説明

ペロブスカイト粉末、その製造方法及びそれを利用した積層セラミック電子部品

【課題】本発明は、ペロブスカイト粉末、その製造方法及びそれを利用した積層セラミック電子部品に関する。
【解決手段】本発明は、表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されたペロブスカイト粉末を提供する。本発明によると、水熱合成法を利用したペロブスカイト粉末を合成する際に、硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層を形成することにより、粒子の粒成長を抑制した高結晶性微粒のペロブスカイト粉末を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高結晶性の微粒ペロブスカイト粉末を得ることができるペロブスカイト粉末、その製造方法及びそれを利用した積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト粉末は強誘電体セラミック材料であり、積層コンデンサ(MLCC)、セラミックフィルター、圧電素子、強誘電体メモリ、サーミスタ(thermistor)、バリスタ(varistor)などの電子部品の原料として用いられている。
【0003】
チタン酸バリウム(BaTiO)はペロブスカイト構造を有する高誘電率の物質であり、積層セラミックキャパシタの誘電体材料として用いられている。
【0004】
近年、電子部品産業の軽薄短小化、高容量化、高信頼性化などの傾向により、強誘電体の粒子は小さなサイズを有しながら、優れた誘電率及び信頼性が求められている。
【0005】
誘電体層の主成分であるチタン酸バリウム粉末の粒径が大きいと、誘電体層の表面粗さの増加によりショート率の増加及び絶縁抵抗不良の問題が発生する可能性がある。
【0006】
このため、主成分であるチタン酸バリウム粉末の微粒化が求められている。
【0007】
しかし、チタン酸バリウム粉末が微粒化される場合、正方晶系率は減少するという問題があるため、このような結晶性の問題を克服し、高結晶性の微粒チタン酸バリウム粉末の開発が求められている。
【0008】
このようなペロブスカイト粉末を製造する方法としては固相法、湿式法があり、湿式法としてはシュウ酸塩沈殿法、水熱合成法などがある。
【0009】
固相法は、普通粒子の最小粉末サイズが1ミクロン前後と非常に大きい方であり、粒子サイズの調節が困難で、粒子の凝集現象と焼成時に発生する汚染などが問題となり、ペロブスカイト粉末を微粒子に製造することが困難である。
【0010】
誘電体の粒子サイズが小さくなるにつれて正方性(tetragonality)が低下することは様々な工法で一般的に生じる現象であり、100nm以下に小さくなる場合は結晶軸比(c/a)の確保が非常に困難であるという現状がある。
【0011】
また、粉末サイズが小さくなるにつれて分散はより困難になるため、微粒粉末であるほど高い分散性が求められる。
【0012】
既存の固相法または共沈法は高温仮焼によって結晶相を成すため、高温仮焼工程及び粉砕工程を必要とする。
【0013】
そのため、合成されたペロブスカイト粉末の形状が良好でなく、粒度分布が広いという欠点があり、熱処理によって凝集が発生して分散が困難であるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、高結晶性の微粒ペロブスカイト粉末を得ることができるペロブスカイト粉末、その製造方法及びそれを利用した積層セラミック電子部品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態によると、表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されたペロブスカイト粉末が提供される。
【0016】
上記硫化物は硫酸アンモニウム(Ammonium Sulfate)であることができ、上記硫黄を含む塩はリン酸塩及び酢酸塩からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0017】
上記被膜層の厚さは0.1〜10nmであることができる。
【0018】
上記ペロブスカイト粉末は、BaTiO、BaTiZr1−x、Ba1−xTiO、BaDy1−xTiO及びBaHo1−xTiO(0<x<1)からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0019】
上記ペロブスカイト粉末の平均粒径は10〜150nmであることができ、上記ペロブスカイト粉末の結晶軸比(c/a)は1.001〜1.010であることができる。
【0020】
本発明の他の実施形態によると、金属塩と金属酸化物を混合してペロブスカイト粒子核を形成する段階と、上記ペロブスカイト粒子核と純水に溶解させた硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上を混合する段階と、上記混合物を水熱処理で粒成長させ、表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されたペロブスカイト粉末を得る段階と、を含むペロブスカイト粉末の製造方法が提供される。
