説明

ペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法

三塩化リンとペンタエリスリトールとを不活性な溶媒の存在下に反応させて、得られたペンタエリスリトールジクロロホスファイトとアラルキルアルコールとを反応させて、得られたペンタエリスリトールジホスファイトハロゲン化化合物の存在下に、温度80℃から300℃の条件で加熱処理することを特徴とする式(5)で示されるペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。


[式中、ArおよびArはアリール基、R、R、RおよびRは水素原子、アリール基または炭化水素基である。]
本発明の製造方法によれば、難燃剤等に利用できる特定のペンタエリスリトールジホスホネートを、高純度、高収率でかつ工業的に有利な生産性に優れた方法で提供することが出来る。

【発明の詳細な説明】
発明の詳細な説明
【技術分野】
本発明は、特定の構造を有するペンタエリスリトールジホスホネート化合物の製造方法に関する。更に詳しくは、難燃剤、結晶核剤、可塑剤等の添加剤として使用でき、殊に樹脂用難燃剤として優れた効果を有するペンタエリスリトールジホスホネート化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂は、その優れた諸物性を活かし、機械部品、電気部品、自動車部品等の幅広い分野に利用されている。一方、これらの樹脂は本質的に可燃性である為、上記用途として使用するには一般の化学的、物理的諸特性のバランス以外に、火炎に対する安全性、すなわち、高度な難燃性が要求される場合が多い。
樹脂に難燃性を付与する方法としては、難燃剤としてハロゲン系化合物、さらに難燃助剤としてアンチモン化合物を樹脂に添加する方法が一般的である。しかしながら、この方法は成形加工時あるいは燃焼時に、多量の腐食性ガスを発生させる等の問題がある。また、特に近年、製品廃棄時における環境影響等が懸念されている。そこで、ハロゲンを全く含まない難燃剤や難燃処方が強く望まれている。
ハロゲン系難燃剤を使用しないで熱可塑性樹脂を難燃化する方法としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物を添加することが広く知られている。しかし、充分な難燃性を得る為には、上記金属水和物を多量に添加する必要があり、樹脂本来の特性が失われるという欠点を有していた。
また、トリアリールリン酸エステルモノマーや縮合リン酸エステルオリゴマーの芳香族リン酸エステルも、熱可塑性樹脂に難燃性を付与するための難燃剤として頻繁に用いられてきた。しかし、トリフェニルホスフェートに代表されるトリアリールリン酸エステルモノマーは、樹脂組成物の耐熱性を著しく低下させ、かつ、揮発性が高い為に、押出し時や成形加工時にガスの発生量が多く、ハンドリング性に問題があった。さらに、この化合物は樹脂を高温に加熱するとその少なくとも一部が揮発、あるいはブリード等によって樹脂中から失われるという問題点を有していた。また、縮合リン酸エステルオリゴマーは、揮発性が改善されているものの、その多くが液体であることから、樹脂との混練には液注装置が必要となり、押出し混練時のハンドリング性に問題があった。
一方、二置換ペンタエリスリトールジホスホネートは、樹脂用難燃剤を中心に種々の検討がなされている。この化合物を熱可塑性樹脂に配合することにより、熱可塑性樹脂の難燃化を達成することができる。このホスホネート化合物が配合された熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤の配合による耐熱性、および耐衝撃性等の特性が低下することなく、しかも混練の際に化合物が揮発、あるいはブリード等により樹脂中から失われることのない特徴を有する。
上記二置換ペンタエリスリトールジホスホネートの製造法についてはいくつか開示されている。
特開平05−163288号公報においては、ペンタエリスリトールとフェニルホスホン酸ジクロライドとの反応により、ジフェニルペンタエリスリトールジホスホネートを得る製造例の記載がある。
WO02/092690号明細書においては、ジベンジルペンタエリスリトールジホスフェートとベンジルブロマイドとを反応させ、Arbuzov転移によりジベンジルペンタエリスリトールジホスホネートを得る方法が開示されている。
米国特許第4174343号明細書においては、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイトとベンジルクロライドあるいはベンジルブロマイドとを溶媒の存在又は非存在下に反応させてArbuzov転移によりジアルキルペンタエリスリトールジホスホネートを得る方法が開示されている。
米国特許第3141032号明細書および特開昭54−157156号公報においては、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイトをハロゲン化アルキル触媒あるいはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の臭化物またはヨウ化物触媒の存在下で加熱することによりArbuzov転移反応させジアルキルペンタエリスリトールジホスホネートを得る方法が開示されている。
しかしながら、本発明の特定の構造を有するペンタエリスリトールジホスホネートに関して、必ずしも従来通りの製造方法ではかかる目的物を高収率で回収できないという問題があった。また、上記の特許でも製造法の詳細は詳述されておらず、目的物の純度および収率に関する記載もなく、工業的な製造法の見地からも種々の問題が内在していた。
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、特定のペンタエリスリトールジホスホネートを収率良く高純度で得られるペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、工業的に有利な生産性に優れた特定のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、スチレン系樹脂やポリエステル樹脂に有用な樹脂用難燃剤を工業的に有利な製造方法により提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、前記本発明の目的は、下記発明により達成される。
(A)三塩化リンとペンタエリスリトールとを不活性な溶媒の存在下に反応させて式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトを得て(a反応)、(B)該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと式(2)で示されるアラルキルアルコールとを反応させて式(3)で示されるペンタエリスリトールジホスファイトを得て(b反応)、(C)該ペンタエリスリトールジホスファイトを式(4)に示されるハロゲン化化合物の存在下に、温度80℃〜300℃の条件で加熱処理する(c反応)ことを特徴とする式(5)で示されるペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。

[式中、Arは、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、RおよびRは、同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。]

[式中、ArおよびArは、同一または異なっていてもよく、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。]

[式中、Arは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、RおよびRは、同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。XはBr基である。]

[式中、ArおよびArは、同一または異なっていてもよく、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。]
以下本発明のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法についてさらに詳細に説明する。
前記ペンタエリスリトールジホスホネート化合物として、式(5)においてAr、Arが、フェニル基、各種キシリル基、各種トルイル基、ジ−t−ブチルフェニル基、各種クメニル基、ビフェニル基、ナフチル基等であり、R、R、RおよびRが、水素原子、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、プロペニル基、フェニル基、各種トルイル基、各種キシリル基、各種クメニル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等である化合物を挙げる事ができる。好ましくは、Ar、Arがフェニル基、R、R、RおよびRが水素原子、メチル基、フェニル基であり、特に好ましくはAr、Arがフェニル基、R、R、RおよびRが水素原子である。
具体的には、3,9−ビス(フェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−メチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((3−メチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((4−メチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,4−ジメチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,6−ジメチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((3,5−ジメチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,4,6−トリメチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
3,9−ビス((2−sec−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((4−sec−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,4−ジ−sec−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,6−ジ−sec−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,4,6−トリ−sec−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
3,9−ビス((2−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((4−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
3,9−ビス((4−ビフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1−ナフチル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−ナフチル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1−アントリル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−アントリル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((9−アントリル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
3,9−ビス(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(2−メチル−2−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(トリフェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
3−フェニルメチル−9−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−フェニルメチル−9−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−フェニルメチル−9−(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−フェニルメチル−9−ジフェニルメチル−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)−9−(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)−9−(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−ジフェニルメチル−9−(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−ジフェニルメチル−9−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−ジフェニルメチル−9−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
なかでも3,9−ビス(フェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが好ましく、特に下記式(5−a)で示される3,9−ビス(フェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ジベンジルペンタエリスリトールジホスホネート)が好ましい。

