説明

ペースト分散装置およびペースト製造方法

【課題】異物量が少なく、分散性の優れたペーストを製造するためのペースト分散装置を提供する。
【解決手段】円筒容器中に、該円筒容器と同軸上に回転可能なローターと、ローター外周部に配した自公転可能なローラーを配したころ式分散装置において、ローラーを構成する部材のビッカース硬度が、円筒容器およびローターを構成する部材のビッカース硬度より低いことを特徴とするペースト分散装置、およびその装置を用いたペースト製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト、特にプラズマディスプレイ用に好適なペーストの分散装置およびペーストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回路材料やディスプレイにおいて小型化・高精細化が進んでおり、これに対応することができるペースト分散技術が求められている。特に、プラズマディスプレイにおいては、隔壁形成にはガラス粉末などの無機粒子を、電極形成時には銀などの導電性粉末を含むペーストを用い、これらを高精度でパターン加工して所定の形状が形成される。
【0003】
高精度のパターン加工を実施するためには、これらに用いられるペースト成分中に含まれる無機粒子や導電性粉末がその要求される粒子径や表面特性などを維持しつつ、かつ十分に分散されていることが必要となる。
【0004】
これらのペーストの分散を行う方法として、アトライタ、ペイントシェーカ、サンドミル、ボールミル、ビーズミルなどの各種媒体型分散機が提案されている。
【0005】
しかしながら、媒体としてボールやビーズ等を充填したボールミルやビーズミルは媒体との衝突あるいは衝撃力を付与して無機粒子などを含む被分散処理ペーストを分散させるもので、高分散性が得られる半面、媒体の衝突や衝撃による粉砕力が大きすぎて被分散粒子の粒子径の低下や比表面積の増大などの表面特性および化学的変化を招き、所定の特性を有するペーストを得ることが困難であった。
【0006】
このような問題を解決する手段としてころ式分散装置が提案されている(例えば、特許文献1)。ころ式分散装置機は、ローラーと円筒容器およびローラーとローターとの摺り合わせにより無機粒子などを含む被分散処理物を分散させるもので、上述した媒体型分散装置と比較すると、分散処理による被分散処理物中の粒子の状態の変化が少なく、表面処理済粒子や軟質粒子を分散する際、その表面処理状態や粒子形状を変化させたくない場合に好ましく用いることができる。
【0007】
しかしながら、このころ式分散装置を用いて無機粒子や導電粉末を分散させようとすると、この分散装置を構成する部材が摩滅してその磨耗粉が被分散処理ペースト中に混入し、ペースト特性を阻害することが発生する。ペースト中への磨耗粉の混入を低減するために、分散装置を構成する部材として硬度の高いセラミック部材を使用することも提案されている(特許文献2)。
【0008】
ところが、セラミック部材で構成されたころ式分散装置は、その分散作用中に割れや欠けのなどの破損がしばしば発生する。このことにより、ペースト製品中に分散装置構成部材などの異物が混入して品質を低下させる問題や、また分散装置が破損することで修理などのために稼動率が低下し、ひいては生産性が低下したりする問題があった。
【特許文献1】特開平11−197479号公報
【特許文献2】特開2004−306027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたもので、表面処理粒子や軟質粒子を分散する際、分散処理物中の粒子の粒子径や表面状態を変化させることなく、かつ十分な分散性を有するペーストを提供するとともに、分散装置の破損を低減させることが可能なペーストの分散装置、およびそれを用いたペーストの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るペースト分散装置は、円筒容器中に、該円筒容器と同軸上に回転可能なローターと、ローター外周部に配した自公転可能なローラーを配したころ式分散装置からなるペースト分散装置において、前記ローラーを構成する部材のビッカース硬度をHa(GPa)、前記円筒容器を構成する部材のビッカース硬度をHb(GPa)、前記ローターを構成する部材のビッカース硬度をHc(GPa)とするとき、下記式(1)および(2)を満足することを特徴とするものからなる。
Ha<Hb (1)
Ha<Hc (2)
【0011】
ローラー、円筒容器、ローターを構成する部材のビッカース硬度が同じであると、ローターの回転に伴うローラーの自公転運動において、ローラーと円筒容器およびローラーとローターの互いに近接する部材間での摺動摩擦により、発熱・膨張して部材の破損を生じ易く、破損粉がペースト中に混入するとペースト品質を低下させ好ましくない。
【0012】