【0021】
上記硫化物は硫酸アンモニウム(Ammonium Sulfate)であることができ、上記硫黄を含む塩はリン酸塩及び酢酸塩からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0022】
上記金属塩は水酸化バリウムまたは水酸化バリウムと希土類塩との混合物であることができ、上記金属酸化物は酸化チタンまたは酸化ジルコニウムであることができる。
【0023】
上記被膜層の厚さは0.1〜10nmであることができる。
【0024】
上記ペロブスカイト粉末の平均粒径は10〜150nmであることができ、上記ペロブスカイト粉末はBaTiO、BaTiZr1−x、Ba1−xTiO、BaDy1−xTiO及びBaHo1−xTiO(0<x<1)からなる群から選択された一つ以上であることができ、上記ペロブスカイト粉末の結晶軸比(c/a)は1.001〜1.010であることができる。
【0025】
本発明の他の実施形態によると、表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されたペロブスカイト粉末を含む誘電体層を含むセラミック本体と、上記セラミック本体内で上記誘電体層を挟んで互いに対向するように配置される内部電極層と、を含む積層セラミック電子部品が提供される。
【0026】
上記被膜層の厚さは0.1〜10nmであることができる。
【0027】
上記ペロブスカイト粉末はBaTiO、BaTiZr1−x、Ba1−xTiO、BaDy1−xTiO及びBaHo1−xTiO(0<x<1)からなる群から選択された一つ以上であることができ、上記ペロブスカイト粉末の結晶軸比(c/a)が1.001〜1.010であることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、水熱合成法を利用したペロブスカイト粉末を合成する際に、硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層を形成することにより、粒子の粒成長を抑制した高結晶性微粒のペロブスカイト粉末を製造することができる。
【0029】
また、上記ペロブスカイト粉末を利用して製造された積層セラミック電子部品は、クラック発生が少ないため信頼性の向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを概略的に示す斜視図である。
【図2】図1のA−A'断面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるペロブスカイト粉末の製造工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態によるチタン酸バリウム粉末及び従来のチタン酸バリウム粉末の粒子SEM(Scanning Electron Microscope)写真である。
【図5】本発明の一実施形態によるチタン酸バリウム粉末の温度毎のSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。但し、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における要素の形状及び大きさ等はより明確な説明のために誇張されることがあり、図面上において同一の符号で表される要素は同一の要素である。
【0032】
本発明の一実施形態によるペロブスカイト粉末は、表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されることができる。
【0033】
上記ペロブスカイト粉末は、特に制限されず、例えば、BaTiO、BaTiZr1−x、Ba1−xTiO、BaDy1−xTiO及びBaHo1−xTiO(0<x<1)からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0034】
以下、本発明の一実施形態によるペロブスカイト粉末、特にチタン酸バリウム(BaTiO)粉末について説明するが、これに制限されるものではない。
【0035】
本発明の一実施形態によると、水熱合成法によって製造されたチタン酸バリウム(BaTiO)粉末は、表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成され、高結晶性を有しながらも微粒の粉末であることができる。
【0036】
上記硫化物及び硫黄を含む塩は、特に制限されず、例えば硫酸アンモニウム(Ammonium Sulfate)であることができ、リン酸塩及び酢酸塩からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0037】
既存の水熱合成法によると、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末の粒子サイズを減少させるためには反応温度を下げなければならないが、この場合、粉末の結晶性が低下するという問題がある。また、高結晶性を確保するためには高温で反応しなければならないが、この場合、粒子サイズが大きくなるという問題がある。
【0038】