本発明で用いるペンタエリスリトールジホスファイトの合成法に関しては、前記a反応およびb反応により得ることができる。
本発明のペンタエリスリトールジホスファイトとしては、前記式(3)においてAr、Arが、フェニル基、各種キシリル基、各種トルイル基、ジ−t−ブチルフェニル基、各種クメニル基、ビフェニル基、ナフチル基等であり、R、R、RおよびRが、水素原子、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、プロペニル基、フェニル基、各種トルイル基、各種キシリル基、各種クメニル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等である化合物を挙げる事ができる。好ましくは、Ar、Arが、フェニル基、R、R、RおよびRが、水素原子、メチル基、フェニル基であり、特に好ましくはAr、Arがフェニル基、R、R、RおよびRが水素原子である。
具体的には、3,9−ビス((フェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2−メチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((3−メチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((4−メチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4−ジメチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,6−ジメチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((3,5−ジメチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4,6−トリメチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
3,9−ビス(((2−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((4−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4−ジ−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,6−ジ−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4,6−トリ−sec−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
3,9−ビス(((2−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((4−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
3,9−ビス(((4−ビフェニル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((1−ナフチル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2−ナフチル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((1−アントリル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((2−アントリル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(((9−アントリル)メチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
3,9−ビス((1−フェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1−メチル−1−フェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((ジフェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((トリフェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
3−(フェニルメチル)オキシ−9−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(フェニルメチル)オキシ−9−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(フェニルメチル)オキシ−9−(1−フェニルエチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(フェニルメチル)オキシ−9−(ジフェニルメチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)オキシ−9−(1−フェニルエチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ−9−(1−フェニルエチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(ジフェニルメチル)オキシ−9−(1−フェニルエチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(ジフェニルメチル)オキシ−9−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−(ジフェニルメチル)オキシ−9−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)オキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが好ましい。
なかでも3,9−ビス((フェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1−フェニルエチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((ジフェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが好ましく、特に3,9−ビス((フェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが好ましい。
a反応(1段階目の反応)
三塩化リンについて
・純度
本発明に用いられる三塩化リンは、その純度が98%以上であることが望ましい。高純度の三塩化リンは、例えば市販品を不活性雰囲気下で蒸留することにより得られる。不活性雰囲気とは本発明で用いる三塩化リンを変性しうる酸素ガス、湿気等が実質的に無い状態の事である。系内の酸素ガス濃度について具体的には5%以下、好ましくは1%以下、更に好ましくは100ppm以下であることが望ましい。具体的な例としては、反応系内を窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換後、該不活性ガス気流下もしくは該不活性ガス雰囲気下で蒸留を行う方法等が挙げられる。該酸素濃度はJIS B 7983に規定のジルコニア式分析法等で測定する事ができる。三塩化リンの純度はガスクロマトグラフィーで定量することができ、またJIS K8404−1887に示される様に、化学反応での定量が可能である。
ペンタエリスリトールについて
・純度、含水率
本発明に用いられるペンタエリスリトールは、その純度が98%以上であり、かつ、含水率が1000ppm以下であることが望ましい。好ましくは、含水率が500ppm以下であり、更に好ましくは、含水率が100ppm以下のものである。高純度のペンタエリスリトールは、主として市販品を水から再結晶して、高分子量の不純物を除去することにより得ることができる。また、低含水率のペンタエリスリトールは、反応に用いる直前に加熱乾燥させることにより得ることができる。ペンタエリスリトールの純度はガスクロマトグラフィーで定量される。ペンタエリスリトールの含水率はカールフィッシャー法で定量される。
ペンタエリスリトールと三塩化リンのモル比について
本発明のペンタエリスリトールに対する三塩化リンのモル比は、三塩化リンをペンタエリスリトール100モル%に対して195モル%〜240モル%使用することが好ましく、200モル%〜220モル%使用することがより好ましい。該モル比が195モル%未満であると、最終的に得られるペンタエリスリトールジホスホネートの回収量が大幅に低下することがある。一方、該モル比が240モル%を越えると、未反応で残る三塩化リンが以後の反応に与える影響が大きくなり、最終的に得られるペンタエリスリトールジホスホネートの回収量が低下することがある。加えて、廃棄物の量が増大し、生産性が大幅に低下することがある。
溶媒について
・溶媒種類
本発明の三塩化リンとペンタエリスリトールとの反応で使用する溶媒は、反応に関与しない不活性な溶媒であり、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素および含酸素原子炭化水素からなる群より選ばれる1種又は2種以上からなる不活性溶媒が望ましい。溶媒は単独でも混合溶媒でも使用できる。
かかる溶媒はペンタエリスリトール、三塩化リン、有機塩基化合物と反応しない不活性な溶媒であれば良い。この様なものとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。特に、常圧下での沸点が100℃〜300℃のものが好適に用いられる。この様なものとしては、デカン、ドデカン、ジブチルエーテル、ジオキサン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられ、特にキシレンが好ましい。
・溶媒含水量
これらの溶媒の含水率は1000ppm以下であることが望ましい。この含水率以上では、原料の三塩化リンの加水分解が促進することが認められる。より望ましくは500ppm以下、特に望ましいのは100ppm以下である。
触媒について
・触媒種類