ローラーのビッカース硬度が円筒容器およびローターを構成する部材のビッカース硬度より高いかあるいは低いと、ローターの回転に伴うローラーの自公転運動において、ローラーと円筒容器およびローラーとローターの互いに近接する部材間での摺動摩擦により、近接する部材間でよりビッカース硬度の低い部材が相対的により磨耗することで相互の部材の潤滑作用が生じ、発熱・膨張が少なく部材の破損を生じにくい。
【0013】
また、ローラーのビッカース硬度が円筒容器およびローターを構成する部材のビッカース硬度より高いと、ローラーの磨耗量と比較して、相対的に円筒容器およびローターの磨耗量が大きくなり、これらの部材の交換が必要となる。円筒容器およびローター部材の交換作業はローラーの交換作業と比較して長時間を要し、装置を停機して行う必要があるため、交換作業により装置の稼働率を低下させることになる。
【0014】
このとき、ローラーのビッカース硬度が、円筒容器およびローターを構成する部材のビッカース硬度より低いと、相対的にローラーの磨耗し、円筒容器およびローターはさほど磨耗せず、部材の交換はローラーを交換することとなり、交換作業は容易で短時間ですみ、装置の稼働率低下はわずかですむ。
【0015】
このため、ローラーを構成する部材のビッカース硬度が、円筒容器およびローターを構成する部材のビッカース硬度より低いことが必要である。
【0016】
ローラーと円筒容器およびローラーとローターのビッカース硬度の差は1.0GPa以上、すなわち下記式(3)および(4)を満たすことが好ましい。
Ha≦Hb−1.0 (3)
Ha≦Hc−1.0 (4)
上記ビッカース硬度の差が1.0GPa未満であると、互いの摺動時の発熱・磨耗が大きく好ましくない。
【0017】
また、前記ころ式分散装置の円筒容器、ローラーおよびローターを構成する部材のビッカース硬度が、10GPa以上であることが好ましい。とくにローラーを構成する部材のビッカース硬度が10GPa以上であることが好ましい。これらの部材のビッカース硬度が10GPa未満であると、部材間の磨耗量が増加してペースト中に混入することとなり、品質上好ましくない。
【0018】
また、本発明のころ式分散装置では、円筒容器、ローラーおよびローターの少なくとも一つが窒化珪素を含むセラミック材料からなることが好ましい。円筒容器、ローラーおよびローターに窒化珪素を含むセラミック材料を用い、かつローラー部材のビッカース硬度を近接する部材のビッカース硬度より低くすると、これら部材の磨耗量を低減することができ、ペースト中へのこれら磨耗粉の混入を低減できる。
【0019】
また本発明は、上記のペースト分散装置を用いてペーストの分散処理を行う工程を含むことを特徴とするペースト製造方法も提供する。特に上述のペーストがプラズマディスプレイ部材形成用ペーストである場合に、これらに用いられるペースト成分中に含まれる無機粒子や導電性粉末がその要求される粒子径や表面特性などを維持しつつ、かつ十分に分散されていることが必要であり、本発明に係るペースト製造方法が好適に用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るペースト分散装置によれば、各構成部材間の硬度の大小関係を適切に特定したので、表面処理粒子や軟質粒子を分散する際にも、分散処理物中の粒子の粒子径や表面状態を変化させることなく、かつ十分な分散性を有するペーストを製造でき、しかも、分散装置の破損を適切に防止することができる。
【0021】
このペースト分散装置を用いてペーストの分散処理を行うことにより、良好な分散状態でかつ磨耗粉等の異物の混入も極めて少ないペーストを製造でき、特に、優れたプラズマディスプレイ部材形成用ペーストを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面も参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係るころ式ペースト分散装置を示しており、図2は、図1の一つのローラー部を拡大して示している。図において、1は円筒容器を示しており、該円筒容器1中に、該円筒容器1と同軸上に(回転軸3に対して同軸上に)回転可能なローター2と、ローター2の外周部に配した自公転可能なローラー5を配したころ式分散装置として構成されている。各ローラー5は、ローター2の外周面上に形成された溝4中に配されており、円筒容器1とローター2の外周面との間には、各ローラー5が自公転するに十分な隙間7が形成されている。ローラー5と溝4との間には、ローラー5を溝4内に保持しつつローラー5の自転を許容するわずかな隙間6が形成されている。また、本実施態様では、円筒容器1はジャケット11で覆われており、ジャケット11と円筒容器1の外周面との間には、所定の温度にコントロールされた冷媒または温媒を導入する冷温媒導入路a(12)が形成されており、回転軸3内には、冷温媒導入路b(13)が形成されている。
【0023】