しかし、本発明の一実施形態によると、上記硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が上記チタン酸バリウム(BaTiO)粉末の表面に形成されることにより、反応を高温で行っても粉末の粒成長が抑制されるため、高結晶性を確保しながらも微粒の粉末を得ることができる。
【0039】
上記被膜層の厚さは特に制限されないが、例えば、0.1〜10nmであることができる。
【0040】
上記のように、厚さ0.1〜10nmの被膜層が上記チタン酸バリウム(BaTiO)粉末の表面に形成されるため、上記チタン酸バリウム粉末を高温で粒成長させても粉末の粒成長が抑制され、微粒化を実現することができる。
【0041】
上記被膜層の厚さが0.1nm未満である場合には、高温で粒成長させる場合チタン酸バリウム(BaTiO)粉末の粒成長抑制の効果が微小であるため、微粒の粉末を製造することが困難であるという問題があり得る。
【0042】
また、上記被膜層の厚さが10nmを超過する場合には、被膜層の厚さが厚いためチタン酸バリウム(BaTiO)粉末の誘電率の低下をもたらすという問題があり得る。
【0043】
本発明の一実施形態によると、上述のように高結晶性を確保しながらも微粒のチタン酸バリウム(BaTiO)粉末を製造することができる。特に、上記チタン酸バリウム(BaTiO)粉末の平均粒径は10〜150nmであり、上記チタン酸バリウム(BaTiO)粉末の結晶軸比(c/a)は1.001〜1.010であることができる。
【0044】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを概略的に示した斜視図である。
【0045】
図2は図1のA−A'断面図である。
【0046】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されたペロブスカイト粉末を含む誘電体層1を含むセラミック本体10と、上記セラミック本体10内で上記誘電体層1を挟んで互いに対向するように配置される内部電極層21、22と、を含むことができる。
【0047】
以下、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品について、特に積層セラミックキャパシタについて説明するが、これに制限されるものではない。
【0048】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタにおいて、「長さ方向」は図1の「L」方向、「幅方向」は「W」方向、「厚さ方向」は「T」方向に定義する。ここで「厚さ方向」は、誘電体層を積み上げる方向、即ち「積層方向」と同一の概念で用いることができる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層1を形成する原料は、十分な静電容量が得られるものであれば特に制限されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末であることができる。
【0050】
上記チタン酸バリウム(BaTiO)粉末は、表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されることができる。
【0051】
上記被膜層の厚さは0.1〜10nmであることができる。
【0052】
上記チタン酸バリウム(BaTiO)粉末の平均粒径は10〜150nmであり、結晶軸比(c/a)は1.001〜1.010であることができる。
【0053】
本発明の一実施形態によると、表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されたチタン酸バリウム(BaTiO)粉末を用いて誘電体層1を形成するため、高結晶性を確保しながらも微粒の粒子からなることができる。
【0054】
これにより、上記チタン酸バリウム(BaTiO)粉末を用いて製造された積層セラミックキャパシタは、クラックの発生が少ないため信頼性の向上が可能であるという効果がある。
【0055】
上記誘電体層1を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に、本発明の目的に応じて多様なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0056】
その他の上記チタン酸バリウム(BaTiO)粉末の特徴は、上述した本発明の一実施形態によるペロブスカイト粉末の特徴と重複するため、ここでは省略する。
【0057】
上記第1及び第2内部電極21、22を形成する材料は特に制限されず、例えば、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)のうち一つ以上の物質からなる導電性ペーストを用いて形成されることができる。
【0058】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、上記第1内部電極21と電気的に連結された第1外部電極31と、上記第2内部電極22と電気的に連結された第2外部電極32と、をさらに含むことができる。
【0059】