本発明の三塩化リンとペンタエリスリトールとの反応を効率よく進行させるために、触媒を使用する事ができる。かかる触媒としては、リン原子−塩素原子結合と反応しない有機塩基化合物が好ましく用いられる。該リン原子−塩素原子結合と反応しない有機塩基化合物とは、実質的に窒素原子−水素原子結合及び/または酸素原子−水素原子結合を有しない有機塩基化合物である。実質的にこれらの結合を有しないとは、該有機塩基化合物中の窒素原子−水素原子結合及び酸素原子−水素原子結合量が5000ppm以下のもので、好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは500ppm以下のものである。
該リン原子−塩素原子結合と反応しない有機塩基化合物としては、脂肪族又は芳香族の、非環状又は環状アミン類、アミド類が挙げられる。これらの化合物の一例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、メチルジエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリフェネチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N,N’,N’−テトラエチルメタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、1−メチルピロール、1−エチルピロール、1−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、オキサゾール、チアゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−メチルピラゾール、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、N,N−ジエチル−4−アミノピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、キヌクリジン、キナゾリン、9−メチルカルバゾール、アクリジン、フェナントリジン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルプロパンアミド、N,N−ジメチルベンズアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドンなどが挙げられる。
なかでもトリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−メチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、4−ビニルピリジンとスチレンの共重合体が好ましく、トリエチルアミン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミドがより好ましく、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミドがあらに好ましく、特にピリジンが好ましい。
また、上記の化合物がポリマー中に化学的に結合された化合物でもよい。例えばポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、4−ビニルピリジンとスチレンの共重合体などが挙げられる。
該有機塩基化合物は単一の化合物として用いるだけでなく、二種類以上併用して用いることもできる。
・触媒量
上記の有機塩基化合物触媒の存在割合は、三塩化リン100モル%に対して0.1モル%〜100モル%が好ましい。また、実用上1モル%〜20モル%が望ましい。
三塩化リンとペンタエリスリトールとの混合方法について
本発明における三塩化リンとペンタエリスリトールとの混合方法としては、ペンタエリスリトールの懸濁液に三塩化リンを滴下する、三塩化リンにペンタエリスリトールの懸濁液を滴下する、三塩化リンにペンタエリスリトール粉末を添加する等、種々の方法が適用できる。中でも、ペンタエリスリトールの懸濁液に三塩化リンを滴下する方法が作業効率の点から好ましい。
反応温度について
本発明における三塩化リンとペンタエリスリトールとの反応における反応温度は−10℃〜90℃の範囲であることが望ましい。より望ましくは0℃〜60℃であり、特に望ましいのは5℃〜40℃である。該反応温度が−10℃未満であると反応速度が大幅に低下し、生産性の低下に繋がることがある。一方90℃を越えると副反応が起こり、目的とするペンタエリスリトールジホスホネートの回収量が少なくなることがある。
反応時間について
本発明において、三塩化リンとペンタエリスリトールとを反応させるときの反応時間は特に規定しないが、1分間〜500分間かけて反応させるのが好ましい。更に好ましくは5分間〜300分間である。反応時間が上記範囲であれば、単位時間当りの発熱量、塩化水素ガスの発生量が小さく、反応温度を制御することが容易であり、熱交換器、冷却器や塩化水素ガス除害装置等の設備負荷が小さくなり好ましい。また、生産効率の点からも反応時間は上記範囲が好ましい。
反応雰囲気について
本発明における三塩化リンとペンタエリスリトールとの反応系は、常時不活性気体雰囲気下に保つことが望ましい。かかる目的のためには、窒素、アルゴンらの不活性気体を反応系内に流せばよい。更には、この気体を連続的に系外に出すことで、副生するハロゲン化水素ガスもこの気体に同伴し、系外に出ていくという効果があり、不活性気体を反応系内に滞留させるよりも反応系内を流す方が好ましい。
本発明において、三塩化リンとペンタエリスリトールとを反応に関与しない不活性な溶媒の存在下で反応させることにより3,9−ジクロロ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(以下、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと呼ぶ。前記式(1)で示される化合物)が生成し、同時に副生成物としてペンタエリスリトール1モルに対して4モルの塩化水素が生成する。該ペンタエリスリトールジクロロホスファイト化合物は不安定な化合物である。
塩化水素の除去について
本発明において、前記反応により得られたペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液から塩化水素を除去することが好ましい。かかる方法としては、下記の加熱処理や減圧処理が行われる。
・加熱処理
加熱処理はペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液を40〜120℃に加熱する処理を行なう。加熱処理の時間は1分間〜1時間の範囲が好ましく、10分間〜30分間の範囲がより好ましい。また、加熱処理は不活性気体雰囲気下で行なうことが好ましい。
・減圧処理
減圧処理はペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液を減圧にする処理を行なう。減圧度は好ましくは100〜70,000Paの範囲であり、より好ましくは400〜40,000Paの範囲であり、更に好ましくは800〜20,000Paの範囲である。また、減圧処理に際して塩化水素は除去されるが反応溶媒や反応混合物が除去されないようにすることが好ましい。具体的な方法として、例えばペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液を室温に保ったまま、0℃以下に冷却した冷却管を通して減圧度3,000Pa程度で減圧処理をすることで塩化水素のみを除去する方法が挙げられる。減圧処理を行う時間はペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液の量や減圧度などによって変わるため一概には言えないが、通常1分間〜1時間行えば良く、好ましくは10分間〜30分間行えば良い。
前記a反応により得られたペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液は、この溶液又は懸濁液からペンタエリスリトールジクロロホスファイトを単離、精製してもよいが、この溶液又は懸濁液をb反応の反応にそのまま使用することができる。ペンタエリスリトールジクロロホスファイトを単離、精製する工程を省略することで、作業性、生産効率の点で優れている。加えて、本来、不安定なペンタエリスリトールジクロロホスファイト化合物が分解するのを最小限にとどめることになり、結果として、本発明の目的物であるペンタエリスリトールジホスホネートの回収率の増加に繋がる。
b反応(2段階目の反応)
有機塩基化合物について
・有機塩基化合物の種類
本発明において前記a反応により得られたペンタエリスリトールジクロロホスファイトとアラルキルアルコールとを反応させる際に有機塩基化合物を共存させることが好ましい。有機塩基化合物とは、リン原子−塩素原子結合と反応しない有機塩基化合物が好ましく用いられる。該リン原子−塩素原子結合と反応しない有機塩基化合物とは、実質的に窒素原子−水素原子結合及び/または酸素原子−水素原子結合を有しない有機塩基化合物である。実質的にこれらの結合を有しないとは、該有機塩基化合物中の窒素原子−水素原子結合及び酸素原子−水素原子結合量が5000ppm以下のもので、好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは500ppm以下のものである。
該リン原子−塩素原子結合と反応しない有機塩基化合物としては、脂肪族又は芳香族の、非環状又は環状アミン類が挙げられる。これらの化合物の一例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、メチルジエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリフェネチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N,N’,N’−テトラエチルメタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、1−メチルピロール、1−エチルピロール、1−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、オキサゾール、チアゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−メチルピラゾール、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、N,N−ジエチル−4−アミノピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、キヌクリジン、キナゾリン、9−メチルカルバゾール、アクリジン、フェナントリジン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどが挙げられる。
なかでもトリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−メチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、キノリン、4−ビニルピリジンとスチレンの共重合体が好ましく、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンがより好ましく、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンが特に好ましい。
また、上記の化合物がポリマー中に化学的に結合された化合物でもよい。例えばポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、4−ビニルピリジンとスチレンの共重合体などが挙げられる。
該有機塩基化合物は単一の化合物として用いるだけでなく、二種類以上からなる混合物として用いることができる。
・有機塩基化合物の使用量
本発明において、上記の有機塩基化合物の使用量は、ペンタエリスリトール100モル%に対して180モル%〜400モル%である事が望ましい。180モル%より少ないと、副生する塩化水素が捕捉できず、捕捉できなかった塩化水素が、得られたペンタエリスリトールジホスファイトを分解する為に、結果的に本発明の目的物であるペンタエリスリトールジホスホネートの回収量を大幅に減少させることがある。一方、該有機塩基化合物の割合がペンタエリスリトールに対して400モル%より多いと、該有機塩基化合物の回収または廃棄処理の負荷が大きくなり、生産効率の面で劣ることがある。より好ましくは190モル%〜250モル%であり、更に好ましくは195モル%〜220モル%である。
・有機塩基化合物の含水量
上記の有機塩基化合物の含水量は、2000ppm以下が望ましい。2000ppmを越えると、水に由来する副生成物が生成し、更に該副生成物が、本発明のペンタエリスリトールジホスファイトの生成を阻害すると共に、ペンタエリスリトールジホスファイト自体の分解に関与する為に、結果として本発明の目的物であるペンタエリスリトールジホスホネートの回収量を大幅に減少させることがある。更に望ましくは1000ppm以下であり、特に望ましいのは100ppm以下である。
アラルキルアルコールについて
・アラルキルアルコールの種類
本発明で用いられるアラルキルアルコールは、前記式(2)で示される化合物であり、式(2)において、Arがフェニル基、各種キシリル基、各種トルイル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等であり、RおよびRが水素原子、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、プロペニル基、フェニル基、各種トルイル基、各種キシリル基、各種クメニル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等である化合物を挙げる事ができる。好ましくはArがフェニル基、RおよびRが水素原子、メチル基、フェニル基であり、特に好ましくはArがフェニル基、RおよびRが水素原子である。
具体的には、ベンジルアルコール、(2−メチルフェニル)メチルアルコール、(3−メチルフェニル)メチルアルコール、(4−メチルフェニル)メチルアルコール、(2,4−ジメチルフェニル)メチルアルコール、(2,6−ジメチルフェニル)メチルアルコール、(3,5−ジメチルフェニル)メチルアルコール、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチルアルコール、(2−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(4−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,4−ジ−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,6−ジ−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,4,6−トリ−sec−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(4−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)メチルアルコール、(4−ビフェニル)メチルアルコール、(1−ナフチル)メチルアルコール、(2−ナフチル)メチルアルコール、(1−アントリル)メチルアルコール、(2−アントリル)メチルアルコール、(9−アントリル)メチルアルコール、1−フェニルエチルアルコール、1−メチル−1−フェニルエチルアルコール、ジフェニルメチルアルコール、トリフェニルメチルアルコールが挙げられる。なかでも、ベンジルアルコール、1−フェニルエチルアルコール、ジフェニルメチルアルコールが好ましく、特にベンジルアルコールが好ましい。
該アラルキルアルコールは単一の化合物として用いるだけでなく、二種以上からなる混合物として用いることもできる。
・アラルキルアルコールの使用量
該アラルキルアルコールの使用量は、ペンタエリスリトール100モル%に対し180モル%〜250モル%が望ましい。より好ましくは190モル%〜220モル%である。更に好ましくは200モル%〜210モル%である。該アラルキルアルコールの使用量が180モル%未満の場合、該アラルキルアルコールの不足分以上に、本発明の目的物であるペンタエリスリトールジホスホネートの回収量が大きく低下する。該アラルキルアルコールの使用量が250モル%を越えると過剰のアラルキルアルコールを回収する工程や廃棄処理する工程の負荷が大きくなり、工業的に不利となることがある。
・アラルキルアルコールの添加方法
ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと前記式(2)で示されるアラルキルアルコールを有機塩基化合物の存在下において反応させる方法は特に限定されない。ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液に有機塩基化合物を添加し、続いてアラルキルアルコールを添加して反応させても良く、アラルキルアルコールに、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液と有機塩基化合物の混合物を添加しても良く、有機塩基化合物とアラルキルアルコールとの混合物にペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液を添加しても良く、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液に有機塩基化合物とアラルキルアルコールとの混合物を添加して反応させても良い。
反応温度、圧力について
本発明において、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトとアラルキルアルコールとを反応させるときの温度条件は−20℃〜100℃の範囲が望ましい。より好ましくは−10℃〜80℃である。−20℃未満だと反応速度が低下し、生産効率の低下をまねく。一方、100℃を越えた温度で反応させるとペンタエリスリトールジホスファイトの分解によって、結果的に本発明の目的物であるペンタエリスリトールジホスホネートの回収率低下を引き起こす。また、反応は常圧下に行なうことが好ましい。
反応時間について
本発明において、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトとアラルキルアルコールとを反応させるときの反応時間は特に規定しないが、1分〜500分かけて反応させるのが好ましい。更に好ましくは5分〜300分である。1分未満で反応させると単位時間当りの発熱量が大きく、反応温度を制御することが困難となるだけでなく、熱交換器や冷却器等の設備負荷が大きくなる。一方、500分を越えた時間での反応は生産効率が低下することになる。
反応系内の水分量について
本発明において、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトとアラルキルアルコールとを反応させるときの反応系内の含水率は2000ppm以下が望ましい。より好ましくは1000ppm以下であり、更に好ましくは500ppm以下であり、特に好ましくは300ppm以下である。反応系内の含水率が2000ppmを越えるとペンタエリスリトールジクロロホスファイトと水との反応で副生成物が生成する割合以上に目的物の回収率低下の割合が大きくなる。
溶媒について
b反応においては反応に関与しない不活性な溶媒を使用する。a反応により得られたペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液をb反応にそのまま使用した場合は、新たに溶媒を追加する必要はないが追加してもよい。また、a反応においてペンタエリスリトールジクロロホスファイトを単離した場合は溶媒を使用する。
該溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸エチル、ベンゼン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。好ましくはヘキサン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンである。更に好ましくはヘキサン、ドデカン、ジブチルエーテル、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンである。特にキシレンが好ましい。
反応雰囲気について
