆動される裏側の底面と、表側のテーパ状に薄くなっているすくい面(20d)とから構成する。前記底面は押出ノズル(5)の表面に接して回転駆動される接触面(20g)と、この接触面(20g)より進行方向にみて後方の凹状の逃げ面(20h)とからなる。そして、すくい面(20d)には冷却水の入口穴(21、21)を、逃げ面(20h)には冷却水の出口穴(22、22)を形成し、入口穴(21、21)と出口穴(22、22)を通水孔(23、23)で連通する。すくい面(20d)に沿って流れる冷却水の一部を通水孔(23、23)からカッタ刃の裏側に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット製造装置のカッタ刃およびペレット製造装置に関するもので、具体的には、押出機の下流端の吐出室に取り付けられているダイスあるいは押出ノズルから冷却水中にストランド状に連続して押し出される溶融樹脂を、該ダイスの表面に接しながら回転駆動され、そして冷却水中で所定大きさに切断するカッタ刃および前記カッタ刃を備えたペレット製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂成形品の成形には、従来周知のように、合成樹脂に安定剤、可塑剤、無機充填剤等の添加剤が混合・分散された成形材料が使用される。このような成形材料は一般にペレット化されている。ペレタイザーすなわちペレット製造装置は、押出機、この押出機の吐出端部に設けられているダイス、このダイスに対応して設けられているカッタ装置等から構成されている。したがって、ダイスの複数個のノズル孔からストランド状に連続的に押し出される樹脂を、所定速度で回転駆動されるカッタ装置のカッタ刃で切断すると、所定長さのペレットが得られる。このようなペレットの製造方式として水中カット方式が知られている。水中カット方式は、押出機に合成樹脂と所定の添加剤を供給し、溶融混練してダイスから冷却水中にストランド状に押し出した直後に、ダイス表面にカッタ刃を直接接触させた状態で回転駆動して水中で切断する方式で、ホットカット方式とも呼ばれている。このような水中カット方式のペレット製造装置は、本出願人も色々提案しているが、先行技術文献として特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−740号公報
【0004】
特許文献1に示されているペレット製造装置は、押出機とカッタ装置とからなっている。押出機は、図には示されていないが、従来周知のようにシリンダバレルと、このシリンダバレル内に回転駆動可能に設けられているスクリュとから構成されている。そして、シリンダバレルの先端部にダイスが取り付けられている。このダイスの裏側に、図5の(ア)にその一部が示されているように、リング状の押出ノズル40が設けられている。このリング状の押出ノズル40の断面形状は、略台形を呈し、その頂面あるいは表面40mにシリンダバレルのボアに連通した複数個のノズル孔41、41、…が開口している。
【0005】
一方、カッタ装置は、同様に図には示されていないが、ハウジング内に回転駆動可能に設けられているカッタ軸、このカッタ軸の先端に固着されているカッタホルダ等から構成され、このカッタホルダに複数本のカッタ刃50、50、…が取り付けられている。カッタ刃50は、図5の(ア)の斜視図に示されているように、略直方体状を呈し、長さ方向に厚さが一定の刃部50aと、カッタホルダに取り付けられる取付部50bとから構成されている。刃部50aの表側は、頂面50iと、この頂面50iから回転方向の先端部に向けて薄くなるように傾斜している傾斜面すなわちすくい面50kとからなり、すくい面50kの先端部が刃先50hとなっている。刃部50aの裏側の底面は、刃先50hから所定幅の面が、押出ノズル40の表面40mに接して回転駆動される接触面50sとなっている。この接触面50sの後方に所定深さの凹状の逃げ50jが形成されている。取付部50bには、2個のボルト挿通孔50c、50cが明けられている。上記のように構成されている複数本のカッタ刃50、50、…が、カッタホルダにボルトによって取り外し自在に取り付けられている。このようにして取り付けられた状態の一部が、図5の(ア)に示されている。
【0006】