上記第1及び第2外部電極31、32は、静電容量の形成のために上記第1及び第2内部電極21、22と電気的に連結されることができ、上記第2外部電極32は上記第1外部電極31と相違する電位に連結されることができる。
【0060】
上記第1及び第2外部電極31、32は、静電容量の形成のために上記第1及び第2内部電極21、22と電気的に連結されることができる材質であれば特に制限されず、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)及び銀−パラジウム(Ag−Pd)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0061】
図3は本発明の一実施形態によるペロブスカイト粉末の製造工程を示すフローチャートである。
【0062】
図3を参照すると、本発明の一実施形態によるペロブスカイト粉末の製造方法は、金属塩と金属酸化物を混合してペロブスカイト粒子核を形成する段階と、上記ペロブスカイト粒子核と純水に溶解させた硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上を混合する段階と、上記混合物を水熱処理で粒成長させ、表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されたペロブスカイト粉末を得る段階と、を含むことができる。
【0063】
以下、本実施形態によるペロブスカイト粉末の製造工程を各段階毎に詳細に説明する。
【0064】
ペロブスカイト粉末はABOの構造を有する粉末であり、本発明の一実施形態では、上記金属酸化物がBサイト(site)に該当する元素供給源であり、上記金属塩がAサイト(site)に該当する元素供給源である。
【0065】
まず、金属塩と金属酸化物を混合してペロブスカイト粒子核を形成することができる。
【0066】
上記金属酸化物は、チタン(Ti)またはジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0067】
チタニアとジルコニアの場合、加水分解が非常に容易であるため、別の添加剤を用いずに純水と混合すると、含水チタン、含水ジルコニウムがゲル形態に沈殿されることができる。
【0068】
上記含水形態の金属酸化物を洗浄して不純物を除去することができる。
【0069】
より具体的には、上記含水金属酸化物を加圧により濾過して残留溶液を除去し、純水を注ぎながら濾過して粒子表面に存在する不純物を除去することができる。
【0070】
次に、上記含水金属酸化物に純水と酸または塩基を添加することができる。
【0071】
濾過後に得た含水金属酸化物粉末に純水を入れて高粘度撹拌機で撹拌させ、0℃〜60℃で0.1〜72時間維持して、含水金属酸化物スラリーを製造することができる。
【0072】
製造したスラリーに酸や塩基を加えることができ、上記酸や塩基は解膠剤として用いられ、含水金属酸化物の含量に対して0.0001〜0.2モルで添加することができる。
【0073】
上記酸は、一般的なものであれば特に制限されず、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、ポリカルボン酸などがあり、これらを単独または2種以上混合して用いることができる。
【0074】
上記塩基は、一般的なものであれば特に制限されず、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドまたはテトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどがあり、これらを単独または混合して用いることができる。
【0075】
上記金属塩は、水酸化バリウムまたは水酸化バリウムと希土類塩の混合物であることができる。
【0076】
上記希土類塩は、特に制限されず、例えば、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)などが用いられることができる。
【0077】
上記ペロブスカイト粒子核を形成する段階は60℃〜150℃で行われることができる。
【0078】
次に、上記ペロブスカイト粒子核を水熱反応器に投入し、上記ペロブスカイト粒子核と純水に溶解させた硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上を混合することができる。
【0079】
上記ペロブスカイト粉末を得る段階は、上記ペロブスカイト粒子核を150℃から400℃に昇温しながら行われることができる。
【0080】
次に、上記混合物を水熱処理で粒成長させ、表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されたペロブスカイト粉末を得ることができる。
【0081】
本発明によると、上記ペロブスカイト粉末の表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されるため、高温で粒成長させても結晶性に優れ、微粒の粉末を製造することができる。
【0082】
具体的には、上記ペロブスカイト粒子核を水熱反応器内で150℃から400℃に昇温及び0.1〜240時間維持する条件で粒成長させる。
【0083】
上記のような工程を経て高結晶性のペロブスカイト粉末粒子が得られる。
【0084】
