説明

ペン式バーコードスキャナー

【課題】その操作速度が多少変化してもバーコードの読取り機能に影響がないようにして、
バーコードを正確に読み取り可能としたペン式バーコードスキャナーを提供すること。
【解決手段】スキャナー本体2の先端部5の付近にローラー11を設けること、ローラー11をバーコードの読み取り操作のときに一緒にバーコードないしその印刷面上を転動させること、アナログ波形の黒バーのアナログ波形幅や白バーのアナログ波形幅に関係なく、ローラー11の転動距離によってそれぞれのバーコードの幅を計測可能とすることに着目したもので、スキャナー本体2の先端部5の近傍に取り付けるとともにバーコード上を転動可能なローラー11と、レーザー光がバーコードの白バーおよび黒バーのそれぞれの境界部を通過したときに、これらの白バーおよび黒バーについてローラー11の転動距離をそれぞれ計測可能な転動距離計測部12と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペン式バーコードスキャナーにかかるもので、とくにその移動速度(操作速度ないしスライド速度)に影響されないようにしたペン式バーコードスキャナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のペン式バーコードスキャナー(ペン式バーコードリーダー)は、安価かつ簡便ではあるが、操作者が手に持ってバーコードに対して移動することにより、このバーコードの情報を読み取る方式であるため、バーコード上を操作する速度を所定範囲内の一定値にして操作する必要があるという問題がある。
【0003】
図3にもとづき概説する。
図3は、従来のペン式バーコードスキャナー1およびバーコードBの概略説明図であって、ペン式バーコードスキャナー1による読取り信号のアナログ波形も示している。
ペン式バーコードスキャナー1は、スキャナー本体2と、受発光部3と、制御部4と、を有する。
スキャナー本体2は、操作者が手に持って操作可能なペンタイプである。
受発光部3は、スキャナー本体2の先端部5からレーザー光をバーコードBに対して照射するLEDなどによる発光素子6と、このバーコードBからの反射光を捉える受光素子7と、を有する。
制御部4は、スキャナー本体2をバーコードBに対して移動することにより、図示のアナログ波形Aをアナログデジタル変換し、所定の基準値に比較してバーコードBの情報を読み取る。
ペン式バーコードスキャナー1では、バーコードBの黒バーBBおよび白バーBW(スペース)の幅は、それぞれの黒バーBBおよび白バーBWに対応するアナログ波形Aの時間として変換されるものである。
【0004】
たとえば図示のように、バーコードBとして、黒バーBB1、白バーBW1、黒バーBB2、白バーBW2、黒バーBB3、白バーBW3、・・・などと配列されており、たとえば黒バーBB1と黒バーBB3とは互いに同じ幅であると仮定する。
このバーコードBを読み取る際に、バーコードBの全域にわたって均一な速度で走査できていれば、図示の実線のように、黒バーBB1と黒バーBB3とはともに、アナログ波形Aの基準レベルGとの交点から得られる黒バーBB1のアナログ波形幅A1の時間幅として認識され、同じ幅と読み取ることができる。
しかしながら、黒バーBB3の部分にペン式バーコードスキャナー1(先端部5)が至ったときに操作速度が変わって、たとえば遅くなったときには、黒バーBB3のアナログ波形幅A1がアナログ波形幅A3と大きくなってしまって(A1<A3)、本来同じ幅であるはずの黒バーBB1と黒バーBB3とを異なる幅の黒バーとして認識してしまって読取り誤りが生ずるという問題がある。同じ問題は、白バーBWについても当然言えることである。
すなわち、ペン式バーコードスキャナー1の場合には、固定式スキャナーや、レーザー光往復動式スキャナーなどとは異なって、スキャナー本体2自体をバーコードBに対して相対的に移動するように操作するため、その移動速度ないし操作速度が速かったり遅かったりすることでバーコードBの読取りが不可能になるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平11−203398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、その操作速度が多少変化してもバーコードの読取り機能に影響がないようにしたペン式バーコードスキャナーを提供することを課題とする。
【0007】
また本発明は、バーコードに対するスライド速度に影響されないようにしたペン式バーコードスキャナーを提供することを課題とする。
【0008】
また本発明は、操作者の熟練度に関係なくバーコードを正確に読み取り可能としたペン式バーコードスキャナーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、スキャナー本体の先端部付近にローラーを設けること、このローラーをバーコードの読み取り操作のときに一緒にバーコードないしその印刷面上を転動させること、かくして、アナログ波形の黒バーのアナログ波形幅や白バーのアナログ波形幅に関係なく、ローラーの転動距離によってそれぞれのバーコードの幅を計測可能とすることに着目したもので、操作者が握って操作するスキャナー本体と、このスキャナー本体の先端部からレーザー光をバーコードに対して照射する発光素子、およびこのバーコードからの反射光を捉える受光素子を有する受発光部と、を備え、上記スキャナー本体を上記バーコードに対して移動することにより、上記バーコードの情報を読み取るペン式バーコードスキャナーであって、上記スキャナー本体の上記先端部の近傍に取り付けるとともに上記バーコード上を転動可能なローラーと、上記レーザー光が上記バーコードの白バーおよび黒バーのそれぞれの境界部を通過したときに、これらの白バーおよび黒バーについてこのローラーの転動距離をそれぞれ計測可能な転動距離計測部と、を有することを特徴とするペン式バーコードスキャナーである。