ダイス、押出ノズル40、カッタ刃50、50、…、カッタホルダ等は、冷却水が満たされるカッタケース内に収納されているている。したがって、ダイス、押出ノズル40、カッタ刃50、50、…等は冷却水中に没していることになる。
【0007】
従来のペレット製造装置は、上記のように構成されているので、カッタケース内に冷却水を供給しながら、押出機のスクリュを回転駆動すると、溶融された樹脂41s、41s…は、従来周知のように押出ノズル40の複数個のノズル孔41、41、…からストランド状に押し出される。このとき、図に示されていない駆動装置によりカッタ軸を押出ノズル40の方向に押しつけながら回転駆動すると、カッタ刃50、50、…は押出ノズル40の表面に接しながら回転駆動するので、ストランド状に連続的に押し出される溶融樹脂41s、41s…は、カッタ刃50、50、…により冷却水中で切断される。これにより、所定の太さで、所定長さのペレットが得られる。ペレットを冷却水と共に冷却水排出口から排出した後、冷却水から分離して乾燥すると製品となる。
【0008】
ところで、特許文献1に記載の発明によると、カッタ刃50のすくい面50kは、取付部50b側の根元側よりも先端側が広くなるように構成されているので、換言するとカッタ刃50が冷却水中で回転駆動されるとき、冷却水から受ける反力は先端部側が大きくなるように構成されているので、カッタホルダを介して加えられる押付圧力と、カッタ刃50に冷却水から加えられる反力の第1の合力の作用点は、刃部50aの長手方向の略中心点の方へ移動する、あるいは移動している。
【0009】
一方、カッタ刃50には、前記第1の合力の反力として押出ノズル40の表面40mから第2の合力が作用するが、この第2の合力の作用点は刃部50aの長手方向の略中心点である。すなわち、第1、2の合力の作用点は一致するので、カッタ刃50に曲げモーメントは生じない。したがって、特許文献1に記載の発明によると、カッタ刃50の刃部50aが軸方向に長くても、あるいは半径外方に長くてもカッタ刃50と押出ノズル40の表面との間に隙間が生じるようなことはない。したがって、均一な粒径の、品質の高いペレットを製造することができるという、優れた効果が得られる。また、刃部50aが軸方向に長くても弾性変形をしないので、ペレット製造装置の大型化が可能である。さらには、刃部50aは取付部50b側の根元側よりも先端部側が厚くなっていると共に、その頂面50iは前記取付部50b側の根元側よりも先端部側が狭くなっているので、先端部側を極端に厚くしなくてもすくい面50kは広くなり、同様な効果が得られ、有効に実施することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、改良すべき問題も認められる。すなわち、図5の(イ)は、前述した特許文献1に示されているカッタ刃50、および従来の一般のカッタ刃の模式的側面図であるが、この図に示されているように、刃部50aの接触面50sは、押出ノズル40の表面40mに接して回転駆動されるので、冷却水から受ける圧力により、刃部50aの接触面50sと押出ノズル40の表面40mは金属接触して、これらが摩耗することがある。以下、その理由を冷却水の方が流れると仮定して説明する。図5の(イ)において、押出ノズル40の表面40mの近傍の流線r1は、押出ノズル40の表面に平行に左方から右方へ延び、カッタ刃50のすくい面50kの近傍で上向きに変えられ、そしてカッタ刃50の後方へ流れる。流線r1よりも押出ノズル40の表面40mから遠い冷却水の流れは、流線r2、r3で示されている。このように流れる冷却水の、図面に垂直方向の単位長さに対して単位時間当たりの流量をQaとすると、カッタ刃50の上流の前方位置では押出ノズル40と平行に平均流速v1で流れ、すくい面50kの近傍では平均流速v2で流れる。この冷却水の流れの変化によって生じる運動量の変化(Qa)・(v1−v2)により、カッタ刃50のすくい面50kにはカッタ刃50を押出ノズル40の表面40mに押し付けようとする下向きの反力Paが生じる。これにより、刃部50aの接触面50sと押出ノズル40の表面40mは金属接触して摩耗する。
【0011】
また、カッタ刃50の後端部は冷却水の流れに対して略直角になっているので、渦U、U、…が発生するが、渦U、U、…の内部は負圧になっているので、カッタ刃50の回転抵抗になりカッタ刃50の駆動エネルギのロスになる。また、キャビテーションによりカッタ刃50あるいは押出ノズル40の表面40mに局所的な摩耗あるいは壊食が生じることもある。