上記ペロブスカイト粉末は、BaTiO、BaTiZr1−x、Ba1−xTiO、BaDy1−xTiO及びBaHo1−xTiO(0<x<1)からなる群から選択された一つであることができる。
【0085】
上記ペロブスカイト粉末の製造方法によって製造された高結晶性のペロブスカイト粉末は、平均粒径が10〜150nmであり、結晶軸比(c/a)が1.001〜1.010であることができる。
【0086】
結晶軸比(c/a)値は、結晶粒子の結晶軸a、b及びcにおいて、正方晶粒子の場合aとbの長さが同一であるためaで表示され、この場合aとcの格子長さの比を意味する。
【0087】
以下、好ましい実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明がこれによって制限されるものではない。
【0088】
チタンテトライソプロポキシド(Titanium tetraisopropoxide)を加水分解して含水チタンを形成した後濾過する。
【0089】
次に、含水チタンに純水を入れ、硝酸をH+/Ti=0.05になるように入れて、高粘度撹拌機を利用して撹拌しながら60℃程度の温度を加えて3時間解膠させ、酸化チタン(TiO)ゾルを製作する。
【0090】
解膠により製作されたゾルは半透明で、少し青色を帯びており、単分散された状態で非常に安定したゾルが形成される。形成されたゾルの透過度をタービスキャン(Turbiscan)で測定した結果、透過度は75%を示した。純水の場合は透過度が90%である。上記TiO粒子サイズは約3nm程度で単結晶に形成されており、アナターゼ(anatase)である。
【0091】
水酸化バリウム八水和物(Ba(OH)8HO)をBa/Ti≧1になるように反応器に入れた後、窒素ガスパージを行い、炭酸バリウム(BaCO)に変わることを抑制した。
【0092】
次に、純水を投入した後95℃まで昇温し、水酸化バリウム八水和物(Ba(OH)8HO)を完全に溶解させた後、加熱されたTiOゾルを窒素ガスを加えて投入した後、高速撹拌する。
【0093】
95℃で反応させた後、チタン酸バリウム(BaTiO)粒子核を生成させる。
【0094】
上記チタン酸バリウム(BaTiO)粒子核を30Lの水熱反応器に移した後、硫酸アンモニウム(Ammonium Sulfate)を純水に溶解させて水熱反応器に投入する。
【0095】
30Lの水熱反応器を260℃まで昇温し、3〜10時間撹拌して反応させる。
【0096】
反応後に得られたチタン酸バリウム(BaTiO)スラリーを純水で洗浄し、150℃に設定されたオーブン内で乾燥させてチタン酸バリウム(BaTiO)粉末を製造した。
【0097】
下記表1は水熱合成法によってチタン酸バリウム(BaTiO)粉末を製造する場合、粒成長温度及び硫酸アンモニウム(Ammonium Sulfate)の添加有無によって得られた最終チタン酸バリウム(BaTiO)粉末の物性を比較した表である。
【0098】
【表1】

【0099】
図4は本発明の一実施形態によるチタン酸バリウム粉末(図4(a)、4(b))及び従来のチタン酸バリウム粉末(図4(c))の粒子SEM(Scanning Electron Microscope)写真である。
【0100】
上記表1及び図4を参照すると、粒子サイズの減少のために粒成長温度を260℃から200℃に下げた結果、比表面積が増加し(図4(a))、粒成長温度を260℃に維持しながら硫酸アンモニウム(Ammonium Sulfate)を添加したチタン酸バリウム(BaTiO)粉末の比表面積も類似して増加したことが分かる。
【0101】
さらに、本発明の一実施形態によるチタン酸バリウム(BaTiO)粉末に対してXRD測定を行った後、リートベルト法を利用して計算した結晶軸比(c/a)値が1.00634であり、硫酸アンモニウム(Ammonium Sulfate)を添加していないチタン酸バリウム(BaTiO)粉末の1.00593より高く示され、誘電率が上昇されることが分かる。
【0102】
従って、本発明の一実施形態により硫酸アンモニウム(Ammonium Sulfate)を添加したチタン酸バリウム(BaTiO)粉末の誘電率が上昇されることができる。
【0103】
図5は本発明の一実施形態によるチタン酸バリウム粉末の温度毎のSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)写真である。
【0104】
図5を参照すると、粒成長温度が低いチタン酸バリウム(BaTiO)粉末の場合、粒子内部に気孔(pore)が存在することが分かる。
【0105】
このような粒子内部に存在する気孔によってチタン酸バリウム(BaTiO)粉末の結晶性が低下する可能性があり、低温で反応する場合に上記気孔が発生することが分かる。
【0106】
一方、水熱合成工程中、チタン酸バリウム(BaTiO)が粒成長する際に硫酸アンモニウム(Ammonium Sulfate)が溶解されて発生した硫酸イオンは、反応中にチタン酸バリウム(BaTiO)粉末の表面に吸着または静電気的引力によって存在することができる。
【0107】
また、最終反応後、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末の表面に硫黄(Sulfur)がコーティングあるいは置換されることができる。