このように構成されたペースト分散装置において、ローラー5を構成する部材のビッカース硬度をHa(GPa)、円筒容器1を構成する部材のビッカース硬度をHb(GPa)、ローター2を構成する部材のビッカース硬度をHc(GPa)とするとき、下記式(1)および(2)を満足するように設定されている。
Ha<Hb (1)
Ha<Hc (2)
【0024】
好ましくは、下記式(3)および(4)を満たすように設定される。
Ha≦Hb−1.0 (3)
Ha≦Hc−1.0 (4)
【0025】
本発明のペースト製造方法によって得られるペーストの用途の例としては、例えば、印刷インキ、塗料、電子材料用ペーストなどを挙げることができる。以下、プラズマディスプレイ(以下、PDPと略称することもある)用途のペーストを例にとって説明する。
【0026】
PDP用途のペーストを構成する成分は、無機粉末と有機成分とに大別することができる。無機粉末としては、ガラス粉末、蛍光体粉末、金属粉末、顔料などが挙げられる。また、耐火物フィラーを添加することも好ましい。ガラス粉末は、PDP用途の内、隔壁形成用途に好適に用いられる。
【0027】
ガラス粉末としては、主として低融点ガラスからなるものが好ましい。低融点ガラスのガラス転移温度としては430〜500℃が好ましく、ガラス軟化点としては470〜620℃が好ましい。ガラス転移温度とガラス軟化点がこの範囲にあると、焼成時に基板の歪みが小さく、また、緻密な隔壁層が得られる。またガラスは、50〜400℃の熱膨張係数が50×10-7〜100×10-7-1であることが好ましい。また、ガラス中に酸化珪素を3〜60重量%、酸化硼素を5〜50重量%の範囲で配合することによって、電気絶縁性、強度、熱膨張係数、絶縁層の緻密性などの隔壁として要求される電気、機械および熱的特性を向上することができる。
【0028】
また、ガラス粉末の粒子のサイズとしては、所望の隔壁の線幅や高さを考慮して選べばよいが、体積基準分布の中心径としては1〜6μm、最大粒子サイズとしては30μm以下、比表面積としては1.5〜4cm2/gが好ましい。
【0029】
蛍光体粉末は、PDP用途の内、蛍光体層形成用途に好適に用いられる。蛍光体粉末としては例えば、赤色では、Y23:Eu、YVO4:Eu、(Y,Gd)BO3:Eu、Y23S:Eu、γ−Zn3(PO42:Mn、(ZnCd)S:Ag+In23などが挙げられる。緑色では、Zn2GeO2:M、BaAl1219:Mn、Zn2SiO4:Mn、LaPO4:Tb、ZnS:(Cu,Al)、ZnS:(Au,Cu,Al)、(ZnCd)S:(Cu,Al)、Zn2SiO4:(Mn,As)、Y3Al512:Ce、CeMgAl1119:Tb、Gd22S:Tb、Y3Al512:Tb、ZnO:Znなどが挙げられる。青色では、Sr5(PO43Cl:Eu、BaMgAl1423:Eu、BaMgAl1627:Eu、BaMg2Al1424:Eu、ZnS:Ag+赤色顔料、Y2SiO3:Ceなどが挙げられる。
【0030】
また、蛍光体粉末のサイズとしては、面積平均径Dsとしては1.0〜2.5μmが好ましく、1.2〜2.3μmがより好ましく、体積基準分布の中心径Dvとしては1.8〜4.5μmが好ましく、2.0〜4.2μmがより好ましく、Ds/Dvとしては1.2〜2.5が好ましく、1.3〜2.3がより好ましい。Ds、DvおよびDs/Dvがこれらの範囲内にあることで、ペーストの濾過性が向上する。
【0031】
金属粉末は、PDP用途の内、電極形成用途に好適に用いられる。金属粉末としては、Ag、Au、Pd、Ni、Cu、AlおよびPtの群から選ばれる少なくとも1種を含むものが使用できる。これらは、それぞれを単独で用いてもよいし、合金として用いてもよいし、粉末を混合して用いてもよい。
【0032】
金属粉末のサイズとしては、体積基準分布の中心径としては0.7〜6μmが好ましく、より好ましくは1.3〜4μmである。体積基準分布の中心径がこの範囲内にあることで、緻密な微細パターンの形成が可能となる。
【0033】
耐火物フィラーは、焼成時の形状を安定させるために好ましく添加される。耐火物フィラーとしては、500〜650℃程度の焼成温度で軟化しないものが広く使用でき、高融点ガラスやアルミナ、マグネシア、カルシア、コーディエライト、シリカ、ムライト、ジルコン、ジルコニア等のセラミックス粉末が例示できる。
【0034】
顔料は、PDPの背面板における隔壁の光反射特性を調整する上で、好ましく採用される。例えば、Co−Cr−Fe系、Co−Mn−Fe系、Co−Fe−Mn−Al系、Co−Ni−Cr−Fe系、Co−Ni−Mn−Cr−Fe系、Co−Ni−Al−Cr−Fe系、Co−Mn−AL−Cr−Fe−Si系等の黒色顔料を用いると、外交反射を低減し、表示画像のコントラストを挙げることができる。また例えば、チタニアなどの白色顔料を用いると、蛍光体の発光を有効にパネル前面に導くことができ、より鮮やかな色彩を表示することができる。
【0035】