【0010】
上記転動距離計測部は、その円周方向に複数のスリットを形成するとともに上記ローラーに連動して回転するスリット円板と、このスリット円板の各スリットを検出可能なスリットセンサーと、を有することができる。
【0011】
上記ローラーと上記スリット円板との間に、上記ローラーの回転を上記スリット円板に伝達可能なベルトを設けることができる。
【0012】
上記スリット円板に、上記ローラーとの間の回転比を調節可能なギア機構を設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるペン式バーコードスキャナーにおいては、スキャナー本体の先端部近傍にローラーを設け、バーコードを読み取る際に、スキャナー本体の先端部からのレーザー光の照射とともにこのローラーを転動させるようにしたので、黒バーから白バー、および白バーから黒バーへの変換点からのローラーの回転数ないしその転動距離を白バーおよび黒バーの幅として計測することができ、アナログ波形における黒バーのアナログ波形幅や白バーのアナログ波形幅に関係なく、すなわち、アナログ波形の各黒バーや白バーの時間幅に関係なく、ローラーの転動距離によりバーコードの幅を計測可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、転動するローラーを付加することにより、操作速度が変化してもバーコードを読み取り可能としたペン式バーコードスキャナーを実現した。
【実施例】
【0015】
つぎに本発明の実施例によるペン式バーコードスキャナー10を図1および図2にもとづき説明する。ただし、図3と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
図1は、ペン式バーコードスキャナー10の概略側断面図であり、ペン式バーコードスキャナー10は、従来のペン式バーコードスキャナー1(図2)と同様に、スキャナー本体2、受発光部3、制御部4を有するとともに、ローラー11と、転動距離計測部12と、を有する。
【0016】
ローラー11は、スキャナー本体2の先端部5の近傍に設けたローラー軸13に先端部5との間に所定の相対姿勢をもって、かつ互いに相対的に固定状態で、これを取り付けてあるとともに、ローラ軸13のまわりに回転可能であってバーコードB上を転動可能とする。
【0017】
転動距離計測部12は、ローラー11に連動して駆動するようにこれを設けているもので、スリット円板14と、スリットセンサー15と、ギア機構16と、を有する。
【0018】
スリット円板14は、その円周方向に複数のスリット17を等角度間隔で形成するとともにローラー11に連動して回転する。
すなわちスリット円板14は、円板軸18のまわりに回転可能であって、ローラー軸13と円板軸18との間に掛けまわしたタイミングベルトなどのベルト19により、ローラー11の回転をスリット円板14に伝達可能とする。
なお、スリット円板14のスリット17の数が多いほど、ローラー11の回転数ないし回転角度にもとづく転動距離をより高い精度で検出可能である。
また、ベルト19を設けることなく、ローラー11のローラー軸13の部分にスリット円板14およびギア機構16を設けることもできる。
【0019】
スリットセンサー15は、スリット円板14の回転にともなってスリット円板14の各スリット17を検出可能であって、スリット円板14の回転数および回転角度を検出可能とする。回転角度は、これを回転数に換算することができるので、以下、回転角度も含めた回転数をスリットセンサー15が検出するものとして説明する。
【0020】
ギア機構16は、スリット円板14の円板軸18にこれを設けて、スリット円板14とローラー11との間の回転比を調節可能とする。
なお、ローラー11に対するスリット円板14のギア比を小さくするほど、ローラー11の回転数ないし回転角度にもとづく転動距離をより高い精度で検出可能である。
【0021】
こうした構成のペン式バーコードスキャナー10において、操作者はスキャナー本体2の先端部5とともにローラー11をバーコードBが表示されている面上に当てるとともに、バーコードBを走査するようにバーコードBに沿って所定速度で移動させる。
図2は、ペン式バーコードスキャナー10による読取り信号のアナログ波形図であって、スリット円板14の半径をrとし、黒バーBBの開始点(白バーBWから黒バーBBへの変換点)から黒バーBBの終了点(黒バーBBから白バーBWへの変換点)までの間のスリット円板14の回転数、あるいは白バーBWの開始点(黒バーBBから白バーBWへの変換点)から白バーBWの終了点(白バーBWから黒バーBBへの変換点)までの間のスリット円板14の回転数をnとすると、それぞれの黒バーBBおよび白バーBWの幅は、2πrnと表すことができる。
なお、上記開始点や終了点および変換点については、受発光部3からのアナログ波形Aおよびその基準レベルGから制御部4がこれを特定することができる。
図2に示すように、たとえば黒バーBB1について考えると、アナログ波形Aの基準レベルGとの交点BC1、BC2から得られる黒バーBB1のアナログ波形幅A1だけの時間の間に、スリット円板14は回転数n1だけ回転し、ローラー11は2πrn1の距離だけ転動していることとなり、この距離を黒バーBB1の幅と計測することができる。