【0012】
したがって、本発明は、押出ノズルの表面に接するカッタ刃の接触面あるいはカッタ刃が接する押出ノズルの表面、またはこれらの両面の摩耗が少ない、ペレット製造装置のカッタ刃を提供することを目的としている。また、カッタ刃の下流側の端部に発生する渦が少ない、あるいは渦が小さい、ペレット製造装置のカッタ刃を提供することも目的としている。さらには、上記のような目的を達したカッタ刃を備えたペレット製造装置を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るペレット製造装置のカッタ刃は、従来のカッタ刃と同様にカッタホルダに取り付けられる取付部と、ストランド状に冷却水中に押し出される溶融樹脂をダイスあるいは押出ノズルの表面に接して切断する刃部とから構成される。刃部は、押出ノズルの表面に近接して回転駆動される裏側の底面と、この底面と実質的に平行で該底面から所定高さ離間した表側の頂面と、この頂面の所定位置から回転方向にみて先端部に向けてテーパ状に薄くなっているすくい面と、このすくい面の先端部の刃先とから構成される。底面は、押出ノズルの表面に近接して、あるいは接触して回転駆動される所定面積の接触面と、この接触面の後方すなわち進行方向にみて後方の凹状の逃げ面とからなっている。そして、本発明に係るカッタ刃は、前記発明の目的を達成するために、前記すくい面には前記凹状の逃げ面に達する通水孔が形成されている。押出機は、少なくとも1本のスクリュを内蔵したシリンダバレルと、該シリンダバレルの先端部に取り付けられているダイスあるいは押出ノズルとから、実質的に従来の押出機と同様に構成される。
【0014】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、カッタホルダに取り付けられる取付部と、押出ノズルの表面上を移動して前記押出ノズルから冷却水中にストランド状に押し出される溶融樹脂を冷却水中で切断する刃部とからなり、前記刃部は、押出ノズルの表面に近接して回転駆動される裏側の底面と、この底面と実質的に平行で該底面から所定高さ離間した表側の頂面と、この頂面の所定位置から回転方向にみて先端部に向けてテーパ状に薄くなっているすくい面と、このすくい面の先端部の刃先とから構成され、前記底面が、押出ノズルの表面に接して回転駆動される所定面積の接触面と、この接触面より進行方向にみて後方の凹状の逃げ面とからなるカッタ刃であって、前記すくい面には冷却水の入口穴が、前記凹状の逃げ面には冷却水の出口穴が形成され、前記入口穴と出口穴は通水孔で連通するように構成される。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカッタ刃において、前記入口穴と出口穴が、複数個形成され、これらの穴がそれぞれの通水孔で連通するように、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のカッタ刃において、前記入口穴が回転あるいは進行方向に見て前記出口穴よりも前方に位置し、それによって前記通水孔は冷却水をカッタ刃の裏側に導きやすいように傾斜するように、そして請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載のカッタ刃において、前記入口穴の周囲の一部には、切欠状の拡径部が形成されるように構成される。
【0016】
請求項5に記載の発明は、熱可塑性樹脂を軸方向に移送するための少なくとも1本のスクリュが設けられているシリンダバレルと、該シリンダバレルの吐出部に設けられている押出ノズルと、該押出ノズルに対応して設けられているカッタ装置とからなり、前記押出ノズルから冷却水中にストランド状に押し出される溶融樹脂を冷却水中で前記カッタ装置により切断してペレットを得る製造装置であって、前記カッタ装置は、前記押出ノズル側へ所定の力で押圧され、そして所定の回転速度で駆動されるカッタホルダの円周部に円周方向に所定の間隔をおいて取り付けられている複数枚のカッタ刃からなり、前記カッタ刃は、前記カッタホルダに取り付けられる取付部と、押出ノズルの表面上を移動する刃部とからなり、 