無機粉末のペーストに対する含有量としては、35〜95重量%が好ましく、40〜90重量%がより好ましい。この範囲内とすることで、焼成時の収縮や、形状変化を抑えることができる。
【0036】
有機成分としては、バインダー樹脂、有機溶剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤などを挙げることができる。
【0037】
バインダー樹脂としては、焼成時に酸化、および/または分解および/または気化し、炭化物が無機物中に残存しないものが好ましく、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等のセルロース系樹脂、または、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等の重合体もしくはこれらの共重合体からなるアクリル樹脂、ポリ−α−メチルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリブテン等が好ましく用いられる。バインダー樹脂のペーストに対する含有量としては、5〜65重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましい。
【0038】
有機溶剤は、ペーストの粘度の調整のために使用される。有機溶剤としては例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、テルピネオール、ベンジルアルコール、1−ブトキシ−2−プロパン、1,2−ジアセトキシプロパン、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−エトキシプロパン、(1,2−メトキシプロポキシ)−2−プロパノール、(1,2−エトキシプロポキシ)−2−プロパノール、2−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、2−フェノキシエタノール、2−(ベンジルオキシ)エタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラフルフリルアルコール、2,2’−ジヒドロキシジエチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、シクロヘキサンノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、1−メチルペンチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトンなどが挙げられる。
【0039】
また、有機溶剤は、その揮発性と使用するバインダー樹脂の溶解性を主に考慮して選定することができる。有機溶剤は、用いるバインダー樹脂に対して良溶媒であることが好ましい。バインダー樹脂に対する溶解性が高い有機溶剤を採用することにより、ペーストの粘度の調整が容易となり、良好な塗布特性を得ることができる。
【0040】
有機溶剤のペーストに対する含有率としては、35〜65重量%が好ましく、より好ましくは40〜60重量%である。35重量%以上とすることにより、脱泡処理を容易に行うことができる。また65重量%以下とすることによって、安定な分散状態を得ることができ、また乾燥に要するエネルギーと時間を節約できる。
【0041】
また、ペーストを感光性ペーストとして用いる場合には、有機成分として、感光性ポリマー、感光性オリゴマー、感光性モノマーといった感光性成分や光重合開始剤、増感剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤などの添加物成分を挙げることができる。
【0042】
感光性モノマーとしては、活性な炭素−炭素不飽和二重結合を有する官能基を有する化合物を好ましく採用することができる。官能基としては例えば、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物が応用できる。化合物としては例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0043】
感光性ポリマーおよび/または感光性オリゴマーは、感光性ペーストのバインダー樹脂として兼用することもできる。感光性ポリマーおよび感光性オリゴマーは、上記のような感光性モノマーの重合または共重合により得られる。
【0044】
上記のような感光性モノマーと共重合する他の共重合成分として例えば、不飽和カルボン酸などの不飽和酸は、感光後のアルカリ水溶液による現像性を向上することができるので好ましい。不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸およびこれらの酸無水物などが挙げられる。
【0045】
光重合開始剤の感光性ペーストに対する添加量としては、0.005〜5重量%が感光特性上好ましい。