ペンタエリスリトールジクロロホスファイトとアラルキルアルコールとを反応させる際には、不活性雰囲気下で行うことが望ましい。不活性雰囲気とは本発明で用いるアラルキルアルコール、有機塩基化合物や生成したペンタエリスリトールジホスファイト等を変性しうる酸素ガス、湿気、塩素ガス等が実質的に無い状態の事である。
系内の酸素濃度について具体的には5%以下、好ましくは1%以下、更に好ましくは100ppm以下であることが望ましい。具体的な例としては、反応系内を窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換後、該不活性ガス気流下もしくは該不活性ガス雰囲気下で反応を行う方法が挙げられる。該酸素濃度はJIS B 7983に規定のジルコニア式分析法等で測定される。
有機塩基化合物成分の除去について
・有機塩基化合物成分の除去量
本発明のb反応において、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトとアラルキルアルコールとを有機塩基化合物の存在下に反応させた場合、生成したペンタエリスリトールジホスファイトを含む反応混合物から、有機塩基化合物及び有機塩基化合物の塩(有機塩基化合物成分)を反応系外に除去する事が必要である。
該有機塩基化合物成分を反応系外に除去する割合としては、使用した有機塩基化合物100モル%に対し、90モル%以上の有機塩基化合物成分を除去することが望ましく、95モル%以上の有機塩基化合物成分を除去することが更に望ましい。有機塩基化合物の除去する割合が90モル%未満であると、次のc反応でペンタエリスリトールジホスホネートを得る際に副反応を誘発し、ペンタエリスリトールジホスホネートの回収量を低下させるおそれがある。有機塩基化合物成分の除去方法としては、使用する溶媒の種類や目的物の性質等、様々な条件に依存するため一概には言えないが、一例を挙げると、溶媒としてキシレンを使用した場合、有機塩基化合物はキシレンに実質的に不溶な有機塩基化合物の塩化水素塩を形成するため、ろ過等の操作で容易に取り除く事ができる。
・有機塩基化合物成分の除去操作の雰囲気
前記生成したペンタエリスリトールジホスファイトから有機塩基化合物成分を反応系外に除去する操作は不活性雰囲気下で行う事が好ましい。不活性雰囲気とは本発明のペンタエリスリトールジホスファイトを変性しうる酸素ガス、塩素ガス等が実質的に無い状態の事である。系内の酸素濃度について具体的には5%以下、好ましくは1%以下、更に好ましくは100ppm以下であることが望ましい。例えば窒素ガス、アルゴンガス等の気流下もしくは雰囲気下において洗浄操作等を行う方法が挙げられる。該酸素濃度はJIS B 7983に規定のジルコニア式分析法等で測定される。
有機塩基化合物成分除去後の処理について
前述した有機塩基化合物成分を除去した後の、ペンタエリスリトールジホスファイトの溶液または懸濁液は、この溶液または懸濁液からペンタエリスリトールジホスファイトを単離してもよいが、この溶液または懸濁液をそのまま次のc反応に使用することが好ましい。ペンタエリスリトールジホスファイトを単離する工程を省略することで、作業性、生産効率の点で優れている。
また、有機塩基化合物成分を除去した後のペンタエリスリトールジホスファイト溶液または懸濁液を水やアルカリ水溶液で洗浄処理した後に、次のc反応に使用することもできる。
また、有機塩基化合物成分を除去した後のペンタエリスリトールジホスファイトの溶液または懸濁液から溶媒等の一部を留去等で除去した後に、次のc反応に使用することもできる。
生産効率の点から、有機塩基化合物成分を除去した後のペンタエリスリトールジホスファイト溶液または懸濁液をそのまま次のc反応に使用する方法、もしくは有機塩基化合物成分を除去した後のペンタエリスリトールジホスファイト溶液または懸濁液を水やアルカリ水溶液で洗浄処理した後に次のc反応に使用する方法が好ましい。
c反応(3段階目の反応;アルブゾフ反応)
本発明において、前記b反応で得られたペンタエリスリトールジホスファイトは前記式(4)に示されるハロゲン化化合物の存在下に、温度80℃〜300℃の条件で加熱処理して、前記式(5)で示されるペンタエリスリトールジホスホネートを得る。
溶媒について
・溶媒の種類
本発明のc反応において、ペンタエリスリトールジホスファイトを加熱処理する際に、溶媒を使用することもできる。溶媒を使用する事で、ペンタエリスリトールジホスファイトが該溶媒中に溶解若しくは分散し、攪拌の負荷を軽減できる。また本発明の加熱処理の際に反応系に熱が均一に伝わり易くなるという利点がある。
溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素および含酸素原子炭化水素からなる群より選ばれる1種又は2種以上からなる溶媒が好ましく、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれる1種又は2種以上からなる溶媒が更に好ましい。また、常圧下の沸点が100℃〜300℃のものが望ましい。該溶媒としては、本発明の三塩化リンとペンタエリスリトールを反応させる際に使用する不活性な溶媒と同じ溶媒種であることが、溶媒の分離回収等の負荷を考えると望ましい。
溶媒として、具体的にはヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。常圧下での沸点が100℃〜300℃のものが好適に用いられ、この様なものとしては、デカン、ドデカン、ジブチルエーテル、ジオキサン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられ、特にキシレンが好ましい。
・溶媒の量
溶媒の使用量は、本発明で使用するペンタエリスリトールのモル濃度で表すと、好ましくは0.1〜5モル/L、より好ましくは0.3〜3モル/Lである。0.1モル/L未満ではペンタエリスリトールジホスホネートの生成速度が極端に低下し、生産効率の低下を招くことがある。
加熱温度について
本発明のc反応において、ペンタエリスリトールジホスホネートはペンタエリスリトールジホスファイトを、ハロゲン化化合物の共存下に、加熱処理する事で得られる。その際、該加熱処理の温度は80℃〜300℃であり、好ましい加熱処理の温度は100℃〜250℃である。加熱処理の温度が80℃未満では反応速度が著しく低下し、生産効率の点で好ましくない。加熱処理の温度が300℃を越える場合は、副反応を促進し、ペンタエリスリトールジホスホネートの回収率の低下を引き起こし好ましくない。
反応時間について
本発明のc反応における加熱処理の時間は1分〜1200分が好ましく、10分〜1000分がより好ましい。1分未満では未反応物が残り、目的とするペンタエリスリトールジホスホネートの回収率の低下を引き起こすことがある。一方1200分をこえる時間では生産効率の悪化を引き起こすことがある。
ハロゲン化化合物について
・ハロゲン化化合物の種類
本発明のc反応において、前記式(4)で示されるハロゲン化化合物が触媒として使用される。
前記式(4)で示されるハロゲン化化合物において、Arは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基であり、好ましくは炭素数6〜10の置換もしくは非置換のアリール基である。RおよびRは、同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、好ましくは水素原子もしくは炭素数1〜8の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子もしくは炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、特に好ましくは水素原子である。XはBr基である。
該ハロゲン化化合物の具体例としては、ベンジルブロマイド、(1−ブロモエチル)ベンゼン、(2−ブロモエチル)ベンゼン、ジフェニルメチルブロマイド等が挙げられ、なかでもベンジルブロマイド、(1−ブロモエチル)ベンゼン、(2−ブロモエチル)ベンゼンが好ましく、特にベンジルブロマイドが好ましい。
前記式(4)で示されるハロゲン化化合物を使用することにより、通常触媒として使用される他のハロゲン化化合物(例えばヨウ化ナトリウム、テトラブチルアンモニウムブロマイド、n−ブチルアイオダイド)と比較して、高い収率で高純度のペンタエリスリトールジホスホネートを得ることができる。
・ハロゲン化化合物の使用量
本発明で使用される前記式(4)で示されるハロゲン化化合物の使用量は特に限定はしないが、本発明で用いるペンタエリスリトール1モルに対して1モル〜10モルが好ましく、1.5モル〜3モルが特に好ましい。
アルブゾフ反応系について
・水分量
本発明のc反応における反応系中の水分量は、特に規定しないが2000ppm以下が望ましい。更に好ましくは1000ppm以下である。該水分量が2000ppmより多い場合には、理由は不明であるが本発明で用いるペンタエリスリトールジホスファイトと水との反応に由来すると考えられる副生成物の割合以上に目的物の回収率低下の割合が大きくなる。
・アルコール量
本発明のc反応における反応系中のアルコール量は、30000ppm以下が好ましい。更に好ましくは10000ppm以下である。該アルコールはペンタエリスリトールジホスファイトの製造工程で混入することがあり、該アルコールが大量に混入しているペンタエリスリトールジホスファイトを用いると目的とするペンタエリスリトールジホスホネートの回収率が大幅に低下する。
・反応雰囲気
本発明のc反応における加熱処理は不活性雰囲気下で行うのが好ましい。不活性雰囲気とは本発明で用いるペンタエリスリトールジホスファイト等を変性しうる酸素ガス、湿気等が実質的に無い状態の事である。系内の酸素濃度について具体的には5%以下、好ましくは1%以下、更に好ましくは100ppm以下であることが望ましい。具体的な例としては、反応系内を窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換後、該不活性ガス気流下もしくは該不活性ガス雰囲気下で加熱処理を行う方法が挙げられる。該酸素濃度はJIS B 7983に規定のジルコニア式分析法等で測定される。
精製方法について