前記刃部は、押出ノズルの表面に近接して回転駆動される裏側の底面と、この底面と実質的に平行で該底面から所定高さ離間した表側の頂面と、この頂面の所定位置から回転方向にみて先端部に向けてテーパ状に薄くなっているすくい面と、このすくい面の先端部の刃先とから構成され、前記底面が、押出ノズルの表面に接して回転駆動される所定面積の接触面と、この接触面より進行方向にみて後方の凹状の逃げ面とからなり、前記すくい面には冷却水の入口穴が、前記凹状の逃げ面には冷却水の出口穴が形成され、前記入口穴と出口穴は通水孔で連通するように構成され、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の装置において、前記入口穴の周囲の少なくとも一部には、切欠状の拡径部が形成されている。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によると、カッタ刃の表側のすくい面には冷却水の入口穴が、そして裏側の凹状の逃げ面には出口孔が形成され、これらの穴は通水孔で連通しているので、カッタ刃のすくい面に沿って流れる冷却水の一部は、通水孔を通ってカッタ刃の逃げ面と押出ノズルの表面との隙間を流れる。すなわち、すくい面に沿う冷却水の流量は減少し、カッタ刃を押し下げる下向きの反力は減少する。また、隙間を流れるので圧力が立ち、カッタ刃には上向きの力が生じる。これにより、過剰な下向きの反力によるカッタ刃あるいは押出ノズルの表面、または両方の摩耗が防止されるという効果が得られる。また、冷却水の全量がすくい面に沿って流れると、カッタ刃の後端部に多量の渦が生じるが、本発明によると、冷却水の一部は、カッタ刃の逃げ面と押出ノズルの表面との間の隙間を通って流れるので、渦の発生量が少なく、カッタ刃を回転駆動するエネルギは少なくてすむ。さらには渦が小さくなるので、水圧的に安定し、機械の振動、キャビテーションによる局部的な摩耗あるいは壊食も小さくなる。他の発明によると、冷却水の入口穴が複数個設けられているので、あるいは入口穴の周囲の一部に切欠状の拡径部が形成されているので、冷却水の入口穴の数、大きさ等と共に、切欠部の形状、大きさ等を適宜変更して、カッタ刃の回転数に関係なく、カッタ刃を押出ノズルの表面に押し付ける下向きの力と、離す上向きの力とを調整して、カッタ刃あるいは押出ノズルの表面または両方の摩耗を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るペレット製造装置の一部を示す図で、その(ア)はその正面図、その(イ)はカッタ刃の斜視図、その(ウ)は(イ)において矢視ウーウ方向に見た図に相当する断面図、その(エ)は、カッタ刃の取付状態を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す図で、その(ア)は、カッタ刃が押出ノズルの表面に接して取り付けられている状態を一部拡大して示す斜視図、その(イ)は作用を説明するための要部の断面図である。
【図3】本発明の、他の実施の形態に係るカッタ刃を示す図で、その(ア)はその平面図、その(イ)は(ア)において矢視イーイ方向に見た断面図である。
【図4】本発明の、さらに他の実施の形態に係るカッタ刃を示す図で、その(ア)はその平面図、その(イ)は(ア)において矢視イーイ方向に見た断面図である。
【図5】従来のペレット製造装置の要部を示す図で、その(ア)はカッタ刃が押出ノズルの表面に接して取り付けられている状態を示す斜視図、その(イ)は作用を説明するための要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図1〜4によって説明する。本実施の形態に係るペレット製造装置は、従来の製造装置と同様に、概略的には押出機1とカッタ装置10とからなっている。押出機1は、図には全体は示されていないが、軸方向に所定長さのシリンダバレル2を備え、このシリンダバレル2の外周部にはバンドヒータが設けられ、内部には少なくとも1本のスクリュが回転駆動されるように設けられている。シリンダバレル2の上流側には、成形材料あるいは押出材料が一時的に貯留されるホッパが設けられ、シリンダバレル2の下流端あるいは吐出室3の末端には、図1の(ア)に示されているように、吐出室3を仕切るような形でダイス4が取り付けられている。ダイス4は、略円盤状を呈しているが、吐出室3の反対側の面にはリング状の押出ノズル5が形成されている。あるいはダイス4の裏側にリング状の押出ノズル5が取り付けられている。この押出ノズル5の断面形状は、略台形を呈し、その頂面あるいは表面6に複数個の所定大きさのノズル孔7、7、…が開口している。これらのノズル孔7、7、…は、ダイス4に形成されている連通孔8、8、…を介してシリンダバレル2の吐出室3に連通している。このように構成されている押出ノズル5の頂面6に近接して、あるいは接して後述する複数枚のカッタ刃20、20,…が回転駆動されることになる。