他のバーBB、BWについてもそれぞれのバーBB、BWを通過したローラー11に対応するスリット円板14のそれぞれ回転数n1、n2、・・・に応じてその幅を検出可能である。
【0022】
図3と同様に、バーコードBを読み取る際に、黒バーBB3の部分にペン式バーコードスキャナー10(先端部5)が至ったときに操作速度が変わって、たとえば遅くなったときには、黒バーBB1と同じ幅であるはずの黒バーBB3のアナログ波形幅A3が黒バーBB1のアナログ波形幅A1より大きくなる(すなわち、時間幅としては、より大きくなる)。
しかしながら、黒バーBB3のアナログ波形幅A3について、アナログ波形Aの基準レベルGとの交点BC3、BC4から得られる黒バーBB3のアナログ波形幅A3分の時間の間に、ローラー11は、同じく2πrn1の距離だけ転動していることに変わりはなく、この距離を黒バーBB3の幅と計測することができるため、
すなわち、レーザー光がバーコードBの黒バーBBおよび白バーBWのそれぞれの境界部(交点BC1、BC2、BC3、BC4)を通過したときに、これらの黒バーBBおよび白バーBWについてローラー11の転動距離をそれぞれ計測可能としたので、本来同じ幅であるはずの黒バーBB1と黒バーBB3とを同じローラー11の回転による転動距離としており、従来のように異なる幅の黒バーBBとして認識してしまって読取り誤りが生ずるという問題は解消される。
【0023】
かくして、ペン式バーコードスキャナー10を用いたバーコードBの走査における移動速度が変化しても、受発光部3によるアナログ波形Aと、ローラー11による転動距離2πrnとの組み合わせにより、この移動速度の変化に影響されずに、各黒バーBBおよび白バーBWの幅を計測し、バーコード読取りのための所定の基準値にもとづいてデータ変換し、バーコードBの情報を読み取ることができる。
ただし、スリット円板14におけるスリット17の解像度、およびギア機構16の回転比の設定により、任意の大きさのバーコードBの読み取りが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例によるペン式バーコードスキャナー10の概略側断面図である。
【図2】同、ペン式バーコードスキャナー10による読取り信号のアナログ波形図である。
【図3】従来のペン式バーコードスキャナー1およびバーコードBの概略説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ペン式バーコードスキャナー(従来、図3)
2 スキャナー本体
3 受発光部
4 制御部
5 スキャナー本体2の先端部
6 発光素子
7 受光素子
10 ペン式バーコードスキャナー(実施例、図1)
11 ローラー
12 転動距離計測部
13 ローラー軸
14 スリット円板
15 スリットセンサー
16 ギア機構
17 スリット円板14に形成したスリット
18 円板軸
19 ベルト
A アナログ波形(図2、図3)
A1 黒バーBB1のアナログ波形幅
A3 黒バーBB3のアナログ波形幅
G アナログ波形Aの基準レベル
B バーコード(図2、図3)
BB、BB1、BB2、BB3 黒バー
BW、BW1、BW2、BW3 白バー
BC1、BC2、BC3、BC4 アナログ波形Aの基準レベルGとの交点(白バーBWと黒バーBBとの間の境界部、図2)
r スリット円板14の半径
n、n1、n2、・・・ スリット円板14の回転数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者が握って操作するスキャナー本体と、
このスキャナー本体の先端部からレーザー光をバーコードに対して照射する発光素子、およびこのバーコードからの反射光を捉える受光素子を有する受発光部と、を備え、前記スキャナー本体を前記バーコードに対して移動することにより、前記バーコードの情報を読み取るペン式バーコードスキャナーであって、
前記スキャナー本体の前記先端部の近傍に取り付けるとともに前記バーコード上を転動可能なローラーと、
前記レーザー光が前記バーコードの白バーおよび黒バーのそれぞれの境界部を通過したときに、これらの白バーおよび黒バーについてこのローラーの転動距離をそれぞれ計測可能な転動距離計測部と、
を有することを特徴とするペン式バーコードスキャナー。
【請求項2】
前記転動距離計測部は、
その円周方向に複数のスリットを形成するとともに前記ローラーに連動して回転するスリット円板と、
このスリット円板の各スリットを検出可能なスリットセンサーと、を有することを特徴とする請求項1記載のペン式バーコードスキャナー。
【請求項3】
前記ローラーと前記スリット円板との間に、前記ローラーの回転を前記スリット円板に伝達可能なベルトを設けたことを特徴とする請求項2記載のペン式バーコードスキャナー。
【請求項4】
前記スリット円板に、前記ローラーとの間の回転比を調節可能なギア機構を設けたことを特徴とする請求項2記載のペン式バーコードスキャナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−241671(P2007−241671A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63360(P2006−63360)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】