本発明において、c反応で得られたペンタエリスリトールジホスホネートは以下の方法で精製することが好ましい。かかる精製方法とは、一般式R−OHで表される化合物を用いて、目的物のペンタエリスリトールジホスホネートを加熱洗浄する事である。その際の洗浄温度は50℃〜120℃以下である。120℃をこえる温度では、生成したペンタエリスリトールジホスホネートが分解する可能性があり好ましくない。一方50℃より低い温度では洗浄効果が低く、残留揮発物の含有量を低減した該ペンタエリスリトールジホスホネートを得る為には洗浄を何度も繰り返す事になり、生産効率の点で好ましくない。上記精製方法を採用することにより、粉末状のペンタエリスリトールジホスホネートは鱗片状の結晶となり、乾燥性に優れたものとなる。
かかる一般式R−OHで表される化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等をあげる事ができるが、経済的観点、操作性の観点からメタノールが好ましい。
上記精製方法を適用した場合、ペンタエリスリトールジホスホネート中の残留揮発分は5000ppm以下となる。このように残留揮発分が少ないペンタエリスリトールジホスホネートは、樹脂に混合する際に大きな問題となるガス発生が抑制され、更に樹脂の着色や樹脂そのものの変性も抑制できる。すなわち、かかる精製方法で得られたペンタエリスリトールジホスホネートは実用的見地からも非常に有用であるといえる。
本発明の方法で製造されたペンタエリスリトールジホスホネートは、スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、ABS樹脂等)やポリエステル樹脂等の難燃剤として好適に使用される。かかる難燃性樹脂組成物は、非常に高い難燃性能を有し、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器などの種々の成形品を成形する材料として有用である。具体的には、ブレーカー部品、スイッチ部品、モーター部品、イグニッションコイルケース、電源プラグ、電源コンセント、コイルボビン、コネクター、リレーケース、ヒューズケース、フライバクトランス部品、フォーカスブロック部品、ディストリビューターキャップ、ハーネスコネクターなどに好適に用いることができる。さらに、薄肉化の進むハウジング、ケーシングまたはシャーシ、例えば、電子・電気製品(例えば電話機、パソコン、プリンター、ファックス、コピー機、ビデオデッキ、オーディオ機器などの家電・OA機器またはそれらの部品など)のハウジング、ケーシングまたはシャーシに有用である。特に優れた耐熱性、難燃性が要求されるプリンターの筐体、定着ユニット部品、ファックスなど家電・OA製品の機械・機構部品などとしても有用である。
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、評価は下記の方法で行った。
(1)原料の含水率
三菱化学株式会社製 電量滴定式水分測定装置 CA−06型を用いてカールフィッシャー法にて測定した。
(2)ペンタエリスリトールジホスホネートの純度測定
HPLC装置としてWaters社製Separations Module 2690、検出器としてWaters社製Dual λ Absorbance Detector 2487(UV−260nm)、カラムとして野村化学製ODS−7(300mm×4mmφ)、溶離液としてアセトニトリルと水の6:4混合溶液、測定温度40℃の条件でHPLC測定を行い純度を求めた。
(3)回収した有機塩基化合物の純度測定
Varian社製300MHzNMR測定装置を用い、重クロロホルムを溶媒とし、室温にてH NMR測定を行い、得られたスペクトル中の全ピークに対する目的物ピークの相対面積強度比から求めた。
実施例で使用した各試薬は以下に示した通りである。
(1)ペンタエリスリトール
広栄化学工業株式会社のペンタリット−S(純度99.4%)を、予め乾燥させたものを使用した。含水率は38ppmであった。
(2)三塩化リン
キシダ化学株式会社から購入した純度99%以上の三塩化リンを、予め窒素気流下で蒸留したものを用いた。
(3)N,N−ジエチルアニリン
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを、モレキュラーシーブスにより乾燥させてから用いた。含水率は22ppmであった。
(4)ピリジン
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを、モレキュラーシーブスにより乾燥させてから用いた。含水率は20ppmであった。
(5)キシレン
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを、モレキュラーシーブスにより乾燥させてから用いた。含水率は12ppmであった。
(6)ベンジルアルコール
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを、モレキュラーシーブスにより乾燥させてから用いた。含水率は25ppmであった。
(7)ベンジルブロマイド
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードを、モレキュラーシーブスにより乾燥させてから用いた。含水率は20ppmであった。
(8)メタノール
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードをそのまま用いた。
(9)水酸化ナトリウム
和光純薬工業株式会社から購入した特級グレードをそのまま用いた。
【実施例1】
(A)a反応
500mLのガラス製の四口フラスコに、テフロン製攪拌翼を取り付けたテフロンコーティングされている攪拌棒、バキュームシール、及び撹拌器からなる攪拌装置一式と、管頂に塩化カルシウム管を付けたガラス製の還流冷却管、上部にガラスコックを取り付けた均圧管付きの100mL滴下漏斗、及びアルコール温度計を取り付けた。該滴下漏斗上部のガラスコックを通して乾燥窒素を流しながら、ヒートガンで加熱し器壁の水分を除去した。室温まで放冷後、ペンタエリスリトール27.0g(0.198モル)、キシレン80mL、ピリジン0.800g(0.0101モル)を該反応装置に加えた。
滴下漏斗に三塩化リン56.4g(0.411モル)を加えた。還流冷却器に−20℃の冷媒を流し、攪拌を開始した。室温下(約22℃)、約30分かけて該三塩化リンを滴下した。系内温度は、滴下開始直後約4℃ほど上昇したが、その後室温付近でほぼ一定であった。滴下終了後、そのまま室温下で1時間攪拌をつづけることで3,9−ジクロロ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(以下、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと呼ぶ)の白色懸濁液を得た。該反応中に発生した塩化水素は、該還流冷却管を通して反応系外の水酸化ナトリウム水溶液に吸収させた。
乾燥窒素を導入しているガラスコックを閉じた後、塩化カルシウム管を取り外し、還流冷却管とダイアフラムポンプを耐圧ホースで接続した。還流冷却管を十分に冷却しながら、ダイアフラムポンプにより反応容器内を3000Paまで減圧にして、30分間、白色懸濁液を撹拌した。ダイアフラムポンプから排出される気体は水酸化ナトリウム水溶液に吹き込んだ。減圧処理後、ダイアフラムポンプを止め、ガラスコックを開けて反応容器内に乾燥窒素を流した。
(B)b反応
該反応装置から三塩化リンを滴下した滴下漏斗を取り外し、予め乾燥させた200mLの均圧管付き滴下漏斗に交換した。滴下漏斗にベンジルアルコール42.9g(0.397モル)とキシレン100mLを加えた。四口フラスコにはN,N−ジエチルアニリン59.5g(0.399モル)とキシレン100mLを加えた。還流冷却管に冷媒を流して冷却しながら撹拌した。アイスバスにより反応系内の温度を5℃まで冷却した後、滴下漏斗からベンジルアルコールのキシレン溶液を1時間かけて滴下した。滴下の進行に伴って反応系は白色スラリーとなった。滴下中の系内温度は最高8℃まで上昇した。滴下終了後、約30分かけて室温まで戻し、そのまま1時間保持し、3,9−ビス((フェニルメチル)オキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(以下ペンタエリスリトールジベンジルホスファイトと呼ぶ)を含む反応混合物を得た。
得られた反応混合物はグラスフィルターを用いて窒素雰囲気下でろ別し、ペンタエリスリトールジベンジルホスファイトの溶液を得た。グラスフィルター上の白色固体の洗浄に乾燥キシレンを100mL用いた。なおグラスフィルター上の白色固体を水酸化ナトリウム水溶液に加えたところ、二層に分離し、上層はN,N−ジエチルアニリンであった。上層の重量及びH NMR純度より使用したN,N−ジエチルアニリンの99%が回収されたことが分かった。
(C)c反応
上記(B)で得たペンタエリスリトールジベンジルホスファイト溶液を、テフロン製攪拌翼を取り付けたテフロンコーティングされている攪拌棒、バキュームシール、及び撹拌器からなる攪拌装置一式と、管頂に塩化カルシウム管を付けたガラス製の還流冷却管、及びアルコール温度計を取り付けた乾燥窒素で満たされた500mLのガラス製の四口フラスコに移した。さらにベンジルブロマイド71.3g(0.417モル)を加え、窒素雰囲気下、300rpmで攪拌を開始した。還流冷却管に冷媒を流し、該四口フラスコを140℃のオイルバスを用いて6時間加熱した。フラスコ内部は135℃で還流しており、均一溶液から白色沈殿が徐々に生成し、白色スラリーとなった。室温まで冷却後、白色スラリーをグラスフィルターで濾過した。グラスフィルター上の白色粉末をキシレン300mLで1回、メタノール300mLで2回洗浄し、真空乾燥することで白色粉末68.5gを得た。
収率84.6%で、HPLC純度98.0%の3,9−ビス(フェニルメチル)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(以下、ペンタエリスリトールジベンジルホスホネート)が得られたことが分かった。
【実施例2】
実施例1の(A)において、減圧処理の代わりに加熱処理を行なった。加熱処理はペンタエリスリトールジクロロホスファイトの白色懸濁液を60℃に加熱し、更に20分攪拌した後放冷する方法で行なった。なお、加熱処理中に発生した塩化水素は、還流冷却管を通して反応系外の水酸化ナトリウム水溶液に吸収させた。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表1に示した。
【実施例3】