【0020】
カッタ装置10は、図1の(ア)に示されているように、ハウジング11、ハウジング11内に回転可能に設けられているカッタ軸12、カッタ軸12の先端に固着されているカッタホルダ13、カッタホルダ13に取り付けられている複数枚のカッタ刃20、20、…等から構成されている。カッタホルダ13は、全体として略円錐状を呈している。すなわち、ダイス4側に面した大径の取付面部と、反対側の小径のボス部14とからなっている。取付面部の内側には所定深さの逃げが形成され、ボス部14には軸心方向に前記逃げに達する貫通孔15が明けられている。カッタホルダ13は、この貫通孔15を利用してカッタ軸12に取り付けられている。また、カッタホルダ13の、取付面部には2個を1組とするカッタ刃取付用の所定深さの雌ネジが等間隔に複数組形成されている。
【0021】
このように構成されているカッタホルダ13は、カッタ軸12によりダイス4の方向に所定の力で押された状態で回転駆動されるようになっているが、駆動用の電動機等は図には示されていない。
【0022】
カッタ刃20は、図1の(イ)の斜視図および(ウ)の断面図に示されているように、略直方体状を呈し、長さ方向に厚さ「h」が一定の刃部20aと、カッタホルダ13に取り付けられる取付部20bとから構成されている。刃部20aの表側は、頂面20cと、この頂面20cから回転方向の先端部に向けて薄くなるように傾斜している傾斜面すなわちすくい面20dとからなり、すくい面20dの先端部が刃先20eとなっている。裏側の底面は、押出ノズル5の表面6に接触して回転駆動される所定幅の接触面20gと、この接触面20gの、進行方向に対して後方の、凹状の逃げ面20hとからなっている。この凹状の逃げ面20hにより、図2の(イ)に示されているように、押出ノズル5のノズル孔7、7、…から溶融樹脂7s、7s、…がストランド状に押し出され、所定長さに成長するることが許容される。取付部20bには2個のボルト挿通用の透孔20i、20iが明けられている。
【0023】
このように構成されているカッタ刃20のすくい面20dに、図1の(イ)、(ウ)に示されているように、本実施の形態では2個の冷却水の入口穴21、21が形成されている。また、逃げ面20hには冷却水の出口穴22、22が同様に2個形成されている。そして、これらの穴21、22、…は、通水孔23、23により互いに連通している。図1の(イ)、(ウ)に示されている実施の形態では、入口穴21、21と出口穴22,22および通水孔23,23は同径で、入口穴21、21は出口穴22、22よりも、カッタ刃20の回転方向あるいは進行方向に見て前方に位置している。これにより、通水孔23、23は、図1の(ウ)にも示されているように、カッタ刃20が回転駆動されるとき冷却水が入りやすいように外方から内方へ傾斜している。
【0024】
上記のように構成されている複数枚のカッタ刃20、20、…が、カッタホルダ13の取付面部に図示されないボルトによって放射状に取り外し自在に取り付けられている。カッタ刃20、20、…を取り付けた状態が、図1の(エ)の側面図に示されている。このようにして取り付けられているカッタ刃20、20、…は、ダイス4、押出ノズル5等と共に、図1の(ア)に示されているように、冷却水供給口30aと冷却水排出口30bとを備えたカッタケース30に収納されている。したがって、冷却水供給口30aから冷却水を注入すると、カッタケース30内は冷却水で満たされ、ダイス4、押出ノズル5、カッタ刃20、20、…等は冷却水中に没することになる。
【0025】