【実施例】
【0046】
[測定・評価方法]
(1)円筒容器、ローター、ローラーの表面状態観察
480時間使用後の円筒容器、ローターおよびローラーの表面状態を目視およびマイクロスコープ(倍率:80倍)により、表面のクラックの発生状態を観察し、下記の基準により評価した。
A:マイクロスコープで確認可能なクラックがない
B:マイクロスコープで確認可能だが、目視では確認不可能なクラックがある
C:目視で確認可能なクラックがある
【0047】
(2)使用後の部材の状態
480時間使用後の状態を、目視にて部材の状態を確認した。
【0048】
実施例1〜3、比較例1〜3
(粗分散ペーストの調整)
酸化鉛、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化シリコン、および酸化バリウムを主成分とするガラスを粉砕して得た平均粒径2μmのガラス粉末52重量%、メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(重量組成比60/40、重量平均分子量32000)12重量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート12重量%、ベンゾフェノン1.94重量%、1,6−ヘキサンジオール−ビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.05重量%、有機染料(ベーシックブルー7)0.01重量%、有機溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)22重量%を、プラズマディスプレイ部材形成用感光性ペーストの構成成分とした。この組成のペーストを各実施例・比較例で300kgずつ計量後、プラネタリーミキサー(井上製作所製)にて60rpmで60分間攪拌し、粗分散ペーストとした。
【0049】
(混練処理)
引き続き、粗分散ペーストをタンクに移し、ポンプを介して、円筒容器中に、該円筒容器と同軸上に回転可能なローターと、ローター外周部に配した自公転可能なローラーを配したころ式分散機に粗分散ペーストを供給し、ローターの回転数を400rpm、円筒容器内のペースト滞留時間を約3分となるよう供給量を設定して分散処理をおこない分散を促進したペーストを得た。分散処理中の部材の破損状況および部材の磨耗量を表1に示す。
【0050】
また、円筒容器、ローター(直径100mm、長さ300mm、ローラ溝付き)とローラ(直径10mm、長さ50mm、120本)の材質を表1に、そのビッカース硬度を表2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施態様に係るペースト分散装置の横断面図である。
【図2】図1のII部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 円筒容器
2 ローター
3 回転軸
4 溝
5 ローラー
6 わずかな隙間
7 隙間
11 ジャケット
12 冷温媒導入路a
13 冷温媒導入路b

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒容器中に、該円筒容器と同軸上に回転可能なローターと、ローター外周部に配した自公転可能なローラーを配したころ式分散装置からなるペースト分散装置において、前記ローラーを構成する部材のビッカース硬度をHa(GPa)、前記円筒容器を構成する部材のビッカース硬度をHb(GPa)、前記ローターを構成する部材のビッカース硬度をHc(GPa)とするとき、下記式(1)および(2)を満足することを特徴とするペースト分散装置。
Ha<Hb (1)
Ha<Hc (2)
【請求項2】
前記ころ式分散装置のローラーを構成する部材のビッカース硬度Haが、10GPa以上であることを特徴とする、請求項1に記載のペースト分散装置。
【請求項3】
前記ころ式分散装置の円筒容器、ローラーおよびローターの少なくとも一つが窒化珪素を含むセラミック材料からなることを特徴とする、請求項1または2に記載のペースト分散装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のペースト分散装置を用いてペーストの分散処理を行う工程を含むことを特徴とするペースト製造方法。
【請求項5】
ペーストがプラズマディスプレイ部材形成用ペーストであることを特徴とする、請求項4に記載のペースト製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−263598(P2006−263598A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85992(P2005−85992)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】