実施例1の(A)において、減圧処理を行なわない以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表1に示した。
【実施例4】
実施例1の(A)において、減圧処理後のペンタエリスリトールジクロロホスファイトの白色懸濁液からペンタエリスリトールジクロロホスファイトを単離する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表1に示した。
【実施例5】
実施例1の(A)において、キシレンの代わりにトルエンを溶媒として使用し、減圧処理後のペンタエリスリトールジクロロホスファイトの白色懸濁液からペンタエリスリトールジクロロホスファイトを単離する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表1に示した。
【実施例6】
実施例1の(A)において、キシレンの代わりにクロロベンゼンを溶媒として使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表1に示した。
【実施例7】
実施例1の(A)において、キシレンの代わりにo−ジクロロベンゼンを溶媒として使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表1に示した。
【実施例8】
実施例1の(A)において、キシレンの代わりにジブチルエーテルを溶媒として使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表1に示した。
【実施例9】
実施例1の(A)において、三塩化リンを54.3g(0.396モル)使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表1に示した。
【実施例10】
実施例1の(A)において、三塩化リンを59.8g(0.436モル)使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表1に示した。
【実施例11】
実施例1の(A)において、ピリジンの代わりにN,N−ジメチルホルムアミドを触媒として使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表1に示した。
【実施例12】
実施例1の(A)において、反応温度を10℃、反応時間を5時間(三塩化リンの滴下時間30分+攪拌時間4.5時間)に変更する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表1に示した。
【実施例13】
実施例1の(A)において、反応温度を30℃に変更する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表1に示した。
【実施例14】
実施例1の(B)において、N,N−ジエチルアニリンの代わりにピリジンを使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。なお、ピリジンの回収量はピリジン塩酸塩を水に溶かしアルカリで中和して蒸留することにより調べた。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表2に示した。
【実施例15】
実施例1の(B)において、N,N−ジエチルアニリンの代わりにトリエチルアミンを使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。なお、トリエチルアミンの回収量はトリエチルアミン塩酸塩を水に溶かしアルカリで中和して蒸留することにより調べた。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表2に示した。
【実施例16】
実施例1の(B)において、N,N−ジエチルアニリンの代わりにトリブチルアミンを使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表2に示した。
【実施例17】
実施例1の(B)において、N,N−ジエチルアニリンの代わりにN,N−ジメチルアニリンを使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表2に示した。
【実施例18】
実施例1の(B)において、ベンジルアルコールを40.6g(0.376モル)使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表2に示した。
【実施例19】
実施例1の(B)において、ベンジルアルコールを45.0g(0.416モル)使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表2に示した。
【実施例20】
実施例1の(B)において、N,N−ジエチルアニリンを62.0g(0.416モル)使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表2に示した。
【実施例21】
実施例1の(B)において、N,N−ジエチルアニリンを65.0g(0.436モル)使用し、さらに、ろ別後のペンタエリスリトールジベンジルホスファイトの溶液を0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液400mlで1回、同量の純水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて溶液を乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した溶液を(C)の反応に使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表2に示した。
【実施例22】
実施例1の(B)において、ろ別後のペンタエリスリトールジベンジルホスファイトの溶液をエバポレーターで濃縮して白色固体を得て60℃にて8時間真空乾燥した。この乾燥した白色固体にキシレン280mlを加えた溶液を(C)の反応に使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表2に示した。
【実施例23】
実施例1の(B)において、ろ別後のペンタエリスリトールジベンジルホスファイトの溶液を0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液400mlで1回、同量の純水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて溶液を乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した溶液を(C)の反応に使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表2に示した。
[比較例1]
実施例1の(B)において、N,N−ジエチルアニリンを使用しなかった以外は実施例1と同様の操作を行なった。ペンタエリスリトールジベンジルホスホネートは得られなかった。
[比較例2]
実施例1の(B)において、ペンタエリスリトールジベンジルホスファイトを含む反応混合物をろ別せずにそのまま(C)の反応に使用した以外は実施例1と同様の操作を行なった。ペンタエリスリトールジベンジルホスホネートは得られなかった。
【実施例24】
実施例1の(C)において、グラスフィルター上の白色粉末をキシレン300mLで1回洗浄し、この白色粉末とメタノール300mLを2時間加熱還流して洗浄し、この固体を真空乾燥する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表3に示した。
【実施例25】
実施例1の(B)において、ろ別後のペンタエリスリトールジベンジルホスファイトの溶液をエバポレーターで濃縮して白色固体を得て60℃にて8時間真空乾燥し、この乾燥した白色固体を実施例1の(C)に使用し(溶媒を使用しない)、反応温度を150〜200℃に調整する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表3に示した。
【実施例26】
実施例1の(C)において、キシレン溶媒の量を400mlとし、反応時間を10時間とする以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表3に示した。
【実施例27】
実施例1の(C)において、キシレン溶媒の量を200mlに調整する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表3に示した。
【実施例28】
実施例1の(C)において、ベンジルブロマイドを67.7g(0.396モル)使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表3に示した。
【実施例29】
実施例1の(C)において、ベンジルブロマイドを84.6g(0.495モル)使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表3に示した。
[比較例3]
実施例1の(C)において、ベンジルブロマイドを使用する代わりにヨウ化ナトリウム0.0079モルを使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表3に示した。
[比較例4]
実施例1の(C)において、ベンジルブロマイドを使用する代わりにテトラブチルアンモニウムブロマイド0.04モルを使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表3に示した。
[比較例5]
実施例1の(C)において、ベンジルブロマイドを使用する代わりにブチルアイオダイド0.12モルを使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたペンタエリスリトールジベンジルホスホネートの収率およびHPLC純度を表3に示した。
[比較例6]
実施例1の(C)において、反応温度を40℃に調整する以外は実施例1と同様の操作を行なった。ペンタエリスリトールジベンジルホスホネートは得られなかった。
[比較例7]
実施例1の(C)において、ベンジルブロマイドを使用しない以外は実施例1と同様の操作を行なった。ペンタエリスリトールジベンジルホスホネートはほとんど得られなかった。