次に、上記実施の形態によりペレットを製造する例について説明する。冷却水を冷却水供給口30aから供給し、そして冷却水排出口30bから排出しながら、押出機1のスクリュを回転駆動する。ホッパから連続的に供給される押出材料は、シリンダバレル2中を移送される過程で、従来周知のように溶融し、そして吐出室3から押出ノズル5の複数個のノズル孔7、7、…からストランド状にカッタケース30内に連続的に押し出される。このとき、図に示されていない駆動装置によりカッタ軸12をダイス4の方向に所定の力で押しつけながら所定の回転速度で駆動すると、カッタ刃20、20、…は、その接触面20g、20g、…が押出ノズル5の表面6に接した状態で回転駆動される。したがって、ストランド状に連続的に押し出される溶融樹脂7s、7s、…は、カッタ刃20、20、…により冷却水中で切断され、所定の大きさで、所定長さのペレットになる。接触面20g、20g、…が押出ノズル5の表面6に接しながら回転駆動されている状態が、図2の(ア)の拡大斜視図に、カッタ刃20、20、…により切断される状態が図2の(イ)の拡大断面図にそれぞれ示されている。所定長さに切断されたペレットは、冷却水と共に冷却水排出口30bから外部へ排出され、冷却水と分離されて乾燥される。
【0026】
上記のようにしてペレットを得るとき、従来のカッタ刃50によると、前述したように、冷却水の、図面に垂直方向の単位長さに対して単位時間当たりの流量をQaとすると、冷却水の流れの変化によって生じる運動量の変化(Qa)・(v1−v2)により、カッタ刃50のすくい面50kにはカッタ刃50を押出ノズル40の表面に押し付けようとする下向きの反力Paが生じるが、本実施の形態によると、カッタ刃20のすくい面20dと逃げ面20hとの間は通水孔23、23で連通しているので、カッタ刃20のすくい面20dに生じる流線は、図2の(イ)に示されているように、すくい面20dに沿う流線rAと、通水孔23、23を流れる流線rBとに分割される。すくい面20dに沿う冷却水の流量Qaは、分流した分だけ減少し、前述したカッタ刃20を押し下げる下向きの反力Paは減少する。また、分流した冷却水は、カッタ刃20の逃げ面20hと押出ノズル5の表面6との間の隙間を通って流れるので、このときの圧力によりカッタ刃20には下向きの反力Paをうち消す上向きの力Pbが生じる。これにより、過剰な下向きの反力Paによるカッタ刃20あるいは押出ノズル4の表面6、または両方の摩耗が防止される。
【0027】
さらには、従来のように冷却水の全量がすくい面50kに沿って流れると、カッタ刃50の後端部に多量の渦U、U、…が生じるが、本実施の形態によると、冷却水は分流して、カッタ刃20の逃げ面20hと押出ノズル5の表面6との間の隙間を通って後端部で合流するので、渦の発生量が少ない。これにより、カッタ刃20を回転駆動するエネルギは少なくてすむ。また、渦の発生により圧力変動も生じるが、本実施の形態によると渦の発生量が少なくなるので、あるいは渦が小さくなるので、水圧的に安定し、機械の振動、キャビテーションによる局部的な摩耗あるいは壊食も小さくなる。また、渦が小さくなるので、カットされたペレットはスムーズに冷却水排出口30bから排出されるようにもなる。
【0028】
上記実施の形態によると、冷却水の入口穴21、21、通水孔23、23および冷却水の出口穴22、22は、同じ径で2個宛形成されているが、個数、形状等が上記実施の形態に限定されることなく、カッタ刃20の刃数、形状、回転速度等により変形可能であることは明らかである。図3および図4に冷却水の入口穴21、21の周囲に形状の異なる拡径部が形成されている実施の形態が示されている。すなわち、前述した実施の形態の要素と同じ要素には同じ参照数字を付けて重複説明はしないが、図3に示されている実施の形態によると、冷却水の入口穴21の周囲の一部に所定深さの方形の切欠部21aが形成されている。この切欠部21aにより、カッタ刃20のすくい面20dに沿って流れる冷却水は、切欠部21aの垂直壁に当たりせき止められるので、圧力が上がり通水孔23、23を通って流れる冷却水の水量が増す。これにより、カッタ刃20の逃げ面20hを押出ノズル5の表面6から離す前記力Pbが増す。冷却水の入口穴21の数、大きさ等と共に、切欠部21aの形状、大きさを適宜変更して、カッタ刃20、20、…の回転速度に関係なく、前記したカッタ刃20を押出ノズル5の表面6に押し付ける下向きの力Paと、離す上向きの力Pbとを調整して、カッタ刃20あるいは押出ノズル5の表面6、または両方の摩耗を防ぐことができる。図4には、切欠部21bが、入口穴21の周囲に形成されている実施の形態が示されている。同様な効果が得られることは明らかである。