【0108】
このような硫黄の存在は、焼成時に脱バインダの触媒として作用することができ、積層セラミックキャパシタのクラックの発生頻度が減少するため、信頼性に優れた積層セラミックキャパシタの実現が可能である。
【0109】
本発明は、上述の実施形態及び添付の図面により限定されず、添付の請求範囲により限定される。従って、請求範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で当技術分野の通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0110】
1 誘電体層
10 セラミック本体
21 第1内部電極
22 第2内部電極
31、32 第1及び第2外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されたペロブスカイト粉末。
【請求項2】
前記硫化物は硫酸アンモニウム(Ammonium Sulfate)である請求項1に記載のペロブスカイト粉末。
【請求項3】
前記硫黄を含む塩はリン酸塩及び酢酸塩からなる群から選択された一つ以上である請求項1に記載のペロブスカイト粉末。
【請求項4】
前記被膜層の厚さは0.1〜10nmである請求項1に記載のペロブスカイト粉末。
【請求項5】
前記ペロブスカイト粉末は、BaTiO、BaTiZr1−x、Ba1−xTiO、BaDy1−xTiO及びBaHo1−xTiO(0<x<1)からなる群から選択された一つ以上である請求項1に記載のペロブスカイト粉末。
【請求項6】
前記ペロブスカイト粉末の平均粒径は10〜150nmである請求項1に記載のペロブスカイト粉末。
【請求項7】
前記ペロブスカイト粉末の結晶軸比(c/a)は1.001〜1.010である請求項1に記載のペロブスカイト粉末。
【請求項8】
金属塩と金属酸化物を混合してペロブスカイト粒子核を形成する段階と、
前記ペロブスカイト粒子核と純水に溶解させた硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上を混合する段階と、
前記混合物を水熱処理で粒成長させ、表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されたペロブスカイト粉末を得る段階と、
を含むペロブスカイト粉末の製造方法。
【請求項9】
前記硫化物は硫酸アンモニウム(Ammonium Sulfate)である請求項8に記載のペロブスカイト粉末の製造方法。
【請求項10】
前記硫黄を含む塩はリン酸塩及び酢酸塩からなる群から選択された一つ以上である請求項8に記載のペロブスカイト粉末の製造方法。
【請求項11】
前記金属塩は水酸化バリウムまたは水酸化バリウムと希土類塩との混合物である請求項8に記載のペロブスカイト粉末の製造方法。
【請求項12】
前記金属酸化物は酸化チタンまたは酸化ジルコニウムである請求項8に記載のペロブスカイト粉末の製造方法。
【請求項13】
前記被膜層の厚さは0.1〜10nmである請求項8に記載のペロブスカイト粉末の製造方法。
【請求項14】
前記ペロブスカイト粉末の平均粒径は10〜150nmである請求項8に記載のペロブスカイト粉末の製造方法。
【請求項15】
前記ペロブスカイト粉末は、BaTiO、BaTiZr1−x、Ba1−xTiO、BaDy1−xTiO及びBaHo1−xTiO(0<x<1)からなる群から選択された一つ以上である請求項8に記載のペロブスカイト粉末の製造方法。
【請求項16】
前記ペロブスカイト粉末の結晶軸比(c/a)は1.001〜1.010である請求項8に記載のペロブスカイト粉末の製造方法。
【請求項17】
表面に硫化物及び硫黄を含む塩で構成された群から選択された一つ以上の被膜層が形成されたペロブスカイト粉末を含む誘電体層を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体内で前記誘電体層を挟んで互いに対向するように配置される内部電極層と、を含む積層セラミック電子部品。
【請求項18】
前記被膜層の厚さは0.1〜10nmである請求項17に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項19】
前記ペロブスカイト粉末は、BaTiO、BaTiZr1−x、Ba1−xTiO、BaDy1−xTiO及びBaHo1−xTiO(0<x<1)からなる群から選択された一つ以上である請求項17に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項20】
前記ペロブスカイト粉末の結晶軸比(c/a)が1.001〜1.010である請求項17に記載の積層セラミック電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−82600(P2013−82600A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−54(P2012−54)
【出願日】平成24年1月4日(2012.1.4)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】