【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、難燃剤等に利用できる特定のペンタエリスリトールジホスホネートを、高純度、高収率でかつ工業的に有利な生産性に優れた方法で提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)三塩化リンとペンタエリスリトールとを不活性な溶媒の存在下に反応させて式(1)で示されるペンタエリスリトールジクロロホスファイトを得て(a反応)、(B)該ペンタエリスリトールジクロロホスファイトと式(2)で示されるアラルキルアルコールとを反応させて式(3)で示されるペンタエリスリトールジホスファイトを得て(b反応)、(C)該ペンタエリスリトールジホスファイトを式(4)に示されるハロゲン化化合物の存在下に、温度80℃〜300℃の条件で加熱処理する(c反応)ことを特徴とする式(5)で示されるペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。

[式中、Arは、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、RおよびRは、同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。]

[式中、ArおよびArは、同一または異なっていてもよく、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。]

[式中、Arは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、RおよびRは、同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。XはBr基である。]

[式中、ArおよびArは、同一または異なっていてもよく、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基である。また、R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なっていてもよく、水素原子もしくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1〜20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。]
【請求項2】
前記b反応を有機塩基化合物の存在下で行なう請求項1記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項3】
前記b反応において、有機塩基化合物をペンタエリスリトールに対して180モル%〜400モル%用いる請求項2記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項4】
前記b反応で得られたペンタエリスリトールジホスファイトを含む反応混合物から、有機塩基化合物及び有機塩基化合物の塩(以下、有機塩基化合物成分とする)を反応系外に分離除去し、該有機塩基化合物成分を除去したペンタエリスリトールジホスファイトをc反応に使用する請求項2記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の反応系外に分離除去する有機塩基化合物成分が、使用した有機塩基化合物100モル%に対し、90モル%以上である請求項4記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項6】
請求項4において、有機塩基化合物成分を反応系外に分離除去した後のペンタエリスリトールジホスファイトの溶液または懸濁液から、該ペンタエリスリトールジホスファイトを単離せずに、次のc反応に使用する請求項4記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項7】
前記a反応で得られたペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液または懸濁液を加熱処理または減圧処理する請求項1記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項8】
前記a反応で得られたペンタエリスリトールジクロロホスファイトの溶液又は懸濁液から、ペンタエリスリトールジクロロホスファイトを単離せずに、次のb反応に使用する請求項1記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項9】
前記a反応において、使用する不活性な溶媒が、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素および含酸素原子炭化水素からなる群より選ばれる1種又は2種以上からなる溶媒である請求項1記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項10】
前記a反応において、三塩化リンをペンタエリスリトールに対して195モル%〜240モル%用いる請求項1記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項11】
前記a反応を有機塩基化合物の存在下で行なう請求項1記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項12】
前記b反応において、アラルキルアルコールをペンタエリスリトールに対して180モル%〜250モル%用いる請求項1記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項13】
前記c反応において使用するハロゲン化化合物がベンジルブロマイドである請求項1記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項14】
前記c反応において使用するハロゲン化化合物がベンジルブロマイドであり、該ベンジルブロマイドをペンタエリスリトール1モルに対して1.5モル〜3モル用いる請求項1記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。
【請求項15】
前記式(5)で示されるペンタエリスリトールジホスホネートが下記式(5−a)で示されるジベンジルペンタエリスリトールジホスホネートである請求項1記載のペンタエリスリトールジホスホネートの製造方法。


【国際公開番号】WO2004/060900
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【発行日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564526(P2004−564526)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016754
【国際出願日】平成15年12月25日(2003.12.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】