【符号の説明】
【0029】
1 押出機 3 吐出室
4 ダイス 5 押出ノズル
7 ノズル孔
10 カッタ装置 12 カッタ軸
13 カッタホルダ
20 カッタ刃 20a 刃部
20b 取付部 20d すくい面
20g 接触面 20h 逃げ面
21 冷却水の入口穴 21a 切欠部(拡径部)
21b 切欠部(拡径部) 22 冷却水の出口穴
23 通水孔
30 カッタケース 30a 冷却水供給口
30b 冷却水排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタホルダに取り付けられる取付部と、押出ノズルの表面上を移動して前記押出ノズルから冷却水中にストランド状に押し出される溶融樹脂を冷却水中で切断する刃部とからなり、
前記刃部は、押出ノズルの表面に近接して回転駆動される裏側の底面と、この底面と実質的に平行で該底面から所定高さ離間した表側の頂面と、この頂面の所定位置から回転方向にみて先端部に向けてテーパ状に薄くなっているすくい面と、このすくい面の先端部の刃先とから構成され、
前記底面が、押出ノズルの表面に接して回転駆動される所定面積の接触面と、この接触面より進行方向にみて後方の凹状の逃げ面とからなるカッタ刃であって、
前記すくい面には冷却水の入口穴が、前記凹状の逃げ面には冷却水の出口穴が形成され、前記入口穴と出口穴は通水孔で連通していることを特徴とする、ペレット製造装置のカッタ刃。
【請求項2】
請求項1に記載のカッタ刃において、前記入口穴と出口穴が、複数個形成され、これらの穴がそれぞれの通水孔で連通している、ペレット製造装置のカッタ刃。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカッタ刃において、前記入口穴が回転あるいは進行方向に見て前記出口穴よりも前方に位置し、それによって前記通水孔は冷却水をカッタ刃の裏側に導きやすいように傾斜している、ペレット製造装置のカッタ刃。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載のカッタ刃において、前記入口穴の周囲の一部には、切欠状の拡径部が形成されている、ペレット製造装置のカッタ刃。
【請求項5】
熱可塑性樹脂を軸方向に移送するための少なくとも1本のスクリュが設けられているシリンダバレルと、該シリンダバレルの吐出部に設けられている押出ノズルと、該押出ノズルに対応して設けられているカッタ装置とからなり、前記押出ノズルから冷却水中にストランド状に押し出される溶融樹脂を冷却水中で前記カッタ装置により切断してペレットを得る製造装置であって、
前記カッタ装置は、前記押出ノズル側へ所定の力で押圧され、そして所定の回転速度で駆動されるカッタホルダの円周部に円周方向に所定の間隔をおいて取り付けられている複数枚のカッタ刃からなり、
前記カッタ刃は、前記カッタホルダに取り付けられる取付部と、押出ノズルの表面上を移動する刃部とからなり、
前記刃部は、押出ノズルの表面に近接して回転駆動される裏側の底面と、この底面と実質的に平行で該底面から所定高さ離間した表側の頂面と、この頂面の所定位置から回転方向にみて先端部に向けてテーパ状に薄くなっているすくい面と、このすくい面の先端部の刃先とから構成され、
前記底面が、押出ノズルの表面に接して回転駆動される所定面積の接触面と、この接触面より進行方向にみて後方の凹状の逃げ面とからなり、前記すくい面には冷却水の入口穴が、前記凹状の逃げ面には冷却水の出口穴が形成され、前記入口穴と出口穴は通水孔で連通していることを特徴とする、ペレット製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、前記入口穴の周囲の少なくとも一部には、切欠状の拡径部が形成されている、ペレット製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−245739(P2012−245739A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120795(P2011−120795)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】